(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】流体中のアンモニア及びアンモニウムの検出及び定量のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20231011BHJP
G01N 33/52 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G01N33/50 B
G01N33/52 C
(21)【出願番号】P 2020538849
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(86)【国際出願番号】 US2019013237
(87)【国際公開番号】W WO2019140224
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2022-01-06
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(73)【特許権者】
【識別番号】504318142
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ アリゾナ ステート ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,マリーローラ
(72)【発明者】
【氏名】フォルツァーニ,エリカ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,レスリー
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-193459(JP,A)
【文献】特表2016-529515(JP,A)
【文献】特開2010-038666(JP,A)
【文献】特開2006-084398(JP,A)
【文献】特開2000-146899(JP,A)
【文献】特表2017-530773(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0083094(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液の試料と流体連通するように構成された分析装置を備えるシステムであって、
前記分析装置は、
ガスセンシングチャンバと、
(i)前記体液と流体連通する領域と(ii)前記ガスセンシングチャンバとの間に配置された抽出膜であって、前記抽出膜は、(a)前記体液に含まれるアンモニウム(NH
4
+)の少なくとも一部を化学的又は電気化学的に抽出してアンモニア(NH
3)に変換し、(b)干渉物質を排除し、(c)前記変換されたアンモニア(NH
3)を前記ガスセンシングチャンバに排出する、抽出膜と、
前記ガスセンシングチャンバ内に配置されたアンモニア(NH
3)センサであって、前記アンモニア(NH
3)センサは、実行されると、プロセッサに、前記体液中の総アンモニアに関する前記ガスセンシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH
3)の量を定量させる命令を記憶する非一時的メモリを有する前記プロセッサを備え、前記総アンモニアはアンモニア(NH
3)とアンモニウム(NH
4
+)との合計である、アンモニア(NH
3)センサと、を備え、
前記分析装置は、前記ガスセンシングチャンバ内に存在するアンモニアの前記定量された量に基づいて、臓器機能の変化、組織機能の変化、及び代謝状態の変化のうちの少なくとも1つを検出する、システム。
【請求項2】
前記分析装置からの少なくとも1つの送信を受信するように構成されたユーザインタフェース装置をさらに備え、前記ユーザインタフェース装置は、グラフィカルユーザインタフェースを含むディスプレイをさらに有し、前記グラフィカルユーザインタフェースは、前記分析装置からの出力を表示するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アンモニア(NH
3)センサはさらに、
前記ガスセンシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH
3)の前記定量された量を前記ユーザインタフェース装置に送信すること、及び
前記ガスセンシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH
3)の前記定量された量
の経時
的に生じる変化を識別すること
のうちの少なくとも1つを行うように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記分析装置が、マイクロコントローラ、フレキシブルプリント回路基板、フレキシブルバッテリ、Bluetooth装置、及びディスプレイの1つ以上をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記抽出膜が、
前記抽出膜に沿って前記体液の試料を分配するように構成された分配層と、
前記体液の試料中の前記アンモニウム(NH
4
+)の前記少なくとも一部をアンモニア(NH
3)に変換するように構成されたアルカリ層と、
前記体液の試料から前記変換されたアンモニア(NH
3)を濾過し、前記変換されたアンモニア(NH
3)を前記ガスセンシングチャンバに排出するように構成された疎水性層と、をさらに有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記アンモニア(NH
3)センサは、アンモニア(NH
3)に変換されたアンモニウム(NH
4
+)の量に応じて、それぞれ可逆的又は不可逆的に変色するように疎水性又は親水性基板上に構成された指示薬層をさらに有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記アンモニア(NH
3)センサは、
前記指示薬層の吸光度変化を測定するように構成された少なくとも1つのフォトダイオードと、
前記指示薬層を照明するように構成された少なくとも1つの発光ダイオードと、をさらに有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記指示薬層が、ブロモフェノールブルー及び植物由来のpH指示薬のうち少なくとも1つをさらに有する、請求項6又は7に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの発光ダイオードは、前記指示薬層
の最大吸収波長で発光し、前記少なくとも1つの発光ダイオードの別の1つは、前記指示薬層
の最小吸収波長で発光する、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのフォトダイオードは、
第1のセンシングフォトダイオードを有する第1のフォトダイオードと、
第1の基準フォトダイオードを有する第2のフォトダイオードと、をさらに有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのフォトダイオードは、
第2のセンシングフォトダイオードを有する第3のフォトダイオードと、
第2の基準フォトダイオードを有する第4のフォトダイオードと、をさらに有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記ガスセンシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH
3)の量を定量することは、
前記第1のフォトダイオードからの信号及び前記第2のフォトダイオードからの信号に基づいて、前記指示薬層の
光吸収を計算することと、
前記計算された
光吸収を、
光吸収とアンモニア(NH
3)濃度との関係を示す1つ以上の基準値と比較することによって、前記
光吸収をアンモニア(NH
3)の定量可能な量に変換することと、をさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記体液が、全血、血漿、血清、細胞内液、細胞間液、間質液、リンパ液(リンパ)、汗、尿、胸水、心膜液、腹膜液、胆汁液(胆汁)、糞便、脳脊髄液、滑液、唾液、喀痰、鼻液、又は眼液のうちの1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記分析装置は、流体pH、流体密度、流体比重、流体浸透圧、流体温度、酸素(O
2)分圧、二酸化炭素(CO
2)分圧、窒素(N
2)分圧、ナトリウム(Na
+)、カリウム(K
+)、塩化物(Cl
-)、重炭酸塩(HCO
3
-)、カルシウム(Ca
2+)、マグネシウム(Mg
2+)、リン酸イオン(H
2PO
4
-、HPO
4
2-、PO
4
3-を含む)、クレアチニン、尿素、尿酸、シスタチンC、アミノ酸、尿細管刷子縁酵素、アルブミン、タム-ホルスフォールタンパク質、インシュリン、コルチゾール、コルチゾン、クレアチニン、乳酸塩、環状アデノシン一リン酸、好中球ゼラチネーゼ結合性リポカリン(NGAL)、腎障害分子1(KIM-1)、インスリン様成長因子結合タンパク質7(IGFBP7)、及びメタロプロテイナーゼ2(TIMP2)の組織阻害剤のうち少なくとも1つの1つ以上のセンサをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記分析装置は、流体流量センサ、流体粘度センサ、流体密度センサ、流体浸透圧センサ、流体モル浸透圧濃度センサ、及び流体比重センサのうちの少なくとも1つをさらに備え、前記流体流量センサ、前記流体粘度センサ、前記流体密度センサ、前記流体浸透圧センサ、前記流体モル浸透圧濃度センサ、及び前記流体比重センサのうちの少なくとも1つが、流体の総容積及び流体
排泄速度のうちの少なくとも1つを決定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記抽出膜が
、前記体液中に含まれるアンモニウム(NH
4
+)の少なくとも一部をアンモニア(NH
3)に化学的又は電気化学的に変換する、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記アンモニア(NH
3)センサは、熱で前処理されること、及び使用前に事前校正されることのうち少なくとも1つが行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記アンモニア(NH
3)センサは、信号飽和及びドリフト回避機構をさらに有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記信号飽和及びドリフト回避機構は
、試料調
整のためのマイクロ制御作動弁システム
(i)と、搬送システム(ii)とをさらに有
し、前記搬送システム(ii)は、前記分析装置と接触する体液の容積を制御するように構成された弁(ii-1)、及び、体液の搬送、ヘッドスペースガスの搬送、並びにゼロ化チャネルからのガスの移動を制御するように構成された弁(ii-2)のうちの少なくとも1つを有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記アンモニア(NH
3)センサは、少なくとも24時間の持続時間又は単一の時点の読み取りの間、リアルタイムかつ連続的な定量のために構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記アルカリ層が、pH10以上の有機水酸化物、水酸化ナトリウム、及び緩衝液のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項22】
前記疎水性層が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン誘導体又はセルロース誘導体をさらに含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項23】
分析装置において、体液の試料を受け取ることと、
前記体液の試料と流体連通する領域と前記分析装置のガスセンシングチャンバとの間に位置する抽出膜を介して、前記体液の試料に含まれるアンモニウム(NH
4
+)の少なくとも一部をアンモニア(NH
3)に変換することと、
前記抽出膜を介して、前記変換されたアンモニア(NH
3)を前記ガスセンシングチャンバに排出することと、
前記センシングチャンバ内に配置されたアンモニア(NH
3)センサを介して、前記ガスセンシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH
3)の量を決定することと、
前記ガスセンシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH
3)の前
記量がしきい値を
超えるか、
前記ガスセンシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH
3)の前
記量が予想される範囲外であるか、又は
アンモニア(NH
3)の前
記量が前記ガスセンシングチャンバ内のアンモニア(NH
3)の以前に決定された量からの異常な変化であるか、に応じて、
組織機能の変化、臓器機能の変化、及び代謝機能の変化のうち少なくとも1つを検出することと、を含
み、
前記体液の試料に含まれるアンモニウム(NH
4
+
)の前記少なくとも一部をアンモニア(NH
3
)に変換することは、
前記抽出膜の指示薬層の変色を誘発することをさらに含み、前記変色は、アンモニア(NH
3
)に変換されたアンモニウム(NH
4
+
)の量に応答する、方法。
【請求項24】
前記ガスセンシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH
3)の前記量を、ユーザインタフェース装置に送信することをさらに含み、前記ユーザインタフェース装置は、グラフィカルユーザインタフェースを含むディスプレイをさらに有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ユーザインタフェース装置において、前記センシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH
3)の前記量の表示を受信することと、
前記グラフィカルユーザインタフェースを介して、前記センシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH
3)の前記量の前記表示を表示することと、をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記体液の試料に含まれるアンモニウム(NH
4
+)の前記少なくとも一部をアンモニア(NH
3)に変換することは、
前記抽出膜の分配層を介して、前記抽出膜に沿って前記体液の試料を分配することと、 前記抽出膜のアルカリ
層を介して、前記体液の試料に含まれるアンモニウム(NH
4
+)の少なくとも前記一部をアンモニア(NH
3)に変換することと、
前記抽出膜の疎水性層を介して、前記体液の試料からの前記変換されたアンモニア(NH
3)を濾過し、前記ガスセンシングチャンバへ排出することと、をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記ガスセンシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH
3)の前記量を決定することは、
少なくとも1つの発光ダイオードを介して、前記指示薬層を照明することと、
少なくとも1つのフォトダイオードを介して、前記指示薬層の吸光度変化を測定することと、
前記測定された吸光度変化を、吸光度とアンモニア(NH
3)濃度との間の関係を示す1つ以上の基準値と比較することによって、前記指
示薬層の前記測定された吸光度変化を前記センシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH
3)の量に変換することと、をさらに含む、請求項
23に記載の方法。
【請求項28】
前記指示薬層が、ブロモフェノールブルー又は植物由来のpH指示薬をさらに含む、請求項
