(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】重合体組成物、架橋体及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20231011BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20231011BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20231011BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20231011BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/04
C08K3/34
C08K3/36
B60C1/00 A
B60C1/00 B
(21)【出願番号】P 2020559175
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2019047021
(87)【国際公開番号】W WO2020116389
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2018226817
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322004083
【氏名又は名称】株式会社ENEOSマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】桑原 力丸
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-001404(JP,A)
【文献】特開2015-113425(JP,A)
【文献】国際公開第2009/072650(WO,A1)
【文献】特開平11-029663(JP,A)
【文献】特開2017-008252(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031850(WO,A1)
【文献】特開2006-213777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00-19/12
C08C 19/00-19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、オニウム化又は保護された1級アミノ基、オニウム化又は保護された2級アミノ基及びオニウム化された3級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素含有官能基を有
し、重量平均分子量が1.0×10
5
以上1.5×10
6
以下であり、ガラス転移点が-100℃以上0℃以下である変性共役ジエン系重合体と、
エポキシ基、酸無水物構造、オキサゾリン基、水酸基、カルボキシル基及びスルホ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有
し、重量平均分子量が1.0×10
4
以上であり、融点及びガラス転移点の少なくとも一方が70℃以上150℃以下である官能基含有重合体と、
を含有する、重合体組成物。
【請求項2】
前記変性共役ジエン系重合体と前記官能基含有重合体との配合割合(変性共役ジエン系重合体/官能基含有重合体)が、質量比で99/1~70/30である、請求項
1に記載の重合体組成物。
【請求項3】
シリカ、カーボンブラック及び下記式(1)で表される無機化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の補強性充填剤を更に含有する、請求項1又は2に記載の重合体組成物。
nM
1・mSiO
k・iH
2O …(1)
(式(1)中、M
1は、アルミニウム、マグネシウム、チタン及びカルシウムのいずれかである特定金属、前記特定金属の酸化物、
及び前記特定金属の水酸化
物よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。nは1~5の整数であり、mは0~10の整数であり、kは2~5の整数であり、iは0~10の整数である。)
【請求項4】
下記の(A)変性共役ジエン系重合体と、(B)官能性含有重合体とを混合する工程を含む、重合体組成物の製造方法。
(A)1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、オニウム化又は保護された1級アミノ基、オニウム化又は保護された2級アミノ基及びオニウム化された3級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素含有官能基を有
し、重量平均分子量が1.0×10
5
以上1.5×10
6
以下であり、ガラス転移点が-100℃以上0℃以下である変性共役ジエン系重合体。
(B)エポキシ基、酸無水物構造、オキサゾリン基、水酸基、カルボキシル基及びスルホ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有
し、重量平均分子量が1.0×10
4
以上であり、融点及びガラス転移点の少なくとも一方が70℃以上150℃以下である官能基含有重合体。
【請求項5】
前記(A)変性共役ジエン系重合体と前記(B)官能基含有重合体と共に、下記の(C)補強性充填剤を混合する、請求項4に記載の重合体組成物の製造方法。
(C)下記式(1)で表される無機化合物、シリカ及びカーボンブラックよりなる群から選ばれる少なくとも一種の補強性充填剤。
nM
1・mSiO
k・iH
2O …(1)
(式(1)中、M
1は、アルミニウム、マグネシウム、チタン及びカルシウムのいずれかである特定金属、前記特定金属の酸化物、
及び前記特定金属の水酸化
物よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。nは1~5の整数であり、mは0~10の整数であり、kは2~5の整数であり、iは0~10の整数である。)
【請求項6】
請求項
4又は
5に記載の方法により得られた重合体組成物に架橋剤を加える工程と、
前記架橋剤を加えた後に架橋処理を施す工程と、
を含む、架橋体の製造方法。
【請求項7】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の重合体組成物を架橋させてなる架橋体。
【請求項8】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の重合体組成物を用いて形成されてなるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年12月3日に出願された日本特許出願番号2018-226817号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、重合体組成物、架橋体及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0003】
共役ジエン化合物を用いた重合により得られる共役ジエン系重合体(例えば、スチレン-ブタジエン共重合体等)は、耐熱性、耐摩耗性、機械的強度、成形加工性等の各種特性が良好であることから、空気入りタイヤや防振ゴム、ホースなどの各種工業製品に広く使用されている。特に、溶液重合により得られる共役ジエン系重合体(S-SBR)は、分子量分布が比較的狭く、低燃費用タイヤの材料として好適に用いられている。
【0004】
共役ジエン系重合体としては、低燃費性能により優れたタイヤを得るべく、共役ジエン系重合体鎖の末端や主鎖に、シリカと相互作用する官能基を導入した変性共役ジエン系重合体が種々提案されている。変性共役ジエン系重合体は、未変性の共役ジエン系重合体に比べて、カーボンブラックやシリカ等の補強用充填剤との相性が良いことから、タイヤ用途において発熱を抑えて低燃費性能を向上させることが可能である。また、ゴム製品の特性の向上を図るべく、共役ジエン系重合体等のゴム成分と共に、ポリオレフィン系樹脂等の樹脂成分を、ゴム製品を得るための重合体組成物に含有させることが提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-121326号公報
