(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】持続放出医薬製剤及び治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/137 20060101AFI20231011BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231011BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20231011BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20231011BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20231011BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20231011BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20231011BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20231011BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
A61K31/137
A61K47/10
A61K9/28
A61K9/20
A61P25/22
A61P25/24
A61K47/38
A61K47/02
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2020520241
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(86)【国際出願番号】 IB2018057851
(87)【国際公開番号】W WO2019073408
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-08
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521400235
【氏名又は名称】ダグラス ファーマシューティカルズ エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ウィリアム・グルー
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー・ジューン・メディコット
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ウィリアム・サーマン
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-531913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/137
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)以下を含むコア:
i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容される塩、及びこれらの組み合わせ
からなる群から選択される、治療的に有効量の活性薬剤;
ii)62℃~90℃で硬化され
た少なくとも1種の高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)、ここで、前記高分子量PEOは、レオロジー測定法に基づいて200万~700万の分子量を有し、
前記コアの少なくとも30%(重量で)を占める;
(B)前記コア上のコーティング
を含む、固形の経口持続放出医薬錠剤であって、
前記錠剤は、耐破砕性であり、少なくとも200Nの破壊強度を有し、そして、前記錠剤は、10重量%~20重量%の濃度で活性薬剤を含む、
錠剤。
【請求項2】
前記高分子量PEOの分子量が、少なくとも4,000,000、少なくとも5,000,000、少なくとも6,000,000、及び少なくとも7,000,000からなる群から選択される、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
前記錠剤が、15重量%~18重量%の濃度で活性薬剤を含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項4】
前記高分子量PEOが、前記コアの少なくとも50%(重量で)を構成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項5】
前記活性薬剤の投与量が、30mg、60mg、120mg、及び240mgからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項6】
前記錠剤は70℃~75℃の温度で硬化されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項7】
前記コーティングが、
i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース;
ii)二酸化チタン;及び
iii)ポリエチレングリコール
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項8】
前記コーティングがシールコーティングである請求項1~7のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項9】
前記錠剤が対象への1日1回又は1日2回の投与に適している、請求項1~8のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項10】
前記錠剤が患者への投与時に解離性副作用がないか、又は最小限である、請求項1~9のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項11】
治療抵抗性うつ病の治療に使用するための請求項1~8のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項12】
DSM-V全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、及び/又は強迫性障害を含むがこれらに限定されない、治療抵抗性不安症の治療に使用するための請求項1~8のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項13】
DSM-5特定恐怖症の治療に使用するための請求項1~8のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項14】
前記錠剤が患者への1日1回又は1日2回の投与に適している、請求項11~13のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項15】
前記治療が、前記ケタミンの単回用量の経口投与を含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項16】
前記治療が、前記ケタミンの複数回用量の経口投与を含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項17】
30~180mgの用量での前記ケタミンの単回経口投与が、前記うつ病又は前記不安症又は前記恐怖症の影響を3~7日間緩和するのに十分である、請求項11~16のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項18】
前記錠剤が患者への投与時に解離性副作用がないか、又は最小限である、請求項11~17のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項19】
抑うつ気分の評価の最大平均改善が、6週間の維持治療の後に認められた、請求項11又は14~18のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項20】
不安気分の評価の最大平均改善が、2週間の維持治療の後に認められる、請求項12又は14~18のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項21】
前記治療が、薬学的に有効量の第2又は追加の薬剤を投与することをさらに含み、前記第2又は追加の薬剤が抗うつ特性を有する、請求項11~20のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項22】
前記治療が、以下から選択される追加の療法をさらに含む、請求項11~21のいずれか一項に記載の使用のための錠剤:
・シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン;ベンラファキシンとデュロキセチン;ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド;アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドチエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトレースン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン;マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラゾドン、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗うつ薬;
・炭酸リチウム、オロチン酸リチウム、リチウム塩、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、カルバマゼピン、ガバペンチン、オクスカルバゼピン、トピラマート、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の気分安定薬;
・セイヨウオトギリソウ;カバカバ;エキナセア;ノコギリヤシ;ホーリーバジル;カノコソウ;マリアアザミ;シベリアニンジン;高麗ニンジン;アシュワガンダの根;イラクサ;イチョウ科;ゴツコラ;イチョウ/ゴツコラシュプリーム;レンゲソウ;ゴールデンシール;カラトウキ;ニンジン;セイヨウオトギリソウシュプリーム;エキナセア;ビルベリー、緑茶;ホーソン;ショウガ、イチョウ、ウコン;ボスウェリアセラタ;ブラックコホシュ;キャッツクロー;イヌハッカ;カモミール;タンポポ;チェストツリーベリー;ブラックエルダーベリー;ナツシロギク;ニンニク;セイヨウトチノキ;カンゾウ;レッドクローバーの花と葉;イワベンケイ;コレウスフォルスコリイ;トケイソウ;コゴメバナ;ヨヒンベ;ブルーベリー植物;黒コショウの植物;ツボクサ;レンゲソウ;バレリアンケシの根とブドウの種子;クマツヅラ;エキナセアの根;スカルキャップ;セレニティエリクサー;及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のハーブ抗うつ薬;
・ハロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、アリピプラゾール、テトラベナジン、カンナビジオール、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗精神病薬;
・カウンセリング、心理療法、認知療法、電気けいれん療法、水療法、高気圧酸素療法、電気療法と電気刺激、経皮電気神経刺激(「TENS」)、脳深部刺激、迷走神経刺激、及び経頭蓋磁気刺激からなる群から選択される他の治療介入、並びに
・上記の組み合わせ。
【請求項23】
以下を含むコア:
i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容される塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、治療的に有効量の活性薬剤;
ii)62℃~90℃で硬化され
た少なくとも1種の高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)、ここで、前記高分子量PEOは、レオロジー測定法に基づいて200万~700万の分子量を有し、前記コアの少なくとも30%(重量で)を占める;
を含む、固形の経口持続放出医薬錠剤であって、
前記錠剤は、耐破砕性であり、少なくとも200Nの破壊強度を有し、そして、前記錠剤は、10重量%~20重量%の濃度で活性薬剤を含む、錠剤。
【請求項24】
前記高分子量PEOの分子量が、少なくとも4,000,000、少なくとも5,000,000、少なくとも6,000,000、及び少なくとも7,000,000からなる群から選択される、請求項23に記載の錠剤。
【請求項25】
前記錠剤が、15重量%~18重量%の濃度で活性薬剤を含む、請求項23~24のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項26】
前記高分子量PEOが、前記コアの少なくとも50%(重量で)を構成する、請求項23~25のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項27】
前記活性薬剤の投与量が、30mg、60mg、120mg、及び240mgからなる群から選択される、請求項23~26のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項28】
前記錠剤は70℃~75℃の温度で硬化されている、請求項23~27のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項29】
前記錠剤が対象への1日1回又は1日2回の投与に適している、請求項23~28のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項30】
前記錠剤が患者への投与時に解離性副作用がないか、又は最小限である、請求項23~29のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項31】
治療抵抗性うつ病の治療に使用するための請求項23~30のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項32】
DSM-V全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、及び/又は強迫性障害を含むがこれらに限定されない、治療抵抗性不安症の治療に使用するための請求項23~30のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項33】
DSM-5特定恐怖症の治療に使用するための請求項23~30のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項34】
前記錠剤が患者への1日1回又は1日2回の投与に適している、請求項31~33のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項35】
前記治療が、前記ケタミンの単回用量の経口投与を含む、請求項31~34のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項36】
前記治療が、前記ケタミンの複数回用量の経口投与を含む、請求項31~35のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項37】
30~180mgの用量での前記ケタミンの単回経口投与が、前記うつ病又は前記不安症又は前記恐怖症の影響を3~7日間緩和するのに十分である、請求項31~36のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項38】
前記錠剤が患者への投与時に解離性副作用がないか、又は最小限である、請求項31~37のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項39】
抑うつ気分の評価の最大平均改善が、6週間の維持治療の後に認められた、請求項31又は34~38のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項40】
不安気分の評価の最大平均改善が、2週間の維持治療の後に認められる、請求項32又は34~38のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項41】
前記治療が、薬学的に有効量の第2又は追加の薬剤を投与することをさらに含み、前記第2又は追加の薬剤が抗うつ特性を有する、請求項31~40のいずれか1項に記載の使用のための錠剤。
【請求項42】
前記治療が、以下から選択される追加の療法をさらに含む、請求項31~41のいずれか一項に記載の使用のための錠剤:
・シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン;ベンラファキシンとデュロキセチン;ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド;アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドチエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトレースン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン;マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラゾドン、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗うつ薬;
・炭酸リチウム、オロチン酸リチウム、リチウム塩、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、カルバマゼピン、ガバペンチン、オクスカルバゼピン、トピラマート、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の気分安定薬;
・セイヨウオトギリソウ;カバカバ;エキナセア;ノコギリヤシ;ホーリーバジル;カノコソウ;マリアアザミ;シベリアニンジン;高麗ニンジン;アシュワガンダの根;イラクサ;イチョウ科;ゴツコラ;イチョウ/ゴツコラシュプリーム;レンゲソウ;ゴールデンシール;カラトウキ;ニンジン;セイヨウオトギリソウシュプリーム;エキナセア;ビルベリー、緑茶;ホーソン;ショウガ、イチョウ、ウコン;ボスウェリアセラタ;ブラックコホシュ;キャッツクロー;イヌハッカ;カモミール;タンポポ;チェストツリーベリー;ブラックエルダーベリー;ナツシロギク;ニンニク;セイヨウトチノキ;カンゾウ;レッドクローバーの花と葉;イワベンケイ;コレウスフォルスコリイ;トケイソウ;コゴメバナ;ヨヒンベ;ブルーベリー植物;黒コショウの植物;ツボクサ;レンゲソウ;バレリアンケシの根とブドウの種子;クマツヅラ;エキナセアの根;スカルキャップ;セレニティエリクサー;及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のハーブ抗うつ薬;
・ハロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、アリピプラゾール、テトラベナジン、カンナビジオール、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗精神病薬;
・カウンセリング、心理療法、認知療法、電気けいれん療法、水療法、高気圧酸素療法、電気療法と電気刺激、経皮電気神経刺激(「TENS」)、脳深部刺激、迷走神経刺激、及び経頭蓋磁気刺激からなる群から選択される他の治療介入、並びに
・上記の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年10月10日に出願された米国特許出願第15/728,695号及び2018年7月10日に出願された米国特許出願第62/695,966の利権を主張し、これらのすべては参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
NMDAアンタゴニストであるケタミンが低用量帯で治療抵抗性うつ病(TRD;Berman 2000)の患者に抗うつ効果を迅速に発現するという最初の報告は、その後の複数の研究で実証されている(Xu 2016)。より最近では、ケタミンは、以下を含む一連の治療抵抗性不安症(treatment-resistant anxiety、TRA)障害において同様の迅速発現活性を有することが示されている:外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder、PTSD;Feder 2014)、強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder、OCD;Rodriguez 2013)、全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder、GAD)、社会不安障害(Social Anxiety Disorder、SAD;Glue 2017)。これらの研究はすべて、注射ケタミンを使用しており、通常は静脈内投与される。経口ケタミンがTRD患者に抗うつ効果を持つことを示唆する予備的な症例シリーズのデータがある(Schoevers 2016)。注射されたケタミンの主な副作用には、主に投与後最初の1時間に起こる解離症状、及び最初の30分間に起こる血圧と心拍数の若干の増加がある。経口ケタミン製剤は、これらの副作用を最小限に抑え、ケタミン注射よりも投与するのに手間/時間がかからない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
