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特許7364615ゴム組成物およびそれを用いたゴム製品、並びにホース
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  • 特許-ゴム組成物およびそれを用いたゴム製品、並びにホース 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびそれを用いたゴム製品、並びにホース
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/06 20060101AFI20231011BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231011BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08L33/06
C08K3/04
C08K5/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021063390
(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公開番号】P2022158464
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】平戸 元基
(72)【発明者】
【氏名】平井 亮
(72)【発明者】
【氏名】野田 将司
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-145359(JP,A)
【文献】特開2016-150525(JP,A)
【文献】特開2014-190373(JP,A)
【文献】特開2011-068758(JP,A)
【文献】特開2003-306613(JP,A)
【文献】特開2001-172527(JP,A)
【文献】特開2016-070332(JP,A)
【文献】特開2003-327776(JP,A)
【文献】特開平01-020246(JP,A)
【文献】特開平11-349311(JP,A)
【文献】特開平10-338771(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141452(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/200009(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/162814(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性ゴムおよびカーボンブラックを含有するゴム組成物であって、上記極性ゴムが上記ゴム組成物全体の30重量%以上を占めるとともに、上記カーボンブラックが、下記の(a)~(d)に示す要件をすべて満たすことを特徴とするゴム組成物。
(a)窒素吸着比表面積(N2SA)とヨウ素吸着量(IA)との比(N2SA/IA)が、1.20×103~1.50×1032/g。
(b)強酸性基濃度が、0.50×10-5mol/g以下。
(c)ヨウ素吸着量(IA)が、50~70mg/g。
(d)DBP吸収量が、130~150cm3/100g。
【請求項2】
上記極性ゴム100重量部に対する上記カーボンブラックの割合が、30~100重量部である、請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
上記極性ゴムがアクリルゴムである、請求項1または2記載のゴム組成物。
【請求項4】
上記極性ゴムが、SP値が8.5~10.5の極性ゴムである、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
上記カーボンブラックの強酸性基濃度(b)が、0.30×10-5mol/g以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
さらに、エーテルエステル系可塑剤を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物の架橋物からなることを特徴とするゴム製品。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物の架橋物からなることを特徴とするホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いたゴム製品、並びにホースに関するものであり、詳しくは、高補強性および高電気抵抗を両立する、ゴム組成物およびそれを用いたゴム製品、並びにホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ホース等の各種ゴム製品の形成材料に用いられる、アクリルゴム等の極性ゴムに対しては、補強性等の機械的物性を高めるために、充填材が含有されている。