【文献】特許第6332090号公報
【文献】特許第6350508号公報
【文献】特許第6350509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
変性共役ジエン系重合体を用いることにより補強用充填剤の凝集が抑制され、得られる架橋ゴムにおいて低燃費性能の改善を図ることが可能なものの、操縦安定性の指標となる剛性、具体的には微小変形下の貯蔵弾性率(G’)等が低下する傾向にある。つまり、タイヤ特性として重要である低燃費性能と操縦安定性とは二律背反の関係にある。その一方で、昨今における環境事情や、省資源・省エネルギーに対する意識の向上、走行性に対する消費者ニーズの向上等により、自動車タイヤ用ゴムとしては、従来よりも増して低燃費性能(転がり抵抗性)及び操縦安定性に優れた材料が望まれている。
【0007】
本開示は上記課題に鑑みなされたものであり、低燃費性能と剛性とをバランス良く示す架橋体を得ることができる重合体組成物を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本開示によれば、以下の重合体組成物及びその製造方法、架橋体並びにタイヤが提供される。
【0009】
[1]1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、オニウム化又は保護された1級アミノ基、オニウム化又は保護された2級アミノ基及びオニウム化された3級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素含有官能基を有する変性共役ジエン系重合体と、エポキシ基、酸無水物構造、オキサゾリン基、水酸基、カルボキシル基及びスルホ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する官能基含有重合体と、を含有する、重合体組成物。
[2]下記の(A)変性共役ジエン系重合体と、(B)官能性含有重合体とを混合する工程を含む、重合体組成物の製造方法。
(A)1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、オニウム化又は保護された1級アミノ基、オニウム化又は保護された2級アミノ基及びオニウム化された3級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素含有官能基を有する変性共役ジエン系重合体。
(B)エポキシ基、酸無水物構造、オキサゾリン基、水酸基、カルボキシル基及びスルホ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する官能基含有重合体。
[3]上記[2]の方法により得られた重合体組成物に架橋剤を加える工程と、前記架橋剤を加えた後に架橋処理を施す工程と、を含む、架橋体の製造方法。
[4]上記[1]の重合体組成物を架橋させてなる架橋体。
[5]上記[1]の重合体組成物を用いて形成されてなるタイヤ。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、剛性と低燃費性能とのバランスに優れた架橋体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の態様に関連する事項について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
【0012】
≪重合体組成物≫
本開示の重合体組成物は、(A)変性共役ジエン系重合体と、(B)官能基含有重合体と、を含有する。
<(A)変性共役ジエン系重合体>
(A)変性共役ジエン系重合体(以下、単に「(A)重合体」ともいう。)は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、オニウム化又は保護された1級アミノ基、オニウム化又は保護された2級アミノ基、及びオニウム化された3級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種である窒素含有官能基を有する。(A)重合体は、窒素含有官能基を重合体末端に有していてもよく、重合体の側鎖に有していてもよく、重合体末端と重合体側鎖との両方に有していてもよい。(A)重合体において窒素含有官能基は、得られる架橋体の剛性を高くしつつ、転がり抵抗性をより良好にできる点で、重合体の少なくとも一方の末端に導入されていることが好ましく、両末端に導入されていることがより好ましい。(A)重合体は、重合開始剤の存在下で共役ジエン化合物を含むモノマーを重合することにより製造することができる。
【0013】
<重合工程>
(共役ジエン化合物)
重合に使用する共役ジエン化合物としては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン等が挙げられる。これらの中でも、1,3-ブタジエン、イソプレン、及び2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンが好ましく、加工性とヒステリシスロス低減とをバランス良く改善する効果が高い点で、1,3-ブタジエンが特に好ましい。なお、共役ジエン化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
(A)重合体は、共役ジエン化合物を用いた単独重合体であってもよいが、ゴムの強度を高める観点から、共役ジエン化合物に由来する構造単位と芳香族ビニル化合物に由来する構造単位とを有する共重合体であることが好ましい。芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、t-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-t-ブチルスチレン、3-t-ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ジフェニルエチレン、3級アミノ基含有ジフェニルエチレン(例えば、1-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-1-フェニルエチレンなど)等が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、これらのうちスチレン及びα-メチルスチレンが好ましい。
【0015】
(A)重合体が共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体である場合、(A)重合体は、アニオン重合におけるリビング性が高い点で、1,3-ブタジエンに由来する構造単位とスチレンに由来する構造単位とを有する共重合体であることが好ましい。この共重合体は、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのランダム共重合体であることが好ましい。なお、ランダム共重合体は、共役ジエン化合物又は他の芳香族ビニル化合物からなるブロック部分を更に有していてもよい。
【0016】
芳香族ビニル化合物の使用割合は、得られる架橋体の低ヒステリシスロス特性(低燃費性能)とウェットスキッド抵抗性とのバランス及び耐摩耗性を良好にする観点から、重合に使用するモノマーの合計量に対して、3~55質量%とすることが好ましく、5~50質量%とすることがより好ましい。なお、重合体中における、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有割合は1H-NMRによって測定した値である。
【0017】
重合に際しては、モノマーとして、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物以外の化合物(以下、「他のモノマー」ともいう。)を使用してもよい。他のモノマーとしては、例えばアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等が挙げられる。他のモノマーを使用する場合、他のモノマーの使用割合は、重合に使用するモノマーの全体量に対して、5質量%以下とすることが好ましく、3質量%以下とすることがより好ましい。
