(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】位相差および明視野イメージングを用いた無標識細胞セグメンテーション
(51)【国際特許分類】
G01N 21/41 20060101AFI20231011BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20231011BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G01N21/41 Z
G01N21/64 E
G01N33/48 M
(21)【出願番号】P 2021544134
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(86)【国際出願番号】 US2020015216
(87)【国際公開番号】W WO2020159873
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-10-19
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520431409
【氏名又は名称】ザルトリウス バイオアナリティカル インストゥルメンツ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,ティモシー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ホルツ,ネヴィーン
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10885631(US,B2)
【文献】国際公開第2020/049098(WO,A1)
【文献】Yuliang WANG et al.,Segmentation of the Clustered Cells with Optimized Boundary Detection in Negative Phase Contrast Images,PLOS ONE,2015年06月12日,Vol. 10,No. 6,0130178
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/74
G01N 15/00-G01N 15/14
G01N 33/48-G01N 33/98
G06T 7/00-G06T 7/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
プロセッサを介して、1つ以上の細胞を含む生物学的標本の焦点面を中心とする、前記生物学的標本の少なくとも1つの位相差画像を生成することと、
前記プロセッサを介して、前記少なくとも1つの位相差画像に基づいて、バイナリ画像の形式でコンフルエンスマスクを生成することと、
前記プロセッサを介して、前記焦点面の上方の合焦外れ距離における、前記生物学的標本内の1つ以上の細胞の第1の明視野画像、および前記焦点面の下方の前記合焦外れ距離における、前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞の第2の明視野画像を受信することと、
前記プロセッサを介して、前記第1の明視野画像および前記第2の明視野画像に基づいて、前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞の細胞画像を生成することと、
前記プロセッサを介して、前記細胞画像および前記少なくとも1つの位相差画像に基づいてシードマスクを生成することと、
前記プロセッサを介して、前記シードマスクおよび前記コンフルエンスマスクに基づいて、細胞別セグメンテーションマスクを示す、前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞の画像を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記プロセッサを介して、前記1つ以上の細胞を含む前記生物学的標本の前記焦点面を中心とする、前記生物学的標本の前記少なくとも1つの位相差画像を生成することは、
前記プロセッサを介して、明視野画像のZスイープを受信することと、
前記プロセッサを介して、明視野画像の前記Zスイープに基づいて前記少なくとも1つの位相差画像を生成することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合焦外れ距離は、20μm~60μmの範囲である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセッサを介して、少なくとも1つの蛍光画像を受信することと、
前記プロセッサを介して、前記細胞別セグメンテーションマスク内の前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞の蛍光強度を計算することと、をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセッサを介して、前記少なくとも1つの位相差画像に基づいて、前記バイナリ画像の形式で前記コンフルエンスマスクを生成することは、
前記プロセッサを介して、局所テクスチャフィルタおよび輝度フィルタのうちの1つ以上を適用して、前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞に属するピクセルの特定を可能にすることを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセッサを介して、前記第1の明視野画像および前記第2の明視野画像に基づいて前記細胞画像を生成することは、
前記プロセッサを介して、複数のピクセル単位の数学演算のうちの少なくとも1つまたは特徴検出を利用して、前記焦点面を中心とする第3の明視野画像に基づいて、前記第1の明視野画像および前記第2の明視野画像を強調することと、
前記プロセッサを介して、変換パラメータを計算することと、
前記プロセッサを介して、前記変換パラメータに基づいて、前記第1の明視野画像および前記第2の明視野画像を、前記少なくとも1つの位相差画像と位置合わせすることと、
前記プロセッサを介して、前記位置合わせされた第2の明視野画像の各ピクセルの輝度レベルを、前記位置合わせされた第1の明視野画像内の対応するピクセルの輝度レベルと組み合わせて、これにより、前記細胞画像を形成することと、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセッサを介して、前記第1の明視野画像および前記第2の明視野画像に基づいて、前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞の前記細胞画像を生成することは、
前記プロセッサを介して、1つ以上の閾値レベルおよび1つ以上のフィルタサイズを決定する1つ以上のユーザ定義パラメータを受信することと、
