(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】カバー帆布の接合方法
(51)【国際特許分類】
B29D 29/10 20060101AFI20231011BHJP
F16G 1/08 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B29D29/10
F16G1/08 Z
(21)【出願番号】P 2021036054
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2020044080
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【氏名又は名称】松岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】小谷 紳二
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-100444(JP,A)
【文献】特開昭61-263736(JP,A)
【文献】特開2016-087885(JP,A)
【文献】特開2019-188773(JP,A)
【文献】中国実用新案第204278567(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0121567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 29/10
F16G 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動プーリを含む複数のプーリ間を走行中のベルト輪状体にカバー帆布を被覆するカバーリング処理において
、繰り出された前記カバー帆布における長手方向の先端部と
繰り出された当該カバー帆布が切断されることで形成された当該カバー帆布の長手方向における後端部とを所定の上下限値の範囲内で重ね合わせて接合するためのカバー帆布の接合方法であって、
前記複数のプーリ間を走行中の前記ベルト輪状体に対して前記カバー帆布が押し付けられて前記ベルト輪状体への前記カバー帆布の接触が開始される所定の押付位置から、前記ベルト輪状体の外周面上において前記先端部と前記後端部とを所定の重ね代で重ね合わせ可能な重合位置よりも周回方向と反対方向の所定の基準位置へと前記先端部を移動させるために要すると推定される前記駆動プーリの回転量である推定所要回転量を導出する導出ステップと、
前記先端部が前記所定の押付位置を通過した時点から前記駆動プーリが前記推定所要回転量を回転した時点での前記ベルト輪状体の外周面上における前記先端部の位置である先端部位置を検出するとともに、前記先端部位置から前記所定の基準位置までの前記ベルト輪状体の外周面に沿った距離である第1の距離を検出する検出ステップと、
前記第1の距離に基づいて、前記先端部位置から前記重合位置までの前記ベルト輪状体の外周面に沿った距離である第2の距離を算出する算出ステップと、
前記駆動プーリが前記推定所要回転量を回転した時点から前記第2の距離に対応する回転量を回転した時点で前記駆動プーリを停止させる停止ステップと、
前記カバー帆布の帆布供給経路上における所定の切断位置で前記カバー帆布を切断するとともに、前記先端部と前記カバー帆布の切断により形成された前記後端部とを、前記所定の切断位置に基づき設定された前記重合位置で重ね合わせて接合する接合ステップと、
を有することを特徴とする、カバー帆布の接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカバー帆布の接合方法において、
前記検出ステップに先立って、前記先端部が前記所定の押付位置を通過した時点から前記駆動プーリが前記推定所要回転量を回転した時点で前記駆動プーリの回転を一時停止させる一時停止ステップ、をさらに有し、
前記検出ステップにおいては、前記駆動プーリの一時停止に伴って一時停止した前記ベルト輪状体の外周面上における前記先端部の一時停止位置が、前記先端部位置として検出されることを特徴とする、カバー帆布の接合方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のカバー帆布の接合方法において、
前記重合位置は、前記所定の切断位置と前記所定の押付位置との前記帆布供給経路に沿った距離から前記所定の重ね代を減じた距離を、前記ベルト輪状体の外周面上に沿って前記所定の押付位置から周回方向と反対方向に遡った位置に設けられることを特徴とする、カバー帆布の接合方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のカバー帆布の接合方法において、
前記検出ステップにおいては、前記所定の基準位置を撮影領域に含むビジョンセンサによって取得された画像データに基づいて前記ベルト輪状体の外周面上における前記先端部が検出されて、前記第1の距離が検出されることを特徴とする、カバー帆布の接合方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のカバー帆布の接合方法において、
前記所定の基準位置は、前記複数のプーリ間を走行中の前記ベルト輪状体の周回であって前記所定の押付位置を起点とする周回における後半部分に設けられていることを特徴とする、カバー帆布の接合方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のカバー帆布の接合方法において、
前記導出ステップにおいては、前記ベルト輪状体に関して予め定められた周長と前記駆動プーリの周長とに基づいて、前記推定所要回転量が導出されることを特徴とする、カバー帆布の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト輪状体にカバー帆布を被覆させるカバーリング処理に関して、カバー帆布における長手方向の両端部を所定の上下限値の範囲内で重ね合わせて接合するためのカバー帆布の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動力を伝達するための伝動ベルトとしては、耐縦亀裂性を確保するためにその表面がカバー帆布で被覆されたラップドVベルトがある。ラップドVベルトは、例えば次述のようにして形成される(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
具体的には、まず、ベルト輪状体が複数のプーリ間に巻き掛けられ、複数のプーリ間を走行中のベルト輪状体に対して、ベルト輪状体の角部を切除するスカイブ処理が施される。そして、スカイブ処理が施されたベルト輪状体の表面にカバー帆布を巻き付けてベルト輪状体をカバー帆布で被覆するカバーリング処理が行われる。これにより、その表面がカバー帆布で被覆されたベルト成形体が成形される。そして、このベルト成形体に対して加硫処理が施されることにより、弾性を有するラップドVベルトが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-87885号公報
【文献】特開2019-188773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2に記載されているように、カバーリング処理では、カバー帆布が帆布繰出部から繰り出されて所定の切断位置で切断された後、カバー帆布の長手方向における先端部(巻き始め部分)と後端部(巻き終わり部分)とが重ね合わされて接合される。カバー帆布の長手方向の両端部における接合部分は、「成形継目」と称される。
【0006】
優れたベルト性能を確保するために、この成形継目は、カバー帆布において所定の上下限値の範囲(以下、所定の上下限範囲、とも称する)内の重ね代で形成されることが要求される。例えば、成形継目が所定の上下限範囲の下限値を下回る重ね代で形成された場合、耐縦亀裂性等のベルト特性を確保できなくなる虞がある。また、成形継目が所定の上下限範囲の上限値を上回る重ね代で形成された場合、屈曲性等のベルト特性が他の部分と大幅に異なることとなり、ベルト品質上好ましくない。これらの事情により、カバー帆布において所定の上下限範囲内の重ね代で成形継目が形成されることが要求される。
【0007】
ここで、各種伝動ベルトのベルト長さに対して同じ比率のばらつきが生じたとしても、そのベルト長さ(長手方向の長さ)が長いほど、カバーリング処理等の成形工程に供されるベルト輪状体において、ベルト長さの基準値に対する許容範囲(すなわち、許容されるベルト長さのばらつき)は大きくなる。特に、ラップドVベルトのベルト長さは、他の種類の伝動ベルトよりも比較的長いため、成形工程に供されるベルト輪状体においてベルト長さの基準値に対する許容範囲が比較的大きい。
【0008】