TRD又はTRAの患者、及び/又は恐怖症に罹患する可能性のある患者に対して、経口ケタミン製剤が活性を示す可能性を見出すために、本発明者らは、親水性ポリマーマトリックスアプローチを用いて、持続放出ケタミン錠剤を開発した。ポリエチレンオキシド(PEO)は、制御された薬剤輸送製剤で使用される多数の親水性ポリマーの1つであり、非毒性、高い水溶性、膨潤性など、多くの有利な属性を持っている(Maggi 2002)。さらに、高濃度のPEOをベースにした錠剤製剤は、アニーリング(加熱)して、破砕に耐性のある非常に高い硬度の錠剤を得ることができる。ケタミンは濫用の危険性ある薬物であるため、これは特に魅力的な製品属性である。ケタミンの急速な吸収に関連する解離症状の可能性を最小限に抑えるために、長時間の放出プロファイルが望ましい。この製剤は、インビトロで10~12時間にわたる線形溶解を示している。この製剤のケタミンとノルケタミンの排泄半減期の推定値は、錠剤に関する以前の報告値よりはるかに長い。
【0004】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が提供する固形の経口持続放出医薬錠剤は、(A)以下を含むコア:i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容される塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、治療的に有効量の活性薬剤;ii)硬化した少なくとも1種の高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)、ここで、前記高分子量PEOは、レオロジー測定法に基づいて約200万~約700万の分子量を有し、前記コアの少なくとも約30%(重量で)を占め;(B)前記コア上のコーティング、を含み、前記錠剤は、耐破砕性であり、少なくとも約200Nの破壊強度を有し、かつ、患者への単一錠剤の投与の少なくとも約4時間後に前記活性薬剤の平均tmaxを提供する。
【0006】
本発明は、前記高分子量PEOの分子量が、少なくとも約4,000,000、少なくとも約5,000,000、少なくとも約6,000,000、及び少なくとも約7,000,000からなる群から選択される錠剤を提供する。本発明は、前記活性薬剤が前記コアの少なくとも約1%(重量で)を構成する錠剤を提供する。本発明は、前記高分子量PEOが、前記コアの少なくとも約50%(重量で)を構成する錠剤を提供する。本発明は、前記活性薬剤の投与量が、約30mg、約60mg、約120mg、及び約240mgからなる群から選択される錠剤を提供する。本発明は、前記錠剤が約70℃~約75℃の温度で硬化されている錠剤を提供する。本発明は、前記コーティングが、i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ii)二酸化チタン;及びiii)ポリエチレングリコールを含む錠剤を提供する。本発明は、前記錠剤が、約12~約42ng/mLのケタミンCmaxを提供する錠剤を提供する。本発明は、前記錠剤が、約79~約385ng・h/mLのケタミンAUC0-infを提供する錠剤を提供する。本発明は、前記錠剤が、約74~約315ng/mLのノルケタミンCmaxを提供する錠剤を提供する。本発明は、前記錠剤が、約872~約4079ng・h/mLのノルケタミンAUC0-infを提供する錠剤を提供する。本発明は、前記活性薬剤の平均tmaxが、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、及び少なくとも約12時間からなる群から選択される錠剤を提供する。本発明は、前記錠剤が患者への1日1回投与又は1日2回投与に適している錠剤を提供する。本発明は、前記錠剤が患者への投与時に解離性副作用がないか、又は最小限である錠剤を提供する。
【0007】
本発明が提供する治療抵抗性うつ病について患者を治療する方法は、以下を含む:そのような治療を必要とする患者を選択すること;及び(A)以下を含むコア:i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容される塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、治療的に有効量の活性薬剤;ii)硬化した少なくとも1種の高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)、ここで、前記高分子量PEOは、レオロジー測定法に基づいて約200万~約700万の分子量を有し、前記コアの少なくとも約30%(重量で)を占め;(B)前記コア上のコーティングを含む錠剤を前記患者に経口投与すること、を含み、前記錠剤は、耐破砕性であり、少なくとも約200Nの破壊強度を有し、かつ、患者への単一錠剤の投与の少なくとも約4時間後に前記活性薬剤の平均tmaxを提供し、前記錠剤は前記治療抵抗性うつ病の症状を治療する。
【0008】
本発明は、前記高分子量PEOの分子量が、少なくとも約2,000,000、少なくとも約4,000,000、少なくとも約5,000,000、少なくとも約6,000,000、及び少なくとも約7,000,000からなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記活性薬剤が前記コアの少なくとも約1%(重量で)を構成する方法を提供する。本発明は、前記高分子量PEOが、前記コアの少なくとも約50%(重量で)を構成する方法を提供する。本発明は、前記活性薬剤の投与量が、約1mg、約2mg、約5mg、約10mg、約30mg、約60mg、約120mg、及び約240mgからなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記錠剤は約70℃~約75℃の温度で硬化されている方法を提供する。本発明は、前記コーティングが、i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ii)二酸化チタン;及びiii)ポリエチレングリコールを含む方法を提供する。本発明は、前記錠剤が、約12~約42ng/mLのケタミンCmaxを提供する方法を提供する。本発明は、前記錠剤が、約79~約385ng・h/mLのケタミンAUC0-infを提供する方法を提供する。本発明は、前記錠剤が、約74~約315ng/mLのノルケタミンCmaxを提供する方法を提供する。本発明は、前記錠剤が、約872~約4079ng・h/mLのノルケタミンAUC0-infを提供する方法を提供する。本発明は、前記活性薬剤の平均tmaxが、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、及び少なくとも約12時間からなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記錠剤が患者への1日1回投与又は1日2回投与に適している方法を提供する。本発明は、前記治療抵抗性うつ病の症状が、前記ケタミンの経口投与の2時間以内に緩和される方法を提供する。本発明は、前記方法が、前記ケタミンの単回用量の経口投与を含む方法を提供する。本発明は、前記方法が、前記ケタミンの複数回用量の経口投与を含む方法を提供する。本発明は、30~180mgの用量での前記ケタミンの単回経口投与が、前記うつ病の影響を3~7日間緩和するのに十分である方法を提供する。本発明は、錠剤が患者への投与時に解離性副作用がないか、又は最小限である方法を提供する。本発明は、抑うつ気分の評価の最大平均改善が、約6週間の維持治療の後に認められる方法を提供する。本発明は、薬学的に有効量の第2又は追加の薬剤を投与することをさらに含み、前記第2又は追加の薬剤が抗うつ特性を有する、方法を提供する。
【0009】
本発明は、前記方法が、以下から選択される追加の療法をさらに含む方法を提供する:シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン;ベンラファキシンとデュロキセチン;ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド;アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドチエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトレースン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン;マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラゾドン、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗うつ薬;炭酸リチウム、オロチン酸リチウム、リチウム塩、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、カルバマゼピン、ガバペンチン、オクスカルバゼピン、トピラマート、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の気分安定薬、セイヨウオトギリソウ、カバカバ、エキナセア、ノコギリヤシ、ホーリーバジル、カノコソウ、マリアアザミ、シベリアニンジン、高麗ニンジン、アシュワガンダの根、イラクサ、イチョウ科、ゴツコラ、イチョウ/ゴツコラシュプリーム、レンゲソウ、ゴールデンシール、カラトウキ、ニンジン、セイヨウオトギリソウシュプリーム、エキナセア、ビルベリー、緑茶、ホーソン、ショウガ、イチョウ、ウコン、ボスウェリアセラタ、ブラックコホシュ、キャッツクロー、イヌハッカ、カモミール、タンポポ、チェストツリーベリー、ブラックエルダーベリー、ナツシロギク、ニンニク、セイヨウトチノキ、カンゾウ、レッドクローバーの花と葉、イワベンケイ、コレウスフォルスコリイ、トケイソウ、コゴメバナ、ヨヒンベ、ブルーベリー植物、黒コショウの植物、ツボクサ、レンゲソウ、バレリアンケシの根とブドウの種子、クマツヅラ、エキナセアの根、スカルキャップ、セレニティエリクサー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のハーブ抗うつ薬、ハロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、アリピプラゾール、テトラベナジン、カンナビジオール、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗精神病薬;カウンセリング、心理療法、認知療法、電気けいれん療法、水療法、高気圧酸素療法、電気療法と電気刺激、経皮電気神経刺激(「TENS」)、脳深部刺激、迷走神経刺激、及び経頭蓋磁気刺激からなる群から選択される他の治療介入、並びに上記の組み合わせ。
【0010】
本発明が提供するDSM-V全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害及び/又は強迫性障害を含むがこれらに限定されない、治療抵抗性不安症について患者を治療する方法は、そのような治療を必要とする患者を選択すること;及び(A)以下を含むコア:i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容される塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、治療的に有効量の活性薬剤;ii)硬化した少なくとも1種の高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)、ここで、前記高分子量PEOは、レオロジー測定法に基づいて約200万~約700万の分子量を有し、前記コアの少なくとも約30%(重量で)を占め;(B)前記コア上のコーティングを含む錠剤を前記患者に経口投与すること、を含み、前記錠剤は、耐破砕性であり、少なくとも約200Nの破壊強度を有し、かつ、患者への単一錠剤の投与の少なくとも約4時間後に前記活性薬剤の平均tmaxを提供し、前記錠剤は前記治療抵抗性不安症の症状を治療する。本発明は、前記高分子量PEOの分子量が、少なくとも約2,000,000、少なくとも約4,000,000、少なくとも約5,000,000、少なくとも約6,000,000、及び少なくとも約7,000,000からなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記活性薬剤が前記コアの少なくとも約1%(重量で)を構成する方法を提供する。本発明は、前記高分子量PEOが、前記コアの少なくとも約50%(重量で)を構成する方法を提供する。本発明は、前記活性薬剤の投与量が、約1mg、約2mg、約5mg、約10mg、約30mg、約60mg、約120mg、及び約240mgからなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記錠剤は約70℃~約75℃の温度で硬化されている方法を提供する。本発明は、前記コーティングが、i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ii)二酸化チタン;及びiii)ポリエチレングリコールを含む方法を提供する。本発明は、前記錠剤が、約12~約42ng/mLのケタミンCmaxを提供する方法を提供する。本発明は、前記錠剤が、約79~約385ng・h/mLのケタミンAUC0-infを提供する方法を提供する。本発明は、前記錠剤が、約74~約315ng/mLのノルケタミンCmaxを提供する方法を提供する。本発明は、前記錠剤が、約872~約4079ng・h/mLのノルケタミンAUC0-infを提供する方法を提供する。本発明は、前記活性薬剤の平均tmaxが、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、及び少なくとも約12時間からなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記錠剤が患者への1日1回投与又は1日2回投与に適している方法を提供する。本発明は、前記錠剤が患者への投与時に解離性副作用がないか、又は最小限である方法を提供する。本発明は、前記治療抵抗性不安症の症状が、前記ケタミンの経口投与の2時間以内に緩和される方法を提供する。本発明は、前記方法が、前記ケタミンの単回用量の経口投与を含む方法を提供する。本発明は、前記方法が、前記ケタミンの複数回用量の経口投与を含む方法を提供する。本発明は、30~180mgの用量での前記ケタミンの単回経口投与が、前記不安症の影響を3~7日間緩和するのに十分である方法を提供する。本発明は、不安気分の評価の最大平均改善が、約2週間の維持治療の後に認められる方法を提供する。本発明は、薬学的に有効量の第2又は追加の薬剤を投与することをさらに含み、前記第2又は追加の薬剤が抗不安特性を有する、方法を提供する。本発明は、前記方法が、以下から選択される追加の療法をさらに含む方法を提供する:シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン;ベンラファキシンとデュロキセチン、ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドチエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトレースン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン、マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラゾドン、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗うつ薬、ブスピロン、エルトプラジン、又はタンドスピロン、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のセロトニン1a部分アゴニスト;ガバペンチン、プレガバリン、3-メチルガバペンチン、(1アルファ、3アルファ、5アルファ)(3-アミノ-メチル-ビシクロ[3.2.0]ヘプト-3-イル)-酢酸、(3S、5R)-3アミノメチル-5メチル-ヘプタン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-ヘプタン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-オクタン酸、(2S、4S)-4-(3-クロロフェノキシ)プロリン、(2S、4S)-4-(3-フルオロベンジル)-プロリン、[(1R、5R、6S)-6-(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト-6-イル]酢酸、3-(1-アミノメチル-シクロヘキシルメチル)-4H-[1,2,4]オキサジアゾール-5-オン、C-[1-(1H-テトラゾール-5-イルメチル)-シクロヘプチル]-メチルアミン、(3S、4S)-(1-アミノメチル-3,4-ジメチル-シクロペンチル)-酢酸、(3S、5R)-3アミノメチル-5メチル-オクタン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-ノナン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-オクタン酸、(3R、4R、5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-ヘプタン酸、(3R、4R、5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-オクタン酸、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のアルファ-2-デルタリガンド;クロニジン、プラゾシン、プロプラノロール、フアンファシン、メチルドパ、グアナベンズ、ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシン、シロドシン、アルフゾシン、タムスロシン、デュタステリド/タムスロシン、グアナドレル、メカミラミン、グアネチジン、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗アドレナリン薬;アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、テマゼパム、ニメタゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、オキサゼパム、トリアゾラム、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のベンゾジアゼピン剤;ハロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、アリピプラゾール、テトラベナジン、カンナビジオール、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗精神病薬;カウンセリング、心理療法、認知療法、電気けいれん療法、水療法、高気圧酸素療法、電気療法と電気刺激、経皮電気神経刺激(「TENS」)、脳深部刺激、迷走神経刺激、及び経頭蓋磁気刺激からなる群から選択される他の治療介入、並びに上記の組み合わせ。
【0011】
