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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】車載カメラ
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/50 20230101AFI20231011BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20231011BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20231011BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20231011BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20231011BHJP
   H04N 23/51 20230101ALI20231011BHJP
   H04N 23/57 20230101ALI20231011BHJP
【FI】
H04N23/50
B60R11/02 Z
G02B7/02 Z
G03B15/00 V
G03B17/02
H04N23/51
H04N23/57
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020555629
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2019043877
(87)【国際公開番号】W WO2020100741
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018214502
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】時任 俊裕
【審査官】大西 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-080371(JP,A)
【文献】特開2016-203952(JP,A)
【文献】特開2016-208125(JP,A)
【文献】特表2018-509021(JP,A)
【文献】米国特許第8400560(US,B1)
【文献】中国実用新案第206674070(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/40 -23/76
G03B 15/00 -15/035
G03B 17/02
G02B 7/02 - 7/16
B60R 9/00 -11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを含む光学ユニットと、
一軸と直交する平面に沿って延びる平板状の前壁部と、前記前壁部に設けられた一対の第1貫通孔部と、を有するフレームと、
前記一対の第1貫通孔部に前記一軸方向の前方に隣接する一対の第2貫通孔部を有するカバー部材と、
前記光学ユニットを保持する保持部と、前記前方に突出し、前記一対の第1貫通孔部及び前記一対の第2貫通孔部に前記一軸方向の後方から挿入される一対の柱状部と、前記一対の柱状部の先端部から前記後方に向けて形成された一対のネジ孔部と、を有するホルダと、
前記前方から前記一対の第2貫通孔部に挿入され、前記一対のネジ孔部に締結されることにより、前記ホルダ及び前記カバー部材を前記フレームに固定する一対のネジ部材と、
を具備する車載カメラ。
【請求項2】
請求項1に記載の車載カメラであって、
前記ホルダの前記後方を向いた背面に配置された撮像素子基板を更に具備する
車載カメラ。
【請求項3】
請求項2に記載の車載カメラであって、
前記撮像素子基板は、前記一対のネジ孔部の少なくとも一方に対して前記後方に対向する
車載カメラ。
【請求項4】
請求項1に記載の車載カメラであって、
前記一対のネジ孔部は、前記ホルダの前記後方に貫通していない
車載カメラ。
【請求項5】
請求項1に記載の車載カメラであって、
前記光学ユニットの光軸は、前記一軸に対して傾いている
車載カメラ。
【請求項6】
請求項5に記載の車載カメラであって、
前記ホルダは、前記光軸と直交する平面に対して傾き、前記前壁部の前記後方を向いた背面に規制される規制面を更に有する
車載カメラ。
【請求項7】
請求項6に記載の車載カメラであって、
前記規制面は、前記一対の柱状部の前記後方の端部の周囲にそれぞれ延びる一対の規制面を含む
車載カメラ。
【請求項8】
請求項1に記載の車載カメラであって、
前記カバー部材は、前記一軸方向に突出し、前記一対の第2貫通孔部が形成された一対のボス部を更に有する
車載カメラ。
【請求項9】
請求項1に記載の車載カメラであって、
前記カバー部材は、樹脂成型品である
車載カメラ。
【請求項10】
請求項1に記載の車載カメラであって、
前記フレームは、板金加工品である
車載カメラ。
【請求項11】
請求項1に記載の車載カメラであって、
前記ホルダは、ダイカスト品である
車載カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、移動体の外部環境を撮像可能な車載カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の駆動制御のためにフロントカメラを利用する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたフロントカメラでは、前方の外部環境からレンズに入射する光を撮像素子に入射させるために、レンズを保持するホルダの背面に、撮像素子が実装された撮像素子基板が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-14564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、フロントカメラは、ウインドシールドの内側に配置される。このため、フロントカメラには、運転者のより広い視界の確保などの観点から、更なる小型化が求められる。この一方で、フロントカメラには、より高度な自動車の駆動制御に対応するために、更なる高機能化が求められる。
【0005】
特許文献1に記載のフロントカメラでは、筐体に対してホルダが背面側からネジ留めされている。このため、ホルダの背面における筐体にネジ留めされた領域では、ネジの頭部が撮像素子基板の配置の妨げとなる。したがって、ホルダの背面には、撮像素子基板を配置する領域と、筐体にネジ留めされる領域と、を各別に設ける必要がある。
【0006】