しかしながら、例えば特許文献1,2に記載されている従来のベルト成形体の成形方法では、カバーリング処理において、ベルト種別ごとに予め定められた長さ(巻き付け長さ)のカバー帆布がベルト輪状体に常に被覆される。その結果、カバーリング処理が施されるベルト輪状体のベルト長さのばらつきが大きい場合には、カバー帆布の成形継目が所定の上下限範囲内の重ね代で形成されない虞がある。特に、この問題は、ベルト長さが比較的長い種別の伝動ベルト(例えば、ラップドVベルト)、すなわち、カバーリング処理が施されるベルト輪状体のベルト長さが比較的長い場合に生じ易い。そのため、例えば特許文献1,2に記載されている従来のベルト成形体の成形方法では、成形するベルト成形体の種別を比較的短尺なもの(例えば、60~75インチのベルト長さのベルト成形体)に限定せざるを得なかった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、ベルト種別に依らず、カバー帆布において所定の上下限値の範囲内の重ね代の成形継目をより確実に形成できる、カバー帆布の接合方法を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するため、本発明のある局面に係るカバー帆布の接合方法は、駆動プーリを含む複数のプーリ間を走行中のベルト輪状体にカバー帆布を被覆するカバーリング処理において前記カバー帆布における長手方向の先端部と後端部とを所定の上下限値の範囲内で重ね合わせて接合するためのカバー帆布の接合方法であって、前記複数のプーリ間を走行中の前記ベルト輪状体に対して前記カバー帆布が押し付けられて前記ベルト輪状体への前記カバー帆布の接触が開始される所定の押付位置から、前記ベルト輪状体の外周面上において前記先端部と前記後端部とを所定の重ね代で重ね合わせ可能な重合位置よりも周回方向と反対方向の所定の基準位置へと前記先端部を移動させるために要すると推定される前記駆動プーリの回転量である推定所要回転量を導出する導出ステップと、前記先端部が前記所定の押付位置を通過した時点から前記駆動プーリが前記推定所要回転量を回転した時点での前記ベルト輪状体の外周面上における前記先端部の位置である先端部位置を検出するとともに、前記先端部位置から前記所定の基準位置までの前記ベルト輪状体の外周面に沿った距離である第1の距離を検出する検出ステップと、前記第1の距離に基づいて、前記先端部位置から前記重合位置までの前記ベルト輪状体の外周面に沿った距離である第2の距離を算出する算出ステップと、前記駆動プーリが前記推定所要回転量を回転した時点から前記第2の距離に対応する回転量を回転した時点で前記駆動プーリを停止させる停止ステップと、前記カバー帆布の帆布供給経路上における所定の切断位置で前記カバー帆布を切断するとともに、前記先端部と前記カバー帆布の切断により形成された前記後端部とを、前記所定の切断位置に基づき設定された前記重合位置で重ね合わせて接合する接合ステップと、を有する。
【0011】
この構成によると、駆動プーリが推定所要回転量を回転した時点でのカバー帆布の先端部位置から、重合位置よりも周回方向と反対方向の所定の基準位置までの第1の距離が検出される。そして、当該第1の距離に基づいて、当該先端部位置から重合位置までの第2の距離が算出され、駆動プーリが、当該第2の距離に対応する回転量を回転して停止する。すなわち、ベルト輪状体のベルト長さにばらつきがある場合であっても、カバー帆布の先端部が重合位置へと到達する前に、そのばらつきに応じてカバー帆布の巻き付け長さが調整される。そのため、例えばベルト長さのばらつきが比較的大きい種別のベルト輪状体に対してカバーリング処理が施される場合であっても、カバー帆布における成形継目を所定の上下限値の範囲内の重ね代で形成することができる。従って、ベルト種別に依らず、カバー帆布において所定の上下限値の範囲内の重ね代の成形継目をより確実に形成できる、カバー帆布の接合方法を提供することができる。
【0012】
(2)好ましくは、前記検出ステップに先立って、前記先端部が前記所定の押付位置を通過した時点から前記駆動プーリが前記推定所要回転量を回転した時点で前記駆動プーリの回転を一時停止させる一時停止ステップ、をさらに有し、前記検出ステップにおいては、前記駆動プーリの一時停止に伴って一時停止した前記ベルト輪状体の外周面上における前記先端部の一時停止位置が、前記先端部位置として検出される。
【0013】
この構成によると、ベルト輪状体の外周面上におけるカバー帆布の先端部の位置が、駆動プーリの回転が一時停止された状態、すなわち、カバー帆布の移動が一時停止された状態で検出される。従って、カバー帆布の先端部の位置をより正確に検出することができる。
【0014】
(3)好ましくは、前記重合位置は、前記所定の切断位置と前記所定の押付位置との前記帆布供給経路に沿った距離から前記所定の重ね代を減じた距離を、前記ベルト輪状体の外周面上に沿って前記所定の押付位置から周回方向と反対方向に遡った位置に設けられる。
【0015】
この構成によると、帆布供給経路上における所定の切断位置で切断されて形成された後端部と所定の押付位置との帆布供給経路に沿った距離が、所定の押付位置から重合位置までのベルト輪状体の外周面上に沿った距離に対して所定の重ね代を加えた距離となる。そのため、帆布供給経路上における所定の切断位置で切断されて形成された後端部をそのまま先端部に重ね合わせるだけで、後端部と重合位置との距離が所定の重ね代となり、カバー帆布において所定の上下限値の範囲内に収まる成形継目が形成される。従って、カバー帆布の両端部を所定の重ね代で精度よく重ね合わせることができるとともに、所定の上下限値の範囲内の重ね代の成形継目を容易に形成できる。
【0016】
(4)好ましくは、前記検出ステップにおいては、前記所定の基準位置を撮影領域に含むビジョンセンサによって取得された画像データに基づいて前記ベルト輪状体の外周面上における前記先端部が検出されて、前記第1の距離が検出される。
【0017】
この構成によると、ベルト輪状体の種別によってその厚みが変化した場合であっても、ベルト輪状体の外周面上におけるカバー帆布の先端部を容易に検出できる。
【0018】
例えば、レーザセンサによって、ベルト輪状体の外周面上におけるカバー帆布の先端部を検出する構成も考えられる。具体的には、ベルト輪状体の外周面に向かって発射されたレーザの反射波を受信し、レーザの発射から受信までの時間に基づいて距離を算出することによって、カバー帆布の先端部を検出すること、も考えられる。ただし、レーザセンサによって取得されるデータは一次元データ(対象物までの距離データ)である。この場合、ベルト輪状体の厚みが変化した場合にカバー帆布の先端部を検出できるようにするためには、対象物までの基準距離の変化点を検出するための複雑な演算プログラムを要する。
【0019】
これに対して、ビジョンセンサによって取得される画像データは、2次元データである。そのため、ベルト輪状体の厚みが変化した場合、すなわち、対象物までの基準距離が変化した場合であっても、複雑な演算プログラムを要することなく、カバー帆布の先端部を検出できる。
【0020】
従って、上記の構成によると、カバー帆布の先端部を容易に検出することができる。
【0021】
(5)好ましくは、前記所定の基準位置は、前記複数のプーリ間を走行中の前記ベルト輪状体の周回であって前記所定の押付位置を起点とする周回における後半部分に設けられている。
【0022】
この構成によると、所定の基準位置が複数のプーリ間を走行中のベルト輪状体の周回における前半部分に設けられる場合と比較して、ベルト輪状体に巻き付けるカバー帆布の巻き付け長さを調整する区間が短くなる。従って、カバー帆布の巻き付け長さの調整精度を確保することができる。
【0023】
(6)好ましくは、前記導出ステップにおいては、前記ベルト輪状体に関して予め定められた周長と前記駆動プーリの周長とに基づいて、前記推定所要回転量が導出される。
【0024】
この構成によると、カバーリング処理が施されるベルト輪状体の種別に応じてより正確な推定所要回転量を導出することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、ベルト種別に依らず、カバー帆布において所定の上下限値の範囲内の重ね代の成形継目をより確実に形成できる、カバー帆布の接合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカバー帆布の接合方法を実現するためのベルト成形体の成形装置を模式的に示す図である。
【
図2】ベルト輪状体の形状を説明するための図であって、(A)はベルト輪状体の外形図、(B)は(A)のIB-IB線における断面図である。
【
図3】ベルト成形体の形状を説明するための図であって、(A)はベルト成形体の外形図、(B)は(A)のIIB-IIB線における断面図である。
【
図4】カバーリング処理の構成を説明するための模式図である。
【
図5】ビジョンセンサと照明部と一対のプーリ間を走行中のベルト輪状体との位置関係を説明するための模式図である。
【
図6】(A)操作盤のブロック図、(B)制御盤のブロック図である。
【
図7】カバー帆布の接合方法を示すフローチャートである。
【
図8】カバー帆布の巻き付け長さの調整を説明するための模式図である。
【
図9】カバー帆布の先端部位置の所定の基準位置に対するずれ量を説明するための模式図であり、(A)カバーリング処理に際してカバー帆布の先端部を撮影した撮影画像を模式的に示す図、(B)カバー帆布の先端部のモデル画像を模式的に示す図である。
【
図10】カバー帆布の先端部と後端部とが重ね合わされた状態を示す模式図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るカバー帆布の接合方法を採用した場合と、比較例に係るカバー帆布の接合方法を採用した場合とのそれぞれにおける評価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0028】
[ベルト成形体の成形装置の概略構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るカバー帆布の接合方法を実現するためのベルト成形体の成形装置1を模式的に示す図である。成形装置1は、ベルト成形体を成形する装置として構成されている。ベルト成形体は、動力を伝達する伝動ベルト(例えば、ラップドVベルト)を構成する材料として形成されるものであり、当該ベルト成形体に加硫処理を施すことにより、弾力性を有する伝動ベルトが形成される。ベルト成形体は、後述するように、ベルト輪状体に対してカバーリング処理等が施されることにより成形される。
