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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】金属薄板部材を結合する方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/02 20060101AFI20231011BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20231011BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20231011BHJP
   H01F 27/245 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B21D28/02 Z
B21D28/02 D
H02K15/02 F
H02K15/02 E
H01F41/02 B
H01F27/245 150
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020560559
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2019051291
(87)【国際公開番号】W WO2019141825
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】18152368.9
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520269008
【氏名又は名称】フェストアルピーネ オートモーティヴ コンポーネンツ デッティンゲン ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】voestalpine Automotive Components Dettingen GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Daimlerstrasse 29, 72581 Dettingen an der Erms, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン ランクスヴァイアト
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ナン
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-220904(JP,A)
【文献】特開昭57-128906(JP,A)
【文献】特開2004-248423(JP,A)
【文献】特開2002-307636(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159926(WO,A1)
【文献】特開昭52-137610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/02
H02K 15/02
H01F 41/02
H01F 27/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄板部材(2,2.1,2.2)同士を結合して積層鉄心(3,30)を形成する方法であって、当該方法では、
少なくとも一方の平面(6,7)を活性化可能な接着層(8,9)、特に溶融接着ラッカ層によりコーティングされた電磁鋼板(5)に切抜き部(22.1,22.2)を打ち抜き、
前記電磁鋼板(5)から、打ち抜いた前記切抜き部(22.1,22.2)を有する複数の金属薄板部材(2,2.1,2.2)を打ち抜きかつ
打ち抜いた前記金属薄板部材(2,2.1,2.2)を積層しかつ接着して積層鉄心(3,30)を形成し、このとき
前記金属薄板部材(2,2.1,2.2)を打ち抜く前に、前記電磁鋼板(5)を第1の部分領域(5.1)においてエンボス加工し、これにより、前記電磁鋼板(5)の一方の平面(6,7)上に突出した複数のスペーサ(20)を形成し、
前記第1の部分領域(5.1)から第1の金属薄板部材(2.1)を打ち抜き、該第1の金属薄板部材(2.1)の打抜き後の積層時に、前記第1の金属薄板部材(2.1)の前記スペーサ(20)により、前記第1の金属薄板部材(2.1)から第2の金属薄板部材(2.2)を離隔し、これにより、積層されかつ接着された前記金属薄板部材(2,2.1,2.2)の、前記積層鉄心(3,30)の状態での解離を容易にする、方法において、