本発明が提供するDSM-5特定恐怖症の患者を治療する方法は、そのような治療を必要とする患者を選択すること;及び皮下注射、筋肉内注射、静脈内注入、徐放錠剤、ロゼンジ、舌下製剤、鼻腔内スプレー、それらの組み合わせ、及びその他の効果的な投与経路からなる群から選択される剤形でケタミンを前記患者に投与することを含む。本発明は、ケタミンの投与量が、約1mg、約2mg、約5mg、約10mg、約30mg、約60mg、約120mg、及び約240mgからなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記ケタミン製剤の投与頻度が、患者への週1回、週2回、週3回から、毎日の投与までの範囲である方法を提供する。本発明は、前記DSM-5特定恐怖症が、環境恐怖症、動物恐怖症、状況恐怖症、身体恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記環境恐怖症が、雑菌、深水、高所への恐怖、その他の環境恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記動物恐怖症が、犬、クモ、ヘビへの恐怖、その他の動物恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記状況恐怖症が、飛行機で飛ぶこと、歯科医を訪れることへの恐怖、その他の状況恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記身体恐怖症が、血液露見への恐怖、その他の身体恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記特定恐怖症の症状が、前記ケタミン製剤の投与から1~3時間以内に緩和される方法を提供する。本発明は、前記方法が、前記ケタミン製剤の単回用量の投与を含む方法を提供する。本発明は、前記方法が、前記ケタミン製剤の複数回用量の投与を含む方法を提供する。本発明は、30~180mgの用量での前記ケタミン製剤の単回投与が、前記恐怖不安及び回避の影響を3~7日間緩和するのに十分である方法を提供する。本発明は、前記恐怖不安及び回避の評価の最大平均改善が、約2週間の維持治療の後に認められる方法を提供する。本発明は、薬学的に有効量の第2又は追加の薬剤を投与することをさらに含み、前記第2又は追加の薬剤が抗不安特性を有する、方法を提供する。本発明は、前記方法が、以下から選択される追加の療法をさらに含む方法を提供する:シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン、ベンラファキシンとデュロキセチン、ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドチエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトレースン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン、アゴメラチン、マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラゾドン、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗うつ薬、ブスピロン、エルトプラジン、又はタンドスピロン、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のセロトニン1a部分アゴニスト、ガバペンチン、プレガバリン、3-メチルガバペンチン、(1アルファ、3アルファ、5アルファ)(3-アミノ-メチル-ビシクロ[3.2.0]ヘプト-3-イル)-酢酸、(3S、5R)-3アミノメチル-5メチル-ヘプタン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-ヘプタン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-オクタン酸、(2S、4S)-4-(3-クロロフェノキシ)プロリン、(2S、4S)-4-(3-フルオロベンジル)-プロリン、[(1R、5R、6S)-6-(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト-6-イル]酢酸、3-(1-アミノメチル-シクロヘキシルメチル)-4H-[1,2,4]オキサジアゾール-5-オン、C-[1-(1H-テトラゾール-5-イルメチル)-シクロヘプチル]-メチルアミン、(3S、4S)-(1-アミノメチル-3,4-ジメチル-シクロペンチル)-酢酸、(3S、5R)-3アミノメチル-5メチル-オクタン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-ノナン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-オクタン酸、(3R、4R、5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-ヘプタン酸、(3R、4R、5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-オクタン酸、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のアルファ-2-デルタリガンド;クロニジン、プラゾシン、プロプラノロール、フアンファシン、メチルドパ、グアナベンズ;ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシン、シロドシン、アルフゾシン、タムスロシン、デュタステリド/タムスロシン、グアナドレル、メカミラミン、グアネチジン、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗アドレナリン薬;アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、テマゼパム、ニメタゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、オキサゼパム(Serax)、テマゼパム、Restoril、Normison、Planum、Tenox、Temaze、トリアゾラム、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のベンゾジアゼピン剤;ハロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、アリピプラゾール、テトラベナジン、カンナビジオール、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗精神病薬;カウンセリング、心理療法、認知療法、暴露その他の行動療法、電気けいれん療法、水療法、高気圧酸素療法、電気療法と電気刺激、経皮電気神経刺激(「TENS」)、脳深部刺激、迷走神経刺激、及び経頭蓋磁気刺激からなる群から選択される他の治療介入、並びに上記の組み合わせ。
【0012】
本発明は、本明細書に記載される適応症を治療するための医薬の製造のための本発明の組成物の使用を提供する。
【0013】
さらなる実施形態によれば、本発明は、本明細書に記載の医薬組成物を、医薬での使用に、最も好ましくは対象の疾患又は障害を治療するための医薬としての使用に、有効な量で提供する。
【0014】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、本明細書に記載の医薬組成物、及び少なくとも1つの追加の治療薬を、医薬での使用に、最も好ましくは対象の疾患又は疾患に関連する障害を治療するための医薬としての使用に、有効な量で提供する。
【0015】
本発明が提供するDSM-5特定恐怖症の患者を治療する方法は、そのような治療を必要とする患者を選択すること;及び(A)以下を含むコア:i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容される塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、治療的に有効量の活性薬剤;ii)硬化した少なくとも1種の高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)、ここで、前記高分子量PEOは、レオロジー測定法に基づいて約200万~約700万の分子量を有し、前記コアの少なくとも約30%(重量で)を占め;(B)前記コア上のコーティングを含む錠剤を前記患者に経口投与すること、を含み、前記錠剤は、耐破砕性であり、少なくとも約200Nの破壊強度を有し、かつ、患者への単一錠剤の投与の少なくとも約4時間後に前記活性薬剤の平均tmaxを提供し、前記錠剤は前記DSM-5特定恐怖症の症状を治療する。本発明は、前記高分子量PEOの分子量が、少なくとも約2,000,000、少なくとも約4,000,000、少なくとも約5,000,000、少なくとも約6,000,000、及び少なくとも約7,000,000からなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記活性薬剤が前記コアの少なくとも約1%(重量で)を構成する方法を提供する。本発明は、前記高分子量PEOが、前記コアの少なくとも約50%(重量で)を構成する方法を提供する。本発明は、前記活性薬剤の投与量が、約1mg、約2mg、約5mg、約10mg、約30mg、約60mg、約120mg、及び約240mgからなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記錠剤が約70℃~約75℃の温度で硬化されている方法を提供する。本発明は、前記コーティングが、i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ii)二酸化チタン;及びiii)ポリエチレングリコールを含む方法を提供する。本発明は、前記錠剤が、約12~約42ng/mLのケタミンCmaxを提供する方法を提供する。本発明は、前記錠剤が、約79~約385ng・h/mLのケタミンAUC0-infを提供する方法を提供する。本発明は、前記錠剤が、約74~約315ng/mLのノルケタミンCmaxを提供する方法を提供する。本発明は、前記錠剤が、約872~約4079ng・h/mLのノルケタミンAUC0-infを提供する方法を提供する。本発明は、前記活性薬剤の平均tmaxが、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、及び少なくとも約12時間からなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記錠剤が患者への1日1回投与又は1日2回投与に適している方法を提供する。本発明は、前記DSM-5特定恐怖症の症状が、前記ケタミンの経口投与の2時間以内に緩和される方法を提供する。本発明は、前記方法が、前記ケタミンの単回用量の経口投与を含む方法を提供する。本発明は、前記方法が、前記ケタミンの複数回用量の経口投与を含む方法を提供する。
【0016】
本発明は、30~180mgの用量での前記ケタミンの単回経口投与が、前記DSM-5特定恐怖症の影響を3~7日間緩和するのに十分である方法を提供する。本発明は、錠剤が患者への投与時に解離性副作用がないか、又は最小限である方法を提供する。本発明は、前記ケタミン製剤の投与頻度が、患者への週1回、週2回、週3回から、毎日の投与までの範囲である方法を提供する。本発明は、前記DSM-5特定恐怖症が、環境恐怖症、動物恐怖症、状況恐怖症、身体恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記環境恐怖症が、雑菌、深水、高所への恐怖、その他の環境恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記動物恐怖症が、犬、クモ、ヘビへの恐怖、その他の動物恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記状況恐怖症が、飛行機で飛ぶこと、歯科医を訪れることへの恐怖、その他の状況恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記身体恐怖症が、血液露見への恐怖、その他の身体恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。本発明は、前記特定恐怖症の症状が、前記ケタミン製剤の投与の1~3時間以内に緩和される方法を提供する。本発明は、前記方法が、前記ケタミン製剤の単回用量の投与を含む方法を提供する。本発明は、前記方法が、前記ケタミン製剤の複数回用量の投与を含む方法を提供する。本発明は、30~180mgの用量での前記ケタミン製剤の単回投与が、前記恐怖不安及び回避の影響を3~7日間緩和するのに十分である方法を提供する。本発明は、DSM-5特定恐怖症の評価の最大平均改善が、約2週間の維持治療の後に認められる方法を提供する。本発明は、薬学的に有効量の第2又は追加の薬剤を投与することをさらに含み、前記第2又は追加の薬剤が抗不安特性を有する、方法を提供する。本発明は、前記方法が、以下から選択される追加の療法をさらに含む方法を提供する:シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン;ベンラファキシンとデュロキセチン;ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド;アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドチエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトレースン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン;アゴメラチン、マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラゾドン、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗うつ薬;ブスピロン、エルトプラジン、又はタンドスピロン、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のセロトニン1a部分アゴニスト;ガバペンチン、プレガバリン、3-メチルガバペンチン、(1アルファ、3アルファ、5アルファ)(3-アミノ-メチル-ビシクロ[3.2.0]ヘプト-3-イル)-酢酸、(3S、5R)-3アミノメチル-5メチル-ヘプタン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-ヘプタン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-オクタン酸、(2S、4S)-4-(3-クロロフェノキシ)プロリン、(2S、4S)-4-(3-フルオロベンジル)-プロリン、[(1R、5R、6S)-6-(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト-6-イル]酢酸、3-(1-アミノメチル-シクロヘキシルメチル)-4H-[1,2,4]オキサジアゾール-5-オン、C-[1-(1H-テトラゾール-5-イルメチル)-シクロヘプチル]-メチルアミン、(3S、4S)-(1-アミノメチル-3,4-ジメチル-シクロペンチル)-酢酸、(3S、5R)-3アミノメチル-5メチル-オクタン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-ノナン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-オクタン酸、(3R、4R、5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-ヘプタン酸、(3R、4R、5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-オクタン酸、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のアルファ-2-デルタリガンド;クロニジン、プラゾシン、プロプラノロール、フアンファシン、メチルドパ、グアナベンズ;ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシン、シロドシン、アルフゾシン、タムスロシン、デュタステリド/タムスロシン、グアナドレル、メカミラミン、グアネチジン、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗アドレナリン薬;アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、テマゼパム、ニメタゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、オキサゼパム(Serax)、テマゼパム、Restoril、Normison、Planum、Tenox、Temaze、トリアゾラム、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のベンゾジアゼピン剤;ハロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、アリピプラゾール、テトラベナジン、カンナビジオール、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の抗精神病薬;カウンセリング、心理療法、認知療法、暴露その他の行動療法、電気けいれん療法、水療法、高気圧酸素療法、電気療法と電気刺激、経皮電気神経刺激(「TENS」)、脳深部刺激、迷走神経刺激、及び経頭蓋磁気刺激からなる群から選択される他の治療介入、並びに上記の組み合わせ。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、以下の図面と併せて説明される。同様の参照番号が同様の要素を示す。
【
図1】
図1は3つの異なるpHにおける、60mgの徐放性ケタミン錠剤の溶解プロファイルを示すチャートである。
【
図2】
図2Aは、臨床医管理解離状態尺度(Clinician-Administered Dissociative States Scale、CADSS)を使用した、徐放性錠剤の単回投与後の平均解離スケールスコアを示すチャートである;
図2Bは、錠剤の複数回投与後の平均CADSSスコアを示すチャート(コホート1~3)である。
【
図3】
図3Aは、ケタミンとノルケタミンの単回投与後の平均濃度-時間プロファイルを示すチャート(コホート1~3)である;
図3Bは、ケタミンとノルケタミンの複数回投与後の平均濃度-時間プロファイルを示すチャート(コホート1~3)である。
【
図4】
図4Aは、60mg、120mg及び240mgの持続放出ケタミン錠剤の単回投与後のケタミン最大濃度(C
max)の用量比例性を示すチャートである;
図4Bは、60mg、120mg及び240mgの持続放出ケタミン錠剤の単回投与後の濃度-時間曲線(AUC)におけるケタミン面積を示すチャートである;
図4Cは、60mg、120mg及び240mgの持続放出ケタミン錠剤の複数回投与後のケタミン最大濃度(C
max)の用量比例性を示すチャートである;
図4Dは、60mg、120mg及び240mgの持続放出ケタミン錠剤の複数回投与後の濃度-時間曲線(AUC)におけるケタミン面積を示すチャートである。
図4Eは、60mg、120mg及び240mgの持続放出ノルケタミン錠剤の単回投与後のノルケタミン最大濃度(C
max)の用量比例性を示すチャートである;
図4Fは、60mg、120mg及び240mgの持続放出ノルケタミン錠剤の単回投与後の濃度-時間曲線(AUC)におけるノルケタミン面積を示すチャートである;
図4Gは、60mg、120mg及び240mgの持続放出ノルケタミン錠剤の複数回投与後のノルケタミン最大濃度(C
max)の用量比例性を示すチャートである;
図4Hは、60mg、120mg及び240mgの持続放出ノルケタミン錠剤の複数回投与後の濃度-時間曲線(AUC)におけるノルケタミン面積を示すチャートである(コホート1~3)。
【
図5】
図5Aは、持続放出ケタミン錠剤を投与した後の個別及び平均のCADSSスコア、コホート4を示すチャートである。
図5Bは、両方のデータセットがある6人のコホート4参加者における、ケタミン錠剤(黒塗りの記号)と皮下ケタミン(白抜きの記号)の初回投与後3時間にわたる平均CADSSスコアの比較を示すチャートである。
【
図6】
図6Aは、持続放出ケタミン錠剤を投与した後のコホート4の個別及び平均のハミルトン不安尺度(Hamilton Anxiety Scale、HAMA)スコアを示すチャートである。
図6Bは、持続放出ケタミン錠剤を投与した後のコホート4の個別及び平均の恐怖質問票(Fear Questionnaire、FQ)スコアを示すチャートである。
【
図7】
図7は、両方のデータセットがある6人のコホート4参加者における、ケタミン錠剤(黒塗りの記号)と皮下ケタミン(白抜きの記号)の初回投与後の平均HAMAスコアの比較を示すチャートである。
【
図8】
図8は、持続放出ケタミン錠剤を投与した後のコホート4の個別及び平均のモンゴメリー-アスバーグうつ病評価尺度(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale、MADRS)スコアを示すチャートである。
【
図9】
図9Aは、コホート4の3人の患者における平滑化された平均うつ病(MADRS)スコアを示すチャートであり、コホート4は、その後の3か月のオープンラベル延長(open-label extension、OLE)フェーズに入った。
図9Bは、その後の3か月のオープンラベル延長(OLE)フェーズに入ったコホート4の3人の患者における不安(FQ)スコアを示すチャートである。
図9Cは、コホート4の3人の患者における不安(HAMA)スコアを示すチャートであり、コホート4は、その後の3か月のオープンラベル延長(open-label extension、OLE)フェーズに入った。この期間中、3人の患者全員が気分評価の改善を報告した。平均うつ病評価は、最大の改善には6週間かかるように見えるが(
図9A)、平均最大不安尺度の改善は、2週間までに起こるように見える(
図9B、9C)。
【
図10】
