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特許7364508無線通信装置及びそれを備える車両並びに無線通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】無線通信装置及びそれを備える車両並びに無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/02 20090101AFI20231011BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20231011BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20231011BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20231011BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20231011BHJP
   H04W 4/80 20180101ALI20231011BHJP
【FI】
H04W52/02
B60R25/24
E05B49/00 J
H04M1/00 U
H04W4/40
H04W4/80
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020051348
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021147957
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 啓太
(72)【発明者】
【氏名】望月 信吾
(72)【発明者】
【氏名】清水 紀博
【審査官】岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-155593(JP,A)
【文献】国際公開第03/049326(WO,A1)
【文献】特開2015-059396(JP,A)
【文献】特開2019-153984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
B60R 25/24
E05B 49/00
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる通信方式を用いて無線通信を行なう複数の通信機と、
前記複数の通信機を制御するコントローラとを備え、
前記複数の通信機の各々は、無線通信可能な携帯機器を検知するためのポーリングと、前記ポーリングにより検知された携帯機器の認証とを行なうように構成され、
前記コントローラは、前記複数の通信機のうちのいずれかにおいて認証が完了した場合に、残余の通信機によるポーリングを停止し、
前記複数の通信機は、
近距離無線通信規格に従う通信方式を用いるNFC通信機と、
前記近距離無線通信規格と異なる無線通信規格に従う通信方式を用いる少なくとも1つの通信機とを含み、
前記コントローラは、前記少なくとも1つの通信機のいずれかにおいて認証が完了した場合に、前記NFC通信機によるポーリングを停止し、
前記少なくとも1つの通信機は、BLE通信規格に従う通信方式を用いるBLE通信機と、UWB通信規格に従う通信方式を用いるUWB通信機との少なくとも一方を含み、
前記複数の通信機の各々において認証により許可される機能の少なくとも一部は、前記残余の通信機において認証により許可される機能の少なくとも一部と重複している、無線通信装置。
【請求項2】
前記無線通信装置は、車両に搭載され、
前記複数の通信機の各々において認証により許可される機能は、前記携帯機器を用いた前記車両のドアの解錠及び施錠を含む、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の無線通信装置を備える車両。
【請求項4】
無線通信装置と、
前記無線通信装置と無線通信を行なう携帯機器とを備え、
前記無線通信装置は、
互いに異なる通信方式を用いて無線通信を行なう複数の通信機と、
前記複数の通信機を制御するコントローラとを含み、
前記複数の通信機の各々は、前記携帯機器を検知するためのポーリングと、前記ポーリングにより検知された携帯機器の認証とを行なうように構成され、
前記コントローラは、前記複数の通信機のうちのいずれかにおいて認証が完了した場合に、残余の通信機によるポーリングを停止し、
