(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】旋削によって金属加工品を機械加工する方法
(51)【国際特許分類】
B23B 27/02 20060101AFI20231011BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20231011BHJP
B23B 1/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B23B27/02 C
B23B27/14 C
B23B1/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021207659
(22)【出願日】2021-12-22
(62)【分割の表示】P 2018517774の分割
【原出願日】2016-09-07
【審査請求日】2022-01-17
(32)【優先日】2015-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】レフ, ロニー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン, アダム
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-009840(JP,U)
【文献】特開2008-207292(JP,A)
【文献】特開2014-180754(JP,A)
【文献】特開2015-000446(JP,A)
【文献】特開2010-125566(JP,A)
【文献】特開2009-214213(JP,A)
【文献】特開平11-033803(JP,A)
【文献】特開平06-277901(JP,A)
【文献】特許第4797526(JP,B2)
【文献】特公昭53-025157(JP,B1)
【文献】米国特許第04065223(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102010020252(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-25/06
B23B 27/00-29/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属加工品(50)上に表面(53)を形成する方法であって、
第1の切れ刃(11)と、第2の切れ刃(12)と、前記第1の切れ刃(11)および第2の切れ刃(12)を連結する凸状ノーズ切れ刃(10)とを備える旋削インサート(1)を提供するステップと、
前記第1の切れ刃(11)と第2の切れ刃(12)との間に形成されたノーズ角(α)を、85°以下になるように選択するステップとを含む第1の機械加工ステップを含み、
さらに、
前記第2の切れ刃(12)の配向を、前記第2の切れ刃(12)が送り方向(99)に90°を上回るバック逃げ角(ψ)を形成するように適応させるステップと、
前記旋削インサート(1)のすべての部分を前記送り方向(99)に前記ノーズ切れ刃(10)の前方に位置決めするステップと、
前記金属加工品(50)を回転軸(A3)周りで第1の方向に回転させるステップと、
前記第1の切れ刃(11)が有効であり、前記送り方向(99)に前記ノーズ切れ刃(10)の前方にあるように、また、前記表面(53)が少なくとも部分的に前記ノーズ切れ刃(10)によって形成されるように、前記旋削インサート(1)を前記回転軸(A3)に対して平行の方向にまたは45°未満の角度で移動させるステップとを含み、
前記表面(53)が、外部円筒状表面であり、前記旋削インサート(1)の前記移動が、前記回転軸(A3)に対して平行な方向であり、
前記方法が、さらに、前記旋削インサート(1)が上面(8)と、反対側の底面(9)とを備え、基準面(RP)が前記上面(8)および前記底面(9)に対して平行に、かつ前記上面(8)および前記底面(9)との間に位置するように、前記旋削インサート(1)を配置するステップを含み、さらに、前記第1の切れ刃(11)から前記基準面(RP)までの距離が、前記ノーズ切れ刃(10)からの距離が増大するにつれて減少するように前記第1の切れ刃(11)を配置するステップを含
み、
前記第1の機械加工ステップが、さらに、前記第1の切れ刃(11)が1~45°の進入角k1で前記金属加工品(50)から金属切りくずを切削するように前記第1の切れ刃(11)を配置するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の機械加工ステップが、さらに、前記第1の切れ刃(11)が3~45°の進入角k1で前記金属加工品(50)から金属切りくずを切削するように前記第1の切れ刃(11)を配置するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削の技術分野に属する。より詳細には、本発明は、CNC機などの機械において旋削工具を使用して金属加工品を旋削することによって実施される、旋削の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、金属加工品上に表面を形成する方法、そのような方法における旋削インサートの使用、コンピュータ数値制御旋盤によって実行されたときにそのような方法をコンピュータ数値制御旋盤に実施させる命令を有するコンピュータプログラム、そのようなコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体、およびそのようなコンピュータプログラムを表すデータストリームに言及する。
【0003】
金属加工品の旋削において、金属加工品は、中心軸周りを回転する。金属加工品は、1つまたは複数のチャックまたはジョーなどの回転可能なクランプ手段によって一方の端部においてクランプされる。クランプされた加工品の端部は、クランプ端または駆動端と呼ばれ得る。安定してクランプするために、金属加工品のクランプ端または駆動端は、金属加工品の反対側端部より大きい直径を有することができ、および/またはクランプ端と反対側端部との間に位置する金属加工品の一部のより大きい直径を有する。あるいは、金属加工品は、機械加工作業、すなわち金属切削作業前に一定の直径を有することができる。旋削インサートは、金属加工品に関連して移動される。この相対移動は送りと呼ばれる。旋削インサートの移動は、金属加工品の中心軸に対して平行な方向であることができ、これは、一般的には、長手方向送りまたは軸方向送りと呼ばれる。旋削インサートの移動は、さらに、金属加工品の中心軸に対して垂直な方向であることもでき、これは、一般的には、径方向送りまたは面削りと呼ばれる。他の移動角度、または送り方向も可能であり、これは、一般的には、複製または複製旋削として知られている。複製では、送りは軸方向および径方向の両方の成分を有する。旋削インサートの相対移動中、金属加工品からの材料は、切りくずの形態で除去される。切りくずは、好ましくは短く、および/または切りくずの詰まりを防止する形状または移動方向を有し、および/または機械加工された表面の表面仕上げを損なわないものである。
【0004】
幅広い範囲の送り方向に使用することができる旋削インサートの一般的な形状は、三角形の旋削インサートを含む。そのようなインサートは、上面図、すなわち読み手方向のすくい面において、3辺すべてが等しい長さのものであり、ノーズ角が60°である三角形の形状を有する。三角形のコーナは、ノーズ切れ刃の形態であり、これは、通常、0.2~2.0mmの範囲内の曲率半径を有する。そのような旋削インサートの例は、ISO規格によって一般的に設計されたTNMGおよびTCMTであり、一般的には、コーティングされたまたはコーティングされていない超硬合金または立方晶窒化ホウ素(CBN)またはセラミックまたはサーメットから少なくとも部分的に作製される。
【0005】
旋削インサートの他の一般的な形状は、上面図、すなわち読み手方向のすくい面において、4辺すべてが等しい長さのものであり、有効なノーズ部のノーズ角が80°であるひし形の形状を有する。有効なコーナは、通常、0.2~2.0mmの範囲の曲率半径を有するノーズ切れ刃の形態である。そのような旋削インサートの例は、ISO規格による一般的に設計されたCNMGであり、一般的には、コーティングされた、またはコーティングされない超硬合金または立方晶窒化ホウ素(CBN)またはセラミックまたはサーメットから少なくとも部分的に作製される。
【0006】
上述した三角形およびひし形の旋削インサートは、両方が金属加工品内に外部90°コーナを形成する2つの壁を旋削するために使用することができ、この場合、金属加工品の回転軸からより遠い距離にある1つの壁は、回転軸に対して垂直であり、回転軸からより近い距離にある1つの円筒状壁は、回転軸に対して平行であり、2つの壁は、円形または湾曲したセグメントによって連結される。この文脈における外部90°コーナは、金属加工品の外面もしくは外側表面上にまたは外面もしくは外側表面において、円筒状壁または円筒状表面が回転軸から外方を向くように形成された90°コーナである。これは、回転軸と同軸の孔の内側にある内面もしくは内側表面上にまたは内面もしくは内側表面において形成され得る任意のコーナと対比する。
円形または湾曲したセグメントは、回転軸を含む平面における断面において、円の4分の1の形状、またはほぼ円である形状の4分の1の形状の弧の形状であり、旋削インサートのノーズ切れ刃と同じ曲率半径を有する。円形または湾曲したセグメントは、代替的には、旋削インサートのノーズ切れ刃より大きい曲率半径を有する。
【0007】
欧州特許第2572816B1号では、加工品の機械加工中の切削工具が示されている。この旋削工具は、これを再配向させずに、外部90°コーナを形成する2つの壁を形成するために使用することができる。工具は、ホルダおよび旋削インサートを含む。この場合では、加工品は、工具が中心軸に対して平行に長手方向に送られるのと同時に回転される。設定角度または進入角は、長手方向送りの方向と主刃との間の角度である。設定角度または進入角は95°である。旋削インサートは、ひし形の基本形状を有し、80°の角度を有する2つの鋭角のコーナと、100°の角度を有する2つの鈍角のコーナとを含む。5°のバック逃げ角が、旋削インサートと加工品の生成された表面との間に得られる。加工品の生成された表面は、ほぼ円筒状である。
【0008】
本発明者は、欧州特許第2572816B1号の旋削方法が、旋削インサートに関して満足な工具寿命、または使用期間を与えていないことを見出した。
【発明の概要】
【0009】
本発明の主な目的は、上記で述べた問題を克服することができる手段である方法を提供することである。
【0010】
