(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】金属ストリップ熱処理炉
(51)【国際特許分類】
C21D 9/56 20060101AFI20231011BHJP
F27B 9/10 20060101ALI20231011BHJP
F27B 9/12 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C21D9/56 101C
F27B9/10
F27B9/12
(21)【出願番号】P 2021082488
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【氏名又は名称】奥西 祐之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】酒井 崇宏
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-149324(JP,A)
【文献】国際公開第98/41661(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/52- 9/66
F27B 9/00- 9/40
F26B 1/00-25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理する金属ストリップが内部で走行される炉体と、
該炉体内部に設けられた内部ダクト及び該炉体外部に設けられ、該内部ダクトと連通された外部ダクトからなり、該炉体内部の気体を循環させる循環ダクト系と、
上記外部ダクトに設けられ、気体を加熱する加熱手段とを備え、
上記内部ダクトには、金属ストリップに気体を吹き付けるノズルが設けられると共に、金属ストリップの加熱量を下げるために、気体を上記炉体内部に排出する連通開孔が開閉自在に設けられることを特徴とする金属ストリップ熱処理炉。
【請求項2】
熱処理する金属ストリップが内部で走行される炉体と、
該炉体内部に設けられた内部ダクト及び該炉体外部に設けられ、該内部ダクトと連通された外部ダクトからなり、該炉体内部の気体を循環させる循環ダクト系と、
上記外部ダクトに設けられ、気体を冷却する冷却手段とを備え、
上記内部ダクトには、金属ストリップに気体を吹き付けるノズルが設けられると共に、金属ストリップの冷却量を下げるために、気体を上記炉体内部に排出する連通開孔が開閉自在に設けられることを特徴とする金属ストリップ熱処理炉。
【請求項3】
前記連通開孔を開閉する開閉手段を備え、
上記連通開孔は、前記内部ダクトの適宜箇所に配置され、
上記開閉手段は、上記連通開孔を開閉自在に塞ぐ開閉部材と、該開閉部材から上記炉体外部へ延出される伝達部材と、上記炉体外部に設けられ、上記伝達部材に係合して上記開閉部材を移動させる伸縮自在なシリンダーとを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の金属ストリップ熱処理炉。
【請求項4】
前記内部ダクトは、支持部を介して前記炉体に支持され、前記連通開孔は、上記支持部に近接した位置に配置されることを特徴とする請求項1~3いずれかの項に記載の金属ストリップ熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップに熱処理を施す炉体内部の温度変化を抑制しながら、金属ストリップに吹き付ける気体量を迅速に変更することが可能であると共に、構造がきわめて簡単で信頼性が高くかつ設備コストの低減が可能な金属ストリップ熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炉体内部で走行する金属ストリップに対して熱処理を行う金属ストリップ熱処理炉としては、例えば特許文献1~3が知られている。
【0003】
特許文献1の「金属ストリップ用竪型連続焼鈍炉」は、加熱室内に間接加熱手段と加熱用回転ロールとを設けるとともに、加熱室の入口側に予熱帯を、また、出口側に冷却帯を設けて、金属ストリップを加熱用回転ロールに巻回しながら加熱搬送して焼鈍を行うようにしている。
【0004】
この金属ストリップ用竪型連続焼鈍炉の予熱帯には吸引ダクトが設けられ、熱風循環ファンにより吸引された予熱帯の雰囲気は、電熱ヒータチューブ等の間接加熱手段を備えた加熱器で所定温度に加熱されて、供給ダクトを介して各熱風吹付ノズルに供給され、金属ストリップに熱風を吹付けて予熱するようになっている。
【0005】