前記複数の通信機は、
近距離無線通信規格に従う通信方式を用いるNFC通信機と、
前記近距離無線通信規格と異なる無線通信規格に従う通信方式を用いる少なくとも1つの通信機とを含み、
前記コントローラは、前記少なくとも1つの通信機のいずれかにおいて認証が完了した場合に、前記NFC通信機によるポーリングを停止し、
前記少なくとも1つの通信機は、BLE通信規格に従う通信方式を用いるBLE通信機と、UWB通信規格に従う通信方式を用いるUWB通信機との少なくとも一方を含み、
前記複数の通信機の各々において認証により許可される機能の少なくとも一部は、前記残余の通信機において認証により許可される機能の少なくとも一部と重複している、無線通信システム。
【請求項5】
前記無線通信装置は、車両に搭載され、
前記複数の通信機の各々において認証により許可される機能は、前記携帯機器を用いた前記車両のドアの解錠及び施錠を含む、請求項4に記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置及びそれを備える車両並びに無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の携帯機器を用いて車両や住宅等のドアの解錠及び施錠等を行なう技術が知られている。たとえば、特開2013-100645号公報(特許文献1)には、双方向に通信可能な携帯機器及び車載通信機を備える無線通信システムを開示する。この無線通信システムでは、近距離無線通信(たとえば、NFC(Near Field Communication)の規格に従う通信方式を用いる無線通信であり、以下「NFC通信」或いは単に「NFC」等と称する。)等を用いて、携帯機器と車載通信機との間で無線通信が行なわれ、携帯機器から車両ドアの解錠及び施錠又はエンジンの始動を行なうことができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-100645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような無線通信システムでは、携帯機器を所持する利用者が車両等に近づいたことを検知するために、車両等に設けられる通信機において、携帯機器を検知するためのポーリングが行なわれる。このポーリングに伴なう暗電流が大きいと、通信機へ作動電力を供給するバッテリが意図せず枯渇する等の問題が生じる可能性がある。
【0005】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、携帯機器と無線通信を行なう通信機を備える無線通信装置及びそれを備える車両並びに無線通信システムにおいて、暗電流を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の無線通信装置は、互いに異なる通信方式を用いて無線通信を行なう複数の通信機と、複数の通信機を制御するコントローラとを備える。複数の通信機の各々は、無線通信可能な携帯機器を検知するためのポーリングと、ポーリングにより検知された携帯機器の認証とを行なうように構成される。コントローラは、複数の通信機のうちのいずれかにおいて認証が完了した場合に、残余の通信機によるポーリングを停止する。
【0007】
また、本開示の無線通信システムは、無線通信装置と、無線通信装置と無線通信を行なう携帯機器とを備える。無線通信装置は、互いに異なる通信方式を用いて無線通信を行なう複数の通信機と、複数の通信機を制御するコントローラとを含む。複数の通信機の各々は、携帯機器を検知するためのポーリングと、ポーリングにより検知された携帯機器の認証とを行なうように構成される。コントローラは、複数の通信機のうちのいずれかにおいて認証が完了した場合に、残余の通信機によるポーリングを停止する。
【0008】
上記の無線通信装置は、複数の通信機を備えており、複数の通信機のうちのいずれかにおいて携帯機器の認証が完了した場合には、残余の通信機と当該携帯機器との通信は不要になるため、残余の通信機によるポーリングを停止させる。これにより、ポーリングに伴なう暗電流を低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の無線通信装置及びそれを備える車両並びに無線通信システムによれば、暗電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に従う無線通信システムの全体ブロック図である。