前記プロセッサを介して、前記1つ以上のユーザ定義パラメータに基づいて、1つ以上の平滑化フィルタを前記細胞画像に適用することと、をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセッサを介して、前記細胞画像および前記少なくとも1つの位相差画像に基づいて、前記シードマスクを生成することは、
前記プロセッサを介して、閾値ピクセル強度以上の各ピクセルが細胞シードピクセルとして特定されるように前記細胞画像を修正することを含み、これにより、バイナリピクセル化された前記シードマスクがもたらされる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記シードマスクは、各々が単一のセルに対応する複数のシードを有し、前記方法は、
前記プロセッサを介して、前記細胞別セグメンテーションマスクを示す、前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞の前記画像を生成する前に、前記プロセッサを介して、前記シードマスクと前記コンフルエンスマスクとを比較し、前記コンフルエンスマスクのエリアに配置されていない1つ以上の領域を前記シードマスクから除外し、前記シードマスクの前記複数のシードのうちの1つを含まない1つ以上の領域を前記コンフルエンスマスクから除外することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プロセッサを介して、前記シードマスクおよび前記コンフルエンスマスクに基づいて、前記細胞別セグメンテーションマスクを示す、前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞の前記画像を生成することは、
前記プロセッサを介して、シードのアクティブセットのうちの各々に対して領域成長反復を行うことと、
前記プロセッサを介して、所与のシードの成長領域が前記コンフルエンスマスクの1つ以上の境界に到達するか、または別のシードの成長領域とオーバーラップするまで、シードの前記アクティブセット内の各シードに対して前記領域成長反復を繰り返すことと、を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プロセッサを介して、ユーザ入力に応答して1つ以上のフィルタを適用して、1つ以上の細胞テクスチャメトリックおよび細胞形状記述子に基づいて物体を除去することと、
前記プロセッサを介して、前記1つ以上のフィルタの適用に応答して、前記細胞別セグメンテーションマスクを示す前記生物学的標本の前記画像を修正することと、をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞は、付着細胞および非付着細胞のうちの1つ以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記付着細胞は、ヒト肺癌細胞、線維癌細胞、乳癌細胞、卵巣癌細胞、またはヒト微小血管細胞株、のうちの1つ以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
光学顕微鏡を介して、前記生物学的標本の前記焦点面を決定することをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記プロセッサを介して、前記細胞別セグメンテーションマスクを示す、前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞の前記画像に基づいて、前記生物学的標本の細胞カウントを決定することをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
プロセッサによって実行されると、以下を含む行為のセットを実行させるプログラム命令がその上に記憶されている非一時的コンピュータ可読媒体であって、
前記プロセッサが、1つ以上の細胞を含む生物学的標本の少なくとも1つの位相差画像を、前記生物学的標本の焦点面を中心とする少なくとも1つの明視野画像に基づいて生成することと、
前記プロセッサが、前記少なくとも1つの位相差画像に基づいて、バイナリ画像の形式でコンフルエンスマスクを生成することと、
前記プロセッサが、前記焦点面の上方の合焦外れ距離における、前記生物学的標本内の1つ以上の細胞の第1の明視野画像、および前記焦点面の下方の前記合焦外れ距離における、前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞の第2の明視野画像を受信することと、
前記プロセッサが、前記第1の明視野画像および前記第2の明視野画像に基づいて、前記1つ以上の細胞の細胞画像を生成することと、
前記プロセッサが、前記細胞画像および前記少なくとも1つの位相差画像に基づいてシードマスクを生成することと、
前記プロセッサが、前記シードマスクおよび前記コンフルエンスマスクに基づいて、細胞別セグメンテーションマスクを示す、前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞の画像を生成することと、を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記プロセッサが、少なくとも1つの蛍光画像を受信することと、
前記プロセッサが、前記細胞別セグメンテーションマスク内の前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞の蛍光強度を計算することと、をさらに含む、請求項16に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記プロセッサが、前記細胞画像および前記少なくとも1つの位相差画像に基づいて、前記シードマスクを生成することは、
前記プロセッサが、閾値ピクセル強度以上の各ピクセルが細胞シードピクセルとして特定されるように前記細胞画像を修正することを含み、これにより、バイナリピクセル化された前記シードマスクがもたらされる、請求項16または17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記シードマスクは、各々が単一のセルに対応する複数のシードを有し、前記非一時的コンピュータ可読媒体は、
前記プロセッサが、前記細胞別セグメンテーションマスクを示す、前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞の前記画像を生成する前に、前記プロセッサが、前記シードマスクと前記コンフルエンスマスクとを比較し、前記コンフルエンスマスクのエリアに配置されていない1つ以上の領域を前記シードマスクから除外し、前記シードマスクの前記複数のシードのうちの1つを含まない1つ以上の領域を前記コンフルエンスマスクから除外することをさらに含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記プロセッサが、前記シードマスクおよび前記コンフルエンスマスクに基づいて、前記細胞別セグメンテーションマスクを示す、前記生物学的標本内の前記1つ以上の細胞の前記画像を生成することは、