上記充填材として一般的なものには、カーボンブラックがある。
しかしながら、カーボンブラックは、その導電性の高さから、絶縁性が要求されるゴム製品に対しては適さないとされている。
【0003】
そこで、例えば、上記充填材として、カーボンブラックとともに、非導電性であるシリカを併用したものがある(特許文献1)。
しかしながら、アクリルゴム等の極性ゴムに対してシリカを加えると、シリカの表面活性の高さにより、ゴムの練り加工時に著しい粘着が生じるといった問題が生じやすくなる。
【0004】
また、一般的なカーボンブラックとは異なり、高電気抵抗を示すカーボンブラックを使用することも検討されている。
しかしながら、従来の高電気抵抗のカーボンブラック、すなわち、表面積の大きなカーボンブラックは、ゴム組成物に対する補強性が弱く、さらにゴム組成物の粘度を低下させる作用もある。
そこで、上記のように高電気抵抗を示すカーボンブラックとともに、表面活性の低いクレーを併用し、電気抵抗の向上と練り加工性の両立を図ったものも検討されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2020/017009号
【文献】特開平9-317956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アクリルゴム等の極性ゴムに対して、上記特許文献2に示されるように、高電気抵抗カーボンブラックとクレーを併用すると、ゴムの引張物性における強伸度(TS,EB)が低下するといった問題がみられたことから、その解決が望まれている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、高電気抵抗であり、機械的物性に優れるとともに、練り加工性に優れる、ゴム組成物およびそれを用いたゴム製品、並びにホースの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、窒素吸着比表面積(N2SA)とヨウ素吸着量(IA)との比(N2SA/IA)、強酸性基濃度、ヨウ素吸着量(IA)、およびDBP吸収量が特定の範囲内にある、特殊なカーボンブラックを、アクリルゴム等の極性ゴムに加えることを検討した。
上記特殊なカーボンブラックは、その表面活性が高い(カーボンブラック表面の官能基量が多い)ことから、カーボンゲルを多く生成し、さらにその強酸値(強酸性官能基量)が抑えられているため、極性ゴム中で分散しやすくなっていることから、高電気抵抗および練り加工性に寄与するものとなっている。さらに、引張物性に影響が大きい窒素吸着値が大きいことから、引張物性等の機械的物性に寄与するものとなっている。
そのため、極性ゴムをポリマーとするゴム組成物の充填材として、先に述べたようなシリカやクレーを用いずに、上記のような特殊なカーボンブラックを単体で用いることにより、上記極性ゴムの非導電設計における課題である、練り加工性、機械的物性(特に、引張物性)を両立させることができるようになることを見いだし、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、上記の目的を達成するために、以下の[1]~[8]を、その要旨とする。
[1] 極性ゴムを主成分とするとともに、カーボンブラックを含有するゴム組成物であって、上記カーボンブラックが、下記の(a)~(d)に示す要件をすべて満たすことを特徴とするゴム組成物。
(a)窒素吸着比表面積(N2SA)とヨウ素吸着量(IA)との比(N2SA/IA)が、1.20×103~1.50×1032/g。
(b)強酸性基濃度が、0.50×10-5mol/g以下。
(c)ヨウ素吸着量(IA)が、50~70mg/g。
(d)DBP吸収量が、130~150cm3/100g。
[2] 上記極性ゴム100重量部に対する上記カーボンブラックの割合が、30~100重量部である、[1]に記載のゴム組成物。
[3] 上記極性ゴムがアクリルゴムである、[1]または[2]に記載のゴム組成物。
[4] 上記極性ゴムが、SP値が8.5~10.5の極性ゴムである、[1]~[3]のいずれかに記載のゴム組成物。
[5] 上記カーボンブラックの強酸性基濃度(b)が、0.30×10-5mol/g以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のゴム組成物。
[6] さらに、エーテルエステル系可塑剤を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載のゴム組成物。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載のゴム組成物の架橋物からなることを特徴とするゴム製品。
[8] [1]~[6]のいずれかに記載のゴム組成物の架橋物からなることを特徴とするホース。
【発明の効果】
【0010】
