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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】電磁加速装置
(51)【国際特許分類】
   F41B 6/00 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
F41B6/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020089331
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183886
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 良之
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04319168(US,A)
【文献】特開平06-101994(JP,A)
【文献】特開2008-106957(JP,A)
【文献】特開2014-052092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
前記直流電源から直流電流が供給されることで励磁される電磁エネルギー蓄積用コイルと、
前記励磁された電磁エネルギー蓄積用コイルへの前記直流電流の供給を遮断したときに前記電磁エネルギー蓄積用コイルから自己誘導電流が供給されることで生じる誘導磁場によって、軸方向に加速対象の物体を加速する加速コイルと、を備える、
電磁加速装置。
【請求項2】
前記直流電源の両端間で、前記加速コイルと並列に接続される第1のスイッチと、
前記加速コイルと前記第1のスイッチとの間に、前記加速コイル及び前記第1のスイッチに対して並列に接続される第2のスイッチと、
前記第1のスイッチと前記直流電源との間に挿入される第3のスイッチと、を備え、
前記電磁エネルギー蓄積用コイルは、前記第1及び第2のスイッチと前記加速コイルとで構成される経路に挿入され、
前記第2及び第3のスイッチを閉じ、前記第1のスイッチを開いて、前記電磁エネルギー蓄積用コイルを励磁し、
前記電磁エネルギー蓄積用コイルを励磁した後に、前記第1のスイッチを閉じ、前記第2及び第3のスイッチを開くことで、前記電磁エネルギー蓄積用コイルから自己誘導電流が前記加速コイルに供給される、
請求項1に記載の電磁加速装置。
【請求項3】
前記直流電源の両端間で、直列接続された複数の前記加速コイルに対して並列に接続される第1のスイッチと、
前記複数の加速コイルそれぞれと並列に接続される複数の第2のスイッチと、
前記第1のスイッチと前記直流電源との間に挿入される第3のスイッチと、を備え、
前記電磁エネルギー蓄積用コイルは、前記第1のスイッチ、前記複数の第2のスイッチ及び前記複数の加速コイルで構成される経路に挿入され、
前記複数の第2のスイッチ及び前記第3のスイッチを閉じ、前記第1のスイッチを開いて、前記電磁エネルギー蓄積用コイルを励磁し、
前記電磁エネルギー蓄積用コイルを励磁した後に、前記第1のスイッチを閉じ、前記第3のスイッチを開き、前記複数の第2のスイッチのそれぞれを、順にかつ択一的に開くことで、前記電磁エネルギー蓄積用コイルから前記自己誘導電流が前記複数の加速コイルのそれぞれに順にかつ択一的に供給される、
請求項1に記載の電磁加速装置。
【請求項4】
前記複数の加速コイルのうちで前記物体の加速方向とは反対側の端に設けられた加速コイルに接続された前記第2のスイッチから、前記加速方向の側の端に設けられた加速コイルへ向けて、前記複数の第2のスイッチのそれぞれを順にかつ択一的に開くことで、
前記複数の加速コイルのうちで前記加速方向とは反対側の端に設けられた加速コイルから前記加速方向の側の端に設けられた加速コイルへ向けて、前記自己誘導電流が前記複数の加速コイルのそれぞれに順にかつ択一的に供給される、
請求項3に記載の電磁加速装置。
【請求項5】
前記複数の加速コイルのそれぞれに対応して設けられた、前記物体の通過を検出する複数のセンサと、
前記複数のセンサのそれぞれで検出された前記物体の通過に応じて、前記物体の通過を検出した前記センサに対応する前記加速コイルに接続された前記第2のスイッチを開くタイミングを制御する制御部と、をさらに備える、
請求項4に記載の電磁加速装置。
【請求項6】
nを2以上の整数として、
n+1個の前記電磁エネルギー蓄積用コイルが直列に接続され、
n個の前記第2のスイッチが、前記n+1個の前記電磁エネルギー蓄積用コイルのうちで隣接する2つの間のそれぞれに挿入される、
請求項3乃至5のいずれか一項に記載の電磁加速装置。
【請求項7】
前記直流電源、前記第1及び第3のスイッチ、前記複数の第2のスイッチ及び前記電磁エネルギー蓄積用コイルで構成される電流供給部が複数設けられ、
複数の前記電流供給部のうちで、同じ加速コイルに接続された前記第2のスイッチは、一定の時間差で開閉される、
請求項3乃至6のいずれか一項に記載の電磁加速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁加速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁力によって物体を加速する電磁加速装置として、コイルに時間的に変化する電流を流して磁場を発生させることで、導電体からなる物体を加速する、いわゆるコイルガンが知られている。
【0003】
こうしたコイルガンの一例として、金属製の飛翔体を加速する方向に複数の加速コイルを配列して、飛翔体を連続的に加速する構成が提案されている(非特許文献1及び2)。本構成では、飛翔体が加速コイルの中心部を通過したタイミングで、充電されたコンデンサから加速コイルに電流を流すことで加速コイルを急激に励磁すると、金属からなる飛翔体の底面に誘導電流が流れる。この誘導電流によって生じる磁場が加速コイルの通電によって生じる磁場と反発することで、飛翔体が加速される。この加速コイルを多段化することによって、飛翔体を高速度まで加速することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Zou Bengui, et.al., “Magnetic-Structural Coupling Analysis of Armature in Induction Coilgun”, IEEE Transactions on plasma science, vol.39, No.1, January 2011, pp.65-69.
