(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム及び再生方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20231011BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H01L21/306 R
H01L21/304 643A
H01L21/304 648K
H01L21/304 648F
(21)【出願番号】P 2021175344
(22)【出願日】2021-10-27
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390004581
【氏名又は名称】三益半導体工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 俊一
(72)【発明者】
【氏名】日下部 恭一
(72)【発明者】
【氏名】糸井 悠貴
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-59884(JP,A)
【文献】特開2016-192473(JP,A)
【文献】特開平7-31810(JP,A)
【文献】特開2019-91815(JP,A)
【文献】特開2018-182228(JP,A)
【文献】特開2003-135938(JP,A)
【文献】特開2015-9214(JP,A)
【文献】国際公開第03/037477(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハをスピンエッチングするためのエッチング液循環式スピンエッチング装置のポンプ保護用フィルターの再生システムであり、
エッチング液が貯留されてなるエッチング液循環タンクと、
エッチング液循環式スピンエッチング装置に載置される前記ウェーハの上面に前記エッチング液循環タンクからのエッチング液を供給するためのエッチング液供給ラインと、
前記ウェーハの上面に供給されたエッチング液を回収するエッチング液回収ラインと、
前記エッチング液回収ラインに、切り替え可能に接続された、前記エッチング液循環タンクへと順方向にエッチング液を流すエッチング液循環ライン及び前記エッチング液中の異物を排出する異物排出ラインと、
前記エッチング液循環ラインに前記順方向に流れるエッチング液中の異物を捕集するために設けられたポンプフィルターと、
前記ポンプフィルターのフィルター部分に、前記エッチング液循環ラインの順方向の流れとは逆方向の圧力をかける圧力機構と、
を含み、
前記ポンプフィルターに捕集された異物が異物排出ラインへと送られるようにした、スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム。
【請求項2】
前記エッチング液循環式スピンエッチング装置が、
エッチングされる前記ウェーハを回転保持するウェーハ回転保持装置と前記ウェーハ回転保持装置の周囲に設けられたエッチング液回収機構とを含み、
前記エッチング液回収機構と前記エッチング液回収ラインとが接続されてなり、前記ウェーハの上面に供給されたエッチング液が前記エッチング液回収機構を介して前記エッチング液回収ラインへと流れるようにした、請求項1記載のスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム。
【請求項3】
前記圧力が、水流及び/又はエアーによる圧力である、請求項1又は2記載のスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム。
【請求項4】
前記ウェーハが、支持板が貼り付け剤で極薄ウェーハに貼り付けられた積層体である、請求項1~3いずれか1項記載のスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項記載のスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システムを用いて、前記エッチング液循環ラインのポンプフィルターのフィルター部分に、前記エッチング液循環ラインの順方向の流れとは逆方向の圧力をかけることで、前記ポンプフィルターに捕集された異物が異物回収ラインへと送られるようにした、スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生方法。
【請求項6】
前記圧力が、水流及び/又はエアーによる圧力である、請求項5記載のスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生方法。
【請求項7】