図10は、コホート4における、ケタミン及びノルケタミンの個別の及び平均濃度-時間プロファイルを示すチャートである。各12時間間隔で投与された平均用量は、濃度時間プロットの上に示されている。
【
図11】
図11は、コホート4における、持続放出ケタミン錠剤の12時間毎の投薬に関連する個別のケタミン:ノルケタミン比の変化を示すチャートであり、適合された回帰直線を伴う。
【
図12】
図12は、投与前から投与後168時間までの平均の出血創傷恐怖質問票(Fear Questionnaire Blood Injury、FQBI)尺度スコアに対するケタミン投与量の影響を示すグラフである。
【
図13】
図13Aは、ケタミンに関する、2時間でのFQBIスコアのベースラインからの変化を示すグラフである。ベースラインFQBIスコアは赤で表示され、エラーバーは標準偏差を表す(n=30)。
図13Bは、2時間でのノルケタミン濃度に関する、2時間でのFQBIスコアのベースラインからの変化を示すグラフである。ベースラインFQBIスコアは赤で表示され、エラーバーは標準偏差を表す(n=30)。
【
図14】
図14は、14週間にわたる、投与前ならびに投与後1時間及び2時間の平均FQBIスコアに対する維持ケタミン療法の効果を示すグラフである。ケタミンを投与する前のFQBIスコアも示されている(灰色の記号)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される場合、「活性医薬成分」(active pharmaceutical ingredient、API)又は「医薬活性薬剤」という用語は、本発明に使用することができる薬物又は薬剤であり、以下の目的のために、人体又は動物体に使用されることが意図される:治癒のため、疾患、病気、身体的損傷又は病理学的症状を緩和、予防又は診断するため;身体の状態、状態又は機能又は精神状態を識別できるようにするため;人間や動物の体、又は体液によって生成された活性物質を置き換えるため;無害な病原体、寄生虫、外因性物質を防御、排除、又はレンダリングすること、又は身体や精神状態の状態、状況、機能に影響を与えること。使用中の薬物は、例えば、Rote ListeやMerck Indexなどの参考文献に記載されている。言及され得る例には、ケタミンが含まれる。
【0019】
本明細書で使用される量は、その量が対象に効果をもたらす場合、「有効」である。本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、本明細書に開示される利点を独立して又は組み合わせて含むが、深刻な副作用を回避するのに十分低い、肯定的な利点を有意に誘発するのに十分な化合物又は組成物の量を意味し、すなわち、当業者の適切な判断の範囲内で、リスク比に対する合理的な利益を提供する量を意味する。当業者にとって、有効量、ならびに投与量及び投与頻度は、それらの知識及び本開示に基づく単なるルーチン的な実験の標準的な方法論に従って容易に決定され得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、互換的に使用される。本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、動物、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)及び霊長類(例えば、サル及びヒト)などの哺乳動物を指し、最も好ましくは人間である。いくつかの実施形態では、対象は、家畜(例えば、ウマ、ブタ又はウシ)又はペット(例えば、イヌ又はネコ)などの非ヒト動物である。特定の実施形態では、対象は高齢なヒトである。別の実施形態では、対象はヒトの成人である。別の実施形態では、対象はヒトの子供である。さらに別の実施形態では、対象はヒトの乳児である。
【0021】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という語句は、連邦政府又は州政府の規制機関によって承認されたか、あるいは米国薬局方、ヨーロッパ薬局方、あるいは動物、より具体的にはヒトでの使用のために一般に認められている他の薬局方にリストされていることを意味する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、活性医薬成分(API)を医薬製剤に製剤化するために使用される物質を意味する。好ましい実施形態では、賦形剤は、APIの主要な治療効果を低下又は妨害しない。好ましくは、賦形剤は治療的に不活性である。「賦形剤」という用語は、担体、希釈剤、ビヒクル、可溶化剤、安定剤、増量剤、酸性又は塩基性のpH調整剤及びバインダーを包含する。賦形剤はまた、製造プロセスによる間接的又は意図しない結果として医薬製剤中に存在する物質であり得る。好ましくは、賦形剤は、ヒト及び動物への投与について承認されているか、又は安全であると考えられている、すなわち、GRAS(generally regarded as safe、一般に安全と見なされている)物質である。GRAS物質は、例えば、参照により本明細書に組み込まれている連邦規則集(CFR)の21CFR182及び21CFR184に米国食品医薬品局によってリストされている。
【0023】
本明細書で使用する場合、対象への療法の実施の文脈における「予防」、「予防する」及び「予防すること」という用語は、疾患又は病状の再発、発症、及び/又は進行の予防又は阻止、又は治療法の組み合わせ(例えば、予防剤又は治療剤の組み合わせ)を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「療法」という用語は、疾患若しくは病状、又はその1つ以上の症状の予防、治療、及び/又は管理に使用できる任意の方法、組成物、及び/又は薬剤を指し得る。
【0025】
本明細書で使用する場合、対象への療法の実施の文脈における「治療」、「治療する」、及び「治療すること」という用語は、疾患若しくは病状の進行及び/又は持続期間の減少若しくは阻害、疾患若しくは病状の重症度の軽減又は改善、及び/又は1つ以上の療法の投与に起因するその1つ以上の症状の改善を指す。
【0026】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、述べられた数値又は範囲と組み合わせて使用される場合、当業者によって合理的に与えられた意味を有し、すなわち、述べられた値又は範囲よりいくらか多い又はいくらか少ないことを示す。
【0027】
投与:薬物を必要とする患者への薬物の適用又はデリバリー。この用語は、薬物の適用又はデリバリーを達成する任意の投与手段(すなわち、局所、経口、エアロゾル、坐剤、非経口、例えば、静脈内や筋肉内、皮下注射、例えば、組織や腹腔内など)を含むことを意図する。この用語は、そのような投与を達成するために必要なあらゆる手段を含むことも意図されている。この用語はさらに、薬物又はその前駆体の産生に影響を与えるために酵素又は酵素遺伝子などの別の物質によって調節される薬物のインビボ産生又は薬物の凝集を含むことが意図される。
【0028】
[うつ病]
うつ病は、気分が落ち込んでおり、活動への興味や喜びが著しく低下していることが特徴である。その他の症状には、著しい体重減少又は体重増加、食欲の減少又は増加、不眠症又は過眠症、精神運動の興奮又は遅滞、疲労又はエネルギーの喪失、無価値感、過度又は不適切な罪悪感、思考又は集中力の低下、優柔不断、繰り返し起こる死の考え、自殺念慮、又は自殺企図が含まれる。さまざまな体性症状が現れることもある。抑うつの感情は一般的で、特に人生の挫折を経験した後にあるので、症状がしきい値に達して少なくとも2週間続く場合にのみ、うつ病性障害と診断される。うつ病の重症度は、軽度から重度までさまざまである。ほとんどの場合は一時的なものであるが、再発し又は慢性的になることもある。一部の人は、発病前機能への完全な復帰まで単一のエピソードしかない。しかし、最初に1つの大うつ病エピソードを経験する人の50%以上が、結局別のエピソードを発症する。
【0029】
治療抵抗性うつ病には、最適に行われる1つ以上の治療に十分に反応しない単極性うつ病が含まれる。現在のエピソードの異なるクラスにおいて薬剤を適切に少なくとも2回試してもうつ病が改善を受けない場合、臨床的に有意な治療抵抗が存在する。
【0030】
あらゆる慢性の治療抵抗性うつ病は、本明細書に記載の方法により治療することができる。このようなうつ病は以下を含むが、これらのいずれかに限定されない:大うつ病性障害、単一エピソード、再発性大うつ病性障害-単極性うつ病、季節性情動障害-冬のうつ病、双極性気分障害-双極性うつ病、大うつ病のようなエピソードを伴う一般的な病状による気分障害、又はうつ病の特徴を伴う一般的な病状に起因する気分障害。これらの障害は所定の患者の治療に耐性がある。したがって、これらの障害の1つを示し、現在のエピソードで1つの抗うつ薬の適切な試験に反応せず、2年超の再発又は慢性うつ病の症状を示す患者は、本発明の方法によって治療することができる。躁うつ病はGoodwinら(2007)にも記載されている。
【0031】
不安症は、緊張、恐怖、疑心、心配を特徴とする気分障害である。不安障害の患者は、過度の心配、パニック発作、特定の状況の回避(例:社会的交流、スーパーマーケット)などの症状を報告することがある。治療抵抗性不安症(treatment resistant anxiety、TRA;十分な投薬と心理療法にもかかわらず解決又は改善されなかった不安症)は比較的一般的であり、患者の約30%が治療に反応を示さず、さらに患者の30~40%が部分的反応を示す(Brown 1996)。現在、承認されたTRAの薬物治療はない。
【0032】
自己誘導は、薬物がそれ自体の代謝を促進する酵素を誘導する能力であり、耐性をもたらす可能性がある。
【0033】
[恐怖症]
恐怖症は、人に強い不安を引き起こす特定の物体や状況を完全に回避させる不合理な恐怖である。恐怖症はいくつかの形で発生する。例えば、広場恐怖症は、パニック発作を引き起こし、そこからの脱出が困難になる可能性がある状況にいることへの恐怖である。社会恐怖症又は社会不安障害は、自己意識、判断、評価、及び批評の感情を自動的にもたらす可能性がある、社会的状況及び他の人との交流に対する恐怖である。それは、他の人々によって否定的に判断され、評価されることへの恐怖と不安であり、不適切さ、恥ずかしさ、屈辱、そして抑うつの感情につながる。発汗、心臓の鼓動、震えなどのパニック発作に伴う身体的症状の多くは、恐怖症にも起こる。
【0034】
恐怖症には、特定恐怖症と複雑恐怖症が含まれる。特定恐怖症は不安障害であり、その本質的な特徴は、外接刺激に対する持続的な恐怖である不安障害であり、外接刺激は、パニック発作の恐怖や、社会的状況での屈辱や恥ずかしさ(社会恐怖症に該当する)以外の物体や状況であり得る。例としては、飛行恐怖症、高所恐怖症、動物恐怖症、注射恐怖症、血液恐怖症などがある。単純恐怖症は「特定」恐怖症と呼ばれることがある。恐怖刺激への曝露は、ほぼ必ず、即時の不安反応につながる。社会恐怖症は、複雑恐怖症の一種であり、恥ずかしさが発生する可能性のある社会的又はパフォーマンスの状況に対する持続的な恐怖を特徴としている。
【0035】
DSM-5(The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5th ed、精神疾患の診断・統計マニュアル、第5版、アメリカ精神医学会、2013)では、恐怖症とは、状況や物体に対する強い恐怖や不安、及びそれらの状況や物体の回避に関連する不安状態である。恐怖症は、複雑恐怖症(社会不安障害や広場恐怖症など)と単純又は特定恐怖症(高所、クモ、飛行、血液など)に細分されている。特定恐怖症が一般的で、12か月の有病率は7.3%、生涯の有病率は10.8%である(NZメンタルヘルス調査)。複雑恐怖症とは対照的に、特定恐怖症に対する治療法はほとんどない。体系的な脱感作や認知行動療法などの心理療法が有効な場合がある。特定恐怖症の患者を対象とした薬物試験はほとんどなく、この適応症に対する薬事承認はない。
【0036】
治療不応性不安症の24人の患者を対象とした恐怖質問票(MarksとMathews)サブスケールデータの最近の分析では、ケタミンの0.25~1mg/kgの単回皮下投与により、特定恐怖症である血液恐怖症のサブスケールの評価が用量依存的に低下したことが示されている(Glueの未提出マニュスクリプト)。2時間でのFQBIスコアと2時間でのケタミン(
図2A)及びノルケタミンの濃度(
図2B)の間に正の用量反応関係が確認された。具体的には、薬物濃度が高いほどスコアが低くなった。ケタミンと比較して、2時間のノルケタミン濃度とFQBIスコアの指数関数的減少曲線のR
2値は大きく、この臨床効果におけるノルケタミンのより大きな役割を裏付け得る。
【0037】
これらの改善は、3か月の維持治療フェーズ中に維持された。ケタミンは幅広い抗不安作用と抗うつ作用を持つようであり、我々は、特定恐怖症を含む内在化障害に関連する性格特性である神経症への影響を介して、それが作用している可能性があると仮説を立てた(Glue 2018)。
【0038】
本発明は、恐怖障害の身体的(例えば、末梢及び内臓)症状ならびに精神的(認知的及び感情的)症状に影響を及ぼし得る。
【0039】
本発明は、DSM-5特定恐怖症を治療及び/又は予防する方法を提供し、DSM-5特定恐怖症は、例えば、環境恐怖症、動物恐怖症、状況恐怖症、身体恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、環境恐怖症は、例えば、雑菌、深水、高所への恐怖、その他の環境恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、動物恐怖症は、例えば、犬、クモ、ヘビへの恐怖、その他の動物恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、状況恐怖症は、例えば、飛行機で飛ぶこと、歯科医を訪れることへの恐怖、その他の状況恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、身体恐怖症は、例えば、血液露見への恐怖、その他の身体恐怖症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0040】
この用途で提示されたデータは、皮下投与に基づいていた。しかし、発表された研究によると、ケタミンに対する抗うつ反応は投与経路に依存しないことが確認されている。すなわち、臨床的に関連する気分の改善は、静脈内、皮下、筋肉内投与(Loo 2016)、液体製剤による経口投与(Schoevers 2016)、R-107(Douglas特許出願)などの徐放性経口製剤、及び鼻腔内投与(Daly 2018)の後に認められている。
【0041】
ケタミンの幅広い抗うつ効果と不安緩解効果を考慮すると、特定恐怖症に関連する不安に対するケタミンの効果は、経口投与や、持続及び/又は制御放出経口投与及び/又は維持治療投与養生法を含む、他の投与方法を通しても明らかである。
【0042】
[活性薬剤]
本発明の医薬組成物は、例えば、ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容される塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される活性薬剤を含み得る。本明細書で使用される「ケタミン」は、式(I)の化合物を含むと理解され、2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オンというIUPAC名を有する。
【化1】
したがって、ケタミンは、R及びS鏡像異性体、ならびにその薬学的に許容される塩又は溶媒和物を含む。一実施形態では、ケタミンは、(R)-ケタミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物である。別の実施形態では、ケタミンは、(S)-ケタミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物である。さらなる実施形態において、ケタミンは、(S)-ケタミン及び(R)-ケタミン、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物のラセミ化合物、あるいは、(S)-ケタミン及び(R)-ケタミン、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の任意の混合物である。ケタミンは、好ましくは、その薬学的に許容される酸付加塩を含み得る。薬学的に許容される酸付加塩を調製するために使用される酸は、好ましくは、非毒性の酸付加塩、すなわち、薬理学的に許容されるアニオンを含む塩(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、(D,L)-及びL-酒石酸塩、(D,L)-及びL-リンゴ酸塩、酒石酸水素塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカリン酸塩及び安息香酸塩)を形成するものである。好ましい塩はケタミンの塩酸塩である。
【0043】
本明細書で使用されるケタミンは、その代謝産物を含むこともできる。代謝産物はノルケタミン又はデヒドロノルケタミン、好ましくはノルケタミンである。ノルケタミンのIUPAC名は2-アミノ-2-(2-クロロフェニル)シクロヘキサン-1-オンであり、式(II)を有し、N-脱メチル化によりケタミンから得られる。
【化2】
ノルケタミンは、(R)-ノルケタミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、あるいは、(S)-ノルケタミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、あるいは、(S)-ノルケタミン及び(R)-ノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物のラセミ化合物、あるいは、(S)-ノルケタミン及び(R)-ノルケタミン、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の任意の混合物として提供できる。
【0044】
例示的な実施形態では、本発明の製剤は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%の濃度で活性薬剤を含み得る。例示的な実施形態では、本発明の製剤は、約1~20%、約5%~25%、約10%~約20%、又は約15%~約18%の濃度で活性薬剤を含み得る。
【0045】
[併用療法]
対象の病状を治療及び/又は予防する方法及び組成物は、本明細書に記載の本発明の化合物を、少なくとも1種の追加の療法(例えば、少なくとも1種の抗不安薬、少なくとも1種の抗うつ薬、少なくとも1種の神経遮断薬、少なくとも1種の気分安定薬、少なくとも1種の抗精神病薬、少なくとも1種の催眠薬、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される治療薬)と組み合わせて投与することを含み、本発明の実施形態により提供される。例示的な実施形態では、活性剤は、その効能を高めるために、別の治療介入と組み合わせて、又は同時に投与される。他の治療介入の例は以下を含むが、これらに限定されない:カウンセリング、心理療法、認知療法など、電気けいれん療法、水療法、高気圧酸素療法、電気療法と電気刺激、経皮電気神経刺激(transcutaneous electrical nerve stimulation、TENS)(例えば、神経障害性疼痛などの痛みの治療用)、脳深部刺激(例えば、神経障害性疼痛、パーキンソン病、振戦、ジストニアなどの痛みの治療のために)、迷走神経刺激及び/又は経頭蓋磁気刺激など。
【0046】
例示的な実施形態では、少なくとも1種の抗不安薬は、アルプラゾラム、ブロマゼパム、ジアゼパム、ロラゼパム、クロナゼパム、テマゼパム、オキサゼパム、フルニトラゼパム、トリアゾラム、クロルジアゼポキシド、フルラゼパム、エスタゾラム、ニトラゼパム、及びそれらの薬学的に許容される塩、異性体、並びにこれらの混合物である。抗不安薬のさらなる例は以下を含むが、これらに限定されない:ベンゾジアゼピン(例:アルプラゾラム、ブロマゼパム(LEXOTAN)、クロルジアゼポキシド(LIBRIUM)、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、ニメタゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、オキサゼパム(Serax)、テマゼパム(RESTORIL、NORMISON、PLANUM、TENOX、及びTEMAZE、トリアゾラム、セロトニン1Aアゴニスト(例えば、ブスピロン(BUSPAR))、バルビツール酸塩(例えば、アモバルビタール(アミタールナトリウム)、ペントバルビタール(NEMBUTAL)、セコバルビタール(SECONAL)、フェノバルビタール、メトヘキシタール、チオペンタール、メチルフェノバルビタール、メタルビタール、バルベキサクロン)、ヒドロキシジン、カンナビジオール、並びにハーブ療法(例、バレリアン、カバ(カバカバ)、カモミール、クラトム、ブルーロータスエキス、Sceletium tortuosum(カンナ)及びバコパモニエラ)。
【0047】