【0029】
以下では、成形装置1の詳細構成について説明する前に、ベルト輪状体及びベルト成形体について順に説明する。
【0030】
[ベルト輪状体]
図2は、ベルト輪状体100の形状を説明するための図であって、
図2(A)は、ベルト輪状体100の外形図であり、
図2(B)は、
図2(A)のIB-IB線における断面図である。
【0031】
ベルト輪状体100は、
図2(B)に示すように、未加硫状態の圧縮ゴム層101と、未加硫状態の伸長ゴム層103と、これらのゴム層101,103に挟まれた心線102と、を有している。ベルト輪状体100は、所定の周長(例えば、60~105インチ)を有する無端ループ状に形成されている。ベルト輪状体100の幅wは、例えば13mm(ミリメートル)程度であり、ベルト輪状体100の厚みtは、例えば8mm程度である。
【0032】
ベルト輪状体100は、例えば、
図2(B)に示されるように、横断面形状(長手方向に垂直な断面の形状)が略矩形状に形成されている。なお、これに限定されず、ベルト輪状体100の横断面形状は、六角形状あるいは台形状等であってもよい。
【0033】
圧縮ゴム層101は、所定の周長を有するループ状のゴム層であって、
図2(B)に示されるように、横断面形状が矩形状に形成されている。圧縮ゴム層101は、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)等を用いて構成される。圧縮ゴム層101は、ベルト輪状体100における内周側のゴム層として設けられている。
【0034】
伸長ゴム層103は、圧縮ゴム層101と概ね同じ長さの周長を有するループ状のゴム層であって、
図2(B)に示されるように、横断面形状が矩形状に形成されている。伸長ゴム層103は、圧縮ゴム層101との間で心線102を挟んだ状態で該圧縮ゴム層101に重ねられた状態となっている。伸長ゴム層103の幅は、圧縮ゴム層101と同等である一方、伸長ゴム層103の厚さは、圧縮ゴム層101よりも薄く形成されている。伸長ゴム層103は、例えば、圧縮ゴム層101と同様に、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)等を用いて構成される。伸長ゴム層103は、ベルト輪状体100における外周側のゴム層として設けられている。
【0035】
心線102は、圧縮ゴム層101と伸長ゴム層103との間で挟まれた状態で保持されている。心線102は、各ゴム層101,103の周長全体に亘って設けられている。心線102は、ゴム層101,103の周方向に沿って(詳細には、周方向に対して螺旋状に)延びるように設けられている。これにより、心線102は、ベルト輪状体100の破断を防止する補強部材として機能する。心線102は、各ゴム層101,103の幅方向に沿って互いに等間隔となるように配列されている。心線102としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維等の線条物が用いられる。なお、
図2(B)の断面視では、心線102の配列数が「8」であるベルト輪状体100が例示されているが、心線102の配列の密度はこの限りでない。また、図示は省略するが、圧縮ゴム層101における心線102側の面、及び伸長ゴム層103における心線102側の面には、接着ゴム層が設けられていてもよい。
【0036】
なお、上述のような構成のベルト輪状体100は、未加硫状態であるため、その表面部分が粘着性を有し且つ弾力性が低い状態となっており、その取扱いが比較的難しい部材である。
【0037】
[ベルト成形体]
図3は、ベルト成形体200の形状を説明するための図であって、
図3(A)は、ベルト成形体200の外形図であり、
図3(B)は、
図3(A)のIIB-IIB線における断面図である。
【0038】
ベルト成形体200は、ベルト輪状体100に対して所定の処理を施すことにより成形される。具体的には、ベルト成形体200は、ベルト輪状体100に対してスカイブ処理及びカバーリング処理を施すことにより成形される。スカイブ処理は、ベルト輪状体100における圧縮ゴム層101の角部101a(
図2(B)参照)を切除する処理である。カバーリング処理は、スカイブ処理が行われたベルト輪状体100に対してカバー帆布150を巻き付けて被覆する処理である。本実施形態に係るベルト成形体200は、下カバー106と上カバー107との2層のカバー帆布150によって構成されている。なお、これに限定されず、1層のカバー帆布150によってベルト成形体200が構成されていてもよい。
【0039】
図3(B)に示されるように、ベルト成形体200は、例えば、横断面形状が略台形状に形成されている。また、ベルト成形体200には、長手方向における1箇所において、切断されたカバー帆布150の長手方向端部同士を接合する接合部分であって、長手方向に対して垂直に延びる接合部分である「成形継目」が設けられている。なお、これに限定されず、成形継目が、例えば、長手方向に対して斜めに延びる接合部分であってもよい。
【0040】
カバー帆布150は、ラップドVベルトなどの伝動ベルトの耐縦亀裂性を確保するために設けられている。カバー帆布150においては、伝動ベルトの屈曲動作に追従するため、ベルト長手方向への伸縮性が求められる。そのため、カバー帆布150としては、例えば、繊維を所定の角度で交差させて織り込んだ織布にゴム引き処理が施されて形成された帆布、所謂バイアス帆布が用いられる。また、カバー帆布150の厚みは、例えば約0.6mmであり、カバー帆布150の幅は、例えば約50mmである。
【0041】
[ベルト成形体の成形装置の詳細構成]
次に、ベルト成形体200の成形装置1の詳細構成について、再び
図1を参照しつつ説明する。成形装置1は、帆布供給機構2、カバーリング処理部3、操作盤4及び制御盤5等を備えている。
【0042】
[帆布供給機構の構成]
帆布供給機構2は、帆布繰出部(図示省略)から帆布供給経路22を介してカバーリング処理部3へとカバー帆布150を供給可能に構成されている。なお、帆布供給経路22は、帆布繰出部からカバーリング処理部3(より詳細には、押付けロール31による押付位置PP)へと複数のロール12に沿ってカバー帆布150を供給する経路として構成されている。
【0043】
なお、以下では、下カバー106と上カバー107との2層のカバー帆布150(
図2(B)参照)のうちの一方のカバー帆布150(詳細には、下カバー106)の帆布供給機構2について説明する。ただし、他方のカバー帆布150(詳細には、上カバー107)の帆布供給機構2についても、同様の構成である。また、
図1においては、下カバー106の帆布供給機構2が示されており、上カバー107の帆布供給機構2は省略されている。さらに、以下では、下カバー106をカバー帆布150と称して説明する。
【0044】
帆布供給機構2は、帆布把持部13、切断装置14、素材継目検出部16及び経路長調整部17等を備えて構成されている。なお、帆布供給経路22の上流側端部には、帆布供給経路22へとカバー帆布150を供給する帆布繰出部(図示省略)が設けられている。
【0045】
帆布把持部13は、帆布供給経路22の下流側(カバー帆布150の移送方向の下流側)においてカバー帆布150を把持可能に構成されている。具体的には、帆布把持部13は、帆布供給経路22の下流側の端部において、カバー帆布150を把持するように構成されている。また、帆布把持部13は、カバーリング処理部3の近傍位置に配置されている。
【0046】
帆布把持部13は、圧力源(図示省略)から供給される圧縮空気で作動して、カバー帆布150を把持する把持動作と、カバー帆布150の把持を開放する開放動作とを切替可能に構成されている。具体的には、帆布把持部13は、圧力源からの圧縮空気の給排に伴って開閉動作を行うクランプ部13aを有している。クランプ部13aには、圧力源からの圧縮空気が給排される小型のエアシリンダ(図示省略)が連結されており、圧縮空気の給排によるエアシリンダの作動に伴って、クランプ部13aの開閉動作が行われる。
【0047】
帆布把持部13は、カバーリング処理部3によるカバーリング処理が開始される際とカバーリング処理が終了した際とにおいて、カバー帆布150を把持するように制御される。具体的には、帆布把持部13は、カバーリング処理部3によるカバーリング処理が行われている間は、カバー帆布150の把持を開放するように制御される。帆布把持部13に対する制御は、例えば、後述する制御盤5に格納された駆動制御部5a(
図6(B)参照)からの指令に基づいて作動し、駆動制御部5aによって動作が制御されるように構成されている。
【0048】
また、帆布把持部13には、帆布把持部13のクランプ部13aの開閉動作を検知する把持部開閉検知器13bが設けられている。把持部開閉検知器13bは、帆布把持部13のクランプ部13aの開閉動作を検知すると、その検知結果を把持部開閉検知信号として制御盤5の駆動制御部5a(
図6(B)参照)に送信するように構成されている。なお、把持部開閉検知器13bは、例えば、エアシリンダに付属しているオートスイッチとして構成されている。
【0049】
また、帆布供給経路22において帆布把持部13の上流側(カバー帆布150の移送方向の上流側)には、帆布把持部13へのカバー帆布150の搬送を円滑に行うためのローラガイド24が設けられている。
【0050】
また、帆布供給機構2には、帆布把持部13の位置を変位させるための帆布把持部変位機構25が備えられている。帆布把持部変位機構25は、制御盤5の駆動制御部5aからの指令に基づいて作動し、カバーリング処理部3における上側プーリ3aに対する帆布把持部13の位置を変位させるように構成されている。