請求項1~4いずれか1項記載のスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システムが組み込まれてなる、ウェーハをスピンエッチングするためのエッチング液循環式スピンエッチング装置。
【請求項8】
前記エッチング液循環式スピンエッチング装置が、
エッチングされるウェーハを回転保持するウェーハ回転保持装置と、前記ウェーハ回転保持装置の周囲に設けられたエッチング液回収機構と、を含む請求項7記載のエッチング液循環式スピンエッチング装置。
【請求項9】
前記ウェーハが、支持板が貼り付け剤で極薄ウェーハに貼り付けられた積層体である、請求項7又は8記載のエッチング液循環式スピンエッチング装置。
【請求項10】
請求項7~9いずれか1項記載のエッチング液循環式スピンエッチング装置を用いて、ウェーハに対してスピンエッチングを行う、スピンエッチング方法。
【請求項11】
前記ウェーハが、支持板が貼り付け剤で極薄ウェーハに貼り付けられた積層体である、請求項10記載のスピンエッチング方法。
【請求項12】
請求項10又は11記載のスピンエッチング方法によるエッチング工程を含むウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ、特に極薄ウェーハに支持板が貼り付け剤で貼り付けられた積層体である半導体ウェーハ、をスピンエッチングするためのエッチング液循環式スピンエッチング装置のポンプフィルターの再生システム及び再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程において、シリコンなどの半導体ウェーハ(以下「ウェーハ」という)を回転させつつエッチング液を滴下してエッチング処理を行う工程(スピンエッチングとも呼ばれる)が行われている。
【0003】
このようなスピンエッチングを行うためのウェーハ表面処理装置として、出願人は、スピンエッチングに使用したエッチング液を回収できる、廃液回収機構付ウェーハ表面処理装置を提案し、好評を得ている(特許文献1)。
【0004】
そして、このような廃液回収機構付ウェーハ表面処理装置を用いると、使用したエッチング液を回収できるので、エッチングに使用したエッチング液を回収し濾過してポンプで循環させてエッチング液を再利用するようにした、廃液回収機構付ウェーハ表面処理装置を用いたエッチング液循環式のスピンエッチング装置が従来使われている。エッチング液循環式のスピンエッチング装置は、例えば特許文献2に開示されている。また、エッチング液循環式のスピンエッチング装置の循環ポンプの保護には、異物を捕集するためのポンプ保護用のフィルター(以下「ポンプフィルター」という)が用いられる。このようなポンプ保護用のフィルターの例としては、特許文献3等がある。
【0005】
一方、半導体基板であるウェーハの厚さは益々薄化しており、厚さ100μm以下のウェーハ、例えば厚さ60μm程度、や、或いは、さらに厚さを薄くした極薄ウェーハも用いられるようになってきている。
【0006】
このような極薄ウェーハの場合、シリコンなどのウェーハのみだと、ウェーハの反りや歪みによって、半導体基板のウェーハが割れやすく、取り扱いができない。そのため、ウェーハに機械的研摩や化学的浸食などの処理を行なう前に、支持板を貼り付け剤でウェーハに貼り付けてから、ウェーハへの処理を施すことが行われている。
【0007】
上記支持板はガラス製のサポートガラスが用いられることが多く、上記貼り付け剤としては、接着剤が用いられることが多い。このようなサポートガラスをウェーハに貼り付けた積層体の例としては、例えば、特許文献4がある。
【0008】
そして、このような積層体の例を本願の
図2に示す。
図2において、積層体100は、ウェーハWにサポートガラス102が接着剤104によって貼り付けられた構造となっている。
【0009】
しかし、上記した従来のエッチング液循環式のスピンエッチング装置では、極薄ウェーハに支持板が貼り付け剤で貼り付けられた積層体に対して約200枚程度エッチング処理を行うと、エッチング液循環式のスピンエッチング装置のポンプフィルターに異物が付着して詰まってしまうので、詰まる度にポンプフィルターの交換を余儀なくされていた。このようなポンプフィルターは比較的高価であり、また、取り寄せるにあたっても時間を要するため、その間、該当するスピンエッチング装置でのエッチング処理ができないという問題が生じていた。
【0010】
本願発明者らが原因について検討を行ったところ、前記極薄ウェーハをスピンエッチング処理する枚数が増えるにつれて、ポンプフィルターへの異物の付着量も増えるため、前記極薄ウェーハをスピンエッチング処理する際に生じる異物と考えられた。
【0011】