図2】車両のBLE通信機及びNFC通信機によるポーリングの一例を示すタイミングチャートである。
図3】車両のNFC通信機及びBLE通信機によるポーリングの他例を示すタイミングチャートである。
図4】車両の無線コントローラにより実行される処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
図1は、本開示の実施の形態に従う無線通信システムの全体ブロック図である。図1を参照して、無線通信システムは、車両10と、携帯機器50とを備える。車両10は、NFC通信機12と、BLE(Bluetooth Low Energy、「Bluetooth」は登録商標)通信機14と、無線コントローラ16とを含む。NFC通信機12、BLE通信機14、及び無線コントローラ16は、携帯機器50と無線通信を行なう無線通信装置を構成する。
【0013】
NFC通信機12は、NFC規格に従う通信方式を用いて携帯機器50と無線通信を行なう通信機である。NFC通信機12は、バッテリ26から電力の供給を受けて作動し、図示しないアンテナを通じて、携帯機器50のNFC通信機52との間でNFC通信を行なう。NFC通信機12には、NFC通信機能のうち、少なくともリーダライタ機能が実装される。リーダライタ機能に加えて機器間通信(P2P)機能が実装されてもよい。
【0014】
NFC通信機12は、無線コントローラ16からの指示に従って、携帯機器50を検知するためのポーリングを実行する。すなわち、NFC通信機12は、NFC規格に従って、周囲に対して一定期間毎にリクエスト信号を送信し、リクエスト信号に応答して携帯機器50のNFC通信機52から送信されるレスポンス信号を受信する。NFC通信機12は、レスポンス信号を受信すると、レスポンス信号に含まれる認証データ(ID情報)を復調して無線コントローラ16へ出力する。
【0015】
BLE通信機14は、BLE通信規格に従う通信方式を用いて携帯機器50と無線通信を行なう通信機である。BLE通信機14も、バッテリ26から電力の供給を受けて作動し、図示しないアンテナを通じて、携帯機器50のBLE通信機54との間でBLE通信を行なう。BLE通信の通信可能範囲は数m以上であり、NFC通信の通信可能範囲(10cm程度)よりも広い。
【0016】
BLE通信機14も、無線コントローラ16からの指示に従って、携帯機器50を検知するためのポーリングを実行する。すなわち、BLE通信機14は、BLE通信規格に従って、周囲に対して一定期間毎にリクエスト信号を送信し、リクエスト信号に応答して携帯機器50のBLE通信機54から送信されるレスポンス信号を受信する。BLE通信機14は、レスポンス信号を受信すると、レスポンス信号に含まれる認証データ(ID情報)を復調して無線コントローラ16へ出力する。
【0017】
無線コントローラ16は、図示しない処理装置と、メモリ18とを含んで構成され、NFC通信機12及びBLE通信機14を制御する。具体的には、無線コントローラ16は、所定のポーリング条件が成立すると、NFC通信機12及びBLE通信機14へポーリングの実行を指示する指令を出力する(ポーリング処理)。
【0018】
また、無線コントローラ16は、NFC通信機12又はBLE通信機14により受信され復調されたID情報を受けると、そのID情報をメモリ18に記憶されているID情報と照合する(認証処理)。そして、照合の結果、ID情報の一致が確認されると、携帯機器50の認証が完了する。これにより、認証された携帯機器50を用いて、ドアロック装置22の操作(乗降用ドアの解施錠)やエンジン24の始動等が可能となる。なお、メモリ18に記憶されているID情報は、車両制御装置20のメモリ(図示せず)に記憶されていてもよいし、NFC通信機12及びBLE通信機14の各々に記憶されていてもよい。無線コントローラ16の処理については、後ほどさらに詳しく説明する。
【0019】
車両10は、さらに、車両制御装置20と、ドアロック装置22と、エンジン24と、バッテリ26とを含む。ドアロック装置22は、車両10の乗降用ドアを施錠状態(ロック状態)と解錠状態(アンロック状態)とのいずれかに切り替えるように構成される。エンジン24は、車両10が走行するための駆動力を発生する内燃機関である。
【0020】