本目的は、金属加工品上に表面を形成する方法である、本発明による方法であって、第1の切れ刃と、第2の切れ刃と、第1および第2の切れ刃を連結する凸状ノーズ切れ刃とを備える旋削インサートを提供するステップと、第1の切れ刃と第2の切れ刃との間に形成されたノーズ角αを85°以下になるように選択するステップとを含む第1の機械加工ステップを含み、さらに、第2の切れ刃の配向を、第2の切れ刃が送り方向に90°を上回るバック逃げ角ψを形成するように適応させるステップと、旋削インサートのすべての部分を送り方向にノーズ切れ刃の前方に位置決めするステップと、金属加工品を回転軸A3周りで第1の方向に回転させるステップと、第1の切れ刃が有効であり、送り方向にノーズ切れ刃の前方にあるように、また、表面が少なくとも部分的にノーズ切れ刃によって形成されるように、旋削インサートを回転軸A3に対して平行の方向にまたは45°未満の角度で移動させるステップとを含む、方法によって達成される。
【0011】
そのような方法では、第2の切れ刃は、第1の機械加工ステップ、たとえば軸方向旋削ステップ中、磨耗を受けず、その後の第2の機械加工ステップ、たとえば外面削りステップ、すなわち金属または金属製加工品の回転軸に対して垂直に、この回転軸から離れる送りにおいて、または第1の方向に対してほぼ反対または反対の方向のその後の旋削作業において使用することができる。切れ刃の磨耗が等しく分散されることが旋削インサートの工具寿命には有利である。そのような方法では、旋削インサートを、第2の機械加工ステップ、たとえば外面削り作業の前またはその後に、再配向無しに、好ましくは、インサートの磨耗が、第1の機械加工ステップおよび第2の機械加工ステップによって引き起こされたインサートの磨耗に関してほとんどまたは全く重複せずに、より長い切れ刃距離にわたって分散されるように使用することが可能である。そのような方法では、切りくず制御または切りくず排出は、送り方向が、たとえば金属加工品の回転軸に対して垂直な平面内を延びる壁面などの、形成される表面の直径より大きい直径を有する加工品の部分から離れるものである場合、改良される。そのような方法では、第1の切れ刃の進入角は低減され、その結果、切りくずは比較的広く薄くなり、これが第1の切れ刃の磨耗の低減を与えることを本発明者は見出した。
【0012】
方法は、したがって、外部または内部のものであることができる軸方向または長手方向または複製旋削に関する。好ましくは、方法は、外部旋削方法、すなわち形成される表面が回転軸から外方を向いている方法である。形成または生成される表面は、回転対称面であり、すなわち金属加工品の回転軸に沿って延長部を有する表面であり、この場合回転軸に対して垂直である断面図において、回転対称面の各部分は、金属加工品の回転軸から一定の距離に位置し、この場合この一定の距離は、0.10mm以内、好ましくは0.05mm以内である。回転対称面は、たとえば、円筒状表面または円錐表面または円錐台表面またはテーパ表面の形態であることができる。旋削インサートの移動または送り方向は、回転軸に対して垂直な想像面から離れるものである。換言すれば、旋削インサートの移動は、金属加工品の回転軸に対して平行な方向の移動成分を伴うものであり、たとえば旋削インサートは回転軸に対して平行な方向に移動するか、または旋削インサートは、角度を付けて、好ましくは回転軸に対して15°未満の角度で移動する。第1の例では、回転対称面は、回転軸周りで対称的である円筒状表面である。第2の例では、回転対称面は、回転軸周りで対称的である円錐表面、または円錐台表面、またはテーパ表面である。ノーズ切れ刃によって少なくとも部分的に生成または形成された回転対称面は、小さい頂部および谷部を有する波形状を有し、この波形状は、ノーズ半径の曲率および送り速度によって少なくとも部分的に影響を受ける。波形の高さは、0.10mm未満、好ましくは0.05mm未満である。この意味において回転対称面を形成または生成することは、金属切削によるものであり、この場合金属加工品からの切りくずは、少なくとも1つの切れ刃によって除去される。回転対称面の最終形状は、単独で、または少なくとも最大範囲において、または少なくとも部分的にノーズ切れ刃によって形成される。これは、ノーズ切れ刃が、旋削インサートの他のすべての部分よりも、金属加工品の回転軸から短距離に位置する旋削インサートの部分であるためである。より詳細には、第1の機械加工ステップ中、ノーズ切れ刃の1つの第1の点は、金属加工品の回転軸の最も近くに位置する旋削インサートの部分である。送り方向に前記第1の点の後方にあるノーズ切れ刃の1つの第2の点、または後点は、送り方向、またはインサート移動の方向の最も後方向に位置する旋削インサートの部分である。ノーズ切れ刃の前記第1の点は、二等分線の、第1の切れ刃と同じ側に位置し、この場合この二等分線は、第1および第2の切れ刃から等しい距離にある第1と第2の切れ刃の間の線である。ノーズ切れ刃の前記第2の点は、二等分線の、第2の切れ刃と同じ側に位置する。第1の切れ刃および第2の切れ刃は、凸状ノーズ切れ刃の両側に位置する。第1の切れ刃、第2の切れ刃、およびノーズ切れ刃は、旋削インサートの上面の境界部に形成され、この上面は、すくい面を含む。「旋削インサートのすべての部分を送り方向にノーズ切れ刃の前方に位置決めする」という表現は、したがって代替的には、「旋削インサートの上面のすべての部分を送り方向にノーズ切れ刃の後部の前方に位置決めする」として考えることもできる。
【0013】
85°以下のノーズ角は、90°コーナ、すなわち互いに対して垂直な2つの壁面を、旋削インサートを再配向させずに旋削インサートの1つのノーズ部を用いて機械加工することができるという利点を与える。あるいは、85°以下のノーズ角は、85°以下の角度の円弧の形状を有するノーズ切れ刃に等しい。ノーズ切れ刃は、円弧の形状を有することができ、または完全な円弧からわずかに逸脱した形状を有することができる。ノーズ切れ刃は、好ましくは、0.2~2.0mmの曲率半径を有する。第1および第2の切れ刃は、好ましくは上面図において直線的である。あるいは、第1および第2の切れ刃は、わずかに凸状または凹状であることができ、凸状ノーズ切れ刃の曲率半径の2倍大きく、好ましくは10倍大きい曲率半径を有する。旋削インサートの移動は、通常、送りとして知られている。送りが金属加工品の回転軸に対して平行である場合、これは、軸方向送りまたは長手方向送りと呼ばれる。第1の切れ刃は、送り方向にノーズ切れ刃の前方にある。換言すれば、第1の切れ刃は、90°未満であり、かつ1°を上回る、好ましくは45°未満であり、かつ3°を上回る、さらにより好ましくは45°未満であり、かつ10°を上回る進入角を形成し、その角度において有効である。換言すれば、第1の切れ刃は前刃である。進入角は、送り方向と、この場合では第1の切れ刃である有効な切れ刃との間の角度である。第2の切れ刃は、90°を上回る、好ましくは100°を上回るバック逃げ角ψを形成する。換言すれば、第2の切れ刃は、後刃である。換言すれば、送り方向、すなわち旋削インサートの移動の方向と、第2の切れ刃との間の角度は、90°未満、好ましくは80°未満である。旋削、少なくとも回転軸を含む平面内に第1の切れ刃および第2の切れ刃が位置する旋削において、進入角、ノーズ角(ノーズ切れ刃の両側に隣接する第1と第2の切れ刃との間の角度)、およびバック逃げ角ψを足したものは、180°に等しい。送りが回転軸に対して平行である
図2では、バック逃げ角は、90°とk2を足したものである。バック逃げ角ψの代替的な構成は、端部切れ刃角、自由切削角、および平面後逃げ角を含む。回転および移動は、相対的な動作であり、これは、金属加工品が回転し、旋削インサートが軸方向に移動することが好ましいが、たとえば、バーピーリング機などでは、旋削インサートが非回転の金属加工品周りを回転し、金属加工品が軸方向に移動することが可能である。旋削インサートは、好ましくは、工具本体内に装着される。工具本体は、好ましくは、旋削盤またはCNC機内に装着される。
【0014】
送り速度は、好ましくは、ノーズ切れ刃が一定の曲率半径を有する場合、ノーズ切れ刃の曲率半径以下である。これは、許容可能な表面仕上げを生成するためである。たとえば、0.8mmの曲率半径を有するノーズ切れ刃を有する旋削インサートの場合、送り速度は、好ましくは、1回転あたり0.8mm以下である。ワイパー半径またはワイパーインサートと呼ばれるものなどの円弧からわずかに逸脱したノーズ切れ刃を有する旋削インサートの場合、送り速度はわずかに早くなり得るが、依然として許容可能な仕上げを生成する。
【0015】
形成または生成された表面は、送り方向に対応する延長部を有する。
【0016】
一実施形態によれば、第1の機械加工ステップは、さらに、金属加工品を第1の端部にクランプするステップと、ノーズ切れ刃を、旋削インサートの他のすべての部分よりも、第1の端部から短い距離に設定するステップと、旋削インサートを第1の端部から離れる方向に移動させるステップとを含む。
【0017】
そのような方法では、切りくずの詰まりがさらに改善され、これは、旋削インサートの移動、すなわち送り方向が、金属加工品のクランプされていないまたは自由端に向かうためである。
【0018】
金属加工品の第1の端部は、クランプ端または駆動端である。したがって、金属加工品を保持し、モータによって制御され駆動されるクランプ手段、たとえばチャックまたはクランプジョーまたは心押し台は、金属加工品を第1の端部内に保持する。この機械の主軸台端は、金属加工品の第1の端部に位置する。金属加工品の第1の端部の直径は、好ましくは、表面の直径より大きい。
【0019】
一実施形態によれば、第1の機械加工ステップは、さらに、第1の切れ刃が10~45°の進入角k1で金属加工品から金属切りくずを切削するように第1の切れ刃を配置するステップを含む。
【0020】
第1の切れ刃は、したがって、10~45°、好ましくは20から40°の進入角k1で有効である。進入角が低くなると、切りくずの幅は大きくなりすぎ、その結果、切りくず制御が低下し、振動リスクが増大する。進入角が高いほど、第1の切れ刃のインサート磨耗は増大する。好ましくは、ノーズ角、すなわち第1および第2の切れ刃が、上面図において互いに対して形成する角度は、25~50°である。上面図は、旋削インサートの上面、すなわち、すくい面が読み手を向き、視界方向に対して垂直である場合である。好ましくは、切削深さは0.05~5.0mmである。
【0021】
一実施形態によれば、第1の機械加工ステップは、さらに、旋削インサートが、第1の切れ刃に隣接する第3の凸状切れ刃と、第3の切れ刃に隣接する第4の切れ刃とを備えることを提供するステップを含み、方法は、さらに、第4の切れ刃が、10~45°の進入角k1で金属加工品から金属切りくずを切削するように第4の切れ刃を配置するステップを含む。