以上のことから、本発明により、高電気抵抗であり、機械的物性に優れるとともに、練り加工性に優れる、ゴム組成物およびそれを用いたゴム製品、並びにホースを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】カーボンブラックの原料を製造するための反応炉の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0013】
本発明のゴム組成物は、先に述べたように、極性ゴムを主成分とするとともに、カーボンブラックを含有するゴム組成物であって、上記カーボンブラックが、下記の(a)~(d)に示す要件をすべて満たすものである。以下に、上記ゴム組成物における各材料について詳細に説明する。
(a)窒素吸着比表面積(N2SA)とヨウ素吸着量(IA)との比(N2SA/IA)が、1.20×103~1.50×1032/g。
(b)強酸性基濃度が、0.50×10-5mol/g以下。
(c)ヨウ素吸着量(IA)が、50~70mg/g。
(d)DBP吸収量が、130~150cm3/100g。
【0014】
[極性ゴム]
上記のように、本発明のゴム組成物は、極性ゴムを主成分とするものである。ここで、本発明における「主成分」とは、通常、上記ゴム組成物全体の30重量%以上を占めるものであり、好ましくは上記ゴム組成物全体の40~75重量%、より好ましくは上記ゴム組成物全体の45~60重量%を占めるものである。
【0015】
上記極性ゴムのSP値は、上記特殊なカーボンの分散性に優れることから、8.5~10.5であることが好ましく、より好ましくは9~10の範囲である。
ここで、SP値とは、溶解性パラメータとも言われ、物質の極性を示す指標であり、下記の式(1)により求めることができる。
【0016】
【数1】
【0017】
上記極性ゴムとしては、具体的には、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、上記特殊なカーボンの分散性に優れることから、アクリルゴムが好ましい。
【0018】
[カーボンブラック]
先に述べたように、本発明のゴム組成物に用いられるカーボンブラックは、下記の(a)~(d)に示す要件をすべて満たすものである。
(a)窒素吸着比表面積(N2SA)とヨウ素吸着量(IA)との比(N2SA/IA)が、1.20×103~1.50×1032/g。
(b)強酸性基濃度が、0.50×10-5mol/g以下。
(c)ヨウ素吸着量(IA)が、50~70mg/g。
(d)DBP吸収量が、130~150cm3/100g。
【0019】
<要件(a)>
上記要件(a)である、窒素吸着比表面積(N2SA)とヨウ素吸着量(IA)との比(N2SA/IA)は、ゴム組成物における電気絶縁性、機械的物性等の観点から、上記のように1.20×103~1.50×1032/gとする必要がある。
ここで、N2SAは、カーボンブラックの比表面積を、カーボンブラック単位質量当たりの窒素分子の吸着量(m2/g)で表した値である。また、IAは、カーボンブラックの比表面積を、液相におけるカーボンブラック単位質量当たりのヨウ素分子の吸着量(mg/g)で表した値である。
上記N2SAは、上記IAと同様に、カーボンブラックの比表面積を表すが、IAは、カーボンブラックの表面官能基量にも依存する値である(酸性官能基量が多いほどヨウ素分子が吸着されにくくなり、N2SAよりも若干低い値になる)。上記N2SAは、JIS K 6217-7:2013「ゴム用カーボンブラックの基本性能の試験方法」に記載の方法によって、求めることができる(参考:ASTM D6556-16)。
また、上記IAは、JIS K 6217-1(A法)に準拠して測定された値である。
【0020】
2SAの値をIAの値で除した値(N2SA/IA)は、カーボンブラックの表面活性度を表す指標である。ここで、N2SA/IAの値は、上記のように、N2SAの単位をm2/gとし、IAの単位をmg/gとして、算出される。そして、N2SA/IAの値が大きいほど、カーボンブラックの表面官能基量が多いことを意味する。カーボンブラックの表面官能基量が多い場合、カーボンブラックの表面では表面官能基を介して化学反応が起こりやすい。つまり、カーボンブラックの表面活性度の値とは、カーボンブラックの表面での化学反応の起こりやすさを定量的に示すものである。
【0021】
なお、極性ゴム分子への吸着の度合いとカーボンブラック同士の凝集のしにくさの度合いとを両立するためには、要件(b)に示すようにカーボンブラックの強酸性基濃度の値を所定値よりも小さくするのみではなく、上記要件(a)に示すようにカーボンブラックの表面官能基量を所定範囲量とする必要がある。つまり、強酸性基濃度の値とN2SA/IAの値とを衡量する必要がある。
【0022】
<要件(b)>
上記要件(b)である、強酸性基濃度は、ゴム組成物における機械的物性、電気絶縁性等の観点から、前記のように0.50×10-5mol/g以下とする必要があり、同様の観点から、好ましくは0.30×10-5mol/g以下であり、より好ましくは0.10×10-5mol/g以下である。