車両制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、信号入出力ポート等を含んで構成される(いずれも図示せず)。車両制御装置20は、車両10の各種制御を行なう。一例として、車両制御装置20は、乗降用ドアの解錠要求に従ってドアロック装置22へ解錠指令(アンロック指令)を出力し、乗降用ドアの施錠要求に従ってドアロック装置22へ施錠指令(ロック指令)を出力する。また、車両制御装置20は、エンジン24の始動要求に従ってエンジン24の始動制御を実行する。
【0021】
ここで、車両制御装置20は、携帯機器50の認証が完了した旨の通知を無線コントローラ16から受けると、認証された携帯機器50を用いたドアロック装置22の操作(ドアの解施錠)及びエンジン24の始動を許可する。そして、携帯機器50を用いてドアロック装置22の操作或いはエンジン24の始動が要求されると、車両制御装置20は、要求された動作を行なうようにドアロック装置22又はエンジン24を制御する。
【0022】
バッテリ26は、車両10の補機用バッテリであり、たとえば鉛蓄電池によって構成される。バッテリ26は、NFC通信機12、BLE通信機14、無線コントローラ16、及び車両制御装置20へ作動電力を供給する。
【0023】
携帯機器50は、NFC通信機52と、BLE通信機54と、制御装置56と、入力装置62と、表示装置64と、バッテリ66とを含む。
【0024】
NFC通信機52は、NFC規格に従う通信方式を用いて車両10と無線通信を行なう通信機である。NFC通信機52は、図示しないアンテナを通じて、車両10のNFC通信機12との間でNFC通信を行なう。NFC通信機52は、NFC通信機12からの電波によって作動するパッシブタグ(ICタグ)を含んで構成される。すなわち、NFC通信機52は、バッテリ66から電力の供給を受けずに、NFC通信機12から受ける電波によって作動する。したがって、NFC通信機52は、携帯機器50の電源がオフされた状態であっても、車両10のNFC通信機12と通信を行なうことができる。
【0025】
NFC通信機52は、NFC通信機12から発せられるリクエスト信号を受信すると、パッシブタグ(ICタグ)に書き込まれている当該携帯機器50に固有のID情報を含むレスポンス信号を生成し変調して車両10のNFC通信機12へ送信する。
【0026】
BLE通信機54は、BLE通信規格に従う通信方式を用いて車両10と無線通信を行なう通信機である。BLE通信機54は、バッテリ66から電力の供給を受けて作動し、図示しないアンテナを通じて、車両10のBLE通信機14との間でBLE通信を行なう。
【0027】
BLE通信機54は、BLE通信機14から発せられるリクエスト信号を受信すると、当該携帯機器50に固有のID情報を制御装置56のメモリ60から取得する。そして、BLE通信機54は、その取得されたID情報を含むレスポンス信号を生成し変調して車両10のBLE通信機14へ送信する。
【0028】
制御装置56は、CPU58、メモリ60、信号入出力ポート(図示せず)等を含んで構成される。制御装置56は、携帯機器50の各種制御を行なう。一例として、制御装置56は、BLE通信機54からの要求に従って、メモリ60に記憶されている当該携帯機器50のID情報をメモリ60から読み出してBLE通信機54へ出力する。また、制御装置56は、車両10のドアロック装置22の解錠/施錠又はエンジン24の始動を要求する入力操作が入力装置62において行なわれると、その入力操作に応じた信号をBLE通信機54へ出力する。
【0029】
入力装置62は、携帯機器50に対する利用者の各種入力操作を受け付ける装置であり、たとえば、表示装置64上のタッチ操作を検出するタッチセンサや、携帯機器50に設けられる各種操作ボタンである。表示装置64は、携帯機器50の各種情報や、入力装置62からの入力操作に応じた情報等を表示する。入力装置62及び表示装置64は、タッチパネルセンサによって一体的に構成してもよい。
【0030】
バッテリ66は、充放電可能な二次電池であり、たとえばリチウムイオン二次電池によって構成される。バッテリ66は、図示しない充電装置を用いて外部の電源により充電することができる。そして、バッテリ66は、BLE通信機54、制御装置56、入力装置62、及び表示装置64へ作動電力を供給する。
【0031】
なお、NFC通信機52は、上述のように、NFC通信機12からの電波によって作動するパッシブタグを含んで構成されるため、バッテリ66から電力の供給を受けない。
【0032】