【0022】
そのような方法により、旋削インサートの工具寿命はさらに増大し、すなわち磨耗は、特に、たとえば1.0mmを上回る切削深さなどの比較的大きい切削深さにおいてさらに低減される。
【0023】
好ましくは、ノーズ角α、すなわち第1の切れ刃と第2の切れ刃との間の角度は、70~85°である。そのような方法により、ノーズ切れ刃の磨耗は、さらに低減される。
【0024】
一実施形態によれば、第1の機械加工ステップは、さらに、旋削インサートを、90°未満である回転軸A3に対する角度で金属加工品に進入させるステップであって、この角度は、旋削インサートの送り方向と回転軸A3との間に形成された角度より大きい、進入させるステップを含む。
【0025】
そのような方法により、磨耗、特に旋削インサート1のノーズ切れ刃における磨耗は、さらに低減される。
【0026】
旋削インサートは、こうして金属加工品に進入しており、すなわち徐々に旋削し始めている。
【0027】
一実施形態によれば、第1の機械加工ステップは、さらに、ノーズ切れ刃が円弧に沿って移動するように旋削インサートを金属加工品に進入させるステップを含む。
【0028】
そのような方法により、磨耗、特に旋削インサートのノーズ切れ刃における磨耗は、さらに低減される。
【0029】
旋削インサートが金属加工品に進入したとき、すなわち切削し始めたとき、ノーズ切れ刃は円弧に沿って移動する。
【0030】
一実施形態によれば、第1の機械加工ステップは、さらに、進入中の切りくず厚さが一定またはほぼ一定であるように、旋削インサートを金属加工品に進入させるステップを含む。
【0031】
この方法により、インサート磨耗は、さらに低減される。
【0032】
切りくず厚さは、送り速度に進入角の正弦を掛けたものとして定義される。したがって、進入中の旋削インサートの送り速度および移動および/または方向を選択および/または変更することにより、切りくず厚さを一定またはほぼ一定にすることができる。進入中の送り速度は、好ましくは、0.50mm/回転以下である。進入中の切りくず厚さは、好ましくは、その後の切削または機械加工中の切りくず厚さ以下である。
【0033】
一実施形態によれば、表面は、外部円筒状表面であり、旋削インサートの移動において回転軸A3に対して平行な方向である。
【0034】
外部円筒状表面は、回転軸に沿って、回転軸から一定またはほぼ一定の距離に延長部を有する表面である。旋削インサートの移動は送り方向である。
【0035】
一実施形態によれば、旋削インサートは、上面と、反対側の底面とを備え、基準面RPは、上面および底面に対して平行に、これらの面間に位置しており、方法は、さらに、第1の切れ刃から基準面RPまでの距離が、ノーズ切れ刃からの距離が増大するにつれて減少するように第1の切れ刃を配置するステップを含む。
【0036】
そのような方法により、切りくず破壊および/または切りくず制御および/または工具寿命、すなわちインサート磨耗は、金属加工品のクランプ端から離れる軸方向旋削において改善される。
【0037】
上面は、すくい面を備える。底面は、シート面を備える。基準面は、ノーズ切れ刃が位置する平面に対して平行である。第1の切れ刃のさまざまな点から基準面までの距離は、ノーズ切れ刃からの距離が増大するにつれて減少するように変化する。換言すれば、第1の切れ刃から基準面までの距離は、ノーズ切れ刃から離れるにつれて減少する。代替的に考えると、基準面から第1の切れ刃の第1の部分までの距離は、基準面から第1の切れ刃の第2の部分の距離より大きく、この場合第1の切れ刃の第1の部分は、ノーズ切れ刃と第1の切れ刃の第2の部分との間に位置する。たとえば、ノーズ切れ刃に隣接する第1の切れ刃の第1の点は、基準面から距離を離して位置し、この距離は、第1の切れ刃の第1の点よりもノーズ切れ刃からより遠い距離に位置する第1の切れ刃の第2の点から基準面までの距離より大きい。第1の切れ刃は、側面図では、底面および基準面に向かって、ノーズ切れ刃から離れながら傾斜している。
【0038】
一実施形態によれば、旋削インサートは、上面と、反対側の底面とを備え、基準面RPが、上面および底面に対して平行に、これらの面間に位置しており、方法は、さらに、第4の切れ刃から基準面RPまでの距離が、ノーズ切れ刃からの距離が増大するにつれて減少するように第4の切れ刃を配置するステップを含む。
【0039】
そのような方法により、切りくず破壊および/または切りくず制御および/または工具寿命、すなわちインサート磨耗は、金属加工品のクランプ端から離れる軸方向の旋削において改善される。
【0040】
上面は、すくい面を備える。底面は、シート面を備える。基準面は、ノーズ切れ刃が位置する平面に対して平行である。第4の切れ刃から基準面までの距離は、ノーズ切れ刃からの距離が増大するにつれて減少するように変化する。換言すれば、第4の切れ刃から基準面までの距離は、ノーズ切れ刃から離れるにつれて減少する。代替的に考えると、基準面から第4の切れ刃の第1の部分までの距離は、基準面から第4の切れ刃の第2の部分までの距離より大きく、この場合第4の切れ刃の第1の部分は、ノーズ切れ刃と第4の切れ刃の第2の部分との間に位置する。たとえば、ノーズ切れ刃のより近くにある第4の切れ刃の第1の点は、基準面から距離を離して位置し、この距離は、第4の切れ刃の第1の点よりもノーズ切れ刃からより遠い距離に位置する第4の切れ刃の第2の点から基準面までの距離より大きい。第4の切れ刃は、側面図では、底面および基準面に向かって、ノーズ切れ刃から離れながら傾斜している。
【0041】
一実施形態によれば、方法は、さらに、表面の形成中、送り方向に関連してバック逃げ角を一定に設定するステップを含む。
【0042】
換言すれば、表面を形成するときの一定の送り方向の場合、バック逃げ角は、表面を形成するときに一定である。したがって、表面の形成中、旋削インサートは軸周りを回転しない。
【0043】
一実施形態によれば、方法は、さらに、旋削インサートおよび工具本体を備える旋削工具を提供するステップを含み、さらに、工具本体のすべての部分を、送り方向にノーズ切れ刃の前方に位置決めするステップを含む。
【0044】
換言すれば、旋削工具は、送り方向にノーズ切れ刃の前方にある。そのような方法により、外面削り、または金属加工品の回転軸に対して垂直に、この回転軸から離れる方向の送りの場合が、さらに改良される。
【0045】
一実施形態によれば、方法は、さらに、旋削インサートおよび工具本体を備える旋削工具を提供するステップであって、工具本体は、前端および後端と、長手方向軸に沿って前端から後端まで延びる主延長部と、前端内に形成されたインサートシートであって、旋削インサートが装着可能である、インサートシートとを有する、提供するステップを含み、方法は、さらに、工具本体の長手方向軸を、ゼロより大きいが、金属工作品の回転軸に対して90°以下である角度に設定するステップを含む。
【0046】
そのような方法により、振動のリスクは、工具本体の長手方向軸が金属加工品の回転軸に対して平行である場合、すなわち少なくとも送り方向が金属加工品の回転軸に対して平行である場合と比べて低減される。そのような方法により、深い空洞または深いポケットを機械加工する場合が改良され、これは、工具本体が金属加工品に干渉するリスクが低減されるためである。
好ましくは、工具本体の長手方向軸の設定は、金属加工品の回転軸に対して垂直、すなわち90°である。
工具本体の長手方向軸は、好ましくは、工具本体の長手方向軸に対して一定の角度である。
【0047】
一実施形態によれば、方法は、第2の切れ刃が金属加工品から切りくずを切削するように、また、金属加工品の回転軸A3に対して垂直な平面が形成されるように、旋削インサートを回転軸A3から離れる方向に移動させる第2の機械加工ステップを含む。
【0048】
そのような方法により、一緒になって90°コーナなどのコーナを形成する2つの表面を、旋削インサートを再配向させずに同じ旋削インサートを用いて、旋削インサートの磨耗を低減して形成することができる。より詳細には、インサート磨耗は、より等しく分散され、それによって工具寿命を延ばす。
【0049】
旋削インサートの移動方向は、金属加工品の回転軸から、好ましくは、回転軸に対して垂直に、または回転軸に対して垂直な方向から最大20°逸脱する角度で離れるものである。回転軸周りの金属加工品の回転の方向は、第1および第2の機械加工ステップに関して同じ方向である。第2の機械加工ステップは、第1の機械加工ステップの前後に行うことができる。好ましくは、旋削インサートの配向は、第1および第2の機械加工ステップ中、一定である。一定の配向とは、第1の切れ刃などの旋削インサートの部分が、金属加工品の回転軸に関連して、またはこの回転軸に対して形成する角度が、第1および第2の機械加工ステップの両方において一定であるか、または同じ値を有することを意味する。
【0050】
一実施形態によれば、方法は、2つの表面を備えるコーナが形成されるように、第1の機械加工ステップおよび第2の機械加工ステップを順次交互に行うステップを含む。
【0051】
そのような方法により、インサートの磨耗がさらに低減される。そのような方法により、切りくずの詰まりのリスクがさらに低減され、これは、各切削の切削時間が低減されるためである。
【0052】
一実施形態によれば、方法は、2つの壁面を備える外部90°コーナが形成されるように、第1の機械加工ステップおよび第2の機械加工ステップを順次交互に行うステップを含み、1つの壁面は、外部円筒状表面であり、1つの壁面は、金属加工品の回転軸A3に対して垂直である。
【0053】
そのような方法により、外部90°コーナを、切りくずの詰まりのリスクを小さくして形成することができ、これは、旋削インサートの送り方向または移動が、金属加工品の回転軸に対して垂直である壁面に向かっていないためである。そのような方法により、インサート磨耗を低減して外部90°コーナを形成することができる。
【0054】
第1の機械加工中の旋削インサートの移動方向は、金属加工品の回転軸に対して平行である。第2の機械加工ステップ中の旋削インサートの移動方向は、金属加工品の回転軸に対して垂直に、ここから離れるものである。この意味での移動方向は、各機械加工ステップの主要部分の間である。好ましくは、各機械加工ステップの進入、または始まりまたは切削開始部分は、少なくとも部分的には、主要部分とは異なる方向である。進入、始まりまたは切削開始部分は、したがって、除去された金属の量が、主要部分から除去された金属より20%少ないという意味で、各機械加工ステップの副部分である。回転軸に対して垂直に形成された表面は、平坦、またはほぼ平坦な表面であり、すなわち、表面は単一平面内に位置する。この意味におけるほぼ平坦は波形表面であり、この場合波形の深さまたは波形の高さは、0、1mm未満、好ましくは0.05mm未満である。