前記プロセッサが、シードのアクティブセットのうちの各々に対して領域成長反復を行うことと、
前記プロセッサが、所与のシードの成長領域が前記コンフルエンスマスクの1つ以上の境界に到達するか、または別のシードの成長領域とオーバーラップするまで、シードの前記アクティブセット内の各シードに対して前記領域成長反復を繰り返すことと、を含む、
請求項16~19のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項21】
前記プロセッサが、ユーザ入力に応答して1つ以上のフィルタを適用して、1つ以上の細胞テクスチャメトリックおよび細胞形状記述子に基づいて物体を除去することと、
前記プロセッサが、前記1つ以上のフィルタの適用に応答して、前記細胞別セグメンテーションマスクを示す前記生物学的標本の前記画像を修正することと、をさらに含む、請求項16~20のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年2月1日に出願された米国特許出願第16/265910号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
生物学的標本内の細胞をセグメント化する現在の既知の方法は、蛍光標識されたタンパク質を必要とし、例えば、マーカー制御されたセグメンテーションアルゴリズムのために、ヒストンのような核局在化タンパク質を閾値処理する。プチコグラフィベースの方法、横方向せん断干渉法、およびデジタルホログラフィなどの代替の無標識手法が存在しているが、これらには複雑な画像取得セットアップや処理時間が長い複雑な画像形成アルゴリズムが必要である。別の無標識手法には、画像の大規模なデータセットに関する広範なトレーニングおよび遅い処理時間を必要とする深層学習アルゴリズム(例えば畳み込みニューラルネットワーク)が含まれる。他の方法では、ピンホールアパーチャのような特殊なハードウェアを必要とし、細胞別セグメンテーションを可能にしない、焦点外状態の明視野画像を使用する。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、例示的な方法が開示される。方法は、(a)プロセッサを介して、1つ以上の細胞を含む生物学的標本の焦点面を中心とする、生物学的標本の少なくとも1つの位相差画像を生成することと、(b)プロセッサを介して、少なくとも1つの位相差画像に基づいて、バイナリ画像の形式でコンフルエンスマスクを生成することと、(c)プロセッサを介して、焦点面の上方の合焦外れ距離における、生物学的標本内の1つ以上の細胞の第1の明視野画像、および焦点面の下方の合焦外れ距離における、生物学的標本内の1つ以上の細胞の第2の明視野画像を受信することと、(d)プロセッサを介して、第1の明視野画像および第2の明視野画像に基づいて、生物学的標本内の1つ以上の細胞の細胞画像を生成することと、(e)プロセッサを介して、細胞画像および少なくとも1つの位相差画像に基づいてシードマスクを生成することと、(f)プロセッサを介して、シードマスクおよびコンフルエンスマスクに基づいて、細胞別セグメンテーションマスクを示す生物学的標本内の1つ以上の細胞の画像を生成することと、を含む。
【0004】
別の態様では、例示的な非一時的コンピュータ可読媒体が開示される。コンピュータ可読媒体は、プロセッサによって実行されると、以下を含む行為のセットを実行させるプログラム命令がその上に記憶されており、(a)プロセッサが、1つ以上の細胞を含む生物学的標本の少なくとも1つの位相差画像を、生物学的標本の焦点面を中心とする少なくとも1つの明視野画像に基づいて生成することと、(b)プロセッサが、少なくとも1つの位相差画像に基づいて、バイナリ画像の形式でコンフルエンスマスクを生成することと、(c)プロセッサが、焦点面の上方の合焦外れ距離における、生物学的標本内の1つ以上の細胞の第1の明視野画像、および焦点面の下方の合焦外れ距離における、生物学的標本内の1つ以上の細胞の第2の明視野画像を受信することと、(d)プロセッサが、第1の明視野画像および第2の明視野画像に基づいて、1つ以上の細胞の細胞画像を生成することと、(e)プロセッサが、細胞画像および少なくとも1つの位相差画像に基づいてシードマスクを生成することと、(f)プロセッサが、シードマスクおよびコンフルエンスマスクに基づいて、細胞別セグメンテーションマスクを示す、生物学的標本内の1つ以上の細胞の画像を生成することと、を含む。
【0005】
論じた特徴、機能、および利点は、様々な例で独立して達成することができるか、または、さらに他の例で組み合わせてもよく、そのさらなる詳細は、以下の説明および図面を参照して見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】1つの例示的な実装による、システムの機能ブロック図である。
【
図2】例示的な実装による、コンピューティングデバイスおよびコンピュータネットワークのブロック図を示す。
【
図3】例示的な実装による、方法のフローチャートを示す。
【
図4】例示的な実装による、生物学的標本の画像を示す。
【
図5】例示的な実装による、別の生物学的標本の画像を示す。
【
図6A】カンプトテシン(CPT、細胞毒性)処理後のHT1080線維肉腫アポトーシスの24時間の時間経過後での細胞画像応答について、例示的な実装に従って生成された細胞別セグメンテーションマスクの実験結果を示す。
【
図6B】
図6Aの実装による、赤色(Nuclight Red、細胞健康指標、「NucRed」)および緑色の蛍光(Caspase 3/7、アポトーシス指標)に基づいて分類された細胞サブセットを示す。
【
図6C】
図6Aの実装による、CPT処理後に赤色集団の減少があったことを示し、これは生細胞の喪失を示し、赤色および緑色の蛍光の増加は、初期アポトーシスを示し、24時間後の緑色蛍光の増加は、後期アポトーシスを示す。
【
図6D】
図6Aの実装による、初期アポトーシス集団の濃度応答時間経過(赤色および緑色蛍光を示す全細胞のパーセンテージ)を示す。
【
図6E】シクロヘキサミド(CHX、細胞増殖抑制)処理後のHT1080線維肉腫アポトーシスの24時間の時間経過後での細胞画像応答について、例示的な実装に従って生成された細胞別セグメンテーションマスクの実験結果を示す。
【
図6F】
図6Eの実装による、赤色(Nuclight Red、細胞健康指標、「NucRed」)および緑色の蛍光(Caspase 3/7、アポトーシス指標)に基づいて分類された細胞サブセットを示す。
【
図6G】
図6Eの実装による、CHX処理後にアポトーシスはなかったが、細胞カウントの減少があったことを示す。
【
図6H】