この無線通信システムでは、携帯機器50を用いて、車両10のドアロック装置22の操作(乗降用ドアの施解錠)や、エンジン24の始動を行なうことができる。ドアロック装置22の操作について代表的に説明すると、BLE通信機14,54間でBLE通信が確立し、BLE通信を通じて携帯機器50の認証が完了した状態で、入力装置62においてドアロック装置22の解錠又は施錠を要求する入力操作が行なわれると、その入力操作に応じた信号がBLE通信機54からBLE通信機14へ送信され、車両10において当該信号に従って車両制御装置20によりドアロック装置22が制御される。
【0033】
また、NFC通信機12,52間でNFC通信が確立し、NFC通信を通じて携帯機器50の認証が完了した状態で、ドアロック装置22の解錠又は施錠を要求するための予め定められた操作が行なわれると、車両10において当該操作に従って車両制御装置20によりドアロック装置22が制御される。たとえば、携帯機器50を所定位置にかざしてNFC通信機12,52間の通信を所定時間以上継続させることで、当該操作に従ってドアロック装置22の施解錠を切り替えるようにすることができる。
【0034】
上記の無線通信システムでは、NFC通信機12,52間のNFC通信と、BLE通信機14,54間のBLE通信とが可能である。NFC通信とBLE通信とについては、BLE通信の通信可能範囲の方が、NFC通信の通信可能範囲よりも広い。一方、携帯機器50の電源がオフされた状態では、バッテリ66からBLE通信機54へ作動電力が供給されないので、BLE通信は不可であるけれども、バッテリ66からの電力供給を必要としないパッシブタイプのNFC通信は可能である。
【0035】
そのため、車両10と携帯機器50との通信には、基本的には、通信可能範囲の広いBLE通信機14,54間のBLE通信が用いられ、NFC通信機12,52間のNFC通信は、バッテリ切れ等により携帯機器50の電源がオフされているためにBLE通信が不可である場合のバックアップとして用いられる。
【0036】
NFC通信でもBLE通信でも、携帯機器50を所持する利用者が車両10に近づいたことを検知するために、車両10のNFC通信機12及びBLE通信機14において、携帯機器50を検知するためのポーリングが行なわれる。ポーリング中は、車両10に接近した携帯機器50を検知するために、周囲に対して一定期間毎に電波(リクエスト信号)が出力されるため、暗電流が流れる。このポーリングに伴なう暗電流が大きいと、バッテリ26が意図せず枯渇する等の問題が生じる可能性がある。
【0037】
そこで、本実施の形態に従う無線通信システムでは、BLE通信機14,54間、及びNFC通信機12,52間の一方において、通信が確立し、携帯機器50の認証が完了した場合には、他方の通信は不要になるため、無線コントローラ16は、その他方の通信に用いられる通信機によるポーリングを停止する。これにより、BLE通信及びNFC通信の一方において認証が完了した後は、他方の通信に用いられる通信機においてポーリングに伴なう暗電流を低減することができる。
【0038】
なお、BLE通信で認証が行なわれた場合に許可される機能と、NFC通信で認証が行なわれた場合に許可される機能とは、必ずしも全て一致している必要はないが、少なくとも一部の機能は重複している。たとえば、乗降用ドアの解施錠機能は、BLE通信で認証が行なわれた場合、及びNFC通信で認証が行なわれた場合の双方において許可される機能とされる。これにより、不要とされた通信のポーリングを停止することにより乗降用ドアの解施錠ができなくなる事態が回避される。
【0039】
なお、停止したポーリングは、所定のポーリング条件が成立した場合に再開される。ポーリング条件は、たとえば、作動していたエンジン24が停止し、イグニッションキー等がオフ操作されてReady-Off状態となり、搭乗者が降車してドアが施錠された場合等に成立するものとすることができる。
【0040】
図2は、車両10のBLE通信機14及びNFC通信機12によるポーリングの一例を示すタイミングチャートである。図2を参照して、時刻t1以前にポーリング条件が成立しており、時刻t1~t2の間、BLE通信機14及びNFC通信機12の各々から周囲に向けてリクエスト信号が発信されている。
【0041】
