IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立産機システムの特許一覧

特許7364690インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニットおよび液位検出装置
<>
  • 特許-インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニットおよび液位検出装置 図1
  • 特許-インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニットおよび液位検出装置 図2
  • 特許-インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニットおよび液位検出装置 図3
  • 特許-インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニットおよび液位検出装置 図4
  • 特許-インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニットおよび液位検出装置 図5
  • 特許-インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニットおよび液位検出装置 図6
  • 特許-インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニットおよび液位検出装置 図7
  • 特許-インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニットおよび液位検出装置 図8
  • 特許-インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニットおよび液位検出装置 図9
  • 特許-インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニットおよび液位検出装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニットおよび液位検出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20231011BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20231011BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B41J2/165 401
B41J2/18
B41J2/175 307
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021562451
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2020026424
(87)【国際公開番号】W WO2021111669
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2019219478
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】有馬 崇博
(72)【発明者】
【氏名】溝口 翔
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 明
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-241492(JP,A)
【文献】特開2014-028466(JP,A)
【文献】特開昭63-122546(JP,A)
【文献】特開2011-020353(JP,A)
【文献】特開2019-171651(JP,A)
【文献】米国特許第05183066(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字を行う印字ヘッドと、インク容器と、前記インク容器内のインクを前記印字ヘッドに供給するとともに印字に使用しない前記インクを前記インク容器に回収するための経路と、前記印字ヘッドに前記インクを供給する制御と前記印字ヘッドの印字動作を制御する制御部とを有するインクジェット記録装置であって、
前記印字ヘッドを収容可能な空間を有し下部に液出口部を有する洗浄槽と、前記洗浄槽内に収容された前記印字ヘッドに向けて洗浄液を噴出し洗浄する洗浄ノズルと、前記洗浄槽の前記液出口部から流出する洗浄液を回収する回収容器とを備えた洗浄ユニットと、
前記回収容器内の前記洗浄液の液位を検出する第1液位検出装置とを設け、
前記第1液位検出装置は、前記回収容器内に、前記液位に対応して移動する第1フロートと、前記第1フロートを保持する第1ホルダーとを備えており、前記回収容器の外側に、前記第1フロートが近接したときに液位検出信号を出力する第1センサを設置した構成とし、
前記制御部は、前記液位検出信号から前記回収容器の装着状況を判断するインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記第1ホルダーは、前記回収容器の液位の中間位置にストッパを備え、前記第1フロートを前記ストッパの上側に配置して中間位置以上の液位となった場合に前記第1フロートが上下動するように構成し、
前記第1センサは、前記第1フロートが前記中間位置に存在する場合に前記液位検出信号を出力するように設置していることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記第1センサは、少なくとも、前記第1フロートが最小液位を検知する位置または最大液位を検知する位置に近接する場合に前記液位検出信号を出力するように設置していることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記インク容器内の前記インクの液位を検出する第2液位検出装置を設け、
前記第2液位検出装置は、前記インク容器内に、前記液位に対応して移動する第2フロートと、前記第2フロートを保持する第2ホルダーを備えており、前記インク容器の外側に、前記第2フロートが近接したときに前記液位検出信号を出力する第2センサを設置した構成とし、