本願発明者らがさらなる検討を行ったところ、上記したサポートガラスが極薄ウェーハに貼り付けられた積層体の場合、スピンエッチング装置でエッチング処理を行うと、
図2の点線部分の接着剤がエッチングで剥がれて異物となり、かかる異物が上記したエッチング液循環式のスピンエッチング装置のエッチング液の循環経路に混入してしまうことが原因であることを突き止めた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2001-267278
【文献】WO2006/103773
【文献】特表2002-523207
【文献】特開2004-64040
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたもので、極薄ウェーハに支持板が貼り付け剤で貼り付けられた積層体からなるウェーハをスピンエッチング装置でスピンエッチングする場合であっても、ポンプフィルターの詰まりが生じないようにした、スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム及び再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システムは、ウェーハをスピンエッチングするためのエッチング液循環式スピンエッチング装置のポンプフィルターの再生システムであり、エッチング液が貯留されてなるエッチング液循環タンクと、エッチング液循環式スピンエッチング装置に載置される前記ウェーハの上面に前記エッチング液循環タンクからのエッチング液を供給するためのエッチング液供給ラインと、前記ウェーハの上面に供給されたエッチング液を回収するエッチング液回収ラインと、前記エッチング液回収ラインに、切り替え可能に接続された、前記エッチング液循環タンクへと順方向にエッチング液を流すエッチング液循環ライン及び前記エッチング液中の異物を排出する異物排出ラインと、前記エッチング液循環ラインに前記順方向に流れるエッチング液中の異物を捕集するために設けられたポンプフィルターと、前記ポンプフィルターのフィルター部分に、前記エッチング液循環ラインの順方向の流れとは逆方向の圧力をかける圧力機構と、を含み、前記ポンプフィルターに捕集された異物が異物排出ラインへと送られるようにした、スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システムである。
【0015】
前記エッチング液循環式スピンエッチング装置が、エッチングされる前記ウェーハを回転保持するウェーハ回転保持装置と前記ウェーハ回転保持装置の周囲に設けられたエッチング液回収機構とを含み、前記エッチング液回収機構と前記エッチング液回収ラインとが接続されてなり、前記ウェーハの上面に供給されたエッチング液が前記エッチング液回収機構を介して前記エッチング液回収ラインへと流れるようにされるのが好適である。
【0016】
前記圧力が、水流及び/又はエアーによる圧力であるのが好適である。
【0017】
前記ウェーハが、支持板が貼り付け剤で貼り付けられた積層体からなるのが好適である。
【0018】
本発明のスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生方法は、前記スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システムを用いて、前記エッチング液循環ラインのポンプフィルターのフィルター部分に、前記エッチング液循環ラインの順方向の流れとは逆方向の圧力をかけることで、前記ポンプフィルターに捕集された異物が異物排出ラインへと送られるようにした、スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生方法である。
【0019】
前記圧力が、水流及び/又はエアーによる圧力であるのが好適である。
【0020】
本発明のエッチング液循環式スピンエッチング装置は、前記スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システムが組み込まれてなる、ウェーハをスピンエッチングするためのエッチング液循環式スピンエッチング装置である。
【0021】
前記エッチング液循環式スピンエッチング装置が、エッチングされるウェーハを回転保持するウェーハ回転保持装置と、前記ウェーハ回転保持装置の周囲に設けられたエッチング液回収機構と、を含むのが好適である。
【0022】
前記ウェーハが、支持板が貼り付け剤で極薄ウェーハに貼り付けられた積層体であるのが好適である。
【0023】
本発明のスピンエッチング方法は、前記エッチング液循環式スピンエッチング装置を用いて、ウェーハに対してスピンエッチングを行う、スピンエッチング方法である。