図6Eの実装による、初期アポトーシス集団の濃度応答時間経過(赤色および緑色蛍光を示す全細胞のパーセンテージ)を示す。
【
図7A】例示的な実装に従って生成された、細胞別セグメンテーション分析を使用して、付着細胞の無標識細胞カウントのために位相差画像上に課された細胞別セグメンテーションマスクを示す。NucLight Red試薬で標識された様々な密度のA549細胞を、無標識細胞別分析と赤色核カウント分析との両方で分析して、経時的な無標識カウントを検証した。
【
図7B】背景に位相差画像がない、
図7Aによる細胞別セグメンテーションマスクを示す。
【
図7C】
図7Aの実装による、密度にわたる位相カウントおよびNucRedカウントデータの時間経過を示す。
【
図7D】
図7Aの実装による、48時間にわたるカウントデータの相関を示し、R2値1および傾き1を示す。
【0007】
図面は、例を図示することを目的としているが、本発明は、図面に示されている配置および手段に限定されないことが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
I.概要
本明細書に説明される方法の実施形態は、焦点外明視野画像を利用して生物学的標本の1つ以上の細胞の位相差画像をセグメント化するために使用することができ、これにより、速い処理時間で個々の細胞および亜集団の分析を可能にする。開示された例示的な方法はまた、細胞のリアルタイムの無標識(すなわち、蛍光なし)カウントを有益に可能にし、生細胞の生存率および機能性を損なう可能性がある蛍光マーカーの影響を回避する。開示された例示的な方法のさらなる利点は、HUVECのような平坦な細胞を含む、細胞形態の複雑さに関係ない、個々の細胞境界の検出である。
【0009】
II.例示的なアーキテクチャ
図1は、例えば、光学顕微鏡105、および1つ以上の細胞を有する生物学的標本110を含むかまたは伴う動作環境100を示すブロック図である。以下に説明される
図3~
図5の方法300は、この動作環境100内で実装することができる方法の実施形態を示している。
【0010】
図2は、直接または間接的に動作環境100とインターフェースするように構成された、例示的な実装による、コンピューティングデバイス200の例を示すブロック図である。コンピューティングデバイス200は、
図3~
図5に示され、以下に説明される方法の機能を行うために使用され得る。特に、コンピューティングデバイス200は、例えば、光学顕微鏡105によって得られた画像に部分的に基づく画像生成機能を含む、1つ以上の機能を行うように構成することができる。コンピューティングデバイス200は、プロセッサ(複数可)202、ならびに通信インターフェース204、データストレージ206、出力インターフェース208、およびディスプレイ210も有し、各々が通信バス212に接続されている。コンピューティングデバイス200はまた、コンピューティングデバイス200内、およびコンピューティングデバイス200と他のデバイス(例えば、図示せず)との間の通信を可能にするハードウェアを含み得る。ハードウェアは、例えば、送信器、受信器、およびアンテナを含み得る。
【0011】
通信インターフェース204は、1つ以上のネットワーク214または1つ以上のリモートコンピューティングデバイス216(例えば、タブレット216a、パーソナルコンピュータ216b、ラップトップコンピュータ216c、およびモバイルコンピューティングデバイス216dなど)への短距離通信および長距離通信の両方を可能にする無線インターフェースおよび/または1つ以上の有線インターフェースであり得る。このような無線インターフェースは、ブルートゥース、WiFi(例えば、電気電子技術者協会(IEEE)802.11プロトコル)、ロングタームエボリューション(LTE)、セルラー通信、近距離無線通信(NFC)、および/または他の無線通信プロトコルなどの1つ以上の無線通信プロトコルの下での通信を提供し得る。このような有線インターフェースには、イーサネットインターフェース、ユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェース、または、ワイヤ、ツイストペアワイヤ、同軸ケーブル、光リンク、光ファイバリンク、もしくは他の物理的接続を介して有線ネットワークに通信するための同様のインターフェースが含まれ得る。したがって、通信インターフェース204は、1つ以上のデバイスから入力データを受信するように構成され得、また、出力データを他のデバイスに送信するように構成され得る。
【0012】
通信インターフェース204はまた、例えば、キーボード、キーパッド、タッチスクリーン、タッチパッド、コンピュータマウス、トラックボール、および/または他の同様のデバイスなどのユーザ入力デバイスを含み得る。
【0013】
データストレージ206は、プロセッサ(複数可)202によって読み取られるかまたはアクセスすることができる1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体を含むか、またはその形式をとることができる。コンピュータ可読記憶媒体は、全体的または部分的にプロセッサ(複数可)202と統合することができる、光学、磁気、有機もしくは他のメモリまたはディスクストレージなどの揮発性および/または不揮発性ストレージ構成要素を含むことができる。データストレージ206は、非一時的なコンピュータ可読媒体と見なされる。いくつかの例では、データストレージ206は、単一の物理デデバイス(例えば、1つの光学、磁気、有機もしくは他のメモリまたはディスクストレージユニット)を使用して実装することができ、他の例では、データストレージ206は、2つ以上の物理デバイスを使用して実装することができる。
【0014】
したがって、データストレージ206は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体であり、実行可能命令218がその上に記憶されている。命令218は、コンピュータ実行可能コードを含む。命令218がプロセッサ(複数可)202によって実行されると、プロセッサ(複数可)202は機能を行わされる。そのような機能には、光学顕微鏡100から明視野画像を受信すること、ならびに、位相差画像、コンフルエンスマスク、細胞画像、シードマスク、細胞別セグメンテーションマスク、および蛍光画像を生成することが含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
プロセッサ(複数可)202は、汎用プロセッサまたは専用プロセッサ(例えば、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路など)であり得る。プロセッサ(複数可)202は、通信インターフェース204から入力を受信し、入力を処理して、出力を生成することができ、出力は、データストレージ206に記憶され、ディスプレイ210に出力される。プロセッサ(複数可)202は、データストレージ206に記憶されており、本明細書に説明されるコンピューティングデバイス200の機能を提供するために実行可能である実行可能命令218(例えば、コンピュータ可読プログラム命令)を実行するように構成することができる。