このため、このフロントカメラでは、ホルダの小型化を優先させると、撮像素子基板の大きさが制限されるため高機能化が妨げられる。この一方で、撮像素子基板の実装面の拡張による高機能化を優先させると、ホルダを更に大型化する必要がある。つまり、このフロントカメラでは、小型化と高機能化とがトレードオフの関係にある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、小型化と高機能化とを両立可能な車載カメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る車載カメラは、光学ユニットと、フレームと、カバー部材と、ホルダと、一対のネジ部材と、を具備する。
上記光学ユニットは、レンズを含む。
上記フレームは、一軸と直交する平面に沿って延びる平板状の前壁部と、上記前壁部に設けられた一対の第1貫通孔部と、を有する。
上記カバー部材は、上記一対の第1貫通孔部に上記一軸方向の前方に隣接する一対の第2貫通孔部を有する。
上記ホルダは、上記光学ユニットを保持する保持部と、上記前方に突出し、上記一対の第1貫通孔部及び上記一対の第2貫通孔部に上記一軸方向の後方から挿入される一対の柱状部と、上記一対の柱状部の先端部から上記後方に向けて形成された一対のネジ孔部と、を有する。
上記一対のネジ部材は、上記前方から上記一対の第2貫通孔部に挿入され、上記一対のネジ孔部に締結されことにより、上記ホルダ及び上記カバー部材を上記フレームに固定する。
上記車載カメラは、上記ホルダの上記後方を向いた背面に配置された撮像素子基板を更に具備してもよい。
上記撮像素子基板は、上記一対のネジ孔部の少なくとも一方に対して上記後方に対向していてもよい。
【0009】
この車載カメラでは、カバー部材及びホルダがフレームに対して、前方からネジ留めされる。このため、この車載カメラは、ホルダの後方にネジ部材が突出しない構成とすることができる。これにより、この車載カメラでは、ホルダの背面に配置される撮像素子基板などの部品の形状やレイアウトがホルダによって制限されない。
【0010】
上記一対のネジ孔部は、上記ホルダの上記後方に貫通していなくてもよい。
この構成では、ネジ部材をネジ孔部に締結する際に発生する異物がホルダの背面側に混入することを防止することができる。
【0011】
上記光学ユニットの光軸は、上記一軸に対して傾いていてもよい。
上記ホルダは、上記光軸と直交する平面に対して傾き、上記前壁部の上記後方を向いた背面に規制される規制面を更に有してもよい。
上記規制面は、上記一対の柱状部の上記後方の端部の周囲に延びる一対の規制面を含んでもよい。
ウインドシールドの内面に配置される車載カメラでは、光学ユニットの光軸が下方に傾きやすい。この点、この構成では、光学ユニットの光軸を上方に傾けることによって、光学ユニットの光軸の向きを水平に近づけることができる。
【0012】
上記カバー部材は、上記一軸方向に突出し、上記一対の第2貫通孔部が形成された一対のボス部を更に有してもよい。
この構成では、第2貫通孔部が一軸方向に長くなるため、ホルダの柱状部によってカバー部材がより正確に位置決めされる。
【0013】
上記カバー部材は、樹脂成型品であってもよい。
上記フレームは、板金加工品であってもよい。
上記ホルダは、ダイカスト品であってもよい。
これらの構成は、上記の効果を奏する車載カメラの製造に特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本技術の一実施形態に係る車載カメラが搭載された自動車の斜視図である。
図2】上記車載カメラの斜視図である。
図3】上記車載カメラを装着可能なブラケットの斜視図である。
図4】上記車載カメラの分解斜視図である。
図5】上記車載カメラのフレームの斜視図である。
図6】上記車載カメラのメイン基板の斜視図である。
図7】上記車載カメラの撮像部の斜視図である。
図8】上記車載カメラのメイン基板及び撮像部をフレームに取り付けた状態を示す斜視図である。
図9】上記車載カメラの押圧部材の斜視図である。
図10図8に示すフレームに押圧部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
図11】上記車載カメラのボトムケースの斜視図である。
図12図10に示すフレームにボトムケースを取り付けた状態を示す斜視図である。
図13】上記車載カメラのシールドプレートの斜視図である。
図14図12に示すフレームにシールドプレートを取り付けた状態を示す斜視図である。
図15】上記車載カメラのフロントケースの斜視図である。
図16】上記撮像部の平面図である。
図17】上記撮像部の側面図である。
図18】上記フレームの図5のA-A'線に沿った断面図である。
図19】上記車載カメラの第1キャップ部材の分解斜視図である。
図20図18に示すフレームに第1キャップ部材を取り付けた状態を示す断面図である。
図21】上記第1キャップ部材の製造過程を示す断面図である。
図22】上記車載カメラの第2及び第3キャップ部材の分解斜視図である。
図23図20に示すフレームに第2及び第3キャップ部材を取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術の一実施形態について図面を参照しながら説明する。各図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。
【0016】
[車載カメラ1の全体構成]
図1は、本技術の一実施形態に係る車載カメラ1を搭載した自動車Mの斜視図である。自動車Mは、透明なガラス窓として、前方に配置されたウインドシールド(フロントウインドウ)M01と、後方に配置されたリアウインドウM02と、両側方に配置されたサイドウインドウM03と、を有する。
【0017】
車載カメラ1は、ウインドシールドM01の内面に設置されたフロントセンシングカメラである。車載カメラ1は、ウインドシールドM01の幅方向中央領域の上側に配置されている。これにより、車載カメラ1は、運転者の視界を遮ることなく、自動車Mの前方の風景を良好に撮像することができる。
【0018】
車載カメラ1が搭載される自動車Mは、走行機能を実現するために、その内部に、エンジンやモータなどを含む駆動力発生機構、制動機構、ステアリング機構などを備える。また、自動車Mは、周囲の情報を検出するための周囲情報検出部や、位置情報を生成するための測位部などを備えていてもよい。
【0019】
図2は、ウインドシールドM01に取り付ける前の車載カメラ1の斜視図である。車載カメラ1は、フロントケース11及びボトムケース12を有する。フロントケース11は、ボトムケース12のZ軸方向上側を覆うカバー部材として構成される。また、車載カメラ1は、レンズRを保持する光学ユニット141を含む撮像部14を有する。
【0020】
フロントケース11は、X-Y平面に沿って延びる平坦部111と、X軸方向後方に配置され、平坦部111からZ軸方向上方に突出する箱状の収容部112と、を有する。収容部112は、主にその内部に形成された空間に、撮像部14などの車載カメラ1の各構成を収容している。
