(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】多種燃料無炎燃焼器
(51)【国際特許分類】
F23K 5/06 20060101AFI20231011BHJP
F23K 5/02 20060101ALI20231011BHJP
F23C 5/08 20060101ALI20231011BHJP
F23D 11/24 20060101ALI20231011BHJP
F23C 9/08 20060101ALI20231011BHJP
F23K 5/00 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
F23K5/06
F23K5/02 A ZAB
F23C5/08
F23D11/24 D
F23C9/08 400
F23K5/00 301A
(21)【出願番号】P 2020553592
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 GB2019050952
(87)【国際公開番号】W WO2019193329
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-15
(32)【優先日】2018-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519102266
【氏名又は名称】インテリジェント・パワー・ジェネレイション・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INTELLIGENT POWER GENERATION LIMITED
【住所又は居所原語表記】4, The Gables, Vale of Health, Hampstead Greater London NW3 1AY, U.K.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ブレイシー、トリストラム
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/128963(WO,A1)
【文献】特開2000-199602(JP,A)
【文献】特表2013-538939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/06
F23K 5/02
F23C 5/08
F23D 11/24
F23C 9/08
F23K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤が入口から出口まで長手方向に流れる、長手方向に延在する燃焼室と、
少なくとも2つの燃料ラインと、
を備え、
前記少なくとも2つの燃料ラインのうちの第1の燃料ラインと流体連通している少なくとも1つの燃料噴射配管が、前記燃焼室の壁を貫通して延在し、各燃料噴射配管が、前記燃焼室内に燃料を噴射する少なくとも1つの燃料噴射器を含む、無炎燃焼器システムであって、
前記燃焼室は、
前記酸化剤が、燃料の室温火炎速度を上回る速度で前記燃焼室を通過することを確保するように計算された断面積と、燃料の完全燃焼
のための滞留時間を確保するように選択された長手方向サイズ
とで構成され、
前記少なくとも1つの燃料噴射配管のうちの少なくとも1つが、前記燃焼室の前記壁を貫通して、前記燃焼室の内部を横切って、前記燃焼室の反対側の壁まで、且つ前記反対側の壁を貫通して延在し、前記燃料噴射配管が、前記少なくとも2つの燃料ラインのうちの前記第1の燃料ラインと前記少なくとも2つの燃料ラインのうちの第2の燃料ラインとの両方と流体連通し、
前記燃料噴射配管の前記燃焼室内にある部分
が酸化剤の流れにさらされ、
前記燃料噴射器は、燃料が前記酸化剤の速度より高い絶対速度で噴射されるようなサイズであり、
前記酸化剤が燃料の自動点火点を超える温度であることを特徴とする、無炎燃焼器システム。
【請求項2】
前記少なくとも2つの燃料ラインの各々が、そこから延在して、前記燃料ラインと流体連通している少なくとも1つの燃料入口配管を有し、
前記少なくとも1つの燃料噴射配管のうちの少なくとも1つが、前記燃料入口配管と流体連通するように、前記燃料入口配管から延在している、請求項1に記載の無炎燃焼器システム。
【請求項3】