前記電磁鋼板(5)において前記第1の部分領域(5.1)と第2の部分領域(5.2)とに、第1の切抜き部(22.1)を等しく打ち抜き、
前記第2の部分領域(5.2)に、前記スペーサ(20)の数に相応して、該スペーサ(20)を受容するように形成された追加的な第2の切抜き部(22.2)を打ち抜き、かつ
前記第1の金属薄板部材(2.1)の前記スペーサ(20)が前記第2の金属薄板部材(2.2)に当接したときに、前記第2の切抜き部(22.2)が前記スペーサ(20)に対してずらされて配置されているように、前記第2の部分領域(5.2)から打ち抜かれた前記第2の金属薄板部材(2.2)を、前記第1の金属薄板部材(2.1)の前または後に積層することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記電磁鋼板(5)において、前記第2の部分領域(5.2)は前記第1の部分領域(5.1)の直前または直後に位置している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2の切抜き部(22.2)は、前記スペーサ(20)に対して相補的に形成されている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の金属薄板部材(2.1)と前記第2の金属薄板部材(2.2)とが積層された状態で、前記第2の切抜き部(22.2)は前記スペーサ(20)に対して角度をずらされて配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
角度をずらすために、積層された前記金属薄板部材(2,2.1,2.2)を回動させる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記電磁鋼板(5)に、所定数の前記第2の部分領域(5.2)を連続して設け、これにより、積層された前記金属薄板部材(2,2.1,2.2)において前記第2の切抜き部(22.2)は、前記第1の金属薄板部材(2.1)の前記スペーサ(20)を完全に受容するように形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記電磁鋼板(5)に、連続して最大3つの前記第2の部分領域(5.2)を設ける、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記スペーサ(20)を、その幅(b)において少なくとも前記接着層(8,9)のコーティング高さ(hk)にわたり、特に少なくとも前記電磁鋼板(5)の金属薄板厚さ(d)にわたりエンボス加工する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記スペーサ(20)の前記幅(b)は、少なくとも1mm、特に少なくとも1.5mmである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記スペーサ(20)の前記幅(b)は、前記電磁鋼板(5)の前記金属薄板厚さ(d)の最大で5倍である、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記スペーサ(20)を、その高さ(h)において少なくとも前記接着層(8,9)のコーティング高さ(hk)にわたり、特に少なくとも前記接着層(8,9)の前記コーティング高さ(hk)の2倍にわたりエンボス加工する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記スペーサ(20)の前記高さ(h)は、最大で前記電磁鋼板(5)の金属薄板厚さ(d)の3倍であり、特に前記電磁鋼板(5)の前記金属薄板厚さ(d)に等しい、請求項11記載の方法。
【請求項13】
連続する2つの前記スペーサ(20)の間の横方向の間隔(A)は、少なくとも前記スペーサ(20)の最小幅(b)に等しい、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記スペーサ(20)は、横断面で見て台形、半円形または矩形の輪郭を有している、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
積層された前記金属薄板部材(2,2.1,2.2)を、前記接着層(8,9)の特に熱的な活性化により接着して複数の前記積層鉄心(3,30)を形成する、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記第1の金属薄板部材(2.1)を打ち抜く前に、前記スペーサ(20)の頭部(20.1)を切断する、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の金属薄板部材を結合する方法に関する。
