(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】昇降機の手動ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
B66B 11/08 20060101AFI20231011BHJP
F16D 49/10 20060101ALI20231011BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20231011BHJP
F16D 121/14 20120101ALN20231011BHJP
F16D 125/28 20120101ALN20231011BHJP
F16D 127/06 20120101ALN20231011BHJP
【FI】
B66B11/08 G
F16D49/10
F16D65/18
F16D121:14
F16D125:28
F16D127:06
(21)【出願番号】P 2020056062
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大竹 由行
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-032354(JP,U)
【文献】特開昭60-157485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/08
F16D 49/10
F16D 65/18
F16D 121/14
F16D 125/28
F16D 127/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源が搭載されたケージを備え、構築物に垂直に敷設されたラックレールにスプロケットを噛み合わせて昇降する昇降機の手動ブレーキ装置であって、
前記ケージのフレームに支持された前記スプロケットの駆動軸に固着されるVプーリと、
前記Vプーリに対向して前記ケージのフレームに固定されケージ内に設けられるブレーキ操作体と
一端が前記ケージのフレームに固定され中間が前記Vプーリに掛けられ、他端が前記ブレーキ操作体に接続されるVベルトとを具備し、
前記ブレーキ操作体は、前記ケージのフレームに固定されるガイド部材と、一端が前記Vベルトの他端に接続され前記Vベルトを引き締める拘束位置と当該Vプーリを弛緩させる解放位置との間を移動自在に前記ガイド部材に支持されるブレーキシャフトと、当該ブレーキシャフトを拘束位置へ付勢するばねと、当該ブレーキシャフトの他端側に位置して前記ガイド部材に基端側が枢支され先端を上方へ向けて起立した非動作位置と前方へ転倒した動作位置との間を回転操作可能に設けられるハンドルとを具備し、
前記ハンドルは、非動作位置から動作位置までの回転に伴って前記ブレーキシャフトを解放位置から拘束位置へ押動させるように前記ブレーキシャフトの他端面に転接するカムローラを具備し、
前記カムローラは、前記ハンドルが転倒した動作位置において前記ブレーキシャフトを解放してばね力で拘束位置に配置し、前記ハンドルが動作位置から非動作位置へ回動する間に前記ブレーキシャフトを下死点を越えて解放側へ押動させ、当該下死点をわずかに越えた位置においてばね力で前記ハンドルを
起立した非動作位置に保持するように配置されることを特徴とする昇降機の手動ブレーキ装置。
【請求項2】
前記ブレーキシャフトは、一端側にねじ筒部を具備し、当該ねじ筒部に長さ調整自在に螺合されるねじ棒部を有する引き手部材を介して前記Vベルトの他端側に接続されることを特徴とする請求項1に記載の昇降機の手動ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのような駆動源が搭載されたケージを備え、構築物に垂直に敷設されたラックレールにスプロケットを噛み合わせて昇降する昇降機の手動ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動巻き上げ式の昇降機においては、電動機により軸を介して駆動される巻上機の駆動綱車に主索が巻き掛けられ、主索の一端にかご、他端につり合いおもりが結合される。電動機の軸にブレーキ車が固定され、これが電磁ブレーキにより制動される。電磁ブレーキは、ブレーキ車に摩擦力を作用させるブレーキシューと、これをブレーキ車側に付勢するばねと、ブレーキシューを駆動するブレーキコイルとを備えており、ブレーキコイルの消勢時に、ブレーキシューがばねの力でブレーキ車に圧接して制動力を与え、ブレーキコイルの付勢時には、ブレーキシューがブレーキ車から離れて制動力を解除するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のブレーキ装置は、電磁力により起動するものであるが、本発明は、かご内に電源を有しない昇降機に適用できる電磁力によらないブレーキ装置であって、起動操作が容易で緊急時に確実に制動できる手動式のブレーキ装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明のブレーキ装置1は、ケージに駆動源であるエンジンを搭載し、構築物に垂直に敷設されたラックレールにスプロケットSを噛み合わせて昇降する昇降機の手動ブレーキ装置であって、スプロケットSの駆動軸Dに固着されるVプーリ2と、これに対向してケージ内に設けられるブレーキ操作体3と、一端がフレームFに固定され中間がVプーリ2に掛けられ、他端がブレーキ操作体3に接続されるVベルト4とを具備する。