【文献】Tao Zhang, et.al., “Design and Evaluation of the Driving Coil on Induction Coilgun”, IEEE Transactions on plasma science, vol.43, No.5, May 2015, pp.1203-1207.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の一般的なコイルガンでは、加速コイルへ電流を供給する電源としてコンデンサが用いられているので、加速コイルの電流の立ち上がり時間tは、加速コイルのインダクタンスLとコンデンサの容量Cとによって規定される(t=π√LC/2)。そのため、飛翔体が高速になると加速コイルの電流の立ち上がりを早くしなければならず、電流を供給するコンデンサの容量を小さくしなければならない。しかし、コンデンサの容量を小さくすると蓄積できるエネルギーが低下するため、充電電圧を高くしなければなない。
【0006】
上述したような加速コイルを多段化した構成においては、後段の加速コイルほど飛翔体が高速となる。よって、後段になるほど加速コイルへ電流を流すコンデンサの容量を小さくしなければならないという問題が有る。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、加速コイルでの電流の立ち上がり速度を向上させることで物体をより高速まで加速する電磁加速装置を提供することを目的とする。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様である電磁加速装置は、直流電源と、前記直流電源から直流電流が供給されることで励磁される電磁エネルギー蓄積用コイルと、前記励磁された電磁エネルギー蓄積用コイルへの前記直流電流の供給を遮断したときに前記電磁エネルギー蓄積用コイルから自己誘導電流が供給されることで生じる誘導磁場によって、軸方向に加速対象の物体を加速する加速コイルと、を有するものである。これにより、電磁エネルギー蓄積用コイルからの自己誘導電流を加速コイルに供給することで、加速コイルでの電流の立ち上がり速度を向上させることができる。
【0010】
本発明の第2の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、前記直流電源の両端間で、前記加速コイルと並列に接続される第1のスイッチと、前記加速コイルと前記第1のスイッチとの間に、前記加速コイル及び前記第1のスイッチに対して並列に接続される第2のスイッチと、前記第1のスイッチと前記直流電源との間に挿入される第3のスイッチと、を有し、前記電磁エネルギー蓄積用コイルは、前記第1及び第2のスイッチと前記加速コイルとで構成される経路に挿入され、前記第2及び第3のスイッチを閉じ、前記第1のスイッチを開いて、前記電磁エネルギー蓄積用コイルを励磁し、前記電磁エネルギー蓄積用コイルを励磁した後に、前記第1のスイッチを閉じ、前記第2及び第3のスイッチを開くことで、前記電磁エネルギー蓄積用コイルから自己誘導電流が前記加速コイルに供給されることが望ましい。これにより、スイッチのスイッチング速度程度の高速で加速コイルの電流を立ち上げることができる。
【0011】
本発明の第3の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、前記直流電源の両端間で、直列接続された複数の前記加速コイルに対して並列に接続される第1のスイッチと、前記複数の加速コイルそれぞれと並列に接続される複数の第2のスイッチと、前記第1のスイッチと前記直流電源との間に挿入される第3のスイッチと、を有し、前記電磁エネルギー蓄積用コイルは、前記第1のスイッチ、前記複数の第2のスイッチ及び前記複数の加速コイルで構成される経路に挿入され、前記複数の第2のスイッチ及び前記第3のスイッチを閉じ、前記第1のスイッチを開いて、前記電磁エネルギー蓄積用コイルを励磁し、前記電磁エネルギー蓄積用コイルを励磁した後に、前記第1のスイッチを閉じ、前記第3のスイッチを開き、前記複数の第2のスイッチのそれぞれを、順にかつ択一的に開くことで、前記電磁エネルギー蓄積用コイルから前記自己誘導電流が前記複数のコイルのそれぞれに順にかつ択一的に供給されることが望ましい。これにより、スイッチのスイッチング速度程度の高速で複数の加速コイルのそれぞれの電流を立ち上げることができる。