【0002】
背景技術
連続打抜き工具の積層装置を出る各積層鉄心を互いに解離もしくは分離することができるようにするためには、請求項1の上位概念に記載の従来技術から、各積層鉄心の端部側の金属薄板部材において一方の平面に、複数の突出したスペーサを設けることが公知である(国際公開第2017159926号)。これらのスペーサは、打ち抜かれた複数の切抜き部を有する端部側の金属薄板部材を打ち抜く前に、第1の部分領域においてエンボス加工により形成される。このような突出したスペーサにより、積層装置内の各金属薄板部材もしくは各積層鉄心の間の接触面が減少し、このことは、接着層の活性化後の各積層鉄心の間の材料結合式の結合もしくは接着結合の強度を弱める。この従来技術のスペーサは、確かに積層鉄心同士の解離もしくは分離を容易にはするが、積層鉄心の用途を制限することになる。これはとりわけ、このようなスペーサが、コンポーネントにおける導磁性材料の量を減少させるからである。このことは、このような積層鉄心を複数組み合わせて1つのコンポーネントを形成する場合には、特に重要である。
【0003】
この理由から国際公開第20160035959号は、電磁鋼板の、分離後も各積層鉄心の金属薄板部材に属す部分領域だけに接着剤を付与することを提案している。異なる積層鉄心の金属薄板部材の間に接着剤を付与することは省かれ、これにより、積層装置内での積層鉄心同士の接着が回避される。不都合にもこのことは、この方法の再現性に関して、例えば電磁鋼板から剥離した接着剤による連続打抜き工具の機能妨害を回避するために、比較的手間がかかる制御/調整を必要とする。
【0004】
発明の説明
したがって本発明の課題は、複数の金属薄板部材を結合して、1つの積層鉄心を形成する方法を提供することにある。この積層鉄心は、簡単な取扱いの点において優れているが、それでもなお、当該方法により製造された積層鉄心がその用途を制限することはない。
【0005】
本発明はこの課題を、請求項1記載の特徴により解決する。
【0006】
電磁鋼板において第1の部分領域と第2の部分領域とに、第1の切抜き部を等しく打ち抜き、第2の部分領域に、スペーサの数に相応して、スペーサを受容するように形成された追加的な第2の切抜き部を打ち抜くと、積層鉄心を、場合により所望される、別の積層鉄心のスペーサの受容のために準備することができる。つまり本発明による積層鉄心は、それぞれ端部側で対向して位置するスペーサまたは第2の切抜き部を有している。これにより、複数の積層鉄心を組み合わせて1つのコンポーネントを形成する際にスペーサが積層鉄心同士を必ずしも離隔させるわけではない、ということが達成され得、これにより、端部側のスペーサを備えたこのような積層鉄心の用途の制限を考慮せずに済む。好適には、このためにスペーサは同一に形成されている。このことは、当該方法の適用を大幅に容易にすることができる。
【0007】
第2の金属薄板部材に切抜き部が形成されているにもかかわらず、第1の金属薄板部材に形成されたスペーサが、積層鉄心の状態に積層されかつ接着された各金属薄板部材の解離をさらに容易にすることができるようにするためには、第1の金属薄板部材のスペーサが前記第2の金属薄板部材に当接したときに、第2の切抜き部が前記スペーサに対してずらされて配置されているように、第2の部分領域から打ち抜かれた第2の金属薄板部材を、第1の金属薄板部材の前または後に積層する。これにより例えば、第1の金属薄板部材と第2の金属薄板部材との全面的な接着が回避され得るもしくはこれにより、これらの積層鉄心の間に弱められた結合が生じることになる。つまり、積層鉄心自体は密にパッキングされかつその金属薄板部材同士は全面的に、つまり特に互いに固定的に結合される。
【0008】
したがって本発明による方法は、提供する積層鉄心の比較的多面的な用途に対して追加的に、高い再現性をも有していてよい。
【0009】
当該方法における制御/調整手間は、電磁鋼板において第2の部分領域が第1の部分領域の直前または直後に位置していると、大幅に減少され得る。例えばこれにより、打抜き工具、例えば連続打抜き工具をタイミング制御する特別な手段を省くことができ、このことは当該方法の再現性を大幅に高めることができる。
【0010】
好適には、第2の切抜き部はスペーサに対して相補的に形成されており、このことは、特にこれにより切抜き部およびスペーサの形成に同じ装置を使用することができるため、形成に関する方法手間を減少させる。
【0011】