なお、このようなリクエスト信号は、時刻t1以前においても、ポーリング条件の成立後は一定期間毎に発信されている。なお、この例では、BLE通信機14によるポーリング(以下「BLEポーリング」と称する場合がある。)と、NFC通信機12によるポーリング(以下「NFCポーリング」と称する場合がある。)とは同期しているが、BLEポーリングとNFCポーリングとは、必ずしも同期している必要はなく、リクエスト信号の長さも必ずしも同じである必要はない。
【0042】
時刻t4において、通信可能範囲の広いBLE通信において、リクエスト信号に応答して携帯機器50のBLE通信機54から送信されたレスポンス信号がBLE通信機14により受信され、当該レスポンス信号に含まれるID情報の照合が行なわれる(「認証中」)。そして、時刻t5において、携帯機器50の認証が完了すると、無線コントローラ16は、NFC停止指令をNFC通信機12へ出力することによりNFCポーリングを停止する。これにより、BLE通信において認証が完了した後は、ポーリングに伴なう暗電流を低減することができる。
【0043】
図3は、車両10のBLE通信機14及びNFC通信機12によるポーリングの他の例を示すタイミングチャートである。この図3では、携帯機器50の電源がオフされている場合(バッテリ切れ等)の例が示される。
【0044】
図3を参照して、この例でも、時刻t11以前にポーリング条件が成立しており、時刻t11~t12の間、BLE通信機14及びNFC通信機12の各々から周囲に向けてリクエスト信号が発信されている。また、リクエスト信号は、時刻t11以前においても、ポーリング条件の成立後は一定期間毎に発信されている。
【0045】
この例では、携帯機器50の電源がオフされているので、BLE通信機54が停止しており、BLEポーリングに対してBLE通信機54からレスポンス信号が送信されない。そして、利用者が車両10にさらに近づき、時刻t14において、NFC通信機12からのリクエスト信号に応答して携帯機器50のNFC通信機52から送信されたレスポンス信号がNFC通信機12により受信され、当該レスポンス信号に含まれるID情報の照合が行なわれる(「認証中」)。NFC通信機52は、バッテリ66からの給電を必要としないパッシブタイプの通信機であるので、携帯機器50の電源がオフであっても、車両10のNFC通信機12からのリクエスト信号に応答してNFC通信機12へレスポンス信号を送信することができる。
【0046】
そして、時刻t15において、携帯機器50の認証が完了すると、無線コントローラ16は、BLE停止指令をBLE通信機14へ出力することによりBLEポーリングを停止する。これにより、NFC通信において認証が完了した後は、ポーリングによる暗電流を低減することができる。
【0047】
図4は、車両10の無線コントローラ16により実行される処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0048】
図4を参照して、無線コントローラ16は、BLE通信機14及びNFC通信機12がポーリングを実行するためのポーリング条件が成立しているか否かを判定する(ステップS10)。ポーリング条件は、たとえば、作動していたエンジン24が停止し、車両10の状態がReady-Off状態となり、搭乗者の降車後にドアが施錠された場合等に成立するものとすることができる。ポーリング条件が成立していないときは(ステップS10においてNO)、リターンへ処理が移行される。
【0049】
ステップS10においてポーリング条件が成立しているものと判定されると(ステップS10においてYES)、無線コントローラ16は、BLE通信機14及びNFC通信機12の双方へポーリングの実行を指示する指令を出力する(ステップS20)。これにより、BLE通信機14及びNFC通信機12の各々は、周囲に対して一定期間毎にリクエスト信号を発信する。
【0050】
次いで、無線コントローラ16は、BLE通信機14,54間で通信が確立し、BLE通信を通じて携帯機器50の認証が完了したか否かを判定する(ステップS30)。具体的には、BLE通信機14からのリクエスト信号に応答して携帯機器50のBLE通信機54から送信されたレスポンス信号がBLE通信機14により受信され、当該レスポンス信号に含まれるID情報の照合結果に基づいて、携帯機器50の認証が完了したか否かが判定される。
【0051】
そして、ステップS30において、BLE通信を通じて携帯機器50の認証が完了したものと判定されると(ステップS30においてYES)、無線コントローラ16は、NFC通信機12によるポーリング(NFCポーリング)を停止する(ステップS40)。
【0052】
