(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】セラミックヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/74 20060101AFI20231011BHJP
H05B 3/18 20060101ALI20231011BHJP
H05B 3/02 20060101ALI20231011BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20231011BHJP
H05B 3/28 20060101ALI20231011BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H05B3/74
H05B3/18
H05B3/02 B
H05B3/20 328
H05B3/28
H01L21/02 Z
(21)【出願番号】P 2021020056
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 征樹
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 祐司
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-76580(JP,A)
【文献】特開2003-133195(JP,A)
【文献】特開平11-121385(JP,A)
【文献】特開2015-18704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00~3/86
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基体の内周側領域に埋設された内周側抵抗発熱体と前記セラミック基体の外周側領域に埋設された外周側抵抗発熱体とを備えたセラミックヒータであって、
前記セラミック基体の中央領域に設けられ、前記外周側抵抗発熱体に給電する外周側給電端子と、
前記外周側抵抗発熱体と前記外周側給電端子とを接続し、前記内周側抵抗発熱体が設けられた平面及び前記外周側抵抗発熱体が設けられた平面とは別のジャンパ埋設面に埋設された金属メッシュ製のジャンパと、
を備え、
前記ジャンパは、前記ジャンパ埋設面上の金属メッシュ円板を複数に分割したメッシュ電極よりなる
ものであり、
前記ジャンパと前記外周側抵抗発熱体とは、金属製の接続部材を介して接続され、前記接続部材の形状は、前記ジャンパに接する面の面積が前記外周側抵抗発熱体に接する面の面積よりも大きい形状である、
セラミックヒータ。
【請求項2】
前記ジャンパと前記外周側抵抗発熱体とは、金属メッシュ製の接続部材を介して接続されている、
請求項1に記載のセラミックヒータ。
【請求項3】
前記内周側領域は、前記セラミック基体と同心円状の円形領域であり、
前記外周側領域は、前記円形領域の外側の環状領域であり、
前記外周側抵抗発熱体は、前記環状領域を複数に分割した分割領域のそれぞれに設けられているか、又は、前記環状領域に1つ設けられ、
前記ジャンパは、前記外周側抵抗発熱体のそれぞれに対して対をなすように設けられている、
請求項1
又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項4】
前記メッシュ電極同士の間隔は、3mm以上5mm以下である、
請求項1~
3のいずれか1項に記載のセラミックヒータ。
【請求項5】
前記メッシュ電極の外縁は、前記外周側抵抗発熱体の最外縁よりも内側にあり、前記メッシュ電極は、前記外周側抵抗発熱体と2mm以上オーバーラップしている、
請求項1~
4のいずれか1項に記載のセラミックヒータ。
【請求項6】
前記分割したメッシュ電極の少なくとも1つは、前記内周側抵抗発熱体と前記外周側抵抗発熱体と電気的に接続されていないダミージャンパである
請求項1~