【0018】
重合法としては、溶液重合法が特に好ましい。重合形式としては、回分式及び連続式のいずれを用いてもよい。溶液重合法を用いる場合、具体的な重合方法の一例としては、有機溶媒中において、モノマーを、重合開始剤及び必要に応じて用いられるランダマイザーの存在下で重合する方法が挙げられる。
【0019】
重合開始剤としては、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくともいずれかを用いることが好ましい。これらの具体例としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、1,4-ジリチオブタン、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ナフチルリチウム、1,3-ビス(1-リチオ-1,3-ジメチルペンチル)ベンゼン、1,3-フェニレンビス(3-メチル-1-フェニルペンチリデン)ジリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、ジ-n-ブチルマグネシウム、ジ-n-ヘキシルマグネシウム、エトキシカリウム、ステアリン酸カルシウム、ジリチウム系開始剤(例えば、ジイソプロぺニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物)等が挙げられる。重合開始剤としては、これらのうちリチウム化合物が好ましい。重合開始剤の合計の使用量は、重合に使用するモノマー100gに対して、0.2~20mmolとすることが好ましい。
【0020】
重合反応は、重合開始剤として、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくともいずれかと、シリカと相互作用する官能基を有する化合物との混合物(R)を用いて行ってもよい。混合物(R)の存在下で重合を行うことにより、共役ジエン系重合体の重合開始末端を、シリカと相互作用を有する官能基によって変性することができる。なお、本明細書において「シリカと相互作用する官能基」とは、窒素、硫黄、リン、酸素、ケイ素等のシリカと相互作用する元素を有する基を意味する。ただし、「シリカと相互作用する官能基」が有するケイ素は、ヒドロカルビルオキシシリル基中のケイ素をいう。「相互作用」とは、分子間で共有結合を形成するか、又は共有結合よりも弱い分子間力(例えば、イオン-双極子相互作用、双極子-双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等といった分子間に働く電磁気学的な力)を形成することを意味する。
【0021】
重合開始末端を変性するための化合物(以下、「開始変性剤」ともいう。)としては、第2級アミン化合物などの窒素含有化合物が好ましく、環状又は鎖状の2級アミン化合物が特に好ましい。当該窒素含有化合物の具体例としては、例えばジメチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、N-(トリメチルシリル)ピペラジン、N-(tert-ブチルジメチルシリル)ピペラジン、N,N’-ジメチル-N’-トリメチルシリル-1,6-ジアミノヘキサン、1,3-ジトリメチルシリル-1,3,5-トリアジナン等が挙げられる。開始変性剤としては、これらのうちの1種が単独で使用されてもよく、2種以上が組み合わせて使用されてもよい。
【0022】
なお、混合物(R)の存在下でモノマーを重合する場合、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくともいずれかと、開始変性剤とを予め混合しておき、その混合物を重合系中に添加して重合してもよい。あるいは、重合系中に、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくともいずれかと、開始変性剤とを添加し、重合系中で両者を混合して重合してもよい。
【0023】
ランダマイザー(ビニル基含量調整剤ともいう)は、重合体中におけるビニル結合の含有率を表すビニル基含量の調整等を目的として使用される。ランダマイザーの例としては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2,2-ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、2-(2-エトキシエトキシ)-2-メチルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。ランダマイザーとしては1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0024】
重合に使用する有機溶媒としては、反応に不活性な有機溶剤であればよく、例えば脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等を用いることができる。これらの中でも、炭素数3~8の炭化水素が好ましく、その具体例としては、例えばプロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-へキサン、シクロへキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンチン、2-ペンチン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1-ペンテン、2-ペンテン、シクロヘキセン等が挙げられる。有機溶媒としては、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
溶液重合とする場合、反応溶媒中のモノマー濃度は、生産性と重合コントロールの容易性のバランスを維持する観点から、5~50質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。重合反応の温度は、-20℃~150℃であることが好ましく、0~120℃であることがより好ましい。また、重合反応は、モノマーを実質的に液相に保つのに十分な圧力の下で行うことが好ましい。このような圧力は、重合反応に対して不活性なガスによって反応器内を加圧する等の方法により得ることができる。こうした重合反応により、活性末端(より具体的には、アルカリ金属活性末端又はアルカリ土類金属活性末端)を有する(変性)共役ジエン系重合体を得ることができる。なお、本明細書において「(変性)共役ジエン系重合体」は、変性共役ジエン系重合体及び未変性の共役ジエン系重合体を包含する意味である。
【0026】
活性末端を有する(変性)共役ジエン系重合体の1,2-ビニル基含量は、20~70質量%であることが好ましく、30~68質量%であることがより好ましく、33~65質量%であることが更に好ましい。1,2-ビニル基含量が20質量%未満であると、ウェットグリップ特性が低くなる傾向があり、70質量%を超えると、低燃費性能が低下する傾向にある。なお、本明細書において「1,2-ビニル基含量」は、共役ジエン系重合体中のブタジエンの全構造単位に対する、1,2-結合を有する構造単位の含有割合を示す値であり、1H-NMRによって測定した値である。
【0027】
<末端変性工程>
(A)重合体の合成に際しては、上記重合により得られた(変性)共役ジエン系重合体が有するアルカリ金属活性末端又はアルカリ土類金属活性末端と、シリカと相互作用する官能基を有し且つ重合体の活性末端と反応し得る化合物(以下、「末端変性剤」ともいう。)とを反応させることが好ましい。活性末端を有する(変性)共役ジエン系重合体と末端変性剤とを反応させることにより、(A)重合体として、シリカと相互作用する官能基を重合終了末端に有する重合体が得られる。なお、末端変性剤と反応させる重合体として、変性開始剤を用いた重合により得られた変性共役ジエン系重合体を用いることにより、シリカと相互作用する官能基を重合体主鎖の両末端に有する重合体が得られる。
【0028】