特許文献2の「ストリップ材処理装置」は、ヒータを有する循環ダクトの下流側をストリップ材の幅方向に区分してなり、ストリップ材の幅方向に並んでストリップ材に熱風を吹き付ける複数の熱風吹き付け手段と、熱風吹き付け手段の下流側で、ストリップ材の幅方向の温度分布を計測する測温手段と、測温手段の検出結果に応じて、ストリップ材の幅方向の温度差を低減するように、熱風吹き付け手段毎に、ダンパの開度を調節することで吹き付ける熱風の風量を調節する熱風調節手段とを有している。
【0006】
特許文献3の「帯状ワーク処理設備のシャッター機構」は、走行する帯状ワークに気体を吹き付ける噴射口を備えたノズルと、ノズルと帯状ワークとの間に、ノズルに対し空隙を空けて配置可能なシャッターと、シャッターがノズルと帯状ワークとの間を遮る第1位置及びシャッターがノズルと帯状ワークとの間を遮らない第2位置にシャッターを移動させる移動装置とを有し、移動装置は、シャッターと係合し、帯状ワークの走行方向に沿って設けられたロッドを走行方向に移動させるようにしている。
【0007】
この帯状ワーク処理設備では、走行する帯状ワークに吹き付ける熱風をシャッターで遮ることにより、帯状ワークの加熱処理温度を下げている。
【0008】
上記特許文献1~3のように、走行する金属ストリップの熱処理は、金属ストリップに熱風を吹き付けることで行われ、連続処理する金属ストリップの材質や厚さが変わること等により、処理温度のパターンが変わり、熱処理温度を下方に変更する必要が出た場合には、金属ストリップに吹き付ける熱風の量を減らしている。
【0009】
金属ストリップに吹き付ける熱風の量を減らすために、特許文献1では、熱風循環ファンの回転数を下げることとし、特許文献2では、熱風吹き付け手段毎に設けられたダンパの開度を調節するようにし、特許文献3では、熱風を吹き付けるノズルと金属ストリップとの間にシャッターを配置して熱風を遮るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-61276号公報
【文献】特開2010-163634号公報
【文献】特許第6332878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
熱処理温度を下げる際に、特許文献1のように、熱風循環ファンの回転数を下げることでは、所望の温度に下がるまでに時間が長くかかってしまう。
【0012】
また、熱風の風量自体が減少するため、炉内全体の温度も低くなってしまい、再度、熱処理温度を上げるときに、それに要する時間が長くなってしまう。
【0013】
熱処理温度の上げ下げの変更に長い時間を要すると、その間、適切な熱処理が施されないままの金属ストリップが炉外へ搬出されることとなり、それら金属ストリップが無駄になってしまうという課題があった。
【0014】
引用文献2のようにダンパを設けたり、引用文献3のようにシャッターを設けることは、構造が複雑化すると同時に、多数箇所に設けられているノズルに個別に対応させるようにして、ダンパやシャッターを多数設備する必要があって、設備コストが嵩んでしまうという課題があった。
【0015】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、金属ストリップに熱処理を施す炉体内部の温度変化を抑制しながら、金属ストリップに吹き付ける気体量を迅速に変更することが可能であると共に、構造がきわめて簡単で信頼性が高くかつ設備コストの低減が可能な金属ストリップ熱処理炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明にかかる金属ストリップ熱処理炉は、熱処理する金属ストリップが内部で走行される炉体と、該炉体内部に設けられた内部ダクト及び該炉体外部に設けられ、該内部ダクトと連通された外部ダクトからなり、該炉体内部の気体を循環させる循環ダクト系と、上記外部ダクトに設けられ、気体を加熱する加熱手段とを備え、上記内部ダクトには、金属ストリップに気体を吹き付けるノズルが設けられると共に、金属ストリップの加熱量を下げるために、気体を上記炉体内部に排出する連通開孔が開閉自在に設けられることを特徴とする。
【0017】
本発明にかかる金属ストリップ熱処理炉は、熱処理する金属ストリップが内部で走行される炉体と、該炉体内部に設けられた内部ダクト及び該炉体外部に設けられ、該内部ダクトと連通された外部ダクトからなり、該炉体内部の気体を循環させる循環ダクト系と、上記外部ダクトに設けられ、気体を冷却する冷却手段とを備え、上記内部ダクトには、金属ストリップに気体を吹き付けるノズルが設けられると共に、金属ストリップの冷却量を下げるために、気体を上記炉体内部に排出する連通開孔が開閉自在に設けられることを特徴とする。
【0018】