【0012】
本発明の第4の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、前記複数の加速コイルのうちで前記物体の加速方向とは反対側の端に設けられた加速コイルに接続された前記第2のスイッチから、前記加速方向の側の端に設けられた加速コイルへ向けて、前記複数の第2のスイッチのそれぞれを順にかつ択一的に開くことで、前記複数の加速コイルのうちで前記加速方向とは反対側の端に設けられた加速コイルから前記加速方向の側の端に設けられた加速コイルへ向けて、前記自己誘導電流が前記複数のコイルのそれぞれに順にかつ択一的に供給されることが望ましい。これにより、複数の加速コイルによって、物体を連続的に加速することが可能となる。
【0013】
本発明の第5の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、前記複数の加速コイルのそれぞれに対応して設けられた、前記物体の通過を検出する複数のセンサと、前記複数の加速センサのそれぞれで検出された前記物体の通過に応じて、前記物体の通過を検出した前記センサに対応する前記加速コイルに接続された前記第2のスイッチを開くタイミングを制御する制御部と、をさらに有する、これにより、複数の加速コイルによって、物体を連続的に加速することが可能となる。
【0014】
本発明の第6の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、nを2以上の整数として、n+1個の前記電磁エネルギー蓄積用コイルが直列に接続され、n個の前記第2のスイッチが、前記n+1個の前記電磁エネルギー蓄積用コイルのうちで隣接する2つの間のそれぞれに挿入されることが望ましい。これにより、電磁エネルギー蓄積用コイルの配置数を増やすことで、より大きな電磁エネルギーを蓄積することができる。
【0015】
本発明の第7の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、前記直流電源、前記第1及び第3のスイッチ、前記複数の第2のスイッチ及び前記電磁エネルギー蓄積用コイルで構成される電流供給部が複数設けられ、複数の前記電流供給部のうちで、同じ加速コイルに接続された前記第2のスイッチは、一定の時間差で開閉されることが望ましい。これにより、さらに大きな電磁エネルギーを蓄積して、より加速コイルに大電流を供給することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加速コイルでの電流の立ち上がり速度を向上させることで物体をより高速まで加速する電磁加速装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1にかかる電磁加速装置の基本的構成を模式的に示す図である。
図2】物体の加速の原理を模式的に示す図である。
図3】実施の形態1にかかる電磁加速装置のより詳細な構成を示す図である。
図4】電磁エネルギーを蓄積するときの電磁加速装置の回路図である。
図5】前段の加速コイルに電流を供給するときの電磁加速装置の回路図である。
図6】後段の加速コイルに電流を供給するときの電磁加速装置の回路図である。
図7】実施の形態2にかかる電磁加速装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
実施の形態1
実施の形態1にかかる電磁加速装置について説明する。図1に、実施の形態1にかかる電磁加速装置100の基本的構成を模式的に示す。以下、図においては、左手系直交座標系を用いる。図1では、紙面の左から右へ向かう水平方向をZ方向(Z軸)、紙面を下から上へ向かう鉛直方向をY方向(Y軸)、紙面の手前から奥側へ向かう紙面法線方向をX方向(X軸)としている。
【0020】
電磁加速装置100は、物体の加速方向Dに複数の加速コイルが配列された構成を有する。この例では、n個の加速コイルLA1~LAn(但し、nは、2以上の整数)が、Z軸を中心軸として、加速方向D(Z(+)方向)に並んで配列されている。電磁加速装置100は、n個の加速コイルLA1~LAnに電流を流した場合に生じる電磁力によって物体PRを加速する、反発型のコイルガンとして構成される。