第1の金属薄板部材と第2の金属薄板部材とが積層され、第2の切抜き部がスペーサに対して角度をずらされて配置されていると、金属薄板部材が積層されるときに、切抜き部内へのスペーサの侵入を確実に阻止することができる。これにより、当該方法の再現性を大幅に高めることができる。
【0012】
当該方法の適用は、前記角度をずらすために、積み重ねられた金属薄板部材が回動させられると、-上述した利点の保持に基づき-容易になり得る。さらにこの回動に基づき、装置における構造的な単純化を生ぜしめることができる。なぜならば、例えばスペーサと切抜き部とが同じ装置により形成され得るからである。よって切抜き部用の装置は相応して-スペーサの形成に比べ-より深く電磁鋼板内へ押し込まれてよい。さらに、スペーサおよび切抜き部を形成するために唯一の装置を使用することにより、当該方法の確実性もしくは当該方法の再現性を大幅に高めることができる。
【0013】
電磁鋼板に、所定数の第2の部分領域が連続して設けられており、これにより、積層された金属薄板部材において第2の切抜き部が、第1の金属薄板部材のスペーサを完全に受容するように形成されていると、当該方法はスペーサの所与の高さに応じて機能を拡張することができる。
【0014】
例えば、電磁鋼板に連続して最大3つの第2の部分領域が設けられると、一方の積層鉄心のスペーサを他方の積層鉄心の切抜き部において完全に受容するために十分であってよい。
【0015】
スペーサがその幅において少なくとも接着層のコーティング高さ(hk)にわたりエンボス加工されると、積層鉄心の磁気パラメータに関する損失を少なく保つことができる。好適には、スペーサはその幅において少なくとも電磁鋼板の金属薄板厚さにわたりエンボス加工され、これにより、機械的に負荷可能な分離部材を提供することができる、もしくは積み重ねられた積層鉄心同士を、間隔を開けて固定的に保持することができる。このことは、当該方法の再現性を大幅に改良することができる。
【0016】
スペーサの幅が少なくとも1mmであると、これにより分離部材の十分な機械的負荷容量をもたらすことができる。これは特に、スペーサの幅が少なくとも1.5mmである場合である。
【0017】
さらに、スペーサの幅が、電磁鋼板の金属薄板厚さの最大で5倍であると十分である、ということが判明してよい。
【0018】
スペーサがその高さにおいて少なくとも接着層のコーティング高さにわたりエンボス加工されると、積層鉄心同士の解離を再現可能に行うことができる。これにより、例えば接着剤コーティングと、端部側の金属薄板部材との間に十分な間隔が保証され得る。
【0019】
スペーサの高さが少なくとも接着層のコーティング高さの2倍であると、積層鉄心同士の分離をさらに容易にすることができる。これは、電磁鋼板が両面側を接着層によりコーティングされている場合にも当てはまる。
【0020】
好適には、スペーサの高さは最大で電磁鋼板の金属薄板厚さの3倍であり、これにより、高い積層密度において十分な間隔をもたらすことができるようになっている。スペーサの高さは、電磁鋼板の金属薄板厚さに等しければ十分である、ということが判明してよい。
【0021】
連続する2つのスペーサの間の横方向の間隔が少なくともこれらのスペーサの最小幅に等しいと、分離部材の機械的な剛性を支援しかつ分離部材の安定性を大幅に高めることができる。このようにして、当該方法の再現性が追加的に改良される。
【0022】
スペーサが、横断面で見て台形、半円形または矩形の輪郭を有していると、積層鉄心同士の解離もしくは分離が大幅に容易にされ得る。この場合、例えば隣接し合う積層鉄心における損失を確実に回避するためには、半円形の輪郭が特に優れていてよい。このようにして、当該方法の再現性が大幅に向上され得る。
【0023】
積層された金属薄板部材が、接着層の活性化により接着されて複数の積層鉄心を形成すると、これにより、各金属薄板部材の間に特に負荷可能な材料結合式の結合ひいては固定的な積層鉄心を生ぜしめることができるが、それにもかかわらずこれらの積層鉄心は、分離部材により再現可能に互いに解離可能である。接着層の、特に熱的な活性化は、比較的簡単に適用可能である。接着層を、活性剤、促進剤等を用いて化学的に活性化することも考えられる。
【0024】
第1の金属薄板部材を打ち抜く前にスペーサの頭部を切断すると、スペーサの接着傾向に対する影響を減じることができ、これにより、積層鉄心の状態での分離を大幅に容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の対象を、複数の実施形態に基づき例示的に図示する。
図1】積層鉄心製造装置を示す概略図である。