【0051】
切断装置14は、帆布把持部13により把持されたカバー帆布150のカバーリング処理部3側の部分を所定の切断位置(カット位置、とも称される)CPで切断可能に構成されている。切断位置CPは、例えば、一対のプーリ3a,3bのうちの上側プーリ3aの上端部の近傍位置に配置されている。具体的には、
図8に示されるように、切断位置CPは、帆布供給経路22に沿って押付けロール31(後述)の押付位置PPから所定の距離L10をカバー帆布150の移送方向と反対側に遡った位置に設けられている。
【0052】
切断装置14は、カバー帆布150を切断するためのはさみ状のエアカッター(図示省略)を有しており、圧力源から供給される圧縮空気で作動して当該エアカッターを駆動し、カバー帆布150の切断動作を行うように構成されている。
【0053】
また、切断装置14には、カバー帆布150の切断動作の終了を検知する切断検知器14a(
図1参照)が設けられている。切断検知器14aは、切断装置14の切断動作を検知すると、その検知結果を切断検知信号として例えば制御盤5の駆動制御部5aに送信するように構成されている。なお、切断検知器14aは、例えば、切断装置14のエアカッターの動作を検知する近接センサ或いは変位センサを含んで構成されている。
【0054】
[素材継目検出部]
帆布供給経路22に沿って帆布繰出部11からカバーリング処理部3に供給されるカバー帆布150には、素材としてのカバー帆布150を長手方向の所定間隔で重ね合わされて接合された部分である素材継目23が形成されている。素材継目検出部16は、帆布繰出部から繰り出されて搬送されるカバー帆布150における素材継目23を検出するための機構として設けられている。素材継目検出部16が設けられていることにより、品質上問題となる素材継目23がベルト成形体200に含まれないようにすることができる。
【0055】
素材継目検出部16は、段差検出部26と位置検知器27とを備えて構成されている。
【0056】
段差検出部26は、複数の受けロール12の1つであって帆布供給経路22上の所定位置に配置された検出用ロール12c上において当該検出用ロール12c上を通過する素材継目23の厚み方向の段差を検出する機構として構成されている。具体的には、素材継目23は、カバー帆布150において厚み方向に重ね合わされて接合された部分として構成されているため、厚み方向に段差を生じている。段差検出部26は、この段差を検出するように構成されている。また、上記の所定位置は、帆布供給経路22上の所定位置であって素材継目検出部16が素材継目23を検出する素材継目検出位置MPとして設定されている。
【0057】
位置検知器27は、段差検出部26にて段差として検出された素材継目23の帆布供給経路22上の現在位置を追跡可能な検知器として構成されている。より具体的には、位置検知器27は、検出用ロール12cの回転角度を検知するエンコーダとして設けられている。また、位置検知器27は、検出した検出用ロール12cの回転角度の検出信号S27を、例えば、後述する操作盤4の演算制御部4a(
図6(A)参照)へ送信するように構成されている。
【0058】
[経路長調整部]
経路長調整部17は、複数の受けロール12の1つであって帆布供給経路22上に配置された移動ロール12dの位置を移動(変位)させることで、ベルト成形体200の種別毎に、帆布供給経路22の長さを調整可能な機構として設けられている。
【0059】
経路長調整部17においては、或る種別のベルト成形体200のカバーリング処理が開始される際に、例えば制御盤5の駆動制御部5aの制御に基づいて予め移動ロール12dの位置が変更され、帆布供給経路22の長さが調整される。このとき、経路長調整部17においては、カバー帆布150の切断位置CPから素材継目検出位置MPまでの帆布供給経路22に沿った長さが、ベルト輪状体100の1巻き分のカバー帆布150の長さよりも若干長めの所定長さになるように帆布供給経路22が調整される。そして、経路長調整部17においては、このような動作が、生成されるベルト成形体200の種別毎に実行される。
【0060】
[カバーリング処理部の構成]
図4は、カバーリング処理部3の構成を説明するための模式図である。カバーリング処理部3は、スカイブ処理が施された後のベルト輪状体100にカバー帆布150を巻き付けて被覆するカバーリング処理を実行する装置として構成されている。以下、
図1及び
図4を参照しつつ、カバーリング処理部3の構成について説明する。
【0061】
カバーリング処理部3は、複数のプーリを有する走行機構(ベルト輪状体100を走行させる機構)を備えて構成されている。当該複数のプーリは、その回転軸を中心に回転駆動可能に構成された駆動プーリを有している。当該複数のプーリには、ベルト輪状体100が巻き掛けられ、駆動プーリの回転によってベルト輪状体100が複数のプーリ間を走行する。そして、複数のプーリに巻き掛けられた状態のベルト輪状体100に対して、帆布供給機構2から供給されたカバー帆布150が巻き付けられて被覆される。
【0062】
本実施形態では、
図1に示されるように、カバーリング処理部3は、鉛直方向(上下方向)に対向配置された一対のプーリ3a,3bを有しており、一対のプーリ3a,3bのうちの一方のプーリ(例えば、上側プーリ3a)が駆動プーリとして構成されている。なお、ここでは、一対のプーリ3a,3bが鉛直方向に対向配置されているが、これに限定されず、例えば、一対のプーリ3a,3bが水平方向に対向配置されていてもよい。また、複数のプーリとしては、対向配置された一対のプーリに限らず、例えば、3軸以上のプーリであってもよい。
【0063】
駆動プーリ3aは、電動モータ(例えば、サーボモータ)を備える走行機構駆動部3c(
図1参照)に接続されており、当該電動モータの駆動によって回転駆動する。走行機構駆動部3cは、制御盤5の駆動制御部5aからの指令に基づいて作動し、駆動制御部5aによって動作が制御されるように構成されている。また、走行機構駆動部3cには、走行機構駆動部3cの電動モータの回転軸の回転角度を検知する検知器3dが設けられている。検知器3dとしては、例えば、エンコーダが挙げられる。走行機構駆動部3cの電動モータの回転軸の回転角度が検知器3dによって検知されることで、走行機構駆動部3cの伝動モータの回転量、すなわち駆動プーリ3aの回転量(回転数)が制御される。なお、
図1の模式図では、駆動プーリ3aと走行機構駆動部3cとが離間して図示されているが、実際には、駆動プーリ3aと走行機構駆動部3cとは連結されている。
【0064】
図4に示されるように、カバーリング処理部3は、押付けロール31と、キャッチャー部32と、一対の底面側折曲ディスク38とを有している。
【0065】
押付けロール31は、一対のプーリ3a,3bを走行中のベルト輪状体100に対してカバー帆布150を押し付けるためのものである。押付けロール31は、所定の押付位置PP(押付開始位置、とも称される)において駆動プーリ3a側への押圧力をカバー帆布150に対して付与することにより、一対のプーリ3a,3bを走行中のベルト輪状体100の外周面に対してカバー帆布150を押し付ける。これにより、ベルト輪状体100の外周面へのカバー帆布150の接触が開始される。そして、次述の側面側折曲ロール34によってベルト輪状体100の側面にカバー帆布150が被覆されるとともに、背面ローラ35によってベルト輪状体100の内周面にカバー帆布150が被覆される。
【0066】
具体的には、キャッチャー部32は、くせ付けロール33と、側面側折曲ロール34と、背面ローラ35と、を有している。キャッチャー部32では、キャッチャー部32を構成する各構成要素が協働して、カバー帆布150をベルト輪状体100に巻き付ける。
【0067】
くせ付けロール33は、押付けロール31によってベルト輪状体100の外周面に押し付けられたカバー帆布150における幅方向両側の部分を、ベルト輪状体100の側面側へ折り曲げて、くせ付けを行うためのものである。
【0068】
側面側折曲ロール34は、カバー帆布150のうち、くせ付けロール33によってベルト輪状体100の側面側に折り曲げられた部分を、ベルト輪状体100の側面に押し付けるためのものである。また、側面側折曲ロール34は、カバー帆布150の幅方向における外側の部分を、ベルト輪状体100の底面(内周面)側に折り曲げるためのものでもある。
【0069】
背面ローラ35は、カバー帆布150の背面(外周面)をベルト輪状体100側へと押圧可能に構成されている。カバーリング処理に際しては、側面側折曲ロール34によってカバー帆布150の幅方向における両端側の部分がベルト輪状体100の側面に押し付けられる際、カバー帆布150の幅方向における中央部分が背面ローラ35によって押さえられる。これにより、カバー帆布150の巻きシワを効果的に抑制できる。
【0070】
一対の底面側折曲ディスク38は、カバー帆布150のうち、側面側折曲ロール34によってベルト輪状体100の底面側に折り曲げられた部分を、該ベルト輪状体100の底面(内周面)へ押し付けるためのものである。
【0071】
また、カバーリング処理部3は、ベルト輪状体100に対するカバーリング処理が終了してベルト成形体200が成形されると、ベルト成形体200を走行機構(詳細には、一対のプーリ3a,3b)から自動的に取り外すように構成されている。
【0072】
[カバーリング処理部の概略動作]
図4を参照しつつ、カバーリング処理部3の概略動作について説明する。
【0073】
まず、カバーリング処理部3によってカバーリング処理が行われる前の状態では、押付けロール31は、待機位置P1で待機している。そして、カバーリング処理が行われる際には、カバー帆布150の先端部151(言い換えれば、下流側端部)を把持した状態の帆布把持部13が、上側プーリ(駆動プーリ)3aの上端部付近まで移動する。これにより、カバー帆布150の先端部151が、ベルト輪状体100に密着する。