ここで、上記強酸性基濃度(mol/g)は、カーボンブラックの表面に存在する強酸性基(主にカルボキシ基)の量を、カーボンブラック単位質量当たりの物質量で表した値である。
そして、本発明のゴム組成物に用いられるカーボンブラックが、上記のような強酸性基濃度を示すことにより、極性ゴム中におけるカーボンブラックの分散性が向上し、その結果、カーボンブラック表面と極性ゴムの分子鎖との間の物理的、化学的な相互作用が増加し、本発明のゴム組成物からなるゴム製品の機械的強度をより高めることが可能になる。
また、極性ゴム中におけるカーボンブラックの分散性が向上する結果、カーボンブラックの粒子同士が接触し難くなることから、本発明のゴム組成物およびゴム製品の電気絶縁性が維持されやすくなる。
【0023】
ここで、上記強酸性基濃度は、次の方法によって測定することができる。
すなわち、まず、カーボンブラック試料5gを精秤して粉砕し、0.1mol/Lの炭酸水素ナトリウム溶液50mLを加え、室温で4時間振とうし、カーボンブラック表面の強酸性官能基を中和する。その後、中和に使用されなかった残りの炭酸水素ナトリウムの量を知るため、カーボンブラックを遠心分離にて濾過した上澄み液20mLを0.025mol/Lの硫酸で滴定するとともに、空試験(上記反応に使用しない原液の0.1mol/Lの炭酸水素ナトリウム20mLを0.025mol/Lの硫酸で滴定)を並行して行い、両者の差から、単位質量当たりの強酸性官能基量(mol/g)を求める。
例えば、上記の測定方法によれば、空滴定量が39.27ml、中和反応後の上澄み液の滴定量が39.25mlであるとき、両者の差は0.02mlであるから、強酸性基濃度は0.2×10-5mol/gと算出することが可能である。
【0024】
<要件(c)>
上記要件(c)である、ヨウ素吸着量(IA)は、ゴム組成物における機械的物性、電気絶縁性等の観点から、前記のように50~70mg/gとする必要がある。
なお、上記IAは、先に述べたように、カーボンブラックの比表面積を、液相におけるカーボンブラック単位質量当たりのヨウ素分子の吸着量(mg/g)で表した値である。そして、上記のようにIAの下限を規定することにより、ゴム部材に充分な機械的強度を付与することが可能になる。さらに、上記のようにIAの上限を規定することにより、本発明のゴム組成物およびゴム製品における高い電気絶縁性を維持することが可能になる。
また、上記IAは、JIS K 6217-1(A法)に準拠して測定された値である。
【0025】
<要件(d)>
上記要件(d)である、DBP吸収量は、ゴム組成物における機械的物性、電気絶縁性等の観点から、前記のように130~150cm3/100gとする必要がある。
DBP吸収量は、カーボンブラックのストラクチャを、カーボンブラック100gに対するDBP(ジブチルフタレート)の吸収量(cm3/100g)で表した値である。そして、上記DBP吸収量は、JIS K 6217-4に準拠して測定された値である。
カーボンブラックのアグリゲート間の空隙率は、カーボンブラックのストラクチャと正の相関がある。したがって、DBP吸収量の値が大きい程、カーボンブラックのストラクチャが発達し、吸着または粒子同士の近接・接触が起こりやすくなることを意味している。DBP吸収量の値は、カーボンブラックをゴム分子へと良好に吸着させ、ゴム部材に高い機械的強度を付与する観点から、上記範囲の下限が規定されている。さらに、DBP吸収量の値は、カーボンブラック粒子同士の近接・接触を防ぎ、ゴム部材の高い電気絶縁性を維持する観点から、上記範囲の上限が規定されている。
【0026】
本発明のゴム組成物における、前記極性ゴム100重量部に対する上記特殊なカーボンブラックの割合は、機械的物性、練り加工性等の観点から、好ましくは30~100重量部であり、45~75重量部の範囲であることがより好ましく、更に好ましくは50~70重量部の範囲である。
【0027】
《カーボンブラックの製造方法》
上記特殊なカーボンブラックは、例えば、オイルファーネス法等の一般的なカーボンブラックの製造方法において、反応条件を適宜調整することにより、得ることができる。以下に、上記特殊なカーボンブラックの製造方法の一例について説明する。
【0028】
本発明のゴム組成物に使用される特殊なカーボンブラックは、例えば、反応工程S1、造粒工程S2、乾燥工程S3、および脱離工程S4を、この順で逐次的に行うことにより、製造することができる。
【0029】
<反応工程S1>
上記反応工程S1においては、例えば、図1に示すような構成の反応炉により、カーボンブラック原料が生成される。図示の通り、反応炉は、筒状の反応炉であり、燃料燃焼帯域4、原料導入帯域6、および反応帯域8を備えている。
【0030】