例示的な実施形態では、少なくとも1種の抗うつ薬は、シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン;ベンラファキシンとデュロキセチン;ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド;アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドチエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトレースン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン;マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラゾドン、及びそれらの薬学的に許容される塩、異性体、並びにこれらの組み合わせである。抗うつ薬には、合成化学化合物、又はセイヨウオトギリソウなどの自然療法若しくはハーブ療法が含まれる。
【0048】
ハーブ抗うつ薬は、例えば、セイヨウオトギリソウ;カバカバ;エキナセア;ノコギリヤシ;ホーリーバジル;カノコソウ;マリアアザミ;シベリアニンジン;高麗ニンジン;アシュワガンダの根;イラクサ;イチョウ科;ゴツコラ;イチョウ/ゴツコラシュプリーム;レンゲソウ;ゴールデンシール;カラトウキ;ニンジン;セイヨウオトギリソウシュプリーム;エキナセア;ビルベリー、緑茶;ホーソン;ショウガ、イチョウ、ウコン;ボスウェリアセラタ;ブラックコホシュ;キャッツクロー;イヌハッカ;カモミール;タンポポ;チェストツリーベリー;ブラックエルダーベリー;ナツシロギク;ニンニク;セイヨウトチノキ;カンゾウ;レッドクローバーの花と葉;イワベンケイ;コレウスフォルスコリイ;トケイソウ;コゴメバナ;ヨヒンベ;ブルーベリー植物;黒コショウの植物;ツボクサ;レンゲソウ;バレリアンケシの根とブドウの種子;クマツヅラ;エキナセアの根;スカルキャップ;セレニティエリクサー;及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0049】
抗うつ薬の例は以下を含むが、これらに限定されない:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitors、SSRIs)(例えば、フルオキセチン(PROZAC)、パロキセチン(PAXIL、SEROXAT))、エスシタロプラム(LEXAPRO、ESIPRAM)、シタロプラム(CELEXA)、及びセルトラリン(ZOLOFT))、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(serotonin-norepinephrine reuptake inhibitors、SNRIs)(例えば、ベンラファキシン(EFFEXOR)、及びデュロキセチン(CYMBALTA))、ノルアドレナリン作動性と特定セロトニン作動性抗うつ薬(noradrenergic and specific serotonergic antidepressants、NASSAs)(例えば、ミルタザピン(AVANZA、ZISPIN、REMERON))、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害薬(norepinephrine reuptake inhibitors、NRIs)(例えば、レボキセチン(EDRONAX))、ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害薬(例えば、ブプロピオン(WELLBUTRIN、ZYBAN))、三環系抗うつ薬(TCAs)(例えば、アミトリプチリン及びデシプラミン)、モノアミン酸化酵素阻害薬(monoamine oxidase inhibitors、MAOIs)(例えば、フェネルジン(NARDIL)、モクロベミド(MANERIX)、セレギリン)、及び増強薬(例えば、トリプトファン(TRYPTAN)及びブスピロン(BUSPAR))。
【0050】
例示的な実施形態では、少なくとも1種の神経遮断薬はハロペリドール(HALDOL)、ドロペリドール、ベンペリドール、トリペリドール、メルペロン、レンペロン、アザペロン、ドンペリドン、リスペリドン、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、ペリシアジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、ピモジド、シアメマジン、クロルプロチキセン、クロペンチキソール、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、アセナピン、パリペリドン、イロペリドン、ゾテピン、セルチンドール、ルラシドン、アリピプラゾール、及びそれらの薬学的に許容される塩、異性体、並びにこれらの組み合わせである。
【0051】
例示的な実施形態では、少なくとも1種の気分安定薬は以下を含むが、これらに限定されない:炭酸リチウム、オロチン酸リチウム、リチウム塩、バルプロ酸(DEPAKENE)、ジバルプロエクスナトリウム(DEPAKOTE)、バルプロ酸ナトリウム(DEPACON)、ラモトリギン(LAMICTAL)、カルバマゼピン(TEGRETOL)、ガバペンチン(NEURONTIN)、オクスカルバゼピン(TRILEPTAL)、トピラマート(TOPAMAX)、及びこれらの組み合わせ。
【0052】
抗精神病薬の例は以下を含むが、これらに限定されない:ブチロフェノン系化合物(例えば、ハロペリドール)、フェノチアジン系化合物(例えば、クロルプロマジン(THORAZINE)、フルフェナジン(PROLIXIN)、ペルフェナジン(TRILAFON)、プロクロルペラジン(COMPAZINE)、チオリダジン(MELLARIL)、トリフルオペラジン(STELAZINE)、メソリダジン(SERENTIL)、プロマジン、トリフルプロマジン(VESPRIN)、レボメプロマジン(NOZINAN)、プロメタジン(PHENERGAN))、チオキサンテン系化合物(例えば、クロルプロチキセン(TRUXAL)、フルペンチキソール(DEPIXOLとFLUANXOL)、チオチキセン(NAVANE)、ズクロペンチキソール(CLOPIXOLとACUPHASE))、クロザピン、オランザピン、リスペリドン(RISPERDAL)、クエチアピン(SEROQUEL)、ジプラシドン(GEODON)、アミスルプリド(SOLIAN)、パリペリドン(INVEGA)、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン(ACP-104)、アリピプラゾール(ABILIFY)、テトラベナジン(XENAZINE)、カンナビジオール、及びそれらの薬学的に許容される塩、異性体、並びにこれらの組み合わせ。
【0053】
催眠薬の例は以下を含むが、これらに限定されない:バルビツール酸塩、オピオイド系化合物、ベンゾジアゼピン系化合物(例えば、アルプラゾラム、ブロマゼパム(Lexotan)、クロルジアゼポキシド(Librium)、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、ニメタゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、オキサゼパム(SERAX)、テマゼパム(RESTORIL、NORMISON、PLANUM、TENOX、及びTEMAZE)、トリアゾラム)、非ベンゾジアゼピン系化合物(例えば、ZOLPIDEM、ZALEPLON、ZOPICLONE、ESZOPICLONE)、抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、ヒドロキシジン、プロメタジン)、ガンマ-ヒドロキシ酪酸(Xyrem)、グルテチミド、抱水クロラール、エスクロルビノール、レボメプロマジン、クロルメチアゾール、メラトニン、及びアルコール。鎮静剤の例は以下を含むが、これらに限定されない:バルビツール酸塩(例えば、アモバルビタール(アミタール)、ペントバルビタール(Nembutal)、セコバルビタール(Seconal)、フェノバルビタール、メトヘキシタール、チオペンタール、メチルフェノバルビタール、メタルビタール、バルベキサクロム)、ベンゾジアゼピン系化合物(例えば、アルプラゾラム、ブロマゼパム(LEXOTAN)、クロルジアゼポキシド(LIBRIUM)、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、ニメタゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、オキサゼパム(SERAX)、テマゼパム(RESTORIL、NORMISON、PLANUM、TENOX、及びTEMAZE)、トリアゾラム)、及びそれらの薬学的に許容される塩、異性体、並びにこれらの組み合わせ。例は、さらに以下を含む:ハーブ鎮静剤(例えば、アシュワガンダ、キャットニップ、カバ(Piper methysticum)、マンドレーク、マリファナ、バレリアン)、溶剤鎮静剤(例、抱水クロラール(NOCTEC)、ジエチルエーテル(エーテル)、エチルアルコール(アルコール飲料)、三塩化メチル(クロロホルム))、非ベンゾジアゼピン系鎮静剤(例、エスゾピクロン(LUNESTA)、ザレプロン(SONATA)、ゾルピデム(AMBIEN)、ゾピクロン(IMOVANE、ZIMOVANE))、クロメチアゾール、ガンマ-ヒドロキシブチレート(GHB)、サリドマイド、エスクロルビノール(PLACIDYL)、グルテチミド(DORIDEN)、ケタミン(KETALAR、KETASET)、メタカロン(SOPOR、QUAALUDE)、メチプリロン(NOLUDAR)、及びラメルテオン(ROZEREM)。
【0054】
アルファ-2-デルタリガンドの例は以下を含む:ガバペンチン、プレガバリン、3-メチルガバペンチン、(1アルファ、3アルファ、5アルファ)(3-アミノ-メチル-ビシクロ[3.2.0]ヘプト-3-イル)-酢酸、(3S、5R)-3アミノメチル-5メチル-ヘプタン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-ヘプタン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-オクタン酸、(2S、4S)-4-(3-クロロフェノキシ)プロリン、(2S、4S)-4-(3-フルオロベンジル)-プロリン、[(1R、5R、6S)-6-(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト-6-イル]酢酸、3-(1-アミノメチル-シクロヘキシルメチル)-4H-[1,2,4]オキサジアゾール-5-オン、C-[1-(1H-テトラゾール-5-イルメチル)-シクロヘプチル]-メチルアミン、(3S、4S)-(1-アミノメチル-3,4-ジメチル-シクロペンチル)-酢酸、(3S、5R)-3アミノメチル-5メチル-オクタン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-ノナン酸、(3S、5R)-3アミノ-5メチル-オクタン酸、(3R、4R、5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-ヘプタン酸及び(3R、4R、5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-オクタン酸、並びにこれらの組み合わせ。
【0055】
セロトニン1a部分アゴニストの例には、ブスピロン、ゲピロン、エルトプラジン、又はタンドスピロン、及びそれらの薬学的に許容される塩、異性体、並びにこれらの組み合わせが含まれる。
【0056】
抗アドレナリン薬の例は以下を含む:クロニジン、プラゾシン、プロプラノロール、フアンファシン、メチルドパ、グアナベンズ;ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシン、シロドシン、アルフゾシン、タムスロシン、デュタステリド/タムスロシン、グアナドレル、メカミラミン、グアネチジン、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせ。
【0057】
ベンゾジアゼピン剤の例は以下を含む:アルプラゾラム、ブロマゼパム(LEXOTAN)、クロルジアゼポキシド(LIBRIUM)、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、ニメタゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、オキサゼパム(SERAX)、テマゼパム(RESTORIL、NORMISON、PLANUM、TENOX、及びTEMAZE)、トリアゾラム、それらの薬学的に許容される塩、異性体、及びこれらの組み合わせ。
【0058】
薬剤は治療的に有効な量で投与される。特定の実施形態では、薬剤は同じ剤形で投与される。特定の実施形態では、治療薬は別々に投与される。
【0059】
[薬物動態]
本発明の製剤は、例えば4時間超、5時間超、6時間超、7時間超、8時間超、9時間超、10時間超、又はさらに長いケタミンの持続放出を提供する。本明細書に記載されている製剤のケタミン及びノルケタミンの排出半減期の推定値は、以前に報告された即時放出錠剤製剤のものよりもはるかに長い(例えば、<2時間に対して8時間;Yanagihara 2002)。
【0060】
本発明の製剤が自己誘導を提供するという証拠が存在する(
図10)。これは、3~4日繰り返し投与した後に安定したように見える。これに関して、先例のヒトデータはない。
【0061】
本発明の製剤について、吸収された薬物の90%以上がケタミンではなくノルケタミンとして存在するという証拠がある。患者のコホート(コホート4)では、存在する主要な測定可能な薬物がノルケタミンであるにもかかわらず、うつ病と不安症の改善があった。ケタミン又は代謝物がケタミンの投与後に気分の改善を生み出すのに重要であるかどうかについて科学文献で多くの議論があった。Zanos 2016とZarate 2017は、ケタミンの代謝物である6-ヒドロキシノルケタミンを重要視している。本発明者らは、驚くべきことに、ノルケタミン自体が錠剤の治療効果において重要であることを見出した。これは、個別ではなくケタミンとノルケタミンの組み合わせとしてデータを提示し、治療効果に対するノルケタミンの重要性を報告しなかった以前のレポートとは対照的である(WO 2015/031410を参照)。
【0062】
本明細書に記載の経口製剤は、60~120mgの投与後に解離性の副作用がなく、240mgでは解離性の副作用が最小限である(
図2A及び2B)。これは、投与後の最大60分間に顕著な解離症状が見られる、すべての投与経路によるケタミン注射(Loo 2016など)とは著しく対照的である。
【0063】
本発明の製剤は、注射ケタミンと比較して忍容性が改善されて、抑うつ気分と不安気分の両方を改善するのに有効であるという証拠がある。例えば、ある優れた研究グループは、解離的な経験を持つことがTRDの気分改善に不可欠であるという発見を強調している。「試験されたケタミンの抗うつ薬応答のメディエーターのうち、解離性の副作用のみがより強力で持続的な抗うつ薬を予測した」(ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24679390)。本発明者らは、解離なし又は最小限の解離でうつ病スコアの改善が起こることを発見した(
図8及び5Aを参照)。解離なしのうつ病スコアの改善というこの観測は、新規かつ非自明である。
【0064】
試験603コホート4における不安症状の改善の兆候は、注射ケタミンの1~2時間と比較してより緩やか(48時間)であったが(
図7)、全体的な効果の程度は初期の治療で注射された薬物と同じであると観察された。
【0065】
さらに、603試験を完了した患者を対象としたオープンラベル延長試験において、安全で効果的な用量と投与スケジュールが確認されている。不安症/うつ病性障害が混合した4人の患者のうち3人は、週1回又は2回、120mgの経口投与で寛解を維持した。
【0066】
[マトリックス製剤]
特定の実施形態では、本発明は、少なくとも以下のステップを含む、固体経口持続放出医薬剤形を調製するプロセスに関する:
(a)以下を組み合わせて組成物を形成すること:
(1)レオロジー測定法に基づいて、少なくとも約1,000,000;少なくとも約2,000,000;少なくとも約3,000,000;少なくとも約4,000,000;少なくとも約5,000,000;少なくとも約6,000,000;少なくとも約6,000,000;少なくとも約7,000,000;及び少なくとも約8,000,000からなる群から選択される近似分子量を有する少なくとも1種のポリエチレンオキシド;及び
(2)少なくとも1種の活性薬剤;
(b)当該組成物を成形して持続放出マトリックス製剤を形成する;そして
(c)少なくとも約1分、少なくとも約2分、少なくとも約3分、少なくとも約4分、少なくとも約5分、少なくとも約6分、少なくとも約7分、少なくとも約8分、少なくとも約9分、及び少なくとも約10分からなる群から選択される期間、当該持続放出マトリックス製剤を、少なくとも前記ポリエチレンオキシドの軟化温度である温度に供する、という硬化工程を少なくとも含む、前記マトリックス製剤の硬化。好ましくは、硬化は大気圧で行われる。好ましい実施形態では、剤形はコーティングされている。
【0067】
特定の実施形態では、組成物は工程b)で成形され、錠剤の形態で持続放出マトリックス製剤を形成する。錠剤の形態で持続放出マトリックス製剤を成形するために、直接圧縮プロセスを使用することができる。直接圧縮は、湿式造粒などのプロセス手順を回避するので、錠剤を成形するための効率的でシンプルなプロセスである。しかし、湿式造粒及びその後の顆粒の圧縮による錠剤の形成など、当技術分野で知られている錠剤を製造するための他の任意のプロセスを使用することができる。
【0068】
一実施形態では、工程c)における持続放出マトリックス製剤の硬化は、持続放出マトリックス製剤中の高分子量ポリエチレンオキシドが少なくとも部分的に溶融する硬化工程を少なくとも含む。例えば、持続放出マトリックス製剤中の高分子量ポリエチレンオキシドの少なくとも約20%又は少なくとも約30%が溶融する。好ましくは、持続放出マトリックス製剤中の高分子量ポリエチレンオキシドの少なくとも約40%又は少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、少なくとも約75%又は少なくとも約90%が溶融する。好ましい実施形態では、高分子量ポリエチレンオキシドの約100%が溶融する。
【0069】
他の実施形態において、工程c)における持続放出マトリックス製剤の硬化は、持続放出マトリックス製剤が特定の期間、高温に曝される硬化工程を少なくとも含む。そのような実施形態では、ステップc)で使用される温度、すなわち硬化温度は、高分子量ポリエチレンオキシドの軟化温度と少なくとも同じくらい高い。いかなる理論に拘束されることを意図しないが、高分子量ポリエチレンオキシドの軟化温度と少なくとも同じくらい高い温度での硬化は、ポリエチレンオキシド粒子を少なくとも互いに付着させるか、又は融合までさせると考えられている。いくつかの実施形態によれば、硬化温度は、少なくとも約60℃若しくは少なくとも約62℃であり、又は約62℃~約90℃、又は約62℃~約85℃又は62℃~約80℃又は約65℃~約90℃又は約65℃~約85℃又は約65℃~約80℃の範囲である。硬化温度は、好ましくは約68℃~約90℃又は約68℃~約85℃又は約68℃~約80℃、より好ましくは約70℃~約90℃又は約70℃~約85℃又は約70℃~約80℃、最も好ましくは約75℃~約90℃又は約75℃~約85℃又は約72℃~約80℃、又は約70℃~約75℃の範囲である。硬化温度は、少なくとも約60℃、又は少なくとも約62℃であり得るが、約90℃未満又は約80℃未満であり得る。好ましくは、それは約62℃~約75℃、特に約68℃~約75℃の範囲である。好ましくは、硬化温度は、高分子量ポリエチレンオキシドの軟化温度範囲の下限と少なくとも同じくらい高いか、又は少なくとも約62℃若しくは少なくとも約68℃である。より好ましくは、硬化温度は、高分子量ポリエチレンオキシドの軟化温度範囲内であるか、又は少なくとも約70℃である。さらにより好ましくは、硬化温度は、高分子量ポリエチレンオキシドの軟化温度範囲の上限と少なくとも同じくらい高いか、又は少なくとも約72℃である。代替的な実施形態では、硬化温度は高分子量ポリエチレンオキシドの軟化温度範囲の上限よりも高く、例えば、硬化温度は少なくとも約75℃又は少なくとも約80℃である。
【0070】
硬化時間は、特定の組成及び形成・硬化温度に依存して、約1分~約24時間又は約5分~約20時間又は約10分~約15時間又は約15分~約10時間又は約30分~約5時間で変動し得る。組成のパラメータ、硬化時間及び硬化温度は、本明細書に記載されているように耐タンパー性を達成するように選択される。特定の実施形態によれば、硬化時間は約15分~約30分で変動する。
【0071】