23に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つの発光ダイオードが赤色光を発する、請求項
27に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つのフォトダイオードは、センシングフォトダイオード及び基準フォトダイオードを有する、請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
前記試料が体液である、請求項
23に記載の方法。
【請求項32】
前記体液が、全血、血漿、血清、細胞内液、細胞間液、間質液、リンパ液(リンパ)、汗、尿、胸水、心膜液、腹膜液、胆汁液(胆汁)、糞便、脳脊髄液、滑液、唾液、喀痰、鼻液、又は眼液である、請求項
31に記載の方法。
【請求項33】
前記アルカリ層が、有機水酸化物及び水酸化ナトリウムのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記疎水性層が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン誘導体又はセルロース誘導体をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月12日に出願された米国仮出願第62/617,053号の利益を主張する。先行出願の開示は、本出願の開示の一部とみなされる(及び参照により本明細書に組み込まれる)。
【0002】
発明の分野
本発明は、「総アンモニア」(本明細書ではアンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+)の合計と定義する)の検出及び定量のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
院内急性腎障害(AKI(acute kidney injury))は、病院での小児の最大30%及び成人の20%に影響を及ぼす可能性がある重大な医療問題である。AKIは死亡率の増加と関連し、将来の入院、心血管イベント、及び平均余命の短縮と強く相関する慢性腎臓病(CKD)をもたらす可能性がある。
【0004】
ほとんどの症例で、院内AKIは、AKIが発症し始めた時に、AKIの症状及び徴候が一般的に明らかにならないため、迅速に(すなわち、数分又は数時間以内に)診断することが非常に困難である。したがって、AKIに対する医療は、AKIの認識が遅れているために発展が遅れている。さらに、AKIの「診断上の特徴」(すなわち、血清クレアチニン濃度の上昇、尿排出速度の低下)は、それらが必ずしも急速に変化するわけではなく、初期AKIの最初の期間(数時間又は数日)よりも十分に遅れる可能性があるため、実際には、初期腎組織不全(kidney tissue distress)又は初期のAKI(初期AKI)の非常に不良なマーカである。また、血清クレアチニン又は尿量の変化はAKIに特異的ではない。実際、腎組織への血液潅流(「有効循環血液量」)が十分に減少する、多くの一般的に遭遇する臨床シナリオ(例えば、経口水分摂取量の減少、消化管水分喪失、経皮水分喪失)では、血清クレアチニン値が上昇し、尿量の速度が低下する(腎組織損傷が実際に発生せずに)可能性がある。有効循環血液量の減少に対する適応反応には、腎糸球体濾過量の減少(クレアチニンクリアランスの低下及び血清クレアチニンの増加をもたらす)及び抗利尿ホルモンの循環レベルの増加(より濃縮された尿の産生及び尿量の減少をもたらす)に対する反応として腎臓の集合管内での腎臓の水分回収量の増加が含まれる。血清クレアチニン値は、実際に腎組織損傷が存在することなく、ある種の薬物の投与によって著しく影響を受けることもある。これらの薬物には、シメチジン、トリメトプリム、ピリメタミン、サリチル酸塩、フェナセミド、コルチコステロイド、及び一部のビタミンD誘導体がある。アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII受容体遮断薬、及び利尿薬の使用も、AKIを引き起こすことなくクレアチニンクリアランス(したがって血清クレアチニン値)に影響を及ぼす。したがって、入院患者における初期AKIを認識するための診断プロセスを改善することは、満たされていない臨床的ニーズである。
【0005】
新規なAKI検出方法の発見及び検証に強い関心が寄せられている。従来のAKI検出方法は、遅れ(lagging)血液マーカ(すなわち、クレアチニン)の連続試験、及び尿流速(すなわち、1時間当たりの尿量産出量)のモニタリングを含み得る。血清クレアチニンの変化をモニタするために連続採血に患者をさらすことは本質的に問題である。なぜなら、採取される各試料は必然的にその体組織の除去を伴うからである。AKIに対する遅延性及び特異性の欠如に加えて、AKIの結果として有意に変化した血清クレアチニン値は、早期腎組織細胞性不全よりもむしろ組織損傷及び全体的な臓器機能不全を示す。AKIの新規の尿バイオマーカ(好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)、腎障害分子-1(KIM-1)、インスリン様成長因子結合タンパク質7(IGFBP7)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質2(TIMP2)を含む)は、AKI(従来の特徴マーカで定義される)と相関し、血清クレアチニンよりも急速に変化し得るが、比較的遅れる(すなわち、腎障害が生じてから数分ではなく数時間変化する)点ではクレアチニンと同じ限界を共有している。さらに、新規の尿AKIバイオマーカは、慢性腎臓病(CKD)及び敗血症を含む特定の健康状態の患者におけるAKIの予測及び/又は診断において、より性能が劣化する。さらに、AKIの特定のエピソードが有効循環血液量を増大させるための処置の迅速な適用によって最良に治療され得るか否かを判別することが、多くの場合において臨床的に重要であることを考慮すると、その決定を補助するための、各々及び全ての標準及び新規なAKI実験室試験の固有の不能性はまた、医療環境におけるそれらの全体的な有用性を制限する。したがって、重大な腎組織損傷(AKI)の発生前に、リスクのある腎組織、腎組織不全、及び/又は初期AKIを迅速に検出することができるAKI検出システム及び方法が必要とされている。
【0006】
その目的のために、尿中「総アンモニア」(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))は、リスクのある腎組織、腎組織不全、初期AKI、及び/又はAKIの迅速な検出のための新規な尿バイオマーカとして使用することができる。流体中では、アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+)は平衡状態で存在し、それぞれの種の量は周囲の環境条件(例えば、pH、温度、圧力)に依存する。総アンモニアの腎臓での産生(腎アンモニア産生)は、主に、他の腎内状態に加えて、腎近位尿細管細胞内でのグルタミンの代謝に依存する。腎アンモニア産生は、全身の酸/塩基の状態、カリウムの状態、食事由来のタンパク質摂取量の変動など、様々な全身状態に応じて、正常に変化又は適応する。肝機能の変化などによる全身の総アンモニアレベルの変化も、尿中総アンモニアレベルの変化につながる。有効循環血液量の減少及び/又はAKIは、腎アンモニア産生に速やかに影響し、尿中総アンモニア量を減少させ、腎組織から排泄される総アンモニアを減少させる。したがって、尿中総アンモニア濃度及び/又は含有量の動的変化に対する連続的、自動的、予測的なモニタリングを用いて、腎組織、腎細胞性不全、初期AKI、及び/又はAKIのリスクのある腎血流量(有効循環血液量)の潜在的な変化を迅速に検出することができる。さらに、全身の酸/塩基状態、カリウムの状態、食事由来のタンパク質摂取量、及び肝機能状態を含む、腎アンモニア産生及び/又は尿中総アンモニアに影響を及ぼすあらゆる全身状態の潜在的な変化を検出するために、尿中総アンモニアの動的変化(レベルの増加又は減少)の連続的な自動モニタリングを使用することができる。
【0007】
したがって、身体(すなわち、尿)から排泄されるものを含む流体中の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の量の変化を連続的に、自動でモニタすることを可能にするシステム及び方法が必要とされている。
【0008】
アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+)の測定のための従来のシステム及び方法はしばしば不正確であり、使用が困難であり、扱いにくく、ベッドサイド尿検査又は連続的なモニタリングに適していない。アンモニア又はアンモニウム測定のための従来のシステムは、(1)比色センサ、(2)分光ベースのセンサ、(3)ナノ材料ベースのセンサ、(4)非接触導電型センサ、及び(5)試薬スティックを有する。
【0009】
比色センサは、廃水及び血中のアンモニア(NH3)及び/又はアンモニウム(NH4
+)の測定に使用される。この種のセンサは、検出ユニット(例えば、光ファイバ)の端部に取り付けられたアンモニア(NH3)感受性pH色素で埋め込まれた薄膜からなる。これらのデバイスは高い感度を有するが、生体試料と共に使用するためにはさらなる器具の改良が必要とされる。
【0010】
例えば、ロシュ・コバス・インテグラ(ROCHE COBAS INTEGRA)(登録商標)における血液分析技術は、2つの試薬の使用及び血液試料収集の30分以内の分析を必要とする酵素的方法に基づく。血液分析に使用されるこの方法は、尿の測定に直接適用できない。尿のために使用される場合、尿(ミリモルの尿中総アンモニア濃度)は、血液分析技術の限界内の濃度(マイクロモルの血中総アンモニア濃度)を達成するために、少なくとも10~1000倍に希釈されなければならない。したがって、血液分析技術はベッドサイドでの尿検査には適さない。
【0011】
別の例では、ハンドヘルドポータブルデバイスが血中のアンモニウム(NH4
+)のレベルを検出することができる。ハンドヘルドポータブルデバイスは、カラーベースのセンサと、アンモニウム(NH4
+)をアンモニア(NH3)に変換する仕切り膜とを使用することができる。しかしながら、ハンドヘルドデバイスは、使い捨てであってもよく、アンモニウム(NH4
+)の一時点測定値のみを提供してもよく、連続測定、自動測定、又は反復測定に適さない。加えて、説明したハンドヘルドポータブルデバイスは、血液と共に使用されてもよく、これは、侵襲的な採血を必要とし、患者の連続的なモニタリングが所望される場合、評価をより困難かつ煩わしくする。さらに、説明したハンドヘルドポータブルデバイスは、血液と共に使用されるので、医療環境外(すなわち、患者の家庭内)での使用に適応可能ではない場合がある。さらに、このデバイスは、臨床的に重要な状態をモニタするために必要とされる少なくとも24時間の連続的な定量を提供しない。さらに、従来のハンドヘルドポータブルデバイスは、精度が不十分であることが実証されており、偽陽性及び偽陰性の両方の試験結果を生じる傾向がある。
【0012】
試料中のアンモニウム(NH4
+)又はアンモニア(NH3)を検出するための従来の方法はまた、液体及び試料の手動又はポンプベースの取扱いを伴う実験室ベースの方法、並びにスキャナ又は光電子増倍管及び光ファイバなどの外部検出器具を含んでいてもよい。これらの従来のシステムは、水中のアンモニウム(NH4
+)若しくはアンモニア(NH3)又は純粋な試料の分析のために、紙ベースの抽出膜又は溶液混合物を使用することができる。実験室ベースの方法は、他の溶解成分(すなわち、尿)の量が非常に変動する複雑な体液試料から、アンモニウム(NH4
+)レベル又はアンモニア(NH3)レベルを正確に検出することができない。
【0013】
さらに、電流測定センサ又は比色センサに基づく商業的技術を用いた水質モニタリング用途で実行されるアンモニウム(NH4
+)/アンモニア(NH3)の半連続測定は、医療環境には適応できない。例えば、ANALYTICAL TECHNOLOGY Q45Nデバイスの重量は15ポンドであり、溶液内のアンモニウム(NH4
+)/アンモニア(NH3)は、電流測定センサで測定される安定したモノクロラミンに変換される。最低流量は200mL/min(注:ヒトの最小又は絶対尿量は0.5mL/Kg/hrである。成人については、典型的な尿量は800~2000mL/day(0.6~1.4mL/min)である。)が必要であり、0~5ppm NH3(0~270マイクロモル濃度)の範囲で信頼できる。アステカ(AZTEC)600比色分析器(ABB)は、廃水中で半連続的に使用するように設計されている。アステカ600比色分析器は、インドフェノールブルー化学を用いて1時間当たり4つの試料しか測定できず、200~500mL/minの連続流速を必要とする。アステカ600比色分析器は、3ppmまでのアンモニア(NH3)を測定する。AWA INSTRUMENTS CX4000も比色原理に基づいて動作する。水処理産業からのこれらの大規模な市販の半連続測定装置は、医療環境での使用に容易に適応することができず、これらの装置が利用するセンサは異なる濃度範囲に対して定期的に較正されなければならない。水溶液中のアンモニウム(NH4
+)/アンモニア(NH3)のバッチ測定は一般に、アンモニウムイオンプローブ又は分光光度計と結合した比色計のいずれかを介して、水処理用途において行われる。
【0014】
アンモニウム(NH4
+)イオン選択性電極(ソリッドステート又は膜ベースのいずれか)は、アンモニウム(NH4
+)選択性イオン交換体を有する膜の原理に基づいて作動し、これにより、未知の溶液を基準溶液と比較して、膜を横切る異なる電位を生じる。ほとんどのアンモニウム(NH4
+)比色法は、試薬を水試料に添加し、特殊な装置で液状溶液の色を評価することを含む。少数のアンモニウム(NH4
+)比色試験は、試薬が溶液に添加され、ストリップが溶液に浸漬され、色の変化が視覚的に観察されるストリップ(pH測定ストリップに類似)を含む。市販のバッチ測定製品は、試薬、酵素、及び/又は大きな分析装置の使用を必要とする。ロシュ(Roche)酵素的方法は、20μLの最小サンプル容量を必要とし、尿用に設計されていない。水溶液用のアンモニウム(NH4
+)選択性電極は、数ミリリットルの最小限の試料体積を必要とし、電極は1~2時間毎に(連続測定において)較正されなければならない。正確にするために、電極はまた、測定される溶液中のアンモニウム(NH4
+)の予想される濃度域に応じて、様々な溶液で較正されなければならない。
【0015】
ヒト試料中のアンモニウム(NH4
+)/アンモニア(NH3)検出のためのほとんどの測定技術は、呼気又は血液(血漿)に依存する。しかしながら、従来の技術は、センシング膜の安定性が制限され、測定出力のドリフトがあるために、イオン選択性電極が各試料の分析間の時間のかかる較正を必要とするので、連続的なモニタリングには適切ではない。例えば、ORION(商標)高性能アンモニウム(NH4
+)電極は、センシング膜の安定性が限られているので、測定のドリフトを最小限に抑えるために、それぞれの新しい測定の前に較正される必要がある。
【0016】
さらに、生体試料の複雑さを考慮すると、臨床研究のために米国食品医薬品局(FDA)によって承認された方法論はほとんどない。血中及び尿中のアンモニウム(NH4
+)検出については、酵素アッセイが米国食品医薬品局の標準を満たす唯一の技術である。一般に、酵素アッセイは限られた貯蔵寿命を有し、複数のインキュベーション工程を含み、1時間を超える処理時間を必要とし、そしてかなりの操作者の労力を伴う。
【0017】
アンモニアガス(NH3)測定の分光法には、パルス量子カスケードレーザ分光法及び光学マイクロリング共振器が含まれる。大きな(テーブルトップ)測定システムが存在するが、これらはポータブルの個々のモニタリング(病院のベッドサイドなど)に望ましい小型、軽量、及び低コストに欠ける。例えば、アンモニア(NH3)は、炭酸ガス及び水蒸気のような干渉物質の存在下(呼気中など)で、アンモニア(NH3)のサブ十億分率(ppb)ゼロバックグラウンド測定を行うために、同調可能なレーザ及び音響検出器を使用するNEPHROLUX(商標)のような機器による吸収分光法を介して検出することができる。分光技術は非常に高感度であるが、それらは通常、かさばる構成要素を有し、個人向けの使用には不便である。さらに、吸収分光法における光学部品は、位置合わせ不良を起こしやすく、個人向けの使用には不適切である。