上記反応炉における燃料燃焼帯域4は、高温の燃焼ガスを生成する部分である。燃料燃焼帯域4には、酸素含有ガス導入口1、燃焼用バーナ2、およびアルカリ金属塩水溶液供給ノズル3が設けられている。酸素含有ガス導入口1からは、酸素含有ガス(酸素、空気等)が燃料燃焼帯域4に導入される。また、燃焼用バーナ2からは、燃料(FCC残渣油、水素、一酸化炭素、天然ガス、石油ガス等)が燃料燃焼帯域4に供給される。これにより、高温の燃焼ガスが生成される。アルカリ金属塩水溶液供給ノズル3からは、アルカリ金属塩水溶液として、ナトリウム、カリウムなどの炭酸塩、塩化物、水酸化物等の水溶液が、燃料燃焼帯域4に供給される。アルカリ金属塩水溶液を添加することにより、原料導入帯域6において、カーボンブラックのストラクチャが発達しないように調整することができる。燃料燃焼帯域4で生成した燃焼ガスは、原料導入帯域6に供給される。
【0031】
また、上記反応炉における原料導入帯域6は、原料油が導入される部分である。原料導入帯域6は、燃料燃焼帯域4よりも径が小さくなっている。原料導入帯域6には、原料油導入ノズル5が接続されている。原料油導入ノズル5を介して原料油が原料導入帯域6に導入され、燃焼ガスと混合される。このとき、熱分解によりカーボンブラックの微小な核が生成し、核同士の衝突により所定のストラクチャが形成され、カーボンブラックの原料であるカーボンブラック微粒子が生成する。原料油としては、ナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素、クレオソート油、タール油などの石炭系炭化水素、FCC残渣油、エチレンヘビーエンドオイルなどの石油系重質油、アセチレン系不飽和炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素などの炭化水素などが用いられる。燃焼ガスと原料油との混合物は、反応帯域8に供給される。
【0032】
さらに、上記反応炉における反応帯域8は、原料導入帯域6で生成したカーボンブラックの微粒子をさらに充分に気相成長させた後、反応を停止させる部分である。反応帯域8の径は、燃料燃焼帯域4の径よりも大きくなっている。原料導入帯域6で生成したカーボンブラック微粒子の流速は、広口径の反応帯域8において低くなる。このとき、カーボンブラック微粒子の表面に気相中の芳香族炭化水素が炭化積層し成長しカーボンブラック原料が生成する。反応帯域8の下流側には、反応を停止するための冷却液導入ノズル7が設けられている。冷却液導入ノズル7からは、冷却水が反応帯域8に噴霧される。これにより、カーボンブラック原料の生成反応が停止される。
【0033】
そして、上記反応帯域8で生成したカーボンブラック原料は、捕集系に移送され、サイクロンやバッグフィルター等の捕集装置により捕集される。
【0034】
<造粒工程S2>
上記造粒工程S2においては、カーボンブラック原料の粒子が所定の大きさになるように、カーボンブラック原料が造粒される。捕集装置により捕集されたカーボンブラック原料に対して、造粒処理が行われる。造粒処理では、すなわち、カーボンブラックの粒子が所望の大きさになるように造粒される。この造粒処理の具体態様は、特に限定されず、公知の造粒方法を適用することができる。公知の造粒方法として、例えば湿式造粒方法があげられる。湿式造粒方法の一例は、所定の容器内で、円筒の中心に特殊な棒状ピンを螺旋状に複数配置したシャフトを高速で回転させ、容器内へとカーボンと水とを連続的に供給し、それらを撹拌混合することにより、所定の大きさのペレット形状に造粒する方法である。
【0035】
<乾燥工程S3>
上記乾燥工程S3においては、造粒されたカーボンブラック原料から脱水するために、造粒されたカーボンブラック原料が乾燥され、乾燥カーボンブラック原料が得られる。この乾燥処理の具体的態様は、特に限定されず、公知の乾燥方法を適用することができる。公知の乾燥方法として、例えば間接加熱式乾燥方法があげられる。間接加熱式乾燥方法の一例は、間接加熱式回転乾燥機を利用するものである。間接加熱式回転乾燥機に備えられたロータリーキルン状の二重管構造で外筒と内筒との間の空間に熱ガスを供給し、内筒中に配置された水分を含んだ造粒されたカーボンブラック原料を所定温度で加熱乾燥する方法である。
【0036】
<脱離工程S4>
上記脱離工程S4においては、乾燥カーボンブラック原料から選択的に強酸性基のみを脱離、除去させカーボンブラックを得る。この脱離処理の具体的態様は、特に限定されず、カーボンブラックから強酸性基を脱離、除去する方法であれば適用することができる。特に好ましい脱離処理方法として、例えば不活性ガス中での加熱処理があげられる。不活性ガス中での加熱処理方法の一例は、乾燥カーボンブラック原料を配置した流動層に、窒素等の不活性ガスを導入しながら、300~400℃の温度で5~30分間、乾燥カーボンブラック原料を加熱する方法である。
【0037】
上記の製造方法で得られるカーボンブラックは、上記反応工程S1において、アルカリ金属塩水溶液の導入量を増加させることにより、DBP吸収量の値が小さくなる。酸素含有ガス導入量を増加させるか、または原料油の導入量を減少させるとIA、N2SAそれぞれの値が増加する。また、さらに原料油を導入してから急冷により反応を停止させるまでの反応時間を短くすると、N2SA/IAの値が大きくなる。