前記少なくとも2つの燃料ラインが、前記長手方向に前記燃焼室に対して平行に延在している、請求項1又は2に記載の無炎燃焼器システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの燃料噴射配管が、前記少なくとも2つの燃料ラインの方向に対して垂直な方向に延在している、請求項3に記載の無炎燃焼器システム。
【請求項5】
前記少なくとも2つの燃料ラインの各々が、そこから延在して、前記燃料ラインと流体連通している少なくとも1つの燃料入口配管を有し、
前記少なくとも1つの燃料噴射配管のうちの少なくとも1つが、前記少なくとも1つの燃料入口配管のうちの少なくとも1つから、前記燃料噴射配管が前記燃料入口配管と流体連通するように延在し、
前記燃料入口配管が、前記少なくとも2つの燃料ラインの方向及び前記少なくとも1つの燃料噴射配管の方向に対して垂直な方向に延在している、請求項4に記載の無炎燃焼器システム。
【請求項6】
前記少なくとも2つの燃料ラインの各々が、前記少なくとも2つの燃料ラインの長さに沿って前記少なくとも2つの燃料ラインから延在する複数の燃料入口配管を備え、各燃料入口配管が、前記各燃料入口配管の長さに沿って前記各燃料入口配管から延在する複数の燃料噴射配管を備える、請求項1又は5に記載の無炎燃焼器システム。
【請求項7】
前記燃料噴射器が孔又はノズルを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の無炎燃焼器システム。
【請求項8】
前記孔又はノズルが、動作条件下で前記孔又はノズルから噴射される燃料の速度を決定するように選択されたサイズを有する、請求項7に記載の無炎燃焼器システム。
【請求項9】
前記燃料噴射器が、前記燃焼室の前記出口の方に向けられている、請求項1~8のいずれか一項に記載の無炎燃焼器システム。
【請求項10】
前記少なくとも2つの燃料ライン
及び少なくとも1つの燃料噴射配
管の直径が、動作条件下で、各噴射点まで送出される燃料の圧力が同じであるように選択されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の無炎燃焼器システム。
【請求項11】
前記燃料噴射器が、前記燃焼室内で均一に分散配置されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の無炎燃焼器システム。
【請求項12】
前記入口を通して酸化剤が提供され、前記少なくとも2つの燃料ライン内に燃料が入れられ、前記燃料が、前記少なくとも1つの燃料噴射配管内に入り、
前記少なくとも1つの燃料噴射器の各々において同じ空燃比を確立するように
、かつ、
前記酸化剤の速度よりも高い絶対速度で燃料を噴射させるように選択される、前記酸化剤及び燃料の速度及び圧力で、前記少なくとも1つの燃料噴射器を通して押し出され
、
前記酸化剤の温度は、燃料の自動点火点を超える、請求項1~11のいずれか一項に記載の無炎燃焼器システムを利用する方法。
【請求項13】
前記空燃比が、前記燃焼室が動作条件下でNOx形成をもたらす温度未満の温度を維持するように選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記燃焼室が、800℃~1500℃の温度を維持する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本装置は、複数種の燃料で使用される一種の燃焼器である。
【背景技術】
【0002】
燃焼器は、理想的には、圧力損失がほとんどなく且つ一酸化炭素(CO)及び一窒素酸化物(NOx)等の望ましくないガス種の形成が小さく、燃料に点火し且つ燃料を燃焼させて、作動流体の温度を上昇させる装置である。
【0003】
火炎は、燃料の連鎖的な酸化反応であり、それにより、(点火源又は先行する火炎のいずれかからの)局所発熱が局所点火のみを永続させる。これにより、温度及び燃焼空燃比等の特性の大きい空間的勾配がもたらされ、そのため、理想的なプロセスより望ましくない生成物がもたらされる可能性がある。火炎にはまた、空気及び/又は燃料の比較的低い速度(典型的には、5~10m/s程度)、大容量の任意の燃焼室、並びに火炎安定性を確実にするための非常に注意深い設計も必要である。
【0004】