【0018】
ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)や選択イオンフローチューブ質量分析(SIFT-MS)は、アンモニア(NH3)測定には正確かもしれないが、高価であり機器の維持が難しい。GC-MSは複雑な混合物からアンモニア(NH3)とアンモニウム(NH4
+)の両方を分離して同定するが、高価な計測器(~30万ドル)と、高再現性及びリアルタイム実装を不可能にする事前集中ステップとが必要である。SIFT-MSは、さまざまな生体試料(皮膚及び尿のヘッドスペース、呼気など)におけるアンモニア(NH3)を含む低分子量の揮発性物質をリアルタイムに検出するために開発されたものであるが、高価(~20万ドル)であり、かなり維持が困難である。
【0019】
ナノ材料ベースの化学抵抗器及び電気化学センサは、明確に定義された理想に近い実験室条件下で、臨床的に関連するアンモニア(NH3)レベル(呼気アンモニア(NH3)(ppb))に一致する検出限界を示す。しかし、これらのセンサを用いて複雑な試料中のアンモニア(NH3)を検出するには、連続的なモニタリング状態に必要な選択性及び寿命を得るために、さらなる改良が必要である。
【0020】
さらに、従来のアンモニア(NH3)検出器は、非接触導電型センサを有していてもよい。しかしながら、従来の非接触導電型アンモニア(NH3)センサに用いられている酸性液はそれぞれの測定後に交換が必要であり、連続測定は実用的ではない。
【0021】
最後に、尿試薬スティックは、10個の様々な尿パラメータ(pH、比重、白血球エステラーゼ、亜硝酸塩、ウロビリノーゲン、タンパク質、ヘモグロビン、グルコース、ケトン、ビリルビンを含む)を決定するために広く使用されているが、これらの尿ディップスティックの市販の電子リーダーはアンモニア(NH3)又はアンモニウム(NH4
+)の測定を含まない。しかしながら、アンモニウム(NH4
+)検出試薬スティックは、水試料に使用するために商業化されている。これらのアンモニウム(NH4
+)検出試薬スティックの操作は不可逆的な化学反応に基づいており、したがって、それらは使い捨てデバイスである。これらの試薬スティックは迅速かつ使用が容易であるが、パラメータの半定量的な評価を提供するだけであり、重要な用途において所望される精度及び連続的なリアルタイムモニタリング能力がない。
【0022】
さらに、生体溶液中のアンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+)は互いに平衡状態にあり、そして各種は試験される生体試料内の局所的状態(すなわち、pH、温度、圧力)の変化に依存して、他のものに自発的に変換するので、試験される試料中のアンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+)の両方の存在も説明する、医学分野における生体試料(例えば、体液、尿)中の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))を検出及び定量するためのシステム及び方法が必要である。
【0023】
したがって、体液中のアンモニウム(NH4
+)の存在も考慮に入れた、体液中のアンモニア(NH3)の濃度及び/又は量の変化の連続的な自動モニタリングを可能にするシステム及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0024】
本開示は、流体中の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の検出に関するシステム及び方法を記載する。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステム及び方法は、アンモニウム(NH4
+)をアンモニア(NH3)に変換することができる。尿などの身体試料は、pHに応じて、様々な量のアンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+)を含有することができる。本明細書に記載されるシステム及び方法は、抽出膜を介して体液(例えば、尿、汗、血など)からアンモニア(NH3)を抽出することができ、これにより、生体試料中に含まれるアンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+)の合計が実質的にアンモニア(NH3)として測定される。いくつかの実施形態では、これにより、流体(例えば、尿が産生されるとき)の連続試料を、連続的かつほぼ継続的に、総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))濃度について測定できる。抽出膜は、流体試料のアンモニウム(NH4
+)の実質的に全てをアンモニア(NH3)に化学的又は電気化学的に変換することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、システムは、分析装置を有する。分析装置は、体液の試料と流体連通していてもよい。分析装置は、インテリジェント制御された試料調整及び搬送システム、抽出膜(流体試料のアンモニウム(NH4
+)の実質的に全てをアンモニア(NH3)に変換する)、センシングチャンバ、及びアンモニア(NH3)センサを有していてもよい。インテリジェント制御された試料調整及び搬送システムは、抽出膜と接触する体液の量を制御して、センサ性能が複数の連続使用及び長時間にわたって変化しないようにすることができる。試料調整及び搬送システムは、サンプル量、時間、及びセンサ信号変化情報を含むインテリジェントアルゴリズムに基づくインテリジェントにプログラム可能なバルブシステムによって操作することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、試料調整及び搬送システムは、マイクロ制御作動弁システムを有する信号飽和及びドリフト回避機構を有していてもよい。マイクロ制御作動弁システムは、分析装置と接触している体液の容積を制御してもよい。マイクロ制御作動弁システムは、体液、ヘッドスペースガス、及びゼロ調整チャネルからのガスの搬送を制御するように構成されたバルブを有していてもよい。試料調整及び搬送システムは少なくとも2つの入口、すなわち、体液と接触するサンプリングチャネルと、システムがベースラインを記録することを可能にするゼロ化材料と接触するパージチャネルとによって形成されていてもよい。ベースラインは、センサ信号のドリフトを補正するために不可欠であってもよい。抽出膜は、体液と流体連通する領域とセンシングチャンバとの間に配置することができ、1)体液内に含まれるアンモニウム(NH4
+)の少なくとも一部をアンモニア(NH3)に変換し、2)変換されたアンモニア(NH3)をセンシングチャンバ内に排出するように構成することができる。センシングチャンバ内に配置されたアンモニア(NH3)センサは、特定の条件下で熱により前処理されてもよく、広範囲の温度、相対湿度、及び圧力条件下でのセンサの性能を保証するために、前較正アルゴリズムを有していてもよい。アンモニア(NH3)センサプロセッサは、実行されると、プロセッサに、センシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH3)の量を定量させる命令を記憶する非一時記憶装置を有していてもよい。分析装置は、センシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH3)の定量された量、及びその量が経時的にどのように変化し得るかに基づいて、臓器又は組織機能の変化、臓器又は組織障害の発生、全身生体総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))生理機能の変化、又は体液中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))レベルが変化する他の体内プロセスを検出してもよい。任意選択で、システムはまた、ユーザインタフェース装置を有していてもよい。いくつかの実施形態では、アンモニア(NH3)センサは、センシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH3)の定量された量をユーザインタフェース装置に送信するようにさらに構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース装置は、分析装置からの少なくとも送信を受信するように構成されてもよく、分析装置から受信した送信を表示するように構成されたグラフィカルユーザインタフェースを有するディスプレイを有していてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態において、該方法は、分析装置において、体液の試料を受け取り、体液の試料に流体連通する領域と該分析装置のセンシングチャンバとの間に位置する抽出膜を介して、体液の試料内に含まれるアンモニウム(NH4
+)の少なくとも一部をアンモニア(NH3)に変換し、抽出膜を介して、変換されたアンモニア(NH3)をセンシングチャンバ内に排出し、センシングチャンバ内に位置するアンモニア(NH3)センサを介して、センシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH3)の量を決定し、臓器又は組織機能の変化、臓器又は組織損傷、体液中総アンモニア濃度に影響を及ぼす生理機能の変化、又は体液中総アンモニアレベルが変化する他の体液プロセスを、センシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH3)の決定された量が変化するか、又は測定時に個体についての正常又は予想される濃度又は範囲外であると解釈される場合、検出してもよい。任意選択で、該方法は、センシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH3)の量をユーザインタフェース装置に送信するステップをさらに含むことができ、ユーザインタフェース装置は、グラフィカルユーザインタフェースを有するディスプレイをさらに有する。任意選択で、該方法はまた、ユーザインタフェースデバイスにおいて、センシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH3)の量を受け取るステップと、グラフィカルユーザインタフェースを介して、センシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH3)の量を表示するステップとを含むことができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、腎機能を決定する方法は、第1の分析装置において、被験者試料中の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の濃度を検出するステップを含む。その後、分析装置は、検出された総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))レベルを第2のユーザインタフェース装置に送信することができる。次いで、第2のユーザインタフェース装置は、被験者試料中の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の検出されたレベルを、変化した腎機能の診断と関連付けることができる。この関連付けは、正常な被験者における総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の検出レベル、又は被験者の以前の試料における総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の検出レベルと比較して、被験者試料における総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の検出レベルを考慮に入れることができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、非侵襲性装置は、流体の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の濃度を半連続的に検出することができる。非侵襲性デバイスは、小型化でき、便利に配置することができ、そしてデータを自動的に送信してほぼリアルタイム及び/又は半連続的な分析を提供することができる。いくつかの実施形態では、本装置は、尿道留置カテーテルを有する入院患者における急性腎障害(AKI)の自動モニタリング及び迅速な検出のために使用されてもよい。あるいは、本装置は、以下に起因する腎アンモニア産生及び/又は尿中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の変化を検出するために使用することができる。1)腎機能の変化、2)急性腎障害若しくは不全、3)慢性腎臓病、4)肝機能の変化、5)急性肝障害若しくは不全、6)慢性肝臓病(例えば、肝硬変)、7)急性消化管出血、8)慢性消化管出血、9)アンモニア生理機能の発生、取り扱い、及び/又は排泄に関与する、若しくはそれに影響を与える遺伝的又は遺伝的代謝性疾患(例えば、尿素回路障害、有機酸尿症、脂肪酸酸化の欠陥によるカルニチン欠乏、二塩基性アミノ酸尿症及びピルビン酸代謝の欠陥)、10)正常な代謝プロセスの変化(例えば、タンパク質食後のアンモニア生成及び排泄の増加)、11)急性又は慢性の全身性の酸/塩基変化又は代謝プロセス若しくは疾患状態による不均衡、12)呼吸過程又は疾患状態による急性又は慢性の全身性の酸/塩基の変化又は不均衡、13)有効循環血液量の変化、14)腎血流の変化、又は、15)腎血漿流。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1-1】本開示の一態様に係る流体の総アンモニアを決定するための分析装置の概略図を示す。
【
図1-2】本開示の一態様に係る流体の総アンモニアを決定するための分析装置の概略図を示す。
【0032】
【
図2】本開示の一態様に係るアンモニア用センシングチャンバの一例の概略図を示す。
【0033】
【
図3】本開示の一態様に係る体液からのアンモニア(NH
3)検出用センサの写真を示す。
【0034】
【
図4】本開示の一態様による吸光度変化のグラフを示す。
【0035】
【
図5】本開示の一態様に係るアンモニア用センサの吸光度変化のグラフ(パネルA)、アンモニア用センサの組立図(パネルB)、アンモニアに曝露する前後のセンサの吸光度変化のグラフ(パネルC)、及びセンサアセンブリ(ハイブリッドセンサと呼ばれる)(パネルD)の図を示す。
【0036】
【
図6】本開示の一態様に係る、アンモニア用センサの特異性(パネルA)、精度(パネルB)、可逆性及び時間応答(パネルC)、並びにセンサ寿命及び安定性(パネルD)に関連するグラフを示す。
【0037】
【
図7】本開示の一態様に係るアンモニア用センサの写真及び概略図である。
【0038】
【
図8】本開示の一態様に関連するアンモニア用センサ(ハイブリッドセンサと呼ばれる)を用いて行われる尿の分析のグラフ及び参照方法:イオン選択性電極を用いて行われる尿の分析のグラフを示す。
【0039】
【
図9】アンモニアへの曝露時のアンモニア用センサからのグラフを示す。グラフは、センシングフォトダイオード及び基準フォトダイオードとして動作する、本開示の一態様に関連するフォトダイオードの信号を示す。
【0040】
【
図10】本開示のセンサ基板に関連する実験データの概略図及びグラフを示す図である。
【0041】
【
図11】本開示の一態様に関連する総アンモニア(アンモニウム(NH
4
+)及びアンモニア(NH