また、上記脱離工程S4において、流動層内の温度、流動層内での保持時間を調整することにより、強酸性基濃度の脱離の程度を調整することができる。
【0038】
[その他の材料]
本発明のゴム組成物には、極性ゴム、上記特殊なカーボンブラックの他、加硫剤、加硫助剤、加工助剤、可塑剤、老化防止剤、難燃剤等が、適宜に配合される。また、有機過酸化物で架橋する場合には、架橋効率を高め、物性の改善をはかるために共架橋剤を併用しても差し支えない。
【0039】
上記加硫剤としては、例えば、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物や、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン-シンナムアルデヒド付加物、アンモニウムベンゾエート、ヘキサメチレンジアミンジベンゾエート塩、4,4’-メチレンジアニリン、4,4’-オキシフェニルジフェニルアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンビス(o-クロロアニリン)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0040】
上記加硫助剤としては、例えば、トリメチルチオウレア、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、ジ-o-トリルグアニジン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0041】
上記加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、n-オクタデシルアミン、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0042】
上記可塑剤としては、例えば、ポリエーテル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、機械的物性、耐寒性に優れることから、エーテルエステル系可塑剤が好ましく、より好ましくはアジピン酸エーテルエステル系可塑剤である。
【0043】
上記老化防止剤としては、例えば、4,4’-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0044】
上記有機過酸化物としては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類や、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド類や、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類や、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類や、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0045】
上記共架橋剤としては、例えば、硫黄含有化合物、多官能性モノマー、マレイミド化合物、キノン化合物等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0046】
上記硫黄含有化合物としては、例えば、硫黄、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド、メルカプトベンゾチアゾール等があげられる。上記多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルトリメリテート、トリアリルトリシアヌレート等があげられる。また、上記マレイミド化合物としては、例えば、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、トルイレンビスマレイミド等があげられる。上記キノン化合物としては、例えば、キノンジオキシム、ジベンゾイル-p-キノンジオキシム等があげられる。
【0047】
本発明のゴム組成物は、例えば、極性ゴム、特定カーボンブラックを配合し、さらに、加硫剤、加硫助剤、加工助剤、可塑剤、老化防止剤、難燃剤等を適宜に配合し、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。
このようにして得られた本発明のゴム組成物は、高電気抵抗であり、機械的物性に優れるとともに、上記混練機による混練時の練り加工性に優れている。
そして、上記ゴム組成物を、必要に応じ金型等を用い、所定形状に架橋することにより、目的とするゴム製品を製造することができる。
上記ゴム組成物が練り加工性に優れていることから、上記ゴム製品は成形性に優れており、さらに、高電気抵抗であり、機械的物性に優れている。
上記ゴム製品としては、例えば、ホース、パッキン等があげられる。
【0048】
ここで、上記ゴム組成物を用いたゴム製品の製造方法の一例として、ホースの製造方法を以下に示す。