前記連通開孔を開閉する開閉手段を備え、上記連通開孔は、前記内部ダクトの適宜箇所に配置され、上記開閉手段は、上記連通開孔を開閉自在に塞ぐ開閉部材と、該開閉部材から上記炉体外部へ延出される伝達部材と、上記炉体外部に設けられ、上記伝達部材に係合して上記開閉部材を移動させる伸縮自在なシリンダーとを備えたことを特徴とする。
【0019】
前記内部ダクトは、支持部を介して前記炉体に支持され、前記連通開孔は、上記支持部に近接した位置に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる金属ストリップ熱処理炉にあっては、金属ストリップに熱処理を施す炉体内部の温度変化を抑制しながら、金属ストリップに吹き付ける気体量を迅速に変更することができると共に、構造がきわめて簡単で信頼性が高くかつ設備コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る金属ストリップ熱処理炉の好適な一実施形態を示す概略側断面図である。
【
図2】
図1に示した金属ストリップ熱処理炉に備えられる開閉手段を示し、
図2(A)は、開閉手段を閉じているときの要部拡大図、
図2(B)は、開閉手段を開いているときの要部拡大図である。
【
図3】
図1に示した金属ストリップ熱処理炉の変形例を示し、
図3(A)は、開閉手段を閉じているときの要部拡大図、
図3(B)は、開閉手段を開いているときの要部拡大図である。
【
図4】
図1に示した金属ストリップ熱処理炉の他の変形例を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる金属ストリップ熱処理炉の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
本実施形態に係る金属ストリップ熱処理炉(以下、熱処理炉という)1は、
図1に示すように、断熱材をケーシングで被覆した構成の炉体2上部の開口2aから送り込まれ、当該炉体2下部の開口2bから送り出され、炉体2内部で上から下に向かって走行される金属ストリップWに、加熱された気体を熱風として吹き付けて熱処理する熱風式の熱処理炉である。金属ストリップWの走行方向は、下から上に向かう逆方向であっても良い。
【0024】
熱処理炉1には、炉体2内部に上下方向に沿って設けられた内部ダクト3及び炉体2外部に上下方向に沿って設けられ、内部ダクト3と連通管5aを介して連通された外部ダクト4を有し、炉体2内部の熱風が、炉体2内部に連通される外部ダクト4の吸込口4aから外部ダクト4、内部ダクト3を経て炉体2内部へと循環される循環ダクト系5が設けられている。
【0025】
外部ダクト4には、気体を加熱して熱風にする加熱手段としてのヒータ6が設けられている。また、循環ダクト系5には、熱風を外部ダクト4から内部ダクト3にわたって循環させるブロア7が設けられている。
【0026】
内部ダクト3は、金属ストリップWの表面に面して当該金属ストリップWをその厚さ方向両側から挟む配置で、互いに間隔を隔てて向かい合う配置で一対設けられている。すなわち、金属ストリップWは、対面する2つの内部ダクト3の間を通過するように走行される。これら内部ダクト3は、その下端3aが炉体2の底部2cに支持されて設けられている。
【0027】
内部ダクト3と外部ダクト4とは、それらの下部同士が炉壁2dを貫通して設けられた上下一対の連通管5aで接続され、連通されている。
【0028】
外部ダクト4は、炉体2の外部で適宜に支持されて設けられている。外部ダクト4の上部には、ブロワ7が設けられている。
【0029】
外部ダクト4の上部は、吸込口4aを介して、炉体2内部の上方部分と連通されている。外部ダクト4の下部は、下側の連通管5aを介して内部ダクト3の下部と連通されている。外部ダクト4の上下方向中間位置には、ヒータ6が設けられている。
【0030】
ヒータ6の加熱による熱風は、ブロワ7によって外部ダクト4内を下方に向かって流通し、下側の連通管5aを通って内部ダクト3の下部に流入し、内部ダクト3内を上方に向かって流通し、後述するノズル8から炉体2内部へ吹き出され、金属ストリップWを加熱し、その後、吸込口4aを通って外部ダクト4の上部に戻るように循環ダクト系5内を循環される。
【0031】
図示例では、循環ダクト系5は、金属ストリップWを、当該金属ストリップWの厚さ方向両側から挟む、向かい合う配置で一対設けられている。
【0032】
しかしながら、吸込口4aを一箇所として、ヒータ6及びブロア7を有する外部ダクト4を一つだけ設置するようにし、熱風は、当該外部ダクト4から分岐させて、向かい合う配置で設けられる内部ダクト3双方に供給するようにして、図中、いずれか片方の外部ダクト4とヒータ6及びブロア7を省略する構成としても良い。
