(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】床付き布わく
(51)【国際特許分類】
E04G 5/08 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
E04G5/08 Q
E04G5/08 B
(21)【出願番号】P 2020079185
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501415659
【氏名又は名称】JFE機材フォーミング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 潔
(72)【発明者】
【氏名】三宅 英徳
(72)【発明者】
【氏名】松岡 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】長岐 大三
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05141078(US,A)
【文献】特許第6683877(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00-7/34
E04G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の短辺縁部および一対の長辺縁部にて取り囲まれた区画領域を、歩行経路あるいは作業面とする床板材と、該床板材の長辺縁部にその全長にわたってそれぞれ垂下保持される一対の布材と、後端部が該床板材の短辺縁部につながる一対のはり材と、該床板材の四隅において該布材に取り付けられ、横架材に引っ掛けることにより該床板材を、該布材、該はり材とともに水平姿勢に保持するつかみ金具とを備えた床付き布わくであって、
前記はり材は、先端部が該床板材の外方へ向けて延出する上側フランジと、該上側フランジを上端部において支持するウエブとを有し、
該ウエブの背面壁に、該布材において固定される連結部材を嵌入させて該はり材を床板材の短辺縁部において連結させる嵌入空間を設け
、
前記上側フランジは、先端部が該床板材の外方へ向けて延出するフランジ本体と、フランジ本体の後端部につながり、該床板材の下面に位置する片持ち舌片からなることを特徴とする床板付き布わく。
【請求項2】
前記嵌入空間は、C形またはО形断面をなす環状体の内部に形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載した床付き布わく。
【請求項3】
前記連結部材は、つかみ金具を布材に固定する連結ボルトであることを特徴とする請求項1または2に記載した床付き布わく。
【請求項4】
一対の短辺縁部および一対の長辺縁部にて取り囲まれた区画領域を、歩行経路あるいは作業面とする床板材と、該床板材の長辺縁部にその全長にわたってそれぞれ垂下保持される一対の布材と、後端部が該床板材の短辺縁部につながる一対のはり材と、該床板材の四隅において該布材に取り付けられ、横架材に引っ掛けることにより該床板材を、該布材、該はり材とともに水平姿勢に保持するつかみ金具とを備えた床付き布わくであって、
前記はり材は、先端部が該床板材の外方へ向けて延出する上側フランジと、該上側フランジを上端部において支持するウエブとを有し、
該ウエブの背面壁に、該布材において固定される連結部材を嵌入させて該はり材を床板材の短辺縁部において連結させる嵌入空間を設け、
前記嵌入空間は、ウエブの背面壁と、該背面壁に隙間を隔てて設けられた壁体との相互間に形成されたものであることを特徴とす
る床付き布わく。
【請求項5】
前記壁体は、前記ウエブの背面壁の上部に位置する垂下片と、該ウエブの背面壁の下部に位置する起立片からなることを特徴とする請求項4に記載した床付き布わく。
【請求項6】
前記連結部材は、一方が嵌入空間に嵌入され、他方が、つかみ金具を布材に連結する連結ボルトを介して該布材に連結されるL型形状をなす板状片からなることを特徴とする請求項4または5に記載した床付き布わく。
【請求項7】