すなわち、まず、上記のようにしてゴム組成物を調製した後、上記ゴム組成物を管状(円筒状)に押出成形し、未架橋のゴム層を形成する。なお、多層構造のホースとする場合、上記ゴム層(最内層)の外周に対して、各種のゴムや樹脂からなる層を押出成形等により形成する。また、補強糸層を形成する場合、上記ゴム層(最内層)の外周に対して、所定の引揃数および打込数で、補強糸をブレード編み等して補強糸層を形成する。このようにして得られた未架橋状態のホース構造体に、マンドレルを内挿する。なお、マンドレル表面には、必要に応じ、シリコーンオイル系等の離型剤を塗布してもよい。また、上記のように、未架橋状態のホース構造体(未架橋ゴムホース)に対しマンドレルを内挿するのではなく、上記ゴム組成物をマンドレル上に直接押出成形するようにしてもよい。そして、このようにしてマンドレル上に押出成形された未架橋ゴムホースを、加圧スチームにより架橋を行った後、マンドレルを抜き取り、さらに、必要に応じオーブンにて二次架橋を行うことにより、目的とするホースを作製することができる。
【0049】
このようにして得られたホースは、単層構造であっても、2層以上の層が積層された多層構造であっても特に限定はないが、少なくとも、その最内層(単層構造の場合は、その層)が、上記ゴム組成物からなるものであることが、ホース内部を流れる流体により発生する静電気等に起因するホースの破壊、ホースに接続される口金の腐食防止等の観点から、好ましい。
【0050】
上記のようにして得られた本発明のホースにおいて、その最内層(単層構造の場合は、その層)の厚みは0.25~20mmが好ましく、より好ましくは0.5~10mmである。また、ホース内径は、2~100mmが好ましく、より好ましくは5~70mmである。
【0051】
本発明のホースは、特に限定はないが、耐熱性が要求されるホース全般に好ましく用いることができる。より好ましくは、自動車等の輸送機における自動変速機(ATやCVT)用オイルクーラーホース等のオイル系ホース、ターボエアホース等のエア系ホースといった、高電気抵抗であることを要求される耐熱ホースに用いられる。
【実施例
【0052】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、その要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
【0053】
まず、実施例および比較例に先立ち、後記の表1に記載の、N2SA/IA(×1032/g)、強酸性基濃度(×10-5mol/g)、IA(mg/g)、およびDBP吸収量(cm3/100g)を示す、カーボンブラック(1)~(12)を製造した。なお、上記各物性値は、先述の測定方法に従って測定されたものである。
ここで、上記カーボンブラック(1)~(6)は、先述の、反応工程S1、造粒工程S2、乾燥工程S3、および脱離工程S4を、この順で逐次的に行うことにより製造したものである。すなわち、まず、上記反応工程S1において、先述の反応炉を使用し、燃料の供給量、原料油の導入量、空気の供給量、原料油を導入してから急冷により反応を停止させるまでの反応時間、およびアルカリ金属塩水溶液の導入量をそれぞれ変化させることにより、性状の異なる5種類のカーボンブラック原料を生成した後、上記造粒工程S2において、一定条件により湿式造粒処理を行い、次いで、脱離工程S4において、造粒されたカーボンブラック原料に、間接加熱式回転乾燥機を使用して一定条件で乾燥処理を行い、上記脱離工程S4において、350℃に加熱した流動層内に乾燥カーボンブラック原料を配置し、流動層内に窒素ガスを導入しながら、乾燥カーボンブラック原料を10分間滞留させることにより、上記カーボンブラック(1)~(6)を製造した。
また、カーボンブラック(7)~(12)の製造においては、上記脱離工程S4は行われなかったが、それ以外の工程は、上記カーボンブラック(1)~(6)の製造方法に準じて行い、上記反応工程S1における、燃料の供給量、原料油の導入量、空気の供給量、原料油を導入してから急冷により反応を停止させるまでの反応時間、およびアルカリ金属塩水溶液の導入量をそれぞれ変化させることにより、性状の異なるカーボンブラック(7)~(12)を製造した。
【0054】
【表1】
【0055】
〔実施例1〕
極性ゴム(1)(商品名:デンカER8401、デンカ社製、SP値:9.4)100重量部と、上記カーボンブラック(1)60重量部と、可塑剤(1)(アジピン酸エーテルエステル系可塑剤(アデカサイザーRS-107、ADEKA社製))15重量部と、流動パラフィン(商品名:流動パラフィン 70S、三光化学社製)2重量部と、ステアリン酸(商品名:ルナックS-30、花王社製)2重量部と、老化防止剤(商品名:ナウガード445、クロンプトン社製)2重量部と、イミダゾール化合物(商品名:2MZ-CN、四国化成工業社製)0.75重量部と、ラウリル硫酸ナトリウム(商品名:エマール2FG、花王社製)1重量部とを、5Lニーダーを用いて混練した後、これをオープンロールに移し、混練を続けることにより、ゴム組成物を調製した。つぎに、上記ゴム組成物を、引張物性測定用の厚み2mmのゴムシート状となるよう、プレス加硫機によりプレス成形して、加硫ゴムシートを作製した。