前記制御部は、前記第2液位検出装置の前記液位検出信号を用いて前記インク容器内のインク量を所定範囲内に制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項4記載のインクジェット記録装置において、
前記第2センサは、少なくとも、前記第2フロートが最小液位を検知する位置または最大液位を検知する位置に近接する場合に前記液位検出信号を出力するように設置していることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記インク容器または前記洗浄ユニットに供給する溶剤を収容する溶剤容器を設け、
前記溶剤容器内の前記溶剤の液位を検出する第3液位検出装置を設け、
前記第3液位検出装置は、前記溶剤容器内に、前記液位に対応して移動する第3フロートと、前記第3フロートを保持する第3ホルダーを備えており、前記インク容器の外側に、前記第3フロートが近接したときに前記液位検出信号を出力する第3センサを設置した構成とし、
前記制御部は、前記第3液位検出装置の前記液位検出信号を用いて前記溶剤容器内の溶剤量を所定範囲内に制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項6記載のインクジェット記録装置において、
前記第3センサは、少なくとも、前記第3フロートが最小液位を検知する位置または最大液位を検知する位置に近接する場合に前記液位検出信号を出力するように設置していることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記第1フロートは磁石を内蔵しており、前記第1センサは、前記第1フロートが近接したときに前記磁石により誘起される電流により前記液位検出信号を出力することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部と接続される操作表示部を設け、
前記制御部は、前記回収容器が前記洗浄ユニットに取付けられていない場合には、前記操作表示部に警告情報を表示することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項10】
インクにより印字を行う印字ヘッドを有するインクジェット記録装置の洗浄ユニットであって、
前記洗浄ユニットは、前記印字ヘッドを収容可能な空間を有し液出口部を有する洗浄槽と、前記洗浄槽内に収容された前記印字ヘッドに向けて洗浄液を噴出し洗浄する洗浄ノズルと、前記洗浄槽の前記液出口部から流出する洗浄後の前記洗浄液を回収する回収容器と、前記回収容器内の前記洗浄液の液位検出信号を出力する液位検出装置とを備えており、
前記液位検出装置は、前記回収容器内に、前記液位に対応して移動するフロートと、前記フロートを保持するホルダーとを備えており、前記回収容器の外側に、前記フロートが近接したときに前記液位検出信号を出力するセンサを設置した構成とし、
前記液位検出信号を用いて前記液位検出信号から前記回収容器の装着状況を判断することを特徴とするインクジェット記録装置の洗浄ユニット。
【請求項11】
請求項10記載のインクジェット記録装置の洗浄ユニットにおいて、
前記ホルダーは、前記回収容器の液位の中間位置にストッパを備え、前記フロートを前記ストッパの上側に配置させて前記中間位置以上の液位となった場合に前記フロートが上下動するように構成し、
前記センサは、前記フロートが前記中間位置に存在する場合に前記液位検出信号を出力することを特徴とするインクジェット記録装置の洗浄ユニット。
【請求項12】
請求項10記載のインクジェット記録装置の洗浄ユニットにおいて、
前記センサは、少なくとも、前記フロートが最小液位を検知する位置または最大液位を検知する位置に近接する場合に前記液位検出信号を出力するように設置していることを特徴とするインクジェット記録装置の洗浄ユニット。
【請求項13】
請求項10記載のインクジェット記録装置の洗浄ユニットにおいて、
前記フロートは磁石を内蔵しており、前記センサは、前記フロートが近接したときに前記磁石により誘起される電流により前記液位検出信号を出力することを特徴とするインクジェット記録装置の洗浄ユニットの洗浄ユニット。
【請求項14】
請求項10記載のインクジェット記録装置の洗浄ユニットにおいて、
前記液位検出信号を入力する制御部と、前記制御部と接続される操作表示部とを設け、
前記制御部は、前記回収容器が前記洗浄ユニットに取付けられていない場合には、前記操作表示部に警告情報を表示することを特徴とするインクジェット記録装置の洗浄ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニットおよび液位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野に関する技術として、WO2015/114814号公報(特許文献1)に記載の技術が知られている。
特許文献1(WO2015/114814公報)には、インクを補充する補助インク容器内に、液位を検出する液位検出装置を設け、この液位検出装置により検出された液位検出信号を用いて、補助インク容器内のインクが所定液位を下回った場合に、インクカートリッジを交換して、補助インク容器内にインクを補充するように構成されたインクジェット記録装置が開示されている。なお、インクを収納する補助インク容器は、印字ヘッドに供給するインクを収納するインク容器(主インク容器)に必要な量のインクを補充するために用意されている。この特許文献1では、二種類の液位検出装置が開示されている。すなわち、一つ目の液位検出装置は、容器内に複数本(具体的には4本)の電極棒を設置し、各電極棒に電線を接続して、電線により液位検出信号を容器外部に取出す構成になっている(特許文献1の段落0034~段落0038の記載参照)。
【0003】