前記はり材は、前記ウエブの下端につながり、前記床板材に設けられた脚部の末端フランジ部に位置する下側フランジを有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1
項に記載した床付き布わく。
【請求項8】
該ウエブは、前記つかみ金具の内側壁部に近接若しくは当接させて該つかみ金具の倒れ込み変形を抑制する端面を有し、
前記上側フランジおよび前記ウエブは、幅方向の少なくとも一方の端部に、該上側フランジおよび該ウエブの一部分を取り除いて前記つかみ金具の内側壁部との相互間にて隣接配置される他の床付き布わくのつかみ金具の挿入隙間を形成する逃げ部を有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載した床付き布わく。
【請求項9】
前記上側フランジは、先端部が該床板材の外方へ向けて延出するフランジ本体と、フランジ本体の後端部につながり、該床板材の下面に位置する片持ち舌片からなることを特徴とする請求項
4~
6のいずれか1項に記載した床付き布わく。
【請求項10】
前記フランジ本体と前記片持ち舌片とが、段差を介してつながるものであることを特徴とする請求項9に記載した床付き布わく。
【請求項11】
前記段差は、前記床板材の厚さと同等の寸法を有することを特徴とする請求項10に記載した床付き布わく。
【請求項12】
前記片持ち舌片は、前記床板材に設けられた脚部の通り抜けを可能とするスリットを有することを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載した床付き布わく。
【請求項13】
一対の短辺縁部および一対の長辺縁部にて取り囲まれた区画領域を、歩行経路あるいは作業面とする床板材と、該床板材の長辺縁部にその全長にわたってそれぞれ垂下保持される一対の布材と、後端部が該床板材の短辺縁部につながる一対のはり材と、該床板材の四隅において該布材に取り付けられ、横架材に引っ掛けることにより該床板材を、該布材、該はり材とともに水平姿勢に保持するつかみ金具とを備えた床付き布わくであって、
前記はり材は、先端部が該床板材の外方へ向けて延出する上側フランジと、該上側フランジを上端部において支持するウエブとを有し、
該ウエブの背面壁に、該布材において固定される連結部材を嵌入させて該はり材を床板材の短辺縁部において連結させる嵌入空間を設け、
前記はり材は、前記ウエブの下端につながり、前記床板材に設けられた脚部の末端フランジ部に位置し、該末端フランジ部の上面に接地、固定させた下側フランジを有することを特徴とする床付き布わく。
【請求項14】
前記脚部の末端フランジ部に位置する下側フランジは、前記床板材に設けられた脚部の通り抜けを可能とするスリットを有することを特徴とする請求項7
、12または13のいずれか1項に記載した床付き布わく。
【請求項15】
一対の短辺縁部および一対の長辺縁部にて取り囲まれた区画領域を、歩行経路あるいは作業面とする床板材と、該床板材の長辺縁部にその全長にわたってそれぞれ垂下保持される一対の布材と、後端部が該床板材の短辺縁部につながる一対のはり材と、該床板材の四隅において該布材に取り付けられ、横架材に引っ掛けることにより該床板材を、該布材、該はり材とともに水平姿勢に保持するつかみ金具とを備えた床付き布わくであって、
前記はり材は、先端部が該床板材の外方へ向けて延出する上側フランジと、該上側フランジを上端部において支持するウエブとを有し、
該ウエブの背面壁に、該布材において固定される連結部材を嵌入させて該はり材を床板材の短辺縁部において連結させる嵌入空間を設け、
該ウエブは、前記つかみ金具の内側壁部に近接若しくは当接させて該つかみ金具の倒れ込み変形を抑制する端面を有し、