さまざまな形態の「無炎」燃焼が、FLOX(無炎酸化反応)、CDC(無色分布燃焼)及び非対称旋回燃焼等の名称で文献に多く記載されている。すべての場合において、燃焼に必要な活性化エネルギーは、通常の火炎面以外の手段によって提供される。たとえば、いくつかの設計では、燃焼ガスは、大部分が再循環し且つ/又は予熱される。火炎がないことにより、NOx形成に関連する温度ピークが低減し、均一に分散した温度及び生成物分布がもたらされ、したがってCO形成が低減する。
【0005】
無炎燃焼には、火炎面が発生しないように分散反応帯(distributed reaction zone)(DRZ)が必要である。特許文献1又はPCT出願である特許文献2に記載されているもの等、多くの従来技術による無炎燃焼器システムでは、DRZは、煙道ガスの再循環(これにより、燃焼帯の温度が燃料の自動点火点を超えるまで上昇することにもなる)又は他の手段を通して酸素濃度を低下させること及び反応領域におけるガス速度を上昇させることによりもたらされる。酸素の減少により、反応速度が低下する。高いガス速度により、燃焼が、燃料噴射器の局所領域で発生せず、したがって、火炎面の発生又は点火源の必要を回避するように分散されるように、反応物が十分に分散する。反応がこのように分散エリアにわたり低速に発生する結果として、DRZが確立される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5154599号明細書
【文献】国際公開第99/18392号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の火炎ベースの燃焼器は、典型的には、それらの酸化剤を、それが希釈孔を通して添加されるように主反応帯を迂回する際にライナへの冷却液として使用する。こうした燃焼器では、ライナは、典型的には、燃焼ガスを希釈するためにライナ孔を通過する希釈空気から燃焼帯を分離する、薄い金属ケーシングである。こうした従来技術による火炎ベースの燃焼器は、高温酸化剤を許容することができない。それは、反応帯内の温度が極めて高いレベルに達し、したがってNOx排出が大幅に増大するためである。また、酸化剤は、高温すぎる場合、ライナを冷却するように作用しなくなるため、金属はこうしたライナ構造に適さないためでもある。これは、ライナが、多くの場合、セラミック材料から製造するには複雑過ぎるほどに、希釈孔を組み込むように複雑な幾何学的形状を有するため、特に問題である。
【0008】
別の種々の従来技術による無炎燃焼器システムは、PCT出願である国際公開第99/18392号パンフレットに例示されている。この例では、内部で酸素が発生する円筒状酸化室があり、この酸化室内に、その長さに沿って、複数のノズルを備えた燃料導管が延在している。燃料は、この酸化室内に噴射されて、燃料導管の長さに沿ったノズルの各々において酸素と反応する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酸化剤が入口から出口まで長手方向に流れる、長手方向に延在する燃焼室と、少なくとも2つの燃料ラインとを備える無炎燃焼器システムである。少なくとも2つの燃料ライン配管のうちの第1の燃料ラインと流体連通している少なくとも1つの燃料噴射配管が、燃焼室の壁を貫通して延在している。各燃料噴射配管は、燃焼室内に燃料を噴射する少なくとも1つの燃料噴射器を含む。
【0010】
少なくとも1つの燃料噴射配管のうちの少なくとも1つが、燃焼室の壁を貫通して、燃焼室の内部を横切って反対側の壁まで、且つ反対側の壁を貫通して延在している。燃料噴射配管は、少なくとも2つの燃料ラインのうちの第1の燃料ラインと少なくとも2つの燃料ラインのうちの第2の燃料ラインとの両方と流体連通している。
【0011】
好ましくは、少なくとも2つの燃料ラインの各々は、そこから延在して、燃料ラインと流体連通している少なくとも1つの燃料入口配管を有し、少なくとも1つの燃料噴射配管のうちの少なくとも1つは、燃料入口配管と流体連通するように、燃料入口配管から延在している。
【0012】
好ましくは、少なくとも2つの燃料ラインは、長手方向に燃焼室に対して実質的に平行に延在している。この場合、少なくとも1つの燃料噴射配管は、好ましくは、少なくとも1つの燃料ラインの方向に対して垂直な方向に延在している。この場合、且つ燃料入口配管が使用されている場合、燃料入口配管が、少なくとも1つの燃料ラインの方向及び少なくとも1つの燃料噴射配管の方向に対して垂直な方向に延在していることが好ましい。