もう一つの液位検出装置は、容器内にインクの容量(液位)が標準レベルの量に該当する位置にストッパを有し、標準レベルになったことを検出するフロートAと、インクがなくなりそうになったことを検出するフロートBとを備え、これらの各フロートを用いて検出された液位検出信号は電線により容器の外部に出力されるような構成になっている(段落0072~段落0075の記載参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2015/114814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、いずれの液位検出装置においても、液位検出信号を容器外部に取出す(出力する)ために、容器内に配置した検出部が検出した液位検出信号を電線により容器の外部に出力するような構成になっている。そのため、もし、容器を取外す場合には、まず電線を取外してから容器の取外しを行う必要があり、容器の取外し作業は煩雑となる。また、容器を取付ける際には、容器内に電極棒やフロート等を入れた状態で容器を所定位置に取付ける必要があるため、更に作業は煩雑となる。また、これらの作業において電気的に安定した接続(短絡防止、電気的接触の良好な状態の維持)にするための問題も出てくる。
【0006】
ところで、インクジェット記録装置では、印字を行うために印字ヘッドは必要不可欠である。この印字ヘッドは、非常に高速なインクの飛翔を伴うために使用中においてインクの飛散等により汚れが発生することは避けがたく、時々印字ヘッドを洗浄する洗浄作業が必要になる。
【0007】
しかし、洗浄作業を手作業で行うのは手間がかかること、人手による洗浄では確実に洗浄が行われているかどうかが不明である。そのため、最近、インクジェット記録装置に印字ヘッドを自動的に洗浄する洗浄ユニットを設けることが検討され始めている。この洗浄ユニットは、印字ヘッドを洗浄のためにセット(収容)する洗浄槽と、洗浄槽内においてセットされた前記印字ヘッドに向け洗浄液を噴出し洗浄する洗浄ノズルと、洗浄槽の底部に設けられ洗浄後の前記洗浄液を回収する回収容器とを備えている。
【0008】
このような洗浄ユニットでは、洗浄を何度か行う際にそのまま放置すると、洗浄液が回収容器から溢れ外部に流出する。そのため、回収容器内の洗浄液の液位を検出する液位検出装置を設け、液位検出装置の検出信号を用いて洗浄液が一定量以上になったことを作業員に知らせ、作業員は回収容器を取外して容器内の洗浄液を排出する作業を実施する。そして、空になった回収容器は、再び洗浄槽の底部に取付ける。然るに、このような回収容器の脱着作業(取外しや取付け作業)はかなりの頻度で行われるため、上述した特許文献1に記載されたような液位検出装置を用いると、容器の脱着作業が非常に煩雑となり実用的でない。また、洗浄ユニットにおいて、うっかり回収容器が洗浄槽から取外された状態で洗浄作業を実施すると、洗浄後の洗浄液が洗浄槽の底部から流出してしまい周囲を汚染することになる。そのため、通常、容器が装着されているかどうかを検知するための装置が別途必要となる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、容器の取外しや取付けが容易であり液体が容器外に流出することを防止するために有効なインクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニット、および液位検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明は、その一例を挙げると、印字を行う印字ヘッドと、インク容器と、前記インク容器内のインクを前記印字ヘッドに供給するとともに印字に使用しない前記インクを前記インク容器に回収するための経路と、前記印字ヘッドに前記インクを供給する制御と前記印字ヘッドの印字動作を制御する制御部とを有するインクジェット記録装置であって、前記印字ヘッドを収容可能な空間を有し下部に液出口部を有する洗浄槽と、前記洗浄槽内に収容された前記印字ヘッドに向けて洗浄液を噴出し洗浄する洗浄ノズルと、前記洗浄槽の前記液出口部から流出する洗浄液を回収する回収容器とを備えた洗浄ユニットと、前記回収容器内の前記洗浄液の液位を検出する第1液位検出装置とを設け、前記第1液位検出装置は、前記回収容器内に、前記液位に対応して移動する第1フロートと、前記第1フロートを保持する第1ホルダーとを備えており、前記回収容器の外側に、前記第1フロートが近接したときに前記液位検出信号を出力する第1センサを設置した構成とし、前記制御部は、前記液位検出信号から前記回収容器の装着状況を判断するインクジェット記録装置である。
【0011】
また、本発明の他の一例を挙げると、インクにより印字を行う印字ヘッドを有するインクジェット記録装置の洗浄ユニットであって、前記洗浄ユニットは、前記印字ヘッドを収容可能な空間を有し液出口部を有する洗浄槽と、前記洗浄槽内に収容された前記印字ヘッドに向けて洗浄液を噴出し洗浄する洗浄ノズルと、前記洗浄槽の前記液出口部から流出する洗浄後の前記洗浄液を回収する回収容器と、前記回収容器内の前記洗浄液の液位検出信号を出力する液位検出装置とを備えており、前記液位検出装置は、前記回収容器内に、前記液位に対応して移動するフロートと、前記フロートを保持するホルダーとを備えており、前記回収容器の外側に、前記フロートが近接したときに前記液位検出信号を出力するセンサを設置した構成とし、前記液位検出信号を用いて前記液位検出信号から前記回収容器の装着状況を判断することを特徴とするインクジェット記録装置の洗浄ユニットである。
【0012】
また、本発明の他の一例を挙げると、容器内の液体の液位を検出するための液位検出装置であって、前記液位検出装置は、前記回収容器内に、液位に対応して移動するフロートと、前記フロートを保持するホルダーとを備えており、前記回収容器の外側に、前記フロートが近接したときに前記液位検出信号を出力するセンサを設置した構成とし、前記液位検出信号を用いて前記液位検出信号から前記回収容器の装着状況を判断することを特徴とする液位検出装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容器の取外しや取付けが容易であり液体が容器外に流出することを防止するために有効なインクジェット記録装置、インクジェット記録装置の洗浄ユニット、および液位検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例におけるインクジェット記録装置の使用状況を示す図である。
図2】実施例におけるインクジェット記録装置本体の概略断面を示す図である。
図3】実施例におけるインクジェット記録装置の制御部の概略構成を示す図である。