5のいずれか1項に記載のセラミックヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内周側抵抗発熱体と外周側抵抗発熱体とがセラミック基体の同一の平面に存在しているセラミックヒータが知られている。例えば、特許文献1には、こうしたセラミックヒータにおいて、外周側抵抗発熱体の一端は、セラミック基体の別の平面に設けられて内周側抵抗発熱体と立体交差する第1の導電面を介して一対の外周側給電端子の一方に接続され、外周側抵抗発熱体の他端は、セラミック基体の別の平面に設けられて内周側抵抗発熱体と立体交差する第2の導電面を介して一対の外周側給電端子の他方に接続されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第1及び第2導電面は面で構成されているため、セラミックヒータの製造時や使用時にクラックが発生するおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、内周側抵抗発熱体と外周側抵抗発熱体とがセラミック基体の同一の平面に存在するセラミックヒータにおいて、製造時や使用時にセラミック基体にクラックが発生するのを防止することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセラミックヒータは、
セラミック基体の内周側領域に埋設された内周側抵抗発熱体と前記セラミック基体の外周側領域に埋設された外周側抵抗発熱体とを備えたセラミックヒータであって、
前記セラミック基体の中央領域に設けられ、前記外周側抵抗発熱体に給電する外周側給電端子と、
前記外周側抵抗発熱体と前記外周側給電端子とを接続し、前記内周側抵抗発熱体が設けられた平面及び前記外周側抵抗発熱体が設けられた平面とは別のジャンパ埋設面に埋設された金属メッシュ製のジャンパと、
を備え、
前記ジャンパは、前記ジャンパ埋設面上の金属メッシュ円板を複数に分割したメッシュ電極よりなる、
ものである。
【0007】
このセラミックヒータでは、ジャンパが金属メッシュ製であるため、ジャンパが一様な金属面である場合と比べるとセラミック基体の伸縮に合わせてジャンパも伸縮し易い。また、ジャンパのメッシュの隙間にセラミックが入り込むため、ジャンパが一様な金属面である場合と比べるとジャンパの熱膨張係数がセラミック基体に近くなる。ジャンパは、ジャンパ埋設面上の金属メッシュ円板を複数に分割したメッシュ電極よりなるため、ジャンパ埋設面はメッシュ電極によってほぼ覆われる。こうしたことから、セラミックヒータの製造時や使用時にセラミックヒータを加熱したり冷却したりしたとしても、セラミック基体にクラックが発生し難くなる。
【0008】
本発明のセラミックヒータは、前記ジャンパと前記外周側抵抗発熱体とは、金属製の接続部材を介して接続されていてもよく、前記接続部材の形状は、前記ジャンパに接する面の面積が前記外周側抵抗発熱体に接する面の面積よりも大きい形状であってもよい。こうすれば、このセラミックヒータの製法において、セラミック基体(又はその前駆体)に埋め込まれた接続部材のうちジャンパに接続されている面とは反対側の面を研削加工により露出させる工程が含まれていたとしても、その工程で接続部材がセラミック基体(又はその前駆体)から抜けるのを防止することができる。すなわち、こうした研削加工中に接続部材に負荷が加わったとしても、接続部材の側面が、周囲のセラミック基体(又はその前駆体)に引っかかるため、抜け難くなる。この場合、この前記接続部材は金属メッシュが多段に積み重ねられて形成された部材としてもよい。
【0009】
本発明のセラミックヒータは、前記ジャンパと前記外周側抵抗発熱体とは、金属メッシュ製の接続部材を介して接続されていてもよい。こうすれば、セラミックヒータの製造時及び使用時に接続部材は金属メッシュ製のため伸縮しやすく、メッシュの隙間にセラミックが入り込むため熱膨張係数がセラミック基体に近くなる。そのため、セラミック基体にクラックが発生し難くなる。
【0010】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記内周側領域は、前記セラミック基体と同心円状の円形領域であってもよく、前記外周側領域は、前記円形領域の外側の環状領域であってもよく、前記外周側抵抗発熱体は、前記環状領域を複数に分割した分割領域のそれぞれに設けられているか、又は、前記環状領域に1つ設けられていてもよく、前記ジャンパは、前記外周側抵抗発熱体のそれぞれに対して対をなすように設けられていてもよい。この場合、前記外周側領域は前記環状領域を同心円に分割してもよいし、前記環状領域を半径方向の線分で分割してもよいし、前記環状領域を同心円に分割すると共に半径方向の線分でも分割してもよい。