末端変性剤としては、活性水素が結合していない窒素原子を有し且つ重合体の活性末端と反応し得る化合物を好ましく使用できる。窒素含有の末端変性剤は、ケイ素、硫黄及びリンよりなる群から選ばれる少なくとも一種の原子を更に有していてもよい。また、末端変性剤が有する窒素、リン及び硫黄は、保護基(例えば、3置換のヒドロカルビルシリル基)で保護されていてもよい。末端変性剤としては、得られる架橋体の低燃費性能を一層高くできる点で、これらのうち、保護された1級アミノ基を有する化合物を好ましく使用でき、窒素含有基及びヒドロカルビルオキシシリル基を有する化合物を特に好ましく使用できる。なお、本明細書において「活性水素」とは、炭素原子以外の原子に結合した水素原子をいい、好ましくはポリメチレンの炭素-水素結合よりも結合エネルギーが低いものを指す。
【0029】
末端変性剤の具体例としては、例えばN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、並びにこれらの化合物が有するアルキル基及びアルカンジイル基の少なくとも一方の炭素数が異なる化合物;2-(2,2-ジメトキシ-1,2-アザシロリジン-1-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,2-アザシロリジン、2,2-ジメトキシ-1-フェニル-1,2-アザシロリジン、1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-4-トリメチルシリルピペラジン、1,4-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,3-ビス[3-トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサヒドロピリミジン、1,3-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン、並びにこれらの化合物が有するアルキル基及びアルカンジイル基の少なくとも一方の炭素数が異なる化合物、4,4’-ビス(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸t-ブチル、(2-イソシアナト)エチル、N-メチルピロリドン等が挙げられる。なお、末端変性剤としては、これらのうちの1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
重合活性末端と末端変性剤との反応は、例えば溶液反応として行うことができる。この溶液反応は、重合反応の終了後の未反応モノマーを含む溶液を用いて行ってもよく、溶液に含まれる(変性)共役ジエン系重合体を単離し、シクロヘキサン等の適当な溶媒に溶解した上で行ってもよい。また、上記反応は、回分式及び連続式のいずれを用いて行ってもよい。このとき、末端変性剤の添加方法は特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、連続的に添加する方法等が挙げられる。
【0031】
上記反応に際し、使用する末端変性剤の量は、反応に使用する化合物の種類に応じて適宜設定すればよいが、重合開始剤が有する重合反応に関与する金属原子に対し、好ましくは0.1モル当量以上、より好ましくは0.3モル当量以上である。0.1モル当量以上とすることにより、変性反応を十分に進行させることができ、シリカの分散性を好適に改良することができる。末端変性剤の使用量の上限については、重合開始剤が有する重合反応に関与する金属原子に対し、好ましくは1.5モル当量以下、より好ましくは1.2モル以下である。
【0032】
上記反応の温度は、通常、重合反応の温度と同じであり、-20℃~150℃とすることが好ましく、0~120℃とすることがより好ましい。反応温度が低すぎると、変性後の共役ジエン系重合体の粘度が上昇する傾向がある。一方、反応温度が高すぎると、重合活性末端が失活しやすくなる。反応時間は、好ましくは1分~5時間、より好ましくは2分~1時間である。
【0033】
(A)重合体を製造する際には、(A)重合体のムーニー粘度やコールドフロー特性を高めること等を目的として、重合活性末端とカップリング剤とを反応させる処理を行ってもよい。カップリング剤を用いた反応は、重合活性末端と末端変性剤とを反応させる前に行ってもよく、重合活性末端と末端変性剤との反応後に行ってもよく、あるいは重合活性末端と末端変性剤との反応と同時に行ってもよい。
【0034】
カップリング剤の具体例としては、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、フェニル-1,4-ジイソチオシアナート等のイソ(チオ)シアナート化合物;コハク酸アミド、フタル酸アミド、N,N,N’,N’-テトラメチルフタル酸アミド、コハク酸イミド、N-メチルコハクイミド、マレイミド、フタルイミド等のアミド基又はイミド基含有化合物;ジベンゾイルピリジン、ジアセチルピリジン、ジビニルピリジン等のピリジル置換ケトン/ビニル化合物;ジブチルジクロロケイ素、メチルトリクロロケイ素、テトラクロロケイ素等のケイ素化合物;フタル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル等のエステル化合物;N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラエチル(4,4’-ジアミノ)-ベンゾフェノン等のケトン化合物;テトラクロロスズ、ジブロムジメチルスズ等のスズ化合物、等が挙げられる。なお、カップリング剤としては、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0035】
重合活性末端とカップリング剤との反応は、例えば溶液反応として行うことができる。カップリング剤の使用割合は、重合開始剤が有する重合反応に関与する金属原子に対し、好ましくは0.1モル当量以上、より好ましくは0.3モル当量以上である。カップリング剤の使用量の上限については、重合開始剤が有する重合反応に関与する金属原子に対し、好ましくは1.5モル当量以下、より好ましくは1.2モル以下である。反応形式や反応温度、反応時間等の各種条件については末端変性工程の説明が適用される。
【0036】
(A)重合体は、上記で得られた溶液から溶媒を除去し、重合体を単離することによって得ることができる。重合体を単離するには、例えばスチームストリッピング等の公知の脱溶媒方法及び熱処理等の乾燥の操作によって行うことができる。(A)重合体は、低燃費性能の改善効果をより高くできる点で、窒素含有官能基として、1級アミノ基、保護された1級アミノ基及びオニウム化された1級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有していることが特に好ましい。
【0037】
なお、末端変性剤として保護基(トリメチルシリル基等)を有する化合物を用いた場合、得られる(A)重合体において、保護基の一部又は全部が水素置換されていてもよい。また、末端変性剤として保護基含有化合物を用いた場合、末端変性剤により変性された共役ジエン系重合体と、オニウム塩生成剤とを更に反応させてもよい。この場合、(A)重合体として、重合体末端にオニウム塩構造を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。(A)重合体がオニウム塩構造を有することにより、重合体組成物を用いて得られる架橋体の形状保持性を改善できる点で好ましい。
【0038】
オニウム塩生成剤としては、例えばハロゲン化ケイ素化合物、ハロゲン化スズ化合物等のハロゲン化金属、硫酸エステル、リン酸エステル、炭酸エステル、硝酸エステル、フッ酸、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸;フッ化カリウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム等の無機酸塩;カルボン酸、スルホン酸等の有機酸、等が挙げられる。オニウム塩生成剤としては、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0039】