【0021】
収容部112には、X軸方向前方を向いた正面のY軸方向中央部に、X軸方向に貫通するレンズ孔113が形成されている。レンズ孔113には、撮像部14の光学ユニット141が収容部112の内側から挿通されている。これにより、車載カメラ1では、光学ユニット141のレンズRがX軸方向前方に向けて外部空間に露出される。
【0022】
また、収容部112には、Y軸方向を向いた両側面にそれぞれ、Y軸方向外向きに突出する突出部114が設けられている。また、平坦部111のX軸方向前縁部のY軸方向中央部には、X軸方向前方に延出する延出片115が設けられている。突出部114及び延出片115は、車載カメラ1の設置のために用いられる。
【0023】
図3は、車載カメラ1を自動車MのウインドシールドM01の内面に設置するためのブラケット2の斜視図である。ブラケット2は、ウインドシールドM01の内面に固定されている。ブラケット2は、突出部114と係合可能な係合孔2aと、延出片115と係合可能なV字型の係合孔2bと、を有する。
【0024】
車載カメラ1は、フロントケース11をウインドシールドM01側に向けた状態で、図3にブロック矢印で示す方向にブラケット2に挿入される。そして、車載カメラ1は、延出片115が係合孔2bに挿入され、突出部114が係合孔2aに内側から嵌め込まれることにより、ブラケット2に固定される。
【0025】
このように、車載カメラ1は、ウインドシールドM01の内面に沿って、水平方向前方に向けて鉛直方向下方に傾くように設置される。これにより、車載カメラ1のウインドシールドM01からの突出量を小さく抑えることができるため、運転者のより広い視野の確保、及び車内の空間の有効利用などの観点から有利となる。
【0026】
[車載カメラ1の各部の構成]
図4は、車載カメラ1の分解斜視図である。車載カメラ1は、フレーム20と、メイン基板13と、押圧部材15と、シールドプレート16と、を更に有する。フレーム20は、車載カメラ1の骨格を成し、フロントケース11、ボトムケース12、メイン基板13、撮像部14、押圧部材15、及びシールドプレート16を保持する。
【0027】
図5は、フレーム20の斜視図である。フレーム20は、板金加工品であることが好ましく、例えば、ステンレスなどの金属の薄板材に塑性加工を加えることによって形成される。フレーム20は、X-Y平面に沿って延びる平坦部21と、フロントケース11の収容部112内で平坦部21からZ軸方向上方に隆起する隆起部22と、を有する。
【0028】
隆起部22は、前壁部23と、後壁部24と、上壁部25と、を有する。前壁部23及び後壁部24は、それぞれY-Z平面に沿って延びる平板状であり、相互にX軸方向に対向する。上壁部25は、X-Y平面に沿って延びる平板状であり、前壁部23及び後壁部24のZ軸方向上端部を相互に接続する。
【0029】
前壁部23には、Y軸方向中央部に、X軸方向に貫通するレンズ孔231が形成されている。レンズ孔231は、フロントケース11のレンズ孔113のX軸方向後方に隣接して配置される。フレーム20のレンズ孔231及びフロントケース11のレンズ孔113には、撮像部14の光学ユニット141が挿通される。
【0030】
また、前壁部23には、レンズ孔231に隣接する位置に、X軸方向に貫通する貫通孔部232が形成されている。更に、前壁部23には、Y軸方向両端部にそれぞれ、X軸方向に貫通する一対の貫通孔部233が形成されている。貫通孔部233は、撮像部14及びフロントケース11を固定するために用いられる。
【0031】
上壁部25には、中央領域に、Z軸方向に貫通する開口部251が形成されている。開口部251は、上壁部25のZ軸方向上方から隆起部22内の空間にアクセス可能なように広く開口している。開口部251には押圧部材15が嵌め込まれるため、開口部251の縁部は押圧部材15に対応した形状に形成される。
【0032】
また、フレーム20には、車載カメラ1の各部を固定するためのネジ孔部211,212,241,252が形成されている。ネジ孔部211,212は、平坦部21とつながっているX軸方向前方及び後方の領域に設けられ、Z軸方向に貫通している。ネジ孔部241は、後壁部24に設けられ、X軸方向に貫通している。ネジ孔部252は、上壁部25に設けられ、Z軸方向に貫通している。
【0033】
より詳細に、ネジ孔部211は、平坦部21のX軸方向前方の領域のY軸方向両端部にそれぞれ設けられ、メイン基板13及びボトムケース12を固定するために用いられる。ネジ孔部212は、平坦部21のX軸方向後方の領域のY軸方向両端部にそれぞれ設けられ、メイン基板13を固定するために用いられる。
【0034】
ネジ孔部241は、後壁部24のY軸方向両端部にそれぞれ設けられ、ボトムケース12を固定するために用いられる。ネジ孔部252は、上壁部25のY軸方向両端部にそれぞれ設けられ、シールドプレート16を固定するために用いられる。各ネジ孔部211,212,241,252は、使用するネジ部材Sに応じた雌ネジ形状に形成される。
【0035】
各ネジ孔部211,212,241,252への各部材の固定のために使用するネジ部材Sは、それぞれ任意に決定可能である。典型的には、ネジ部材Sは、頭部に形成された溝に係合させたドライバを回転させることによって各ネジ孔部211,212,241,252にねじ込むことで締結可能に構成された雄ネジである。
【0036】
また、フレーム20には、平坦部21のY軸方向両縁部からZ軸方向下方に屈曲する側板26が形成されている。側板26は、X-Z平面に沿って延び、X軸方向に細長い平板状である。側板26は、後述のボトムケース12の側板123との間にシールドプレート16を挟持するために用いられる。
【0037】
図6は、メイン基板13の斜視図である。メイン基板13は、X-Y平面に沿って延びる平板状の基材131を有する。基材131としては、各種セラミック基板や各種プラスチック基板などを利用可能である。基材131のZ軸方向上方を向いた実装面には、後述の撮像部14の撮像素子基板142に接続される端子132が設けられている。
【0038】
また、基材131の実装面には、MCU(Micro Controller Unit)133と、電源部136と、が設けられている。更に、基材131の実装面(Z軸方向両面)には、上記の構成以外にも、車載カメラ1の各種機能の実現に必要な電子部品が実装される。このような電子部品としては、例えば、各種のICやメモリやドライバなどが挙げられる。
【0039】
基材131には、Z軸方向に貫通する貫通孔部134,135が形成されている。貫通孔部134は、X軸方向前端部のY軸方向両端部にそれぞれ設けられ、フレーム20のネジ孔部211に固定される。貫通孔部135は、X軸方向後端部のY軸方向両端部にそれぞれ設けられ、フレーム20のネジ孔部212に固定される。
【0040】