【0011】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記メッシュ電極同士の間隔は、3mm以上5mm以下であってもよい。この間隔が3mm以上であれば、お互いのメッシュ電極の絶縁を十分確保することができるため好ましい。この間隔が5mm以下であれば、メッシュ電極が存在しない領域が小さくなりクラック防止の点で有利になるため好ましい。
【0012】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記メッシュ電極の外縁は、前記外周側抵抗発熱体の最外縁よりも内側にあってもよく、前記メッシュ電極は、前記外周側抵抗発熱体と2mm以上オーバーラップしていてもよい。こうすれば、接続部材による外周側抵抗発熱体とメッシュ電極との電気的接続を確保しやすくなる。また、3mm以上オーバーラップさせれば、接続部分の面積が大きくなるため、接続部分での発熱を抑制することができる。
【0013】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記分割したメッシュ電極の少なくとも1つは、前記内周側抵抗発熱体と前記外周側抵抗発熱体と電気的に接続されていないダミージャンパであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】セラミックヒータ10の製造方法を示す説明図。
【
図6】セラミックヒータ10の使用状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、セラミックヒータ10の平面図、
図2は
図1のA-A断面図、
図3は、
図2のB-B断面図、
図4は、
図2のC-C断面図である。なお、
図3及び
図4では、セラミック基体11のハッチングを省略した。また、本明細書で「上」「下」は絶対的な位置関係を表すものではなく、相対的な位置関係を表すものである。そのため、セラミックヒータ10の向きによって「上」「下」は「下」「上」になったり「左」「右」になったり「前」「後」になったりする。
【0016】
セラミックヒータ10は、セラミック基体11と、静電電極12と、内周側抵抗発熱体15と、外周側抵抗発熱体19とを備えている。
【0017】
セラミック基体11は、セラミック(例えばアルミナセラミックや窒化アルミセラミック)で作製された円盤状の部材である。このセラミック基体11の上面は、ウエハWを載置するウエハ載置面11aであり、セラミック基体11の下面は、冷却板30(
図6参照)と接合する冷却板接合面11bである。
【0018】
静電電極12は、金属メッシュ製の円形部材である。この静電電極12には、図示しない給電端子が電気的に接続されている。給電端子は、静電電極12の下面からセラミック基体11を経たあと電気的に絶縁された状態で冷却板30(
図6参照)を通って下方に延び出している。セラミック基体11のうち静電電極12よりウエハ載置面11aの部分は、誘電体層として機能する。
【0019】
内周側抵抗発熱体15は、セラミック基体11の内周側領域Zinに埋設されている。ここで、内周側領域Zinは、
図3中、第1境界B1の内側の円形領域のことをいう。第1境界B1は、セラミック基体11と同心円であり、その直径はセラミック基体11の直径よりも小さい。この内周側抵抗発熱体15は、一端15aから他端15bまでを一筆書きの要領で内周側領域Zinの全域に行き渡るように配線されている。また、内周側抵抗発熱体15の一端15aと他端15bは、それぞれ一方の内周側給電端子25aと他方の内周側給電端子25bに接続されている。一対の内周側給電端子25a,25bは、セラミック基体11の冷却板接合面11bから外部へ露出している。一対の内周側給電端子25a,25bへ電力を供給すると、内周側抵抗発熱体15に電流が流れて内周側抵抗発熱体15が発熱する。
【0020】
外周側抵抗発熱体19は、セラミック基体11の外周側領域Zoutに埋設されている。ここで、外周側領域Zoutは、