【0013】
任意選択的に、各燃料ラインは、その長さに沿ってそこから延在する複数の燃料入口配管を有することができ、各燃料入口配管は、それらの長さに沿ってそれらから延在する複数の燃料噴射配管を有することができる。
【0014】
任意選択的に、配管の固有振動を制御するために、燃料噴射配管の間に支柱が使用される。
【0015】
燃焼室内に燃料を噴射する好適な燃料噴射器は、孔又はノズルを含む。好ましくは、燃料噴射器は、燃焼室の出口の方に向けられている。(この向きの結果として、燃料は、燃焼室内に放出され、酸化剤と実質的に同じ方向に移動する)。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つの燃料ライン、少なくとも1つの燃料噴射ライン及び(存在する場合は)燃料入口配管の直径は、動作条件下で、各噴射点まで送出される燃料の圧力が同じであるように選択されている。
【0017】
好ましくは、燃料噴射器は、燃焼室内で均一に分散配置されている。
【0018】
上記基準に対して構築されたシステムにより、酸化剤噴射及び燃料噴射が高速である無炎燃焼が可能になる。好ましい構成では、燃料は、均一に分散された場所で噴射され、各場所における燃料噴射の圧力は、大まかに同じである。
【0019】
本発明により、制御され、指定された空燃比(AFR)を、各燃料噴射器において局所的に維持することができる。好ましい動作条件下で、局所空燃比は、各燃料噴射場所において同じである。その結果、これらの局所空燃比が、燃焼器内の全体的な空燃比と同じになる。これにより、燃料と酸化剤との完全な混合が確実になり、したがって、望ましくない副生成物の生成に関連する燃焼器内の燃料リッチな高温帯が除去される。燃料噴出器を備える噴射配管は、それらの位置が酸化剤質量流量に基づいて選択されて、燃焼器を通して等しく散在し、燃料速度が酸化剤速度より著しく高いことを確実にするようなサイズである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】いくつかの好ましい特徴を含む、本発明による燃焼器システムの斜視図を提供する。
【
図2】
図1及び
図4の燃焼器システムの燃料配管の斜視図を提供する。
【
図3】
図1及び
図4の燃焼器システムの燃料配管の斜視図を提供する。
【
図4】いくつかの好ましい特徴を含む、本発明による燃焼器システムの斜視図を提供する。
【
図5】NOx及びCOの極めて低レベルの増大を示す、本発明による燃焼器システムから導出されたテストデータを示す。
【
図6】複数の任意選択的な特徴を組み込んだ本発明と適合性のある燃焼室を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
燃焼器は、回収(recuperated)空気等、高温の酸化剤を利用して動作させることができる。燃焼器内の燃焼プロセスにより、超低レベルのNOx(排気において<5ppm)及び低レベルのCO(排気において<6ppm)を生成し、したがって、二次的な除去方法の必要性が低下する。燃焼器は、加圧燃料、及び/又は用途において必要であるとすれば加圧酸化剤を使用することができ、空気及び燃料の混合物は、その燃料に対する爆発下限界未満であり得る。
【0022】
上述したように、従来技術による無炎燃焼器は、煙道ガスの再循環に基づく。本明細書に記載する燃焼器は、煙道ガスの再循環の必要なしに無炎燃焼を達成する。これにより、反応帯内の酸素濃度を低下させることなくDRZの確立が可能になる。
【0023】
本発明の例では、固定外側ケーシングが、燃焼の目的の範囲内で空間を形成し、この空間は、酸化剤が入るための入口と、酸化剤が向かう出口とを有する。外側ケーシングの具体的な寸法は、条件及び投入量によって決まり、本発明は、この寸法をいかなる具体的な範囲にも限定しない。しかしながら、その間隔は、断面積の計算を通して燃焼器を通る酸化剤の高い速度と、長手方向サイズの計算を通して燃料の完全な燃焼のための十分な滞留時間とを確実にするように構築される。酸化剤は、好ましくは、入口において噴射された燃料の室温火炎速度を十分に上回る高速(>50m/s)で、燃焼器の内側に沿って軸方向に通過する。酸化剤の温度は、好ましくは、燃料の自動点火点を上回るため、燃焼は、燃料と酸化剤とが接触するとすぐに発生する。