ブレーキ操作体3は、フレームFに固定されるガイド部材5と、一端がVベルト4の他端に接続され、これを引き締める拘束位置と弛緩させる解放位置との間を移動自在にガイド部材5に支持されるブレーキシャフト6と、これを拘束位置へ付勢するばね7と、ガイド部材5に基端側が枢支され先端を上方へ向けて起立した非動作位置と前方へ転倒した動作位置との間を回転操作可能に設けられるハンドル8とを具備する。ハンドル8は、非動作位置から動作位置までの回転に伴ってブレーキシャフト6を解放位置から拘束位置へ押動させるようにブレーキシャフト6の他端面に転接するカムローラ8aを具備する。カムローラ8aは、ハンドル8が転倒した動作位置においてブレーキシャフト6を解放してばね力でこれを拘束位置に配置し、ハンドル8が動作位置から非動作位置へ回動する間にブレーキシャフト6を下死点を越えて解放側へ押動させ、下死点をわずかに越えた位置においてばね力でハンドル8を起立した非動作位置に保持するように配置される。
【発明の効果】
【0006】
本発明のブレーキ装置1は、緊急に昇降機を停止させたいとき、起立したハンドル8を引き倒すという単純な操作で瞬時にブレーキを起動させることができ、またブレーキの動作状態をハンドル転倒、起立を目視することで容易に確認できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】
図1のブレーキ装置におけるブレーキ操作体の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
ブレーキ装置1は、ケージに駆動源であるエンジンを搭載し、構築物に垂直に敷設されたラックレールにスプロケットSを噛み合わせて昇降する昇降機の手動ブレーキ装置である。
【0009】
ブレーキ装置1は、スプロケットSの駆動軸Dに固着されるVプーリ2と、これに対向してフレームFに固着されるブレーキ操作体3と、一端がフレームFに固定され中間がVプーリ2に掛けられ、他端がブレーキ操作体3に接続されるVベルト4とを具備する。
【0010】
ブレーキ操作体3は、フレームFに固定されるガイド部材5と、これに移動自在に支持されるブレーキシャフト6と、ガイド部材5内でブレーキシャフト6を付勢するばね7と、ガイド部材5に基端側が枢支されるハンドル8とを具備する。
【0011】
ガイド部材5は、円筒状の本体5aと、その両端のフランジ5b、5cとを具備し、一方のフランジ5bにおいてフレームFに固着される。他端のフランジ5bにブラケット5dが固着される。
【0012】
ブレーキシャフト6は、一端側にねじ筒部6a、他端側にばね受けフランジ6bを有し、フランジ6b側がガイド部材5内に軸方向移動自在に挿入される。ねじ筒部6a側はフレームfを自由に貫通してVプーリ2側に突出している。ねじ筒部6aは、引き手金具9を介してVベルト4の他端に接続される。
【0013】
引き手金具9は、Vベルト4に接続されるブラケット部9aとブレーキシャフト6のねじ筒部6aに深さ調整自在に螺挿されるねじ棒部9bとを具備する。
【0014】
ガイド部材本体5a内に挿入されたばね7は、一端がガイド部材本体5aに係止され、他端がブレーキシャフト6のフランジ6bに当接している。したがって、ブレーキシャフト6は、ばね7により、Vベルト4を引き締める拘束位置に付勢される。
【0015】
ハンドル8は、基端側において枢ピン10でブラケット6dに枢支され、先端を上方へ向けて起立した非動作位置と前方へ転倒した動作位置との間を回転操作可能に設けられる。
【0016】
ハンドル8は、非動作位置から動作位置までの回転に伴ってブレーキシャフト6のフランジ6b面に転接するカムローラ8aを具備する。カムローラ8aは、ハンドル8が非動作位置から動作位置までの回転する間に、ブレーキシャフト6を解放位置から拘束位置へ押動させる。ハンドル8は、転倒した動作位置において、ブレーキシャフト6を解放してばね力でこれを拘束位置に配置する。ハンドル8が動作位置から非動作位置へ回動する間に、枢ピン10の中心とカムローラbの中心とを結ぶ直線がブレーキシャフト6の軸線と平行となる死線を越え、すなわちブレーキシャフト6が下死点となる位置を越えてブレーキシャフト6を解放位置側へ押動させ、その位置においてハンドル8が起立した非動作位置に保持される。
【0017】
このブレーキ装置1は、昇降機落下時の緊急ブレーキあるいは停止作業時の定置用ブレーキとして使用される。緊急時には、起立しているハンドル8を死線Aを越えて前方へ転倒させる単純な操作により瞬時に起動させることができる。起動後の復旧も容易である。また、ハンドルの起立、転倒状態により、ブレーキの作動状態が一目で確認できる。
【符号の説明】
【0018】
1 ブレーキ装置
2 Vプーリ
3 ブレーキ操作体
4 Vベルト
5 ガイド部材
5a ガイド部材の本体
5b フランジ
5c フランジ
5d ブラケット
6 ブレーキシャフト
6a ねじ筒部
6b フランジ部
7 ばね
8 ハンドル
8a カムローラ
9 引き手金具
9a ブラケット部
10 枢ピン
D 駆動軸
S スプロケット