図4】実施例におけるインクジェット記録装置の全体経路構成を示す図である。
図5】実施例におけるヘッド洗浄ユニットの構成図である。
図6】実施例における液位検出装置のフロートの構成を示す図である。
図7】実施例における液位検出装置のフロートの分解図を示す図である。
図8】印字ヘッドをセットした状態における洗浄ユニットの断面図である。
図9】洗浄ユニットにおける回収容器内に洗浄液がほぼ一杯になったことを検出した状態を示す図である。
図10】洗浄ユニットにおいて、回収容器を取外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施例を、図1図10を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
また、以下の各図において、同一機器には同一番号(符号)を付し、すでに説明した機器の説明を省略する場合がある。
【0016】
(インクジェット記録装置の構成と使用状態)
最初に、本発明の実施例におけるインクジェット記録装置100の基本構成および使用状態について説明する。図1は、本実施例におけるインクジェット記録装置100の使用状態を示す図である。
【0017】
まず、図1に示すように、本実施例に係るインクジェット記録装置100は、本体1と、本体1と導管5(印字ヘッド用)を介して接続された印字ヘッド2と、本体1と洗浄ユニット用の導管6により接続された洗浄ユニット3とを備える。
【0018】
インクジェット記録装置100は、例えば、食品や飲料などが生産される工場内の生産ラインに据付けられる。本体1は、印字ヘッド2に印字用のインクを供給するとともに、印字ヘッド2で使用しなかったインクを回収する機能を有する。また、本体1は、インクを収容するインク容器、インク容器内のインクが印字に使用されて少なくなった場合にインクをインク容器に補充するための補助インク容器などを備え、またインクや溶剤の供給や回収を行うための経路と、その経路途中に設けた開閉弁群(電磁弁群)やポンプ群などを内蔵している。更に、本体1は、印字ヘッドにより印字を制御すること、インクや溶剤の供給、回収等を制御すること等のための制御部7(図1では図示せず)と、この制御部7に操作指令を与えるためおよび制御部7から送信されるインクジェット記録装置の各種状態を表示する操作表示部8とを備えている。本体1は定期的な保守作業などに必要なスペースが確保可能な場所に設置されている。
【0019】
印字ヘッド2は、ベルトコンベア11の近傍に設置された印字ヘッド固定用金具13に固定され、ベルトコンベア11上を矢印Xの方向に給送される印字対象物12A、12Bに印字するために近接して設置されている。なお、印字対象物12Aは印字前の印字対象物を示し、印字対象物12Bは印字後の印字対象物を示す。また、印字ヘッド2は、ヘッドベース16上に、ノズル、帯電電極、偏向電極等(図1では図示せず)の部品を装備している。また、印字ヘッド2は、これらの部品を保護する目的で保護カバー17が取付けられている。
【0020】
印字ヘッド2を洗浄するために設けられた洗浄ユニット3は、固定用治具92と、固定用治具92を篏合するための篏合部93により、ベルトコンベア11の近傍に取付けられている。なお、洗浄ユニット3は、洗浄槽71と、洗浄槽内にセットされた印字ヘッド2を洗浄するための洗浄ノズル(図1では図示せず)と、洗浄液を回収する回収容器4等を含む。導管6は、本体1から洗浄液を洗浄ユニット3に供給するための導管である。
【0021】
(本体の構成)
次に、インクジェット記録装置100における本体1内の機器配置構成について説明する。図2は、実施例におけるインクジェット記録装置の本体1の断面を示す図である。
図2において、容器ユニット510は、容器群(インク容器31、補助インク容器32、溶剤容器33)を収納している部分である。流路ボード520は、インク供給・回収および溶剤の供給・回収等を行うための流路(経路)等をまとめているボード部分である。ポンプユニット530は、それらの経路途中に設けられるポンプ群(ポンプ34~35、37、38)を取付けている部分である。電磁弁ユニット540は、経路途中に設けられる流路開閉用の電磁弁群(電磁弁49,50、53~56)を取付けている部分である。なお、ポンプ群および電磁弁群の具体的な構成(図4参照)は後述する。
【0022】
また、本体1の上部には制御部7が配設されており、制御部7はインクジェット記録装置100全体の制御を実行する。制御部7の具体的な構成は後述する。本体1の前面上部には、操作表示部8が設けられている。操作表示部8は、この実施例では操作用のタッチパネルと表示装置を一体に組込んだ構成としている。もちろん、操作表示部は、操作部と表示装置とを別々に設けるものでも良い。また、本体1の上部にはインクジェット記録装置100において使用するための電源70が設置されている。
【0023】
(制御部の構成)
次に、本発明の実施例における制御部7の構成について説明する。図3は、制御部7の概略構成を示すブロック図である。
図3において、制御部7は、マイクロプロセッシングユニット(MPU)701と、MPU701の動作のためのプログラムおよび動作に必要なデータ・情報を記憶するリードオンリーメモリ(ROM)702と、印字内容のデータや、制御に必要なデータや入力される信号等を記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)703とを有する。また、制御部7は、印字ヘッド2を駆動し印字するための帯電電圧や偏向電圧、各種タイミング等を制御する印字ヘッド制御回路704と、ポンプ群の駆動・停止の制御を行うためのポンプ制御回路705と、電磁弁群の開閉制御を行う弁制御回路706とを有する。MPU701は、印字ヘッド制御回路704、ポンプ制御回路705、弁制御回路706を制御して、インクジェット記録装置の全体を制御する。
【0024】
更に、本実施例における制御部7は、各液位検出装置の液位検出信号を入力する液位検出信号入力部707を有する。この液位検出信号入力部707を介して制御部7に入力された液位検出信号は、一旦RAM703に記憶され、MPUによる演算・判断・制御などに使用される。MPU701は、この液位検出信号により、容器内の液位が所定位置に達したことを認識し、さらに洗浄動作などに関する警告などを操作表示部8に表示する。また、この液位検出信号を用いて、液位を所定値に制御するための制御信号を演算し、ポンプ制御回路705および弁制御回路706を介して、関連するポンプ群および電磁弁群を制御する。