【0016】
出力インターフェース208は、情報をディスプレイ210または他の構成要素にも出力する。したがって、出力インターフェース208は、通信インターフェース204と同様であり得、無線インターフェース(例えば、送信器)または有線インターフェースでもあり得る。出力インターフェース208は、例えば、1つ以上の制御可能なデバイスにコマンドを送信することができる。
【0017】
図2に示されるコンピューティングデバイス200はまた、例えば、光学顕微鏡105と通信する、動作環境100内のローカルコンピューティングデバイス200aを表し得る。このローカルコンピューティングデバイス200aは、以下に説明される方法300のステップのうちの1つ以上のステップを行うことができ、ユーザから入力を受信することができ、ならびに/または画像データおよびユーザ入力をコンピューティングデバイス200に送信して、方法300のステップのすべてまたは一部を行うことができる。さらに、1つの任意選択の例示的な実施形態では、IncuCyte(登録商標)プラットフォームが、方法300を行うために利用されてもよく、また、コンピューティングデバイス200および光学顕微鏡105の組み合わされた機能を含む。
【0018】
図3は、例示的な実装による、生物学的標本110の1つ以上の細胞の細胞別セグメンテーションを達成するための例示的な方法300のフローチャートを示している。
図3に示される方法300は、例えば、
図2のコンピューティングデバイス200で使用され得る方法の例を提示している。さらに、デバイスまたはシステムを使用して、または構成して、
図3に提示されている論理機能を行うことができる。場合によっては、デバイスおよび/またはシステムの構成要素は、当該構成要素がそのような実行を可能にするようにハードウェアおよび/またはソフトウェアで構成および構造化されるように、機能を行うように構成され得る。デバイスおよび/またはシステムの構成要素が、特定のやり方で操作されるときなど、機能を行うように適合されるか、行うことが可能であるか、または行うのに適するように配置され得る。方法300は、ブロック305~330のうちの1つ以上のブロックによって示されるように、1つ以上の動作、機能、またはアクションを含み得る。ブロックは連続した順序で示されているが、これらのブロックのうちのいくつかは並列に行われても、および/または本明細書に説明されているものとは異なる順序で行われてもよい。また、様々なブロックは、より少ないブロックに組み合わされ、追加のブロックに分割され、および/または所望の実装に基づいて除去されてもよい。
【0019】
本明細書に開示されるこのおよび他のプロセスおよび方法について、フローチャートは、本例の1つの可能な実装の機能および動作を示すことを理解されたい。これに関して、各ブロックは、モジュール、セグメント、またはプログラムコードの一部を表すことができ、プロセス内の特定の論理機能またはステップを実装するためにプロセッサによって実行可能な1つ以上の命令を含む。プログラムコードは、例えば、ディスクドライブもしくはハードドライブを含むストレージデバイスなどの、任意のタイプのコンピュータ可読媒体またはデータストレージに記憶することができる。さらに、プログラムコードは、コンピュータ可読記憶媒体上、または他の非一時的媒体もしくは製造品上で、機械可読形式に符号化することができる。コンピュータ可読媒体は、例えば、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュ、およびランダムアクセスメモリ(RAM)など、短期間データを記憶するコンピュータ可読媒体などの非一時的コンピュータ可読媒体またはメモリを含み得る。コンピュータ可読媒体はまた、例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、光学ディスクもしくは磁気ディスク、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)のような二次的または永続的な長期ストレージなどの非一時的媒体も含み得る。コンピュータ可読媒体はまた、任意の他の揮発性または不揮発性記憶システムでもあり得る。コンピュータ可読媒体は、例えば、有形のコンピュータ可読記憶媒体と見なされ得る。
【0020】
さらに、
図3、ならびに、本明細書に開示される他のプロセスおよび方法における各ブロックは、プロセス内の特定の論理機能を行うように配線された回路を表し得る。代替の実装は、本開示の例の範囲内に含まれ、機能は、当業者には理解されるように、関与する機能に応じて、実質的に同時または逆の順序を含めて、示されたまたは説明されたものから順不同で実行され得る。
【0021】
III.例示的な方法
本明細書で使用される場合、「明視野画像」は、光波が生物学的サンプルの透明部分を通過するように下から照明された生物学的サンプルに基づいて顕微鏡を介して得られた画像を指す。次に、様々な輝度レベルが明視野画像にキャプチャされる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「位相差画像」は、下から照明された生物学的サンプルに基づいて、直接または間接的に顕微鏡を介して得られた画像を指し、生物学的サンプルの異なる部分の屈折率の違いによる生物学的サンプルを通過する光の位相シフトをキャプチャする。例えば、光波が生物学的標本を通って進むとき、光波の振幅(すなわち、輝度)および位相は、生物学的標本の特性に応じるように変化する。結果として、位相差画像は、高屈折率を有するより密度の高い領域が結果の画像においてより暗くレンダリングされ、より低い屈折率を有するより密度の低い領域が結果の画像においてより明るくレンダリングされるように変化するピクセルに関連付けられた輝度強度値を有する。位相差画像は、明視野画像のZスタックからを含む、いくつかの手法を介して生成することができる。
【0023】