前記上側フランジおよび前記ウエブは、幅方向の少なくとも一方の端部に、該上側フランジのフランジ本体および該ウエブの一部分を取り除いて前記つかみ金具の内側壁部との相互間にて隣接配置される他の床付き布わくのつかみ金具の挿入隙間を形成する逃げ部を有することを特徴とする床付き布わく。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事現場等において構築される仮設足場の通路や作業床を形成するのに用いられる床付き布わくに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設工事現場等の仮設足場の通路や作業床を形成するのに使用される床付き布わくとしては、特許文献1に見られるように、床板材と、布材と、該床板材の両端に取り付けられるはり材と、該はり材または布材に固定され、床板材の四隅から長手方向の外方へ向けて突出させたつかみ金具とで構成されたものが使用されている。
【0003】
かかる床付き布わくは、つかみ金具を、支柱に設けられた横架材に引っ掛けることにより床材を水平姿勢に保持して通路や作業床を形成するものであるが、はり材は、溶接施工等の煩雑な作業により床板材に固定されているのが普通であり、とくに、床付き布わくの軽量化を図るべく、アルミニウムあるいはアルミニウム合金を素材とした床付き布わくの製造においては、所定の接合強度を確保するために接合長さをより長くする等の煩雑な作業が必要であって、床付き布わくの効率的な製造が困難なものになっていた。
【0004】
この点に関する先行文献として、特許文献2には、はり材を、リベットやボルトを用いて床板材に連結する足場板が開示されている。しかしながら、特許文献2に開示された足場板もリベットの打ち込みや連結ボルトの取り付けを複数個所において行うのが不可欠であり、その製造に際しては煩雑な作業が伴うことから、溶接施工を施して床付き布わくを製造する製造方式と何らかわるところがなく、しかも、リベットやボルトの頭部は床板材の表面に露出することから躓きの原因にもなることも懸念され、足場板としては有用なものとはいえないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭60-1840号公報
【文献】特開昭57-71961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、溶接施工等の煩雑な作業を伴ったり、躓きの原因となる凸部が形成されることなしにはり材を床板材に高い強度のもとにつなぎ合わせることができる床付き布わくを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一対の短辺縁部および一対の長辺縁部にて取り囲まれた区画領域を、歩行経路あるいは作業面とする床板材と、該床板材の長辺縁部にその全長にわたってそれぞれ垂下保持される一対の布材と、後端部が該床板材の短辺縁部につながる一対のはり材と、該床板材の四隅において該布材に取り付けられ、横架材に引っ掛けることにより該床板材を、該布材、該はり材とともに水平姿勢に保持するつかみ金具とを備えた床付き布わくであって、
前記はり材は、先端部が該床板材の外方へ向けて延出する上側フランジと、該上側フランジを上端部において支持するウエブとを有し、
該ウエブの背面壁に、該布材において固定される連結部材を嵌入させて該はり材を床板材の短辺縁部において連結させる嵌入空間を設けたことを特徴とする床板付き布わくである。
【0008】
上記の構成からなる床付き布わくにおいて、
1)前記嵌入空間は、C形またはО形断面をなす環状体の内部に形成されたものであること、
2)前記連結部材は、つかみ金具を布材に固定する連結ボルトであること、
3)前記嵌入空間は、ウエブの背面壁と、該背面壁に隙間を隔てて設けられた壁体との相互間に形成されたものであること、
4)前記壁体は、前記ウエブの背面壁の上部に位置する垂下片と、該ウエブの背面壁の下部に位置する起立片からなること、
5)前記連結部材は、一方が嵌入空間に嵌入され、他方が、つかみ金具を布材に連結する連結ボルトを介して該布材に連結されるL型形状をなす板状片からなること、
6)前記はり材は、前記ウエブの下端につながり、前記床板材に設けられた脚部の末端フランジ部に位置する下側フランジを有すること、