本発明の特定の実施形態では、徐放性製剤は、本明細書に記載の制御放出コーティングを任意に有するマトリックスを通して達成することができる。本発明はまた、所望の範囲内のAPIのインビトロ溶解速度を提供し、pH依存的又はpH非依存的な方法でAPIを放出する徐放性マトリックスを利用し得る。
【0072】
本発明において、徐放性マトリックスに含めることができる適切な徐放性材料の非限定的なリストには、ガム、セルロースエーテル、アクリル樹脂、タンパク質由来の材料、ワックス、シェラックなどの親水性及び/又は疎水性材料、ならびに水添ヒマシ油及び水添植物油などの油が含まれる。しかしながら、APIの徐放性を付与することができる任意の薬学的に許容される疎水性又は親水性徐放性材料を、本発明に従って使用することができる。好ましい徐放性ポリマーには、エチルセルロースなどのアルキルセルロース、アクリル酸及びメタクリル酸のポリマー及びコポリマー;並びにセルロースエーテル、特にヒドロキシアルキルセルロース(特にヒドロキシプロピルメチルセルロース)及びカルボキシアルキルセルロースがある。好ましいアクリル酸及びメタクリル酸のポリマー及びコポリマーは以下を含む:メチルメタクリレート、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、エチルアクリレート、トリメチルアンモニオエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミンコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸)(無水物)、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸無水物)、及びグリシジルメタクリレートコポリマー。特定の好ましい実施形態は、本発明のマトリックスにおいて、前述の徐放性材料のいずれかの混合物を利用する。マトリックスはまた、バインダーを含み得る。
【0073】
上記の成分に加えて、徐放性マトリックスは、適切な量の他の物質、例えば、製薬業界で従来からある希釈剤、潤滑剤、バインダー、造粒助剤及び流動促進剤も含み得る。
【0074】
徐放性マトリックスは、例えば、溶融造粒又は溶融押出技術によって調製することができる。一般に、溶融造粒技術は、通常は固体の疎水性バインダー材料、例えばワックスを溶融し、その中に粉末薬物を組み込むことを含む。徐放性剤形を得るために、疎水性徐放性材料、例えば、エチルセルロース又は水不溶性アクリルポリマーを、溶融ワックスの疎水性バインダー材料に組み込むことが必要な場合がある。
【0075】
追加の疎水性バインダー材料は、1種以上の水不溶性ワックス様熱可塑性物質を含み得、当該水不溶性ワックス様物質よりも疎水性が低い1種以上のワックス様熱可塑性物質と混合可能である。徐放を達成するために、製剤中の個々のワックス様物質は、初期放出段階の間、胃腸液に実質的に非分解性かつ不溶性でなければならない。有用な水不溶性ワックス様バインダー物質は、約1:5,000(w/w)未満の水溶性を有するものであり得る。
【0076】
本発明による適切な溶融押出マトリックスの調製は、例えば、APIを徐放性材料及び好ましくはバインダー材料とブレンドして、均質な混合物を得る工程を含み得る。次に、均質な混合物は、混合物を少なくとも十分に押し出す程度に軟化させるのに十分な温度に加熱される。次に、得られた均一な混合物を、例えば二軸スクリュー押出機を使用して押し出して、ストランドを形成する。押出物は、好ましくは、当技術分野で公知の任意の手段によって冷却され、多粒子に切断される。次に、マトリックス多粒子を単位用量に分割する。押出物は、好ましくは約0.1~約5mmの直径を有し、少なくとも約24時間の期間にわたって、活性薬剤又はその薬学的に許容される塩の徐放を提供する。
【0077】
本発明の溶融押出製剤を調製するための任意のプロセスは以下を含む:疎水性徐放性材料、API、及び任意にバインダー材料を押出機に直接計量する;均質な混合物を加熱する;均質な混合物を押し出してストランドを形成する;均質な混合物を含むストランドを冷却する;ストランドを約0.1mm~約12mmのサイズを有するマトリックス多粒子に切断する;そして前記粒子を単位用量に分割する。本発明のこの態様では、比較的連続的な製造手順が実現される。
【0078】
可塑剤、例えば、前述の可塑剤は、溶融押出マトリックスに含まれ得る。可塑剤は、好ましくは、マトリックスの約0.1~約30重量%含まれる。他の医薬賦形剤、例えば、タルク、単糖類又は多糖類、滑沢剤などが、必要に応じて、本発明の徐放性マトリックスに含まれ得る。含まれる量は、達成される所望の特性に依存する。
【0079】
押出機の開口部又は出口ポートの直径を調整して、押出されるストランドの厚さを変えることができる。さらに、押出機の出口部分は円形である必要はなく、楕円形、長方形などにすることができる。既存のストランドは、熱線カッター、ギロチンなどを使用して粒子に変えることができる。
【0080】
溶融押出マトリックス多粒子系は、例えば、押出機出口開口に応じて、顆粒、スフェロイド又はペレットの形態であり得る。本発明の目的のために、「溶融押出マトリックス多粒子」及び「溶融押出マトリックス多粒子系」及び「溶融押出マトリックス粒子」という用語は、複数の単位を指し、好ましくは、複数の単位は、類似のサイズ及び/又は形状の範囲であり、1種以上の活性薬剤及び1種以上の賦形剤を含み、好ましくは、複数の単位は、本明細書に記載の疎水性徐放性材料を含む。好ましくは、溶融押出マトリックス多粒子は、長さが約0.1~約12mmの範囲であり、約0.1~約5mmの直径を有する。また、溶融押出マトリックス多粒子は、このサイズ範囲内の任意の幾何学的形状であり得ることが理解されるべきである。特定の実施形態において、押出物は、球状化工程を必要とせずに、所望の長さに単純に切断され、治療活性薬剤の単位用量に分割され得る。
【0081】
好ましい一実施形態では、カプセル内に有効量の溶融押出マトリックス多粒子を含む経口剤形が調製される。例えば、複数の溶融押出マトリックス多粒子は、摂取されて胃腸液と接触したときに有効な徐放用量を提供するのに十分な量でゼラチンカプセルに格納され得る。
【0082】
別の実施形態では、適切な量の多粒子押出物は、標準的な技術を使用する従来の打錠装置を使用して経口錠剤に圧縮される。錠剤(圧縮及び成形)、カプセル(ハードゼラチン及びソフトゼラチン)及びピルを製作するための技術と組成は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,(Arthur Osol,editor),1553-1593(1980)に記載されている。
【0083】
上記の成分に加えて、スフェロイド、顆粒、又はマトリックスの多粒子は、適切な量の他の材料、例えば、製薬業界で慣用の、希釈剤、潤滑剤、バインダー、造粒助剤、及び流動促進剤を、必要に応じて、製剤の約50重量%までの量で含んでもよい。これらの追加の材料の量は、所望の製剤に所望の効果を提供するのに十分なものとする。
【0084】
一実施形態では、溶解度が増加された形態の少なくとも1種の活性薬剤が、侵食性又は非侵食性のポリマーマトリックス制御放出製剤に組み込まれる。侵食性マトリックスとは、水侵食性又は水膨潤性又は水溶性として意図され、純水において侵食又は膨潤又は溶解し、又は侵食若しくは溶解を引き起こすのに十分にポリマーマトリックスをイオン化するための酸若しくは塩基の存在を必要とするという意味である。使用の水性環境と接触すると、侵食性ポリマーマトリックスは水を吸収し、溶解度が増加された活性薬剤の形態を閉じ込める水性膨潤ゲル又は「マトリックス」を形成する。水性膨潤したマトリックスは、使用環境において徐々に侵食、膨潤、崩壊又は溶解し、それにより使用環境への活性薬剤の放出を制御する。活性薬剤が組み込まれている侵食性ポリマーマトリックスは、一般に、溶解度が増加された形態と混合、その形成に続いて、使用の水性環境と接触したときに水を吸収して薬物の形態を閉じ込める水膨潤ゲル又は「マトリックス」を形成する、一連の賦形剤として説明され得る。薬物放出は、さまざまなメカニズムによって発生する可能性がある:マトリックスは、溶解度が増加された形態で薬物の粒子又は顆粒の周りから崩壊又は溶解し得る;あるいは、薬物は吸収された水溶液に溶解し、製剤の錠剤、ビーズ又は顆粒から拡散し得る。この水膨潤マトリックスの重要な成分は、水膨潤性、侵食性、又は可溶性のポリマーであり、これらは一般にオスモポリマー、ヒドロゲル、又は水膨潤性ポリマーとして説明される。このようなポリマーは、線状、分岐状、又は架橋されたものであり得る。それらはホモポリマー又はコポリマーであり得る。それらは、ビニル、アクリレート、メタクリレート、ウレタン、エステル及びオキシドモノマーから誘導された合成ポリマーであり得るが、最も好ましくは、多糖類又はタンパク質などの天然に存在するポリマーの誘導体である。
【0085】
そのような材料は以下を含む:キチン、キトサン、デキストラン、プルランなどの天然多糖類;寒天ガム、アラビアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラギーナン、ガティガム、グアーガム、キサンタンガム、スクレログルカン;デキストリンやマルトデキストリンなどの澱粉;ペクチンなどの親水性コロイド;レシチンなどのリン脂質;アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコールなどのアルギン酸塩;ゼラチン; コラーゲン;及びセルロース類。「セルロース類」とは、糖繰り返し単位上のヒドロキシル基の少なくとも一部と化合物との反応により修飾されて、エステル結合又はエーテル結合置換基を形成するセルロースポリマーを意味する。例えば、セルロース系エチルセルロースは、糖繰り返し単位に結合したエーテル結合エチル置換基を有するが、セルロース系酢酸セルロースは、エステル結合アセテート置換基を有する。
【0086】
侵食性マトリックスの好ましいクラスのセルロース類は、水溶性及び水侵食性セルロース類を含み、例えば、エチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMEC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酢酸セルロース(CA)、プロピオン酸セルロース(CP)、酪酸セルロース(CB)、酢酸セルロースブチレート(CAB)、CAP、CAT、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP、HPMCAS、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート(HPMCAT)、及びエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)を含む。そのようなセルロース類の特に好ましいクラスは、低粘度(MWが50,000ダルトン以下)及び高粘度(MWが50,000ダルトンを超える)HPMCの様々なグレードを含む。市販の低粘度HPMCポリマーにはDow METHOCELシリーズE5、E15LV、E50LV、K100LYが含まれ、高粘度HPMCポリマーにはE4MCR、E10MCR、K4M、K15M、K100Mが含まれる。このグループで特に好ましいのは、METHOCEL Kシリーズである。その他の市販タイプのHPMCには、信越化学工業社製METOLOSE 90SHシリーズがある。
【0087】
侵食性マトリックス材料の主な役割は、使用環境への溶解度が増加された形態での活性薬剤の放出速度を制御することであるが、本発明者らは、マトリックス材料の選択が製剤によって達成される最大薬物濃度とともに高い薬物濃度の維持に大きな影響を及ぼし得ることを見出した。一実施形態では、マトリックス材料は、本明細書で以下に定義されるように、濃度を高めるポリマーである。
【0088】
侵食性マトリックス材料として有用な他の材料は以下を含むが、これらに限定されない;プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、エタクリル酸若しくはメタクリル酸のコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)、Rohm America Inc.ピスカタウェイ、ニュージャージー)並びに他のアクリル酸誘導体、例えば、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート、及び(トリメチルアミノエチル)メタクリレートクロライドのホモポリマー及びコポリマー。
【0089】
侵食性マトリックスポリマーは、製剤の安定性又は処理を促進するオスモポリマー、オスマゲン、溶解促進剤又は遅延剤及び賦形剤を含む、製薬業界で知られている多種多様な同じタイプの添加剤及び賦形剤を含み得る。
【0090】
製剤は、ヒドロゲルなどの膨潤性材料である賦形剤を、膨潤及び膨張することができる量で含み得る。膨潤性材料の例には、ポリエチレンオキシド、軽度に架橋された親水性ポリマーが含まれ、そのような架橋は共有結合又はイオン結合によって形成され、水及び水性体液と相互作用し、平衡状態になるまで膨潤又は膨張する。ヒドロゲルなどの膨潤性材料は、水中で膨潤し、その構造内にかなりの量の水を保持する能力を示し、架橋されたときにも水に溶解しない。膨潤性ポリマーは非常に高度に膨潤又は膨張でき、2~50倍の体積増加を示す。親水性ポリマー材料の具体例は以下を含む:ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)、陰イオン性及び陽イオン性ヒドロゲル、高分子電解質複合体、残留酢酸の低い、グリオキサール、ホルムアルデヒド、若しくはグルタルアルデヒドで架橋されたポリ(ビニルアルコール)、ジアルデヒドで架橋されたメチルセルロース、架橋寒天及びカルボキシメチルセルロースの混合物、コポリマー中の無水マレイン酸1モルあたり0.001~約0.5モルの多価不飽和架橋剤で、無水マレイン酸とスチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、又はイソブチレンを架橋した、コポリマーの微細な分散体形成することにより製造される水不溶性、水膨潤性コポリマー、N-ビニルラクタムの水膨潤性ポリマー、架橋ポリエチレンオキシドなど。膨潤性材料の他の例は以下を含む:0.05~60%の架橋を示すヒドロゲル、Carbopol酸性カルボキシポリマーとして知られる親水性ヒドロゲル、Cyanamer(商標)ポリアクリルアミド、架橋された水膨潤性インデン-無水マレイン酸ポリマー、Good-rite(商標)ポリアクリル酸、デンプングラフトコポリマー、Aqua-Keeps.(商標)アクリレートポリマー、ジエステル架橋ポリグルカンなど。
【0091】
製剤は添加物を含んでもよく、例えば、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリエチレングリコールポリマー、セルロースエーテルポリマー、セルロースエステルポリマー、ポリアルケニルポリエーテルで架橋されたアクリル酸のホモ及びコポリマー、ポリ(メタ)アクリレート、ホモポリマー(例えば、アリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸のポリマー)、コポリマー(例えば、アリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸及びC10~C30アルキルアクリレートのポリマー)、インターポリマー(例えば、ポリエチレングリコールと長鎖アルキル酸エステルのブロックコポリマーを含むホモポリマー又はコポリマー)、崩壊剤、イオン交換樹脂、腸内細菌叢に反応するポリマー(例えば、グアーガムなどの多糖類、植物又はキトサンから得られるイヌリン、動物から得られるコンドロイチン硫酸又は藻類からのアルギン酸塩又は微生物起源のデキストラン)及び医薬品樹脂。
【0092】
[ポリアルキレンオキシド]
本発明の医薬組成物は、約300,000以下の平均分子量を有する少なくとも1種のポリアルキレンオキシドを含み得、ポリエチレンオキシド、ポリメチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、又はそれらのコポリマーであり得る。例示的な実施形態では、第1のポリアルキレンオキシドはポリエチレンオキシドである。いくつかの実施形態では、ポリエチレンオキシドであり得るポリアルキレンオキシドは、約300,000の平均分子量を有する。他の実施形態では、ポリエチレンオキシドであり得るポリアルキレンオキシドは、約200,000の平均分子量を有する。特定の実施形態では、ポリエチレンオキシドであり得るポリアルキレンオキシドは、約100,000の平均分子量を有する。
【0093】
例示的な実施形態では、本発明の医薬組成物は、少なくとも1,000,000の平均分子量を有するポリアルキレンオキシドを含み得、ポリエチレンオキシド、ポリメチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、又はそれらのコポリマーであり得る。例示的な実施形態では、ポリアルキレンオキシドはポリエチレンオキシドである。いくつかの実施形態では、ポリエチレンオキシドであり得る第2のポリアルキレンオキシドは、約2,000,000の平均分子量を有する。他の実施形態では、ポリエチレンオキシドであり得るポリアルキレンオキシドは、約4,000,000の平均分子量を有する。さらなる実施形態では、ポリエチレンオキシドであり得る第2のポリアルキレンオキシドは、約5,000,000の平均分子量を有する。さらに他の実施形態では、ポリエチレンオキシドであり得るポリアルキレンオキシドは、約7,000,000の平均分子量を有する。追加の実施形態では、ポリエチレンオキシドであり得るポリアルキレンオキシドは、約8000,000の平均分子量を有する。他の実施形態では、ポリエチレンオキシドであり得るポリアルキレンオキシドは、約15,000,000の平均分子量を有する。
【0094】
例示的な実施形態では、ポリマーは、以下を含む群から選択され得る:ポリアルキレンオキシド、好ましくはポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリレート、それらのコポリマー、及び前述のポリマーの少なくとも2つの混合物。
【0095】
例示的な実施形態では、ポリマーは、ベースポリマー材料として、又はポリエチレンオキシド(PEO)などの溶解改変剤、例えば、商品名POLYOX(登録商標)(Dow)として使用するための水溶性ポリマーであり得る。熱可塑性ポリマーは、100K、200K、300K、400K、600K、900K、1000K、2000K、4000K、5000K、7000K、8000K(K=1,000)、及び任意にそれらの組み合わせなど、さまざまな分子量で使用できると理解される。好ましい実施形態では、PEOは高分子量PEOである。好ましい実施形態では、PEOは約7,000,000の分子量を有する。好ましい実施形態では、PEOは約4,000,000~8,000,000の分子量を有する。ポリエチレンオキシドの例には、NFにリストアップされ、100,000~約8,000,000の範囲の近似分子量を有するPOLYOX水溶性樹脂が含まれる。好ましいポリエチレンオキシドは、POLYOX WSR-80、POLYOX WSR N-750、POLYOX WSR-205、POLYOX WSR-1105、POLYOX WSR N-12K、POLYOX WSR N-60K、WSR-301、WSR Coagulant、WSR-303、及びそれらの組み合わせである。
【0096】
医薬組成物中に存在するポリアルキレンオキシドの量は多様であり、一般に、医薬組成物中に存在するポリアルキレンオキシドの量は、組成物の約10重量%~約95重量%の範囲であり得る。様々な実施形態において、医薬組成物中に存在するポリアルキレンオキシドの量は、医薬組成物の約20重量%~約90重量%、約30重量%~約80重量%、又は約35重量%~約70重量%の範囲であり得る。様々な実施形態では、医薬組成物中に存在するポリアルキレンオキシドの量は、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%であり得る。
【0097】
上述の実施形態では、レオロジー測定法に基づいて、約2,000,000~約15,000,000又は約2,000,000~約8,000,000の分子量を有する高分子量ポリエチレンオキシドを使用することができる。特に、レオロジー測定法に基づいて、2,000,000、4,000,000、7,000,000又は8,000,000の近似分子量を有するポリエチレンオキシドを使用することができる。特に、レオロジー測定法に基づいて、4,000,000の近似分子量を有するポリエチレンオキシドを使用することができる。
【0098】
組成物が少なくとも1種の低分子量ポリエチレンオキシドをさらに含む実施形態では、レオロジー測定法に基づいて約1,000,000未満の近似分子量を有するポリエチレンオキシド、例えばレオロジー測定法に基づいて100,000~900,000の近似分子量を有するポリエチレンオキシドを使用できる。そのような低分子量ポリエチレンオキシドの添加は、放出速度を特別に調整するために、例えば、特定の目的のために本来放出速度を遅くする製剤の放出速度を高めるために使用することができる。そのような実施形態では、レオロジー測定法に基づいて、100,000の近似分子量を有する少なくとも1種のポリエチレンオキシドを使用することができる。