【0024】
燃料は、燃料ライン(単一又は複数)を介して送出される。燃料ラインは、選択されたマニホールド及び/又はT接合部若しくは他の取付具によって分割されて、酸化剤の流れに対して垂直に伸びる燃料噴射配管の3次元マトリックスを形成する。例として、1つの好ましい実施形態では、燃料ラインは、燃焼室の外側に存在し、酸化剤の流れに対して平行な方向に延在することができる。また、燃料ラインは、そこから分岐し垂直方向において燃料ラインと流体連通する、燃料入口配管を有することができる。これらの燃料入口配管は、燃料ラインと燃料入口配管との両方に対して垂直な方向に進む燃料噴射配管を有することができ、この燃料噴射配管は、外側ケーシングを通過し、燃焼室の壁を貫通し、燃焼室を横切り、燃焼室の対向する壁を貫通し、再度外側ケーシングを通り、燃焼チャンバの反対側の燃料噴射配管内に入る。
【0025】
燃料噴射配管の燃焼室内にある部分は、酸化剤の流れにさらされるため、そこを通って流れる燃料は、通過する酸化剤によって予熱される。これは、燃料が予熱を必要とする場合に有利であり、実際には、燃料噴射配管は、このプロセスに対して十分な熱伝達を提供するようなサイズとすることができる。燃料が、自動車ガソリン(automotive petrol)又は他の液体燃料等の液体であるとすると、当業者には周知である燃料噴射ノズルを、燃料分配管に取り付けて使用することができ、又は、こうした燃料を噴射の前に気化させることができる。
【0026】
燃料は、このように燃料噴射器(限定されないが、孔又はノズル等)において噴射される。好ましくは、燃料噴射器は、燃焼室の出口の方に向けられる。この結果、燃料は、酸化剤の流れの方向に噴射されることになる。
【0027】
燃料噴射配管は、好ましくは、燃料及び酸化剤の理想化された混合を形成するように分散配置される。典型的には、これは、燃料噴射器が、燃焼室を通して均一に分散配置されることを意味する。各燃料噴射器において、空燃比(AFR)は、燃焼室内のその箇所の酸化剤の流量によって決まり、この流量まで、酸化剤は、燃料噴射器に達する前に燃焼反応によって消耗され、その速度で、燃料は燃料噴射器から噴出される。(この最後の要因は、燃料ライン及び関連する燃料入口配管、燃料噴射配管又は他のマニホールド要素の幾何学的形状に対する好適な調整によって制御することができる)。
【0028】
好ましい理想的な条件下では、酸化剤の流量と燃料が各燃料噴射器から噴出される速度とは、各燃料噴射器の近傍のAFRがおおよそ同じであるように制御される。
【0029】
燃焼室に対する全体としての全体的なAFRは、以下の式によって得られる。
AFR
global=X/Y
式中、Xは、総空気/酸化剤質量流量であり、Yは、総燃料質量流量である。好ましくは、各燃料噴射器は、その近傍で、以下のように全体的なAFRに等価の局所AFRを確立する。
AFR
local=x
i/y
i
AFR
local=AFR
global
X/Y=x
i/y
i
【数1】
式中、x
iは、燃料噴射器iへの局所酸化剤供給量であり、y
iは、燃料噴射器iに対する噴射される関連する燃料供給量であり、燃料噴射器の数は、具体的な燃料タイプと燃焼室の幾何学的形状とに好適な数nによって特徴付けられる。各局所酸化剤供給は、各局所燃料供給から物理的に分断されない。むしろ、燃料噴射器は、各燃料噴射器が、その燃料噴射器によって包含される断面積に関連する軸流に従って正確な酸化剤供給を受け取るように位置決めされる。
【0030】
好ましい実施形態では、燃料噴射配管及び燃料噴射器は、各噴射点において名目上等しい質量流量の燃料が噴射されるようなサイズである。したがって、これらは、燃焼器内の流れ分布に基づいて、各噴射場所に名目上同じ質量流量の酸化剤が送出されるように、燃焼器の断面積を占有する。この燃料分配システムにより、広い燃料リッチ帯(こうした燃料リッチ帯は典型的にはCO形成をもたらす)が不要になり、したがって、広い高温帯(こうした高温帯は典型的にはNOx形成をもたらす)が除去される。ライナ及び希釈空気も不要になる。燃料噴射配管は、好適に小さい直径であり、任意の1つの長手方向平面における酸化剤の全体的な流れの閉塞を低減させるように、2つ以上の長手方向平面に位置する。
【0031】