外部90°コーナは、湾曲したまたは弧状の表面によって連結された2つ壁面を備える。湾曲した、または弧状の表面の曲率半径は、旋削インサートのノーズ切れ刃の曲率半径以上である。湾曲した、または弧状の表面は、壁面の各々の表面積の、好ましくは50%未満、さらにより好ましくは10%未満である表面積を有する。
【0055】
一実施形態によれば、方法は、第3の機械加工ステップであって、金属加工品を回転軸A3の周りで第2の方向に回転させるステップであって、第2の回転方向が第1の回転方向とは反対である、回転させるステップと、第2の切れ刃が金属加工品から切りくずを切削するように、旋削インサートを回転軸A3に向かう方向に移動させるステップとを含む、第3の機械加工ステップを含む。
【0056】
したがって、第3の機械加工ステップ中、旋削インサートの少なくとも第2の切れ刃は、第1の機械加工中の旋削インサートの少なくとも第1の切れ刃の場所と比較して、回転軸の反対側またはほぼ反対側に位置する。第3の機械加工ステップは、第1の機械加工ステップの前後に実施することができる。第3の機械加工ステップは、第2の機械加工ステップの前後に実施することができる。好ましくは、第3の機械加工ステップは、金属加工品の回転軸に対して垂直な旋削インサートの移動を含む。
【0057】
一実施形態によれば、方法は、旋削インサートおよび工具本体を備える旋削工具を提供するステップであって、工具本体は、前端および後端と、長手方向軸A2に沿って前端から後端まで延びる主延長部と、前端内に形成されたインサートシートであって、第1および第2の切れ刃から等距離に延びる二等分線が工具本体の長手方向軸A2に関連して35~55°の角度θを形成するように旋削インサートが装着可能である、インサートシートとを有する、提供するステップを含む。
【0058】
一実施形態によれば、方法は、第1の切れ刃を、第2の切れ刃から工具本体の長手方向軸A2までの距離よりも、工具本体の長手方向軸A2からより短い距離に配置するステップを含む。
【0059】
本発明の第2の態様によれば、少なくとも上記で述べた主な目的は、最初に定義された方法で旋削インサートを使用することによって達成される。
【0060】
本発明の第3の態様によれば、少なくとも上記で述べた主な目的は、コンピュータ数値制御旋盤によって実行されたときに、最初に定義された方法をコンピュータ数値制御旋盤に実施させる命令を有するコンピュータプログラムを用いることによって達成される。
【0061】
本明細書に説明する方法および複数の方法は、単一のコンピュータシステム内で、または複数のコンピュータシステムにわたって有効なおよび有効でない両方のさまざまな形態で存在し得る、コンピュータプログラムまたは複数のコンピュータプログラムによって具体化され得る。たとえば、これらは、ステップの一部を実施するためのソースコード、実行可能なコードまたは他のフォーマットのプログラム命令から構成されたソフトウェアプログラムとして存在することができる。上記のいずれも、記憶デバイスおよび信号を含むコンピュータ可読媒体上で、圧縮されたまたは未圧縮の形態で具現化され得る。コンピュータ数値制御(CNC)旋盤という用語は、金属加工品を旋削するために使用され得る任意の機械を指し、この場合工具経路、切削深さ、送り速度、切削速度および時間単位あたりの回転などの機械の動作が、コンピュータを用いることによって制御され、または制御され得る。
【0062】
本発明の第4の態様によれば、少なくとも上記で述べた主な目的は、コンピュータ数値制御旋盤によって実行されたときに、最初に定義された方法をコンピュータ数値制御旋盤に実施させる命令を有するコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体を用いることによって達成される。
【0063】
本明細書では、コンピュータ可読媒体または記憶媒体は、命令実行システム、装置、またはデバイスによって、またはこれらに関連して使用するためのプログラムを含み、記憶し、通信し、伝播し、または運ぶ任意の手段とすることができる。コンピュータ可読媒体は、たとえば、限定はされないが、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、または半導体のシステム、デバイス、または伝播媒体とすることができる。コンピュータ可読媒体のさらなる例(非限定的リスト)は、次を含むことができる:1つまたは複数のワイヤを有する電気接続、携帯型コンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバ、および携帯型コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CDROM)。
【0064】
本発明の第5の態様によれば、少なくとも上記で述べた主な目的は、コンピュータ数値制御旋盤によって実行されたときに、最初に定義された方法をコンピュータ数値制御旋盤に実施させる命令を有するコンピュータプログラムを表すデータストリームを用いることによって達成される。
【0065】
次に、本発明を、本発明のさまざまな実施形態の説明によって、および添付の図を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】従来の旋削インサートを用いた円筒状表面の従来の旋削を示す概略図である。
【
図2】第1の旋削インサートによる円筒状表面の旋削を示す概略図である。
【
図2a】第3の旋削インサートによる円筒状表面の旋削を示す概略図である。
【
図3】第1の旋削インサートを用いた金属加工品の軸方向旋削および外面削りを含む、旋削を示す概略図である。
【
図3a】第3の旋削による金属加工品の軸方向旋削および外面削りを含む旋削を示す概略図である。
【
図4】第1の旋削インサートを用いた金属加工品の外面削りを含む旋削を示す概略図である。
【
図5】第1の旋削インサートのノーズ部の上面の上面図である。
【
図6】
図5の線VI-VI、VII-VII、およびVIII-VIIIそれぞれに沿った詳細なセクションの図である。
【
図7】
図5の線VI-VI、VII-VII、およびVIII-VIIIそれぞれに沿った詳細なセクションの図である。
【
図8】
図5の線VI-VI、VII-VII、およびVIII-VIIIそれぞれに沿った詳細なセクションの図である。
【
図10】従来の旋削インサートを使用して表面を形成する実施形態による、旋削方法を示す概略図である。
【
図11】従来の旋削からの磨耗を示す、従来の旋削インサートのノーズ部の概略上面図である。
【
図12】
図13の旋削からの磨耗を示す、ノーズ部の概略上面図である。
【
図13】第1の旋削インサートによる90°コーナの旋削を示す概略図である。
【
図14a】第2の旋削インサートを示す斜視図である。
【
図14e】部分的な工具本体内に位置決めされた
図14aの旋削インサートを示す斜視図である。
【
図14f】
図14eの旋削インサートおよび工具本体を示す分解図である。
【
図15a】第3の旋削インサートを示す斜視図である。
【
図16a】第1の旋削インサートを示す斜視図である。
【
図17a】
図16aの旋削インサートおよび工具本体を示す斜視図である。
【
図17d】工具本体内に着座した
図15aの旋削インサートを示す斜視図である。
【
図17e】
図15aの旋削インサートおよび工具本体を示す斜視図である。
【
図17f】
図17dの旋削インサートおよび工具本体を示す上面図である。
【
図18a】第4の旋削インサートを示す斜視図である。
【
図19a】第5の旋削インサートを示す斜視図である。
【
図20a】第6の旋削インサートを示す斜視図である。
【
図21a】第7の旋削インサートを示す斜視図である。
【
図22a】第8の旋削インサートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1および10を除くすべての旋削インサートの図は、一定の縮尺で描かれている。
【0068】
従来の旋削インサート1を使用した旋削による従来の金属切削作業を示す
図1を参照する。金属加工品50は、CNC機または旋削盤などのモータ(図示せず)を備える機械に連結されたクランプジョー52によってクランプされる。クランプジョーは、金属加工品50の第1の端部54、またはクランプ端において外面を押しつける。金属加工品50の反対側の第2の端部55は、自由端である。金属加工品50は、回転軸A3の周りを回転する。旋削インサート1は、工具本体2内のインサートシートまたはポケット内に固定式にかつ取り外し可能にクランプされる。工具本体2は、後端から、インサートシートまたはポケットが位置する前端まで延びる長手方向軸A2を有する。工具本体2および旋削インサート1は、一緒になって旋削工具3を形成する。旋削工具3は、金属加工品50に関連して移動され、これは、一般的に示される送りである。
図1では、送りは軸方向、長手方向とも呼ばれる送りであり、すなわち、送りの方向は、長手方向軸A3に対して平行である。このようにして、円筒状表面53が形成される。旋削インサート1は、主切れ刃と副切れ刃との間の角度として定義された、80°であるノーズ角αを有する有効なノーズを有する。回転軸A3に対して垂直である壁面に旋削インサート1が近づくにつれ、切りくず制御は不十分になり、その理由は、切りくずを切削ゾーンから出すための空間がそれほどないためである。また、切りくずが機械加工された表面にあたる、または損傷を与えるリスクもある。主切れ刃は、ノーズ切れ刃の後方にある。換言すれば、主切れ刃の侵入角度は90°を超え、
図1では約95°である。進入角は、切れ刃と送り方向との間の角度として定義される。
図1に示す旋削方法では、バック逃げ角は、約5°である。バック逃げ角ψは、後刃である副切れ刃と、送り方向に対して反対、すなわちこの送り方向に関連して180°の角度として定義される。
【0069】
第1の旋削インサートを備える旋削工具を使用する、旋削作業を示す
図2を参照する。
図1と同様に、金属加工品は、金属加工品の第1の端部54にある、またはこの端部に隣接する外面に押しつけられたクランプジョー(図示せず)によってクランプされる。金属加工品の反対側の第2の端部55は、自由端である。金属加工品は、回転軸A3の周りを回転する。上面図で見たときの旋削インサートは、ねじ6を用いることによって工具本体2内のインサートシートまたはポケット内に固定式に、かつ取り外し可能にクランプされる。工具本体2は、後端から、インサートシートまたはポケットが位置する前端44との間を延びる長手方向軸A2を有する。