【0099】
そのような特定の実施形態では、組成物は、レオロジー測定法に基づいて少なくとも1,000,000の近似分子量を有する少なくとも1種のポリエチレンオキシドと、レオロジー測定法に基づいて1,000,000未満の近似分子量を有する少なくとも1種のポリエチレンオキシドを含み、当該組成物は、レオロジー測定法に基づいて1,000,000未満の近似分子量を有するポリエチレンオキシドを少なくとも約10%(重量で)又は少なくとも約20%(重量で)を含む。そのような特定の実施形態では、硬化温度は約80℃未満、又はさらには約77℃未満である。特定の実施形態では、組成物中のポリエチレンオキシドの総含有量は、少なくとも約80%(重量で)である。
【0100】
[潤滑剤]
例示的な実施形態では、本発明の医薬組成物は、滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物ならびにステアリン酸マグネシウム及び微結晶性セルロースなどの他の打錠助剤を含み得る。
【0101】
本明細書に開示される医薬組成物はまた、医薬組成物の固体剤形の調製を容易にする少なくとも1種の潤滑剤をさらに含み得る。適切な潤滑剤の非限定的な例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、コロイド状二酸化ケイ素、水素化植物油、ステレオテックス、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウム、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、及び軽質油が挙げられる。例示的な実施形態では、潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウムであり得る。
【0102】
潤滑剤が医薬組成物に含まれる実施形態では、潤滑剤の量は、医薬組成物の約0.1重量%~約3重量%の範囲であり得る。様々な実施形態では、潤滑剤の量は、医薬組成物の約0.1重量%~約0.3重量%、約0.3重量%~約1重量%、又は約1重量%~約3重量%の範囲であり得る。例示的な実施形態では、潤滑剤の量は、医薬組成物の約1重量%であり得る。
【0103】
[コーティング]
医薬組成物は、1種以上の腸溶コーティング、シールコーティング、フィルムコーティング、バリアコーティング、圧縮コーティング、速崩壊性コーティング、又は酵素分解性コーティングでコーティングすることができる。
【0104】
いくつかの場合では、本明細書に開示される製剤は、コーティング剤、例えば、シーラントでコーティングされる。いくつかの実施形態では、コーティング材料は水溶性である。いくつかの実施形態では、コーティング材料は、ポリマー、可塑剤、顔料、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、コーティング材料は、フィルムコーティング、例えば、光沢フィルム、pH非依存性フィルムコーティング、水性フィルムコーティング、乾燥粉末フィルムコーティング(例えば、完全乾燥粉末フィルムコーティング)、又はそれら任意の組み合わせの形態である。いくつかの実施形態では、コーティング材料は接着性が高い。いくつかの実施形態では、コーティング材料は、低レベルの水浸透を提供する。いくつかの実施形態では、コーティング材料は酸素バリア保護を提供する。いくつかの実施形態では、コーティング材料は、薬物活性物質の迅速な放出のために即時の崩壊を可能にする。いくつかの実施形態では、コーティング材料は、着色、透明、又は白色である。いくつかの実施形態では、コーティング材料は透明である。例示的なコーティング材料は以下を含むが、これらに限定されない:ポリビニルアルコール(PVA)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)、メタクリル酸コポリマー、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(ヒプロメロースアセテートサクシネート)、シェラック、アルギン酸ナトリウム、及びゼイン。いくつかの実施形態では、コーティング材料は、PVAを含むか、又はPVAである。いくつかの実施形態では、コーティング材料は、HPMCを含むか、又はHPMCである。例示的なPVA系コーティング材料は、オパドライIIを含む。いくつかの場合では、コーティング材料は、製剤の重量の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%である。いくつかの場合では、コーティング材料は、各第1粒子の総重量の約1%~約15%(以下を含むが、これらに限定されない:約5%~約10%、約6%~約10%、約7%~約10%、約8%~約10%、又は約9%~約10%)を占める。いくつかの場合では、コーティング材料は、製剤の重量の約2%超、約3%超、約4%超、約5%超、約6%超、約7%超、約8%超、約9%超、又は約10%超である。いくつかの場合では、コーティング材料は、製剤の重量の約2%未満、約3%未満、約4%未満、約5%未満、約6%未満、約7%未満、約8%未満、約9%未満、又は約10%未満である。
【0105】
望ましい性能を得るために、複数のコーティングを施すことができる。さらに、剤形は、即時放出、パルス放出、制御放出、持続放出、遅延放出、標的放出、同期放出、又は標的遅延放出のために設計することができる。放出/吸収制御のために、固体担体は、有効成分の有無にかかわらず、様々な成分のタイプ及びレベル又はコートの厚さで作ることができる。このような多様な固体担体を剤形にブレンドして、所望の性能を達成することができる。これらの用語の定義は、当業者に知られている。また、剤形放出プロファイルは、ポリマーマトリックス組成物、コーティングされたマトリックス組成物、多粒子組成物、コーティングされた多粒子組成物、イオン交換樹脂系の組成物、浸透系の組成物、又は生分解性ポリマー組成物によって影響を受ける可能性がある。理論に拘束される意図はないが、放出は、良好な拡散、溶解、浸食、イオン交換、浸透、又はそれらの組み合わせによってもたらされると考えられている。
【0106】
本発明の剤形は、例えば、シールコーティング、腸溶コーティング、持続放出コーティング、又は標的遅延放出コーティングでさらにコーティングされ得る。これらの様々なコーティングは当技術分野で知られているが、明確にするために、以下の簡単な説明が提供される。シールコーティング、又は隔離層を備えたコーティング:最大20ミクロンの厚さの薄層は、粒子の気孔率の低減、ほこりの低減、化学的保護、味のマスキング、臭気の低減、胃腸刺激の最小化など、さまざまな理由で適用できる。隔離効果はコーティングの厚さに比例する。この用途には水溶性セルロースエーテルが好ましい。HPMCとエチルセルロースの組み合わせ、又はEudragit E100が特に適している。例示的な実施形態では、コーティングは、カラコン社製調合済みコーティングであるオパドライ(登録商標)Y-1-7000であり得る。オパドライY-1-7000には、ヒプロメロース5cP、二酸化チタン、マクロゴール/PEG400が含まれている。他の場所に記載されている従来の腸溶性コーティング材料を使用して、隔離層を形成することもできる。
【0107】
任意に、徐放性マトリックス多粒子系、錠剤、又はカプセルは、本明細書に記載の徐放性コーティングなどの徐放性コーティングでコーティングすることができる。このようなコーティングは、好ましくは、約2%~約25%の重量増加レベルを得るのに十分な量の疎水性及び/又は親水性徐放性材料を含むが、このオーバーコートは、例えば、所望の放出速度に応じて大きくなり得る。特定の実施形態では、徐放性コーティングは、徐放性スフェロイド、顆粒、又はマトリックス多粒子に適用される。そのような実施形態では、徐放性コーティングは、(a)ワックス(単独で、又は脂肪アルコールと混合して);又は(b)セラック若しくはゼインなどの水不溶性材料を含むことができる。コーティングは、好ましくは、疎水性徐放性材料の水性分散液から得られる。
【0108】
本発明の他の好ましい実施形態では、徐放性コーティングを含む徐放性材料は、薬学的に許容されるアクリルポリマーであり、以下を含むが、これらに限定されない:アクリル酸とメタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸エトキシエチル、シアノエチルメタクリレート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(メタクリル酸無水物)、及びグリシジルメタクリレートコポリマー。
【0109】
特定の好ましい実施形態において、アクリルポリマーは、1種以上のアンモニオメタクリレートコポリマーから構成される。アンモニオメタクリレートコポリマーは、低含有量の第4級アンモニウム基を有する、アクリル酸とメタクリル酸エステルの完全に重合されたコポリマーとして当技術分野でよく知られている。望ましい溶解プロファイルを得るには、第4級アンモニウム基と中性(メタ)アクリル酸エステルのモル比が異なるなど、物理特性が異なる2種以上のアンモニオメタクリレートコポリマーを組み込む必要がある。
【0110】
特定のメタクリル酸エステルタイプのポリマーは、本発明に従って使用され得るpH依存性コーティングを調製するために有用である。例えば、ジエチルアミノエチルメタクリレートと他の中性メタクリル酸エステルから合成されたコポリマーのファミリーがあり、これは、メタクリル酸コポリマー又はポリマーメタクリレートとしても知られ、Rohm GMBH & Co. Kg Darmstadt社(ドイツ)からのEudragit(登録商標)として市販されている。Eudragit(登録商標)にはいくつかの種類がある。例えば、Eudragit Eは、酸性媒体に膨潤して溶解するメタクリル酸コポリマーの例である。Eudragit Lは、約pH<5.7で膨潤せず、約pH>6で溶解するメタクリル酸コポリマーである。Eudragit Sは約pH<6.5では膨潤せず、約pH>7では溶解する。Eudragit RL及びEudragit RSは水膨潤性であり、これらのポリマーが吸収する水の量はpHに依存する。ただし、Eudragit RL及びRSでコーティングされた剤形はpHに依存しない。
【0111】
特定の好ましい実施形態において、アクリルコーティングは、それぞれEudragit(登録商標)RL30D及びEudragit(登録商標)RS30Dの商品名で市販されている2種のアクリル樹脂ラッカーの混合物を含む。Eudragit(登録商標)RL30DとEudragit(登録商標)RS30Dは、低含有量の第4級アンモニウム基を有する、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのコポリマーであり、残りの中性(メタ)アクリル酸エステルに対するアンモニウム基のモル比は、Eudragit(登録商標)RL30Dにおいては1:20であり、Eudragit(登録商標)RS30Dにおいては1:40である。平均分子量は約150,000である。コード名RL(高透過性)及びRS(低透過性)は、これらの薬剤の透過特性を指す。Eudragit(登録商標)RL/RS混合物は、水及び消化液に不溶である。しかしながら、それにより形成されたコーティングは、水溶液及び消化液中で膨潤可能及び浸透可能である。
【0112】
エチルセルロースに適した可塑剤の例には、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、トリアセチンなどの水不溶性可塑剤が含まれるが、他の水不溶性可塑剤(アセチル化モノグリセリド、フタル酸エステル、ヒマシ油など)も使用可能であり得る。クエン酸メチルは、本発明のエチルセルロースの水性分散液に特に好ましい可塑剤である。
【0113】
持続放出コーティングは、長期間にわたるデリバリーを実現するように設計されている。持続放出コーティングは、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アクリル酸エステル、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムから形成されるpH非依存性コーティングである。コーティング材料及び/又はコーティング厚の選択に応じて、小腸及び大腸の両方、小腸のみ、又は大腸のみへのデリバリーを達成するために、当業者は様々な持続放出剤形を容易に設計することができる。
【0114】
腸溶コーティングは、担体又は組成物に適用されるか、組み合わされるか、混合されるか、あるいは添加される、薬学的に許容される賦形剤の混合物である。コーティングは、圧縮又は成形又は押出された錠剤、ゼラチンカプセル、及び/又は担体若しくは組成物のペレット、ビーズ、顆粒若しくは粒子に適用することができる。コーティングは、水性分散液を介して、又は適切な溶媒に溶解した後に適用することができる。
【0115】
特定の実施形態では、医薬組成物は、それを必要とするヒト又は非ヒト患者への経口投与時に、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、24、36、48、72、96、120、144、又は168時間の制御放出を提供する。
【0116】
「徐放」という用語は、長期間(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、22、24、36、48、72、96、120、144、又は168時間以上)にわたって、その血中レベルが治療範囲内(すなわち、最小有効濃度(minimum effective concentration、MEC)以上)に維持されるが毒性レベルを下回るような速度での剤形(例えば、錠剤)からの薬物の放出を指す。「徐放」という用語は、「遅放」、「制御放出」、又は「持続放出」と交換可能に使用することができる。剤形の徐放性は、通常、インビトロ溶解法によって測定され、インビボの血中濃度-時間プロファイル(すなわち、薬物動態プロファイル)によって確認される。
【0117】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、インビトロ溶解分析において、それらの薬学的活性薬剤の約90%~100%を、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、36、48、72、96、120、144、又は168時間の間、線形又はほぼ線形に放出する。
【0118】
遅延放出とは、一般に、遅延放出の改変がなかった場合に達成されたであろう場所よりも、一般的に予測可能な遠位の下部腸管の位置で達成できるようなデリバリーを指す。放出を遅らせるための好ましい方法はコーティングである。コーティング全体が約5未満のpHで胃腸液に溶解せず、約5以上のpHで溶解するように、コーティングは、十分な厚さに塗布する必要がある。本発明の実施において、pH依存性溶解度プロファイルを示す任意のアニオン性ポリマーを腸溶性コーティングとして使用して、下部胃腸管へのデリバリーを達成できることが期待される。本発明で使用するポリマーは、アニオン性カルボン酸ポリマーである。
【0119】
例示的な実施形態では、コーティングは、昆虫の樹脂性分泌物から得られる精製産物である精製ラックとも呼ばれるシェラックを含むことができる。このコーティングはpH>7の媒体に溶解する。
【0120】
可塑剤の他に、着色剤、粘着防止剤、界面活性剤、消泡剤、潤滑剤、ヒドロキシプロピルセルロースなどの安定剤、酸/塩基をコーティングに添加して、コーティング材料を可溶化又は分散させ、コーティング性能とコーティング製品を改善することができる。
【0121】
[医薬品剤形]
本発明の組成物は、凝集、空気懸濁液冷却、空気懸濁液乾燥、ボール、コアセルベーション、コーティング、粉砕、圧縮、クリオペレット化、カプセル化、押出、湿式造粒、乾式造粒、均質化、包接複合体形成、凍結乾燥、溶融、マイクロカプセル化、混合、成形、パンコーティング、溶媒脱水、超音波処理、球形化、スプレー冷却、スプレー凝固、スプレー乾燥、又は当技術分野で既知の他のプロセスにより加工できる。組成物は、ミニカプセル、カプセル、錠剤、インプラント、トローチ、ロゼンジ(ミニタブレット)、一時的又は永久的懸濁液、胚珠、座薬、ウエハー、咀嚼錠、速溶性錠剤、発泡錠、口腔内又は舌下の固形薬、顆粒、フィルム、スプリンクル、ペレット、ビーズ、ピル、粉末、粉砕物、プレートレット、ストリップ又は小袋の形態で提供することができる。組成物はまた、「乾燥シロップ」として投与することもでき、完成した剤形は直接舌の上に置かれ、飲み込まれるか、又は飲み物若しくは飲料がそれに続く。これらの形態は当技術分野でよく知られており、適切に包装される。組成物は、例えば、経口、経鼻、口腔、眼、尿道、経粘膜、経膣、局所又は直腸デリバリーのために処方することができる。
【0122】
医薬組成物は、1種以上の腸溶コーティング、シールコーティング、フィルムコーティング、バリアコーティング、圧縮コーティング、速崩壊性コーティング、又は酵素分解性コーティングでコーティングすることができる。複数のコーティングを適用して、目的のパフォーマンスを実現できる。さらに、剤形は、即時放出、パルス放出、制御放出、持続放出、遅延放出、標的放出、同期放出、又は標的遅延放出のために設計することができる。放出/吸収制御のために、固体担体は、有効成分の有無にかかわらず、様々な成分のタイプ及びレベル又はコートの厚さで作ることができる。このような多様な固体担体を剤形にブレンドして、所望の性能を達成することができる。これらの用語の定義は、当業者に知られている。また、剤形放出プロファイルは、ポリマーマトリックス組成物、コーティングされたマトリックス組成物、多粒子組成物、コーティングされた多粒子組成物、イオン交換樹脂系の組成物、浸透系の組成物、又は生分解性ポリマー組成物によって影響を受ける可能性がある。理論に拘束される意図はないが、放出は、良好な拡散、溶解、浸食、イオン交換、浸透、又はそれらの組み合わせによってもたらされると考えられている。
【0123】
本発明の方法を実施する際に、本発明の組成物は、イヌ、ネコ、ヒトなどの哺乳動物種に投与することができ、それにより、錠剤、カプセル、エリキシル剤又は注射剤などの従来の全身剤形に組み込むことができる。上記の剤形は、必要な担体材料、賦形剤、潤滑剤、緩衝剤、抗菌剤、増量剤(マンニトールなど)、抗酸化剤(亜硫酸水素ナトリウムのアスコルビン酸)なども含む。
【0124】
投与される用量は、患者の年齢、体重及び状態、ならびに投与経路、剤形及びレジメン及び所望の結果に従って、注意深く調整されなければならない。
【0125】
本発明の医薬組成物は、1日1回~4回の単回又は分割用量で剤形で投与することができる。低用量の組み合わせで患者について開始し、徐々に高用量の組み合わせまで上げることが推奨され得る。
【0126】
液体製剤は、活性物質の1種又は組み合わせを医薬投与に許容される従来の液体ビヒクルに溶解又は懸濁して、小さじ1~4杯で所望の投与量を提供することによって調製することができる。
【0127】
剤形は、例えば、1日あたり1、2、3、4、5、6回、又は他の回数のレジメンで患者に投与することができる。本明細書に記載の本発明の組成物は、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6日間、1か月、2か月、3か月、4か月、又はそれより長く投与することができる。本明細書に記載される本発明の組成物は、例えば、長期間、すなわち、疾患又は病状の可能性が残っている限り、及び/又は症状が続く限り、投与され得る。
【0128】
投与スケジュールをより細かく調整するために、活性物質を、個々の投与単位につき同じ時間に、又は注意深く調整された時間で別々に投与することができる。血中濃度は規制された投与スケジュールによって蓄積及び維持されるため、2つの物質の同時存在によって同じ結果が達成される。それぞれの物質は、上記と同様の方法で別々の単位剤形に個別に製剤化することができる。
【0129】
組成物の処方において、活性物質は、上記の量で、特定のタイプの単位剤形において、生理学的に許容されるビヒクル、担体、賦形剤、バインダー、保存剤、安定剤、フレーバーなどとともに、認められる薬務に従って配合され得る。
【0130】
本明細書で有用な液体製剤は、溶媒、溶液、懸濁液、マイクロ懸濁液、ナノ懸濁液、乳濁液、マイクロ乳濁液、ゲル、又は活性成分を含有する溶融物まで含んでもよい。いくつかの実施形態では、ナノ粒子、ナノファイバー、又はナノフィブリルは、顆粒、粉末、懸濁液、溶液、溶解性フィルム、マット、ウェブ、錠剤、又は放出可能な形態、特に放出可能な剤形の形態として、又はその内部若しくは上にあり得る。他の特に有用な形態は、使用前に希釈液が加えられる濃縮物である。製品はまた、容器の内面に噴霧し、その後使用前に液体が加えられ、ナノ粒子、ナノファイバー、又はナノフィブリルが液体中に放出されるようにしてもよい。本発明の医薬組成物は、本発明のナノ粒子、複合ナノ粒子、ナノ懸濁液、又はナノカプセルを含むことができる。
【0131】
組成物はまた、1種以上の活性成分又はナノ粒子、複合ナノ粒子、ナノ懸濁液、若しくはナノカプセルの酸化を遅らせるための様々な抗酸化剤を含み得る。微生物の作用の防止は、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、様々な抗菌剤及び抗真菌剤などの防腐剤によってもたらすことができる。