図7は、撮像部14の斜視図である。撮像部14は、ホルダ30と、光学ユニット141と、撮像素子基板142と、フレキシブル基板50と、を有する。ホルダ30は、光学ユニット141と、撮像素子基板142と、を保持する。フレキシブル基板50は、撮像素子基板142に接続されている。
【0041】
光学ユニット141は、光軸を共通とするレンズRなどの光学部品を含み、光軸方向に沿って延びる円柱状である。ホルダ30は、光学ユニット141を保持する保持部31を有する。保持部31は、Y軸方向中央部に位置し、光学ユニット141の後端部の外周面を全周にわたって隙間なく保持する略円形の開口部として構成される。
【0042】
また、ホルダ30は、一対の柱状部32と、一対のネジ孔部33と、を有する。柱状部32は、ホルダ30のX軸方向前方を向いた正面のY軸方向両端部にそれぞれ設けられ、X軸方向前方に突出する円柱状に形成される。ネジ孔部33は、各柱状部32のX軸方向前方を向いた先端部から後方に向けて形成されている。
【0043】
更に、ホルダ30は、一対の規制面34を有する。規制面34は、各柱状部32のX軸方向後端部の周囲にそれぞれ延びる。各規制面34は、共通の平面上に位置する。加えて、ホルダ30は、正面側からZ軸方向後方に向けて形成されたネジ孔部35を更に有する。ネジ孔部35は、フレーム20の貫通孔部232に仮固定される。
【0044】
ホルダ30の柱状部32及び規制面34は、フレーム20に対する撮像部14及びフロントケース11の位置決めに用いられる。したがって、ホルダ30は、撮像部14及びフロントケース11の正確な位置決めのために、正確な形状に形成される必要がある。このため、ホルダ30としては、アルミニウムなどの金属のダイカスト品を用いることが好ましい。この場合、ホルダ30の規制面34としては、金属ダイカストの切削面を利用することが好ましい。また、ホルダ30としては、精度の高い樹脂成型品を使用することもできる。
【0045】
撮像素子基板142は、光学ユニット141の光軸と直交する平面に沿った平板状であり、ホルダ30の背面に配置されている。撮像素子基板142には、X軸方向前方を向いた実装面に撮像素子が実装されている。これにより、車載カメラ1の前方の外部環境から光学ユニット141に入射する光を撮像素子に入射させることができる。
【0046】
撮像素子基板142に実装される撮像素子は、特定の種類に限定されない。撮像素子としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などを用いることができる。撮像素子基板142の基材としては、各種セラミック基板や各種プラスチック基板などを利用可能である。
【0047】
また、撮像素子基板142には、撮像素子以外にも、撮像部14の機能の実現に必要な他の各種部品を実装することができる。例えば、撮像素子基板142には、画像処理などを実行可能な処理部などを実装することができる。フレキシブル基板50は、撮像素子基板142とメイン基板13の端子132とを接続する。
【0048】
図8は、フレーム20にメイン基板13及び撮像部14を取り付けた状態を示す斜視図である。撮像部14は、フレーム20の前壁部23に、X軸方向後方から取り付けられる。その際、光学ユニット141がレンズ孔231にX軸方向前方に挿通され、柱状部32が貫通孔部233にX軸方向前方に挿通される。
【0049】
撮像部14は、フレーム20の貫通孔部232にX軸方向前方から挿入されたネジ部材Sをホルダ30のネジ孔部35に締結することにより、フレーム20に仮固定される。なお、完成品の車載カメラ1では、撮像部14のフレーム20への仮固定用のネジ部材Sは必要なくなるが、製造プロセスの便宜上、残しておいて差し支えない。
【0050】
メイン基板13は、貫通孔部135にZ軸方向下方から挿入されたネジ部材Sをフレーム20のネジ孔部212に締結することにより、フレーム20に固定される。なお、メイン基板13の貫通孔部134は、後の工程でフレーム20のネジ孔部211にネジ留めされるため、この段階ではフレーム20に固定されない。
【0051】
撮像部14のフレキシブル基板50は、図8に示す状態において、メイン基板13の端子132に接続される。フレキシブル基板50には、Z軸方向上方からフレーム20の開口部251を介してアクセス可能である。更に、車載カメラ1では、フレキシブル基板50をメイン基板13上に固定するために押圧部材15を用いる。
【0052】
図9は、押圧部材15の斜視図である。押圧部材15は、例えば、樹脂材料などによって形成される。押圧部材15は、Z軸方向下方を向いた押圧部151aと、X軸方向前方を向いた押圧部151bと、を有する。押圧部151a,151bには、クッション材Eが取り付けられている。押圧部材15は、押圧部151aによってフレキシブル基板50の一方の接続端子部をメイン基板13に押し付け、押圧部151bによってフレキシブル基板50の他方の接続端子部を撮像素子基板142に押し付ける。これにより、フレキシブル基板50がメイン基板13及び撮像素子基板142に固定される。
【0053】
押圧部材15は、Z軸方向上部に設けられた係合板152及び係合片153を有する。係合板152は、X-Y平面に沿って延び、X軸方向に細長い平板状である。係合片153は、Y軸方向両端部にそれぞれ設けられている。各係合片153は、Z軸方向に間隔をあけて設けられ、Y軸方向外側に向けて突出する一対の突出片で構成される。
【0054】
図10は、図8に示すフレーム20に押圧部材15が取り付けられた状態を示す斜視図である。係合板152は、Z軸方向上側から開口部251の縁部に係合し、開口部251上をX軸方向に架け渡されている。係合片153は、開口部251に嵌め込まれ、つまり開口部251の縁部を一対の突出片でZ軸方向上下から挟み込んでいる。
【0055】
これにより、押圧部材15は、フレーム20に固定される。押圧部材15は、この状態において、押圧部151a,152bがフレキシブル基板50の各接続端子部を適切に押圧するように構成されている。これにより、車載カメラ1では、フレキシブル基板50による撮像素子基板142とメイン基板13との接続をより確実に保持することができる。
【0056】
図11は、ボトムケース12の斜視図である。ボトムケース12は、例えば、アルミニウムなどの金属の薄板材に塑性加工を加えることによって形成される。ボトムケース12は、車載カメラ1の底面を構成する底板121と、底板121の縁部から屈曲する背板122及び側板123と、を有する。
【0057】
底板121は、X-Y平面に沿って延びる平板状である。背板122は、Y-Z平面に沿って延びる平板状であり、底板121のX軸方向後端部からZ軸方向上方に延びる。側板123は、X-Z平面に沿って延びる平板状であり、底板121のY軸方向両端部からそれぞれZ軸方向上方に延びる。
【0058】