【0024】
前記ウェーハが、支持板が貼り付け剤で極薄ウェーハに貼り付けられた積層体であるのが好適である。
【0025】
本発明のウェーハの製造方法は、前記スピンエッチング方法によるエッチング工程を含むウェーハの製造方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、極薄ウェーハに支持板が貼り付け剤で貼り付けられた積層体からなるウェーハをスピンエッチング装置でスピンエッチングする場合であっても、ポンプフィルターの詰まりが生じないようにした、スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム及び再生方法を提供することができるという著大な効果を奏する。
【0027】
また、本発明によれば、極薄ウェーハに支持板が貼り付け剤で貼り付けられた積層体からなるウェーハをスピンエッチング装置でスピンエッチングする場合であっても、ポンプフィルターの詰まりが生じないようにした、エッチング液循環式スピンエッチング装置、スピンエッチング方法及びウェーハの製造方法を提供することができるという著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明のスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システムの一つの実施の形態を示す概略模式図である。
【
図2】極薄ウェーハに支持板が貼り付け剤で貼り付けられた積層体の一つの実施の形態を示す模式的断面図である。
【
図3】
図2の点線部分の接着剤がエッチングで剥がれて異物となった状態の写真であって、(a)がポンプフィルターのフィルター部分に置かれた状態、(b)が(a)の拡大写真である。
【
図4】本発明のスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システムの動作の一つの実施の形態を示すフローチャートである。
【
図5】ポンプフィルターを再生する再生動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。図示において、同一部材は同一符号であらわされる。
【0030】
図1において、符号10は、本発明のスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システムの一つの実施の形態を示す。
【0031】
スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム10は、ウェーハをスピンエッチングするためのエッチング液循環式スピンエッチング装置12のポンプフィルターの再生システムである。
【0032】
スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム10は、エッチング液11が貯留されてなるエッチング液循環タンク14と、エッチング液循環式スピンエッチング装置12に載置される前記ウェーハの上面に前記エッチング液循環タンク14からのエッチング液11を供給するためのエッチング液供給ライン16と、前記ウェーハの上面に供給されたエッチング液11を回収するエッチング液回収ライン18と、を含んでいる。なお、本明細書では、ラインは配管の意味である。
【0033】
さらに、スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム10は、前記エッチング液回収ライン18に、切り替え可能に接続された、前記エッチング液循環タンク14へと順方向にエッチング液11を流すエッチング液循環ライン20及び前記エッチング液中の異物を排出する異物排出ライン22と、前記エッチング液循環ライン20に前記順方向に流れるエッチング液中の異物を捕集するために設けられたポンプフィルター24と、前記ポンプフィルター24のフィルター部分に、前記エッチング液循環ライン20の順方向の流れとは逆方向の圧力をかける圧力機構26と、を含んでおり、前記ポンプフィルター24に捕集された異物が異物排出ライン22へと送られるようにした、スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システムである。
【0034】
図1の例では、前記エッチング液回収ライン18には、三方弁28が設けられており、前記三方弁28によって、前記エッチング液循環タンク14へと順方向にエッチング液11を流すエッチング液循環ライン20及び前記エッチング液中の異物を排出する異物排出ライン22とにエッチング液の流れを切り替え可能とされている。
【0035】
また、前記エッチング液循環タンク14への順方向とは、