図2】第1の実施形態による第1の金属薄板部材を打ち抜く前の、図1に示した最後の打抜き段を示す部分拡大図である。
図3】本発明による方法により製造された、第2の実施例による積層鉄心を示す図である。
【0026】
発明を実施する方法
図1に示す実施例により、本発明による方法を実施するための装置1を略示する。この装置1は、打ち抜いた複数の金属薄板部材2,2.1,2.2を積層して積層鉄心3,30を形成するために用いられる。このためにはコイル4から電磁鋼板5が繰り出され、電磁鋼板5はその一方または両方の平面6,7に、全面的な接着層8,9(図2に図示)、つまり熱硬化型の溶融接着層を有している。
【0027】
両面側に接着剤がコーティングされた電磁鋼板5から、1つの打抜き工具11により複数の金属薄板部材2,2.1,2.2が打ち抜かれる。このような打抜きは-一般的に言うと-切抜き、切取り、切離し、切落とし、押圧による切分け等であってよい。
【0028】
図1からさらに看取されるように、打抜き工具11、例えばここでは連続打抜き工具は、その上工具11.1と下工具11.2とが協働することで、1回の切断を複数回の行程11.3でもって実施する。電磁鋼板5は、打抜き用に上工具11.1の第1の刃12により前加工され、その後、上工具11.1の第2の刃13により電磁鋼板5から金属薄板部材2が打ち抜かれるもしくは打ち抜かれて個別化される。このような打抜きは-例示的に言うと-切抜き、切取り、切離し、切落とし、押圧による切分け等であってよい。
【0029】
刃12,13は、下工具11.2の各ダイ14,15と協働し、これにより打抜き工具11において2つの打抜き段16,17を形成している。
【0030】
このような連続打抜きは、電磁鋼板5を金属薄板部材2,2.1,2.2の打抜き用に準備するために、前加工に際して電磁鋼板5から部材18を切断する、ということが、図1において認められる。部材18を打ち抜いたことにより、電磁鋼板5には全ての金属薄板部材2,2.1,2.2のための複数の切抜き部、つまり第1の切抜き部22.1が形成される。これらの、各積層鉄心3に引き続き存在している第1の切抜き部22.1は、例えば磁石ポケットとしてまたはシャフト軸等を受容するために用いられるか、または例えば積層鉄心における磁気抵抗を増大させるために設けられる。
【0031】
その後、打抜き段17により金属薄板部材2,2.1,2.2が打ち抜かれ、上工具11の押圧力により積層装置19内へ押し退けられるか、もしくはそこに積層させられる。このために積層装置19は、下工具11.2内にガイドを有している。ガイド内には、対応ホルダ10(詳細には図示せず)も設けられている。対応ホルダ10は各金属薄板部材2に保持力を加え、これにより各金属薄板部材2は、上工具11.1の押圧力と、各金属薄板部材2の間に存在する接着層8,9とに基づき物理的に結合する。積層装置19は、接着剤を活性化させると共に、各金属薄板部材2の間に接着結合部もしくは材料結合式の結合部を形成するために能動的に加熱され得る(詳細には図示せず)。
【0032】
積層装置19を出て行く各積層鉄心3を互いにより容易に分離することができるようにするために、電磁鋼板5は金属薄板部材2の打抜き前に、第1の部分領域5.1の第1の平面7に、複数の突出した、同一に形成されたスペーサ20がエンボス加工されることにより準備される。これにより-例えば図2において認められるように-前記第1の部分領域5.1から複数の金属薄板部材2のうちの第1の金属薄板部材2.1を打ち抜いた後に積層させられかつ接着された各金属薄板部材2,2.1,2.2を、積層鉄心3の状態で解離させることが可能である。つまり、スペーサ20により接着層8,9の接触面が減少し、これにより、積層装置19を出た後の各積層鉄心3同士の解離もしくは分離が大幅に容易になる。第1の部分領域5.1のこの準備は、電磁鋼板5をエンボス加工する、ポンチ21.1と、ポンチ21.1と協働するダイ21.2とを備えた装置21により行われる。ポンチ21.1は、上工具11.1においてリニアガイド13.1に沿って前進・後退移動可能であり、電磁鋼板5を準備するために必要に応じて使用され得る。
【0033】
本発明により、この装置21は電磁鋼板5を、特に本実施例では第1の部分領域5.1のすぐ前の第2の部分領域5.2においても準備する(図1参照)。このためにはポンチ21.1が電磁鋼板5に、より深く侵入するだけに過ぎない。この第2の部分領域5.2では、第1の切抜き部22.1に対する第1の部分領域5.1のスペーサ20の数に相応して、第2の切抜き部22.2が打ち抜かれる。これらの切抜き部22.2は、第1の切抜き部22.1に対して追加的なものであり、電磁鋼板5の第1および第2の部分領域5.1,5.2において等しく打ち抜かれている。本実施例では、前記第1の切抜き部22.1は、打ち抜かれた全ての金属薄板部材2,2.1,2.2に等しく存在している。