3))の統合分析器の概略図を示す。なお、光色検出器は図示していない。
【0042】
【
図12】本開示の一態様に関連するアンモニアセンサ信号のグラフを示す。
【0043】
【
図13】本開示の一態様に関連するアンモニア用センサの較正プロットを示す。
【0044】
【
図14】本開示の一態様に関連する総アンモニア分析装置(CODA)によって評価された実験データのグラフを示し、連続試料分析に対する選択性及び応答を示す。
【0045】
【
図15】本発明の一態様に関連する総アンモニア分析装置(CODA)によって評価された実験データのグラフを示し、総アンモニア(アンモニア、NH
3として)産出量、及び装置の精度を示す。
【0046】
【
図16】アンモニア用センサの安定性を示す、本開示の一態様に関連する実験データのグラフを示す。
【0047】
【
図17】本開示の態様に関連する実験データのグラフを示し、分析装置(CODA)による実際の体液分析(尿)及び参照方法(イオン選択性電極(ISE))を示す。
【0048】
【
図18-1】本開示の一態様に関連する、おむつにおけるセンサ調製、及び調製されたおむつインサートにおける尿中アンモニアの検出を示す。
【
図18-2】本開示の一態様に関連する、おむつにおけるセンサ調製、及び調製されたおむつインサートにおける尿中アンモニアの検出を示す。
【0049】
【
図19】生体試料中のアンモニアを連続的にモニタするための例示的なCODAの構成要素を示す。
【0050】
【
図20a】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【
図20b】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【
図20c】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【
図20d】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【
図20e】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【
図20f】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【
図20g】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【
図20h】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【
図20i】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【
図20j】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【
図20k】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【
図20l】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【
図20m】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【
図20n】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【
図20o】化学抽出膜の一例を示し、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学形状などの異なる変数が抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響するかを示す。
【0051】
【
図21a】1回目のサイクル後の化学抽出膜中のアルカリ性物質の断面濃度プロファイルのモデル結果である。
【
図21b】20回目のサイクル後の化学抽出膜中のアルカリ性物質の断面濃度プロファイルのモデル結果である。
【0052】
【
図22a】複雑な体液に対する抽出膜及びセンサ全体の分析性能を示す。
【
図22b】複雑な体液に対する抽出膜及びセンサ全体の分析性能を示す。
【0053】
【
図23】アミノ酸からの干渉を有する3つの試料について、参照酵素的方法によって測定されたアンモニアの結果を示す。
【0054】
【
図24】アンモニアの定量のための較正不要の方策を可能にする、定量可能な汎用センサ感度の実証を示す。
【0055】
【
図25】37.6mM~3.6mMのNH
4
+の連続測定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本明細書に記載されるシステム及び方法のいくつかの実施形態は、ワイヤレス、ソリッドステート、及びポータブルである、連続的な総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))センシング及び定量装置を有する。他の潜在的な用途に加えて、医療提供者は、本明細書に記載されるシステム、方法、及び装置を使用して、従来のシステムで可能であったよりも迅速に、かつより正確に、生体試料中の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))を、信頼性をもって測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるシステム、方法、及び装置は、5秒以内に生体試料中に含まれる総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の正確な濃度を決定し、他のデバイスにデータを無線で送信することが可能である。いくつかの実施形態では、無線送信は、Bluetooth(登録商標)を使用して実行されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるシステム、方法、及び装置は、抽出膜と、ブロモフェノールブルーなどのpH指示薬を含浸させたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)基板などの疎水性物質から構成されるアンモニア(NH3)センサと、指示薬の極大吸収波長における発光ダイオード(LED)と、アンモニア(NH3)曝露後の吸光度変化を測定するように構成されたフォトダイオードと、を有していてもよい。さらに、指示薬が光を吸収しない異なる波長のLEDは、センサ信号ドリフトのさらなる補正を可能にする第2の読み取り値(reading)を生成するために、対応するフォトダイオードで構成されていてもよい。フォトダイオードは、センサの色変化を電子信号に変換し、これを(有線又は無線で)スマートデバイスに送信して、読み出しを行うことができる。記載されるシステム、方法、及び装置は、従来のシステムと比較して、高感度、高特異性、高速可逆性、及び高速応答時間を示すことができる。
【0057】
上記のように、尿中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))は、急性腎障害(AKI)及び他の生理学的状態及び病気の早期発見のためのバイオマーカとして使用することができる。本明細書に記載のシステム及び方法は、尿又は他の体液中の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))及び/又は尿のヘッドスペース又は他の体液のヘッドスペース中のアンモニア(NH3)ガスの検出に使用することができる。体液は、全血、血漿、血清、細胞内液、細胞間液、間質液、リンパ液(リンパ)、汗、尿、胸水、心膜液、腹膜液、胆汁液(胆汁)、糞便、脳脊髄液、滑液、唾液、喀痰、鼻液、又は眼液のうちの1つ以上を含むことができる。
【0058】
以下でさらに論じるように、本明細書で説明するシステム及び方法は、分析装置を有することができる。分析装置は、本明細書では任意に比色光電子力学分析装置(又は単に「CODA」)と呼ばれ、非常に少量の尿又は体液を使用して、リアルタイムかつ連続的な尿中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の検出及び定量を提供することができる。分析装置は、pH色素に基づくアンモニア(NH3)感受性センシングプローブが埋め込まれたセンサを使用することができる。血中又は尿中の溶解アンモニウム(NH4
+)を直接的に測定する人体体液のための従来の検出方法とは異なり、分析装置のセンシングチャンバは、測定前に体液(又は体液試料)をアルカリに曝露することにより流体アンモニウム(NH4
+)を気体アンモニア(NH3)に変換することによって、尿ヘッドスペース中のアンモニア(NH3)ガスを検出及び測定することができる。
【0059】
ここで
図1を参照すると、体液(例えば、尿など)の総アンモニア(アンモニア(NH
3)及びアンモニウム(NH
4
+))を検出するためのシステムの概略図が示されている。
図1に示すように、ウェアラブル分析器は、ユーザインタフェース装置102と無線通信する分析装置100を有することができる。いくつかの実施形態では、分析装置100は、抽出膜104、アンモニア(NH
3)センサ106、フォトダイオード108、発光ダイオード110、マイクロコントローラ112、Bluetooth(登録商標)送信機/受信機114、フレキシブルプリント回路基板116、及び/又はフレキシブルバッテリ118を有することができる。抽出膜104は、尿などの体液試料、又は体液試料120のヘッドスペースと流体連通するように構成されていてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、抽出膜104は、体液と流体連通する領域とセンシングチャンバ(アンモニア(NH3)センサ106を含む)との間に配置されていてもよい。抽出膜104は、体液内に含まれるアンモニウム(NH4
+)の少なくとも一部をアンモニア(NH3)に変換し、変換されたアンモニア(NH3)をセンシングチャンバに排出するように構成されていてもよい。以下でさらに説明されるように、いくつかの実施形態では、抽出膜は、分配層、アルカリ層、疎水性層及び指示薬層を有することができる。分配層は、抽出膜に沿って体液試料を分配するように構成することができる。アルカリ層は、体液試料中のアンモニウム(NH4
+)の少なくとも一部をアンモニア(NH3)に変換するように構成することができる。いくつかの実施形態では、アルカリ層は、有機水酸化物及び/又は水酸化ナトリウムを有することができる。疎水性層は、体液試料から変換されたアンモニア(NH3)を濾過し、変換されたアンモニア(NH3)をセンシングチャンバに排出するように構成されていてもよい。いくつかの実施態様では、疎水性層は、ポリテトラフルオロエチレン等を含むことができる。指示薬層は、ブロモフェノールブルー、植物由来のpH指示薬(例えば、アントシアニン)、又は任意の他の適切な材料を含むことができる。指示薬層は、体液のアンモニア(NH3)ガス及び/若しくはアルカリ層への曝露及びアルカリ層との相互作用により流体アンモニウム(NH4
+)から抽出されるアンモニア(NH3)ガスの量並びに/又は濃度に応答して、変色するように構成されていてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、アンモニア(NH3)センサ106は、センシング領域106A及び基準領域106B(センシングプローブなし)上のアンモニア(NH3)の検出のための複合体センシングナノ材料を使用して、吸収色変化を評価する比色ナノ複合体センサを有していてもよい。いくつかの実施形態では、吸光度は、センシング領域からの信号を基準領域からの信号で割った負の対数として計算される。発光ダイオード110とフォトダイオードとを合わせて、以下でさらに説明するように、検出ユニット(又はハイブリッドセンサ)を形成することができる。アンモニア(NH3)センサ106はまた、実行されると、プロセッサに、センシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH3)の量を定量させる命令を記憶する非一時的記憶装置を有するプロセッサを有していてもよい。
【0062】
以下でさらに詳細に説明するように、アンモニア(NH3)センサは、4つのフォトダイオード、すなわち、センシング領域106Aに配置された2つのセンシングフォトダイオードと、基準領域106Bに配置された2つの基準フォトダイオードとを有することができる。2つの発光ダイオードは、指示薬層を照明するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、発光ダイオードは赤色光を発光してもよい。いくつかの実施形態では、光源及び光検出器は、CMOSチップ(カメラ)を使用するように構成されていてもよい。
【0063】
アンモニア(NH3)センサ106は、第1のフォトダイオードからの信号及び第2のフォトダイオードからの信号に基づいて指示薬層の吸光度メトリックを計算し、計算された吸光度メトリックを、吸光度とアンモニア(NH3)濃度との間の関連性を示す1つ以上の基準値と比較することにより吸光度メトリックを定量可能なアンモニア量(NH3)に変換することによって、センシングチャンバ内に存在するアンモニア(NH3)の量を定量することができる。さらに、指示薬が光吸収を有さない波長(最小吸収波長)、例えば675nmより高い波長でセンサ信号を記録するように設計されたLED及び対応するフォトダイオードから、吸光度信号をさらに補正することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース102は、コンピューティングデバイス上に提示される。コンピューティングデバイスは、検出システムに内蔵されていてもよいし、外部装置に内蔵されていてもよい。内蔵コンピューティングデバイスは、ディスプレイに関連付けることができる。外部装置では、ユーザインタフェース102は、分析装置100からデータを取得し、ユーザインタフェース102のグラフィカルユーザインタフェース上に表示するための1つ以上のレポートを生成することができる1つ以上のソフトウェアアプリケーションを含むことができる。生成されたレポートは、分析装置100から取得されたデータに対する1つ以上の分析計算の実行を必要とすることがある。コンピューティングデバイスは、タブレットコンピュータ(例えば、Apple iPad(登録商標)、Samsung Galaxy Tabなど)、スマートフォン(例えば、Apple iPhone(登録商標)、Blackberry Phone、Android Phoneなど)、スマートウォッチ(例えば、Apple Watchなど)、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、パーソナルコンピュータデバイス(PC;ウェブブラウザ及びインストール可能なソフトウェアを介する)、及び/又は他の同様のデバイスなどのモバイルデバイスとすることができる。コンピューティングデバイスは、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、デジタル加入者線(DSL)、無線ネットワーク(例えば、3G又は4Gネットワーク)、又は他の同等の接続手段などのネットワークを介して、分析装置100に有線又は通信可能に接続されていてもよい。Bluetooth(登録商標)通信構成を
図1に示す。
【0065】
コンピューティングデバイスは、処理装置、メモリ、データ記憶装置、及び通信インタフェースを有することができる。構成要素は、データ及び制御バスを介して互いに通信することができる。処理装置は、マイクロプロセッサ、中央処理装置、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、及び/又はネットワークプロセッサを有することができるが、これらに限定されない。処理装置は、本明細書で説明される動作を実行するための処理ロジックを実行するように構成されていてもよい。一般に、処理装置は、本明細書で説明される動作を実行するために処理ロジックで特別にプログラムされた任意の適切な専用処理装置を有していてもよい。
【0066】