【0033】
内部ダクト3には、金属ストリップWに面する配置で、金属ストリップWに内部ダクト3内の熱風を吹き付ける複数のノズル8が設けられている。
【0034】
各ノズル8は、金属ストリップWの幅方向(金属ストリップWの走行方向と直交する方向)に長いスリット状に形成され、互いに上下方向に間隔を隔てて配置されている。
【0035】
炉体2内部に設けられている内部ダクト3は、炉体2の底部2cに下端3aが支持されていて、上方に向けて熱延びが生じる。
【0036】
このように熱延びが生じる内部ダクト3の上面に、
図1及び
図2に示すように、炉体2内部に対して開放可能な連通開孔9が設けられている。すなわち、連通開孔9は、開閉手段10により開閉自在に構成される。
【0037】
開閉手段10は、内部ダクト3の上面に配置された連通開孔9を開閉自在に塞ぐ板状の開閉部材11と、開閉部材11の上面中央に設けられ、上向きに延出されたロッド状の伝達部材12と、伝達部材12の上端部に設けられる第1フランジ13と、第1フランジ13の下方に配置され、伝達部材12が貫通される円環状の第2フランジ14と、第1フランジ13と第2フランジ14との間を外部から封止する筒状の伸縮自在なベローズ15とを有している。
【0038】
伝達部材12は、上下方向に作動される。連通開孔9は、伝達部材12の下方移動で開閉部材11が当接されることにより閉止され、伝達部材12の上方移動で開閉部材11が離れることにより開放される。
【0039】
伝達部材12は、開閉部材11から、内部ダクト3上方の炉壁2dに設けられた通し孔2eに移動自在に貫通されて、炉体2外部となる炉体2上方に突出されている。
【0040】
第1フランジ13は、炉体2外部で、伝達部材12の上端部に取り付けられている。従って、第1フランジ13も上下方向に移動される。第2フランジ14は、炉体2の外部で、取り付け座23を介して炉体2に固定して設けられている。
【0041】
ベローズ15は、第1フランジ13及び第2フランジ14の周縁に接合されている。ベローズ15は、伝達部材12及び第1フランジ13の上下動で第2フランジ14に対して接近・離隔するときに伸縮される。
【0042】
また、ベローズ15は、通し孔2eを介して炉体2内部に連通している第1フランジ13と第2フランジ14との間を包囲して、炉体2内部の雰囲気を封じている。
【0043】
炉体2外部となる炉体2上には、開閉手段10の伝達部材を押し上げて連通開孔9を開放する押上機構16が設けられている。
【0044】
押上機構16は、上下方向に伸縮可能なシリンダー17と、シリンダー17により昇降される板状のスライド部材18と、スライド部材18の上下方向移動を案内するガイド19とを有している。
【0045】
シリンダー17は、その伸縮方向が伝達部材12の延出方向と平行になるように、伝達部材12と並べて配置されている。シリンダー17と伝達部材12との間に、棒状のガイド19が立設されている。
【0046】
スライド部材18には、スラストベアリング20が設けられ、スラストベアリング20に、ガイド19が上下方向へ貫通され、これにより、スライド部材18は、スラストベアリング20を介してガイド19に案内されつつ昇降移動される。
【0047】
スライド部材18は、ガイド19を挟んで、その一端部の下方に、シリンダー17のシリンダーロッド17aが接離自在に当接され、他方の端部が開閉手段10の第1フランジ13に重合状態で接合されている。
【0048】
シリンダー17は、
図2(A)に示すように、シリンダーロッド17aが下方へ収縮された(シリンダーロッド17aがシリンダー17内方に没入された)状態では、当該シリンダーロッド17aがスライド部材18から離れて、当該スライド部材18の下方に位置し、このとき、連通開孔9は、開閉部材11によって閉じられている。
【0049】
そして、
図2(B)に示すように、シリンダーロッド17aが上方へ伸長作動される(シリンダーロッド17aがシリンダー17外方へ引き出されるように作動される)と、スライド部材18と当接して係合し、スライド部材18と共に開閉手段10の第1フランジ13及び伝達部材12、さらに開閉部材11を上方に押し上げる。
【0050】
開閉部材11が上方に押し上げ移動されると、内部ダクト3の連通開孔9が開放され、内部ダクト3内の熱風の一部が炉体2内部に排出される。
【0051】
このとき、シリンダーロッド17aの伸長作動をストローク途中で止めて、開閉部材11による連通開孔9の開き具合を全開状態よりも狭めるように調整することで、熱風の排出量を調節することもできる。