【0074】
その後、押付けロール31が、待機位置P1から押付位置PPまで移動する。これにより、ベルト輪状体100に密着した状態のカバー帆布150の先端部151が、押付けロール31によってベルト輪状体100の外周面に押付けられる。その後、帆布把持部13は、カバー帆布150に対する把持を解除し、後方へ退避する。なお、このとき、キャッチャー部32及び底面側折曲ディスク38は、各々の待機位置からカバーリング処理位置まで移動する。
【0075】
このような状態において、駆動プーリ3aの回転駆動に伴って、カバー帆布150が、帆布供給経路22からベルト輪状体100の周回方向へ向かって順次送り出される。そして、カバー帆布150は、くせ付けロール33によって横断面形状が略U字形状となるようにくせ付けされた後、更に周回方向へと走行し、側面側折曲ロール34、背面ローラ35及び底面側折曲ディスク38によって、ベルト輪状体100に巻き付けられる。
【0076】
そして、後述する巻き付け長さ(巻き付け処理長さ)の調整処理が実行された後、カバー帆布150の先端部151が重合位置LP(次述)に到達すると、上側プーリ3aの回転駆動が停止する。重合位置LPは、カバー帆布150の先端部151と、後述のようにして切断装置14によるカバー帆布150の切断によって形成された後端部152とを所定の重ね代K1で重ね合わせ可能な位置である。この重合位置LPは、所定の切断位置CPに基づき設定されている。具体的には、重合位置LPは、切断位置CPと押付位置PPとの帆布供給経路22に沿った距離L10から所定の重ね代K1を減じた距離L20(
図8及び
図10参照)を、ベルト輪状体100の外周面上に沿って押付位置PPから周回方向と反対方向に遡った位置に設けられることが好ましい。
【0077】
次に、カバー帆布150が帆布把持部13によって把持された後、その把持された部分よりもベルト輪状体100側に設けられた所定の切断位置CPで、切断装置14によってカバー帆布150が切断される。
【0078】
その後、カバー帆布150が切断装置14によって切断されたことによって形成されたカバー帆布150の後端部152(言い換えれば、上流側端部)が、重合位置LP上に停止しているカバー帆布150の先端部151に重ね合わされて接合される。すなわち、カバー帆布150における巻き始め部分(先端部151)と巻き終わり部分(後端部152)とが重ね合わされて接合される。
【0079】
そして、上側プーリ3aが再び回転駆動して、残りのカバー帆布150がベルト輪状体100へ巻き付けられることにより、ベルト輪状体100に対するカバー帆布150の巻き付けが完成する。なお、下カバー106と上カバー107とのいずれにおいても、上記のような動作が実行される。そして、これによりベルト成形体200(
図2参照)が成形される。
【0080】
カバー帆布150の長手方向における両端部151,152の接合部分は、「成形継目」と称される。優れたベルト性能を確保するために、この成形継目は長手方向において所定の上下限値の範囲(以下、所定の上下限範囲、とも称する)内の重ね代で形成されることが要求される。所定の上下限範囲は、成形継目(カバー帆布150の長手方向の両端部の重ね代)の基準値(例えば10mm)から所定値(例えば7mm)を差し引いた下限値と、当該基準値に当該所定値を足した上限値との間の範囲(10±7mm)である。
【0081】
[ビジョンセンサ]
図1に示されるように、カバーリング処理部3は、カメラ等によって構成されたビジョンセンサ40を更に備えている。ビジョンセンサ40は、一対のプーリ3a,3bに巻き掛けられた状態のカバー帆布150の先端部151を撮影して、ベルト輪状体100の外周面上における先端部151の位置である先端部位置XP(
図8参照)を検出するための位置検出器として機能する。また、ビジョンセンサ40は、当該先端部位置XPから所定の基準位置SP(後述)までのベルト輪状体100の外周面に沿った距離である第1の距離L1を検出するための距離検出器としても機能する。なお、
図8は、カバー帆布150の巻き付け長さの調整を説明するための図である。
【0082】
ビジョンセンサ40は、取付部材(図示省略)を介して照明部45(例えば、LED光源)とともに成形装置1に設置されている。詳細には、ビジョンセンサ40は、成形装置1において、その撮影領域A10(
図9(A)参照)に所定の基準位置SPが含まれるように、すなわち、所定の基準位置SPを撮影可能な位置に設置されている。なお、
図9(A)は、カバーリング処理に際してカバー帆布150の先端部151を撮影した撮影画像を模式的に示す図である。撮影領域A10は、矩形状の領域であり、後述する画像処理部4bによる画像処理領域として設定される。
【0083】
図5は、ビジョンセンサ40と照明部45と一対のプーリ3a,3b間を走行中のベルト輪状体100との位置関係を説明するための模式図であり、これらを鉛直方向の上側から見た図である。ビジョンセンサ40は、ベルト輪状体100の外周面(背面)に対向する位置に対してベルト輪状体100の幅方向一方側にずれた位置に配置されている。すなわち、ビジョンセンサ40は、ベルト輪状体100に巻き付けられたカバー帆布150の外周面のみならず、側面をも撮影できる位置に配置されている。照明部45は、ベルト輪状体100の外周面に対向する位置に対してベルト輪状体100の幅方向他方側(ビジョンセンサ40と反対側)にずれた位置に配置されている。
【0084】
また、
図1に示されるように、鉛直方向において、ビジョンセンサ40は、所定の基準位置SPと略同一の位置(高さ)に配置されている一方で、照明部45は、所定の基準位置SPよりも下側に配置されていることが好ましい。すなわち、ビジョンセンサ40と照明部45とは、ビジョンセンサ40による撮影画像においてベルト輪状体100とカバー帆布150の先端部151との段差部分に比較的濃い影が形成されるような位置関係で配置されていることが好ましい。これにより、ビジョンセンサ40によってカバー帆布150の先端部151が撮影された際に、その撮影画像における明暗部分にメリハリを与えることができ、カバー帆布150の先端部151の位置検知性を高めることができる。言い換えれば、カバー帆布150の先端部151の先端部位置XPをより確実に検出できる。
【0085】
ビジョンセンサ40は、メモリ(図示省略)及びインターフェース回路(図示省略)等を備えて構成されている。
【0086】
ビジョンセンサ40に内蔵されたメモリには、ビジョンセンサ40によって予め撮影されたカバー帆布150の先端部151のモデル画像G10(
図9(B)参照)が格納されている。当該モデル画像G10は、カバーリング処理に際してビジョンセンサ40によって撮影された撮影画像の撮影領域A10においてカバー帆布150の先端部151を特定して検出するための特定用画像として格納されている。
【0087】
また、ビジョンセンサ40に内蔵されたメモリには、カバー帆布150の長手方向の両端部の接合、言い換えれば成形継目の形成に関する種々の処理を規定したプログラムが格納されている。例えば、ビジョンセンサ40に内蔵されたメモリには、ビジョンセンサ40による撮影画像に基づいて、カバー帆布150の先端部151の先端部位置XPと所定の基準位置SPとの距離である第1の距離L1を検出するためのプログラムが格納されている。
【0088】
[操作盤及び制御盤について]
図1に示されるように、成形装置1は、操作盤4と制御盤5とを有している。
【0089】
図6(A)は、操作盤4のブロック図である。
図6(A)に示されるように、操作盤4には、演算制御部4aが格納されている。演算制御部4aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)等を含むコンピュータ、またはPLC(Programmable Logic Controller)などを用いて構成されている。
【0090】
演算制御部4aは、画像処理部4bと設定情報記憶部4cとを有している。画像処理部4bは、ビジョンセンサ40のメモリに記憶された所定のプログラムを読み出して実行することが可能に構成されている。設定情報記憶部4cは、メモリ等で構成されている。当該設定情報記憶部4cには、後述する推定所要回転量R10の導出、及びカバー帆布150の先端部151の先端部位置XPから重合位置LPまでの距離(第2の距離L2)の算出等を実行するためのプログラムが格納されている。
【0091】
図6(B)は、制御盤5のブロック図である。
図6(B)に示されるように、制御盤5は、駆動制御部5aを有している。駆動制御部5aは、走行機構駆動部3cの駆動動作等を制御する。
【0092】
[カバー帆布の接合方法]
以上のような構成を備える成形装置1によって実現されるカバー帆布150の接合方法について、
図7~
図10を参照しつつ以下に説明する。
図7は、ベルト成形体200のカバー帆布150の接合方法を示すフローチャートである。
図8は、カバー帆布150の巻き付け長さの調整を説明するための模式図である。
図9は、カバー帆布150の先端部位置XPの所定の基準位置SPに対するずれ量(後述)を説明するための模式図である。
図10は、カバー帆布150の先端部151と後端部152とが重ね合わされた状態を示す模式図である。
【0093】
まず、本実施形態に係るカバー帆布150の接合方法の概略について説明する。
【0094】