(A)重合体は、剛性がより高い架橋体を得ることができる点で、ガラス転移点(Tg)が、-100℃以上であることが好ましく、-90℃以上であることがより好ましく、-80℃以上であることが更に好ましい。また、(A)重合体のガラス転移点は、得られる架橋体の低燃費性能を十分に確保する観点から、0℃以下であることが好ましく、-10℃以下であることがより好ましく、-20℃以下であることが更に好ましい。なお、(A)重合体のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて得られた融解曲線において、JIS K7121に準拠して測定した値である。
【0040】
(A)重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1.0×105以上である。Mwが1.0×105よりも小さいと、架橋体の形状安定性、引張強度及び耐摩耗性が低下しやすい傾向にある。(A)重合体のMwは、より好ましくは1.2×105以上、更に好ましくは1.5×105以上である。また、(A)重合体のMwは、好ましくは1.5×106以下である。Mwが1.5×106よりも大きいと、重合体組成物の加工性が低下しやすい傾向にある。(A)重合体のMwは、より好ましくは1.3×106以下、更に好ましくは1.0×106以下である。
【0041】
重合体組成物中における(A)重合体の含有割合は、低ヒステリシスロス特性に優れた架橋体を得る観点から、重合体組成物に含まれる重合体成分の全量に対し、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましい。(A)重合体の含有割合は、重合体組成物に含まれる重合体成分の全量に対し、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。また、(A)重合体の含有割合は、重合体組成物中のゴム成分の全量に対して30質量%以上であることが好ましく、30~95質量%であることがより好ましい。
【0042】
≪(B)官能基含有重合体≫
(B)官能基含有重合体(以下、単に「(B)重合体」ともいう。)は、エポキシ基、酸無水物構造、オキサゾリン基、水酸基、カルボキシル基及びスルホ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基(以下、「特定官能基」ともいう。)を有する。
【0043】
特定官能基について、エポキシ基は、オキセタニル基及びオキシラニル基を含む意味である。酸無水物構造としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水安息香酸等のカルボン酸無水物に由来する構造が挙げられる。これらのうち、酸無水物構造は、好ましくは無水マレイン酸又は無水コハク酸に由来する構造である。水酸基は、アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基を含み、好ましくはアルコール性水酸基である。
【0044】
特定官能基としては、(A)重合体が有する窒素含有官能基との反応性が高い点で、上記のうち、エポキシ基、酸無水物構造、オキサゾリン基及びアルコール性水酸基よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、エポキシ基及び酸無水物構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましく、エポキシ基が特に好ましい。なお、(B)重合体は、特定官能基を1種のみ有していてもよいし、2種以上を組み合わせて有していてもよい。
【0045】
(B)重合体の主骨格は、特定官能基を有する重合体が得られる限り特に限定されない。(B)重合体の好ましい具体例としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ1-ブテン等)、スチレン、ポリマレイミド、スチレン-マレイミド系共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、オレフィン-無水マレイン酸共重合体、ポリ(メタ)アクリレート、オレフィン-(メタ)アクリル酸共重合体、又はオレフィン-(メタ)アクリル酸-無水マレイン酸共重合体を主骨格とする重合体が挙げられる。これらのうち、特定官能基を導入しやすい点や、融点が適度に高い点で、ポリ(メタ)アクリル系重合体が好ましく、具体的にはポリ(メタ)アクリレート、及びオレフィン-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」はそれぞれ、「アクリル及びメタクリル」、「アクリレート及びメタクリレート」を含むことを意味する。
【0046】
(B)重合体中における特定官能基の含有割合(以下、「官能基変性量」ともいう。)は、(B)重合体1gあたり0.15mmol以上であることが好ましい。官能基変性量が上記範囲内であることにより、低燃費性能及び剛性の改善効果をより高くできる点で好適である。官能基変性量は、(B)重合体1gあたり、より好ましくは0.20mmol以上であり、更に好ましくは0.25mmol以上である。また、重合体組成物の加工性の低下を抑制する観点から、官能基変性量は、(B)重合体1gあたり2.0mmol以下であることが好ましく、1.5mmol以下であることがより好ましく、1.2mmol以下であることが更に好ましい。
【0047】
なお、(B)重合体における官能基変性量の含有割合は、一般的な化学分析手法により定量できる。例えばエポキシ基含有重合体であれば、JIS K7236に準拠したエポキシ当量の測定方法により求めた値である。酸無水物構造含有重合体であれば、JIS 0070に準拠した酸価の測定方法によって求められる。
【0048】
(B)重合体における特定官能基の導入箇所は特に限定されない。具体的には、(B)重合体は、特定官能基を重合体の主鎖末端に有していてもよく、重合体の主鎖末端とは異なる部分に有していてもよく、重合体の主鎖末端とは異なる部分と重合体の主鎖末端との両方に有していてもよい。なお、「重合体の主鎖末端とは異なる部分」としては、特定官能基が重合体の側鎖に導入されている場合、及び特定官能基が主骨格の一部を構成している場合が含まれる。これらのうち、得られる架橋体の剛性を高くするとともに、低燃費性能の改善効果を十分に得る観点から、(B)重合体は、特定官能基を少なくとも側鎖に有していることが好ましい。
【0049】
(B)重合体は、剛性がより高い架橋体を得ることができる点で、融点(Tm)及びガラス転移点(Tg)が(A)重合体のガラス転移点よりも高いことが好ましい。具体的には、(B)重合体は、融点(Tm)及びガラス転移点(Tg)の少なくとも一方が70℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることが更に好ましい。(B)重合体の融点又はガラス転移点は、得られる架橋体の低燃費性能を十分に確保する観点から、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、135℃以下であることが更に好ましい。なお、(B)重合体の融点及びガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて得られた融解曲線において、JIS K7121に準拠して測定した値である。
【0050】
(B)重合体は、特定官能基を有していればよく、その合成方法は特に限定されない。(B)重合体の合成方法としては、例えば、特定官能基を有さない重合体に対し、特定官能基を有するモノマーをグラフト重合させる方法、特定官能基を有するモノマーを用いて重合する方法等が挙げられる。
【0051】