底板121には、X軸方向前端部のY軸方向両端部にそれぞれ、Z軸方向に貫通する貫通孔部124が形成されている。背板122には、Y軸方向両端部にそれぞれ、X軸方向に貫通する貫通孔部125が形成されている。貫通孔部124,125はいずれも、ボトムケース12をフレーム20に固定するために用いられる。
【0059】
図12は、図10に示すフレーム20にボトムケース12を取り付けた状態を示す斜視図である。図12に示す状態では、ボトムケース12の貫通孔部124と、メイン基板13の貫通孔部134と、フレーム20のネジ孔部211とが、Z軸方向に重なることによって、一連の貫通孔を形成している。
【0060】
ボトムケース12は、貫通孔部125にX軸方向後方から挿入されたネジ部材Sをフレーム20のネジ孔部241に締結することにより、フレーム20に固定される。また、ボトムケース12は、貫通孔部124,134にZ軸方向下方から挿入されたネジ部材Sをフレーム20のネジ孔部211に締結することにより、フレーム20に固定される。
【0061】
フレーム20のネジ孔部211へのネジ部材Sの締結によって、フレーム20とボトムケース12との間に挟まれたメイン基板13も、フレーム20に固定される。これにより、ボトムケース12及びメイン基板13は、それぞれX軸方向前方及び後方の2ヶ所ずつにおいてフレーム20に安定して固定される。
【0062】
フレーム20の側板26は、ボトムケース12の側板123のY軸方向内側に配置されている。このため、フレーム20の側板26とボトムケース12の側板123との間には、Y軸方向の隙間Cが形成されている。側板26,123間の隙間Cには、シールドプレート16が組み込まれる。
【0063】
図13は、シールドプレート16の斜視図である。シールドプレート16は、例えば、ステンレスなどの金属の薄板材に塑性加工を加えることによって形成される。シールドプレート16は、天板161と、側板162と、板バネ部163と、を有する。シールドプレート16は、Y-Z平面に沿った略U字状の断面を有する。
【0064】
天板161は、X-Y平面に沿って延びる。側板162は、X-Z平面に沿って延び、天板161のY軸方向両端部からそれぞれZ軸方向下方に延びる。天板161は、フレーム20の隆起部22をZ軸方向上方から覆い、開口部251を閉塞する。側板162は、フレーム20の隆起部22内の空間をY軸方向両側方から覆う。
【0065】
天板161には、Y軸方向両端部にそれぞれ、Z軸方向に貫通する貫通孔部164が形成されている。板バネ部163は、各側板162から更にZ軸方向下方に延び、Y軸方向外向きにV字状に屈曲している。貫通孔部164及び板バネ部163はいずれも、シールドプレート16をフレーム20に固定するために用いられる。
【0066】
図14は、図12に示すフレーム20にシールドプレート16が取り付けられた状態を示す斜視図である。図14に示す状態では、板バネ部163が側板26,123間の隙間C内に組み込まれている。これにより、板バネ部163は、Y軸方向に圧縮変形した状態で側板26,123間に挟まれて固定される。
【0067】
また、シールドプレート16は、貫通孔部164にZ軸方向上方から挿入されたネジ部材Sをフレーム20のネジ孔部252に締結することにより、フレーム20に固定される。これにより、隆起部22内の電子部品が、金属で形成されたフレーム20、シールドプレート16、及びボトムケース12によって外部環境から電磁遮蔽される。
【0068】
図15は、フロントケース11の斜視図である。収容部112には、正面のY軸方向両端部にそれぞれ、X軸方向に突出する一対のボス部116が設けられている。一対のボス部116には、X軸方向に貫通する一対の貫通孔部117が形成されている。貫通孔部117は、フロントケース11をフレーム20に固定するために用いられる。
【0069】
フロントケース11は、図14に示すフレーム20に取り付けられる。フロントケース11は、ボトムケース12上に載置される。その際に、撮像部14の光学ユニット141がレンズ孔113にX軸方向後方から挿通され、撮像部14のホルダ30の柱状部32がそれぞれ貫通孔部117にX軸方向後方から挿通される。
【0070】
そして、X軸方向前方から貫通孔部117に挿入されたネジ部材Sをホルダ30の柱状部32に形成されたネジ孔部33に締結する。これにより、フロントケース11とホルダ30の規制面34との間にフレーム20が挟み込まれることにより、撮像部14及びフロントケース11がフレーム20に固定される。
【0071】
以上により、図2に示す車載カメラ1が完成する。図2に示す状態では、フレーム20の貫通孔部233及びフロントケース11の貫通孔部117に挿入されるホルダ30の一対の柱状部32によって位置決めされている。このため、車載カメラ1では、撮像部14の光学ユニット141の光軸を正確な方向に向けることができる。
【0072】
フロントケース11及びホルダ30をフレーム20に固定するために用いるネジ部材Sは、ボス部116に係合可能な頭部を有する雄ネジから任意に選択可能である。ネジ部材Sとしては、頭部に溝が形成されたプラスネジやマイナスネジ以外にも、例えば、頭部が六角形に形成された六角ボルトなどを利用可能である。
【0073】
上記のとおり、フロントケース11は、2ヶ所のボス部116の貫通孔部117のみにおいてフレーム20に固定される。このため、車載カメラ1では、フロントケース11を取り付ける際に、フレーム20や撮像部14に応力が加わりにくい。したがって、車載カメラ1では、撮像部14の光学ユニット141の光軸がずれにくい。
【0074】
また、フロントケース11にはネジ孔部を設ける必要がない。このため、車載カメラ1では、フロントケース11を樹脂成型品とすることができる。これにより、車載カメラ1では、低コスト化及び軽量化を図ることをできる。また、ホルダ30の柱状部32によって位置決めされるボス部116の貫通孔部117を正確な形状に形成可能である。
【0075】
本実施形態に係る車載カメラ1では、撮像部14及びフロントケース11をフレーム20に固定するための固定構造が、小型化と高機能化とを両立可能なように構成されている。以下、車載カメラ1におけるフレーム20に対する撮像部14及びフロントケース11の固定構造の詳細について説明する。
【0076】
[撮像部14及びフロントケース11の固定構造]
図16は、撮像部14をZ軸方向上方から見た平面図である。図17は、撮像部14をY軸方向側方から見た側面図である。図16及び図17は、撮像部14がフロントケース11とともにフレーム20に固定された状態を示している。図16及び図17には、フレーム20及びフロントケース11が部分断面として模式的に示されている。
【0077】
図16及び図17に示すように、ホルダ30の柱状部32は、フレーム20の貫通孔部233のX軸方向後方からフロントケース11のボス部116の貫通孔部117の途中まで挿入されている。ホルダ30の規制面34は、フレーム20の前壁部23のX軸方向後方を向いた背面によってY-Z平面に沿って規制されている。