メモリは、例えば、読み出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ、ダイナミックRAM及びスタティックRAMの少なくとも1つを有するが、これに限定されず、処理装置によって実行可能なコンピュータ可読命令を記憶する。一般に、メモリは、本明細書に記載する動作を実行するために、処理装置によって実行可能なコンピュータ可読命令を記憶する任意の適切な非一時的コンピュータ可読記憶媒体を有していてもよい。いくつかの例では、コンピュータデバイスは、2つ以上のメモリ装置(例えば、ダイナミックメモリ及びスタティックメモリ)を有していてもよい。
【0067】
コンピューティングデバイスは、他のコンピュータとの直接通信(有線及び/又は無線通信を含む)、及び/又はネットワークとの通信のための、通信インタフェース装置を有することができる。いくつかの例では、コンピューティングデバイスは、表示装置(例えば、液晶ディスプレイ、タッチセンシティブディスプレイなど)を有していてもよい。いくつかの例では、コンピューティングデバイスは、ユーザインタフェース(例えば、英数字入力装置、カーソル制御装置等)を有していてもよい。
【0068】
いくつかの例では、コンピュータデバイスは、本明細書で説明される機能のうちの任意の1つ以上を実行するための命令(例えば、ソフトウェア)を記憶するデータ記憶装置を有することができる。データ記憶装置はソリッドステートメモリ、光媒体、及び磁気媒体を含む任意の適切な非一時的コンピュータ可読記憶媒体を有することができるが、これらに限定されない。
【0069】
図1に図示されるように、分析装置100は、様々な構成を有することができる。例えば、
図1のパネルCには、分析装置100のチューブバージョンが示されている。分析装置100のチューブバージョンでは、無線フレキシブルプリント回路基板116が、無線フレキシブルプリント回路基板116の下に位置するフレキシブルバッテリ118及びフレキシブルディスプレイを有するように構成される。分析装置100のチューブバージョンは、抽出膜がチューブ内の尿と流体接触するように構成される。
図1のパネルCでは、分析装置100がカテーテル管又は採取袋内の患者の尿と直列に配置される。
【0070】
いくつかの実施形態では、分析装置の汚れを軽減するために、センサ表面を尿流に平行な方向に配置して、尿固体の堆積を回避することができる(
図1のパネルC参照)。
【0071】
いくつかの実施形態では、コネクタ壁に対する親水性修飾が含まれており、コネクタ及び膜の容易な湿潤を増強し、分析器をカテーテルに差し込むことによる膜内への試料の詰まりを軽減する。さらに、本明細書に記載のシステムの一実施形態は、尿漏れを防ぐように、Jaco(商標)の漏れのない標準チューブフィッティングを使用することができる。
【0072】
あるいは、
図1のパネルDに示すように、分析装置100の接着バージョンを使用して、抽出膜104がそれぞれ尿又は汗と接触するように、装置100をおむつ又は皮膚に接着することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、分析装置100は、2ppm~1000ppm(液状流体中のアンモニウム(NH4
+)の0.1mmol/L~50mmol/Lに対応する)の範囲のアンモニア(NH3)ガス濃度について、特異的で迅速な応答及び正確な測定を提供することができる。アンモニア(NH3)センサ106は、アンモニア(NH3)に対して非常に選択的であってもよく、特に、尿ヘッドスペース中の大量の干渉物質を考慮することができる。以下に説明するように、本明細書に記載の方法及びシステムに従って構築されたセンサ106は、長いサンプリング期間において良好な再使用性を示すことができ、医療用途のための日常的な使用を可能にする。したがって、分析装置100は、以下の実験の項でさらに説明される市販の参照方法(ISE電極)からの測定値との対比によって証明されるように、尿及び/又は尿から抽出されたアンモニア(NH3)ガス中の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))濃度を正確にモニタすることができる。いくつかの実施形態では、アンモニア(NH3)センサ106は、耐久性があり、少なくとも10週間持続することができる。以下に説明するように、センサ106の合成プロセスは、単純で容易に再現可能である。さらに、分析装置100はスマートデバイスに無線で接続することができ、それによって、入院患者、外来患者、又は個人的な健康モニタリングのための測定の柔軟性を提供する。
【0074】
いくつかの実施形態では、分析装置100は、病院又は外来環境に特によく適していてもよい。
図1に関連して上述したように、分析装置100は、アンモニア(NH
3)の検出、シグナルコンディショニング、及びユーザインタフェース装置との無線通信のための、抽出膜/センサ及び光電子部品の組み合わせを含む交換可能なカートリッジを有することができる。データ取得、信号処理アルゴリズム、表示、送信、及びユーザインタフェースのためのソフトウェアは、分析装置100及び/又はユーザインタフェース102に含まれていてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、体液(尿又は汗など)の試料は、アンモニア(NH3)が抽出される抽出膜/センサカートリッジ(交換可能カートリッジ)上に迂回されてもよい。次いで、抽出されたアンモニア(NH3)は、カートリッジの比色センサと相互作用することができ、これにより、アンモニア(NH3)濃度に応じてその色を変化させる。次いで、1つ以上の信号処理アルゴリズムを含むソフトウェアは、アンモニア(NH3)濃度を決定することができる。いくつかの実施形態では、尿中又は汗中の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))排泄速度は、抽出されたアンモニア(NH3)濃度及び流体のpH、及び/又は流体の流量を知ることによって決定することができる。いくつかの実施形態では、抽出されたアンモニア(NH3)濃度、及び流体の密度、比重、浸透圧(osmolality)、又はモル浸透圧濃度(osmolarity)を知ることによって、尿、皮膚のヘッドスペース、又は汗の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))排泄速度を推定することもできる。いくつかの実施形態では、試験は自動化された連続的な様式で行うことができ、試験は数分ごとに行われる。次に、データは、分析装置100からユーザインタフェース102に自動的に送信され、データが処理され、グラフィック表示されてもよい。
【0076】
例えば、ユーザインタフェース102は、長期間にわたる、総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))若しくはアンモニア(NH3)濃度、又は総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))又はアンモニア(NH3)排泄速度の変化を示すことができる。ユーザインタフェース102は、医療提供者、患者などによって定期的に見直されるように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、分析装置100又はユーザインタフェース102は、尿中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))濃度及び/又は排泄速度の突然の又は予想外の変化を識別し、自動化された警告をトリガすることができ、これにより、医療提供者に対し、尿中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))パラメータ(例えば、起こり得る急性腎不全又は起こり得る急性腎障害(AKI)イベントのいずれか)の変化に至った関連及び関係する健康又は代謝状態の変化について、できるだけ早く知らせることができる。総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の濃度及び/又は排泄速度の過去の測定値をデータベースに記憶し、比較することができる。
【0077】
上述のように、複合抽出膜/センサは、アンモニア(NH
3)を測定する比色センサ及び抽出膜に基づいており、これらは両方とも、同一の基板/ユニット上に組み立てられ、これにより、検出原理は、(
図1及び
図5に示すように)スケーラブルかつ小型化される。アルカリ緩衝抽出能力を有する抽出膜は、寸法をセンチメートルからミリメートルに縮小することができる。いくつかの実施形態では、抽出膜は、ヘンリー一定分配挙動に従って、10以上のpHでアンモニウム(NH
4
+)から気相中にアンモニア(NH
3)を抽出するように構成されていてもよい。比色構成要素は、単位面積当たりの光吸収を検出するように構成されてもよく、これにより、感度は、全センシング面積とは無関係に、単位面積当たりの結合部位によって決定される。言い換えれば、本明細書に記載されるシステム及び方法は、抽出品質、感度、及び検出限界を犠牲にすることなく、抽出膜/センササイズの組み合わせをスケール通りにすることを可能にできる。センサ検出方法は、LEDやフォトダイオード(PD)などの高性能フレキシブル光電子部品を使用しており低コストである(
図5のパネルD参照)。
【0078】
次に、本発明の一態様に係るアンモニア用センサ(NH
3)の概略図を示す
図2を参照する。図示するように、センシングチャンバは、センシング領域106Aと、流れ方向と平行に位置する基準領域106Bとを照らすように配置される赤色発光ダイオード110を有していてもよい。フォトダイオード108は、センシング領域106A及び基準領域106Bの下方に配置することができる。ターゲットガスはセンシングチャンバ内に向けることができ、そこでターゲットガスはセンサに曝露され、次いで、センサはターゲットガス中のアンモニア(NH
3)の濃度に比例した変色を示す。フォトダイオード108は、フォトダイオード信号感度を得るためにレジスタを有するプリント回路基板上に実装されていてもよい。ベールの法則を用いることにより、センシング領域と基準領域との間の信号比率の負の対数の変化を用いて、吸光度を介してアンモニア(NH
3)気体の濃度を決定することができる。
【0079】
図3は、本発明の一態様に係る、流体の総アンモニア(アンモニア(NH
3)及びアンモニウム(NH
4
+))のための分析カートリッジを示す。
図1に示すように、分析装置100は、ユーザインタフェース102と無線通信することができる。また、有線通信を用いてもよい。さらに、
図3に示すように、センシング領域はアンモニア(NH
3)濃度に感受性が強い。
図3の前後のセクションでは、センシング領域106Aの変色は、アンモニア(NH
3)への曝露後を示している。
【0080】
次に、
図4を参照すると、本開示の一態様に係る吸光度変化のグラフが示されている。アンモニア(NH
3)への曝露の前後の、JAZ分光光度計のセンサチャンバで得られたセンサの吸収スペクトル変化を示す。図示のように、センサは、600nm~630nmの最大吸収範囲波長を有する。アンモニア用センサの最大吸光度(NH
3)は600~630nmの間で生じ、最小吸光度は675nmより高い波長で生じる。
【0081】
図5は、本発明の一態様に係る、流体の総アンモニア(アンモニア(NH
3)及びアンモニウム(NH
4
+))用のセンサの概略図及び組立図を示す。
図5のパネルAは、抽出膜の指示薬層に含まれるブロモフェノールブルー(BPB)のナノ複合体センサを示す。
図5のパネルAに示すように、センシング素子は、アンモニア(NH
3)の曝露後に変色することができる。センシング素子は、アンモニア(NH
3)に対する迅速で可逆的な反応を提供する多孔質疎水性基材上に堆積されたBPBの化学的に選択的なナノ結晶から作製されていてもよい。センサ作製プロセスは、
図5のパネルBに示されている。図示されるように、センサ製造プロセスは、積層及びレーザ切断プロセスを含んでいてもよい。
図5のパネルCは、アンモニア(NH
3)への曝露中のセンサの吸収スペクトルを示す。630nmの最大吸収波長が示されている。
図5のパネルDは、
図5のパネルBに示されている積層プロセスによるセンサアセンブリ(ハイブリッドセンサと呼ぶ)を示す。このセンサアセンブリの概略図は、最大及び最小吸収波長で同時に検出するための光電子部品を示す。
【0082】
図5のパネルA及びCに示されるように、アンモニア(NH
3)センサ用のナノ複合体は分子プローブとしてpH指示薬(例えば、ブロモフェノールブルー、BPB)を使用して製造されていてもよい。任意の適切な代替のpH指示薬を使用することができる。いくつかの実施形態では、比色センサ基板は、基板上に堆積されたときにナノ結晶を生成するBPB(比色検出剤)溶液に浸漬された、特注又は市販の(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))膜から構成されていてもよい。次に、変性PTFEの基板を25℃で乾燥させることができる。このプロセスは分子プローブ(BPB)に、PTFE上に形成されるナノ結晶構造を生成させることができる。いくつかの実施形態では、これは分析物アンモニア(NH
3)との重要な又は迅速な反応を可能にできる。いくつかの実施形態では、分子プローブは、尿又は皮膚のヘッドスペースからアンモニア(NH
3)を迅速かつ選択的に検出するために使用することができる。化学物質と基板調製方法の異なる組み合わせをスクリーニングし、実験に関連して以下に論じるように研究した。いくつかの実施形態では、基板が周囲の水を保持せず、これによりアンモニア(NH
3)を永久的に可溶化することを回避するので、BPB(PTFE)の固定化のための多孔質疎水性基板は、高速アンモニア(NH
3)反応だけでなく、可逆反応も促進することができる。図示のように、得られたナノ複合体は、尿/汗干渉分子の存在下で高い特異性を有する迅速かつ高応答性ナノ結晶(<200ms)(
図5及び6のパネルCを参照のこと)を示した(
図6のパネルAを参照)。
【0083】
図5のパネルDにおいて、構造化されたセンサは、その主な構成要素と共に描かれている。主な構成要素は、スペーサの上の積層膜を有し、積層膜及びスペーサは、センサの上に配置される。あるいは、抽出膜は、センサ又はセンサチャンバから物理的に分離されていてもよい。さらに、アセンブリは、体液(すなわち、尿、汗)と直接接触する給送分配器を有する。図示された構成要素は、
図5のパネルBに図示された積層プロセスを介して、マスク層を使用して、センサカートリッジに一体化されていてもよい。積層構成要素は、
図5のパネルD及び
図1のパネルAに示されるように、光電子構成要素とともにセンサチャンバ内に嵌合する単一アセンブリを形成してもよい。光電子構成要素によって生成された信号は、電子的に捕捉され、較正データで処理されてもよい。次いで、データは、ユーザインタフェース102に有線又は無線で送信されてもよい。次いで、体液中総アンモニア(アンモニア(NH
3)及びアンモニウム(NH
4
+))濃度及び/又は排泄速度の傾向を示すために、データを経時的にグラフ表示することができる。いくつかの実施形態では、体液中総アンモニア(アンモニア(NH
3)及びアンモニウム(NH
4
+))濃度及び/又は排泄の急速な変化についての自動的な警告信号が、代謝状態及び/又は潜在的に有害な状態の変化を担当臨床医に警告するために、担当臨床医に送信されてもよい。
【0084】
カートリッジは、チューブ状システム又は接着ストリップに適合するように一体化されたフレキシブルエレクトロニクスで設計され、これにより、
図1のパネルC及びDに図示されている分析装置の2つの構成に図示されているように、ユーザが容易に「プラグアンドプレイ(plug and play)」することができる。いくつかの実施形態では、集束光学系の必要性を排除するために、LED及びPDを、センサカートリッジのできるだけ近くのフレキシブルプリント回路基板(PCB)上に配置してもよく、これにより、サイズ及びコストが低減される(
図5のパネルA及びDを参照)。
【0085】