(B)重合体としては市販品を用いることもできる。具体的には、商品名で例えばユーメックス100TS、同1010、同1001、同303、同5200、同5500、同CA620(以上、三洋化成社製)、エポクロスRPS-1005(日本触媒社製)、SMA EF-30、同EF-40、同EF-60、同EF-80、SMA 1000、同2000、同3000(以上、クレイバレー社製)、ボンドファーストBF-2C、同BF-E、同CG5001、同BF-2B、同BF-7B、同BF-7L、同BF-7M(以上、住友化学社製)、LOTADER GMA AX8840、同AX8900、BONDINE MAH LX4110、同HX8210、同TX8030、同HX8290、同5500、同AX8390(以上、アルケマ社製)、等が挙げられる。(B)重合体としては、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0052】
(B)重合体の分子量につき、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、得られる架橋体の剛性と重合体組成物の加工性とのバランスを良好にする観点から、好ましくは1.0×104以上であり、より好ましくは5.0×104以上であり、更に好ましくは7.0×104以上である。また、(B)重合体のMwは、好ましくは2.0×106以下である。Mwが2.0×106よりも大きいと、転がり抵抗性及び重合体組成物の加工性が低下しやすい傾向にある。(B)重合体のMwは、より好ましくは1.0×106以下、更に好ましくは5.0×105以下である。
【0053】
(B)重合体の含有割合は、重合体組成物の全量に対して、1~15質量%であることが好ましい。(B)重合体の含有割合を1質量%以上とすることにより、架橋体の剛性の改善効果を十分に高くできるとともに、転がり抵抗がより小さい架橋体を得ることができる点で好適である。また、(B)重合体の含有割合を15質量%以下とすることにより、架橋ゴムをタイヤ用途に用いた場合の低燃費性能及びタイヤ加工性を十分に確保できる点で好適である。(B)重合体の含有割合は、重合体組成物の全量に対し、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上である。また、(B)重合体の含有割合は、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0054】
本開示の重合体組成物は、ゴム成分である(A)重合体と、樹脂成分である(B)重合体とを含有する。重合体組成物中における(A)重合体と(B)重合体との質量比((A)重合体/(B)重合体)は、99/1~70/30であることが好ましい。(A)重合体が多すぎる(すなわち(B)重合体が少なすぎる)と、剛性が十分でなく、得られる架橋体をタイヤ用途に用いた場合に走行安定性に劣る傾向がある。また、(A)重合体が少なすぎる(すなわち(B)重合体が多すぎる)と、得られる架橋体をタイヤ用途に用いた場合に、転がり抵抗性やタイヤ加工性に劣る傾向がある。(A)重合体及び(B)重合体の質量比は、架橋体の剛性と転がり抵抗性との両立を図る観点やタイヤ加工性を良好にする観点から、より好ましくは98/2~80/20であり、更に好ましくは97.5/2.5~85/15である。
【0055】
≪その他の成分≫
本開示の重合体組成物は、本開示の効果を損なわない限り、上記(A)重合体及び(B)重合体とは異なる成分(その他の成分)を更に含有していてもよい。以下に、その他の成分について説明する。
【0056】
本開示の重合体組成物には、架橋体の強度を高めるために補強用充填剤が含有されていることが好ましい。補強用充填剤としては、例えばシリカ、カーボンブラック、下記式(1)で表される無機化合物(以下、「無機化合物(M)」ともいう。)、強化用繊維(例えば、ガラス繊維や炭素繊維等の無機系繊維、ナイロンやポリエステル等の有機系繊維)等が挙げられる。これらのうち、補強用充填剤としては、シリカ、カーボンブラック及び無機化合物(M)よりなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
nM1・mSiOk・iH2O …(1)
(式(1)中、M1は、アルミニウム、マグネシウム、チタン及びカルシウムのいずれかである特定金属、特定金属の酸化物、及び特定金属の水酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。nは1~5の整数であり、mは0~10の整数であり、kは2~5の整数であり、iは0~10の整数である。)
【0057】
シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。これらのうち、破壊特性の改良効果や、ウェットグリップ性と低転がり抵抗性との両立効果の観点から、湿式シリカが特に好ましい。また、高分散型(High Dispersible Type)のシリカを使用することも、重合体組成物中における分散性を良好にできるとともに物性及び加工性を向上できる観点から好ましい。なお、シリカとしては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。また、ゴム組成物には、無機フィラーとしてシリカやカーボンブラックの他に、クレー、炭酸カルシウムなどの各種の補強性充填剤が更に配合されていてもよい。
【0058】
無機化合物(M)の具体例としては、特定金属がアルミニウムである化合物として、例えば酸化アルミニウム、アルミナ一水和物、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO4等)等を;特定金属がマグネシウムである化合物として、例えば酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、タルク等を;特定金属がチタンである化合物として、例えば酸化チタン等を;特定金属がカルシウムである化合物として、例えば酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等を、それぞれ挙げることができる。
【0059】
補強性充填剤としては、シリカ、カーボンブラック及び無機化合物(M)のうち1種を単独で使用してもよく、これらのうちの2種以上を組み合わせて使用してもよい。補強性充填剤としては、これらのうち、(A)重合体との組み合わせにおいてタイヤ特性の改善効果が高い点で、重合体組成物は、補強性充填剤としてシリカを含むことが好ましく、中でも湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカを用いることが好ましい。補強性充填剤を使用する場合、重合体組成物中における補強性充填剤の含有割合(2種以上を含有する場合にはその合計量)は、重合体組成物に含まれる重合体成分の全体量100質量部に対して、好ましくは25~130質量部、より好ましくは30~110質量部である。
【0060】
重合体組成物には、通常、架橋剤が含有される。架橋剤としては、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂等が挙げられ、通常、硫黄が使用される。硫黄の配合量は、重合体組成物に含まれるゴム成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.5~3質量部である。
【0061】
重合体組成物には、(A)重合体に加えて、(A)重合体とは異なる他のゴム成分が配合されていてもよい。かかる他のゴム成分の種類は特に限定されないが、未変性ゴムが好ましく、例えばブタジエンゴム(BR、例えばシス-1,4結合が90%以上のハイシスBRなど)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンイソプレン共重合体ゴム、ブタジエンイソプレン共重合体ゴム等が挙げられる。その他のゴム成分の配合量は、重合体組成物に含まれる重合体成分((A)重合体、(B)重合体及び他のゴム成分)の合計量100質量部に対して、好ましくは5~60質量部、より好ましくは10~50質量部である。
【0062】
重合体組成物には、上記した成分の他に、例えば老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、硫黄、加硫促進剤、シランカップリング剤、相溶化剤、加硫助剤、プロセスオイル、加工助剤、スコーチ防止剤など、タイヤ用等の重合体組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。これらの配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲において、各種成分に応じて適宜選択することができる。