7)前記ウエブは、前記つかみ金具の内側壁部に近接若しくは当接させて該つかみ金具の倒れ込み変形を抑制する端面を有し、前記上側フランジおよび前記ウエブは、幅方向の少なくとも一方の端部に、該上側フランジおよび該ウエブの一部分を取り除いて前記つかみ金具の内側壁部との相互間にて隣接配置される他の床付き布わくのつかみ金具の挿入隙間を形成する逃げ部を有すること、
8)前記上側フランジは、先端部が該床板材の外方へ向けて延出するフランジ本体と、フランジ本体の後端部につながり、該床板材の下面に位置する片持ち舌片からなること、
9)前記フランジ本体と前記片持ち舌片とが、段差を介してつながるものであること、
10)前記段差は、前記床板材の厚さと同等の寸法を有すること、
11)前記片持ち舌片は、前記床板材に設けられた脚部の通り抜けを可能とするスリットを有すること、さらに、
12)前記末端フランジ部に位置する下側フランジは、前記床板材に設けられた脚部の通り抜けを可能とするスリットを有すること、が課題解決のための手段として好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ウエブの背面壁に嵌入空間を設け、この嵌入空間に布材において固定される連結部材を嵌入させて該はり材を床板材の短辺縁部に連結させることにより、溶接の施工、多数のリベットやボルトの設置またはリベットやボルトの頭部が床板材の表面に露出することなしにはり材を床板材に確実に固定することができる。
【0010】
また、本発明によれば、はり材に、床板材に設けられた脚部の末端フランジ部に位置する下側フランジを設けたことにより、はり材の、床板材に対する接触点が増加されるため取り付け姿勢が安定化する。
【0011】
また、本発明によれば、はり材のフランジの先端部を床板材の外方へ向けて延出させることにより、床付き布わくを横架材に取り付けた際に該横架材とはり材との間に形成される隙間をなくすことができる。
【0012】
また、本発明によれば、フランジおよびこのフランジにつながるウエブの一部分に、つかみ金具の内側壁部との相互間にて隣接配置される他の床付き布わくのつかみ金具の挿入隙間を形成する逃げ部を設けるとともに、はり材のウエブを、つかみ金具の内側壁部に常に近接若しくは当接させることにより、つかみ金具に衝撃荷重が作用したとしても、その衝撃荷重を、ウエブ全体で受けることとなり、補強部材等の余計な部材を用いずともつかみ金具の倒れ込み変形を確実に回避することができる。
【0013】
また、本発明によれば,フランジを、先端部が該床板材の外方へ向けて延出するフランジ本体と、フランジ本体の後端部につながり、該床板の下面に位置する片持ち舌片からなるもので構成したことにより、はり材にその上面から荷重が付加されてモーメントが発生しても、片持ち舌片には床板材を下側から押し上げるような力が作用することとなり、連結部材に加わる力を緩和することができる。
【0014】
さらに、本発明によれば、片持ち舌片に、床板材に設けられた脚部の通り抜けを可能とするスリットを設けたことにより、該片持ち舌片にて脚部を支えることが可能となり、脚部の不用意な倒れ込みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明にしたがう床付き布わくの実施の形態を模式的に示した外観斜視図である。
【
図2】
図1に示した床付き布わくの正面を示した図である。
【
図3】
図1に示した床付き布わくの平面を示した図である。
【
図4】
図1に示した床付き布わくの底面を示した図である。
【
図5】
図1に示した床付き布わくの側面を示した図である。
【
図8】
図1に示した床付き布わくの分解状態を示した外観斜視図である。
【
図9】
図1に示した床付き布わくの分解状態を示した外観斜視図である。
【
図10】(a)~(e)は、はり材の正面、平面、底面、左側面、右側面をそれぞれ拡大して示した図である。
【
図12】(a)(b)は、本発明にしたがう床付き布わくの使用状態を平面および側面について示した図である。
【
図13】本発明にしたがう床付き布わくを構成するのに好適なはり材の他の例を示した外観斜視図である。
【
図14】本発明にしたがう床付き布わくを構成するのに好適なはり材の他の例を示した外観斜視図である。
【