【0021】
加速コイルLA1~LAnは、図示しないが、例えばZ軸を中心軸とする筒状部材の内側に設置してもよい。筒状部材は、加速コイルLA1~LAnを保持できる限り、円形、楕円形や、四角形を含む多角形などの、各種の形状としてもよい。また、筒状部材には、軽量化のための孔などを設けてもよい。また、加速コイルLA1~LAnは、筒状部材以外の任意の形状の部材によって保持されてもよい。
【0022】
図2に、物体PRの加速の原理を模式的に示す。図2では、一般化を行うため、加速コイルLA1~LAnのそれぞれに対応する加速コイルLAを表示している。物体PRが加速コイルLAに対して加速方向Dの側(図2のZ(+)側、すなわち右側)に位置している状態で加速コイルLAに電流Iを流すと、加速方向Dに沿って磁界Bが生じる。これにより、物体PRには、加速コイルLAによって生じた磁界を打ち消す方向の誘導電流ECが流れ、磁界Bと反対方向の磁界BAが生じる。その結果、物体PRには、加速コイルLAから遠ざかる方向、すなわち加速方向Dに、電磁力による斥力Fが生じる。
【0023】
本構成では、加速コイルLA1~LAnを用いて図2に示す加速を複数回繰り返すことで、効率的に物体PRを加速することができる。
【0024】
電磁加速装置100では、電磁エネルギー蓄積用コイルに蓄積された電磁エネルギーにより生じる自己誘導電流を加速コイルLA1~LAnに供給することで、物体PRを加速するように構成される。以下、電磁加速装置100の基本構成について説明する。
【0025】
電磁加速装置100は、加速コイルLA1~LAn、直流電源1、スイッチ2及び3、電磁エネルギー蓄積用コイルL0~Ln、スイッチS1~Snを有する。電磁加速装置100では、直流電源1、スイッチ2及び3、電磁エネルギー蓄積用コイルL0~Ln及びスイッチS1~Snが、加速コイルLA1~LAnに対して択一的に電流を供給する電流供給部10を構成している。
【0026】
上記したように、加速コイルLA1~LAnは、中心軸がZ軸と並行になるように、加速方向Dに並んで配列される。
【0027】
直流電源1の正極と負極との間には、スイッチ2(第3のスイッチとも称する)及び電磁エネルギー蓄積用コイルL0~Lnが、この順で直列に接続されている。
【0028】
kを1以上n以下の整数とすると、電磁エネルギー蓄積用コイルL(k-1)と電磁エネルギー蓄積用コイルLkとの間には、スイッチSkが挿入されている。
【0029】
電磁エネルギー蓄積用コイルL(k-1)とスイッチSkとの間のノードは加速コイルLAkの一端と接続され、電磁エネルギー蓄積用コイルLkとスイッチSkとの間のノードは加速コイルLAkの他端と接続されている。
【0030】
直流電源1の負極と、スイッチ2と電磁エネルギー蓄積用コイルL0との間のノードと、の間には、スイッチ3(第1のスイッチとも称する)が挿入される。
【0031】
スイッチS1~Sn(それぞれを第2のスイッチとも称する)の開閉は、制御信号C1~CnがスイッチS1~Snに与えられることで制御される。後述するように、制御信号C1~Cnは、例えば制御部によって与えられる。
【0032】
図1に示す構成は、電磁加速装置100の基本構成であり、電磁加速装置としての機能を満たすために望ましい素子や構成を付加することも可能である。図3に、実施の形態1にかかる電磁加速装置100のより詳細な構成を示す。
【0033】
図3に示す様に、スイッチSkは、並列接続された半導体スイッチMk及び金属接触式電磁継電器RLkで構成されてもよい。半導体スイッチMkとしては、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)やバイポーラトランジスタなどの各種のトランジスタを用いてもよい。また、半導体スイッチMkは、電磁加速装置100に設けられたコイルに流す電流の向きに応じて、適切な極性にて、電磁エネルギー蓄積用コイルL(k-1)と電磁エネルギー蓄積用コイルLkとの間に接続される。
【0034】