図2では、この送りは、最大範囲において、軸方向の、長手方向とも呼ばれる送りであり、すなわち、送りの方向は、回転軸A3に対して平行である。このようにして、外部円筒状表面53が形成される。各切削の進入時、または軸方向送りの直前、送りは、旋削インサートが円弧に沿って移動するような径方向成分を有する。旋削インサートは、有効なノーズ切れ刃10を備える有効なノーズ部15を備える。有効なノーズ部15は、さらに、回転軸A3に対して平行な軸方向旋削中、10~45°、好ましくは20~40°の範囲内になるように選択された進入角k1を有する、有効な第1の切れ刃を備える。作業において主切れ刃である第1の切れ刃は、軸方向の送り方向にノーズ切れ刃10の前方にある。換言すれば、第1の切れ刃は前刃である。有効なノーズ部15上にまたはここに形成された第2の切れ刃は、副切れ刃または後刃である。送り方向が、回転軸A3に対して垂直に、この回転軸から離れるように径方向である場合、第2の切れ刃は進入角k2において有効である。二等分線7が、第1および第2の切れ刃によって画定される。換言すれば、二等分線は、第1の切れ刃と第2の切れ刃との間に形成される。第1および第2の切れ刃は、旋削インサートの外側の一点に集束する。有効なノーズ部15の二等分線は、長手方向軸A2に対して40~50°の角度θを形成する。旋削インサートは、2つの有効でないノーズ切れ刃10’、10”を備える2つの有効でないノーズ部を備える。軸方向の旋削作業では、旋削インサートのすべての部分は、送り方向に有効なノーズ切れ刃10の前方にある。軸方向の旋削作業では、切りくずを円滑に金属加工品から離れるように向けることができる。機械加工ステップでは、旋削インサート1は、ノーズ切れ刃10が円弧に沿って移動するように金属加工品50に進入する。旋削インサート1は、進入中の切りくずの厚さが一定またはほぼ一定になるように加工品50に進入するか、切削し始める。進入時、切削深さは、ゼロの切削深さから増大する。そのような好ましい進入は、インサートの磨耗、特にノーズ切れ刃10における磨耗を低減する。切りくず厚さは、送り速度に進入角を掛けたものとして定義される。したがって、進入中の旋削インサートの送り速度および移動および/または方向を選択および/または変更することにより、切りくず厚さを一定またはほぼ一定にすることができる。進入中の送り速度は、好ましくは、0.50mm/回転以下である。進入中の切りくず厚さは、好ましくは、後続の切削または機械加工中の切りくず厚さ以下である。
【0070】
図1および2のノーズ切れ刃によって少なくとも部分的に生成または形成された円筒状表面53、または回転対称面は、小さい頂部および谷部を有する波形状を有し、この波形状は、ノーズ半径曲率および送り速度によって少なくとも部分的に影響を受ける。波形の高さは、0.10mm未満、好ましくは0.05未満である。ねじ山プロファイルは、この意味では円筒状表面53ではない。
【0071】
図3および4では、代替的な機械加工作業における
図2の旋削インサートおよび工具本体を見ることができ、旋削工具の、特に送り方向に関する多様な応用領域を示している。
【0072】
図3は、6つのステップにおける機械加工順序を示す。ステップ1は、切り下げ作業である。ステップ2は、金属加工品の第1の端部54またはクランプ端から離れる軸方向旋削である。ステップ3は、軸方向および径方向両方の成分を有する送りの形態の、円錐または円錐台、すなわちテーパにされた表面を生成するならい削り作業である。ステップ4は、作業2に類似する作業である。ステップ5は、金属加工品の回転軸A3に対して垂直な平面内に位置する平坦な表面を生成する、外面削り作業である。ステップ6は、金属加工品の第2の端部55または自由端における外面削り作業である。
【0073】
図4は、2つの機械加工ステップ、ステップ1およびステップ2を示す。ステップ1では、径方向送りは、回転軸A3に対して垂直であり、この回転軸に向かうものである。2では、径方向送りは、回転軸A3に対して垂直であり、この回転軸から離れるものであり、ここで回転軸A3に対して垂直な平坦な表面56が、生成される。いずれの場合も、第2の切れ刃は10~45°、好ましくは20~40°の範囲内である進入角κ2において有効である。回転軸A3周りの金属加工品の回転方向は、ステップ1および2に対して相反する方向である。ステップ2では、回転方向は
図1~
図3と同じである。
【0074】
図5は、凸状ノーズ切れ刃10によって連結された第1の切れ刃11および第2の切れ刃12を備える、第1の旋削インサートのノーズ部15の上面図である。同じノーズ部15上または同じノーズ部15における第1の切れ刃11および第2の切れ刃12は、互いに対して25~50°のノーズ角αを形成し、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12は、旋削インサートの外側の一点(図示せず)に集束する。二等分線7が、第1の切れ刃11と第2の切れ刃12との間に、これらの刃から等距離に位置する。二等分線7は、ノーズ切れ刃10とその中心において交差する。突起部30が、旋削インサートの上面内に形成され、この突起部は、二等分線に沿ってその主延長部を有する。突起部は、第1の切れ刃の方を向く第1の切りくず破壊壁34と、第2の切れ刃を向く第2の切りくず破壊壁とを備える。第1の切れ刃11に対して垂直な方向に、かつ基準面RPに対して平行な平面において、第1の切れ刃11から第1の切りくず破壊壁34までの測定される距離は、ノーズ切れ刃10から離れるにつれて増大する。これにより、特に
図2のような旋削作業において改良された切りくず制御が与えられる。突起部30、したがって第1の切りくず破壊壁34は、第1の切れ刃11より短い延長部を有する。
【0075】
図9は、
図5のノーズ部の側面図を示す。底面9は、上面の反対側に位置する。基準面RPは、上面と底面9との間に、これらの面から等距離に位置する。上面および底面は平坦ではないが、基準面RPは、3つのノーズ切れ刃と交差する平面に対して平行であるように位置決めされ得る。側面13は、上面および底面9を連結する。側面13は、第1の切れ刃11に隣接する第1の逃げ面21と、底面9に隣接する第3の逃げ面23と、第1の逃げ面21と第3の逃げ面23との間に位置する第2の逃げ面22とを備える。第1の切れ刃11から第1の逃げ面21の下側境界線、すなわち底面9の最も近くに位置する第1の逃げ面21の境界線までの距離は、ノーズ切れ刃から離れるにつれて減少する。第1の逃げ面21の基準面RPに対して垂直な方向の高さは、第1の切れ刃11の強度をさらに高めるために、第2の逃げ面22の高さより小さい。第1の逃げ面21の高さは、第1の切れ刃11のフランク面の磨耗を補償するために少なくとも0.3mmである。第1の切れ刃11は、底面9および基準面RPに向かって、ノーズ切れ刃10から離れながら傾斜する。第1の切れ刃11から基準面RPまでの距離は、少なくとも第1の切れ刃11の一部分に関して、ノーズ切れ刃10からの距離が増大するにつれて減少するように変化する。基準面RPからノーズ切れ刃10に隣接して位置する第1の切れ刃11の第1の部分までの距離は、基準面RPから、ノーズ切れ刃10からさらに離れて位置する第1の切れ刃11の第2の部分までの距離より大きい。第1の切れ刃11のそのような配向により、切りくず制御は、たとえば、
図2に見られる作業のような、クランプ端から離れる軸方向の旋削において改良される。距離D1は、基準面RPに対して垂直な方向に測定され、突起部30の上面と第1の切れ刃11の最低点との間の距離を表す。D1は、0.28~0.35mmである。これにより、切りくず破壊および/または切りくず制御は、
図2に見られる作業においてさらに改良される。
【0076】
図6~
図8は、
図5の線VI-VI、VII-VIIおよびVIII-VIIIそれぞれに沿ったセクションを示す。このセクションは、基準面RPに対して垂直な平面において第1の切れ刃11に対して垂直である。
図6~
図8では、第1、第2、および第3の逃げ面21、22、23が、基準面RPに対して平行であり平面に関連して、底面9と交差して形成する角度が、γ、σ、εそれぞれで示される。角度σは、角度εより大きい。これにより、インサート強度の低下を低減させながら、小さい加工品直径から外面削りを行うことができる。直径が小さくなるにつれてより大きい逃げ角が必要であるが、大きく一定である逃げ角は、インサートの強度を低減させる。第2の逃げ面22は、インサートの強度を増大させる目的を有する。第3の逃げ面23は、底面に隣接する。角度γは、角度εより大きい。角度σは、γより大きい。第3の逃げ面23は、
図6~
図8の断面で見て凸状またはほぼ凸状であり、それによって下限直径範囲、すなわち旋削インサートが、インサートの強度の低減を最小限に抑えて外面削り作業において機能することができる最少直径をさらに改良する。
【0077】
第2の切れ刃12、および第2の切れ刃12に隣接する測面13の構成は、上記で
図5~
図8に関連して説明した、第1の切れ刃11および第1の切れ刃11に隣接する側面13の構成によるものである。
【0078】
図10は、第1の機械加工ステップを含む、金属加工品上に表面53を形成する方法を示す。知られている旋削インサート1が提供される。旋削インサート1は、有効なノーズ部15を備える。有効なノーズ部15は、第1の切れ刃11と、第2の切れ刃12と、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12を連結する凸状ノーズ切れ刃10とを備える。第1の切れ刃11と第2の切れ刃12との間に形成されたノーズ角αは、85°以下である。ノーズ角αは、好ましくは少なくとも25°である。
図10では、ノーズ角αは80°である。第2の切れ刃12は、送り方向99に90°を上回るバック逃げ角ψを形成する。好ましくは、前後の機械加工ステップが外面削り作業である場合、バック逃げ角ψは少なくとも100°である。好ましくは、バック逃げ角ψは、120°未満である。バック逃げ角ψは、表面53の形成中、送り方向99に関連して一定である。
【0079】
旋削インサート1のすべての部分は、送り方向99に、有効な、または表面を生成するノーズ切れ刃10の前方にある。代替的に考えると、旋削インサートの上面のすべての部分は、送り方向にノーズ切れ刃の後部の前方にある。
【0080】