【0025】
(全体経路構成)
次に、本発明の実施例におけるインクジェット記録装置100の経路構成について説明する。
図4は、本実施例におけるインクジェット記録装置の全体経路構成を示す図である。図4において、インクジェット記録装置100は、本体1と、印字ヘッド2と、ヘッド洗浄ユニット3と、それらを結ぶ導管5,6とを備えている。本体1と印字ヘッド2との間は、導管5により接続され、本体1とヘッド洗浄ユニット3との間は導管6により接続される。
【0026】
〔印字ヘッドへのインク供給〕
まず、本体1から印字ヘッド2に対してインクを供給するインク供給用の経路(経路801~803)について説明する。図4において、本体1には、循環するインク68Aを保持するインク容器31が備えられている。
インク容器31は、インク68Aに浸漬している部分で経路801に接続されており、経路801の途中には、粘度測定器45と、インク供給のための経路の開閉を行う電磁弁49を設置している。粘度測定器45は、インクの粘度を測定するために設けられ、制御部7に入力される。具体的には、RAM703に入力・記憶される。制御部7は、この粘度検出信号によりインク68Aの粘度を所定値あるいは所定範囲内に維持する制御を実行する。
【0027】
更に、経路801は、合流経路901を介して、経路802に設置されてインク68Aを吸引・圧送するために使用されるインク供給用のポンプ34に接続されている。そして、ポンプ34の出力側において、インク68A中に混入している異物を除去するフィルタ39(インク供給用)に接続されている。
【0028】
フィルタ39は、ポンプ34から圧送されたインク68Aを印字するために適正な圧力に調整する調圧弁46に接続されており、調圧弁46はノズル21に供給されるインク68Aの圧力を測定する圧力センサ47に接続されている。圧力センサ47が配置された経路802は、導管5内を通過して印字ヘッド2に接続されている。具体的には、ノズル21にインク68Aを供給するかどうかを制御するための切替弁26に接続される。
【0029】
切替弁26は、経路803を介して、インク68Aを吐出する吐出口を備えたノズル21に接続されている。なお、切替弁26は三方型電磁弁であり、切替弁26にはインク供給用の経路802とノズル洗浄用の経路812とが接続されており、ノズル21に対してインク68Aと溶剤69Aの供給を切替えることができる。ノズル21の吐出口の直進方向には、ノズル21で粒子化されたインク粒子68Bに対して所定の電荷量を付加する(印字内容に対応して電荷量が付与する)ための帯電電極23、印字に使用するインク粒子68Bを帯電量に対応して偏向させるための偏向電極24、および印字に使用されないために帯電・偏向されずに直進的に飛翔するインク粒子68Bを捕捉するためのガター25が配置されている。印字は、偏向電極24で偏向されたインク粒子68Bを被印字物に着弾させることで行われる。
【0030】
〔印字ヘッドからのインク回収〕
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置100のインク回収経路(経路804)について説明する。図4において、ガター25は、経路804に接続されている。そして、経路804は、導管5内を通過し、本体1内に配置されているインク中に混入している異物を除去するフィルタ40(インク回収用)と接続され、フィルタ40は経路804の開閉を行う電磁弁50(インク回収用)に接続されている。さらに、電磁弁50は、ガター25により捕捉されたインク粒子68Bを吸引するポンプ35(インク回収用)と接続されており、ポンプ35がインク容器31と接続されている。また、インク容器31は、インク68Aに接触しない上部の空間にて、経路805と接続されていて、経路805は本体1の外部と連通した構成をとっている。このような構成において、制御部7が電磁弁50を開き、ポンプ35を駆動する制御を実行することにより、ガター25により捕捉されたインク粒子68Bは、これらを介してインク容器31に回収される。
【0031】
〔溶剤補給経路〕
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置100の溶剤補給経路(経路809~810)について説明する。図4において、本体1には、インク容器31への溶剤供給や、ノズル洗浄やヘッド洗浄に使用するための溶剤69Aを保有(収容)する溶剤容器33が備えられている。溶剤容器33は、溶剤69Aに浸漬している部分で経路809に接続されており、経路809には溶剤を吸引、圧送するために使用されるポンプ37が配置されている。そして、ポンプ37は、目的に応じて溶剤69Aの供給先を変えるために分岐経路903に接続されている。分岐経路903は、溶剤補給経路においては経路810に配置された流路の開閉を行うための電磁弁53に接続されており、電磁弁53はインク容器31と経路により接続された構成となっている。
【0032】
このような構成において、溶剤69Aをインク容器31に供給するには、電磁弁53を開き、ポンプ37を駆動すれば良い。インク容器31への溶剤の供給(補給)は、粘度測定器45が検出するインク粘度が所定値よりも高い状態になった場合に、インク粘度を所定値範囲内にするために行われる。具体的には、制御部7は、粘度測定器45から入力されたインク粘度が印字を行うに適切な粘度よりも高くなったことを判断すると、電磁弁53を開き、ポンプ37を駆動して、溶剤容器33内の溶剤69Aをインク容器31に供給し、インク68Aの粘度が適正になるように制御する。
【0033】