【0063】
≪重合体組成物及び架橋体の製造方法≫
本開示の重合体組成物は、(A)重合体及び(B)重合体の他、必要に応じて配合される成分を、開放式混練機(例えば、ロール)、密閉式混練機(例えば、バンバリーミキサー)等の混練機を用いて混合(具体的には混練)することにより製造できる。
【0064】
混練工程ではまず、(A)重合体と、(B)重合体と、加硫系配合剤(架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤)以外の添加剤(以下、「第1の添加剤」ともいう。)とを、混練機を使用して溶融混練する(第1の工程)。第1の添加剤は、少なくとも補強用充填剤を含んでいることが好ましい。第1の工程における混練温度(混練物の温度)は適宜設定されればよいが、(B)重合体の融点(Tm)及びガラス転移点(Tg)以上とすることが好ましい。この溶融混練により、第1の添加剤が重合体成分と混合され、加硫後のゴム製品の強度を高めたり、重合体組成物の混練加工性を良好なものとしたり、混練時に生じたラジカルに起因するゴムの劣化を防止したりする等の効果を十分に得ることができる。
【0065】
なお、(A)重合体と(B)重合体と第1の添加剤とを混合した後において、(A)重合体が有する窒素含有官能基と(B)重合体が有する特定官能基との反応が完了するまで、より具体的には、(B)重合体が有する特定官能基の全部が(A)重合体が有する窒素含有官能基と反応するか、又は(A)重合体が有する窒素含有官能基の全部が(B)重合体が有する特定官能基と反応するまでの重合体組成物が、「(A)重合体と(B)重合体とを含有する重合体組成物」に対応する。
【0066】
続いて、第1の工程により得られた混練物を必要に応じて室温に戻した後、混練物に加硫系配合剤を加え、混練機を使用して溶融混練する(第2の工程)。第2の工程での混練温度は特に限定されず、(B)重合体の融点及びガラス転移点以下としてもよい。第2の工程により得られた重合体組成物を成形加工し、その後架橋(加硫)することにより架橋体を得ることができる。
【0067】
なお、本開示の内容を限定するものではないが、(A)重合体と(B)重合体とを含有する重合体組成物によれば、重合体組成物を混練する工程において、重合体(A)が有する窒素含有官能基が(B)重合体の特定官能基と反応することにより、(A)重合体の分子運動性が抑制されたとともに剛性が付与されたと推測される。重合体組成物が(A)重合体及び(B)重合体と共に補強用充填剤を含有する場合には更に、重合体組成物の混練工程において、(A)重合体とは未反応の特定官能基と補強用充填剤との相互作用により補強用充填剤の分散性が高まり、これにより低燃費性能により優れた架橋体を得ることができたと推測される。
【0068】
≪架橋体及びタイヤ≫
本開示の重合体組成物を用いて得られる架橋体は各種ゴム製品に適用可能である。各種ゴム製品の具体例としては、例えばタイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等のタイヤ用途;パッキン、ガスケット、ウェザーストリップ、O-リング等のシール材;自動車、船舶、航空機、鉄道等の各種車両用の内外装表皮材;建築材料;産業機械用や設備用などの防振ゴム類;ダイヤフラム、ロール、ラジエータホース、エアーホース等の各種ホース及びホースカバー類;動力伝達用ベルトなどのベルト類;ライニング;ダストブーツ;医療用機器材料;防舷材;電線用絶縁材料;その他の工業品等が挙げられる。
【0069】
本開示の重合体組成物によれば、低燃費性能及び剛性に優れた架橋体を製造することができる。したがって、本開示の重合体組成物は、特にタイヤのトレッド及びサイドウォール用の材料として好適に使用できる。
【0070】
タイヤの製造は常法に従い行うことができる。例えば、重合体成分及び必要に応じて配合される成分を含有する重合体組成物を混練機で混合し、シート状にしたものを、常法に従い所定位置に配置して加硫成形することによりトレッドゴム又はサイドウォールゴムとして形成され、空気入りタイヤが得られる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示の内容はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。重合体及びゴムの各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0072】
(1)結合スチレン含量(%):重クロロホルムを溶媒として用い、500MHzの1H-NMR測定によって算出した。
(2)ビニル結合含量(%):500MHzの1H-NMR測定によって算出した。
(3)(変性)共役ジエン系重合体のガラス転移点(℃):ASTM D3418に準拠して示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。
(4)(変性)共役ジエン系重合体の重量平均分子量:下記の条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8120GPC」(東ソー株式会社製)によって測定を行い、得られたGPC曲線の最大ピーク頂点に相当する保持時間から、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。
(GPC条件)
カラム;商品名「GMHXL」(東ソー社製)2本
カラム温度;40℃ 移動相;テトラヒドロフラン
流速;1.0ml/分 サンプル濃度;10mg/20ml
(5)ムーニー粘度(MV):JIS K6300-1に準拠し、Lローターを用い、予熱1分間、ローター作動時間4分間、温度100℃の条件で測定した。
【0073】
(6)官能基含有重合体の重量平均分子量:下記の条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(アジレント・テクノロジー(株)製、PL-GPC220)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。
カラム:PLgel Olexis
展開溶媒:o-ジクロロベンゼン 測定温度:135℃
(7)官能基含有重合体の融点及びガラス転移点(℃):示差走査熱量測定計(TAインスツルメント製DSC)を用いて、JISK7121に準拠した測定方法によってそれぞれ求めた。
【0074】
[合成例1:重合体(a-1)の合成]
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2500g、テトラヒドロフラン50g、スチレン125g、1,3-ブタジエン365gを仕込んだ。反応器内容物の温度を10℃に調整した後、n-ブチルリチウム5.20mmolを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で(重合開始から26分経過後に)、1,3-ブタジエン10gを2分間かけて追加し、更に3分間重合させた後、3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン4.46mmolを加えて15分間反応を行い、変性共役ジエン系重合体溶液を得た。
得られた変性共役ジエン系重合体溶液に、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピナート]を添加し、次いでスチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールで乾燥することにより重合体(a-1)を得た。重合体(a-1)の性質を下記表1に示した。
【0075】
[合成例2:重合体(a-2)の合成]
合成例1において3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシランの代わりにN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを使用したこと以外は、合成例1と同様の方法により重合体(a-2)を得た。重合体(a-2)の性質を下記表1に示した。