本明細書で使用される場合、明視野画像の「Zスタック」または「Zスイープ」は、異なる焦点距離で撮影された複数の画像を組み合わせて、個々のソース明視野画像のいずれかよりもより深い被写界深度(すなわち、焦点面の厚さ)を有する合成画像を提供するデジタル画像処理方法を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「焦点面」は、生物学的標本が最適な焦点で観察可能である、光学顕微鏡のレンズの軸に垂直に配置された平面を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「合焦外れ距離」は、生物学的標本が焦点外で観察可能であるように、焦点面の上方または下方の距離を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「コンフルエンスマスク」は、ピクセルが生物学的標本中の1つ以上の細胞に属するものとして特定され、それにより、1つ以上の細胞に対応するピクセルに1の値が割り当てられ、背景に対応する残りのピクセルに0の値が割り当てられる(またはその逆も同様)バイナリ画像を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「細胞画像」は、背景に対する細胞のコントラストを強調するために、異なる平面で得られた少なくとも2つの明視野画像に基づいて生成された画像を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「シードマスク」は、設定されたピクセル強度閾値に基づいてバイナリピクセル化が生成された画像を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「細胞別セグメンテーションマスク」は、生物学的標本110の細胞が、各々、明確な関心領域として表示されるように、バイナリピクセル化された(すなわち、各ピクセルは、プロセッサによって0または1の値が割り当てられている)画像を指す。細胞別セグメンテーションマスクは、有利には、そこに表示される細胞の無標識カウントを可能にし、個々の付着細胞の全エリアの決定を可能にし、細胞テクスチャメトリックおよび細胞形状記述子に基づく分析を可能にし、および/または、生物学的標本110において各細胞が他のいくつかの隣接する細胞に接触し得る、シート状に形成される傾向がある付着細胞を含む、個々の細胞の境界の検出を可能にし得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「領域成長反復」は、最初に特定された1つ以上の個々のピクセルまたはピクセルのセット(すなわち、「シード」)を取り、隣接するピクセルをセットに追加することにより、そのシードを反復的に拡張することによって関心領域(「ROI」)が画定される反復画像セグメンテーション方法における単一のステップを指す。プロセッサは、類似性メトリックを利用して、成長領域に追加されるピクセルを決定し、領域の成長がいつ完了するのかを決定するためにプロセッサに停止基準が規定される。
【0031】
ここで
図3~
図5を参照すると、方法300が、
図1~
図2のコンピューティングデバイスを使用して示されている。方法300は、ブロック305において、プロセッサ202が、1つ以上の細胞を含む生物学的標本110の焦点面を中心とする、生物学的標本110の少なくとも1つの位相差画像400を生成することを含む。次に、ブロック310において、プロセッサ202は、少なくとも1つの位相差画像400に基づいて、バイナリ画像の形式でコンフルエンスマスク410を生成する。次に、ブロック315において、プロセッサ202は、焦点面の上方の合焦外れ距離における、生物学的標本110内の1つ以上の細胞の第1の明視野画像415と、焦点面の下方の合焦外れ距離における、生物学的標本110内の1つ以上の細胞の第2の明視野画像420と、を受信する。次に、プロセッサ202は、ブロック320において、第1の明視野画像415および第2の明視野画像420に基づいて、生物学的標本内の1つ以上の細胞の細胞画像425を生成する。ブロック325において、プロセッサ202は、細胞画像425および少なくとも1つの位相差画像400に基づいてシードマスク430を生成する。そして、プロセッサ202は、ブロック330において、シードマスク430およびコンフルエンスマスク410に基づいて、細胞別セグメンテーションマスク435を示す、生物学的標本内の1つ以上の細胞の画像を生成する。
【0032】
図3に示されるように、ブロック305において、プロセッサ202が、1つ以上の細胞を含む生物学的標本110の焦点面を中心とする、生物学的標本110の少なくとも1つの位相差画像400を生成することは、プロセッサ202が、明視野画像のZスイープを受信することと、次いで、明視野画像のZスイープに基づいて少なくとも1つの位相差画像400を生成することと、の両方を含む。様々な実施形態において、生物学的標本110は、実験セットを表すウェルプレート内の複数のウェル内に分散され得る。
【0033】
1つの任意選択の実施形態では、方法100は、プロセッサ202が、少なくとも1つの蛍光画像を受信することと、次いで、細胞別セグメンテーションマスク435内の生物学的標本110内の1つ以上の細胞の蛍光強度を計算することと、の両方を含む。この実施形態では、蛍光強度は、関心タンパク質のレベル、例えば、CD20のような細胞表面マーカーを標識する抗体、または細胞死に対応する蛍光を誘導するアネキシンV試薬に対応する。さらに、個々の細胞境界内の蛍光強度を決定すると、亜集団の特定が増加し、亜集団固有のメトリック(例えば、アネキシンVの存在によって定義されるすべての末期細胞の平均エリアおよび偏心度)の計算が可能になる。
【0034】
別の実施形態では、ブロック310において、プロセッサ202が、少なくとも1つの位相差画像400に基づいて、バイナリ画像の形式でコンフルエンスマスク410を生成することは、プロセッサ202が、局所テクスチャフィルタまたは輝度フィルタのうちの1つ以上を適用して、生物学的標本110内の1つ以上細胞に属するピクセルの特定を可能にすることを含む。例示的なフィルタには、局所範囲フィルタ、局所エントロピーフィルタ、局所標準偏差フィルタ、局所輝度フィルタ、およびガボールウェーブレットフィルタが含まれ得るが、これらに限定されない。
図4および
図5に、例示的なコンフルエンスマスク410が示されている。
【0035】
別の任意選択の実施形態では、光学顕微鏡105が、生物学的標本110の焦点面を決定する。さらに、様々な実施形態では、合焦外れ距離は、20μm~60μmの範囲であり得る。最適な合焦外れ距離は、対物レンズの倍率および作動距離を含む、使用する対物レンズの光学特性に基づいて決定される。
【0036】
図5に示されるさらなる実施形態では、ブロック320において、プロセッサ202が、第1の明視野画像415および第2の明視野画像420に基づいて細胞画像425を生成することは、プロセッサ202が、複数のピクセル単位の数学演算のうちの少なくとも1つまたは特徴検出を利用して、焦点面を中心とする第3の明視野画像405に基づいて、第1の明視野画像415および第2の明視野画像420を強調することを含む。ピクセル単位の数学演算の一例には、加算、減算、乗算、除算、またはこれらの演算の任意の組み合わせが含まれる。次に、プロセッサ202は、変換パラメータを計算して、第1の明視野画像415および第2の明視野画像420を少なくとも1つの位相差画像400と位置合わせする。次に、プロセッサ202は、位置合わせされた第2の明視野画像420の各ピクセルの輝度レベルを、位置合わせされた第1の明視野画像415内の対応するピクセルの輝度レベルと組み合わせて、これにより、細胞画像425を形成する。各ピクセルの輝度レベルの組み合わせは、上記の数学演算のいずれかを介して達成できる。細胞画像425を生成する際の技術的効果は、明視野アーチファクト(例えば、影)を除去し、画像コントラストを強調して、シードマスク430の細胞検出を増加させることである。