ここで、カバー帆布150の先端部151を押付位置PPから重合位置LPへと移動させるための所定の回転量を駆動プーリ3aが回転した時点で当該駆動プーリ3aを停止させること、が考えられる。ただし、上述したようにベルト輪状体100のベルト長さにはばらつきがある。特に、ラップドVベルトのベルト長さは、他の種類の伝動ベルトよりも比較的長いため、その成形工程に供されるベルト輪状体100においてベルト長さの基準値に対する許容範囲が比較的大きく、ベルト長さのばらつきが比較的大きい。
【0095】
そのため、ベルト輪状体100のベルト長さのばらつきに起因して、駆動プーリ3aが当該所定の回転量を回転して停止したとしても、ベルト輪状体100上のカバー帆布150の先端部151が重合位置LPに対してずれた位置で停止していることがある。例えば、カバー帆布150の先端部151が、重合位置LPを通過していることもあれば、重合位置LPの手前にまでしか到達していないこともある。このように、計算上では重合位置LPで丁度停止すべきカバー帆布150の先端部151が、ベルト輪状体100のベルト長さのばらつきに起因して、重合位置LPからずれた位置で停止していることがある。そして、ベルト輪状体100のベルト長さのばらつきが比較的大きい場合には、カバー帆布150の先端部151の重合位置LPに対するずれが所定の上下限範囲内に収まらず、カバー帆布150において所定の上下限値の範囲内の重ね代の成形継目が形成されない虞がある。
【0096】
このような点を考慮して、本実施形態に係るカバー帆布150の接合方法では、後述するように、重合位置LPではなく、その手前側に設けられた所定の基準位置SPでカバー帆布150の先端部151が停止するような駆動プーリ3aの回転量R10が導出される。そして、駆動プーリ3aが当該回転量R10を回転した時点で当該駆動プーリ3aを停止させる。その後、カバー帆布150の先端部151の位置(先端部位置XP)の基準位置SPに対するずれ量が検出され、検出されたずれ量を考慮した回転量R20を駆動プーリ3aが回転するように制御される。
【0097】
これにより、ベルト輪状体100のばらつきが比較的大きい場合であっても、カバー帆布150の先端部151をより正確に重合位置LPで停止させることができる。ひいては、ベルト種別に依らず、カバー帆布150において所定の上下限値の範囲内の重ね代の成形継目を形成することができる。
【0098】
以下、本実施形態に係るカバー帆布150の接合方法について、詳述する。
【0099】
まず、ステップS11(
図7参照)においては、推定所要回転量R10(次述)が導出される。推定所要回転量R10は、押付けロール31による所定の押付位置PPから所定の基準位置SPへとカバー帆布150の先端部151をベルト輪状体100の外周面に沿って移動させるために要すると推定される駆動プーリ3aの回転量である。なお、このステップS11は、本発明における「導出ステップ」を構成している。
【0100】
所定の基準位置SPは、ベルト輪状体100の長さのばらつきに応じたカバー帆布150の巻き付け長さの調整をより確実に行うために設けられる。例えば、
図1に示されるように、所定の基準位置SPは、ベルト輪状体100の外周面上において重合位置LPよりも周回方向と反対方向、詳細には、一対のプーリ3a,3b間を走行中のベルト輪状体100の周回(押付位置PPを起点とする周回)における後半部分に設けられる。より詳細には、
図8に示されるように、基準位置SPは、切断位置CPと押付位置PPとの帆布供給経路22に沿った距離L10よりも一定程度長い基準距離L30を押付位置PPからベルト輪状体100の外周面に沿って周回方向と反対方向に遡った位置、に設けられる。
【0101】
ここで、基準位置SPから重合位置LPまでのベルト輪状体100の外周面に沿った距離が短いほど、カバー帆布150の巻き付け長さの調整区間が短くなり、調整精度が向上する(言い換えれば、調整誤差が小さくなる)。ただし、基準位置SPから重合位置LPまでの距離が極端に短い場合、例えば、基準位置SPが重合位置LPとほぼ同じ位置である場合には、ベルト輪状体100のベルト長さのばらつきに起因して、駆動プーリ3aが推定所要回転量R10を回転した時点で先端部位置XPが重合位置LPに到達している虞がある。この場合には、カバー帆布150の巻き付け長さを調整できなくなってしまう。
【0102】
そのため、基準位置SPは、押付位置PPからベルト輪状体100の外周面に沿って周回方向と反対方向に次述の調整限界距離を遡った位置(調整限界位置、とも称される)、よりも周回方向と反対方向に設けられることが好ましい。調整限界距離(図示省略)は、押付位置PPから重合位置LPまでのベルト輪状体100の外周面に沿った距離L20に対して、ベルト輪状体100のベルト長さの最大許容差βとカバー帆布150の重ね代の最大許容差γとを加えた距離(=L20+β+γ)である。
【0103】
ステップS11の詳細動作について説明する。演算制御部4aは、設定情報記憶部4cに格納されている所定のプログラムを読み出し、供給されるベルト輪状体100に関して予め定められた基準寸法(詳細には、外周長、厚み)と駆動プーリ3aの周長とに基づいて、推定所要回転量R10を導出する。
【0104】
具体的には、まず、演算制御部4aは、供給されるベルト輪状体100の外周長と厚みとを取得し、ベルト輪状体100(詳細には、駆動プーリ3aとの係合面)の内周長C10を算出する。なお、供給されるベルト輪状体100の外周長と厚みとは、例えば、設定情報記憶部4cにおいてベルト種別に関連付けて予め登録されている。
【0105】
そして、算出した内周長C10と駆動プーリ3a(詳細には、ベルト輪状体100との係合面)の外周長C20とに基づいて、カバー帆布150の先端部151がベルト輪状体100の外周面上を1周するために要する駆動プーリ3aの回転量R0(=C10/C20)が導出される。そして、その回転量R0に基づいて、演算制御部4aは、押付位置PPから基準位置SPへとカバー帆布150の先端部151を移動させるために要すると推定される駆動プーリ3aの回転量、すなわち推定所要回転量R10を導出する。具体的には、当該回転量R0に対して、ベルト輪状体100の外周長C100のうち押付位置PPから基準位置SPまでの周長C90を当該外周長C100で除した比率を乗じた回転量(R0×C90/C100)が、推定所要回転量R10として導出される。
【0106】
次のステップS12においては、カバーリング処理が開始され、先端部151が押付位置PPを通過した時点(すなわち、カバーリング処理の開始時点)から駆動プーリ3aが推定所要回転量R10を回転した時点で、駆動プーリ3aの回転を一時停止させる。これに伴って、ベルト輪状体100の走行が一時停止するとともに、当該ベルト輪状体100の外周面上のカバー帆布150の移動も一時停止する。言い換えれば、カバーリング処理が一時停止される。なお、このステップS12は、本発明における「一時停止ステップ」を構成している。
【0107】
ステップS12の動作は、演算制御部4aによって導出された推定所要回転量R10が駆動制御部5aへと伝達され、当該推定所要回転量R10に基づいて駆動制御部5aが駆動プーリ3aの回転動作を制御することによって実現される。
【0108】
次のステップS13~S15では、基準位置SPに対するカバー帆布150の先端部位置XPのずれを調整(言い換えれば、補正)する動作が実行される。
【0109】
まず、ステップS13においては、ビジョンセンサ40によって、カバー帆布150の先端部151の先端部位置XPから所定の基準位置SPまでのベルト輪状体100の外周面に沿った距離である第1の距離L1が検出される。なお、このステップS13は、本発明における「検出ステップ」を構成している。
【0110】
具体的には、ビジョンセンサ40は、カバー帆布150の先端部151を含む画像データ(二次元画像データ)を生成する。ビジョンセンサ40において生成された画像データは、演算制御部4a内の画像処理部4bに入力され、画像処理部4bは、ビジョンセンサ40に内蔵されたメモリ内の所定のプログラムを読み出す。そして、予め撮影されたカバー帆布150のモデル画像G10(
図9(B)参照)に基づいて、画像データの撮影領域A10(
図9(A)参照)に含まれるカバー帆布150の先端部151(詳細には、先端部位置XP)が特定されて検出される。より具体的には、当該撮影領域A10においてベルト輪状体100の外周面上におけるカバー帆布150の先端部151の一時停止位置が、当該先端部151の先端部位置XPとして検出される。なお、ここでは、当該撮影領域A10において、ベルト輪状体100の周回方向と平行な方向をY方向とし、当該周回方向に対して垂直な方向をX方向とする。
【0111】
そして、画像処理部4bは、撮影領域A10における原点に対する基準位置SPのY座標データ(例えば、-5mm)を生成するとともに、当該原点に対する先端部位置XPのY座標データ(例えば、-15mm)を生成する。なお、ここでは、撮影領域A10をY方向に二等分する二等分線を撮影領域A10におけるX座標軸とした。そして、画像処理部4bは、各Y座標データに基づいて、先端部位置XPから所定の基準位置SPまでのベルト輪状体100の外周面に沿った第1の距離L1(例えば、10mm)を検出する。より詳細には、所定の基準位置SPに対する先端部位置XPのずれ量α(例えば、-10mm)が検出される。なお、ここでは、撮影領域A10におけるY方向の原点(Y=0)に対して周回方向(下流側)を「正」とし、周回方向と反対方向(上流側)を「負」とした。
【0112】
そして、ステップS14においては、検出された第1の距離L1(より詳細には、ずれ量α)に基づいて、カバー帆布150の先端部位置XPから重合位置LPまでのベルト輪状体100の外周面に沿った距離(周回方向の距離)である第2の距離L2(