LED及びPDは、反射モードで使用されてもよい。センサドリフト信号を軽減するために、2つのLEDを使用してもよい。分析装置100は、チューブ又は接着ストリップと嵌合するように適合された一体化ユニットを形成することができる。ウェアラブル分析器の両バージョン(
図1のパネルC及びDを参照)において、電子光学コンポーネント、マイクロコントローラを含むエレクトロニクス、小型薄膜フレキシブルバッテリ(例えば、Blue Spark Technologies Inc.)からの電力、小型ディスプレイ、電力スイッチ、及び低エネルギーBluetooth(登録商標)が、フレキシブルPCB上に実装される。フレキシブルPCBは、比色センサ信号を制御し、読み取るための1つのマイクロコントローラ、データ収集の全般的な機能、埋め込みディスプレイのための最小限のデータ処理(瞬間的な総アンモニア(アンモニア(NH
3)及びアンモニウム(NH
4
+))濃度のためのオプションとして使用される場合)、及びBluetooth(登録商標)を介した送信を有していてもよい。いくつかの実施形態では、説明したアセンブリ全体を、ポータブルに、機能的に、かつ人間工学的であるように設計された流線形の(sleek)ハウジング内に配置することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、温度変化、機械的操作の変化、電子部品の安定性の変化などに起因する使用時のアンモニア(NH
3)センサのベースラインのドリフトを軽減するために、センサは2つの同一のセンシング領域及び2つの同一の基準領域で構成されていてもよい。センシング領域及び基準領域の各対は、LEDで照明されてもよい。LEDは、特有の波長を有していてもよい。1つのLEDは630nmの波長を有することができ、センシングプローブの最大吸光度変化(Abs max)を捕捉するために使用することができる。第2のLEDは非吸収波長(例えば、700nm)を有することができ、センシングプローブのベースライン最小吸光度(Abs min)を捕捉するために使用することができる。吸光度の差:Δ吸光度=最大吸光度-最小吸光度を、センサ信号として使用することができる。2つの波長の使用は、センサシステムにおけるベースラインの追加的なドリフトを補正する(
図5のパネルDを参照)。
【0087】
さらに、
図5のパネルDにも示されるように、LED光強度の変動を軽減するために、いくつかの実施形態では、単一のLEDを使用して、センシング領域及び基準領域を照明する。センシングプローブの吸光度読み取り値は、以下のように計算することができる:吸光度=-log(センシング領域読み取り値/基準領域読み取り値)。
【0088】
図6は、特異性分析(パネルA)、アンモニア(NH
3)検出精度(パネルB)、可逆性及び反応時間(パネルC)並びにセンサ寿命(パネルD)を示す。
【0089】
図6のパネルAに示すように、センサはアンモニア(NH
3)に特異的であり、他の材料に反応しないように構成することができる。
【0090】
さらに、
図6のパネルBに示すように、抽出膜とアンモニア(NH
3)センサとのアセンブリは、酵素参照方法又はイオン選択性電極のような市販の方法と比較した場合、アンモニア(NH
3)の検出に対して、10億分の1(ppb)から数百万分の1(ppm)のアンモニア(NH
3)検出までの範囲の高感度、及び高水準の精度を示すことができる。例えば、
図6のパネルBに示されるように、相関係数(r2)=0.998であり、2%誤差(95%信頼区間)で88%の精度である。
【0091】
図6のパネルCは、センサの可逆性及び時間応答を示す。高百万分率及び低百万分率のアンモニア(NH
3)への周期的曝露に対するセンシング領域電位反応を経時的に示す。
【0092】
図6のパネルDは、アンモニア(NH
3)レベルに24時間曝露した後のセンサ感度(吸光度対濃度)を示す。図示するように、センサは、前処理後の再利用可能性を実証する。前処理には、分析装置を45℃で2週間置くことが含まれる。これにより、支持基板への構成要素の強固な固定化、並びに厳しい出荷及び動作使用条件を可能にできる。この試験に関連して、アンモニア(NH
3)抽出を、有機水酸化物で硬化させた、pH=10のポリスチレン/PTFEの高濃度グリシン緩衝膜上で行った。
【0093】
いくつかの実施形態では、
図7に示すように、分析装置は、温度センサ120をさらに有することができる。図示の分析装置は、汗中の総アンモニア(アンモニア(NH
3)及びアンモニウム(NH
4
+))を測定するために皮膚と接するように構成されている。いくつかの実施形態では、温度センサ120は、アセンブリセンサの現場(in-situ)温度を決定し、温度変化によるアンモニア(NH
3)レベルの読み取り値の補正を提供するために、アセンブリセンサ面の隣に実装されていてもよい。さらに、
図7及び
図1のパネルDに示される分析装置の実施形態は、皮膚ヘッドスペース区画の気密封止を提供する接着剤層を有していてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、分析装置は、流体pH、流体密度、流体比重、流体浸透圧、流体温度、酸素(O2)分圧、二酸化炭素(CO2)分圧、窒素(Na+)分圧、ナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、塩化物(Cl-)、重炭酸塩(HCO3
-)、カルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)、リン酸イオン(H2PO4
-、HPO4
2-、PO4
3-を含む)、クレアチニン、尿素、尿酸、シスタチンC、アミノ酸、尿細管刷子縁酵素、アルブミン、タム-ホルスフォールタンパク質、インスリン、コルチゾール、コルチゾン、クレアチニン、乳酸塩、環状アデノシン一リン酸、好中球ゼラチネーゼ結合性リポカリン(NGAL)、腎障害分子-1(KIM-1)、インスリン様成長因子結合タンパク質7(IGFBP7)、及びメタロプロテイナーゼ2(TIMP2)の組織阻害剤のうち少なくとも1つの1つ以上のセンサを有していてもよい。分析装置は、流体の総容積及び/又は流体産生速度を決定するように構成された流量センサを有していてもよい。いくつかの実施形態では、流体産生の速度は、単位時間当たりの尿量の単位で表されてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、分析装置100はまた、センサからの生データを処理し、センサ内の任意のメモリ効果について較正するように構成された1つ以上の信号処理アルゴリズムを有していてもよい。いくつかの実施形態では、信号処理アルゴリズムは、供給溶液の濃度が急速に変化したときに、センサ内の任意のメモリ効果を考慮することができる。
【0096】
生体試料における総アンモニア(アンモニア(NH3)とアンモニウム(NH4
+))の測定は、従来、技術的課題を提示してきた。尿中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))及び/又はアンモニウム(NH4
+)濃度は一般に測定されておらず、医師は、尿試料中の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))及び/又はアンモニウム(NH4
+)の濃度を推定するために欠陥のある間接的指標(すなわち、「尿中アニオンギャップ」)を計算し、利用するように訓練されている。しかし、血中、尿中、及び他の体液(例えば、呼吸、汗)中の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))レベルを決定するためのより信頼性の高い手法は、特定の治療シナリオにおいて非常に有益である。例えば、血中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))は、尿素周期障害、有機酸尿症、脂肪酸酸化の欠陥によるカルニチン欠乏症、二塩基性アミノ酸尿症、ピルビン酸代謝の欠陥、及び肝臓病(例えば、肝硬変)を有する患者の治療決定を知らせるために使用される重大なマーカである(尿よりもサンプリングが不便であるが)。尿中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))レベルは、UCD患者における総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の血中レベルと共に変化することが知られており、したがって、尿中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))レベルの連続測定は、非常に頻繁な採血を必要とせずに、UCD患者の治療を個別化するのに大いに役立つ。腎臓総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))生成(すなわち、腎臓アンモニア産生)の動的変化は、酸塩基平衡、カリウム平衡、及び他の全身状態によって刺激される。したがって、酸塩基又はカリウム障害を起こしやすい患者(すなわち、重篤な病気の入院患者)における尿中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))レベルの瞬間的な理解は、即座の臨床知識を増大させ、急速に変化する(及びそうでなければ、認識不足又は認識されていない)全身状態の早期警報信号として機能するように活用することができる。総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))恒常性に対する腎臓及び肝臓の適応の複雑な相互作用を考えると、これらの器官のいずれかの障害は、体液の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))レベルの急速な変化を生じ得る。例えば、急性肝機能障害又は代償不全は、血漿中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))レベルの上昇に関連し、急性腎機能障害は、尿中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の急速な低下に関連する。外来患者では、生体試料(呼気、汗、血液、及び尿を含む)の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))レベルの連続モニタリングは、総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))のベースラインレベルを提供することができ、これからの逸脱は、進行した肝臓病を有する患者における未解決の肝代償不全の強力な予測シグナル又は未解決の腎機能不全の予測シグナルである。入院患者では、急性腎障害の危険性の高い尿道留置カテーテルを有する患者が腎組織障害又は急性腎障害の最初の徴候として、尿中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))濃度又は排泄速度の急速な変化についてモニタすることができた。この技術を利用することで、急性腎不全の迅速な特定につながる(数分から数時間、又は数日を、血清クレアチニンを含む従来のマーカであるラギングと比較する)。これらのシナリオのいずれにおいても、根底にある臓器の不全又は機能不全を改善するための特定の治療は、現代の医療現場で現在行われているよりもはるかに迅速かつ個別化された方法で採用することができる。したがって、総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))を検出するための本明細書に記載されたシステム及び方法は、診療現場での使用に適合させることができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステム及び方法は、急性腎障害(AKI)イベントを経験する入院患者の健康転帰を改善し、関連する医療費を低減することができる。尿道留置カテーテルを有する入院患者では、本明細書に記載されるシステム及び方法がAKIを連続的にモニタし、疑わしいAKIイベントが始まった場合、及び始まったときに、医療チームメンバーに自動的に信号を送ることができる。以前の研究では、AKIイベントがより迅速に認識されると、患者の転帰は改善されることが示されている。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステム及び方法は、臨床研究者がヒトにおけるAKIの新規治療薬を試験するのを助けることができる。AKIを迅速に診断する能力の欠如(動物モデルにおける制御された実験室環境外)は、ヒト被験者におけるAKI治療研究における全てではないにしても、ほとんどの過去の試みを大きく妨げ、臨床環境におけるAKIケアをひどく阻害し続けている。これは、少なくとも部分的には、ヒトの試験対象集団において試験されている新規治療が理想的な治療域外でほぼ普遍的に与えられているためであり、AKIイベントが始まったことが知られてから数日後に投与されたと報告されている研究においても、いくつかの報告がある。興味深いことに、多くの新規な治療薬は、AKIのタイミングが正確に知られており、AKIイベントが生じた後(すなわち90分以内)に薬物が迅速に投与された動物実験において、非常に有望であることを示している。臨床の場では、AKIのタイミングは不明である。なぜなら、1)症状及び徴候はほぼ常に存在しない、2)マーカが大幅に遅れて存在する(すなわち、数時間又は数日)、3)急性腎不全及び/又は初期AKIの最も早い瞬間を同定するための検出システムは開発されていないからである。適切な試験により、AKIの動物モデルにおいて大きな有望性を示した新規な治療薬の1つが、本明細書に記載されるシステム及び方法などを用いて、ヒトAKIを迅速に検出することができる、容易に想定される将来の臨床診療における場所を見出すことが可能である。
【0099】
体液の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の検出のための本明細書に記載されるシステム及び方法はまた、腎アンモニア産生及び/又は腎臓の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の排泄が急速に変化する生理学的研究に関連して使用することができる。さらに、本明細書に記載されるシステム及び方法は、現行の診断ツールが限定されており、尿中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))変化が疾病の発症又は活性と相関し得る医学的状態の検出のために使用することができる。これらの状態には、1)腎機能の変化、2)急性腎障害又は不全、3)慢性腎臓病、4)肝機能の変化、5)急性肝障害又は不全、6)慢性肝臓病(例えば、肝硬変)、7)急性消化管出血、8)慢性消化管出血、9)アンモニア(NH3)及び/又はアンモニウム(NH4
+)の生理機能の発生、取り扱い、及び/又は排泄に関与する又は影響を及ぼす遺伝的又は遺伝的代謝性疾患(例えば、尿素回路障害、有機酸尿症、脂肪酸酸化の欠陥によるカルニチン欠乏、二塩基性アミノ酸尿症及びピルビン酸代謝の欠陥)、10)正常な代謝プロセスの変化(例えば、タンパク質食後のアンモニア(NH3)及び/又はアンモニウム(NH4
+)の生成及び排泄の増加)、11)代謝過程又は病態による急性又は慢性の全身性の酸/塩基の変化又は不均衡、12)呼吸過程又は疾患状態による急性又は慢性の全身性の酸/塩基の変化又は不均衡が含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるシステム及び方法は、抽出膜及び比色センサの特定の構成を有する「プラグアンドプレイ」、可逆的、連続使用、及び高速応答アセンブリセンサカートリッジを有していてもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるシステム及び方法はまた、2つの波長の特定の光電子システム設計に基づく信号処理アルゴリズム、及びドリフト(内蔵センシング領域及び基準領域、並びに温度センサ)を除去するための内蔵機構を有していてもよい。
【0102】