【0078】
ホルダ30のネジ孔部33に締結されたネジ部材Sは、フロントケース11のボス部116にX軸方向前方から係合している。これにより、ネジ部材Sの頭部とホルダ30の規制面34との間にフレーム20及びフロントケース11のボス部116が挟み込まれ、フロントケース11及びホルダ30がフレーム20に固定されている。
【0079】
フレーム20の貫通孔部233及びフロントケース11の貫通孔部117は、ホルダ30の円柱状の柱状部32の外周面との間に実質的に隙間が生じない円形状に形成されている。このため、フレーム20及びフロントケース11は、ホルダ30の柱状部32によって正確に位置決めされる。
【0080】
このように、車載カメラ1では、フレーム20、撮像部14、及びフロントケース11が、ホルダ30の柱状部32を基準として一括して位置決めされる。したがって、車載カメラ1では、フレーム20、撮像部14、及びフロントケース11の相対的な位置ずれが生じにくく、光学ユニット141の光軸Pを正確な方向に向けることができる。
【0081】
また、本実施形態に係る固定構造では、柱状部32のネジ孔部33にねじ込まれたネジ部材Sが、ホルダ30のX軸方向後方に貫通していない。このため、この固定構造では、ネジ部材Sがホルダ30のX軸方向後方に突出しない。したがって、車載カメラ1では、ホルダ30の背面側の空間を有効に使うことができる。
【0082】
例えば、図16に示すように、車載カメラ1では、撮像素子基板142をホルダ30の背面におけるネジ孔部33の少なくとも一方と対向する領域まで拡張することができる。これにより、車載カメラ1では、ホルダ30の大型化を伴わずに、撮像素子基板142における電子部品などを実装可能な実装面を拡大することができる。
【0083】
また、ホルダ30の背面におけるネジ孔部33と対向する領域には、撮像素子基板142を配置されない場合であっても、撮像素子基板142以外の電子部品などを配置することができる。これらにより、車載カメラ1では、大型化を伴わずに、新たな電子部品などを用いた高機能化を図ることができる。
【0084】
また、上記の図3を参照した説明のとおり、本実施形態に係る車載カメラ1は、ウインドシールドM01の内面に沿って、水平方向前方に向けて鉛直方向下方に傾くように設置される。これに対し、車載カメラ1は、全体として鉛直方向下方に傾いても、光学ユニット141の光軸Pの向きを水平に近づけることが可能に構成されている。
【0085】
より詳細に、図17に示すように、車載カメラ1では、光学ユニット141の光軸Pの向きがX軸方向前方に向けてZ軸方向上方に傾いている。したがって、車載カメラ1自体の鉛直方向下方への傾きが相殺され、光学ユニット141の光軸Pの向きが水平に近づく。これにより、適切なカメラ画像を得ることが可能となる。ひいては、自動車Mの前方の外部環境を遠方まで撮像することが可能となる。
【0086】
車載カメラ1では、光学ユニット141の光軸PのX軸に対する傾きが、光軸Pと直交する平面である直交面Qに対する規制面34の傾きと等しくなる。このため、車載カメラ1では、規制面34の直交面Qに対する角度θを調整することによって、光学ユニット141の光軸PのX軸に対する傾きを制御することができる。
【0087】
つまり、車載カメラ1では、ホルダ30の規制面34の直交面Qに対する角度θの変更のみによって、光学ユニット141の光軸Pの向きを変更可能である。したがって、車載カメラ1は、ウインドシールドM01の傾きに応じてホルダ30のみを交換することにより、ウインドシールドM01の傾きの異なる多種多様な自動車Mに利用可能となる。つまり、自動車Mの車種に応じて(すなわちウインドシールドM1の傾きに応じて)角度θを設定することで、車載カメラ1全体を設計しなおさなくても、適切なカメラ画像を得る構成が可能となる。
【0088】
また、車載カメラ1では、ホルダ30の規制面34の直交面Qに対する角度θによって光軸Pの向きを変更可能であるため、光学ユニット141の光軸Pの傾きの異なる構成においても、一貫してZ軸方向を鉛直方向とする水平姿勢で製造可能となる。
【0089】
なお、車載カメラ1では、撮像素子が実装される撮像素子基板142の実装面が光学ユニット141の光軸Pと直交している必要がある。このため、車載カメラ1では、撮像素子基板142が取り付けられるホルダ30の背面が、光学ユニット141の光軸Pと直交する直交面Qと平行に形成されていることが好ましい。
【0090】
また、本実施形態に係る車載カメラ1では、ホルダ30のネジ孔部33が、ホルダ30のX軸方向後方に貫通していないことが好ましい。これにより、ネジ部材Sがネジ孔部33にねじ込まれる際に発生する切粉などの異物がフレーム20の隆起部22内の空間に混入することを防止することができる。
【0091】
これにより、車載カメラ1では、電気回路の動作不良などの隆起部22内の空間への異物の混入による不具合を未然に防止することができる。車載カメラ1は、同様の観点から、フレーム20へのネジ部材Sの締結に伴う隆起部22内の空間への異物の混入の防止するための構造を有する。
【0092】
[異物混入防止構造]
図18は、フレーム20の図5のA-A'線に沿った断面図である。つまり、図18は、隆起部22をY-Z平面に沿って破断し、隆起部22のX軸方向後部を前方から示している。図18には、説明の便宜上、メイン基板13、ボトムケース12、及びシールドプレート16をフレーム20に固定するネジ部材Sが示されている。
【0093】
メイン基板13を固定するネジ孔部212には、ネジ部材SがZ軸方向下方から上方に貫通している。ボトムケース12を固定するネジ孔部241には、ネジ部材SがX軸方向後方から前方に貫通している。シールドプレート16を固定するネジ孔部252には、ネジ部材SがZ軸方向上方から下方に貫通している。
【0094】
つまり、ネジ孔部212,241,252に締結されたネジ部材Sはいずれも、その先端部がフレーム20の隆起部22内の空間に露出する。このため、ネジ孔部212,241,252にネジ部材Sがねじ込まれる際に、切粉などの異物が隆起部22内の空間に混入しやすくなっている。
【0095】
そこで、本実施形態に係る車載カメラ1では、フレーム20の隆起部22内の空間への異物の混入を防止するための構造として、ネジ孔部212、ネジ孔部241、及びネジ孔部252を隆起部22の内側から覆う第1キャップ部材41、第2キャップ部材42、及び第3キャップ部材43を設けることが好ましい。
【0096】
図19は、フレーム20のネジ孔部212を覆う第1キャップ部材41の分解斜視図である。キャップ部材41は、本体層411と、封止層412と、粘着層413と、粘着層414と、を含む積層構造を有する。粘着層413,414は、本体層411の厚さ方向に対向する両面に設けられる。
【0097】