図8参照)が算出される。より具体的には、押付位置PPと基準位置SPとのベルト輪状体100の外周面に沿った距離(周回方向の距離)L30から距離L20を減じた距離からずれ量αを更に減じた距離が、第2の距離L2(L2=L30-L20-α)として算出される。なお、上述したように、距離L20は、帆布供給経路22上における切断位置CPから押付位置PPまでの距離L10から所定の重ね代K1を減じた距離である。
【0113】
例えば、カバー帆布150の先端部151の先端部位置XPが基準位置SPよりも周回方向にある場合(ずれ量αが正の値である場合)、距離L30から距離L20を減じた距離に対して第1の距離L1を更に減じた距離が、第2の距離L2(L2=L30-L20-L1)として算出される。逆に、カバー帆布150の先端部151の先端部位置XPが基準位置SPよりも周回方向と反対方向にある場合(ずれ量αが負の値である場合)、距離L30から距離L20を減じた距離に対して第1の距離L1を加えた距離が、第2の距離L2(L2=L30-L20+L1)として算出される。
【0114】
そして、ステップS15においては、カバーリング処理が再開され、駆動プーリ3aが推定所要回転量R10を回転した時点から第2の距離L2に対応する回転量R20を回転した時点で当該駆動プーリ3aを再び停止させる制御が行われる。なお、このステップS15は、本発明における「停止ステップ」を構成している。
【0115】
具体的には、演算制御部4aは、駆動プーリ3a(詳細には、ベルト輪状体100との係合面)の外周長C20に基づいて、第2の距離L2に対応する駆動プーリ3aの回転量R20を導出する。そして、導出された回転量R20が駆動制御部5aへと伝達され、回転量R20に基づいて駆動制御部5aが駆動プーリ3aの回転動作を制御する。これにより、カバーリング処理が再開され、駆動プーリ3aが推定所要回転量R10を回転した時点から回転量R20を回転した時点で当該駆動プーリ3aが再び停止する。その結果、カバー帆布150の先端部151が、重合位置LPと略同一の位置で停止する。
【0116】
例えば、ステップS12においてカバー帆布150の先端部151が基準位置SPよりも第1の距離L1だけ手前側(周回方向上流側)の位置に一時停止した場合、本来の回転量よりも、第1の距離L1に対応する回転量だけ多く駆動プーリ3aが回転するように制御される。これにより、カバー帆布150の先端部151が、重合位置LPと略同一の位置で停止する。
【0117】
逆に、ステップS12においてカバー帆布150の先端部151が基準位置SPよりも第1の距離L1だけ周回方向下流側で一時停止した場合、本来の回転量よりも、第1の距離L1に対応する回転量だけ少なく駆動プーリ3aが回転するように制御される。これにより、カバー帆布150の先端部151が、重合位置LPと略同一の位置で停止する。
【0118】
このようにして、ベルト輪状体100のばらつきに応じたカバー帆布150の先端部151のずれが調整される。
【0119】
そして、ステップS16においては、切断装置14によってカバー帆布150が帆布供給経路22上の所定の切断位置CPで切断され、カバー帆布150の両端部151,152が重ね合わされて接合される(
図10参照)。
【0120】
具体的には、カバー帆布150が切断装置14により所定の切断位置CPで切断されたことによって、カバー帆布150の後端部152が形成される。そして、当該後端部152が、重合位置LPにおいて停止しているカバー帆布150の先端部151に重ね合わされて接合される。上述したように、重合位置LPは、切断位置CPと押付位置PPとの帆布供給経路22上における距離L10から所定の重ね代K1を減じた距離L20(
図8参照)を、ベルト輪状体100の外周面上に沿って押付位置PPから周回方向と反対方向に遡った位置に設けられている。そのため、所定の切断位置CPで切断されて形成されたカバー帆布150の後端部152が先端部151に重ね合わされる際には、カバー帆布150における成形継目(先端部151と後端部152との接合部分)が所定の重ね代K1で形成される。そして、駆動プーリ3aが再び回転し、カバー帆布150の後端部152をベルト輪状体100に巻き付ける処理が背面ローラ35及び側面側折曲ロール34等によって実行される。これにより、先端部151と後端部152とが、所定の重ね代K1の成形継目が形成された状態で互いに圧着され、より強固に接合される。
【0121】
[効果]
以上説明したように、本実施形態に係るカバー帆布150の接合方法では、カバー帆布150の先端部151が押付位置PPを通過した時点から駆動プーリ3aが推定所要回転量R10を回転した時点での先端部151の位置(先端部位置)XPが検出される。さらに、当該先端部位置XPから所定の基準位置SPまでの第1の距離L1が検出される。そして、当該第1の距離L1に基づいて、先端部位置XPから重合位置LPまでの第2の距離L2が算出され、駆動プーリ3aが当該第2の距離L2に対応する回転量R20を回転して停止する。その後、カバー帆布150の先端部151と後端部152とが重ね合わされて接合される。
【0122】
この構成によると、駆動プーリ3aが推定所要回転量R10を回転した時点でのカバー帆布150の先端部位置XPから、重合位置LPよりも周回方向と反対方向の所定の基準位置SPまでの第1の距離L1が検出される。そして、当該第1の距離L1に基づいて、当該先端部位置XPから重合位置LPまでの第2の距離L2が算出され、駆動プーリ3aが、当該第2の距離L2に対応する回転量R20を回転して停止する。すなわち、ベルト輪状体100のベルト長さにばらつきがある場合であっても、カバー帆布150の先端部151が重合位置LPへと到達する前に、そのばらつきに応じてカバー帆布150の巻き付け長さが調整される。そのため、例えばベルト長さのばらつきが比較的大きい種別のベルト輪状体100(例えば、ラップドVベルトのベルト輪状体)に対してカバーリング処理が施される場合であっても、カバー帆布150における成形継目を所定の上下限値の範囲内の重ね代で形成することができる。従って、ベルト種別に依らず、カバー帆布150において所定の上下限範囲内の重ね代の成形継目をより確実に形成できる、カバー帆布150の接合方法を提供することができる。ひいては、伝動ベルトのベルト種別に依らず、歩留まりを確保することができ、伝動ベルトの生産性を向上させることができる。
【0123】
また、このような動作が、成形装置1による制御によって自動的に行われるので、例えば作業員が巻き付け長さを手操作で調整する場合と比較して、効率的にカバー帆布150の巻き付け長さの調整を行うことができる。
【0124】
また、本実施形態に係るカバー帆布150の接合方法では、カバー帆布150の先端部151が所定の押付位置PPを通過した時点から駆動プーリ3aが推定所要回転量R10を回転した時点で駆動プーリ3aの回転を一時停止させる制御が実行される。そして、駆動プーリ3aの一時停止に伴って一時停止したベルト輪状体100の外周面上におけるカバー帆布150の先端部151の一時停止位置が、先端部位置XPとして検出される。
【0125】
この構成によると、ベルト輪状体100の外周面上におけるカバー帆布150の先端部151の位置が、駆動プーリ3aの回転が一時停止された状態、すなわち、カバー帆布150の移動が一時停止された状態で検出される。従って、カバー帆布150の先端部151の位置をより正確に検出することができる。
【0126】
ここで、ビジョンセンサ40を重合位置LPの近傍に配置し、カバー帆布150の先端部151が重合位置LPに到達したことがビジョンセンサ40によって検出された瞬間に駆動プーリ3aの回転を停止させること、も考えられる。しかしながら、移動中の対象物の画像取込速度には限度があり、カバー帆布150の先端部151が重合位置LPに到達したことがビジョンセンサ40によって検出されてから、実際に駆動プーリ3aの回転が停止するまでの間に、若干のタイムラグが生じ得る。その結果、カバー帆布150の先端部151が重合位置LPを通過してしまう虞がある。
【0127】
これに対して、本実施形態に係るカバー帆布150の接合方法では、重合位置LPではなく、重合位置LPよりも周回方向と反対方向の所定の基準位置SPを目標停止位置としてカバー帆布150の先端部151を停止させる。そのため、上記のようなタイムラグに起因して先端部151が重合位置LPを通過することがなく、カバー帆布150において所定の上下限値の範囲内の重ね代の成形継目をより確実に形成できる。
【0128】
また、本実施形態では、重合位置LPが、切断位置CPと押付位置PPとの帆布供給経路22に沿った距離L10から所定の重ね代K1を減じた距離L20を、ベルト輪状体100の外周面上に沿って押付位置PPから周回方向と反対方向に遡った位置に設けられる。すなわち、帆布供給経路22上における切断位置CPで切断されて形成された後端部152と押付位置PPとの帆布供給経路22に沿った距離(=L10)が、押付位置PPから重合位置LPまでのベルト輪状体100の外周面上に沿った距離(=L20)に所定の重ね代K1を加えた距離となる。そのため、帆布供給経路22上における所定の切断位置CPで切断されて形成された後端部152をそのまま先端部151に重ね合わせるだけで、後端部152と重合位置LPとの距離(=L10-L20)が所定の重ね代K1となり、所定の上下限値の範囲内に収まる成形継目が形成される。従って、カバー帆布150の両端部151,152を所定の重ね代K1で精度よく重ね合わせることができるとともに、所定の上下限値の範囲内の重ね代の成形継目を容易に形成できる。
【0129】