図3中、第1境界B1よりも外側の環状領域である。具体的には、外周側領域Zoutは、第1境界B1よりも外側で第2境界B2よりも内側の環状領域を第1分割領域Zout1、第2境界B2よりも外側で第3境界B3よりも内側の環状領域を第2分割領域Zout2、第3境界B3よりも外側の環状領域を第3分割領域Zout3としたとき、第1~第3分割領域Zout1~Zout3を合わせた環状領域である。第2境界B2は、セラミック基体11と同心円であり、その直径はセラミック基体11の直径よりも小さく第1境界B1の直径よりも大きい。第3境界B3は、セラミック基体11と同心円であり、その直径はセラミック基体11の直径よりも小さく第2境界B2の直径よりも大きい。外周側抵抗発熱体19は、第1分割領域Zout1に設けられた第1外周側抵抗発熱体16、第2分割領域Zout2に設けられた第2外周側抵抗発熱体17及び第3分割領域Zout3に設けられた第3外周側抵抗発熱体18を備える。第1外周側抵抗発熱体16は、一端16aから他端16bまでを一筆書きの要領で第1分割領域Zout1の全域に行き渡るように、且つ、内周側抵抗発熱体15と同一の平面P1上に配線されている。第2外周側抵抗発熱体17は、一端17aから他端17bまでを一筆書きの要領で第2分割領域Zout2の全域に行き渡るように、且つ、平面P1上に配線されている。第3外周側抵抗発熱体18は、一端18aから他端18bまでを一筆書きの要領で第3分割領域Zout3の全域に行き渡るように、且つ、平面P1上に配線されている。
【0021】
第1外周側抵抗発熱体16の一端16aと他端16bとは、
図3に示すように、それぞれセラミック基体11の厚み方向に延びる一方の接続部材16cと他方の接続部材16dに接続されている。接続部材16c,16dは、
図3では第1外周側抵抗発熱体16から紙面上向きに設けられ、
図4ではジャンパ36a,36bから紙面下向きに設けられている。
図2に、他方の接続部材16dを示した。また、一対の第1外周側給電端子26a,26bは、内周側領域Zinの中央領域にてセラミック基体11の厚み方向に延びる形状に設けられ、下端がセラミック基体11の冷却板接合面11bから外部へ露出している。
図2に、第1外周側給電端子26bを示した。一方のジャンパ36a及び他方のジャンパ36bは、内周側抵抗発熱体15と立体交差するように、平面P1とは別のジャンパ埋設面P2にそれぞれ独立して埋設されている。
図2には、ジャンパ36bを示した。ジャンパ36a,36bは、Moなどの金属メッシュ製であり、平面視したときに、セラミック基体11の外周円の半径を持つ中心角45°の扇形よりも僅かに小さい形状である。ジャンパ埋設面P2は、平面P1とウエハ載置面11aとの間に位置している。そして、第1外周側抵抗発熱体16の一端16aは、一方の接続部材16c及び一方のジャンパ36aを介して第1外周側給電端子26aに接続され、第1外周側抵抗発熱体16の他端16bは、他方の接続部材16d及び他方のジャンパ36bを介して第1外周側給電端子26bに接続されている。このため、一対の第1外周側給電端子26a,26bへ電力を供給すると、第1外周側抵抗発熱体16に電流が流れて第1外周側抵抗発熱体16が発熱する。
【0022】
第2外周側抵抗発熱体17の一端17aと他端17bとは、
図3に示すように、それぞれセラミック基体11の厚み方向に延びる一方の接続部材17cと他方の接続部材17dに接続されている。接続部材17c,17dは、
図3では第2外周側抵抗発熱体17から紙面上向きに設けられ、
図4ではジャンパ37a,37bから紙面下向きに設けられている。また、一対の第2外周側給電端子27a,27bは、内周側領域Zinの中央領域にてセラミック基体11の厚み方向に延びる形状に設けられ、下端がセラミック基体11の冷却板接合面11bから外部へ露出している。一方のジャンパ37a及び他方のジャンパ37bは、内周側抵抗発熱体15と立体交差するように、ジャンパ埋設面P2にそれぞれ独立して埋設されている。ジャンパ37a,37bは、Moなどの金属メッシュ製であり、ジャンパ36a,36bと同形状である。そして、第2外周側抵抗発熱体17の一端17aは、一方の接続部材17c及び一方のジャンパ37aを介して第2外周側給電端子27aに接続され、第2外周側抵抗発熱体17の他端17bは、他方の接続部材17d及び他方のジャンパ37bを介して第2外周側給電端子27bに接続されている。このため、一対の第2外周側給電端子27a,27bへ電力を供給すると、第2外周側抵抗発熱体17に電流が流れて第2外周側抵抗発熱体17が発熱する。
【0023】
第3外周側抵抗発熱体18の一端18aと他端18bとは、
図3に示すように、それぞれセラミック基体11の厚み方向に延びる一方の接続部材18cと他方の接続部材18dに接続されている。接続部材18c,18dは、
図3では第3外周側抵抗発熱体18から紙面上向きに設けられ、
図4ではジャンパ38a,38bから紙面下向きに設けられている。