【0037】
別の任意選択の実施形態では、ブロック320において、プロセッサ202が、第1の明視野画像415および第2の明視野画像420に基づいて、生物学的標本110内の1つ以上の細胞の細胞画像425を生成することは、プロセッサ202が、1つ以上の閾値値レベルおよび1つ以上のフィルタサイズを決定する1つ以上のユーザ定義パラメータを受信することを含む。次に、プロセッサ202は、1つ以上のユーザ定義パラメータに基づいて、1つ以上の平滑化フィルタを細胞画像425に適用する。平滑化フィルタの技術的効果は、シードマスク430における細胞検出の精度をさらに高め、細胞ごとに1つのシードが割り当てられる可能性を高めることである。平滑化フィルタのパラメータは、様々な付着細胞の形態、例えば、平らな形状と丸い形状、突出した細胞、クラスター細胞などに適合するように選択される。
【0038】
さらなる任意選択の実施形態では、ブロック325において、プロセッサ202が、細胞画像425および少なくとも1つの位相差画像400に基づいてシードマスク430を生成することは、プロセッサ202が、閾値ピクセル強度以上の各ピクセルが細胞シードピクセルとして特定されるように、細胞画像425を修正することを含み、これにより、バイナリピクセル化されたシードマスク430がもたらされる。シードマスクのバイナリピクセル化の技術的効果は、コンフルエンスマスクの対応するバイナリピクセル化との比較を可能にすることである。シードマスクのバイナリピクセル化はまた、以下で論じられる領域成長反復の開始点としても利用される。例えば、さらに別の任意選択の実施形態では、シードマスク430は、各々が生物学的標本110内の単一の細胞に対応する複数のシードを有し得る。この実施形態では、方法300は、プロセッサ202が、細胞別セグメンテーションマスク435を示す、生物学的標本内の1つ以上の細胞の画像を生成する前に、プロセッサ202が、シードマスク430とコンフルエンスマスク410とを比較し、コンフルエンスマスク410のエリアに配置されていない1つ以上の領域をシードマスク430から除外し、シードマスク430の複数のシードのうちの1つを含まない1つ以上の領域をコンフルエンスマスク410から除外することをさらに含む。これらの除外された領域の技術的効果は、シードを生成する小さな明るい物体(例えば、細胞破片)を除き、以下で説明される領域成長反復で利用されるシードの特定を増加させることである。
【0039】
さらなる任意選択の実施形態では、ブロック330において、プロセッサ202が、シードマスク430およびコンフルエンスマスク410に基づいて細胞別セグメンテーションマスク435を示す、生物学的標本110内の1つ以上の細胞の画像を生成することは、プロセッサ202が、シードのアクティブセットのうちの各々に対して領域成長反復を行うことを含む。次に、プロセッサ202は、所与のシードの成長領域がコンフルエンスマスク410の1つ以上の縁に到達するか、または別のシードの成長領域とオーバーラップするまで、シードのアクティブセット内の各シードに対して領域成長反復を繰り返す。シードのアクティブセットは、細胞画像内の対応するピクセルの値の特性に基づいて、反復ごとにプロセッサ202によって選択される。さらに、少なくとも1つの位相差画像400、ならびに明視野画像415、240、405を使用することの技術的効果は、シードが、細胞画像425内の輝点と、位相差画像400内の高テクスチャのエリアとの両方に対応すること(すなわち、コンフルエンスマスク410と、以下でより詳細に説明されるシードマスク430とのオーバーラップ)である。コンフルエンスマスク410、少なくとも1つの位相差画像、および明視野画像415、420、405を使用することからもたらされる別の技術的効果は、一例として、細胞表面タンパク質発現のような特徴の定量化を有利に可能にする、細胞別セグメンテーションマスク435における個々の細胞位置および細胞境界の特定における精度の向上である。
【0040】
さらに別の任意選択の実施形態では、方法300は、プロセッサ202が、ユーザ入力に応答して1つ以上のフィルタを適用して、1つ以上の細胞テクスチャメトリックおよび細胞形状記述子に基づいて物体を除去することを含み得る。次に、プロセッサ202は、1つ以上のフィルタの適用に応答して、細胞別セグメンテーションマスクを示す生物学的標本の画像を修正する。例示的な細胞テクスチャメトリックおよび細胞形状記述子には、細胞のサイズ、周囲長、偏心度、蛍光強度、アスペクト比、固体性、フェレット直径、位相差エントロピー、および位相差標準偏差が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
さらなる任意選択の実施形態では、方法300は、プロセッサ202が、細胞別セグメンテーションマスク435を示す生物学的標本110内の1つ以上の細胞の画像に基づいて、生物学的標本110の細胞カウントを決定することを含み得る。前述の細胞カウントは、例えば、
図4に示されている、細胞別セグメンテーションマスク435に示されている画定された細胞境界の結果として有利に可能になる。1つの任意選択の実施形態では、生物学的標本110内の1つ以上の細胞は、付着細胞および非付着細胞のうちの1つ以上である。さらなる実施形態では、付着細胞は、ヒト肺癌細胞、線維癌細胞、乳癌細胞、卵巣癌細胞を含む様々な癌細胞株、またはヒト臍静脈細胞を含むヒト微小血管細胞株のうちの1つ以上を含み得る。任意選択の実施形態では、プロセッサ202は、PMBCおよびジャーカット細胞のようなヒト免疫細胞を含む非付着細胞に、付着細胞に適用されるものとは異なる平滑化フィルタが適用されて細胞境界の近似が向上するように領域成長反復を行う。
【0042】
上述のように、非一時的コンピュータ可読媒体には、プロセッサ202によって実行されると、前述の方法の機能のいずれかを実行するように利用され得るプログラム命令がその上に記憶されている。
【0043】
一例として、非一時的コンピュータ可読媒体には、プロセッサ202によって実行されると、プロセッサ202が、生物学的標本110の焦点面を中心とする少なくとも1つの明視野画像405に基づいて、1つ以上の細胞を含む生物学的標本110の少なくとも1つの位相差画像400を生成することを含む、行為のセットを実行させるプログラム命令がその上に記憶されている。次に、プロセッサ202は、少なくとも1つの位相差画像400に基づいて、バイナリ画像の形式でコンフルエンスマスク410を生成する。次に、プロセッサ202は、焦点面の上方の合焦外れ距離における、生物学的標本110内の1つ以上の細胞の第1の明視野画像415と、焦点面の下方の合焦外れ距離における、生物学的標本110内の1つ以上の細胞の第2の明視野画像420と、を受信する。次に、プロセッサ202は、第1の明視野画像415および第2の明視野画像420に基づいて、1つ以上の細胞の細胞画像425を生成する。プロセッサ202はまた、細胞画像425および少なくとも1つの位相差画像400に基づいてシードマスク430を生成する。そして、プロセッサ202は、シードマスク430およびコンフルエンスマスク410に基づいて、細胞別セグメンテーションマスク435を示す、生物学的標本100内の1つ以上の細胞の画像を生成する。