【0056】
〔実施例2~11、比較例1~8〕
極性ゴムの種類、カーボンブラックの種類および割合(極性ゴム100重量部に対する割合)、可塑剤の種類を、後記の表2および表3に示すようにした。それ以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を調製した。
なお、後記の表2および表3に記載の、極性ゴム(2)は、商品名:ニポールDN401(ゼオン社製、SP値:8.9)であり、極性ゴム(3)は、商品名:エピクロマーCG105(大阪ソーダ社製、SP値:9.8)である。
また、後記の表2および表3に記載の、カーボンブラックの種類(カーボンブラック(1)~(12))は、前記表1に示すものである。
また、表3に記載の、比較例7のカーボンブラック(13)は新日化カーボン社製ニテロン#10N(IA:41mg/g、N2SA:41m2/g、DBP吸収量121cm3/100g)である。
また、後記の表2および表3に記載の可塑剤(2)は、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(大八化学工業社製)であり、シリカは、ULTRASIL VN3(Evonik社製)であり、クレーは、カオリンクレー(竹原化学工業社製)である。
【0057】
このようにして得られた実施例および比較例のゴム組成物を用い、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表2および表3に併せて示した。
【0058】
≪引張物性≫
上記ゴム組成物を架橋させて得られたサンプルに対し、JIS K 6251-2017(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-引張特性の求め方)に従って、引張強度TS(MPa)と伸びEB(%)を測定した。そして、下記の基準に従い、引張強度と伸びを評価した。
〇:引張強度TSが8.0MPa以上かつ伸びEBが170%以上
×:引張強度TSおよび伸びEBの少なくとも一方が、「〇」の基準を満たさない
【0059】
≪体積抵抗率≫
上記ゴム組成物を架橋させて得られたサンプルに対し、JIS K 6271-1:2015(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-電気抵抗率の求め方)に従って、体積抵抗率VR(Ω・cm)を測定した。
具体的には、以下の条件で、体積抵抗率VRを求めた。
測定方法: 二重リング電極法
ガード電極: 外径 80mm、内径 70mm
主電極: 50mm
試料外寸法: 100mm×100mm
サンプル厚さ: 2mm
印加電圧: 1V
検知電流範囲: 200pA~20mA
そして、下記の基準に従い、体積抵抗率VRを評価した。
〇:体積抵抗率LogVRが5.5Ω・cm以上
×:体積抵抗率LogVRが5.5Ω・cm未満
【0060】
≪練り加工性≫
上記ゴム組成物を調製する際の、オープンロールによる混練作業の際に、ロール/ゴム間に粘着が生じているか否かを、下記の基準に従い、目視により評価した。
〇:ロール/ゴム間に粘着が生じない
×:ロール/ゴム間に粘着が生じている
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
上記結果より、実施例のゴム組成物は、引張強度が高く、しかも体積抵抗率が高く、高電気抵抗であり、練り加工性にも優れた評価が得られた。
【0064】
これに対し、比較例のゴム組成物は、本発明に規定の要件を満たすカーボンブラックを使用しておらず、実施例のゴム組成物のように、本発明に要求される各特性(引張強度、体積抵抗率、練り加工性)を全て満たすものとはなり得なかった。
なお、比較例7では、導電性の高いカーボンブラック(カーボンブラック(13))にシリカを併用することにより、高電気抵抗を達成したものの、練り加工性に劣る結果となった。また、比較例8は、高電気抵抗のカーボンブラック(カーボンブラック(8))にクレーを併用したものであり、練り加工性の改善効果は得られたが、引張強度に劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のゴム組成物は、ホース、パッキン等の各種ゴム製品の材料として用いられる。好ましくは、自動車用自動変速機(ATやCVT)用オイルクーラーホース、自動車用ターボエアホース等の最内層形成材料として用いられる。そして、これらのホースは、自動車,トラクター,耕運機,船舶等の輸送機に、好ましく用いられる。
【符号の説明】
【0066】
1 酸素含有ガス導入口
2 燃焼用バーナ
3 アルカリ金属塩水溶液供給ノズル
4 燃料燃焼帯域
5 原料油導入ノズル
6 原料導入帯域
7 冷却液導入ノズル
8 反応帯域
図1