さらに、本明細書に記載のシステム及び方法は、地下水排出、再生水、工業廃水、衛生廃水、並びに油井及びガス井からの生成水などの廃水中の総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4
+))の測定などの工業用途に適用することができる。
【実施例】
【0103】
以下の実施例は、本開示の例示的な実施形態を例示するために与えられる。しかし、本開示は、これらの実施例に記載された特定の条件又は詳細に限定されるべきではないことを理解されたい。
【0104】
実施例1:分析装置のフィールド性能
本明細書に記載のシステム及び方法に従って構築された分析装置の応答を、イオン選択性電極法と比較して、実際のヒト尿試料を用いて試験した。尿試料を、1回の食事(シェイク)で1gのタンパク質/Kg体重を摂取した被験者から評価した。食事後、試料を数時間、1時間ごとに分析した。イオン選択法は、各試料の分析前に2点較正を必要とした。分析装置については、完全な実験の分析のために単一のアセンブリセンサを用いた。
図8に示されるように、参照方法及び分析装置のアセンブリセンサの両方は、1に近い相関関係の結果を与えた。本実施例は、単一のセンサを使用する分析装置がヒトの尿の実際の試料を使用する参照方法と同様に実行することができ、本実施例は1日に数回再使用することでセンサの成功した性能を再保証したことを示す。
【0105】
実施例2:センサの調製
1つの例では、本明細書に記載されるシステム及び方法に従ったアンモニア(NH3)センサを、シグマアルドリッチのブロモフェノールブルー(BpB)に基づいて構築した。センサは、センサ基板をBpB溶液に浸漬することによって合成した。次いで、溶液中のセンサ基板を、サイエンティフィックインダストリーズ ボルテックスジェニー2を用いて10分間ボルテックスし、室温で5分間乾燥させた。検出感度に及ぼす基板の影響を試験するために、センサを、オムニポア(商標)のポリフッ化ビニリデン(PVDF)[孔径:0.1μm及び多孔度:80%]、Sterlitechのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)/ポリエチレン(PE)[孔径:0.2又は0.45μm]、Interstate Specialty Productsの疎水性PTFE[孔径:10μm]、オムニポア(商標)の親水性PTFE[孔径:0.1及び多孔度:70%]、及びWhatman no.1濾紙[孔径:11μm]を含む、5つの異なったセンサ基板上に構築した。センサ基板を矩形形状(2.7cm×1.2cm)に切断し、それらが分析装置のセンシングチャンバに適合するように積層し、任意に比色光電子力学分析装置(CODA)と名付けた。構築したセンサの一部を黒色マイラー(商標)バッグに封入し、45℃のオーブンに2日間入れて、それらの性能安定性を試験した。
【0106】
実施例3:分析装置の調製
分析装置、すなわち、比色光電子力学分析装置(CODA)を、本明細書に記載されるシステム及び方法に従って構築した。分析装置は、センシングチャンバを通過する水平流路を有し、この流路はセンサの上部に赤色LEDを有し、センサの下に4つのフォトダイオード(センシング/基準ペア及びセンシング/基準バックアップペア)を有する。ターゲットガスはセンシングチャンバに導入され、そこでセンサに曝露され、センサは、ターゲットガス中のアンモニア(NH3)の濃度に比例した変色を示した。フォトダイオード(Vishay Semiconductor Opto Division製)は、フォトダイオード(PD)信号感度を得るために、5MΩレジスタと共に、Bluetoothユニットが一体化したPCB上に実装され、Android電話への信号送信を可能にした。アプリケーションは、0~3Vの範囲内でPDによって読み取られる信号を表示するためのユーザインタフェースを提供するように作成された。センサは、基準領域とセンシング領域を有していた。センサがチャンバ内にあるときの基準領域とセンシング領域からのバックグラウンド応答は、約1.2Vであると測定された。一対のPDは、0.2秒ごとに、基準領域とセンシング領域の応答を同時に連続的に読み取った。
【0107】
図9は、実施例3の結果、特にアンモニア(NH
3)への曝露前後のセンサ信号の変化を示す。センサの再現性は、(a)2ppmのアンモニア(NH
3)を検出するための4つの異なるPVDFセンサ、及び(b)分析装置を用いて40ppmのアンモニア(NH
3)を検出するための4つの異なるPTFEセンサを用いて決定した。4つの異なる基板は、同様の信号応答を示す。PTFE応答信号は、PVDF基板と比較してより高いノイズを有する。
【0108】
吸光度は、以下の数式1に示すように、センシング領域(S
sens.)からの信号応答を基準領域(S
ref.)からの信号応答で割った負の対数をとることによって、ベールの法則に基づいて計算した。
【数1】
【0109】
PTFE及びPVDFセンサをレーザカッター(ユニバーサルレーザシステム)を用いて矩形に切断し、次いでFellowes Jupiter 125 Laminatorで積層した。アンモニア(NH3)の2~1000ppmの濃度域について、試料の既知濃度に対する測定された吸光度変化をプロットすることにより、PTFEの検量線を作成した。
【0110】
センサのセンシング領域と基準領域からのPD読み取り値の間に干渉がないことを保証するために、クロストーク試験を行った。この試験では、光を遮断するために、基準領域又はセンシング領域のいずれかを、厚い黒色インクで個別にマスクした。測定は30秒間行って、ブロックされた領域に対して応答がゼロであり、ブロックされていないセンサ領域に対して影響を受けていないかどうかを確認した。クロストーク試験結果を表1及び表2に示す。
【表1】
【表2】
【0111】
両方のマスクされた基板について、クロストーク試験は、小さな信号変化(センシング領域については<0.1%、基準領域については<15%)を示し、これは、センシング条件下では有意に重要ではなく、PD間により厚いバリアを作製するか、又はセンサから検出器までの距離を減少させることによってさらに改善することができた。
【0112】
実施例4:光電子機器
アンモニア(NH
3)への曝露前後の種々のセンサ材料の感度試験及びスペクトル測定を行うために、オーシャンオプティクス製のJAZ分光光度計(JS)を使用した。
図10は、JS測定装置の概略図を示す。光ファイバがチャンバの上部にあり、一方、タングステン光源がチャンバの下部にある。ガスは左側のチューブから進み、右側のチューブから周囲環境に放出される。種々の材料で合成したセンサの、10ppmのアンモニア(NH
3)に180秒間曝露した後の応答を、JSによって測定したところ、PVDFは、他の材料と比較して優れた吸光度応答を示した。
【0113】
JSセンシングチャンバに適合するように濾紙を丸い形状に切断した。アンモニア(NH
3)抽出膜と一体化したアンモニア(NH
3)センサをスペクトル測定に用いた。測定される液体流体から気体へのセンサ及び試料搬送の概略図が
図11に示されている。抽出膜/センサアセンブリは、5つの部品、すなわち、1)液体流体が均質に分散されるようにする分配層(例えば、濾紙)、2)試料からアンモニア(NH
3)を抽出するアルカリ化膜層(例えば、2M NaOH溶液40uLを含浸させたPE膜)、3)液体流体が指示薬層に到達することを防止するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、4)抽出されたアンモニア(NH
3)と反応する指示薬層(ブロモチモールブルーを含浸させた濾紙)、及び5)センシングプローブを保護するテープ製のマスクから構成された。合成尿給送(アンモニウム(NH
4
+)及び尿をシミュレートする他のイオン:NaCl、KH
2PO
4、CaCl
2、MgSO
4を含む溶液)を、統合アンモニア(NH
3)センサ膜の頂部から注入した。JSは、試料中のアンモニア(NH
3)レベルを定量した。アンモニア(NH
3)センシングメカニズムについては、以下でさらに説明する。
【0114】
分配器は、試料の供給物を均一に分散させる。アルカリ層は、流体のアンモニウム(NH4
+)をその共役塩基であるアンモニア(NH3)に変換する。PTFE膜は、膜の疎水性に基づいてアンモニア(NH3)ガスを選択的に濾過する。アンモニア(NH3)センサは、どれだけの量のアンモニア(NH3)ガスに曝露されるかに基づいて黄色から青色に変色する指示薬を有する。
【0115】
実施例5:光電子センサ信号
前に述べたように、ブロモフェノールブルー(BpB)をアンモニア(NH3)検出のための比色検出プローブとして使用した。BpB溶液は3未満のpHレベルに曝露された場合に黄色/橙色を有し、4.6を超えるpHに曝露された場合に青色を有する。アンモニウム(NH4
+)(酸)とアンモニア(NH3)(共役塩基)との間の酸/塩基平衡は、全反応OH-+NH4
+←→H2O+NH3における溶液のpHによって決定される。アンモニア(NH3)は、室温で1062kPaの蒸気圧及び9.25のpKaを有する。生物学的に関連するpH条件は、NH4
+/NH3平衡のpKa以下である。例えば、比較的高いpH8のヒト尿中では、総NH4
+/NH3のわずか6.6%がNH3(気体)として存在する。体液pH(例えば、尿)の動的性質及び尿NH4
+対尿NH3の可変比率のために、アルカリ性溶液は、NH4
+(液体)のNH3(気体)への100%転化を確実にするために、流体試料pHを~10よりも高く上昇させるために必要とされる。アンモニア(NH3)はセンシング面をよりアルカリ性にし、pH値をより高くシフトさせ、黄色から青色への変化を引き起こす。分析装置(CODA)を用いて変色を定量することにより、試料から得られた対応するアンモニア(NH3)濃度を決定することができる。
【0116】
実施例6:気体試料調製-アンモニアバッグ
本研究で使用したアンモニア(NH3)ガス試料を、Calibration Technologies、Inc.から購入した100ppm及び1000ppmの較正アンモニア(NH3)ガスで希釈した。実験室用圧縮空気中のガス試料の希釈物を、100ppm及び1000ppmのアンモニア(NH3)較正ガスから調製した。これらの較正ガスは、TOPSFLO(流量:1.6LPM)のマイクロダイアフラムガスポンプを用いて、所定の時間、40Lバッグ内に導入された。バッグ中のアンモニア(NH3)の濃度が所望の水準に達するまで、制御された期間、追加の清浄空気もバッグ中に導入された。目標アンモニア(NH3)ガス濃度は、アンモニア(NH3)ガス注入と空気注入の比率(0.02~0.8)を操作することによって調製した。別のアンモニア(NH3)バッグを、1Lのテドラー(商標)バッグ中に5μLの水酸化アンモニウム(NH4OH)を注入することによって調製し、周囲室温で30分間放置して、センサの検量線を確認した。
【0117】
実施例7:ガス試料調製-尿ヘッドスペースバッグ
0.3mLの10M NaOHを2.7mLの尿試料に添加することによって、尿の試験試料を前処理して、試料のpHが12を超えるようにした。次いで、前処理した尿試料を4Lのテドラー(商標)バッグに加え、バッグが満杯になるまで乾燥空気でパージした。テドラーバッグを室温で30分間放置し、尿中のすべてのアンモニウム(NH4
+)が塩基と反応し、尿ヘッドスペース中でその共役相アンモニア(NH3)になったことを確認した。本研究のこの部分の被験者は、アリゾナ州立大学の治験審査委員会の承認を受けた(IRBプロトコール#1012005855)。被験者は自発的に参加し、本治験への参加について文書による同意を得た。本研究のすべての試験は、2016年2月~2017年7月に実施した。被験者は「ON High protein Gainerタンパク質シェイク」を体重1kg当たり1gのタンパク質で飲み、飲んだ後定期的に排尿した。尿試料を収集し、後の分析のために直ちに-80℃の冷凍庫に保存した。
【0118】
実施例8:センサの検出手順
アンモニア(NH3)センサの感度、可逆性、及び再使用性を、マイクロダイアフラムガスポンプ(流量:1.6LPM)、三方弁、1つの40Lエアバッグ、1つの40L試料バッグ、及びセンシングチャンバを有するアンモニア(NH3)フローシステムを使用して試験した。試験は、毎回、センシングチャンバ内にセンサを1個配置して行った。三方弁はまず、数秒間、エアバッグと接続するように切り替えられ、それにより、センサは数秒間、試料に曝露される前に、空気中でパージされる。異なる試料曝露時間に対するセンサの感度を研究するために、サンプリング時間は、1、5、20、及び180秒を含むように変化させた。アンモニア(NH3)に曝露した後、センサの可逆性を試験するために、弁を切り替えて、乾燥空気をシステムに数秒間通過させた。
【0119】
実施例9:結果及び考察-比色光電子力学分析器(CODA)波長の選択
比色光学ダイナミックス分析器(CODA)と呼ぶことができる分析装置のための光源の色は、センシングプローブ(BpB)上に誘起されたスペクトル変化アンモニア(NH
3)曝露に基づいて選択された。BpBを含浸させた濾紙で形成された円形センサをJS装置のセンシングチャンバ内に配置し、それぞれのセンサのスペクトルをアンモニア(NH
3)への曝露の前後で記録した。
図4は、BpBベースのセンサの可視分光光度変化を示し、575~625nmの範囲の吸光度の有意な増加が明確に観察される。これらの結果に基づいて、LED色は、赤色、波長:610nmであるように選択された。検出波長及びセンサ基板の第1のスクリーニングが選択されると、分析装置、CODAが構築され、残りの研究を進めるために使用された。
【0120】
実施例10:結果及び考察-センシングプローブ感度
表3は、BpBを埋め込んだ種々のセンシング基板の特性を示し、
図10は、10ppmのアンモニア(NH
3)ガスに180秒間曝露した後の、JS装置で試験したセンシング基板の感度をまとめたものである。アンモニア(NH
3)に対するセンサの感度は、基板の性質に強く依存する。
図10のグラフは、PVDF基板が、試験した他の全ての基板よりも約10倍大きい最大の測定感度を有することを示す。尿中の通常の総アンモニア(アンモニア(NH
3)及びアンモニウム(NH
4
+))濃度は、典型的には6mmol/Lよりも高く、これは(アンモニウム(NH
4
+)からアンモニア(NH
3)への完全な転化及びアンモニア(NH
3)ガス抽出に従って)、理想気体の状態方程式に基づき、温度25℃で100ppmよりも高い尿ヘッドスペース中のアンモニア(NH
3)ガス濃度を生じる。一回の使用でセンサが急速に飽和するので、PVDFの高感度は、センサを複数回使用することを妨げる。したがって、尿中アンモニア(NH
3)モニタのためのPVDFと比較して、別の基板である疎水性PTFEの感度、特異性、及び可逆性の特徴を調査した。
【表3】
【0121】
実施例11:結果及び考察-センサ応答の再現性
図12は、CODAで使用されるようなPTFE及びPVDF支持体材料に基づくセンサの吸光度応答を比較する。各材料を用いて4つの反復センサを作製し、CODA中に配置した。次に、センサをアンモニア(NH
3)に180秒間曝露し、続いてさらに60秒間乾燥空気に曝露して回収率を測定した。センサは、アンモニア(NH
3)を噴射すると吸光度が上昇し、乾燥空気でパージすると吸光度が低下するという同様の応答特性を示す。PTFE基板の吸光度ノイズは、PVDF基板と比較して高かった。
【0122】
表4は、センサ応答及び曝露期間中の吸光度変化に対する回復期間中の吸光度変化の比である、パージ後のセンサ回復のパーセンテージをまとめたものである。センサ応答は、PVDFについて0.02の標準偏差を有する0.64a.u.と、PTFEについて0.03a.u.の標準偏差を有する0.58a.u.とを含み、センサ基板全体の応答分散は5%以下であった。PVDFがPTFEと同様の再現性を有していたとしても、比較のために必要とされるアンモニア(NH
3)濃度が小さいほど(20倍低い濃度のアンモニア(NH
3))、PTFEと同様の回収率を生じたことに留意することが大切である。現実的な尿由来アンモニア(NH
3)濃度範囲内の濃度範囲でPTFEを使用するセンサ反応の回収特性は、PTFEをこのセンサ基板の分析性能のさらなる研究のためのより魅力的な候補にした。その結果、残りの研究では、PTFEセンサが調査された。