半導体スイッチMkは、金属接触式電磁継電器RLkと共に設けられ、半導体スイッチMkの抵抗損失を軽減した高速スイッチとして設けられている。半導体スイッチMkには、制御部4から制御信号Ckがパルス状の信号として与えられる。これにより、半導体スイッチMkを閉じたときに金属接触式電磁継電器RLkを閉じ、半導体スイッチMkを開いたときに金属接触式電磁継電器RLkを開くことができる。これにより、スイッチS1~Snを開閉することが可能となる。
【0035】
金属接触式電磁継電器RL1~RLnを用いてスイッチS1~Snのそれぞれを構成することで、スイッチS1~Snを通じて大きな電流を流すことができる。これにより、電磁エネルギー蓄積用コイルL0~Lnに大きな電流を流し、効率的に電磁エネルギーを蓄積することができる。
【0036】
また、図3に示すように、逆電流防止用のダイオードDA1~DAn及びDB1~DBnを設けてもよい。ダイオードDAkのアノードは電磁エネルギー蓄積用コイルL(k-1)と接続され、カソードは加速コイルLAkと接続される。ダイオードDBkは、アノードが電磁エネルギー蓄積用コイルLkと接続され、カソードが電磁エネルギー蓄積用コイルL(k-1)と接続される。
【0037】
さらに、加速コイルLA1~LAnの手前、すなわちZ(-)側に、物体PRの通過を検出するためのセンサ5_1~5_nをそれぞれ設けてもよい。センサ5_1~5_nは、加速方向Dへ向けて物体PRが通過したならば、それぞれタイミング信号T1~Tnを、制御部4へ出力する。制御部4は、タイミング信号T1~Tnに応じて制御信号C1~Cnの出力タイミングを制御することで、スイッチS1~Snのそれぞれを択一的に開くタイミングを制御する。これにより、加速コイルLA1~LAnのそれぞれに電流を供給するタイミングを制御することができる。
【0038】
以下、電磁加速装置100での加速動作について説明する。図4に、電磁エネルギーを蓄積するときの電磁加速装置100の回路図を示す。図4に示すように、電磁エネルギー蓄積用コイルL0~Lnに電磁エネルギーを蓄積するため、コイル励磁用のスイッチ2と、スイッチS1~Snと、を閉じ、電流環流用のスイッチ3を開く。これにより、電磁エネルギー蓄積用コイルL0~Lnに直流電流I1が流れて励磁され、電磁エネルギーが蓄積される。
【0039】
次に、電磁エネルギー蓄積用コイルL0~Lnに蓄積されたエネルギーによって加速コイルLA1~LAnに電流を供給する。図5に、加速コイルLA1に電流を供給するときの電磁加速装置100の回路図を示す。この場合、図5に示すように、電流環流用のスイッチ3を閉じ、コイル励磁用のスイッチ2を開く。これにより、直流電源1が回路から切り離され、かつ、電磁エネルギー蓄積用コイルL0~Lnが直列接続された状態のループ状の回路が構成される。この回路においては、直流電源1からの電流供給が遮断されたことで、電磁エネルギー蓄積用コイルL0~Lnによる自己誘導電流I2が生じる。この自己誘導電流I2は、直流電流I1と同じ方向の電流となる。
【0040】
この状態で、スイッチS1を開き、かつ、他のスイッチS2~Snを閉じたままとすると、加速コイルLA1に自己誘導電流I2が流れ、加速方向Dの向きの磁場B1が生じる。これにより、加速コイルLA1よりも加速方向Dの側に配置された物体PRは、上述したように斥力F1によって加速方向Dへ加速される。
【0041】
その後、物体PRが加速コイルLA2よりも加速方向Dの側へ移動したタイミングで、加速コイルLA2に電流を供給する。図6に、加速コイルLA2に電流を供給するときの電磁加速装置100の回路図を示す。図6に示すように、物体PRが加速コイルLA2よりも加速方向Dの側へ移動したタイミングでスイッチS1を閉じ、スイッチS2のみを開くことで、加速コイルLA2に自己誘導電流I2が流れ、加速方向Dの向きの磁場B2が生じる。これにより、加速コイルLA2よりも加速方向Dの側に位置する物体PRは、斥力F2によって加速方向Dへ更に加速される。
【0042】
その後も、物体PRが後段の各加速コイルよりも加速方向Dの側へ移動したタイミングで、各加速コイルに対応するスイッチのみを開き、他のスイッチを閉じることで、物体PRを加速することができる。
【0043】