また、本実施形態に係るカバー帆布150の接合方法では、所定の基準位置SPが、複数のプーリ(本実施形態では、一対のプーリ3a,3b)間を走行中のベルト輪状体100の周回における後半部分に設けられている。そのため、所定の基準位置SPが複数のプーリ間を走行中のベルト輪状体100の周回における前半部分に設けられる場合と比較して、ベルト輪状体100に巻き付けるカバー帆布150の巻き付け長さを調整する区間が短くなる。従って、カバー帆布150の巻き付け長さの調整精度を確保することができる。
【0130】
また、本実施形態に係るカバー帆布150の接合方法では、カバーリング処理が施されるベルト輪状体100に関して予め定められた周長と駆動プーリ3aの周長とに基づいて、推定所要回転量R10が導出される。そのため、カバーリング処理が施されるベルト輪状体100の種別に応じてより正確な推定所要回転量R10を導出することができる。
【0131】
また、本実施形態に係るカバー帆布150の接合方法では、ビジョンセンサ40によって取得された画像データに基づいてベルト輪状体100の外周面上におけるカバー帆布150の先端部151が検出されて、第1の距離L1が検出されている。
【0132】
ただし、これに限定されず、レーザセンサによって、ベルト輪状体100の外周面上におけるカバー帆布150の先端部151が検出されてもよい。
【0133】
具体的には、ベルト輪状体100の外周面における所定領域に向かってレーザが発射され、当該所定領域において反射した反射波がレーザセンサによって受信される。そして、レーザの発射から受信までの時間に基づいて距離(一次元データ)を算出することによって、カバー帆布150の先端部151が検出される。このように、レーザセンサによって、ベルト輪状体100の外周面上におけるカバー帆布150の先端部151が検出されてもよい。
【0134】
ただし、レーザセンサによって取得されるデータは一次元データ(対象物までの距離データ)である。この場合、ベルト輪状体100の厚みが変化した場合にカバー帆布150の先端部151を検出できるようにするためには、対象物までの基準距離の変化点を検出するための複雑な演算プログラムを要する。
【0135】
そのため、上記の実施形態のように、ビジョンセンサ40を用いてカバー帆布150の先端部151が検出されることがより好ましい。具体的には、ビジョンセンサ40によって取得される画像データは、2次元データである。この場合、ベルト輪状体100の厚みが変化、すなわち、対象物までの基準距離が変化したとしても、複雑な演算プログラムを要することなく、カバー帆布150の先端部151を検出できる。従って、ベルト種別によってその厚みが変化した場合であっても、ベルト輪状体100の外周面上におけるカバー帆布150の先端部151を容易に検出できる。
【0136】
[評価]
図11は、上記の実施形態に係るカバー帆布の接合方法を採用した本発明の実施例の場合と、比較例に係るカバー帆布の接合方法を採用した場合とのそれぞれにおける評価を示す図である。なお、本発明の実施例においては、上記の実施形態に係るカバー帆布の接合方法を実施するためのベルト成形体の成形装置1のカバーリング処理部3に備わるビジョンセンサ40として、三菱電機社製の型番VS80M-200Eのビジョンセンサを用いた。また、比較例としては、カバー帆布の巻き付け長さの調整処理を実行しない態様を例示する。
【0137】
ここでは、次のようなベルト輪状体を用いて評価を行った。具体的には、ベルト長さがベルト成形体の成形装置にて成形可能な上限の水準のものであって、カバー帆布の重ね代の基準値に対する許容範囲を上回るほどにベルト長さの基準値に対する許容範囲が大きいベルト輪状体を用いた。当該ベルト輪状体に関して、ベルト長さ(外周長)の基準値は、105インチ(2667mm)である。また、基準値に対する許容範囲は±10mm、すなわち、基準値2667mmに対して、最大許容差βは10mmである。また、基準値に対するばらつき(実測値)は、±9.0mmであり、ほぼ正規分布している。なお、このばらつきは、対象の本数を200本として、検査員によって測定された測定結果である。厚みtは8.2mmであり、幅wは約13mmである。なお、厚みtの基準値に対する許容範囲は、±0.2mmである。
【0138】
そして、成形装置に100本の上記ベルト輪状体及びカバー帆布(下カバーと上カバーとにより構成される2層のカバー帆布)を供給して100本のベルト成形体を作製した。
【0139】
評価方法(測定方法)は、次のとおりである。
【0140】
ベルト輪状体の外周長の測定方法としては、評価用に供給された100本のベルト輪状体(同一製造ロットのベルト輪状体)のそれぞれについて、検査員が金巻尺(測定単位1mm)でベルト輪状体の外周長を測定した。
【0141】
また、成形継目の重ね代の上下限範囲(基準範囲)は、10mm±7mmとし、検査箇所数は、ベルト成形体における1つの成形継目に対して背面側と底面側との2箇所とした。また、下カバーと上カバーとにより構成される2層のカバー帆布に対して検査した。すなわち、総検査箇所数は、400箇所(=成形継目数100×2層のカバー帆布×2箇所の検査箇所)である。成形継目の検査方法としては、下カバー、上カバー各々のカバーリング処理の終了後に、成形継目の重ね代を検査員が金尺(測定単位0.5mm)で測定した。なお、下カバーのカバーリング処理後においては、成形継目を一対のプーリ間に移動させた状態で検査した。
【0142】
評価基準は、次のとおりである。
A1:成形継目の重ね代(実績値)が、総検査箇所数に対して全て、所定の上下限範囲内(上下限範囲外となった箇所が「0」)であること、
A2:重ね代の平均値が10mm(基準値)±3mmの範囲内にあること、
A3:重ね代の変動幅R値が7mm(許容幅14mmの半分)以下であること、
の3つの基準A1~A3の全てが満たされた場合は、カバー帆布において所定の重ね代の成形継目をより確実に形成できるカバー帆布の接合方法を提供できる(判定「○」)、と評価した。具体的には、上記の3つの基準A1~A3の全てが満たされる場合、成形可能な種別のベルト輪状体であれば、カバー帆布の重ね代の基準値に対する許容範囲を上回るほどにベルト輪状体のベルト長さがばらついたとしても、ベルト種別(特にはベルト長さ)に依らず、所定の重ね代の成形継目をより確実に形成できる、と評価できる。
【0143】
逆に、上記の3つの基準A1~A3の少なくとも1つが満たされない場合は、カバー帆布において所定の重ね代の成形継目を確実に形成できるとは言えない(判定「×」)、と評価した。
【0144】
このような評価基準の下において、上記の実施形態と比較例に係る態様とのそれぞれの評価結果は、以下のとおりである。
【0145】
まず、本実施形態に係るカバー帆布の接合方法では、
図11に示されるように、成形継目の重ね代(実績値)が所定の上下限範囲外となった箇所数は、総検査箇所数「400箇所」に対して「0箇所」であった。また、重ね代の平均値は、10.2mmであり、基準値10±3mmの範囲内であった。また、重ね代の変動幅R値は、3.0mm(最大値は11.5mm、最小値は8.5mm)であり、7mm以下であった。すなわち、本実施形態に係るカバー帆布の接合方法では、上記の3つの基準A1~A3の全てが満たされた。その結果、本実施形態に係るカバー帆布の接合方法に関しては、「カバー帆布において所定の重ね代の成形継目をより確実に形成できる」(
図11においては「〇」)と評価された。
【0146】
これに対して、比較例に係るカバー帆布の接合方法では、
図11に示されるように、成形継目の重ね代(実績値)が所定の上下限範囲外となった箇所数は、総検査箇所数「400箇所」に対して「88箇所」であった。また、重ね代の変動幅R値は、18.0mm(最大値は19.5mm、最小値は1.5mm)であり、7mmよりも大きな値であった。なお、重ね代の平均値は、10.4mmであり、基準値10±3mmの範囲内であった。すなわち、比較例に係るカバー帆布の接合方法では、上記の3つの基準A1~A3のうちの2つの基準A1,A3が満たされておらず、「カバー帆布において所定の重ね代の成形継目を確実に形成できるとは言えない」(
図11においては「×」)と評価された。
【0147】
以上の評価結果からも、上記実施形態に係るカバー帆布の接合方法によると、カバー帆布において所定の上下限範囲内(より好ましくは、所定の重ね代)の成形継目をより確実に形成できることがわかる。
【0148】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のような変形例を実施してもよい。
【0149】
(1)上述した実施形態では、カバー帆布150の先端部151が押付位置PPを通過した時点から駆動プーリ3aが推定所要回転量R10を回転した時点で、当該駆動プーリ3aの回転を一時停止させている(
図7のステップS12)が、これに限定されない。例えば、カバー帆布150の先端部151が押付位置PPを通過した時点から駆動プーリ3aが推定所要回転量R10を回転した時点、或いは、その直前の時点で、駆動プーリ3aの回転速度を低速化させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、ベルト輪状体にカバー帆布を被覆させるカバーリング処理に関して、カバー帆布における長手方向の両端部を所定の上下限値の範囲内で重ね合わせて接合するためのカバー帆布の接合方法に関して広く適用できる。
【符号の説明】
【0151】
1 成形装置
2 帆布供給機構
3 カバーリング処理部
3a 駆動プーリ(上側プーリ)
3b 下側プーリ
4 操作盤
4a 演算制御部
5 制御盤
13 帆布把持部
14 切断装置
22 帆布供給経路
100 ベルト輪状体
106 下カバー(カバー帆布)
107 上カバー(カバー帆布)
150 カバー帆布
151 カバー帆布の先端部
152 カバー帆布の後端部
200 ベルト成形体