図1の三方弁28の開放の向きである矢印A1の方向を指し、エッチング液循環タンク14への回収方向(
図5)である。そして、前記エッチング液循環ライン20の順方向の流れとは逆方向とは、
図1の三方弁28の開放の向きである矢印A2の方向を指し、異物排出方向(
図5)である。
【0036】
異物排出ライン22で排出される異物は、異物回収フィルター30を備える異物回収ボックス32で回収され、廃液は排水される。
【0037】
前記エッチング液循環式スピンエッチング装置12は、エッチングされる前記ウェーハを回転保持するウェーハ回転保持装置34と前記ウェーハ回転保持装置34の周囲に設けられたエッチング液回収機構36とを含んでいる。図示例では、エッチング液回収機構36は、複数の上下動する回収カップを設けた例を示した。符号38はウェーハ回転保持装置34の回転テーブルを回転させるための回転軸である。
【0038】
前記エッチング液回収機構36は前記エッチング液回収ライン18に接続されており、前記ウェーハの上面に供給されたエッチング液11が前記エッチング液回収機構36を介して前記エッチング液回収ライン18へと流れるように構成されている。符号37は、エッチング液回収カップ、符号39は、リンス液回収カップである。前記エッチング液回収機構36のこれらの回収カップは、回収される薬液に応じて上下動せしめられる。ウェーハをエッチングする時にはエッチング液回収カップ37が上昇せしめられて、エッチング液11がエッチング液回収カップ37で回収される。一方、ウェーハをリンスする時にはリンス液回収カップ39が上昇せしめられて、リンス液がリンス液回収カップ39で回収される。前記エッチング液回収機構36で回収される液がリンス液であっても、異物が出る可能性が有るため、リンス液排水ライン40から、異物回収ボックス32へと送られ、異物は異物回収フィルター30で捕集されて、廃液は排水される。
【0039】
このようなウェーハ回転保持装置34とエッチング液回収機構36を備えたエッチング液循環式スピンエッチング装置12としては、例えば特許文献2に記載されたスピン処理装置を適用することができる。
【0040】
ポンプフィルター24は、公知のウェーハのウェット処理装置のポンプ保護用フィルターが適用できる。
【0041】
エッチング液循環ライン20のポンプフィルター24よりも下流であり、ポンプフィルター24に近い位置には、圧力供給ライン42が設けられており、前記圧力供給ラインには、前記エッチング液循環ライン20の順方向の流れとは逆方向の圧力をかける圧力機構26が接続されている。圧力機構26としては、図示例では、純水を供給することで水流による圧力を供給するための水用弁44と、エアーを供給することでエアー流による圧力を供給するためのエアー用弁46と、で構成されている。
【0042】
エッチング液循環ライン20には、排水ライン48が接続されており、排水弁50によって開閉されて廃液は排水される。
【0043】
また、エッチング液循環ライン20の循環タンク側弁52の先には、循環ポンプ54が接続されており、回収されたエッチング液11がエッチング液循環タンク14へと送られる。
【0044】
符号56は、エッチング液11を貯留するエッチング液供給ボトルで、エッチング液循環タンク14に供給ライン58で弁60を介して接続されており、エッチング液循環タンク14内のエッチング液11が減少すると補充するように作用する。エッチング液供給ボトル56は、もう一つのエッチング液循環タンクとして機能する。エッチング液循環タンク14には、エッチング液供給ライン16が設けられており、弁62及び弁64の開閉によって、エッチング液循環式スピンエッチング装置12へとエッチング液11を供給する。
【0045】
エッチング液循環タンク14には、下方供給ライン66も備わっており、こちらからの流れは、弁65を介してエッチング液供給ボトル56と合流し、供給用ポンプフィルター68及びポンプ70を介して、エッチング液供給ライン16にエッチング液を供給できるようになっている。
【0046】
エッチング液循環タンク14には、タンク循環ライン72が設けられており、循環用ポンプフィルター74、ポンプ76、温度調整装置78、を介して、エッチング液が適度に加温されている。符号80は、温度計である。
【0047】
また、
図1において、エッチング液循環式スピンエッチング装置12及びその周辺のエッチング液が循環するラインが点線で囲まれているが、この点線で囲まれた部分が、エッチング液循環式スピンエッチング装置12を含むチャンバー82である。このようなチャンバー82が4つ設けられている。
図1において、符号84は、他のチャンバーの異物排出ラインであり、符号86は、他のチャンバーのリンス液排水ラインである。
【0048】