本構成では、コイルに供給する電流(自己誘導電流I2)の立ち上がりを、スイッチS1~Snのスイッチング時間に依存する時間にまで高速化することができる。図3に示すように、スイッチとして半導体スイッチ用いる場合には、電流の立ち上がりを半導体スイッチの耐電圧特性で規定されるスイッチング時間まで高速化することが可能となる。
【0044】
これにより、加速コイルが前段及び後段のいずれに配置されているかにかかわらず、加速コイルに供給する電流が高速に立ち上がることが理解できる。かつ、コンデンサから電流を供給する場合と異なり、電流の立ち上がりがLC共振条件に制約されないので、一般的なコイルガンと比較して、物体をより高速まで加速することができる。
【0045】
また、各加速コイルへ概ね同じ大きさの電流を供給することができるので、各加速コイルによって物体PRに与えられる加速度を均一化することも可能である。
【0046】
スイッチS1~Snのそれぞれは、制御部4によって、所望のタイミングで開閉することができるので、物体PRの移動に応じて適切な加速コイルに電流を供給することができる。これにより、複数の加速コイルのそれぞれによって物体PRを連続的に加速することが可能となる。
【0047】
また、本構成では、加速コイルの電流が高速に立ち上がるので、誘導磁場も強くなり、より効率的に、かつ、より高速度まで物体を加速することができる。
【0048】
実施の形態2
実施の形態1においては、電磁エネルギー蓄積用コイルL0~Lnが一列に接続された電流供給部10が1つ設けられた電磁加速装置100について説明した。これに対し、本実施の形態では、電流供給部を並列配置することで、蓄積される電磁エネルギーを増加させことができる構成について説明する。
【0049】
図7に、実施の形態2にかかる電磁加速装置200の構成を模式的に示す。電磁加速装置200においては、電流供給部10と同様の構成を有するm個(mは、2以上の整数)の電流供給部10_1~10_mが並列配置されている。
【0050】
ここで、jを0以上m以下の整数とする。電流供給部10_jの直流電源1_j、スイッチ2_j、スイッチ3_j、電磁エネルギー蓄積用コイルL0_j~Ln_j、スイッチS1_j~Sn_j及びダイオードDA1_j~DAn_jは、それぞれ、電流供給部10の直流電源1、スイッチ2、スイッチ3、電磁エネルギー蓄積用コイルL0~Ln、スイッチS1~Sn及びダイオードDA1~DAnに対応している。
【0051】
また、電流供給部10_jには、加速コイルLAkと電磁エネルギー蓄積用コイルLk_jとの間に、逆電流防止用のダイオードDCk_jが設けられている。ダイオードDCk_jのアノードは加速コイルLAkと接続され、カソードは電磁エネルギー蓄積用コイルLk_jと接続される。
【0052】
スイッチS1_j~Sn_jには、制御部4から制御信号C1_j~Cn_jが与えられる。制御部4は、制御信号Ck_1~Ck_mによって、1つの加速コイルLAkに対応するスイッチSk_1~Sk_mを同時に開閉することで、m個の電流供給部10_1~10_mで生じた自己誘導電流を、1つの加速コイルLAkへ供給することができる。
【0053】
以上説明したように、本構成によれば、1つの加速コイルに対して、m個の電流供給部から電流を供給できるので、1つの加速コイルで発生する磁場を強くすることができる。これにより、物体をさらに高速度まで加速することができる。
【0054】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、加速コイルは、1つだけ設けられてもよく、2つ以上の複数が設けられてもよい。
【0055】
スイッチS1~Snの構成は、図3に例に限られず、各種の構成としてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 直流電源
2 スイッチ
3 スイッチ
4 制御部
100 電磁加速装置
C1~Cn 制御信号
D 加速方向
DA1~DAn、DB1~DBn ダイオード
EC 誘導電流
F 斥力
I 電流
I1 直流電流
I2 自己誘導電流
L0~Ln 電磁エネルギー蓄積用コイル
LA1~LAn 加速コイル
M1~Mn 半導体スイッチ
PR 物体
RL1~RLn 金属接触式電磁継電器
S1~Sn スイッチ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7