一方、ステップS30において、BLE通信機14,54間で通信が確立せず、携帯機器50の認証が完了していないと判定されると(ステップS30においてNO)、無線コントローラ16は、NFC通信機12,52間で通信が確立し、NFC通信を通じて携帯機器50の認証が完了したか否かを判定する(ステップS50)。具体的には、NFC通信機12からのリクエスト信号に応答して携帯機器50のNFC通信機52から送信されたレスポンス信号がNFC通信機12により受信され、当該レスポンス信号に含まれるID情報の照合結果に基づいて、携帯機器50の認証が完了したか否かが判定される。
【0053】
そして、ステップS50において、NFC通信を通じて携帯機器50の認証が完了したものと判定されると(ステップS50においてYES)、無線コントローラ16は、BLE通信機14によるポーリング(BLEポーリング)を停止する(ステップS60)。
【0054】
なお、BLE通信で認証が完了せず(ステップS30においてNO)、NFC通信で認証が完了する場合とは(ステップS50においてYES)、図3で説明したように、携帯機器50の電源がオフされているためにBLE通信が不可である場合のバックアップとしてNFC通信が用いられる場合に相当する。
【0055】
なお、ステップS50において、NFC通信機12,52間で通信が確立せず、携帯機器50の認証が完了していないと判定されると(ステップS50においてNO)、リターンへ処理が移行される。
【0056】
なお、上記では、ステップS30においてBLE通信についての接続及び認証が完了したか否かが判定され、ステップS30においてNOと判定された場合に、ステップS50においてNFC通信についての接続及び認証が完了したか否かが判定されるものとしたが、これらの処理は、逆順であってもよいし、並列であってもよい。
【0057】
すなわち、特に図示しないが、ステップS20の処理の実行後、無線コントローラ16は、NFC通信の接続及び認証が完了したか否かを判定し、NFC通信の接続及び認証が完了していないと判定された場合に、BLE通信の接続及び認証が完了したか否かを判定するようにしてもよい。そして、NFC通信の接続及び認証が完了したものと判定された場合にBLEポーリングを停止し、また、BLE通信の接続及び認証が完了したものと判定された場合にNFCポーリングを停止するようにしてもよい。
【0058】
また、ステップS20の処理の実行後、無線コントローラ16は、ステップS30の処理とステップS50の処理とを、並列に実行してもよいし、さらには同時に実行してもよい。そして、ステップS30においてYESと判定された場合に、ステップS40においてNFCポーリングを停止し、ステップS50においてYESと判定された場合に、ステップS60においてBLEポーリングを停止するようにしてもよい。
【0059】
以上のように、本実施の形態においては、BLE通信機14,54間の通信が確立し、BLE通信において携帯機器50の認証が完了した場合には、バックアップ用のNFC通信は不要になるため、NFC通信機12によるポーリングを停止させる。一方、携帯機器50の電源がオフされていたために、BLE通信機14,54間の通信が確立せず、バックアップ用のNFC通信において携帯機器50の認証が完了した場合には、BLE通信機14のポーリングを停止させる。したがって、本実施の形態によれば、ポーリングによる暗電流を低減することができる。
【0060】
なお、上記の実施の形態では、車両10は、エンジン24を搭載する車両としたが、本開示の射程範囲は、エンジンを搭載した車両に限定されず、エンジンを搭載しない電気自動車や燃料電池車等も含む。
【0061】
また、上記の実施の形態では、NFC通信機52は、携帯機器50に搭載されるものとしたが、NFC通信機52は、携帯機器50とは別の、電源を持たないカード等に搭載されてもよい。また、上記では、NFC通信機52は、NFC通信機12からの電波によって作動するパッシブタグ(ICタグ)を含んで構成されるものとしたが、NFC通信機52は、パッシブタイプのものに限定されず、バッテリ66から電力を受けて作動するものであってもよい。
【0062】
また、上記の実施の形態では、車両10において、無線コントローラ16は、車両制御装置20とは別に設けられるものとしたが、無線コントローラ16の機能を車両制御装置20が備えてもよい。
【0063】