図15】本発明にしたがう床付き布わくを構成するのに好適なはり材の他の例を示した外観斜視図である。
【
図16】
図15に示したはり材の取り付け状況を要部について示した図である。
【
図17】本発明にしたがう床付き布わくを構成するのに好適なはり材の他の例を示した外観斜視図である。
【
図18】
図17に示したはり材の取り付け要領の説明図である。
【
図19】
図17に示したはり材の取り付け要領の説明図である。
【
図20】本発明にしたがう床付き布わくを構成するのに好適なはり材の他の例を示した外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明にしたがう床付き布わくは、スチール、アルミニウム、アルミニウム合金等の素材を用いて構成することができるものであり、適用する素材についてはとくに限定されないが、床板材やはり材に、アルミニウムあるいはアルミニウム合金等の押出成型品を用いることにより、製造効率の改善、床付き布わくそのものの軽量化を図ることができる利点がある。
【0017】
図1は、本発明にしたがう床付き布わくの実施の形態を模式的に示した外観斜視図であり、
図2~5は、
図1に示した床付き布わくの正面、平面、底面および側面をそれぞれ示した図である。また、
図6は、
図3のA-A断面を示した図であり、
図7は、
図3のB-B端面を示した図であり、
図8、9は、
図1に示した床付き布わくにおいて、床板材からつかみ金具およびはり材を取り外すとともに、はり材、つかみ金具と床板材の一部分のみを分解状態を示した外観斜視図である。また、
図10(a)~(e)は、はり材の正面、平面、底面、左側面、右側面をそれぞれ拡大して示した図であり、
図11は、はり材の背面を拡大して示した図である。
【0018】
図1~11における符号1は、一対の短辺縁部A、Bおよび一対の長辺縁部C、Dにて取り囲まれた区画領域を歩行経路あるいは作業面とする床板材である。床板材1は、その下面に、幅方向に沿い間隔をおいて設けられた複数本の脚部1aを有しており、その下端には、末端フランジ部1bが形成されている。
【0019】
また、符号2は、床板材1の長辺縁部C、Dにその全長にわたってそれぞれ垂下保持される一対の布材である。布材2の上端部には、外方に向けて延出するとともに先端部に下向きに突出したリブ2aを有する上壁2bが設けられており、布材2の下端部には、外方に向けて上壁2bと平行に伸延するとともに先端部に上向きに突出したリブ2cを有する下壁2dが設けられている。
【0020】
また、符号3は、床板材1の短辺縁部A、Bにつながる一対のはり材、4は、床板材1の四隅において布材2に連結ボルトb、ナットb1によって取り付けられ、仮設足場を構成する横架材(図示せず)に引っ掛けることにより床板材1を、布材2、はり材3とともに水平姿勢に保持するつかみ金具である。つかみ金具4と布材2との間には、電蝕防止を目的としてアルマイトプレートを配置することができる。
【0021】
はり材3は、後端部が床板材1に固定され、先端部が床板材1の外方へ向けて延出する上側フランジ3aと、上端部が上側フランジ3aの少なくとも2箇所に一体的につながるY字状断面をなすウエブ3bから構成された、中空部Mを有するホロー構造からなっており(
図10(d)(e)参照)、ウエブ3bは、つかみ金具4の内側壁部4aに近接もしくは当接させて該つかみ金具4の倒れ込み変形を防止する端面3b1を有している(
図2、
図10(b)参照)。
【0022】
上側フランジ3aとしては、先端部が床板材1の外方へ向けて延出するフランジ本体3a1と、床板材1の厚さと同等の寸法を有する段差d1を介してフランジ本体3a1につながり、床板材1の下面に合わさって固定される片持ち舌片3a2からなるものを用いることができる(
図6、
図10(d)、(e)参照)。
【0023】
フランジ本体3a1については、片持ち舌片3a2につながる傾斜部と、この傾斜部につながり、片持ち舌片3a2の上面より1~5mmの範囲内で高くなる平坦部にて構成されたものを適用することができ、これにより、はり材3の直下に位置する横架材に傾斜補強材(図示せず)を設置するスペースを確保することが可能となる。