この実施例では、溶剤容器33には、溶剤容器33内の溶剤69Aが適正な範囲内の液位であるかどうかを検出する液位検出装置33Aが備えられている。この液位検出装置33Aは、溶剤容器33の内側において、液位変動に対応して上下に移動するフロート331と、フロート331を保持するホルダー332とを有する。ホルダー332により、フロート331は上下動以外の移動をしないよう抑制されている。ホルダー332の上下位置にストッパ(図では三角形状で示している)を設けている。具体的には、ホルダー332において、フロート331が最小液位を検知する位置および最大液位を検知する位置に夫々ストッパを設けている。フロート331を検出するセンサ333と334は、このストッパにフロートが接近(近接)した場合に、液位検出信号を出力するように配設されている。ここで、2個のセンサ333と334は、溶剤容器33の外側において支持部材335に取付けられている。すなわち、溶剤容器33の底部側のセンサ333は、フロート331が液位変動により下方のストッパに移動して近接した場合に液位検出信号を出力する。溶剤容器33の上部側のセンサ334は、フロート331が上方に移動して上側のストッパに近接した場合に液位検出信号を出力する。液位検出装置33Aのセンサ333と334を溶剤容器33の外部に設置し、液位検出信号を制御部7に送信する電線(図示せず)は溶剤容器33の外部に配線されているので、溶剤容器33の脱着作業(取外しや取付け作業)は容易になる。
【0034】
センサ333は、フロート331がホルダー332の下側ストッパに接触する位置に移動した場合、液位検出信号を出力する。また、センサ334は、フロート331がホルダー332の上側ストッパに接触する位置に移動した場合、液位検出信号を出力する。このセンサ333および334により検出された液位検出信号は、制御部7に入力される。具体的には、制御部7の液位検出信号入力部707を経由し、RAM703に記憶される(図3参照)。
【0035】
制御部7(具体的にはMPU701)は、この液位検出信号を用いて、溶剤容器33内の溶剤69Aが所定の液位の範囲内でないと判断した場合には、操作表示部8に溶剤の残留状態を表示したり、溶剤が不足している旨の警告を表示する。具体的には、MPU701が、RAM703に記憶されている液位検出信号を用いて溶剤の過不足を判断し、不足している場合には溶剤が不足していること、溶剤を補充する必要があることなどの警告を操作表示部8の画面に表示する。これにより、作業者は溶剤の補給が必要であることを知ることができる。
【0036】
〔インク補給経路〕
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置100のインク補給経路について説明する。図4において、本体1には、補充用のインク68Cを保持する補助インク容器32が備えられている。補助インク容器32は、インク68Cに浸漬している部分でインク補給のための経路811に接続されている。経路811は、経路の開閉を行う電磁弁54に接続されており、電磁弁54は合流経路901を介して、経路802に設置されてインク68Cを吸引、圧送するために使用するポンプ34に接続されている。そして、補助インク容器32内のインク68Cは、印字ヘッド2に送給され、ノズル21、ガター25を経由して、経路804、電磁弁50、ポンプ35からなるインク回収経路を通り、インク容器31に補充される。
【0037】
補助インク容器32内のインクをインク容器31に補充するタイミングは、インク容器31内のインクの液位を検出する液位検出装置31Aの液位検出値を利用して行う。すなわち、インク容器31には、インク容器31内のインクが適正な量である基準液位に達しているか否かを検出する液位検出装置31Aが備えられている。
【0038】
この液位検出装置31Aは、上述した液位検出装置33Aと同様の構成である。すなわち、インク容器31の内側には、液位変動に対応して上下に移動するフロート311と、フロート311を保持しフロートの上下動以外の移動を抑制するホルダー312とを有する。譲渡同様に、ホルダー312の上下にはストッパが設けられる。また、この液位検出装置31Aのセンサ313と314は、インク容器31の外側において支持部材315に取付けられている。インク容器31の外側の下側に設けたセンサ313は、フロート311がホルダーの下側ストッパに近接した場合に液位検出信号を出力する。容器の外側の上側に設けたセンサ314は、フロート311がホルダー312の上側のストッパに近接した場合に液位検出信号を出力する。センサ313およびセンサ314は、インク容器31の外側に配置されているので、点検や洗浄のためにインク容器31の脱着作業(取外したり取付ける作業)は容易になる。このセンサ313および314により検出された液位検出信号は、制御部7の液位検出信号入力部707を介して、RAM703に記憶される(図3参照)。
【0039】
制御部7は、この液位検出信号を用いて、インク容器31内のインクが所定量になるように制御する。具体的には、インク容器31内のインクの液位が下がり、センサ313で検出される液位にまで下降した場合、インク容器31へのインクの補給が開始される。制御部7は、液位検出装置31Aのセンサ313の検出信号を入力すると、インク補充を開始する。すなわち、制御部7は、センサ313の液位検出信号からインク容器31内のインク量(インク液位)が所定量以下に減少していることを知ることができるので、補助インク容器32内のインク68Cを経路811、経路802、印字ヘッド2から、経路804を経由して、インク容器31に補給する。インク補給中は、経路途中に設けた電磁弁54を開動作し、ポンプ34を駆動し、印字ヘッド2内に供給されたインクをガター25で捕捉し、経路804の途中に設けた電磁弁50を開動作し、ポンプ35を駆動する。これにより、補助インク容器32内のインク68Cは、インク容器31に供給(補充)される。インク補充により液位が上昇し、液位検出装置31Aのセンサ314が液位検出信号を出力すると、制御部7は、このインク補充動作を終了する。終了は、制御部7が電磁弁54を閉、ポンプ34を停止することで行われる。
【0040】
なお、この実施例では、補助インク容器32内のインクの液位を検出する液位検出装置32Aも設けている。この液位検出装置32Aにより検出された液位検出信号も、制御部7に入力される。制御部7は、この液位検出信号を入力し、補助インク容器32内のインク液位を知ることができる。液位検出装置32Aは、既に説明した他の液位検出装置(31A,32A)と同様の構成になっている。すなわち、液位検出装置32Aは、補助インク容器32の内側に液位変動に対応して上下に移動するフロート321と、フロート321の上下動以外の移動を抑制するホルダー322とを有する。ホルダー322の上下には、ストッパが設けられる。また、この液位検出装置32Aは、センサ323と324とを補助インク容器32の外側の支持部材325に取付けている。センサ323は、フロート321が下側のストッパに近接した場合に液位検出信号を出力する。センサ324は、フロート321が上側のストッパに近接した場合に液位検出信号を出力する。このセンサ323および324により検出された液位検出信号は、電気信号として、制御部7の液位検出信号入力部707を介して、RAM703に記憶される(図3参照)。