【0052】
他方、シリンダーロッド17aを収縮作動させると、押し上げが解除されたスライド部材18は、それ自体、並びに第1フランジ13及び開閉部材11の自重による伝達部材12の下降によって、ガイド19に沿って第1フランジ13と共に降下し、これに伴って開閉部材11により連通開孔9が閉止される。また、シリンダーロッド17aは、
図2(A)に示すように、スライド部材18から離れた状態となる。
【0053】
すなわち、シリンダーロッド17aが伸長作動されて上昇すると、連通開孔9が開放され、シリンダーロッド17aが収縮作動されて降下すると、開閉手段10は、スライド部材18等と共に自重で降下して連通開孔9が閉止される。
【0054】
上記のようにシリンダーロッド17aとスライド部材18とを接離自在に構成し、開閉部材11の重さによって重力の作用で連通開孔9を閉止することに代えて、シリンダーロッド17aとスライド部材18とを結合し、重力によらずに、シリンダーロッド18aの伸長作動及び収縮作動だけで、開閉部材11を上下に動かして連通開孔9を開閉するようにしても良いことはもちろんである。
【0055】
本実施形態に係る熱処理炉1は、シリンダーロッド17aが降下した状態、すなわち連通開孔9を閉止した状態で、金属ストリップWを走行させると共にヒータ6及び循環ダクト系5のブロワ7を稼働し、内部ダクト3のノズル8から熱風を金属ストリップWに吹き付けて、所定の温度で金属ストリップWを熱処理する。
【0056】
他方、金属ストリップWの加熱量(熱処理熱量)を下げるときには、シリンダーロッド17aを伸長作動して、連通開孔9を開放する。連通開孔9を開放すると、内部ダクト3内の熱風の一部が当該連通開孔9から炉体2の内部に排出され、ノズル8から金属ストリップWに吹き付けられる熱風の量が減少し、連通開孔9の閉止状態よりも低い加熱量で金属ストリップWを熱処理することができる。
【0057】
本実施形態に係る熱処理炉1によれば、内部ダクト3に、当該内部ダクト3内を炉体2内部に連通させる連通開孔9を設けると共に、連通開孔9を開閉する開閉手段10を設けたので、開閉手段10で連通開孔9を閉止しているときは、内部ダクト3のノズル8から金属ストリップWに吹き付ける熱風の量が多くなり、開閉手段10により連通開孔9を開放すると、内部ダクト3内の熱風が連通開孔9から排出されて、ノズル8から金属ストリップWに吹き付ける熱風の量を少なくすることができる。
【0058】
内部ダクト3に連通開孔9を設けると共にその開閉手段10を備えるというきわめて簡単な構造で、高い信頼性と設備コストの低減を確保することができると共に、連通開孔9を開放するだけで、ブロア7やヒータ6の運転を制御する必要なく、そしてまた、内部ダクト3から炉体2内部へ熱風の一部を排出するようにしているので、炉体2内部の温度変化を抑制でき、きわめて迅速に金属ストリップWに対して吹き付ける熱風の量を少なくなるように加減することができて、金属ストリップWに無駄が生じることも防止することができる。
【0059】
連通開孔9を開閉手段10で開閉する構成は、すべてのノズル8からの熱風の吹き出し量を一挙に低減できるので、背景技術のように、複数のノズル個々にダンパやシャッターを設ける場合よりも、構造が簡単であって、設備コストを軽減することができる。
【0060】
熱風は連通開孔9から炉体2内部に排出されるので、金属ストリップWに吹き付ける熱風の量を変更して加熱量を変えても、炉体2内部の温度を保つことができる。このため、連通開孔9を閉じて金属ストリップWの加熱量を再び元に戻す際にかかる時間も短縮することができ、無駄な金属ストリップWの発生を抑えることができる。
【0061】
内部ダクト3の連通開孔9及びこれを開閉する開閉部材11、通し孔2eを貫通する伝達部材12は、内部ダクト3の上面に設けられているので、内部ダクト3の熱延びに応じて移動することができ、連通開孔9の閉止状態を確実に維持することができる。
【0062】
押上機構16は、シリンダー17を含め、炉体2外部に設けられているので、熱による損傷を防止することができる。
【0063】
図3には、上記実施形態の変形例が示されている。上記実施形態では、連通開孔9を内部ダクト3の上面に設けた場合について説明したが、この変形例では、上述した内部ダクト3の熱延びを考慮して、連通開孔9は、内部ダクト3が炉体2の底部2cに支持される支持部としての下端3aに近接する位置、すなわち熱延びの起点に近接する位置に横向きに設けられている。この場合、開閉部材11等の自重で連通開孔9を閉止状態に維持することはできない。
【0064】