本体層411及び粘着層413,414には、厚さ方向に貫通する開口部415が形成されている。封止層412は、粘着層413上に接着され、開口部415を封止している。これにより、キャップ部材41は、開口部415が粘着層413とは反対側の粘着層414側のみが開放されたキャップ状となっている。
【0098】
図20は、図18に示すフレーム20にキャップ部材41が取り付けられた状態を示す断面図である。キャップ部材41は、開口部415が開放された粘着層414によってフレーム20に接着される。キャップ部材41は、各ネジ孔部212にそれぞれ、各ネジ孔部212が開口部415の内側に入るように配置される。
【0099】
これにより、フレーム20では、Z軸方向下方からネジ孔部212に締結されるネジ部材Sの先端部が突出する領域がキャップ部材41によって閉塞される。このため、ネジ部材Sがネジ孔部212にねじ込まれる際に発生する異物は、キャップ部材41の開口部415内に留まり、キャップ部材41の開口部415外には排出されない。
【0100】
したがって、車載カメラ1では、ネジ孔部212にネジ部材Sがねじ込まれる際に、フレーム20の隆起部22内の空間に異物が混入することを防止することができる。これにより、車載カメラ1では、電気回路の動作不良などの隆起部22内の空間への異物の混入による不具合を未然に防止することができる。
【0101】
また、キャップ部材41では、例えば0.1mm程度の非常に薄い封止層412を用いても、ネジ孔部212を閉塞する機能が担保される。このため、車載カメラ1では、キャップ部材41のフレーム20の隆起部22の内側への突出量を小さく抑えることにより、フレーム20の隆起部22内の空間を節約することができる。
【0102】
図21は、キャップ部材41の製造過程を示す断面図である。キャップ部材41の製造には、まず積層シート41aが用意される。積層シート41aは、本体層411に対応する本体シート411aと、封止層412に対応する封止シート412aと、粘着層413,414に対応する粘着シート413a,414aと、を有する大判のシートである。
【0103】
まず、図21(A)に示すように、粘着シート414aを上方に向けて積層シート41aを保持板H上に配置する。そして、積層シート41aの上方に抜き型B1,B2を、刃先を下方に向けて配置する。抜き型B2の刃先は、抜き型B1の刃先よりも封止シート412aの厚さの分だけ高い位置にある。
【0104】
抜き型B1の刃は、キャップ部材41の外形に対応する形状に形成されている。抜き型B2の刃は、キャップ部材41の開口部415に対応する形状に形成されている。抜き型B1,B2は、上部において相互に固定されており、その相対位置を保ったまま一体として上下方向に移動可能である。
【0105】
図21(A)に示す状態から、図21(B)に示すように抜き型B1,B2を下降させることにより、積層シート41aを打ち抜く。抜き型B1は、保持板Hまで到達し、積層シート41aの全てのシート411a,412a,413a,414aを切断する。これにより、キャップ部材41の外形が形成される。
【0106】
この一方で、抜き型B2は、保持板Hの手前に留まり、最下層の封止シート412aを貫通しない。このため、抜き型B2は、シート411a,413a,414aを切断するものの、最下層の封止シート412aのみ切断しない。これにより、キャップ部材41の開口部415が形成される。
【0107】
その後、図21(B)に示す状態から、抜き型B1,B2を上昇させる。そして、積層シート41aにおける、抜き型B1より外側の部分及び抜き型B2よりも内側の部分を除去し、抜き型B1,B2間の部分のみを残す。これにより、図21(C)に示すようにキャップ部材41が得られる。
【0108】
このように、積層シート41aを用いることにより、1回の打ち抜き操作のみによってキャップ部材41を容易に製造することができる。更に、複数の抜き型B1,B2を用いて同時に積層シート41aを打ち抜くことにより、一度に多量のキャップ部材41を製造可能である。これにより、キャップ部材41を低コストで製造可能である。なお、勿論、必要に応じて、積層シート41aに対する打ち抜き操作を各抜き型B1,B2ごとに行ってもよい。
【0109】
キャップ部材41の本体層411(積層シート41aの本体シート411a)を形成する材料は、特定の種類に限定されないが、打ち抜き性に優れた樹脂材料であるが好ましい。打ち抜き性に優れた樹脂材料としては、例えば、ウレタンクッション、スポンジ、エラストマなどが挙げられる。
【0110】
キャップ部材41の封止層412(積層シート41aの封止シート412a)を形成する材料も、特定の種類に限定されず、例えば、ポリカーボネート(PC)やポリエチレンポリエチレンテレフタレート(PET)などを利用可能である。キャップ部材41の粘着層413,414としては、例えば、安価な両面接着テープなどを用いることができる。
【0111】
図22(A)は、フレーム20のネジ孔部241を覆う第2キャップ部材42の分解斜視図である。図22(B)は、フレーム20のネジ孔部252を覆う第3キャップ部材43の斜視図である。キャップ部材42,43は、第1キャップ部材41と同様の材料を用いて同様の製造方法で製造可能である。
【0112】
キャップ部材42は、本体層421と、封止層422と、粘着層423と、粘着層424と、を含む積層構造を有する。キャップ部材43は、本体層431と、封止層432と、粘着層433と、粘着層434と、を含む積層構造を有する。キャップ部材42,43は、2つのネジ孔部241,252を一括して閉塞可能ように構成されている。
【0113】
より詳細に、キャップ部材42,43はそれぞれ、フレーム20のY軸方向両端部に配置された2つのネジ孔部241,252を同時に閉塞可能なように細長い形状を有する。キャップ部材42,43には、長手方向の両端部にそれぞれ、2つのネジ孔部241,252に対応する2つの開口部425,435が形成されている。
【0114】
図23は、図20に示すフレーム20にキャップ部材42,43が取り付けられた状態を示す断面図である。図23に示すように、フレーム20では、ネジ孔部241がX軸方向前方からキャップ部材42に閉塞され、ネジ孔部252がZ軸方向下方からキャップ部材43に閉塞される。
【0115】
したがって、車載カメラ1では、ネジ孔部241,252にネジ部材Sがねじ込まれる際に、フレーム20の隆起部22内の空間に異物が混入することを防止することができる。これにより、車載カメラ1では、電気回路の動作不良などの隆起部22内の空間への異物の混入による不具合を未然に防止することができる。
【0116】
車載カメラ1では、単一の各キャップ部材42,43によって2つの各ネジ孔部241,252を一括して閉塞可能であるため、部品点数の減少による低コスト化を図ることができる。なお、本実施形態に係るキャップ部材は、閉塞すべきネジ孔部が同一平面上に3個以上ある場合には、開口部を3個以上として構成することも可能である。