【0034】
前記第2の切抜き部22.2は、スペーサ20を受容するために形成されている。これにより、積層装置19内の、第2の部分領域5.2から打ち抜かれた第2の金属薄板部材2.2に基づき認められるように、スペーサ20は各切抜き部22.2に遊びをもって整合することができる。好適には、これらの第2の切抜き部22.2は、スペーサ20に対して相補的に形成されている。
【0035】
ただし、スペーサ20および第2の切抜き部22.2が、積層されかつ互いに接着された金属薄板部材2,2.1,2.2の、積層鉄心3の状態での解離を妨げることはない。つまり、対応ホルダ10が積層させられた金属薄板部材2,2.1,2.2を回動方向10.1に動かすかもしくは回動させてから、各第1の金属薄板部材2.1が、積層装置19内に既に設けられた第2の金属薄板部材2.2上に設けられる。これにより、第2の金属薄板部材2.2の第2の切抜き部22.2が、第1の金属薄板部材2.1の、第2の金属薄板部材2.2に当接するスペーサ20に対して角度をずらされて配置されることになる、ということが保証される。
【0036】
確かにこれにより、積層鉄心3は一方の端部3.1に、突出したスペーサを備えた各1つの第1の金属薄板部材2.1を有しているが、反対側の端部3.2にも、第2の金属薄板部材2.2に形成された第2の切抜き部22.2を有していることになる。よってこれらの金属薄板部材は、別の積層鉄心3のスペーサを-所望されている限りは-受容することができ、このようにして各金属薄板部材2,2.1,2.2の間の間隔を回避することができるようになっている。したがって本発明による積層鉄心3は、スペーサ20にもかかわらず、あらゆる用途に適している、つまりとりわけ可変に使用可能である。
【0037】
スペーサ20.1,20.2は、横断面で見て半円形の輪郭を有しており、電磁鋼板5もしくは第1の金属薄板部材2.1の平面7の球セグメントの形状で突出している。金属薄板部材2,2.2の表面を傷付けないためには、球セグメントの形状がとりわけ有利である、ということが判っている。これに相応して、相補的な第2の切抜き部22.2は円形の孔として形成されている。
【0038】
スペーサ20は、幅bおよび高さhを有している、もしくはスペーサ20は幅bおよび高さhを有するように、エンボス加工により形成される。前記高さhに基づき、例えば接着剤コーティングと、端部側の金属薄板部材2との間に十分な間隔が保証され得る。幅bに基づき、金属薄板部材2,2.1,2.2の積層に際して、スペーサ20の十分な機械的負荷容量をもたらすことができる。相並んで位置する各スペーサ20の間の間隔Aは少なくとも、これらのスペーサ20の最小幅bに相当する。
【0039】
電磁鋼板5は、例えば0.1~1mm、つまり0.7mmの金属薄板厚さを有している。接着層8,9の層高さhkは、2~4μmである。スペーサ20が1.5mmの幅bおよび0.7mmの高さhを有していると、方法技術的に簡単な、積層鉄心3の分離が達成される。
【0040】
図3には、別の実施例による別の積層鉄心30が示されている。
【0041】
この場合、スペーサ20の高さhはほぼ、金属薄板厚さdの2倍に相当する。これに相応して、電磁鋼板5には第2の切抜き部22.2を備えた3つの第2の部分領域5.2が連続的に設けられており、これにより積層鉄心30には、第1の金属薄板部材2.1のスペーサ20を完全に受容するように形成された、互いに接続し合う切抜き部22.2が設けられている。
【0042】
よって電磁鋼板5には、所定数の第2の部分領域5.2が連続して設けられており、これにより、積層された金属薄板部材2,2.1,2.2において第2の切抜き部22.2が、第1の金属薄板部材2.1のスペーサ20を完全に受容するように形成されている。
【0043】
さらに図2では、第1の金属薄板部材2.1の打抜き前に、全てのスペーサ20は切断された頭部20.1を有している、ということが認められる。このことは例えば、スペーサ20のエンボス加工前、加工中または加工後に電磁鋼板5を穿孔することにより実施される。好適には、スペーサ20はその頭部20.1の切断のために穿孔される。
【0044】
これにより、関係するスペーサ20における活性化可能な接着層8,9を-例えば方法技術的に簡単に剥離させて-減少させることができ、このことは、積層鉄心3の分離を大幅に容易にする。
図1
図2
図3