ノーズ切れ刃10の1つの第1の点は、金属加工品の回転軸の最も近くに位置する旋削インサート1の部分である。送り方向99に前記第1の点の後方にある、ノーズ切れ刃10の1つの第2の点、または後点は、送り方向99またはインサート移動方向に最も後方向に位置する旋削インサート1の部分である。ノーズ切れ刃10の前記第1の点は、二等分線の、第1の切れ刃11と同じ側に位置し、この場合二等分線は、第1の切れ刃11と第2の切れ刃12との間に、これらの刃から等しい距離にある線である。ノーズ切れ刃10の前記第2の点は、二等分線の、第2の切れ刃12と同じ側に位置する。第1の切れ刃11および第2の切れ刃12は、凸状ノーズ切れ刃10の両側に位置する。第1、第2、およびノーズ切れ刃11、12、10は、旋削インサート1の上面の境界部に形成され、この上面は、すくい面を備える。「旋削インサートのすべての部分を送り方向にノーズ切れ刃の前方に位置決めする」という表現は、したがって代替的には、「旋削インサートの上面のすべての部分を送り方向にノーズ切れ刃の後部の前方に位置決めする」と考えることもできる。
【0081】
旋削インサート1および工具本体2を備える旋削工具3のすべての部分は、送り方向に有効な、または表面を生成するノーズ切れ刃10の前方にある。したがって、工具本体2のすべての部分は、送り方向99にノーズ切れ刃10の前方にある。旋削工具3は、CNC機またはCNC旋盤(図示せず)などの旋削盤にクランプされるか、または連結される。表面53が形成される金属加工品は、回転軸(図示せず)の周りを回転する。
工具本体2は、前端および後端と、長手方向軸A2に沿って前端から後端まで延びる主延長部と、前端内に形成されたインサートシートであって、旋削インサート1が装着されるインサートシートとを備える。
工具本体2の長手方向軸A2は、金属加工品の回転軸に対して垂直である。
旋削インサート1は、回転軸に対して平行に、または45°未満の角度である、送り方向99によって規定された方向に移動する。
図10では、送り方向99は、金属加工品の回転軸に対して平行である。第1の切れ刃11は、有効であり、送り方向99にノーズ切れ刃10の前方にある。第1の切れ刃は有効であり、すなわち金属を、0°を上回る進入角k1で切削する。好ましくは、進入角k1は、少なくとも5°である。好ましくは、進入角k1は、10~45°の範囲である。
図10では、進入角k1は、約5°である。より大きい切削深さが必要である場合、より大きい進入角k1を選択しなければならない。第1の切れ刃11は前刃である。第2の切れ刃12は後刃である。表面53は、ノーズ切れ刃10によって少なくとも部分的に形成される。形成される表面53は、回転対称面、すなわち金属加工品の回転軸に沿って延長部を有する表面53であり、この場合回転軸に対して垂直な断面において、回転対称面53の各部分は、金属加工品の回転軸から一定の距離に位置し、この場合この一定の距離は、0.10mm内、好ましくは0.05mm内の距離である。回転対称面53は、たとえば、円筒状表面、または円錐表面、または円錐台表面、またはテーパ表面の形態であることができる。ノーズ切れ刃10によって少なくとも部分的に生成または形成される回転対称面53は、小さい頂部および谷部を有する波形状を有し、この波形状は、ノーズ半径の曲率および送り速度に少なくとも部分的に影響を受ける。波形の高さは、0.10mm未満、好ましくは0.05mm未満である。有効なノーズ切れ刃10は、旋削インサート1の、および旋削工具3の、金属加工品の回転軸に最も近い部分である。
【0082】
図11は、従来の旋削の原理を示し、この場合C1は
図1の送り方向を表し、D1は、そのような作業からの、ノーズ部上またはノーズ部における磨耗を表す。C3は、従来の面削り作業を表し、すなわち回転軸A3に対して垂直に、この回転軸に向かう送りを表し、D3は、そのような作業からの、ノーズ部上またはノーズ部における磨耗を表す。第2の切れ刃12は、C1送り方向の主切れ刃である。第1の切れ刃11は、C3送り方向の主切れ刃である。凸状ノーズ切れ刃10は、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12を連結する。遷移点T1、T2は、ノーズ切れ刃10と第1の切れ刃11および第2の切れ刃12それぞれとの間の遷移を表す。磨耗D1、D3は、切削深さおよび送り速度の両方に依存する。しかし、D1およびD3が重複し、その結果、ノーズ切れ刃10において、または少なくともノーズ切れ刃10の中心部分において高い磨耗を生じさせることは明確である。
【0083】
図12は、本発明および代替的な旋削方法の原理を示す。C2は、
図2の主送り方向、または
図13のパス2、4、6および8の主送り方向、すなわち金属加工品のクランプ端から離れる、軸方向送り方向を表す。D2は、そのような作業からの、ノーズ部上またはノーズ部における磨耗を表す。C4は、外面削り作業、すなわち
図10のパス1、3、5、および7の主送り方向に見られるように、回転軸A3に対して垂直に、この回転軸から離れる送りを表す。D4は、そのような作業からの、ノーズ部上またはノーズ部における磨耗を表す。第2の切れ刃12は、C4送り方向における主切れ刃である。第1の切れ刃11は、C2送り方向における主切れ刃である。凸状ノーズ切れ刃10は、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12を連結する。遷移点T1、T2は、ノーズ切れ刃10と第1の切れ刃11および第2の切れ刃12それぞれとの間の遷移を表す。磨耗D2、D4は、切削深さおよび送り速度の両方に依存する。しかし、D2およびD4が重複せず、少なくとも
図11の程度よりは重複せず、その結果、ノーズ切れ刃10における磨耗が低減され、または少なくともノーズ切れ刃10の中心部分における磨耗が低減されることが明確である。第1および第2の切れ刃11、12の磨耗の範囲はより広く、すなわち、
図11と比較してより長い距離にわたって分散される。しかし、送りC2およびC4の進入角は、C1およびC3のより大きい進入角と比較して小さいため、
図12の切りくず厚さは、より薄くなり、そのため、磨耗は比較的小さくなる。一定の送り速度および切削深さにおいて、D2の面積はD3の面積に等しく、D1の面積はD4の面積に等しい。
【0084】
図13は、第1の旋削インサートを使用する機械加工順序の例を示す。左手は、金属加工品のクランプ端である。円筒状表面53および平坦表面56を備える90°コーナが、旋削によって形成される。ステップ1~8の順序が示される。各ステップの進入は、各ステップの主送り方向に対して垂直であるように示される。ステップ1、3、5、および7の主送り方向は、回転軸A3に対して垂直に、この回転軸から離れるものである。ステップ2、4、6および8の主送り方向は、回転軸A3に対して平行に、クランプ端から離れるものである。各切削の進入は、好ましくは
図2に関連して説明した通りである。
図13に示すステップの順序後の旋削インサート1の磨耗は、
図12に示す磨耗に類似し、またはこの磨耗と同一である。
【0085】
図16a~
図17cは、さらに、第1の旋削インサート、ならびに旋削インサート1および工具本体2を備える旋削工具3を説明する。旋削インサート1は、すくい面である、またはすくい面を備える上面8と、シート面として機能する反対側の底面9とを備える。基準面RPが、上面8および底面9に対して平行に、これらの面間に位置する。中心軸A1が、基準面RPに対して垂直に延び、基準面RP、上面8、および底面9と交差する。上面8および底面9内に開口部を有する、ねじ用の穴は、中心軸A1と同軸である。旋削インサート1は、逃げ面として機能し、上面8および底面9を連結する側面13、13’、13”を備える。
3つのノーズ部15、15’、15”は、中心軸A1に対して対称的に、またはこの周りに形成される。ノーズ部15、15’、15”は、同一である。各ノーズ部15、15’、15”は、第1の切れ刃11と、第2の切れ刃12と、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12を連結する凸状ノーズ切れ刃10とを備える。ノーズ切れ刃10、10’、10”は、中心軸A1から最大距離に、すなわち旋削インサートの他のすべての部分よりも、中心軸A1から遠い距離に位置する。
図16Dに見られる上面図では、同じノーズ部15上のまたは同じノーズ部15における第1の切れ刃11および第2の切れ刃12は、互いに対して25~50°のノーズ角αを形成し、
図16dでは、ノーズ角αは35°である。
図16bなどの側面図では、各ノーズ部15、15’、15”上のまたは各ノーズ部15、15’、15”における第1および第2の切れ刃11、12の少なくとも一部は、底面に向かって傾斜し、それにより、側面図では、第1および第2の切れ刃11、12は、同じノーズ部15上または同じノーズ部15においてノーズ切れ刃10と境を接する最高点を有する。換言すれば、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12から基準面RPまでの距離は、ノーズ切れ刃10からの距離が増大するにつれて減少するように変化する。第1および第2の切れ刃11、12は、上面図では、線形もしくは直線的、またはほぼ線形もしくは直線的である。二等分線7、7’、7”が、第1の切れ刃11、11’、11”および第2の切れ刃12、12’、12”の各対から等距離に延びる。各二等分線7、7’、7”は、中心軸Aと交差する。くぼみ17、17’、17”が、ノーズ切れ刃10、10’、10”の各対間に形成される。
図18aおよび18bに見られる底面9は、旋削インサート1が切削中、中心軸A1周りを回転する傾向を低減する目的で、3つの溝40、40’、40”の形態の回転防止手段を備え、各溝40、40’、40”は、最も近い第1の切れ刃11および第2の切れ刃12に隣接して位置する二等分線7、7’、7”と同じ方向に主延長部を有する。各溝40、40’、40”は、好ましくは、互いに関連して鈍角100~160°に2つのシート面を備える。旋削インサート1は、
図17aに見られるように、ねじまたは上部クランプなどのクランプ手段によって、工具本体2の前端に位置するインサートシート4内に固定式にクランプされるよう意図される。次に、インサートシート4と旋削インサートとの間の接触を、
図17cおよび
図17aの影をつけた領域を見ながら説明する。有効なノーズ切削部15は、溝40が
図17cに位置するインサートの部分である。溝40の2つのシート面は、インサートシート4の底部内の凸部90の2つの表面と接触している。各々の他の溝40’、40”の1つの表面、有効なノーズ切れ刃10から最大距離に位置する表面は、インサートシート4の底部内の底面93、94と接触している。有効なノーズ切れ刃10から最大距離にある側面13の少なくとも一部は、インサートシート4の後端に形成された後方シート面91、92と接触することができる。
【0086】
図14a~