この変形例では、シリンダー17は横方向に伸縮可能で、伸長作動するシリンダーロッド17aが当接され、
図3(A)に示すように、収縮作動したシリンダーロッド17aが離れるように、シリンダーロッド17aが接離自在に当接されるスライド部材18と、当該スライド部材18に相対向する配置で炉体2側に設けたばねシート22との間に、伝達部材12を内部ダクト3側へ押圧付勢するばね21が設けられる。
【0065】
そして、
図3(B)に示すように、シリンダーロッド17aを伸長作動すると、当該シリンダーロッド17aがスライド部材18に当接して押圧し、これにより、ばね21に抗して、伝達部材12が炉体2外方へ向けて引き出され、開閉部材11が連通開孔9を開放する。
【0066】
他方、シリンダーロッド17aを収縮作動すると、当該シリンダーロッド17aがスライド部材18から離れ、スライド部材18に結合された伝達部材12は、炉体2側のばねシート22で支持されたばね21によって、炉体2内方へ向けて押し込まれ、
図3(A)に示したように、開閉部材11が連通開孔9を閉じる。
【0067】
図4には、上記実施形態の他の変形例が示されている。当該変形例も、
図3の変形例と同様に、連通開孔9が、熱延びの起点に近接する位置に横向きに設けられる場合である。
【0068】
炉体2の外部には、通し孔2eと連通するようにして設けられ、伝達部材12が貫通されるスリーブ24と、スリーブ24に、その内方へ向けて挿入・抜出自在に設けられる環体状のシール押さえ25と、スリーブ24内方に、伝達部材12を周りから囲繞して設けられ、熱風が通し孔2eからスリーブ24を介して炉体2の外部に漏出するのを防止するリング状の可撓性シール材26と、炉体2に取り付け座23を介して設けられ、横方向に伸縮作動されるシリンダーロッド17aが伝達部材12に連結されるシリンダー17とが設けられる。
【0069】
シール材26は、シール押さえ25と、スリーブ24内方に、当該スリーブ24と一体に設けられたストッパリング24bとの間に挟み込んで設置され、また、シール押さえ25及びスリーブ24にはそれぞれ、ボルト・ナットなどの締結手段27で締め緩め自在に連結されるフランジ24a,25aが備えられる。
【0070】
締結手段27を締め付けてシール押さえ25をスリーブ24内方へ進入させると、シール材26が、伝達部材12の外周に圧接するように圧縮され、これにより炉体2内部の気密性が確保される。また、スリーブ24を貫通する伝達部材12の直進移動性も高められる。
【0071】
この変形例では、シリンダー17のシリンダーロッド17aを伸長作動すると、伝達部材12が炉体2内方へ押し込まれて、開閉部材11により連通開孔9が閉じられ、シリンダーロッド17aを収縮作動すると、伝達部材12が炉体2外方へ引き出されて、開閉部材11により連通開孔9が開放される。
【0072】
これら変形例では、内部ダクト3の支持部である下端3aに近接する位置に連通開孔9を設けるようにしているので、内部ダクト3が熱延びしても、連通開孔9の位置が動くことを抑制して、適切に開閉することができる。
【0073】
これら変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0074】
上述した実施形態及び変形例では、気体をヒータ6で加熱した熱風によって金属ストリップWを加熱処理する場合について説明したが、本発明は加熱処理に限られるものではなく、ヒータ6に代えて、冷却手段としてのクーラを備えるようにし、気体を当該クーラで冷却した冷風によって金属ストリップWを冷却処理する場合であっても、金属ストリップWの冷却量を調整できて、同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0075】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0076】
1 金属ストリップ熱処理炉
2 炉体
2a 炉体上部の開口
2b 炉体下部の開口
2c 底部
2d 炉壁
2e 通し孔
3 内部ダクト
3a 内部ダクトの下端
4 外部ダクト
4a 吸込口
5 循環ダクト系
5a 連通管
6 ヒータ
7 ブロワ
8 ノズル
9 連通開孔
10 開閉手段
11 開閉部材
12 伝達部材
13 第1フランジ
14 第2フランジ
15 ベローズ
16 押上機構
17 シリンダー
17a シリンダーロッド
18 スライド部材
19 ガイド
20 スラストベアリング
21 ばね
22 ばねシート
23 取り付け座
24 スリーブ
24a フランジ
24b ストッパリング
25 シール押さえ
25a フランジ
26 シール材
27 締結手段
W 金属ストリップ