図2に、一方の接続部材18cを示した。また、一対の第3外周側給電端子28a,28bは、内周側領域Zinの中央領域にてセラミック基体11の厚み方向に延びる形状に設けられ、下端がセラミック基体11の冷却板接合面11bから外部へ露出している。
図2に、第3外周側給電端子28aを示した。一方のジャンパ38a及び他方のジャンパ38bは、内周側抵抗発熱体15と立体交差するように、ジャンパ埋設面P2にそれぞれ独立して埋設されている。
図2には、ジャンパ38aを示した。ジャンパ38a,38bは、Moなどの金属メッシュ製であり、ジャンパ36a,36bと同形状である。そして、第3外周側抵抗発熱体18の一端18aは、一方の接続部材18c及び一方のジャンパ38aを介して第3外周側給電端子28aに接続され、第3外周側抵抗発熱体18の他端18bは、他方の接続部材18d及び他方のジャンパ38bを介して第3外周側給電端子28bに接続されている。このため、一対の第3外周側給電端子28a,28bへ電力を供給すると、第3外周側抵抗発熱体18に電流が流れて第3外周側抵抗発熱体18が発熱する。
【0024】
内周側抵抗発熱体15及び第1~第3外周側抵抗発熱体16~18は、コイル形状、リボン形状又はメッシュ形状であり、例えばW,Mo,Ti,Si,Niの単体又は化合物(炭化物など)を主成分とする材料、それらを組み合わせた材料、あるいはそれらとセラミック基体11の原料との混合材料などによって作製される。
【0025】
ジャンパ36a,36b,37a,37b,38a,38bは、ジャンパ埋設面P2のほぼ全面を覆う金属メッシュ円板を複数に分割したメッシュ電極よりなる。本実施形態では、金属メッシュ円板は、半径方向の線分によって8つの扇形のメッシュ電極に等分されている。隣合うメッシュ電極の間隔は、3mm以上5mm以下であることが好ましい。分割された8つのメッシュ電極のうち、6つがジャンパ36a,36b,37a,37b,38a,38bであり、残りの2つがダミージャンパ23a,23bである。ダミージャンパ23a,23bは、ジャンパと同じ材質であり、内周側抵抗発熱体15とも外周側抵抗発熱体19とも電気的に接続されていない独立した電極となっている。各メッシュ電極の外縁は、外周側抵抗発熱体19の最外縁(つまり第3外周抵抗発熱体18の外縁)よりも僅かに内側にあることが好ましい。その場合、各メッシュ電極は、第3外周側抵抗発熱体18と2mm以上オーバーラップしていることが好ましい。
【0026】
図2の拡大図に示した接続部材18cは、ジャンパ38aと接する面の面積が第3外周側抵抗発熱体18に接する面の面積よりも大きい形状である。接続部材18cの形状は、接続部材18cをジャンパ埋設面P2に平行な面で切断した時の断面積が、ジャンパ38aから第3外周側抵抗発熱体18に近づくにつれて小さくなる形状、例えば、ジャンパ38a側の面に比べて第3外周側抵抗発熱体18側の面が小さい円錐台形状であることが好ましい。接続部材18cは、例えば、炭化タングステンにルテニウム合金(例えば、RuAl)を添加した混合材料などによって作製されるバルク体(塊状体)である。接続部材16c,16d,17c,17d,18dも接続部材18cと同じ材料、同じ形状である。
【0027】
次に、セラミックヒータ10の製造方法の一例を説明する。
図5は、セラミックヒータ10の製造方法の一例を示す説明図である。
図5(a)~(f)は、
図2と同様の切断面で切断したときの断面図であるため、各部材の一部が見えているに過ぎない。
【0028】
まず、
図5(a)に示すように、2つの主面51a,51bを有し、同一平面にジャンパ36a,36b,37a,37b,38a,38b及びダミージャンパ23a,23bを埋設し、各ジャンパ36a,36b,37a,37b,38a,38bに各接続部材16c,16d,17c,17d,18c,18dを接触させた状態で埋設した円盤状のセラミック成形体51を作製する。セラミック成形体51は、例えば、モールドキャスト法により作製される。ここで、「モールドキャスト法」とは、セラミック原料粉末とモールド化剤とを含むセラミックスラリーを成形型内に注入し、その成形型内でモールド化剤を化学反応させてセラミックスラリーをモールド化させることにより成形体を得る方法をいう。モールド化剤としては、例えば、イソシアネート及びポリオールを含み、ウレタン反応によりモールド化するものとしてもよい。
【0029】
続いて、
図5(b)に示すように、セラミック成形体51を、厚み方向に圧力を加えながらホットプレス焼成し、2つの主面41a,41bを有する円盤状のセラミック焼成体41を作製する。続いて、