【0044】
1つの任意選択の実施形態では、非一時的コンピュータ可読媒体は、プロセッサ202が、少なくとも1つの蛍光画像を受信することと、プロセッサ202が、細胞別セグメンテーションマスク内の生物学的標本内の1つ以上の細胞の蛍光強度を計算することと、をさらに含む。
【0045】
別の任意選択の実施形態では、非一時的コンピュータ可読媒体は、プロセッサ202が、細胞画像425および少なくとも1つの位相差画像400に基づいてシードマスク430を生成することをさらに含む。そして、非一時的コンピュータ可読媒体は、プロセッサ202が、閾値ピクセル強度以上の各ピクセルが細胞シードピクセルとして特定されるように細胞画像410を修正することをさらに含み、これにより、バイナリピクセル化されたシードマスク430がもたらされる。
【0046】
さらなる任意選択の実施形態では、シードマスク430は、各々が単一の細胞に対応する複数のシードを有する。そして、非一時的コンピュータ可読媒体は、プロセッサ202が、細胞別セグメンテーションマスク435を示す、生物学的標本110内の1つ以上の細胞の画像を生成する前に、プロセッサ202が、シードマスク430とコンフルエンスマスク410とを比較し、コンフルエンスマスク410のエリアに配置されていない1つ以上の領域をシードマスク430から除外し、シードマスク430の複数のシードのうちの1つを含まない1つ以上の領域をコンフルエンスマスク410から除外することをさらに含む。
【0047】
さらに別の任意選択の実施形態では、シードマスク430およびコンフルエンスマスク410に基づいて細胞別セグメンテーションマスク435を示す、生物学的標本110内の1つ以上の細胞の画像をプロセッサ202に生成させるプログラム命令は、プロセッサ202が、シードのアクティブセットのうちの各々に対して領域成長反復を行うことを含む。次に、非一時的コンピュータ可読媒体は、プロセッサ202が、所与のシードの成長領域がコンフルエンスマスク410の1つ以上の境界に到達するか、または別のシードの成長領域とオーバーラップするまで、シードのアクティブセット内の各シードに対して領域成長反復を繰り返すことをさらに含む。
【0048】
非一時的コンピュータ可読媒体は、プロセッサ202が、ユーザ入力に応答して1つ以上のフィルタを適用して、1つ以上の細胞テクスチャメトリックおよび細胞形状記述子に基づいて物体を除去することをさらに含む。そして、プロセッサ202は、1つ以上のフィルタの適用に応答して、細胞別セグメンテーションマスク435を示す生物学的標本110の画像を修正する。
【0049】
IV.実験結果
例示的な実装は、細胞の健康状態を亜集団で経時的に追跡することを可能にする。例えば、
図6Aは、カンプトテシン(CPT、細胞毒性)処理後のHT1080線維肉腫アポトーシスの24時間の時間経過後での位相差画像応答について、例示的な実装に従って生成された細胞別セグメンテーションマスクの実験結果を示している。細胞の健康状態は、IncuCyte(登録商標)のNucLight Red(核生存率マーカー)および非摂動のIncuCyte(登録商標)のCaspase 3/7緑色試薬(アポトーシス指標)の多重読み出しで決定された。
図6Bは、IncuCyte(登録商標)のCell-by-Cell Analysis Softwareツールを使用して、
図6Aの実装に従って、赤色および緑色の蛍光に基づいて分類された細胞サブセットを示している。
図6Cは、
図6Aの実装による、CPT処理後に赤色集団が減少したことを示し、これは生細胞の喪失を示し、赤色および緑色の蛍光の増加は初期アポトーシスを示し、24時間後の緑色蛍光の増加は、後期アポトーシスを示す。
図6Dは、
図6Aの実装による、初期アポトーシス集団の濃度応答時間経過(赤色および緑色の蛍光を示す全細胞のパーセンテージ)を示している。示されている値は、3つのウェルの平均±SEMである。
【0050】
別の例において、
図6Eは、シクロヘキサミド(CHX、細胞増殖抑制)処理後のHT1080線維肉腫アポトーシスの24時間の時間経過後での細胞画像応答について、例示的な実装に従って生成された細胞別セグメンテーションマスクの実験結果を示している。細胞の健康状態は、IncuCyte(登録商標)のNucLight Red(核生存率マーカー)および非摂動のIncuCyte(登録商標)のCaspase 3/7緑色試薬(アポトーシス指標)の多重読み出しで決定された。
図6Fは、IncuCyte(登録商標)のCell-by-Cell Analysis Softwareツールを使用して、
図6Eの実装に従って、赤色および緑色の蛍光に基づいて分類された細胞サブセットを示している。
図6Gは、
図6Eの実装による、CHX処理後にアポトーシスはなかったが、細胞カウントが減少(データは図示しない)したことを示している。
図6Hは、
図6Eの実装による、初期アポトーシス集団の濃度応答時間経過(赤色および緑色の蛍光を示す全細胞のパーセンテージ)を示している。示されている値は、3つのウェルの平均±SEMである。
【0051】
図7Aは、IncuCyte(登録商標)ソフトウェアを介して、例示的な実装に従って生成された、細胞別セグメンテーション分析を使用して、付着細胞の無標識細胞カウントのために位相差画像上に課された細胞別セグメンテーションマスクを示している。NucLight Red試薬で標識された様々な密度のA549細胞を、無標識細胞別分析と赤色核カウント分析との両方で分析して、経時的な無標識カウントを検証した。
図7Bは、背景に位相差画像がない、
図7Aによる細胞別セグメンテーションマスクを示している。
図7Cは、
図7Aの実装による、密度にわたる位相カウントおよび赤色カウントデータの時間経過を示している。
図7Dは、
図7Aの実装による、48時間にわたるカウントデータの相関を示し、R2値1および傾き1を示している。これは、様々な細胞型で繰り返されている。示されている値は、4つのウェルの平均±SEMである。
【0052】
異なる有利な配置の説明は、例示および説明の目的で提示されており、網羅的であること、または開示された形態の例に限定されることを意図していない。当業者には多くの修正および変更が明らかであろう。さらに、異なる有利な例は、他の有利な例と比較して、異なる利点を説明し得る。選択された1つ以上の例は、例の原理、実際の適用を最もよく説明し、当業者が企図される特定の使用に適した様々な修正を伴う様々な例についての開示を理解できるようにするために選択され説明されている。