【0117】
キャップ部材42,43は、第1キャップ部材41と同様に、フレーム20の隆起部22の内側への突出量を小さく抑えることができる。このため、キャップ部材42,43は、図23に示すように、相互に直交する面における相互に近接する位置に設けられたネジ孔部241,252を無理なく閉塞することができる。
【0118】
[車載カメラ1の他の構成例]
車載カメラ1の構成は、上記に限定されず、様々に変更可能である。例えば、車載カメラ1は、複数の撮像部14を有していてもよい。この場合、撮像部14ごとに、規制面34の角度θが異なるホルダ30を用いることによって、光学ユニット141の光軸Pの向きを相互に異ならせてもよい。
【0119】
また、車載カメラ1は、ウインドシールドM01のみならず、リアセンシングカメラとしてリアウインドウM02に設置することもできる。更に、車載カメラ1の用途は、センシングではなく、例えば、ビューイングであってもよい。この場合にも、車載カメラ1では、小型化と高機能化とを両立可能なメリットが得られる。
【0120】
更に、車載カメラ1のウインドシールドM01の内面への設置手法は、図3に示すようなブラケット2を用いた構成に限定されない。例えば、車載カメラ1は、ブラケット2以外の部材を介してウインドシールドM01に固定されてもよく、ウインドシールドM01の内面に直接接着されてもよい。
【0121】
加えて、車載カメラ1は、ウインドシールドM01の内面に沿って傾けて設置されなくてもよい。車載カメラ1では、X軸を水平方向に向けて設置される場合には、光学ユニット141の光軸PがX軸に対して傾いていなくてもよい。この場合、ホルダ30は、規制面34がX軸と直交するように形成される。
【0122】
また、車載カメラ1におけるホルダ30の規制面34の配置は上記に限定されない。例えば、規制面34は、一対の柱状部32の周囲ではなく、保持部31の周囲に延びていてもよい。また、規制面34は、一対の柱状部32の周囲及び保持部31の周囲にわたる広い領域に一連に延びていてもよい。
【0123】
更に、車載カメラ1では、ホルダ30の柱状部32及びネジ孔部33、フレーム20の貫通孔部233、並びにフロントケース11の貫通孔部117から構成される位置決めユニットが、少なくとも2ヶ所に設けられていればよいが、必要に応じて、3ヶ所以上に設けられていてもよい。
【0124】
加えて、車載カメラ1のフロントケース11には、ボス部116が設けられていなくてもよい。つまり、フロントケース11は、貫通孔部117が設けられる部分がボス部116でなくても、貫通孔部117を挿通したネジ部材Sの頭部とフレーム20との間に挟まれてフレーム20に固定される構成であればよい。
【0125】
なお、車載カメラ1は、自動車Mに限らず、様々な移動体に適用可能である。車載カメラ1を適用可能な移動体としては、例えば、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などが挙げられる。
【0126】
[その他の実施形態]
以上、本技術の実施形態について説明したが、本技術は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0127】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)
レンズを含む光学ユニットと、
一軸と直交する平面に沿って延びる平板状の前壁部と、前記前壁部に設けられた一対の第1貫通孔部と、を有するフレームと、
前記一対の第1貫通孔部に前記一軸方向の前方に隣接する一対の第2貫通孔部を有するカバー部材と、
前記光学ユニットを保持する保持部と、前記前方に突出し、前記一対の第1貫通孔部及び前記一対の第2貫通孔部に前記一軸方向の後方から挿入される一対の柱状部と、前記一対の柱状部の先端部から前記後方に向けて形成された一対のネジ孔部と、を有するホルダと、
前記前方から前記一対の第2貫通孔部に挿入され、前記一対のネジ孔部に締結されることにより、前記ホルダ及び前記カバー部材を前記フレームに固定する一対のネジ部材と、
を具備する車載カメラ。
(2)
上記(1)に記載の車載カメラであって、
前記ホルダの前記後方を向いた背面に配置された撮像素子基板を更に具備する
車載カメラ。
(3)
上記(2)に記載の車載カメラであって、
前記撮像素子基板は、前記一対のネジ孔部の少なくとも一方に対して前記後方に対向する
車載カメラ。
(4)
上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の車載カメラであって、
前記一対のネジ孔部は、前記ホルダの前記後方に貫通していない
車載カメラ。
(5)
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の車載カメラであって、
前記光学ユニットの光軸は、前記一軸に対して傾いている
車載カメラ。
(6)
上記(5)に記載の車載カメラであって、
前記ホルダは、前記光軸と直交する平面に対して傾き、前記前壁部の前記後方を向いた背面に規制される規制面を更に有する
車載カメラ。
(7)
上記(6)に記載の車載カメラであって、
前記規制面は、前記一対の柱状部の前記後方の端部の周囲にそれぞれ延びる一対の規制面を含む
車載カメラ。
(8)
上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の車載カメラであって、
前記カバー部材は、前記一軸方向に突出し、前記一対の第2貫通孔部が形成された一対のボス部を更に有する
車載カメラ。
(9)
上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の車載カメラであって、
前記カバー部材は、樹脂成型品である
車載カメラ。
(10)
上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の車載カメラであって、
前記フレームは、板金加工品である
車載カメラ。
(11)
上記(1)から(10)のいずれか1つに記載の車載カメラであって、
前記ホルダは、ダイカスト品である
車載カメラ。
【符号の説明】
【0128】
1…車載カメラ
2…ブラケット
11…フロントケース
113…レンズ孔
116…ボス部
117…貫通孔部
12…ボトムケース
13…メイン基板
14…撮像部
141…光学ユニット
142…撮像素子基板
15…押圧部材
16…シールドプレート
20…フレーム
21…平坦部
22…隆起部
23…前壁部
231…レンズ孔
233…貫通孔部
30…ホルダ
31…保持部
32…柱状部
33…ネジ孔部
34…規制面
50…フレキシブル基板
M…自動車
M01…ウインドシールド
S…ネジ部材
P…光軸
Q…直交面
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