【0024】
また、符号5は、上側フランジ3a、ウエブ3bの幅方向の端部で該上側フランジ3aおよびウエブ3bの一部分を取り除くことにより形成された逃げ部である。この逃げ部5は、つかみ金具4との相互間にて隣接配置される他の床付き布わくのつかみ金具の挿入隙間を形成するものである(
図10(a)参照)。
【0025】
また、符号6は、上側フランジ3aの片持ち舌3a2に形成されたスリットである。このスリット6は、脚部1aをかわすように設けられたものであり、その端面が該脚部1aの両側面に位置して該脚部1aの倒れ込みを防止する機能を有している。
【0026】
また、符号7は、布材2の下壁2d、末端フランジ部1bの下面に設けられたリブ状の突起である。突起7は、床付き布わくの複数枚を積層する際の高さ調整と、床板材1、はり材3を押出成形する際等に平滑面で傷が発生するのを防止するために設けられる。
【0027】
また、8は、ウエブ3bの背面壁3b2に設けられた環状体である(
図10(d)(e)参照)。環状体8は、C形断面をなす本体部分8aと、該本体部分8aをウエブ3bに接続する接続片8bから構成されるものであって、布材2につかみ金具4を固定する連結ボルトb等の先端部分をその内部に嵌入させてナットb1をねじ込むことによってはり材3を床板材1の短辺縁部A、Bにおいて連結させる嵌入空間nを形成するものである。環状体8の本体部分8aは、ここでは、C形断面をなすものを例として示したが、連結ボルトbの先端部分を嵌入させることができるものであれば、該本体部分8aは、О形断面、三角や四角等多角形断面をなすものを適用することが可能でありその断面形状についてはとくに限定されない。環状体8は、はり材3の幅方向の全域に設けてもよいし、連結ボルトbを嵌入させる領域にのみ設けられるものであってもよい。
【0028】
本発明にしたがう床付き布わくは、環状体8、連結ボルトbを利用してはり材3を床板材1に機械的に連結するものであって、連結強度が高いだけでなく、溶接施工等の煩雑な作業を要しない。
【0029】
また、本発明にしたがう床付き布わくは、はり材3を構成する上側フランジ3aのフランジ本体3a1が床板材1の外方へ向けて延出しているため、
図12(a)(b)に示すように、横架材Sとはり材3との間には工具等の落下や歩行時の躓きの原因となる大きな隙間は形成されることはない利点がある。
【0030】
また、本発明にしたがう床付き布わくは、ウエブ3bの幅方向の端部が、つかみ金具4の内側壁部4aに常に近接あるいは当接させた状態に維持することができるため、床付き布わくの落下によりつかみ金具4に予期しない衝撃荷重が作用することがあったとしても、その衝撃荷重をウエブ3bの全体で受けることになり、つかみ金具4の内側への倒れ込み変形が抑制される。したがって、新たに補強部材等を設ける必要がない。
【0031】
はり材3は、上側フランジ3aとウエブ3bとの間に中空部Mが形成されたホロー構造とするのが好ましく、これにより、はり材3そのものの剛性を重量増しを伴うことなしに高めることが可能で、それ自体が簡単に変形することがない。また、上側フランジ3aの片持ち舌片3a2を床板材1の下面で固定することにより、はり材3の先端部に荷重が付加されてそこを起点にしてモーメントが発生しても、床板材との接合部位にははり材が床板材から引き離されるような力は作用せず、逆に、片持ち舌片3a2が床板材1を押し上げる力が付与されることとなるため、溶接をせずとも十分な連結強度を確保し得る。
【0032】
とくに、床板材1、はり材3を、アルミニウムやアルミニウム合金等で構成したものにあっては、溶接接合部に所望の接合強度を付与する場合に、溶接長さをとりわけ長くすることが不可避となるが、本発明にしたがう床付き布わくは、溶接施工を不要することができるため床付き布わくを効率的な製造が可能となる。なお、はり材3と床板材1とを組み付ける際に、それらの部材の位置決めのために、仮付け程度の溶接を施すことができる。
【0033】