図5(c)に示すように、各接続部材16c,16d,17c,17d,18c,18dのうち、各ジャンパ36a,36b,37a,37b,38a,38bに接続されている面とは反対側の面が露出するように、セラミック焼成体41の主面41aを研削加工し、セラミック焼成体41に研削面41cを形成する。こうした研削加工中に接続部材16c,16d,17c,17d,18c,18dに負荷が加わったとしても、接続部材16c,16d,17c,17d,18c,18dの側面が、周囲のセラミック焼成体41(セラミック基体11の前駆体)に引っかかるため、抜け難い。
【0030】
続いて、
図5(d)に示すように、セラミック焼成体41の研削面41cに内周側抵抗発熱体15及び第1~第3外周側抵抗発熱体16~18を、スクリーン印刷等により形成する。
【0031】
続いて、
図5(e)に示すように、セラミック成形体62の上面に静電電極12を配置し、その上にセラミック焼成体41を抵抗発熱体15~18が形成された面が上になるように配置し、その上にセラミック成形体61を配置することにより、積層体65を作製する。セラミック成形体61,62は、例えば、モールドキャスト法により作成される。
【0032】
続いて、
図5(f)に示すように、積層体65を、厚み方向に圧力を加えながらホットプレス焼成し、セラミック基体11を作製する。そして、セラミック基体11に、適宜穴を設けて各給電端子を取り付けることにより、セラミックヒータ10を得る。
【0033】
次に、セラミックヒータ10の使用方法の一例について説明する。
図6は、セラミックヒータ10の使用状態を示す説明図である。まず、セラミックヒータ10の冷却板接合面11b側に冷却板30を取り付ける。冷却板接合面11bと冷却板30とは、接着剤を介して接着されていてもよいし、ろう接合剤を介して接合されていてもよいし、Oリング(外径がセラミック基体11の直径よりやや小さい)を介して取り付けられ、Oリング内の密閉空間に伝熱ガスが充填されていてもよい。冷却板30の内部には、冷媒を通過させる冷媒通路30aが形成されている。冷媒通路30aには、チラーユニット70を接続する。チラーユニット70は、冷媒通路30aに冷媒を循環させるユニットである。冷却板30のうち内周側給電端子25a,25bや第1~第3外周側給電端子26a,26b、27a,27b、28a,28bと対向する位置には、それぞれ貫通孔30bが厚さ方向に貫通するように設けられている。これらの貫通孔30bを介して、内周側給電端子25a,25b及び第1~第3外周側給電端子26a,26b、27a,27b、28a,28bとヒータ電源80とを接続する。ヒータ電源80は、内周側抵抗発熱体15及び第1~第3外周側抵抗発熱体16~18のそれぞれに独立して電力を供給可能となっている。次いで、冷却板30の下面にパイプ状の支持台60を取り付ける。その後、冷却板30及び支持台60を取り付けたセラミックヒータ10のウエハ載置面11aにウエハWを載置し、チャンバ66の内部に配置する。この状態で、チャンバ66の内部空間を真空にする。なお、支持台60の内部空間は大気に通じている。次いで、静電電極12とウエハWとの間に電圧を印加することによりウエハWを静電気的な力によってセラミック基体11に吸着する。そして、ヒータ電源80から内周側抵抗発熱体15及び第1~第3外周側抵抗発熱体16~18のそれぞれに個別に電力を供給すると共に、チラーユニット70から冷媒通路30aへ冷媒を循環する。ウエハWの温度は、内周側抵抗発熱体15及び第1~第3外周側抵抗発熱体16~18によって加熱されると共に冷却板30によって温度が上がり過ぎないように調整されるため、所定の温度に維持することができる。
【0034】
以上詳述した本実施形態のセラミックヒータ10によれば、ジャンパ36a,36b,37a,37b,38a,38bが金属メッシュ製であるため、ジャンパが一様な金属面である場合と比べるとセラミック基体11の伸縮に合わせてジャンパ36a,36b,37a,37b,38a,38bも伸縮し易い。また、ジャンパ36a,36b,37a,37b,38a,38bのメッシュの隙間にセラミックが入り込むため、ジャンパが一様な金属面である場合と比べるとジャンパの熱膨張係数がセラミック基体11に近くなる。ジャンパ36a,36b,37a,37b,38a,38bは、ジャンパ埋設面P2上の金属メッシュ円板を複数に分割したメッシュ電極よりなるため、ジャンパ埋設面P2はメッシュ電極によってほぼ覆われる。こうしたことから、セラミックヒータ10の製造時や使用時にセラミックヒータ10を加熱したり冷却したりしたとしても、セラミック基体11にクラックが発生し難くなる。