【0132】
本発明のナノ粒子、ナノゲル、複合ナノ粒子、ナノ懸濁液、又はナノカプセルによる治療の有効性を高めるために、これらのナノ粒子、複合ナノ粒子、又はナノカプセルを、特定の疾患又は病状の治療に有効な他の療法と組み合わせることが望ましい場合がある。
【0133】
上記の製剤は、長期間、すなわち、疾患又は病状の可能性が残っている限り、又は症状が続く限り、投与され得る。
【0134】
本発明の特定のこのような実施形態では、製剤は、少なくとも約110N、好ましくは少なくとも約120N、少なくとも約130N又は少なくとも約140N、より好ましくは少なくとも約150N、少なくとも約160N又は少なくとも約170N、最も好ましくは少なくとも約180N、少なくとも約190N、少なくとも約200N、少なくとも約210N、少なくとも約220N、少なくとも約230N、少なくとも約240N、又は少なくとも約250Nの硬度又はクラッキング力を有する。
【0135】
[包装/治療キット]
本発明は、本発明による方法を簡便かつ効果的に実施するためのキットに関する。そのようなキットは、いくつかの単位用量を含み得る。そのようなキットは、それらの意図された使用の順序で方向付けられた投薬量を含むための手段を含み得る。それらの意図された使用の順序で投薬量を含むための手段の例は、カードである。そのようなキットの例は「ブリスターパック」である。ブリスターパックは包装業界でよく知られており、医薬品の単位剤形の包装に広く使用されている。必要に応じて、ブリスターは、子供に安全なブリスター、すなわち、子供が開くのが難しいが大人が容易に開けることができるブリスターの形にすることができる。必要に応じて、例えば、数字、文字、若しくはその他のマーキングの形で、又はカレンダー特徴及び/又はカレンダー挿入物を用いて、記憶補助を提供し、投与量を投与できる治療スケジュールの日及び一日のセクションを指定することができ、例えば、AM投与量が「正午」及びPM投与量と一緒に包装される。あるいは、AM投与量がPM投与量と一緒に包装される。あるいは、プラセボ投与量、又はビタミンももしくは栄養補助食品を、薬学的活性投与量と類似又は異なる形態で含めることができる。
【0136】
本明細書で記載されるように、本発明の製品は、本発明の治療薬の組み合わせのパッケージを、単独で又は組み合わせて、「ブリスターパッケージ」として、又は複数のパケット(蓋付きブリスターパッケージ、蓋付きブリスター又はブリスターカード若しくはパケット、又はシュリンクラップを含む)として、含むことができる。
【0137】
前記単位用量を格納するための他の手段は、ボトル及びバイアルを含むことができ、ボトル又はバイアルは、前記単位用量又は投与量を投与するための印刷されたラベルなどの記憶補助を含む。ラベルには、カレンダー又はデイマインダーに配置するための取り外し可能なリマインダーステッカーを含めることもできる。これにより、患者はいつ服用するか、いつ服用したかを覚えやすくなる。
【0138】
[投薬]
医薬組成物は、特定のタイプのデリバリーのために最適化され得る。例えば、経口デリバリー用の医薬組成物は、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体を使用して製剤される。担体は、対象による経口摂取のため、組成物中の薬剤を、例えば、錠剤、ピル、カプセル、溶液、懸濁液、徐放性製剤;粉末、液体又はゲルとして製剤化することを可能にする。
【0139】
液体又は固体の組成物は、上記の適切な薬学的に許容される賦形剤を含み得る。好ましくは、組成物は、局所的又は全身的効果のために、経口、鼻腔内又は呼吸経路により投与される。好ましくは無菌の、薬学的に許容される溶媒中の組成物は、不活性ガスを使用することにより噴霧され得る。溶液噴霧は、噴霧装置から直接呼吸されてもよく、又は噴霧装置は、フェイスマスク、テント又は間欠的陽圧呼吸器に取り付けられてもよい。溶液、懸濁液又は粉末組成物は、適切な方法で製剤をデリバリーするデバイスから、好ましくは経口的又は経鼻的に投与することができる。
【0140】
あるいは、組成物は、間欠的に、又はパルス式に適用されてもよい。したがって、本発明の代替の実施形態は、間欠的又はパルス式の投薬スケジュールで組成物を適用することである。例えば、本発明の組成物は、2日以上使用され、停止され、2週間~3か月後、さらにはより長い間隔の時点に再開されてもよい。
【0141】
本発明の医薬組成物の投与量は、例えば、0.5mg、1.0mg、2.0mg、5.0mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、125mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、500mg、600mgであり、例えば、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回投与可能である。
【0142】
治療には、さまざまな「単位用量」が含まれる。単位用量は、所定の量の治療用組成物を含むものと定義される。投与される量、ならびに特定の経路及び製剤は、臨床分野の当業者の技術の範囲内である。単位用量は、単回注射として投与される必要はないが、設定された期間にわたる持続注入を含み得る。あるいは、指定された量は、毎日の平均、毎週の平均、又は毎月の平均用量として投与される量であってもよい。
【0143】
[硬度]
特定の実施形態では、本発明は、持続放出マトリックス製剤を含む、固形の経口持続放出医薬剤形に関し、当該持続放出マトリックス製剤は以下を含む組成物を含む:
(1)レオロジー測定法に基づいて、少なくとも約1,000,000;少なくとも約2,000,000;少なくとも約3,000,000;少なくとも約4,000,000;少なくとも約5,000,000;少なくとも約6,000,000;少なくとも約6,000,000;少なくとも約7,000,000;及び少なくとも約8,000,000からなる群から選択される近似分子量を有する、少なくとも1種のポリエチレンオキシド;並びに
(2)少なくとも1種の活性薬剤;
ここで、前記持続放出マトリックス製剤は、押込試験を受けたとき、少なくとも約200Nの「硬度」を有する。
【0144】
本発明の特定のこのような実施形態では、持続放出マトリックス製剤は、少なくとも約110N、好ましくは少なくとも約120N、少なくとも約130N又は少なくとも約140N、より好ましくは少なくとも約150N、少なくとも約160N又は少なくとも約170N、最も好ましくは少なくとも約180N、少なくとも約190N、少なくとも約200N、少なくとも約210N、少なくとも約220N、少なくとも約230N、少なくとも約240N、又は少なくとも約250Nの硬度又はクラッキング力を有する。
【実施例】
【0145】
本発明は、以下の実施例を参照してより詳細に説明されるが、本発明はそれらに限定されるとは見なされないことを理解されたい。
【0146】
[実施例1]
ケタミン徐放錠60mg製剤
【表1】
製造ステップ:
1.ケタミンHClとポリエチレンオキシドを適切なミキサーで均一になるまで混合する。
2.ステアリン酸マグネシウムを上記の乾燥粉末混合物にブレンドする。
3.最終的な粉末ブレンドを圧縮して、目標錠剤質量400mg、目標錠剤硬度210Nの錠剤にする。
4.錠剤硬化の次のステップで錠剤を損傷から保護するために初期コーティングを行う。
5.70℃~75℃の温度範囲で錠剤を硬化させて、目的の固さを達成する。
6.十分な重量を得るために、上記のステップから錠剤をコーティングし続ける。
【0147】
[実施例2]
試験ZPS-603(603試験)は、4つのコホートと複数の試験目的を持つハイブリッド試験デザインであった。コホート1、2、及び3の目的は、健康なボランティアにおける、単回投与及び複数回投与後の持続放出ケタミン経口製剤の安全性、薬物動態(pharmacokinetics、PK)及び薬力学(pharmacodynamics、PD)を評価することであった。設計は、健康なボランティアを対象とした二重盲検プラセボ対照の単回及び複数回の漸増用量試験であった。用量は、コホート1、2、3でそれぞれ60mg、120mg、240mgであった。各用量レベルは最初は単回用量として与えられ、次に1週間後に12時間間隔で与えられる5回の用量として与えられた。エンドポイントには、安全性、忍容性、ケタミンとノルケタミンのPK、及びPD(自殺傾向評価、及び解離性症状評価スケールスコア)が含まれていた。
【0148】
コホート4の目的は、治療抵抗性うつ病及び/又は治療抵抗性不安症(TRD/TRA)患者における持続放出ケタミン経口製剤の有効性、安全性、PK及びPDを評価することであった。患者は、皮下ケタミンに対して以前に示された気分反応と、モンゴメリーアスバーグうつ病評価尺度(MADRS;Montgomery 1979)及び/又はハミルトン不安尺度(HAMA;Hamilton 1959)の臨床的に有意なスコアに基づいて選択された。この設計は、オープンラベルの複数回用量漸増試験であった。最初の投与量は60mgで、気分症状の評価に基づいて、12時間毎に60mgを追加し、最大用量240mgまで段階的に増やすことができ、合計7回の投与が0~72時間の間に12時間毎に与えられた。エンドポイントには、安全性、忍容性、ケタミンとノルケタミンのPK、及びPD(恐怖質問票(FQ;Marks 1979)を含む気分評価、HAMAとMADRS、及び解離性症状評価スケールスコア)が含まれていた。
【0149】
プロトコルの修正により、コホート4に追加の目的が追加された。すなわち、ZPS-603の初期96時間上昇用量フェーズで治療に反応したTRD/TRA患者につき、オープンラベル拡張(OLE)治療フェーズにおいて、持続放出ケタミン経口製剤の最大3か月の安全性と有効性を評価することである。OLEのエンドポイントは、ZPS-603の初期96時間上昇用量フェーズのものと同様であった。
【0150】
[結果、コホート1~3]
[統計]
コホート1~3の参加者の平均(SD)パラメータを表1に示す。コホート2の1人の被験者(#16)が、安全性/忍容性とは無関係の理由で、単回投与と複数回投与の間で試験を中止した。
【0151】
【0152】
[安全性]
試験中又は試験終了後のコホート1~3のすべての被験者のバイタルサイン、ECG、安全性ラボ検査、又は尿検査の臨床的重要性に変化はなかった。
【0153】
[忍容性]
試験グループによって報告された有害事象を表2に示す。用量に関連する頻度の増加を示す唯一の有害事象は、240mgを投与した被験者の解離であった。
【0154】
【0155】
[薬力学]
CADSS:経時的な平均CADSSスコアを
図2に示す。コホート1及び3の単回投与の3時間後(
図2A)、及びコホート3の複数回投与フェーズの最初の投与後3~12時間で(
図2B)、わずかな増加が見えた(この尺度の最大スコアは84ポイントであり、これらは皮下又はIVケタミン投与と比較して最小の変化であることに注意されたい)。
【0156】
自殺傾向の評価:コロンビア自殺重症度評価尺度(Columbia Suicide Severity Rating Scale)によって評価されたところ、コホート1~3で自殺念慮を報告した参加者はいずれの時点においてもいなかった。
【0157】
[薬物動態]
図3は、60mg、120mg、240mgの単回及び複数回投与後のケタミンとノルケタミンの平均濃度時間プロファイルを示す。両方の検体の濃度は、投与後5~10時間は比較的安定しており、錠剤の徐放特性と合致する。ノルケタミン濃度は、両方のプロットでケタミン濃度よりも約10倍高く、経口投与後の広範な初回通過代謝を反映している。3つのコホートすべてについて、ケタミンとノルケタミンの薬物動態パラメータは1次速度論に従うようである。具体的には、AUCとC
maxは、ケタミン60mg、120mg、240mgの持続放出錠剤の単回及び複数回投与後に用量に比例していた(
図4)。ケタミンとノルケタミンの両方の複数回投与AUC
0~12値が単回投与AUC
0~∞未満であり、これらの比率が用量に関連して減少したという点で、自己誘導の証拠があるように見えた(表3参照)。誘導のメカニズムは、CYP2B6を介しているようである。ケタミンはCYP2B6の活動を誘発し(Chen 2010)、それ自体がこの酵素によって代謝される。
【0158】
【0159】
【0160】
表4:ケタミン(上部パネル)とノルケタミン(下部パネル)の単回及び複数回投与のAUCとCmax、及び比率。MD/SD AUC比が1未満の場合、自己誘導が示唆される(太字)。1:単回投与 2:複数回投与 3:比率=MD/SD。
【0161】
[結果、コホート4]
[統計]
コホート4の参加者の平均(SD)パラメータを表5に示す。
【0162】
【0163】
[診断]
7人の患者全員が現在、社会不安障害の診断を受けていた。5人は大うつ病性障害(MDD)の診断も受けており、1人は全般性不安障害の併存症であった。スクリーニング時の平均HAMAスコアは22.9(中程度の重症度と一致)であり、平均FQスコアは48.4(非臨床集団平均よりも約2倍高い)であった。MDDの5人の患者の平均MADRSスコアは31.2であった(中程度のうつ病と一致)。
【0164】
[投薬]
1日目に、7人の患者全員に午前中に1×60mgの錠剤を投与した。7人の患者全員が12時間の時点2×60mgの錠剤を投与され、7人の患者全員が24時間の時点3×60mgの錠剤を投与された。36時間の時点で、2人の患者に3×60mgの錠剤が投与され、5人の患者に4×60mgの錠剤が投与された。48時間の時点で、1人の患者は3×60mgの錠剤が投与され、6人の患者には4×60mgの錠剤が投与された。56時間と72時間の時点で、7人の患者全員に4×60mgの錠剤が投与された(表6参照)。
【0165】
【0166】
[安全性]
試験中又は試験終了後のコホート4のすべての被験者のバイタルサイン、ECG、安全性ラボ検査、又は尿検査の臨床的重要性に変化はなかった。
【0167】
[忍容性]
コホート4によって報告された有害事象を表7に示す。全体として、持続放出ケタミン錠剤の単回及び複数回投与は十分に許容された。
【0168】
【0169】
[薬力学]
CADSS:経時的な平均CADSSスコアを
図5Aに示す。平均CADSSスコアは時間の経過とともに減少する傾向があった。これは、皮下(SC)ケタミン後のCADSSスコアの変化とは著しく対照的である。
図5Bは、両方のデータセットを含むコホート4参加者7人のうち6人における、経口及びSC投与の3時間後までの平均CADSSスコアを示す。全体として、CADSS尺度で評価したところ、複数回投与の経口ケタミンは解離症状とは無関係であった。
【0170】
[不安評価尺度:HAMA及びFQ]
時点毎の個別及びグループの平均HAMA及びFQスコアを
図6に示す(6A:HAMA、6B:FQ)。ある時間にわたって両方のスコアが一貫して減少する傾向があり、最も顕著なのはベースラインスコアが高い患者である。不安が徐々に改善する傾向は、皮下(SC)ケタミン後の不安スコアの急速な低下とは著しく対照的である。
図7は、両方のデータセットを含むコホート4参加者7人のうち6人における、経口及びSC投与後の平均HAMAスコアを示す。HAMAスコアの変化に基づいて7人の参加者全員が治療反応者(>50%の減少)であると評価され、FQスコアの変化に基づいて7人の参加者のうち6人が反応者であった。
【0171】
[MADRS]
時点毎の個別及びグループの平均MADRSスコアを
図8に示す。ある時間にわたってスコアが一貫して減少する傾向があり、最も顕著なのはベースラインスコアが高い患者である。MADRSスコアの変化に基づいて7人の参加者全員が治療反応者(>50%の減少)であると評価された。被験者042-026は、不安の評価に変化はなく、48時間と72時間でうつ病の症状の悪化を報告した。クリニックのスタッフと話し合った後、彼はこれらは大うつ病の再発を示唆する気分の実質的かつ持続的な変化ではなく、グループ活動から除外された経験での悲しみの感情に関連していると報告した。この議論の後、彼のMADRSスコアは再び下がった。
【0172】
図9は、その後に3か月のオープンラベル延長(OLE)フェーズに移行した、コホート4のうち3人の患者の平滑化された平均うつ病(MADRS;9A)と不安(FQ、HAMA;9B及びC)スコアを示す。この間、3人の患者全員が気分評価の改善を報告した。平均うつ病評価は、最大の改善には6週間かかるように見えたが(
図9A)、平均最大不安尺度の改善は、2週間までに起こるように見えた(
図9B、9C)。
【0173】
[薬物動態]
図10は、コホート4におけるケタミンとノルケタミンの96時間にわたる平均濃度時間プロファイルを示す。ケタミンとノルケタミンの両方の血漿濃度の用量関連の増加は、患者がより高い用量を服用し続けたことにつれ、48時間まで認められた。ノルケタミン濃度は、すべての時点で一貫してケタミン濃度より高く、広範な初回通過代謝を反映していた。データは、PKプロファイルにおける被験者間及び被験者内の大きな変動を示している。
【0174】
酵素誘導に対する反復投与の影響を評価するために、個々のケタミン:ノルケタミン(K:NK)比を各時点で計算した。これらは
図11にプロットされている。K:NKの平均比率は0時間で約11であり、96時間で約5に徐々に減少した。時間に対するK:NK比の相関は、0.26の決定係数(r
2)を示した。データ変動(変動係数%として表される)も、複数回の投与中に減少し、0時間の44%から96時間の23%に減少した。これらのデータは、12時間毎の反復投与に関連する初回通過代謝の増加を示唆しており、72時間までに漸近するように見える。
【0175】
[実施例3]
試験15/STH/86は、3~4週間続く予備的な急性ケタミン用量反応フェーズ、及びその後の3か月の維持治療フェーズを含むハイブリッド試験デザインであった。治療抵抗性不安障害の患者24名に、ケタミンの単回上行皮下投与(0.25、0.5、1mg/kg)を3回行い、そして12人にミダゾラム0.01mg/kgも投与した。20人の患者が維持フェーズに参加し、ケタミン1mg/kgが毎週1~2回、最大14週間投与された。試験の評価には、各ケタミン投与前後の恐怖質問票(FQ;MarksとMathews 1979)を使用した気分の評価が含まれていた。FQ尺度には、特定恐怖症である出血創傷(FQBI)に関連する不安を測定するサブスケールが含まれる。
【0176】
[結果]
25人の患者が急性用量反応フェーズに参加し、20人の患者が維持フェーズに参加した。
【0177】
[不安評価尺度-FQ急性用量反応]
ベースラインの平均FQ出血創傷(FQBI)スケールスコアは12.4であった。ケタミン投与の1時間後、平均スコアに急激な用量関連の減少が見られた(
図12)。これらのスコアは次の168時間で徐々にベースラインに戻った。スコアの急激な減少と緩やかな増加は用量に関連しており、ケタミンの用量が多いほど、0.25mg/kgの最低用量と比較してより持続的な効果があった。ミダゾラム後のFQBIスコアの変化は、0.5mg/kgケタミン用量プロファイルの変化と類似であった。
【0178】
[不安評価尺度-FQ急性用量反応]
2時間でのケタミン及びノルケタミン濃度とFQBIスコアとの関係の分析を、それぞれ
図13A及び13Bに示す。ベースラインFQBIスコアは赤で表示され、エラーバーは標準偏差を表す。濃度が高いほどFQBIスコアは低くなり、ケタミンと比較して、ノルケタミンの方が強い相関が見られた。
【0179】
[FQ維持治療]
1週目のサブスケール前投与スコアは、スクリーニング時のサブスケールスコア(すなわち、すべてのケタミン治療前)と比べてわずかに低かった。前投与FQBIスコアは、維持治療中に次第に減少した。各投与後、FQBIスコアは前投与スコアと比較して1時間で約50%まで減少し、2時間でのスコアのさらなる改善はなかった。
図14参照。
【0180】
[実施例4]
DSM5特定恐怖症であるクモ恐怖症の患者の回避と不安の評価に対するR-107タブレット(実施例1を参照)の効果を評価した。この試験では、DSM5クモ恐怖症の参加者は、最初にクモ恐怖質問票(Fear of Spiders Questionnaire、FSQ;SymanskiとO’Donohue 1995;最低スコア95)のスコアと行動回避タスク(Behavioural Avoidance Task、BAT;Garcia-Palaciosら 2002;最大スコア3)のパフォーマンスによって評価された。FSQスコアが95以上の患者は、クモに関する恐怖不安が高く、そして、3以下のBATスコアは、恐怖回避のレベルが高いことを示す。このテストを完了した後、参加者は二重盲検ランダム化条件下で、R-107錠剤120mg又は対応するプラセボ錠剤のいずれかを1回投与された。3時間後、患者は再びFSQ及びBATテストを行った。ランダムにR-107錠剤を投与された参加者は、ランダムにプラセボを投与された参加者と比較してFSQスコアが低く、BATスコアが高いことを報告しており、恐怖不安及び回避が減少していることを示した。
【0181】
本発明をその特定の例を参照して詳細に説明してきたが、その精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正をその中で行うことができることは当業者には明らかであろう。