好ましくは、燃料噴射器は、燃料が、好適に1を下回るマッハ数を確実にしながら、酸化剤流量より高い絶対速度(名目上、2~3倍)で噴射されるようなサイズである。高い特徴的な速度及び燃料と酸化剤との大きい速度差により、燃焼反応が終了する前に、局所反応帯から反応物が除去されることが確実になり、したがって、DRZが確立される。DRZが確立されるため、温度にいかなるスパイクもなく(こうしたスパイクは、NOx形成の増大に関連する)、温度は、AFRに基づいて事前計算された温度より高いレベルに達しない。
【0032】
酸化剤が燃料噴射配管を通過する際、カルマン渦放出(von Karman shedding)が発生する可能性がある。燃料噴射器の下流で発生するカルマン渦列(von Karman street)は、燃料と酸化剤との高速局所混合を促進する。カルマン渦列が発生する混合の促進により、燃料リッチ場所がないことが確実になり、したがって、ホットスポット及び温度スパイクの可能性がなくなり、DRZが強化される。燃焼器を通して全体的に均一に分散配置された燃料噴射器と優れた局所混合(カルマン渦放出によって促進される可能性がある)との好ましい組合せは、酸化剤及び燃料が、複雑な混合の幾何学的形状、バッフル又は燃焼後希釈空気噴出なしに、燃焼の直後に非常に良好に混合されることを意味する。これは、燃焼器に関連する高い速度にも関わらず、圧力降下を非常に低く維持することができることを意味する。
【0033】
燃料噴射器及び燃料噴射配管は、好ましくは、カルマン渦列が、発生する場合に突き当たらないように、間隔をあけて配置される。燃料噴射配管の正確な幾何学的形状及び燃料噴射器の正確な場所は、投入量によって決まり、本発明は、寸法をいかなる具体的な範囲にも限定しない。燃料ライン、燃料噴射配管及び任意の燃料入口配管、マニホールド、又は燃料送出装置の他の構成要素は、燃料の貫流によって冷却され、したがって、好適な高ニッケル合金又は高温耐性鋼から構築することができ、したがって、複雑な燃料噴射の幾何学的形状が可能になる。さらに、管を腐食及び放熱から保護するために、当業者には周知である遮熱コーティングを管の燃焼器帯接触領域に施すことができる。
【0034】
好ましくは、燃焼室及び燃料噴射器の幾何学的形状により、温度ピークなしに入口酸化剤温度から所望の出口温度まで名目上線形に温度が上昇して、燃焼ガスが迅速に混合することになる。燃焼室は、好ましくは、すべての燃料噴射ポートの下流で燃焼が完了するために十分な滞留時間が可能であるようなサイズである。次いで、燃焼ガスは、典型的にはガスタービンで使用されるために出口まで流れることができる。
【0035】
上述したように、従来技術による火炎ベースの燃焼器システムは、典型的には、それらの酸化剤を、希釈孔を通して添加されるように主反応帯を迂回する際にライナに対する冷却剤として使用する。ライナは、典型的には、燃焼ガスを希釈するようにライナ孔を通過する希釈空気から燃焼帯を分離する、薄い金属ケーシングである。酸化剤は、高温すぎる場合、ライナを冷却するように作用しなくなるため、金属は、ライナ構築には適しておらず、ライナの幾何学的形状は、典型的には、こうしたシステムにおいてセラミックから製造するには複雑過ぎる。
【0036】
比較して、本発明の燃焼器は、より高い速度を有し、触媒又は燃料及び酸化性物質の予混合は不要であるとともに、燃焼器の内部でも外部でも燃焼ガスの再循環は不要であるという点で、典型的な無炎燃焼器とは異なる。無炎燃焼の状態は、反応帯における酸化剤の濃度を低下させるために燃焼ガスの再循環を必要とすることなく達成することができる。燃料及び酸化性物質両方の流れの速度は、DRZを形成するために十分に高く、燃料分配ラインの配置により、燃焼帯の後の反応したガスの混合は不要になる。
【0037】
任意選択的に、燃料及び空気の混合は、
図6に示すように燃焼器空隙内に「隆起部(hump)」を含めることによって増大させることができる。
図6は、非常に簡略化した形態で、空気流102の方向が示されている燃焼室を示す。燃料噴射器が配置されている面を線104として示す。隆起部106は、燃料噴射面の後に位置決めされているが、実際には、燃焼帯108の前にくることが理解されよう。隆起部106には、燃焼室の断面積を狭くし、したがって、燃焼室を通る空気及び燃料の流れを加速し、乱流を促進することにより燃料及び空気のさらなる混合を強制するという効果がある。これにより、噴射された燃料の分配が加速され、高燃料リッチ帯の形成がさらに防止される。隆起部106はまた、安定した火炎が形成される可能性がないように空気-燃料流を不安定にする。隆起部は、流れの適切な拡散により圧力降下が低減するように、徐々に小さくなっている。