【0041】
制御部7は、この液位検出信号により、補助インク容器32内のインク68Cが所定範囲外の液位まで減少したことを知ることができ、補助インクを補充する制御を実施することができる。あるいは、補助インク容器32内にインクを補充する必要がある旨の警告を操作表示部8に表示する。
【0042】
〔ノズル洗浄〕
次に、ノズル洗浄経路(経路809及び経路812)について説明する。図4において、経路809に配置されたポンプ37は、分岐経路903を介して経路812に接続されている。経路812は、流路の開閉を行うための電磁弁55(ノズル洗浄用)に接続されている。そして、電磁弁55は、溶剤69A中に混入している異物を除去するためのフィルタ41(ノズル洗浄用)に接続されている。フィルタ41は、導管5内を通る経路812を介して印字ヘッド2内に備えられ、ノズル21に洗浄のための溶剤69Aを送るかどうかを制御するための切替弁26に接続された構成となっている。
【0043】
〔洗浄ユニット〕
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置100の洗浄ユニット3の基本構成について説明する。
図4において、印字ヘッド2を洗浄する洗浄ユニット3は、上面が開口し印字ヘッド2を挿入する(セットする)ための収容空間部を有する洗浄槽71と、洗浄槽71にセットされた印字ヘッド2を洗浄するために洗浄液を噴出する洗浄ノズル72と、洗浄後の印字ヘッド2を乾燥するために乾燥エアを噴出するエアノズル73と、洗浄槽71の底部に取付けられ洗浄槽の低部の開口から流出する(流れ落ちる)洗浄液69Bを回収する回収容器4とを備えている。洗浄ユニット3において使用する洗浄液は、この実施例では溶剤容器33に保有されている溶剤69Aを使用する。そのため、溶剤容器33の溶剤69Aは、浸漬している部分で経路809と繋がっており、経路809途中に設けたポンプ37は、分岐経路903を介して経路821に接続されている。経路821は、洗浄ユニット3の洗浄ノズル72と接続されている。経路822には、流路の開閉を行うための電磁弁56が配置されている。この構成により、制御部7は、電磁弁56を開動作し、ポンプ37を駆動する制御を行うことにより、溶剤容器33内の溶剤69Aを、「洗浄液」としてヘッド洗浄ユニット3内の洗浄ノズル72に供給することができる。なお、洗浄液は、本体1の溶剤容器の溶剤とは別に設けた、洗浄液供給装置から供給しても良い。
【0044】
また、印字ヘッドの洗浄後には、エアノズル73からエアを噴出させ、印字ヘッド2の乾燥を行うことができる。エアノズル73は、経路825と接続されており、その経路825途中に設けたポンプ38を駆動することによりエアを洗浄槽71内に噴射することができる。なお、本体1と洗浄ユニットとの間は、導管6により接続される。回収容器4は、洗浄後の洗浄液69Bを収容するために設けられ、容器内の洗浄液69Bが一定以上の液位になった場合に、回収容器4を取外して洗浄液69Bを排出する。洗浄液69Bの排出により空になった回収容器4は、洗浄液69Bを収容するために、再び洗浄槽71の底部に取付ける。
【0045】
この実施例においては、洗浄ユニット3の回収容器4に液位検出装置4Aが設けられている。液位検出装置4Aは、回収容器4内に液位に応じて上下に移動可能なフロート74と、このフロート74を保持するホルダー75とを備えている。また、回収容器4の外側には、フロート74が上下動して近接した場合に、液位検出信号を出力するセンサ76が設置される。ここで、センサ76および液位検出信号を制御部7に送信する電線76Aは回収容器4の外部に設けられているので、回収容器4の取外しや取付けの支障にはならない。
【0046】
ところで、液位検出におけるセンサの数は、多数個設ければきめ細かく液位を検出することができる。しかし、センサの数が多くなるとその分液位検出装置が高価になる。そのため、この実施例では、回収容器に使用する液位検出装置4Aのセンサの数を少なくする工夫をしている。すなわち、液位検出装置31A,32A、33Aの場合は上下に2個のセンサを設けた構成にしている。これに対し、液位検出装置4Aでは、センサ76は1個しか設けていない。
【0047】
液位検出装置4Aは、ホルダー75の中間位置にストッパ75Aを設け、フロート74の上下方向に移動する範囲を中間位置から上側への移動に制限する。そして、センサ76は、フロート74がこのストッパ75Aに近接した場合に液位検出信号を出力するように配設する。
【0048】
ここで、ホルダー75におけるストッパ75Aが設けられる位置は、上下の中間位置(容器の最大容量を検出するに液位よりは下方の位置であり、容器内に液体が存在しない場合の位置よりも上方の位置)である。ストッパ75Aの設置位置は、容器を取外して容器内の洗浄液69Bを排出する頻度を考慮し、かつそのままの運転状態において直ちに容器内の液体が外部に溢れるリスクが小さいと考えられる液位の位置とする。好ましくは、ストッパ75Aの位置は、最大容量に対応する液位位置を100%とした場合に、その50~90%の範囲内の位置が好都合である。ここで、50%としたのは、それより低くするとセンサ76が頻繁に液位検出信号を出力するので、洗浄液69Bを排出するために回収容器4の取外しと取付けを行う頻度が多くなるためである。また、90%としたのは、制御部7が操作表示部8に警告した場合に、作業員がその傾向に気が付くのが少し遅れた場合に洗浄液69Bが溢れる恐れが出てくるため、多少の余裕時間を確保するためである。
【0049】