【0035】
また、
図2に示すように、接続部材16dの形状は、ジャンパ36bに接する面の面積が第1外周側抵抗発熱体16の他端16bに接する面の面積よりも大きい形状であり、接続部材18cの形状は、ジャンパ38aに接する面の面積が第3外周側抵抗発熱体18の一端18aに接する面の面積よりも大きい形状である。そのため、このセラミックヒータ10の製法において、セラミック焼成体41に埋め込まれた接続部材16d,18cのうち、ジャンパ36b,38aに接続されている面とは反対側の面を研削加工により露出させる工程でも、その工程で接続部材16d,18cがセラミック焼成体41から抜けるのを防止することができる。すなわち、こうした研削加工中に接続部材16d,18cに負荷が加わったとしても、接続部材16d,の側面が、周囲のセラミック焼成体41に引っかかるため、抜け難くなる。この点は、接続部材16c,17c,17d,18dも同様である。
【0036】
更に、ジャンパ埋設面P2のほぼ全面がジャンパ36a,36b,37a,37b,38a,38b及びダミージャンパ23a,23bによってほぼ覆われているため、そのジャンパ埋設面P2を垂直方向に熱が伝導するときの熱伝導率がほぼ同じになる。したがって、均熱性が向上する。
【0037】
更にまた、ジャンパ36a,36b,37a,37b,38a,38bを構成するメッシュ電極同士の間隔は、3mm以上5mm以下であることが好ましい。この間隔が3mm以上であれば、お互いのメッシュ電極の絶縁を十分確保することができるため好ましい。この間隔が5mm以下であれば、メッシュ電極が存在しない領域が小さくなりクラック防止の点で有利になるため好ましい。
【0038】
そしてまた、ジャンパ38a,38bを構成するメッシュ電極は、第3外周側抵抗発熱体18と2mm以上オーバーラップしていることが好ましい。こうすれば、接続部材18c,18dによるジャンパ38a,38bと第3外周側抵抗発熱体18との電気的接続を確保しやすくなる。また、3mm以上オーバーラップさせれば、接続部分の面積が大きくなるため、接続部分での発熱を抑制することができる。この点は、ジャンパ36a,36bと第1外周側抵抗発熱体16、ジャンパ37a,37bと第2外周側抵抗発熱体17においても同様である。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、一対(2つ)のダミージャンパ23a,23b(中心角約45°の扇形形状)を備えていたが、ダミージャンパの数は2つに限定されない。例えば、
図7に示すセラミックヒータ110のように、平面視したときに、1つのダミージャンパ123(中心角約90°の扇形形状)が設けられていてもよい。このダミージャンパ123は、ダミージャンパ23a,23bの間をなくして一体にした形状である。あるいは、ダミージャンパ123を3つ以上に分割してもよい。なお、
図7は、セラミックヒータ110のセラミック基体11を、ジャンパ36a,36b等を通る水平面で切断したときの断面を上から見たときの断面図である。また、
図7において、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して、説明を省略する。
【0041】
上述した実施形態では、ジャンパ埋設面P2にダミージャンパ23a,23bが設けられていたが、例えば、
図8に示すセラミックヒータ210のように、ダミージャンパが設けられていなくてもよい。
図8は、セラミックヒータ210のセラミック基体11を、ジャンパ236a,236b等を通る水平面で切断したときの断面を上から見たときの断面図である。また、
図8において、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して、説明を省略する。この場合、ジャンパ236a,236b,237a,237b,238a,238bは、ジャンパ埋設面P2のほぼ全面を覆う金属メッシュ円板をジャンパ総数(ここでは6)に分割したメッシュ電極よりなる。
【0042】