【表4】
【0123】
実施例12:結果及び考察-アンモニア(NH
3
)に対するセンサキャリブレーション
図13に示すように、2ppm~1000ppmの範囲のアンモニア(NH
3)ガスレベルで5秒間のサンプリング時間を用いて、CODAを用いたPTFEセンサについて2つの検量線を作成した。第1の上の検量線では、ラングミュアモデルが適用され、0.99より大きいR
2値を示した。5秒間のサンプリング時間について、較正方程式は以下の通りであり、A
Lはラングミュアモデルから導出される吸光度を表し、Cは対応する濃度を表す。
【数2】
【0124】
もう一方の下の検量線では、検量線を、線形回帰を当てはめるための2つの範囲、すなわち2~150ppm及び150~1000ppmに分割した。両測定域とも0.98より大きいR
2値を示した。較正方程式は以下の通りであり、A
1は0~150ppmの線形モデルから導出される吸光度を表し、A
2は150~1000ppmの線形モデルから導出される吸光度を表し、Cは対応する濃度を表す。
【数3】
【数4】
【0125】
別の組のフィッティングにおいて、1秒間のアンモニア(NH
3)曝露で評価された吸光度変化の線形回帰も得られ、5秒間のアンモニア(NH
3)曝露で得られたものと比較した。これらの回帰分析を用いて、水酸化アンモニウム(NH
4OH)とバッグの中の空気との混合物から得られる未知の試料濃度を試験した。表5は、1秒間及び5秒間の試料曝露を用いて、センサによって未知の濃度試料について評価された結果、及び対応する検量線を示す。両方の検量線(1秒間及び5秒間の曝露データから得られる)は、未知の濃度の調製されたアンモニア(NH
3)バッグの同じ濃度をもたらし、較正の自己一貫性を示した。さらに、これらの結果は、両方のフォトダイオードの対が同じ応答を生じたので、システム内のフォトダイオードの各対(PD1として示されるPD1(センシング)/PD3(基準)、及びPD2として示されるPD2(センシング)/PD4(基準))の間の一貫性を示す。
【表5】
【0126】
実施例13:結果及び考察-アンモニア(NH
3
)に対するセンサ選択性
センサがアンモニア(NH
3)に対してのみ選択的であることを確認するために、センサを、尿ヘッドスペースに存在すると報告されているいくつかの干渉物質(例えば、アセトン、2-ブタノン、及び塩化メチレン)に曝露した。
図14は、アンモニア(NH
3)に対するセンサの選択性を示す。比較的高濃度の干渉物質(例えば、100ppmアセトン)を用いても、センサは、アンモニア(NH
3)に対して有意な反応を示しただけであった。この試験は、尿ヘッドスペース試料の過酷な環境におけるセンサの選択性を確認した。
【0127】
実施例14:結果及び考察-センサの可逆性及び再使用性
健康な成人は2~3時間毎に排尿することがある(1日8~9回)。臨床医学のために尿中のアンモニウム(NH4+)を定量するための現在の方法は、患者に排泄された全ての尿を24時間収集することを要求することを含む。尿中アンモニア(NH3)又は尿中総アンモニア(アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4+))の瞬時の測定のために臨床的に使用される方法はない。
図15の上のパネルは、100ppmのアンモニア(NH3)及び乾燥空気への1.2時間にわたる繰り返しの交互曝露に対するPTFEベースのセンサの吸光度応答を示す。センサを、アンモニア(NH3)に5秒間曝露し、続いて乾燥空気に120秒間曝露する繰り返しサイクルを連続的に行った。このセンサは、性能の劣化なしに60回以上の検出サイクルのために再使用された。実際の臨床応用では24時間のモニタリングをカバーするために、24分毎に1回につき5秒間アンモニア測定を行うことができるが、はるかに頻繁な試験も可能である。
【0128】
図15の下のパネルは、信号分析後の連続試験から導出される測定濃度、及び較正方程式の使用を示す。センサは、5~7回の曝露の調整期間を必要としたことに留意することが重要である。この調整時間の後、濃度アウトプットは、アンモニア(NH
3)への複数回の曝露及び同じ濃度の検出イベントを通して、かなり一定のままであった。検出濃度誤差は20%未満であり、CODAのより良好なエンクロージャでさらに改善することができ、これにより、周囲光干渉を減少させる。
【0129】
実施例15:結果及び考察-センサ安定性
PTFEセンサの安定性を試験するために、センサの組を新たに調製し、合成直後にアンモニア(NH
3)試験に使用した。同一セットのセンサを調製し、黒色マイラー(商標)バッグ中に密封し、対流オーブン中で、45℃で2週間エージングした。エージングプロトコル(ASTM F1980)によれば、45℃での2週間のエージングは、室温(25℃)での2ヶ月のエージングに相当する。2、10、15及び20ppmの濃度のアンモニア(NH
3)に両方の組のセンサを曝露した。
図16は、未使用(fresh)のセンサとエージングしたセンサとの感度比較を示す図である。
図16は、全てのデータ及び平均化されたデータの線形回帰を示す。0.001a.u./ppmの勾配及び0.99を超えるR
2が、平均データについて得られた。
図16はまた、異なる合成バッチから得られる未使用のセンサ及びエージングしたセンサの別のセットを示す。未使用のセンサ及びエージングしたセンサについての各バッチの膜からのこれらの応答間のt検定では、0.87に等しいp値が得られ、これは、有意差を示さなかった。これらの試験は、センサの適用及び貯蔵に関連する、長期間の熱曝露時のPTFE基板上のセンシングプローブ(BpB)の安定性を確認した。市販製品の場合、センサ感度は、現実の出荷又は保管条件下で起こり得る熱曝露期間後に保証される必要がある。
【0130】
実施例16:結果及び考察-尿試料へのセンサ使用
CODAの実現可能性及び実際の条件でのセンサの使用を確認するために、尿試料分析を行い、センサの較正済みバッチからの測定値を記録した。アンモニア(NH
3)検出のための参照方法として、イオン選択性電極(ISE)[サーモフィッシャーサイエンティフィックのアンモニア高性能イオン選択性電極(no.9512HPBNWP)]を使用した。被験者にはまず排尿を依頼し、次にタンパク質シェイクを飲ませた。0、0.5、2.5及び3.5時間の時間にシェイクを飲む前後に、被験者の尿試料を採取した。これらの試料は、測定前に-80℃で保存した。次に、試料をISE電極で測定した後、CODAで測定した。
図17の上のパネルは、1つの被験者からの測定の一例を示す。同様の結果は、SIFT-MSを用いた文献でも見ることができる。
図17の下のパネルは、CODA法及びISE法から評価された結果の相関プロットを示す。CODAとISE電極による測定間で、100%に近い精度で良い一致が見られた。
【0131】
実施例17:結果及び考察-おむつ若しくは接着パッチ又はカード中のインサートとしての尿試料へのセンサの使用
図18に示されるように、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるセンサは、おむつ又は着用可能な布のためのインサートの形状で使用されてもよい。抽出膜を有するセンサの使用は、おむつ又は着用可能な布若しくはデバイス(例えば、ブレスレット)のためのインサート、又は皮膚のための接着パッチ、又はインビトロ試験のためのカード(例えば、バッジ)の形状で実施することができる。これらの条件下で、体液中の総アンモニア(アンモニア(NH
3)及びアンモニウム(NH
4
+))及び/又はアンモニウム(NH
4
+)がアンモニア(NH
3)として検出されることによるセンサ反応(すなわち、変色)の定量は、RGBデコンボリューションソフトウェアなど、わずかな変色を検出することができる任意の方法で実施することができる。
【0132】
実施例18:結果及び考察-連続試料へのセンサの使用
図19は、CODA装置の一例の構成要素を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されたセンサは、生体試料からの連続的なアンモニアモニタリングのために使用することができ、試料からの液体及びセンサ内の抽出プロセスからのガスを管理することができる装置に挿入され、並びにスクラバーからのような空気の清浄な供給源でセンサ表面(センシングプローブ)を再生することができる。
【0133】
実施例19:結果及び考察-センサの抽出膜及び試料の定量のための連続使用。
図20a~20oに示すように、センサからの抽出膜のモデルを構築して、幾何学的形状、化学的/物理的設計、及び寿命を最適化することができる。この線に沿って、アルカリ性物質を介してNH
4+をNH
3に化学的に変換する、又はNH
4+をNH
3に変換するためにアルカリ性物質を電気化学的に生成する、又は電気化学的に直接NH
4+をNH
3に変換する抽出膜を有するモデルを利用することができる。このモデルに基づいて、NH
4
+の濃度が尿試料中で典型的にみられる濃度である3.6~100.0mMの範囲では、入ってくるNH
4
+の濃度は、アルカリ性物質源(例えば、固定水酸化物(OH
-)部位)の濃度プロファイルに影響しないと結論付けられる。換言すれば、化学抽出膜中のアルカリ性物質の濃度は、主として、入口速度によって影響され、この入口速度は限界状態の変化(例えば、入口速度u
0)としてモデル化されたパラメータである。また、このモデルは、化学的アルカリ性物質(OH
-)が枯渇するまでに化学抽出膜を連続して使用できる回数を知ることができる。
図19に示されるCODA装置などの実施形態は、センサが各使用後に枯渇するアルカリ性物質の供給源を有すると仮定してモデル化することができる。
図20a~20oはまた、抽出膜中の異なる変数がどのように試験できるかを示す。これらの変数には、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学的形状が含まれる。全ての変数を分析することができ、これより抽出膜のアルカリ性物質濃度プロファイルにどのように影響するかを決定することができる。
【0134】
例として、
図21a及び21bは、第1サイクル(
図21aに示す)後及び第20サイクル(
図21bに示す)後の化学抽出膜中のアルカリ性物質の断面濃度プロファイルのモデル結果を示す。
【0135】
さらに、抽出膜の他の設計態様が重要である。その1つは、潜在的なアンモニア漏れの排除である。実践及びシミュレーションに基づいて、複数であるが狭い液体経路、及び液体/空気界面へのより狭い曝露面積は、膜からのアンモニアガス漏出を最小限にする。さらに、アミン基をキレート化するための潜在的な薬剤を用いた抽出膜のさらなる変性(modification)は、アンモニアを試料中に元々存在しないようにし、したがって、生理学的に関連しないようにし得る第一級アミン基分子の非酵素的分解からの干渉を排除する。この変性は、最新の試験条件(
図23)の下で問題であることが知られているアンモニアの過大評価(
図22a)の問題を排除する。実際に、上記の全ての要因の組み合わせは、
図22a及び22bに示されるように、高い特異性を有する抽出膜を与える。
【0136】
図20a~20oは、異なる変数、すなわち、多孔度、境界条件、試料中の初期NH
4
+濃度、及び幾何学的形状が、抽出膜中のアルカリ性物質の濃度プロファイルにどのように影響を及ぼすかの例を示す。NH
4
+の濃度、入口速度及び多孔度は、それぞれ37.8mM、0.05ms
-1及び0.34の値に設定した。ここに示す結果は、(
図20a)1回目、(
図20b)10回目、及び(
図20c)20回目の測定の濃度プロファイルである。NH
4
+濃度と入口速度は、それぞれ37.8mMと0.05ms
-1に設定した。ここに示される結果は、(
図20d)0.34、(
図20e)0.66、及び(
図20f)0.90の多孔度での20回目の測定である。NH
4
+の濃度及び多孔度は、37.8mM及び0.34に設定される。ここに示される結果は、(
図20g)0.0035ms
-1(
図20h)0.05ms
-1、及び(
図20i)0.5ms
-1の入口速度での20回目の測定である。試料の入口速度及び多孔度は、それぞれ0.05ms
-1及び0.34の値に設定した。ここに示す結果は、(
図20j)37.8mM、(
図20k)100.0mM、及び(
図20l)3780.0mMのNH
4
+濃度での20回目の測定である。NH
4
+の濃度及び多孔度は、それぞれ37.8mM及び0.34の値に設定した。この結果は、水酸化物(OH
-)が、(
図20m)長さ3cm及び直径2.5cm、(
図20n)長さ1.5cm及び直径2.5cm、並びに(
図20o)長さ1.5cm及び直径2.0cmの構成でどのように枯渇するかの濃度プロファイルを示す。
【0137】
図22a及び22bは、複雑な体液に対する抽出膜及びセンサ全体の分析性能を示す。
図22aにおいて、流体を銅イオンキレート材料で処理した。これらの銅イオンは、アミノ酸のアミン基及び他の分子中の第一級アミン残基とキレート化(結合)し、したがって、酵素的及び非酵素的分解(これらの分子の分解は、アンモニアレベルの誤った増加を生じる)から防いだ。
図22b)は、170uMアンモニア(アンモニウムとして)を用いた全血に対するセンサ中の抽出膜の全体的な選択性を示す。
図22b)は、抽出膜及びセンサが、既知の最大濃度の他の血液成分:5,000mg/dLアルブミン、3mg/dLアスコルビン酸、5mg/dLクレアチニン、2656mg/dLグルコース、370mg/dL(5mM)カリウムイオン、228mg/dL(3.9mM)ナトリウムイオン、1,000mg/dLリン酸塩、107mg/dL尿素、及び6.8mg/dL尿酸に対して、無視できる応答を有することを示す。
【0138】
図23は、身体から採取した血漿、血漿スパイク1(グルタミンでスパイクした)、血漿スパイク2(アミノ酸グルタミン、L-アルギニン、L-アスパラギン及びクレアチニン、尿素-アンモニア代謝産物を添加した)に対する酵素的参照方法(ロシュ・コバス(登録商標))の反応を示す。スパイキング剤の濃度は10~100μMレベルの範囲であり、生理学的に予想されるレベルをシミュレートする。これは、酵素的方法がアミノ酸の自発的な非酵素的脱アミノ化によって混乱し、その結果、アンモニアの読み取り値が過度に高くなることを実証している。
【0139】
実施例20:結果及び考察-アンモニアの定量のための自由較正へのセンサ使用
インテリジェントアルゴリズムは、定量された一般的なセンサ感度に基づいて構築され、センサ較正を回避する手段として使用できる(センサ使用前の毎回、又は、使用されている装置とセンサのいずれか)。インテリジェントアルゴリズムには、検体検出前の初期信号(V)のような、異なるセンサの初期動作条件に対するセンサ感度などの物理的/化学的挙動が供給される。
図24は、アンモニアの定量のための較正不要の方策を可能にする、定量可能な一般的なセンサ感度の実証を示す。
【0140】
図24は、3.6mM~18.6mMの範囲のセンサの対応する検量線の傾きを有する、異なるセンサのセンシング領域からの測定された初期信号間の関係を示す。これら2つの変数の関係は、回帰係数がR
2=0.88の線形である。この線形関係は、アンモニアの定量のための較正不要インテリジェントアルゴリズムを構築するのに役立つ。
【0141】
実施例21:結果及び考察-アンモニアを高精度で連続定量するためのセンサ使用
図25は、37.6mM~3.6mMのNH
4
+の連続測定を示し、<15%より小さい誤差を有する実際のアンモニア濃縮と一致する。
図25に示されるように、上記の適用は、この適用におけるセンサによる測定されたアンモニア値と真のアンモニア濃度との間のわずかな差で、アンモニアの連続定量を成功させることができる。「速度」は、NH
4
+濃度を定量するために使用されるCODAについて定義されるパラメータである。
【0142】
本開示を特定の実施形態に関して論じてきたが、本開示はそのように限定されないことを理解されたい。実施形態は、例として本明細書で説明され、依然として本開示の範囲内に依然として含まれる、採用され得る多数の修正例、変形例、及び他の実施形態が存在する。