【0038】
上述した且つ後述するタイプの燃焼器により、複数の異なる要因に起因してNOx及びCOの形成が低減する結果となる。酸化性物質及び燃料の優れた混合により、熱的なNOx形成が低減するように、燃焼した流体における高温帯の傾向が低減する。(これにより、高温の酸化剤を使用することができる)。さらに、優れた混合及び無炎燃焼により、いかなる特定の燃料リッチ場所ももたらされず、したがって、CO及びプロンプトNOxの形成が低くなる。燃焼器に冷却流体が不要であるため、酸化剤として回収空気を使用することができる。これは、所望の最終温度を提供するためにAFR比を選択することができることを意味する。これによってまた、迅速な酸化の完了のために十分な酸素を提供することにより、プロンプトNOx形成及びCO形成が低減する。
【0039】
燃焼器の動作中の流体及び燃焼の温度は、燃料噴射器の場所及び幾何学的形状によって決まるため、動作条件下で流体及び燃焼の温度を最適化することができるような燃焼室の幾何学的形状と燃焼器の意図された目的とに基づいて、燃料噴射器の構成を選択することにより、特定の用途に対して特注の燃焼器を製造することが可能である。この手段により、回収空気を用いる場合であっても、おおよそ軸方向に平滑な熱分布を提供することによって、流体温度を制御することができる。有利には、これは、流体温度を典型的なNOx形成温度より十分に低く維持することができることを意味する。燃焼温度及び回収空気の使用の制御は、流体の温度を十分高く維持することができ、それによりCOの迅速な酸化が可能であることを意味する。
【0040】
したがって、好ましい条件下で、燃焼室内のピーク及び平均流体温度は、燃焼動作中、最適な範囲で維持することができる。この範囲では、温度は、NOx形成を回避するのに十分低く(<約1500℃)、迅速なCO酸化を確実にするのに十分高い(>約800℃)。
【0041】
任意選択的に、燃焼器は、より低い速度で従来の燃焼を開始するために別個の燃焼室を組み込むことができる。これは、始動プロセス中に燃焼を開始することであり、始動プロセスは、本来は、最初に予熱空気を提供しない。任意選択的に、始動プロセス中に、たとえば炭化ケイ素加熱要素を使用する、当業者には周知である好適な電気ヒータにより、空気を予熱することができる。
【0042】
本燃焼器は、燃料入口管寸法に対するわずかな変更で、同じ基本的な幾何学的構成を使用して、広範囲の発熱量の多数の燃料を使用する能力を有する。限定されないが、水素、バイオメタン、他のバイオガス混合物、埋立地ガス、天然ガス、灯油、及び自動車ガソリン(petrol)(ガソリン(gasoline))等の石油混合物を含む、液体及び気体両方の燃料を利用することができる。
【0043】
本発明による燃焼器に燃料を送出する配管(燃料ライン、燃料入口配管及び燃料噴射配管等)は、特に複雑な幾何学的形状が不要であるため、好ましくは、ステンレス鋼管材から作製することができる。本発明による燃焼器は、極めて高温且つ高速の(入口において800℃及び50m/sを超える)酸化剤を扱うことができる。
【0044】
本発明の一例を図に示す。例示する特定の例は、ガスタービンサイクルの一部として使用されるように意図されている。
図1は、燃焼器システムの斜視図を示す。外側ケーシング8は、燃焼室2を収容している。図示する実施形態では、外側ケーシング8は、最外層が金属である、熱を遮断し封じ込めるように選択された多層の断熱材料を含む。選択される具体的な材料及び寸法は、外側ケーシングが所望の表面温度を示すように、層を通る所定の温度勾配に基づく。断熱に使用される材料は、限定されないが、微細孔の、鋳造可能な耐火材、コージライト、構造ケイ酸カルシウム及びセラミックファイバ製品であり得る。動作時、酸化剤が向かって流れる出口6は可視であり、入口は反対側にある。ケーシング8と並んで、燃焼室2の長手方向軸に対して平行な方向に、燃料ライン12が延在している。燃料ライン12に対して垂直な方向に燃料ライン12から、燃料入口配管14が延在している。燃料入口配管14に対して且つ燃料ライン12に対して垂直な方向に燃料入口配管14から、燃焼室2を横切って、燃料噴射配管16が延在している。