【0076】
[合成例3:重合体(a-3)の合成]
合成例1においてオートクレーブ反応器にシクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン及び1,3-ブタジエンと共にN-(tert-ブチルジメチルシリル)ピペラジン4.20mmolを仕込んだこと、及び3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシランの代わりにN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを使用したこと以外は、合成例1と同様の方法により重合体(a-3)を得た。重合体(a-3)の性質を下記表1に示した。
【0077】
[合成例4:重合体(a-4)の合成]
合成例1において3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシランを使用しなかったこと以外は合成例1と同様の方法により、未変性の共役ジエン系重合体として重合体(a-4)を得た。重合体(a-4)の性質を表1に示した。
【0078】
【0079】
表1中の略称は以下のとおりである。
INI-N-1(*1):N-トリメチルシリルピペラジン
INI-N-2(*2):N-(tert-ブチルジメチルシリル)ピペラジン
N-Si-1(*3):N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン
N-Si-2(*4):3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン
【0080】
[実施例1~3、比較例1~5]
下記表2に示す配合処方により各成分を配合し、これを溶融混練することによって重合体組成物を製造した。混練は以下の方法で行った。
温度制御装置を付属したバッチ式ミキサー(東洋精機製作所製;商品名ラボプラストミルを使用し、一段目の混練として、設定温度を100℃に温調して、回転数60rpm、混練時間4分の条件で、(変性)共役ジエン系重合体、ポリブタジエンゴム、官能基含有重合体(実施例1~3のみ)、伸展油、シリカ、シランカップリング剤、ステアリン酸、老化防止剤、及び酸化亜鉛を配合して混練りした。ミキサーから排出された混練物の排出時の温度は、いずれも150℃前後であった。
次いで、二段目の混練として、一段目の混練により得られた混練物を室温まで冷却後、加硫促進剤及び硫黄を上記ミキサーに配合し、設定温度を70℃に温調して、回転数60rpm、混練時間1.5分の条件で混練することにより重合体組成物をそれぞれ得た。ミキサーから排出された混練物の排出時の温度はいずれも100℃以下であった。次に、得られた各重合体組成物を160℃で所定時間、加硫プレスにて加硫成形を行うことにより架橋ゴムを得た。得られた架橋ゴムを用いて、以下の物性評価(1)~(3)を行った。それらの結果を下記表2に示した。
【0081】
(1)貯蔵弾性率(50℃_G’ 操縦安定性)
せん断型動的スペクトロメーター(TAインスツルメント社製)を用い、角速度100ラジアン毎秒、温度50℃、せん断歪1%の条件にて貯蔵弾性率G’を測定した。比較例1を100とした指数で示し、数値が大きいほど操縦安定性が良好であることを示す。
(2)ペイン効果(50℃ΔG’ フィラー分散性)
せん断型動的スペクトロメーター(TAインスツルメント社製)を用い、角速度100ラジアン毎秒、温度50℃の条件にてせん断歪を0.14%~10%に変量して貯蔵弾性率G'の歪依存性を測定し、測定値の最大値と最小値の差を計算した。比較例1を100とした指数で表示し、数値が大きいほどフィラー分散性が良好であることを示す。
(3)損失正接(50℃tanδ 転がり抵抗)
せん断型動的スペクトロメーター(TAインスツルメント社製)を用い、角速度100ラジアン毎秒、温度50℃の条件にてせん断歪1%の条件にて貯蔵弾性率G’に対する損失弾性率G’’の比(50℃tanδ)を測定した。比較例1を100とした指数で示し、数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、良好であることを示す。
【0082】
【0083】
表2中、各成分について、使用した商品名は以下の通りである。
b-1:三洋化成工業製 無水マレイン酸変性ポリプロピレン、商品名「ユーメックス1001」
*1:JSR社製、商品名「BR01」、*2:ジャパンエナジー社製、商品名「JOMOプロセスNC-140」、*3:ローディア社製、商品名「ZEOSIL 1165MP」、*4:エボニック社製、商品名「Si75」、*5:精工化学社製、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、商品名「オゾノン6C」、*6:大内新興化学工業社製 1,3-ジフェニルグアニジン、商品名「ノクセラーD」、*7:大内新興化学工業社製 N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、商品名「ノクセラーCZ」。
【0084】
表2に示すように、(A)重合体と(B)重合体とを含有する重合体組成物を用いて得られる架橋ゴム(実施例1~3)は、(A)重合体及び(B)重合体のうち一方を含まない場合(比較例1~5)に比べ、50℃の貯蔵弾性率、ペイン効果及びtanδ(50℃)のバランスが良好であった。(A)重合体が有する窒素含有官能基について見ると、2級アミノ基を有する場合よりも1級アミノ基を有する場合の方が、ペイン効果及びtanδの改善効果が高い結果が得られた。また、(A)重合体が片末端のみに窒素含有官能基を有する場合に比べ、両末端に窒素含有官能基を有する場合の方が、ペイン効果及びtanδの改善効果が高いことが分かった。
【0085】
[実施例4~6、比較例6]
配合処方を下記表3に示す処方に変更した点以外は実施例1~3、比較例1~5と同様にして一段目の混練及び二段目の混練を行うことにより重合体組成物を得た。また、得られた重合体組成物を用いて実施例1~3、比較例1~5と同様にして架橋ゴムを製造し、物性評価を行った。それらの結果を下記表3に示した。
【0086】
[実施例7]
重合体(a-1)を70質量部と、重合体(b-1)を10質量部とを配合し、140℃に温度調節した上記のバッチ式ミキサーを使用し、回転数60rpmで3分間混練した。ミキサーから排出された混練物(熱可塑性エラストマー)の排出時の温度は140℃前後であった。得られた混練物を含む各成分を下記の表3に示す配合処方により配合し、実施例1~3、比較例1~5と同様にして一段目の混練及び二段目の混練を行うことによりゴム組成物を得た。また、得られたゴム組成物を用いて実施例1~3、比較例1~5と同様にして架橋ゴムを製造し、物性評価を行った。それらの結果を下記表3に示した。
【0087】
【0088】
表3中、各成分について、使用した商品名は以下の通りである。*1~*7及びb-1の商品名は表2と同じである。
b-2:三洋化成工業製 無水マレイン酸変性ポリプロピレン、商品名「ユーメックス5500」
b-3:住友化学製 エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、商品名「BF-2C」
b-4:株式会社日本触媒製、オキサゾリン変性ポリスチレン、商品名「エポクロスRPS-1005」
*8:日本ポリエチレン株式会社製 高密度ポリエチレン、商品名「ノバテックHD HF560」
【0089】
表3に示すように、実施例4~6の重合体組成物から得られた架橋ゴムは、比較例6に比べて、50℃の貯蔵弾性率、ペイン効果及びtanδ(50℃)のバランスが良好であった。また、(A)重合体と(B)重合体とを予め混練した後に他の成分と配合した実施例7の重合体組成物を用いて得られた架橋ゴムについても良好な物性値を示した。
【0090】
以上の結果から明らかなように、窒素含有官能基を有する(A)変性共役ジエン系重合体と、(A)変性共役ジエン重合体に対して結合反応性を有する(B)重合体とを含有する重合体組成物によれば、操縦安定性を維持したまま、フィラー分散性及び転がり抵抗性を改良することができる。