上述した実施形態では、外周側領域Zoutは、第1~第3分割領域Zout1~Zout3に分割されていたがこれに限定されない。例えば、外周側領域Zoutは、2つの分割領域に分割されていてもよいし、4つ以上の分割領域に分割されていてもよい。その場合、外周側抵抗発熱体を分割領域ごとに設け、1つの外周側抵抗発熱体に1組のジャンパ組を対応するように設ければよい。また、外周側領域Zoutを分割しなくてもよい。その場合、外周側領域Zoutに1つの外周側抵抗発熱体を設け、その外周側抵抗発熱体に1組のジャンパ組を対応するように設ければよい。
【0043】
上述した実施形態では、接続部材16c,16d,17c,17d,18c,18dとしてバルク体(塊状体)を用いたがこれに限定されない。例えば、接続部材18cの代わりに、
図9に示すように、互いに直径の異なる複数枚(ここでは6枚)の金属メッシュM1~M6が、ジャンパ埋設面P2側から直径の大きい順に積層されて形成された接続部材118cを用いてもよい。
図9において、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。他の接続部材16c,16d,17c,17d,18dも接続部材118cと同じ構造としてもよい。また、
図10に示すように、互いに直径が等しい円状の金属メッシュM7を多段(ここでは、6段)に積層して形成した接続部材218cを用いてもよい。
図10において、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。他の接続部材16c,16d,17c,17d,18dも接続部材218cと同じ構造としてもよい。このような接続部材118c,218cを採用すれば、セラミックヒータの製造時及び使用時に接続部材118c,218cは金属メッシュ製のため伸縮しやすく、メッシュの隙間にセラミックが入り込むため熱膨張係数がセラミック基体11に近くなる。また、接続部材118c,218cの周囲をメッシュでギザギザになるようにすればセラミック基体11に対してアンカーになる。
【0044】
上述した実施形態において、セラミック基体11に静電電極12、内周側抵抗発熱体15及び外周側抵抗発熱体19のほかにRF電極を埋設してもよい。RF電極は、プラズマを発生する際に利用する電極である。あるいは、静電電極12を埋設しなくてもよい。
【0045】
上述した実施形態では、内周側抵抗発熱体15及び第1~第3外周側抵抗発熱体16~18は同一の平面P1に埋設されていたがこれに限定されない。例えば、内周側抵抗発熱体15及び第1~第3外周側抵抗発熱体16~18は、異なる平面に埋設されていてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、ジャンパ36a,36b,37a,37b,38a,38bはジャンパ埋設面P2のほぼ全面を覆う金属メッシュ円板を等分に分割したメッシュ電極としたが、特にこれに限定されない。例えば、ジャンパ36a,36b,37a,37b,38a,38bは金属メッシュ円板を不等分に分割したメッシュ電極としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10,110,210 セラミックヒータ、11 セラミック基体、11a ウエハ載置面、11b 冷却板接合面、12 静電電極、15 内周側抵抗発熱体、15a,16a,17a,18a 一端、15b,16b,17b,18b 他端、16 第1外周側抵抗発熱体、16c,16d,17c,17d,18c,18d,118c,218c 接続部材、17 第2外周側抵抗発熱体、18 第3外周側抵抗発熱体、19 外周側抵抗発熱体、23a,23b,123 ダミージャンパ、25a,25b 内周側給電端子、26a,26b 第1外周側給電端子、27a,27b 第2外周側給電端子、28a,28b 第3外周側給電端子、30 冷却板、30a 冷媒通路、30b 貫通孔、36a,36b,37a,37b,38a,38b,236a,236b,237a,237b,238a,238b ジャンパ、41 セラミック焼成体、41a,41b,51a,51b 主面、41c 研削面、51,61,62 セラミック成形体、60 支持台、65 積層体、66 チャンバ、70 チラーユニット、80 ヒータ電源、B1 第1境界,B2 第2境界,B3 第3境界、M1,M2,M3,M4,M5,M6,M7 金属メッシュ、P1 平面、P2 ジャンパ埋設面、W ウエハ、Zin 内周側領域、Zout 外周側領域、Zout1 第1分割領域、Zout2 第2分割領域、Zout3 第3分割領域。