また、上記の実施の形態において、BLE通信機14,54に代えて、超広帯域無線(UWB(Ultra Wide Band))通信の規格に従う通信方式を用いて無線通信を行なうUWB通信機を車両10及び携帯機器50の双方に備えてもよい。また、BLE通信機14,54に加えて、車両10及び携帯機器50の双方にUWB通信機を備えてもよい。
【0064】
また、上記の実施の形態では、NFC通信機12、BLE通信機14、及び無線コントローラ16は、車両10に搭載されるものとしたが、本開示の射程範囲は、車両に搭載される無線通信装置に限定されるものではない。たとえば、NFC通信機12、BLE通信機14、及び無線コントローラ16が住宅や宅配BOXに設けられ、住宅や宅配BOXのドアの解施錠を行なうキーとして携帯機器50が用いられてもよい。
【0065】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0066】
以上に説明した例示的な形態は、以下の態様の具体例である。
一態様における無線通信装置は、互いに異なる通信方式を用いて無線通信を行なう複数の通信機と、複数の通信機を制御するコントローラとを備える。各通信機は、無線通信可能な携帯機器を検知するためのポーリングと、ポーリングにより検知された携帯機器の認証とを行なうように構成される。コントローラは、複数の通信機のうちのいずれかにおいて認証が完了した場合に、残余の通信機によるポーリングを停止する。
【0067】
また、一態様における無線通信システムは、無線通信装置と、無線通信装置と無線通信を行なう携帯機器とを備える。無線通信装置は、互いに異なる通信方式を用いて無線通信を行なう複数の通信機と、複数の通信機を制御するコントローラとを含む。各通信機は、携帯機器を検知するためのポーリングと、ポーリングにより検知された携帯機器の認証とを行なうように構成される。コントローラは、複数の通信機のうちのいずれかにおいて認証が完了した場合に、残余の通信機によるポーリングを停止する。
【0068】
上記の無線通信装置及び無線通信システムでは、複数の通信機のうちのいずれかにおいて携帯機器の認証が完了した場合には、残余の通信機と当該携帯機器との通信は不要になるため、残余の通信機によるポーリングを停止させる。これにより、ポーリングに伴なう暗電流を低減することができる。
【0069】
複数の通信機は、NFC規格に従う通信方式を用いるNFC通信機と、NFC規格と異なる無線通信規格に従う通信方式を用いる少なくとも1つの通信機とを含むものであってもよい。そして、コントローラは、少なくとも1つの通信機のいずれかにおいて認証が完了した場合に、NFC通信機によるポーリングを停止してもよい。
【0070】
また、少なくとも1つの通信機は、BLE通信規格に従う通信方式を用いるBLE通信機と、UWB通信規格に従う通信方式を用いるUWB通信機との少なくとも一方を含んでもよい。
【0071】
NFC規格に従う通信方式の通信可能範囲は、BLE通信規格或いはUWB通信規格に従う通信方式の通信可能範囲よりも狭いけれども、NFC規格に従う通信方式は、電源が不要なパッシブタイプであるため、上記の態様では、NFC通信機は、BLE通信機又はUWB通信機のバックアップとして用いられる。そして、上記の態様によれば、BLE通信機又はUWB通信機において認証が完了した場合に、バックアップ用のNFC通信機によるポーリングを停止するので、ポーリングによる暗電流を低減することができる。
【0072】
なお、各通信機において認証により許可される機能の少なくとも一部は、残余の通信機において認証により許可される機能の少なくとも一部と重複していればよい。
【0073】
これにより、ポーリングが停止される通信機において認証により許可される機能が全て実施不可となる事態が回避される。
【0074】
無線通信装置は、車両に搭載され、各通信機において認証により許可される機能は、携帯機器を用いた車両のドアの解錠及び施錠を含んでもよい。
【0075】
これにより、ある通信機によるポーリングが停止され、その通信機を用いた通信が行なわれなくなっても、通信及び認証に用いられた他の通信機を通じて、携帯機器を用いて車両のドアの解錠及び施錠を行なうことができる。
【符号の説明】
【0076】
10 車両、12,52 NFC通信機、14,54 BLE通信機、16 無線コントローラ、18,60 メモリ、20 車両制御装置、22 ドアロック装置、24 エンジン、26,66 バッテリ、50 携帯機器、56 制御装置、58 CPU、62 入力装置、64 表示装置。
図1
図2
図3
図4