上側フランジン3aのフランジ本体3a1と片持ち舌片3a2とは、床板材1の厚さと同等の寸法を有する段差d1を介してつながるものを例として示したが、段差d1を設けておくことにより、はり材3と床板材1との連結部分は面一状態になるため、躓きを起こすような部位が形成されない利点がある。
【0034】
はり材3の表面には、滑り止め効果を高めるために、
図13に示すように、複数本のリブ9を形成しておくことができる。
【0035】
図14は、本発明にしたがう床付き布わくの他の実施の形態をはり材3について示した外観斜視図である。この例は、一方の布材2からもう一方の布材2にまで到達する長さを持った単一の連結ボルトbを用いてはり材3を床板材1の短辺縁部A、Bに固定する例を示したものである。このような構造の場合、脚部1aには、連結ボルトbを通すための孔を形成する必要があるが、はり材3をその幅方向の全域で床板材1に連結させることが可能で、連結強度をより一層高めることができる。なお、環状体8がこのような構造の場合、床板材1の脚部1aが環状体8の本体部分8aに接しないように、脚部1aの一部を切り欠く等して削除してもよい。
【0036】
図15は、はり材3のウエブ3bの下端に下側フランジ3cを設けた例である。下側フランジ3cには、脚部1aをかわすためのスリット6が形成されており、その組み付け状況を
図16に示すように、脚部1aの末端フランジ部1bの上面に接地、固定させることができるものである。下側フランジ3cを設けることにより、脚部1aは、下側フランジ3cによって支えられるため、脚部1aの不用意な倒れ込みを回避することができる。
【0037】
図17は、本発明にしたがう床付き布わくのさらに他の実施の形態をはり材3について示した外観斜視図である。この例は、嵌入空間nを、ウエブ3bの背面壁3b2とこの背面壁3b2に隙間を隔てて設けられた壁体3dとの相互間に形成したものである。
【0038】
壁体3dは、ウエブ3bの背面壁3b2の上部に位置する垂下片3d1と、該ウエブ3bの背面壁3b2の下部に位置する起立片3d2からなるもので構成することができるが、垂下片3d1と起立片3d2がつながった一枚ものの板材を用いてもよい。より具体的には、垂下片3d1を上側フランジ3aの片持ち舌片3a2に設け、ウエブ3bの背面壁3b2の下端に断面L字状の板材(起立片3d2)を設けることにより、壁体3dを形成することができる。
【0039】
かかる構造のはり材3は、
図18に示すように、一方が嵌入空間nに嵌入され、他方がつかみ金具4を布材2に連結する連結ボルトbを介して布材2に連結されるL形形状をなす板状片10を用いて
図19に示す如く床板材1の短辺縁部A、Bに取り付けるものであり、これによっても溶接による接合を不要とすることができる。
【0040】
L形形状をなす板状片10を用いて床板材1に取り付けるはり材3においても、
図20に示すように、ウエブ3bの下端部にスリット6が形成された下側フランジ3cを設けてもよく、該下側フランジ3cにより脚部1aの不用意な倒れ込みを回避し得る。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、溶接施工等の煩雑な作業を要することなしにはり材を床板材に高い強度のもとにつなぎ合わせることができる。
【0042】
また、本発明によれば、横架材とはり材との間に形成される隙間をなくすとともに、つかみ金具に予期しない衝撃荷重が作用したとしても、新たに補強部材を設けることなしにその倒れ込み変形を抑制することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 床板材
1a 脚部
1b 末端フランジ部
2 布材
2a リブ
2b 上壁
2c リブ
2d 下壁
3 はり材
3a 上側フランジ
3a1 フランジ本体
3a2 片持ち舌片
3b ウエブ
3b1 端面
3b2 背面壁
3c 下側フランジ
3d 壁体
3d1 垂下片
3d2 起立片
4 つかみ金具
4a 内側壁部
5 逃げ部
6 スリット
7 リブ状の突起
8 環状体
8a 本体部分
8b 接続片
9 リブ
10 板状片
A、B 短辺縁部
C、D 長辺縁部
M 中空部
S 横架材
n 嵌入空間
b 連結ボルト
b1 ナット
d1 段差