そして、スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム10は、特に、
図2に示されるような、極薄ウェーハWにサポートガラス102が接着剤104によって貼り付けられた積層体100からなるウェーハをスピンエッチングするのに適している。
【0049】
図3に、
図2の点線部分の接着剤がエッチングで剥がれて異物となった状態の写真を示す。
【0050】
図3(a)及び
図3(b)において、符号88はポンプフィルター24のフィルター部分であり、符号90が異物である。
図3(a)を拡大したのが
図3(b)である。従来は、
図2に示した極薄ウェーハWを含む積層体100からなるウェーハを約200枚程度スピンエッチングすると、エッチング液回収カップ37で回収したエッチング液11には、
図3に示した異物が含まれているため、ポンプフィルター24が詰まってしまっていた。異物はおおよそ幅150~300μmで長さ1~100mmであり、サイズは様々であった。
【0051】
本発明のスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム10では、定期的に、前記ポンプフィルター24のフィルター部分に、前記エッチング液循環ライン20の順方向の流れとは逆方向に圧力機構26で圧力がかけられるので、ポンプフィルター24が再生し、ポンプフィルター24の詰まりが生じないのである。従来は、一度詰まってしまったポンプフィルター24は廃棄するしか方法が無かったが、再生使用することでポンプフィルター24自体が壊れるまで延命させて使用することができる。
【0052】
そして、本発明のエッチング液循環式スピンエッチング装置は、スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム10が組み込まれてなる、ウェーハをスピンエッチングするためのエッチング液循環式スピンエッチング装置である。
【0053】
また、スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム10が組み込まれてなるエッチング液循環式スピンエッチング装置を用いて、ウェーハに対してスピンエッチングを行うのが、本発明のスピンエッチング方法である。
【0054】
さらに、本発明のスピンエッチング方法によるエッチング工程を含むウェーハの製造方法が、本発明のウェーハの製造方法である。
【0055】
次に、スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム10によるスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生方法の動作タイミングを
図4及び
図5に基づいて説明する。
【0056】
図4は、本発明のスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システムの動作の一つの実施の形態を示すフローチャートであり、
図5は、ポンプフィルターを再生する再生動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0057】
ポンプフィルター24の異物回収を行うための、ポンプフィルター24の再生動作にあたっては、まず、
図4のステップ100に示されるように、三方弁28はA1側が開放しており、排水弁50、エアー用弁46及び水用弁44のそれぞれの弁は閉まっている。
【0058】
ポンプフィルター24に異物が完全に詰まってから再生動作(異物回収動作)を行うと、異物が累積して押付けられてしまうため、例えば、ウェーハを50枚エッチングする毎、或いはウェーハを100枚エッチングする毎、のように、予め再生動作を行う枚数を決めて定期的に行うのが好適である。ステップ102において、予め設定した枚数に達している場合には、ステップ104の再生動作開始に進む。再生動作(異物回収動作)は、
図5に示すように約45秒間に設定されている。
【0059】
図4のステップ106及び
図5において、エッチング液回収ライン18の切り替えを三方弁28で行い、エッチング液循環タンク14への回収側である矢印A1側から、異物排出側のA2側に切り替える。循環タンク側弁52は閉まっている。
【0060】
図4のステップ108及び
図5において、純水による再生動作として、水用弁44を開いて前記エッチング液循環ライン20の順方向の流れとは逆方向となる純水の水流を5秒間ポンプフィルター24のフィルター部分に当てる。
【0061】
次に、
図4のステップ110及び
図5において、エアーによる衝撃波動作として、水用弁44を閉じてエアー用弁46を開いて、前記エッチング液循環ライン20の順方向の流れとは逆方向となるエアーをポンプフィルター24のフィルター部分に当てる。