【0045】
図2は、同じ燃焼器システムの燃料配管のみを、それらの配置をよりよく例示するために示す。この図から、燃料噴射配管16が、1つの燃料入口配管14から燃焼室の反対側の対応する燃料入口配管14まで延在することが明らかとなろう。燃料噴射配管16はまた、燃料噴射器18も組み込んでいる。これらは、出口6の方に面するように向けられている。
【0046】
図3は、燃料配管を示し、図は、燃焼器が使用されているときの酸化剤の流れの方向がページから出て見ている人に向かうように向けられている。
図2に見られるように、燃料入口配管14の各対は、それらを接続する6つの燃料噴射配管16を有し、可能な限り均一な噴射器18の分散配置を確実にするように、燃料噴射配管16は、燃料入口配管14の延在する方向において互い違いになっており、噴射器18は、燃料噴射配管16上で互い違いになっている。図示する例は、燃料噴射配管16毎に2つの噴射器18を有するが、燃料噴射配管16は、1つ程度の少数の噴射器18か、又は、燃焼室2の幾何学的形状が必要とする程度に多くの噴射器18を有することができることが明らかとなろう。
【0047】
図4は、燃焼室2内に噴射器18がいかに配置されるかを示すように、
図3と同じ方向に向けられた燃焼器システムを示す。
【0048】
本発明を例示する目的で、これらの図は、燃料ライン12から延在する燃料入口配管14(関連する燃料噴射配管16を含む)の2つの対のみを示す。しかしながら、本発明の目的で、燃料ライン12の長さに沿って、追加の対、好ましくは、燃焼室2を通して一貫した空燃比を確立するために必要な程度の数の対を組み込むことができることが理解されよう。
【0049】
図5は、本発明による燃焼器のテストの結果を示す。燃焼器に投入された高温流は、バーナによって提供され、使用されている周囲の新鮮な空気ではなく、21%酸素までリッチにされた。したがって、入口に一定レベルのNO
xがあった。図示する結果は、燃焼器の入口と出口との間のCO含有量及び(ppmでNO、NO
2及びN
2Oの総含有量として定義される)NO
x含有量のppmでの差を示す。測定は、ガスが無炎燃焼器に入る前、及びガスがその無炎燃焼器から出た後に、フーリエ変換赤外分光光度計読取(FTIR分光法)を使用して行われた。燃焼器が最小レベルのこれらの排気ガス、すなわち、3ppm未満のNO
x、2ppm未満のCOを追加する量、実際には、いくつかのテスト実行では、(COのレベルが、測定値の不確実性のレベルと比較して極めて小さいことによる)COの明白な減少があったことが分かる。
【0050】
この極めて最小レベルのCO及びNOx排出は、規制要求事項、及び従来技術による解決法と、非常に有利に匹敵する。2005年の米国環境保護庁規制要求事項では、天然ガスバーナは、30ppm以下のNOx生成レベルを有していなければならず、ガスタービン燃焼器は、50MW未満の生産能力で運転している場合、25ppm未満のNOx生成を達成しなければならないことが要求されている。業界内では、15ppmのNOx又は30ppmのCOを達成することは、バーナシステムの販売を促進する際に宣伝する価値があると考えられている。本発明によるこれらの種の極めて低いレベルの生成は、主な技術的貢献を構成することが明らかである。
【0051】
任意選択的に、本発明による燃焼器は、入口空気用の圧縮器と、タービン排気からの熱を圧縮空気に伝達する回転式熱交換器又は伝熱式熱交換器と、圧縮空気の温度を所望のタービン入口条件まで上昇させる本明細書に記載した燃焼器と、高温圧縮空気から仕事を取り出すタービンとを含むことができる、再生タービンサイクルの一部であり得る。回転式熱交換器又は伝熱式熱交換器は、ユニットを通して低圧力(及びキャリーオーバ)損失を示しながら、燃料の自動点火温度を超える温度で、本明細書に記載する燃焼器に空気を送出し、したがって、高温、高有効性熱交換器である必要がある。タービンは、燃焼器から高温空気を受け入れ、したがって、高温入口空気を扱うのに好適な材料から構築されなければならない。こうしたタービンは、材料仕様に基づいて比較的低い回転速度を必要とする可能性がある。入口空気用の圧縮器は、タービンによって軸駆動することができる高効率圧縮器とすることができ、したがって、低回転速度で空気を圧縮することができる。燃焼器を含むこうしたサイクルは、他のマイクロタービンサイクルと比較して高い効率が可能である。