図14fは、第2の旋削インサート1、ならびに旋削インサート1および工具本体2を備える旋削工具3を示す。旋削インサート1は、すくい面である、またはすくい面を備える上面8と、シート面として機能する反対側の底面9とを備える。上面8および底面9は同一である。これは、第1の位置にある間、上面8はすくい面として機能し、インサートが上下逆さまになったとき、同じ表面は、次にシート面として機能することを意味する。基準面RPは、上面8および底面9に対して平行に、これらの面間に位置する。中心軸A1が、基準面RPに対して垂直に延び、基準面RP、上面8、および底面9と交差する。上面8および底面9内に開口部を有する、ねじ用の穴は、中心軸A1と同軸である。旋削インサート1は、逃げ面として機能し、上面8および底面9を連結する側面13、13’、13”を備える。3つのノーズ部15、15’、15”は、中心軸A1に対して対称的に、またはこの周りに形成される。ノーズ部15、15’、15”は、同一である。各ノーズ部15、15’、15”は、第1の切れ刃11と、第2の切れ刃12と、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12を連結する凸状ノーズ切れ刃10とを備える。ノーズ切れ刃10、10’、10”は、中心軸A1から最大距離に、すなわち旋削インサートの他のすべての部分よりも、中心軸A1から遠い距離に位置する。
図14dに見られる上面図では、同じノーズ部15上のまたは同じノーズ部15における第1の切れ刃11および第2の切れ刃12は、互いに対して25~50°、この場合では45°のノーズ角αを形成する。
図14bに見られる側面図では、各ノーズ部15、15’、15”上のまたは各ノーズ部15、15’、15”における第1および第2の切れ刃11、12の少なくとも一部は、底面に向かって傾斜し、それにより、側面図では、第1および第2の切れ刃11、12は、同じノーズ部15上または同じノーズ部15においてノーズ切れ刃10に隣接する最高点を有する。換言すれば、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12から基準面RPまでの距離は、ノーズ切れ刃10からの距離が増大するにつれて減少するように変化する。第1および第2の切れ刃11、12は、上面図では、線形もしくは直線的、またはほぼ線形もしくは直線的である。二等分線7、7’、7”が、第1の切れ刃11、11’、11”および第2の切れ刃12、12’、12”の各対から等距離に延びる。各二等分線7、7’、7”は、中心軸Aと交差する。くぼみ17、17’、17”が、隣接するノーズ切れ刃10、10’、10”の各対間に形成される。旋削インサート1は、表面41、42、43、44の組の形態の回転防止手段を備え、この場合各表面41、42、43、44は、基準面RPに関連して5~60°の角度を形成する平面内を延びる。表面41、42、43、44の組は、中央のリング形状突起部30において形成され、中心軸A1の周りを延びる。そのような構成により、旋削インサート1は、両面型または可逆式に作製することができ、可能な用途を広げる。第1の切りくず破壊壁34は、表面41、42、43、44の組の一部であることができる。代替的な解決策(図示せず)は、第1の切りくず破壊壁34を別の突起部(図示せず)の一部として中心軸A1からより遠い距離に配置することである。
図14eは、インサートを押さえつけ、工具本体2のインサートシート4内に保つ、クランプ95を用いることによる旋削インサート1の1つの可能なクランプモードを示す。
図14fは、第2の旋削インサート1をたとえば上部クランプ95を用いることによって装着することができるインサートシート4を示す。有効なノーズ切れ刃10から最大距離に位置する側面13は、インサートシート4の後面91、92に押さえつけられる2つの表面を備える。表面41、42、43、44の組は、インサートシート4の底部の前部90の表面と接触する2つの前面41、42を備える。この文脈での前部は、中心軸Aと有効なノーズ切れ刃10との間である。表面41、42、43、44の組は、さらに、2つの後面43、44を備え、この後面は、インサートシート4の底面内の、前部90とインサートシート4の後面91、92との間に位置する後底面93、94に押さえつけられる2つの後面43、44を備える。
【0087】
第3の旋削インサートを使用する旋削を示す
図2aを参照する。
図1のように、金属加工品は、金属加工品の第1の端部54、またはクランプ端にある外部表面に押しつけられるクランプジョー(図示せず)によってクランプされる。金属加工品の反対側の第2の端部55は、自由端である。金属加工品50は、回転軸A3の周りを回転する。上面図で見られる旋削インサートは、ねじを用いることによって工具本体2内のインサートシートまたはポケット内に固定式にかつ取り外し可能にクランプされる。工具本体2は、後端から、インサートシートまたはポケットが位置する前端まで延びる長手方向軸A2を有する。
図2aでは、この送りは、最大範囲において、軸方向の、長手方向とも呼ばれる送りであり、すなわち、送りの方向は、回転軸A3に対して平行である。このようにして、外部円筒状表面53が形成される。各切削の進入、または軸方向送りの直前、送りは、旋削インサートが円弧に沿って移動するような径方向成分を有する。旋削インサートは、旋削インサート1の中心軸周りに互いに対して180°に形成された2つの対向する同一のノーズ部15、15’を備える。各ノーズ部15、15’は、第1の切れ刃11と、第2の切れ刃12と、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12を連結する凸状ノーズ切れ刃10とを備える。反対側の有効でないノーズ部15’よりも回転軸A3の近くに位置する1つのノーズ部15が、有効である。有効とは、ノーズ部が金属加工品50から切りくずを切削するために使用することができるように置かれることを意味する。二等分線7が、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12から等距離に延び、ノーズ切れ刃10の中心および旋削インサートの中心軸A1と交差する。第1および第2の切れ刃11、12は、旋削インサート外側の一点(図示せず)に集束する。有効なノーズ部15の二等分線は、長手方向軸A2に対して40~50°の角度θを形成する。
上面図では、同じノーズ部15上の第1の切れ刃11および第2の切れ刃12は、互いに対して70~85°の、
図2aでは80°であるノーズ角αを形成する。第3の凸状切れ刃60が、第1の切れ刃11に隣接して形成される。第4の切れ刃61が、第3の切れ刃に隣接して、ノーズ切れ刃10からさらに離れて形成される。第5の凸状切れ刃62が、第2の切れ刃12に隣接して形成される。第6の切れ刃63が、第5の切れ刃62に隣接して、ノーズ切れ刃10からさらに離れて形成される。
図2aのような上面図では、第1、第2、第4、および第6の切れ刃11、12、61、63は、線形もしくは直線的であり、またはほぼ線形もしくは直線的である。
図2aの右に向かう主送り方向は、回転軸A3に対して平行に、金属加工品50の第1の端部54またはクランプ端から離れるものである。前記送り方向では、第4の切れ刃61は、10~45°、好ましくは20~40°、
図2aでは30°である進入角において有効である。第4の切れ刃61は、前記主送り方向の主切れ刃であり、すなわち切りくずの大部分は、少なくとも中程度から大きい切削深さで第4の切れ刃61によって切削される。これより小さい程度では、第3の切れ刃60、第1の切れ刃11、およびノーズ切れ刃10も、有効である。第1の切れ刃は、前記軸方向の送り方向にノーズ切れ刃10の前方にある。旋削インサートのすべての部分は、前記送り方向に有効なノーズ切れ刃10の前方にある。有効なノーズ部15上に形成された第2の切れ刃12は、有効でない。
【0088】
軸方向旋削作業では、特に、送りがクランプ端に向かい、壁面に向かう場合の
図1に示す機械加工と比べて、切りくずを円滑に金属加工品から離れるように向けることができる。
図2aの機械加工ステップでは、旋削インサート1は、ノーズ切れ刃10が円弧に沿って移動するように金属加工品50に進入する。旋削インサート1は、進入中の切りくずの厚さが一定またはほぼ一定になるように金属加工品50に進入するか、または切削し始める。進入時、切削深さは、ゼロの切削深さから増大する。そのような好ましい進入は、インサートの磨耗、特にノーズ切れ刃10における磨耗を低減する。切りくず厚さは、送り速度に進入角を掛けたものとして定義される。したがって、進入中の旋削インサートの送り速度および移動および/または方向を選択および/または変更することにより、切りくず厚さを一定またはほぼ一定にすることができる。進入中の送り速度は、好ましくは、0.50mm/回転以下である。進入中の切りくず厚さは、好ましくは、後続の切削または機械加工中の切りくず厚さ以下である。
【0089】
送り方向が、回転軸A3に対して垂直であり、ここから離れるような径方向である場合、第6の切れ刃63が、10~45°、好ましくは20~40°の進入角k2において有効である。
【0090】
図1および2aのノーズ切れ刃によって少なくとも部分的に生成または形成された円筒状表面53、または回転対称面は、小さい頂部および谷部を有する波形状を有し、この波形状は、ノーズ半径の曲率および送り速度によって少なくとも部分的に影響を受ける。波形の高さは、0.10mm未満、好ましくは0.05未満である。ねじ山プロファイルは、この意味では円筒状表面53ではない。
【0091】
図3aでは、代替の機械加工作業における
図2aの旋削インサートおよび工具本体を見ることができ、旋削工具の、特に送り方向に関する多様な応用領域を示している。6つのステップにおける機械加工順序が、示される。ステップ1は、切り下げ作業である。ステップ2は、金属加工品の第1の端部54またはクランプ端から離れる軸方向旋削である。ステップ3は、軸方向および径方向両方の成分を有する送りの形態の、円錐または円錐台表面を生成するならい削り作業である。ステップ4は、ステップ2に類似する作業である。ステップ5は、金属加工品の回転軸A3に対して垂直な平面内に位置する平坦な表面を生成する、外面削り作業である。ステップ6は、金属加工品の第2の端部55または自由端における外面削り作業である。
【0092】
図15a~
図15fおよび
図17d~
図17fは、さらに、第3の旋削インサート1、ならびに旋削インサート1および工具本体2を備える旋削工具3を説明する。旋削インサート1は、すくい面14である、またはすくい面14を備える上面8と、シート面として機能する反対側の底面9とを備える。基準面RPが、上面8および底面9に対して平行に、これらの面間に位置する。中心軸A1が、基準面RPに対して垂直に延び、基準面RP、上面8、および底面9と交差する。上面8および底面9内に開口部を有する、ねじ穴は、中心軸A1と同軸である。
【0093】