【0062】
さらに、
図4のステップ112及び
図5において、純水による再生動作として、エアー用弁46を閉じて水用弁44を開いて前記エッチング液循環ライン20の順方向の流れとは逆方向となる純水の水流を5秒間ポンプフィルター24のフィルター部分に当てる。
【0063】
そして、
図4のステップ114及び
図5において、エアーによる衝撃波動作として、水用弁44を閉じてエアー用弁46を開いて、前記エッチング液循環ライン20の順方向の流れとは逆方向となるエアーを3秒間ポンプフィルター24のフィルター部分に当てる。
【0064】
その後、
図4のステップ116及び
図5において、エアーによる回収側水抜き動作として、エアー用弁46を10秒間開く。
【0065】
そして、
図4のステップ118及び
図5において、エアーによる排水側水抜き動作として、排水弁50を10秒間開いて、エアー用弁46を、閉→開→閉、と操作する。
【0066】
このようにして、
図4のステップ120の初期状態に戻って、再生動作が終了する。
【0067】
本発明のスピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム及び再生方法によれば、次のような利点がある。
【0068】
従来は、極薄ウェーハに支持板が貼り付け剤で貼り付けられた積層体からなるウェーハをエッチングすると約200枚で、回収されたエッチング液が循環するポンプフィルターに異物が詰り、交換が必要となっていたが、再生使用することができるのでポンプフィルター自体が壊れるまで延命させて使用することができる。これにより、ポンプフィルターの交換頻度を劇的に減らすことができる。
【0069】
異物回収に純水を使用することで、異物回収ボックス32の網(異物回収フィルター30)を低コストにすることが可能となった。
【0070】
また、4つのチャンバーにあるポンプフィルターの詰まりの原因となる異物を一箇所の異物回収ボックス32に集中させることでメンテナンスが容易となっている。従来は、各チャンバー(4つ)下に各ポンプフィルター(4つ)が有るため、メンテナンス箇所が4箇所となっており、ポンプフィルター内に異物と薬液が付着して詰まってしまっていたため、これらを交換するには薬傷の危険性があった。本発明では異物を回収するのに純水などを使用するので、薬液の雰囲気を低減することができた。これにより、作業者の安全性が向上した。
【0071】
本発明では、ポンプフィルターを再生して使用することができるので、ポンプフィルターの在庫数を低減することができた。これにより、経費が節減できた。
【0072】
例えば、
処理時間:エッチング処理(60sec)+リンス(60sec)+乾燥(60sec)+ウェーハ入替え(20sec)、
であるが、異物回収動作(再生動作)が45秒であるため、乾燥処理を行う間に異物回収動作が可能である。このため、サイクルタイムに影響せず、稼働率を低下させない利点がある。
【0073】
通常運転時にポンプフィルター交換が不要となったため、スピンエッチング装置を停止させるリスクが無くなった。また、配管をコンパクトにまとめた水抜き動作により、薬液と純水の切替え時の混入を抑えることができた。
【0074】
純水とエアーにより衝撃波を使用してポンプフィルター内に絡み付いた異物を除去する事ができた。なお、三方弁と配管径とオリフィスが変らないボールバルブタイプを使用すると、異物の引っ掛かりを低減できるので好適である。
【符号の説明】
【0075】
10:スピンエッチング装置用ポンプフィルターの再生システム、11:エッチング液、12:エッチング液循環式スピンエッチング装置、14:エッチング液循環タンク、16:エッチング液供給ライン、18:エッチング液回収ライン、20:エッチング液循環ライン、22,84:異物排出ライン、24:ポンプフィルター、26:圧力機構、28:三方弁、30:異物回収フィルター、32:異物回収ボックス、34:ウェーハ回転保持装置、36:エッチング液回収機構、37:エッチング液回収カップ、38:回転軸、39:リンス液回収カップ、40,86:リンス液排水ライン、42:圧力供給ライン、44:水用弁、46:エアー用弁、48:排水ライン、50:排水弁、52:循環タンク側弁、54:循環ポンプ、56:エッチング液供給ボトル、58:供給ライン、60,62,64,65:弁、66:下方供給ライン、68:供給用ポンプフィルター、70,76:ポンプ、72:タンク循環ライン、74:循環用ポンプフィルター、78:温度調整装置、80:温度計、82:チャンバー、88:フィルター部分、90:異物、100:積層体、102:サポートガラス、104:接着剤、W:ウェーハ。