第3の旋削インサート1は、逃げ面として機能し、上面8および底面9を連結する側面13を備える。2つの対向するノーズ部15、15’が、中心軸A1に対して対称的にまたはこの周りに形成される。ノーズ部15、15’は、同一である。各ノーズ部15、15’は、第1の切れ刃11と、第2の切れ刃12と、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12を連結する凸状ノーズ切れ刃10とを備える。各ノーズ部15、15’は、さらに、第1の切れ刃11に隣接して形成された第3の凸状切れ刃60と、第3の切れ刃60に隣接し、ノーズ切れ刃10からさらに離れて形成された第4の切れ刃61とを備える。各ノーズ部15、15’は、さらに、第2の切れ刃12に隣接して形成された第5の凸状切れ刃62と、第5の切れ刃62に隣接し、ノーズ切れ刃10からさらに離れて形成された第6の切れ刃63とを備える。
図15dのような上面図では、第1、第2、第4、および第6の切れ刃11、12、61、63は、線形もしくは直線的、またはほぼ線形もしくは直線的である。
【0094】
ノーズ切れ刃10、10’は、中心軸A1から最大距離、すなわち、旋削インサートの他のすべての部分よりも、中心軸A1から遠い距離に位置する。
図15dに見られる上面図では、同じノーズ部15上の第1の切れ刃11および第2の切れ刃12は、互いに対して75~85°のノーズ角αを形成し、
図15dでは、ノーズ角αは80°である。
図15cなどの側面図では、各ノーズ部15、15’上の第4および第6の切れ刃61、63の少なくとも一部分は、底面9に向かって傾斜し、それにより、側面図において、第4および第6の切れ刃61、63は、同じノーズ部15上のノーズ切れ刃10のより近くに最高点を有する。換言すれば、第4の切れ刃61および第6の切れ刃63から基準面RPまでの距離は、ノーズ切れ刃10からの距離が増大するにつれて減少するように変化する。さらに、第1、第2、第3、および第5の切れ刃11、12、60、62は、対応する方法で底面9に向かって傾斜し、それにより、底面9に関連して、ノーズ切れ刃10は、第1および第2の切れ刃11、12よりさらに離れ、第1および第2の切れ刃は、次いで、第3および第5の切れ刃60、62よりさらに離れ、第3および第5の切れ刃は、次いで、第4および第6の切れ刃61、63よりさらに離れる。二等分線7、7’、が、第1の切れ刃11、11’および第2の切れ刃12、12’の各対から等距離に延びる。各二等分線7、7’は、中心軸Aと交差し、これらは、共通の方向に延びる。底面9は、上面8と同一である。
図15dのような上面図では、第4の切れ刃61は、二等分線7に対して0~34°、
図15dでは10~20°の角度βを形成する。上面8は、第4の切れ刃61を向く第1の切りくず破壊壁34を備える突起部30を備える。第4の切れ刃61から第1の切りくず破壊壁34までの距離は、ノーズ切れ刃10から離れるにつれて増大する。突起部30は、シート面として機能するよう意図され、各突起部の上面は、平坦であり、基準面RPに対して平行である。突起部30は、基準面RPから最大距離に位置する旋削インサート1の部分である。突起部は、第6の切れ刃を向く第2の切りくず破壊壁を備える。第4の切れ刃61から第1の切りくず破壊壁34までの距離は、第4の切れ刃61に対して垂直な方向に、基準面RPに対して平行な平面において、第1の切りくず破壊壁34まで測定される。突起部30、したがって第1の切りくず破壊壁34は、必ずしも、第4の切れ刃61の全長に沿って延びる必要はない。それでも、第4の切れ刃61から第1の切りくず破壊壁34までの距離は、第4の切れ刃61の、第1の切りくず破壊壁34が第4の切れ刃61に対して垂直に延びる部分において増大していく。
基準面RPに対して垂直な平面において、突起部30の上面と第4の切れ刃61の最低点との間で測定される距離D1は、0.28~0.35mmである。
隆起部80、または突起部が、上面8内に形成される。隆起部80は、第4の切れ刃61から0.3mmより大きく、かつ3.0mm未満の距離に位置する。隆起部80は、第4の切れ刃61と第1の切りくず破壊壁34との間に位置する。隆起部80は、上面図では非円形の形状を有し、それにより、隆起部の0.8~3.0mmである主延長部は、第4の切れ刃61に対してほぼ垂直または垂直な方向である。主延長部に対して垂直な隆起部の副延長部は、0.5~2.0mmである。隆起部80または突起部は、周囲領域に関連して基準面から離れて延びる上面8の部分である。
図15dのような上面図では、隆起部80は、好ましくは、楕円形もしくは長円形、またはほぼ楕円形または長円形状を有する。隆起部80は、互いから分離される。隆起部80は、好ましくは、互いから一定の距離に位置する。隆起部80は、好ましくは、第4の切れ刃61から一定の距離に位置する。第1の実施形態では、第4の切れ刃に隣接する5つの隆起部が存在する。第4の切れ刃に隣接して2~10個の隆起部を有することが好ましい。第3の旋削インサートには少なくとも1つの別の隆起部80が存在し、2~3つの隆起部80が、第3の切れ刃60に対して垂直に位置し、またはこの切れ刃に対して垂直な方向に主延長部を有し、少なくとも1つの別の隆起部80、第1の実施形態では1~2つの隆起部80が、第1の切れ刃11に対して垂直に位置し、この切れ刃に対して垂直な方向に主延長部を有する。
第3の旋削インサート1は、二等分線7、7’の両側で鏡対称である。したがって、隆起部80が、第2、第5、および第6の切れ刃12、62、63から距離を離して対応する方法で形成される。
そのような旋削インサート1により、切りくず破壊および/または切りくず制御は、特に切削深さがより小さいところで、すなわち切削深さが、第1の切れ刃11が有効であり、第4の切れ刃61が有効でないようなものであるときにさらに改良される。そのような小さい切削深さでは、第1の切れ刃11による進入角が小さいため、切りくずは非常に薄く、第1の切れ刃11に最も近い隆起部または複数の隆起部80が、切りくず破壊部として機能する。隆起部80の主延長部は、隆起部80の磨耗が切りくずに対する隆起部80の効果を低減させるまでの時間を増大させる効果を与える。
【0095】
次に、本発明による方法に適した第4、第5、第6、第7、および第8のタイプの旋削インサートをそれぞれ示す
図18a~
図22eを参照する。これらのインサートは、底面および側面に関してのみ第3のインサートとは異なる。
【0096】
したがって、
図18a~
図22eのそれぞれに示す第4、第5、第6、第7、および第8の旋削インサート1は、上面8、基準面RP、ねじ穴、第1の切れ刃11、ノーズ切れ刃10、第2の切れ刃12、第3の切れ刃60、第4の切れ刃61、第5の切れ刃62、第6の切れ刃63、ノーズ角α、二等分線7、角度β、すくい面14、突起部30、第1の切りくず破壊壁34、第2の切りくず破壊壁、距離D1および隆起部80に関して、第3の旋削インサートと同じまたは同一の形状、形態、寸法、値、および特徴と要素間の相互関係を有する。
【0097】
図18a~
図21eに示す第4、第5、第6、および第7の旋削インサート1は、第1の側面13が、第1の切れ刃11に隣接する第1の逃げ面21と、第3の逃げ面23と、第1の逃げ面21と第3の逃げ面23との間に位置する第2の逃げ面22とを備えるように形成される。
【0098】
第1の切れ刃11に対して垂直な平面において測定される、第2の逃げ面22が底面9に関連して形成する角度は、第1の切れ刃11に対して垂直な平面において測定される、第3の逃げ面23が底面に関連して形成する角度より大きい。
【0099】
第1の切れ刃11に対して垂直な平面において測定される、第2の逃げ面22が底面9に関連して形成する角度は、第1の切れ刃11に対して垂直な平面において測定される、第1の逃げ面21が底面に関連して形成する角度より大きい。
【0100】
各ノーズ部15、15’の側面13、13’は、基準面RPに対して垂直であり、二等分線7を含む平面に関連して対称的に構成される。
【0101】
第2の切れ刃12に隣接する逃げ面は、対応する方法で形成されるか、または配置される。
【0102】
この逃げ面配置の利点は、外面削りを小さい金属加工品直径において実施することができ、外面削りにおいて、より大きい深さの切削が可能であることである。
【0103】
次に、第4の旋削インサート1を示す
図18a~
図18eを参照する。底面9は、機械加工中のインサートシート4に対する旋削インサート1の移動を低減するために、回転防止手段40を備える。回転防止手段40は、共通の主延長部を有する2つの溝40、40’の形態であり、この主延長部は、二等分線7、7’の延長部に対応する。
【0104】
次に、第5の旋削インサート1を示す
図19a~
図19eを参照する。底面9は、機械加工中のインサートシート4に対する旋削インサート1の移動を低減するために、回転防止手段40を備える。回転防止手段40は、共通の主延長部を有する2つの溝40、40’の形態であり、この主延長部は、二等分線7、7’の延長部に対応する。各溝40、40’は、互いに関連して、100~160°の範囲内の鈍角を形成する2つの表面を備える。
【0105】
次に、第6の旋削インサート1を示す
図20a~
図20eを参照する。底面9は、機械加工中のインサートシート4に対する旋削インサート1の移動を低減するために、回転防止手段40を備える。回転防止手段40は、共通の主延長部を有する2つの凸部40、40’の形態であり、この主延長部は、二等分線7、7’の延長部に対応する。
【0106】
次に、第7の旋削インサートを示す
図21a~
図21eを参照する。底面9は、基準面RPに対して平行である平坦な表面9を備える。
【0107】
第8の旋削インサート1を示す
図22a~
図22eを参照する。底面9は、基準面RPに対して平行である平坦な表面9を備える。平坦な表面9は、旋削インサートの中心軸周りにリング状に成形される。
【0108】
第1の側面13は、第1の切れ刃11に隣接する第1の逃げ面21と、第3の逃げ面23とを含む。第3の逃げ面23は、底面9と境を接する。
【0109】
第1の切れ刃11に対して垂直な平面において測定される、第1の逃げ面21が底面9に関連して形成する角度は、第1の切れ刃11に対して垂直な平面において測定される、第3の逃げ面23が底面に関連して形成する角度より大きい。
【0110】
第2の切れ刃12に隣接する逃げ面は、対応する方法で形成されるか、または配置される。
【0111】
この逃げ面配置の利点は、外面削りを小さい金属加工品直径において実施することができ、外面削りにおいて、より大きい深さの切削が可能であることである。
【0112】
突起部30は、突起部30の上面内に形成された溝を備える。溝は、二等分線7に対して垂直な主延長部を有する。
【0113】
本発明は、開示する実施形態に限定されず、特許請求の範囲内で変更および改変されてよい。