このような液位検出装置4Aの構成では、フロート74は回収容器4内の液体(洗浄液69B)の液位がまだ少なくてストッパ75Aの位置より下側にある場合にはフロート74は動かない。したがって、センサ76は、フロート74が移動しない期間中(言いかえれば、回収容器4の洗浄液69Bが少ない期間中)において、継続して液位検出信号を出力し続けることになる。そして、回収容器4内の洗浄液69Bの液位がストッパ75Aの位置よりも上昇して、フロート74が上方に移動した場合に、センサ76は、液位検出信号の出力を停止する。このセンサ76による液位検出信号は、制御部7に入力される。具体的には、制御部7の液位検出信号入力部707を介して、RAM703に記憶される(図3参照)。
【0050】
制御部7は、液位検出装置が液位検出信号を継続して出力している間は、回収容器4内の液体(洗浄液69B)が少ないこと(言いかえると、洗浄液69Bをまだ十分収容できること)を判断することができる。また、制御部7は、液位検出信号の出力が消失したときは回収容器内の洗浄液69Bがほぼ満杯になったこと(言いかえると、回収容器が洗浄液69Bを収容できなくなっていること)を判断できる。つまり、液位検出信号が途切れたときには、制御部7は、回収容器4内の洗浄液69Bを排出すべきことを指示する警告を操作表示部8に表示することが可能となる。また、液位検出装置4A(センサ76)は、回収容器4が取外されている(無い)ときにも、フロート74が近くにないことから、液位検出信号は消失する。そのため、制御部7は、液位検出信号が消失している場合には洗浄をしないように警告を発する(この実施例では、操作表示部8に表示する)。このように、液位検出装置4Aの液位検出信号を利用して、液位を検出するだけでなく、回収容器4内の洗浄液69Bがたまって溢れる恐れがある場合や、回収容器4自体が洗浄ユニット3から取外されて液体が外部に流出する恐れがある場合を判断することができる。また、そのことを作業員に知らせることができる。このため、制御部7は、この判断に基づき、適切な警告を表示する。あるいは、洗浄ユニットによる洗浄の動作を行わせないように制御することも可能となる。
【0051】
ここで、この実施例では、回収容器4に設置される液位検出装置4Aを、ホルダー75の中間部にストッパ75Aを設け、その位置の液位を検出するセンサ76を1個設けたものを示した。しかし、液位検出装置4Aは、上述した他の液位検出装置31A,32A,33Aと同様の構成にすることもできる。すなわち、検出する最低の液位と最大の液位の検出位置にストッパを設け、フロートを液位の変動に応じてそれら両ストッパ間で上下に移動可能とし、容器の外部には上下のストッパにフロートが位置するときに液位検出信号を出力するように配置された2個のセンサを有する構成にしても良い。このような構成でも、上側のセンサが液位検出信号を出力した場合に、容器内に液体がほぼ満杯になり、収容できる液体量が少なくなったことを判断することができる。
【0052】
すなわち、この上側のセンサの液位検出信号が出力された場合には、制御部7は回収容器4を取外して洗浄液69Bを排出すべきことを操作表示部8に警告表示する。これにより、作業者は、回収容器4を取外して、中の洗浄液69Bを排出することができる。
【0053】
また、上側のセンサが動作した後に回収容器4を取外した場合には、上下のセンサは液位検出信号を出力しない。そして、その後、回収容器4が取付けられると(容器内の液体がなくなっているので)、下側のセンサが液位検出信号を出力する。したがって、制御部7は、上側のセンサの動作後に、下側のセンサが動作(液位検出信号を出力)するまでの間は、回収容器4が取外されている可能性が高いと判断することができる。その場合、制御部7は、上述したような警告を表示する。あるいは、その期間中は、洗浄動作を行わせないように制御することが可能となる。
【0054】
なお、回収容器4内の液体を容器外に排出する機器(排出用の経路、経路途中に設けた電磁弁およびポンプ)を設置している場合には、関連機器(電磁弁及びポンプ)を駆動して回収容器4内の洗浄液69Bを排出することができる。その場合、洗浄液69Bの排出は、本体1側に回収するようにしても良いし、あるいは別の容器に排出することでも良い。
【0055】
(洗浄ユニットの具体的な構成)
次に、図5により、洗浄ユニット3の具体的な構成について説明する。なお、以下では、図4に関して説明した内容と重複する説明は省略する場合がある。
図5において、洗浄槽71の上部には蓋ブロック81が設置される。蓋ブロック81は、印字ヘッドの挿入部81Aを有し、この挿入部81Aにより印字ヘッド2を挿入することができる。挿入部81Aの下面には、蓋部材83が設けられ、蓋ヒンジ82のバネ力により通常は閉じられている。ゴミ等が洗浄槽71内に入るのを防ぐためである。85は、配管部分を保護するカバーである。
【0056】
印字ヘッド2を洗浄する場合、作業者は印字ヘッド2を洗浄槽71に挿入する。この際、蓋ヒンジ82によるバネ力で閉じられた蓋部材83が回動(図5では時計回りに回動)して、印字ヘッド2が洗浄槽71内にセットされる。経路822により送られる洗浄液は、液継手84を介して洗浄ノズル72に流入する。フィルタ43は、洗浄液内のごみを除去するために経路822の途中に設けられている。洗浄ノズル72は、洗浄する印字ヘッド2の洗浄部位に対応して洗浄液を噴射するために、この実施例では2つの液吐出穴72Aおよび72Bを有している。
【0057】
また、洗浄後の印字ヘッド2を乾燥させるために設けたエアノズル73にも、2つのエア吐出穴73Aおよび73Bが設けられている。洗浄槽71の底の部分には液出口部71Aが設けられ、また回収容器4を取付ける際に使用する取付部71Bを有する。この液出口部71Aから、洗浄後の洗浄液69Bを重力により回収容器4に落下させる(流れ落ちる)ようにしている。回収容器4は、容器77の上側の端部に洗浄槽71に取付けるための取付部77Aを有している。この実施例では、取付部71B,77Aともにネジ構造による取付けとした。回収容器4の取外しは、作業員が回収容器4を取外し方向(例えば、反時計方向)にねじることにより実施できる。回収容器4の取付けは、取付方向(例えば、時計方向)にねじることにより行われる。すでに述べたように、回収容器4内には、液位検出装置4Aの構成要素の内、フロート74とホルダー75が配置されている。また、ストッパ75Aはホルダー75の中間位置に形成され、フロート74がそのストッパ75Aの位置より下側には移動できないようにしている。75Bは、上側のストッパであり、検出する最大液位を規定している。75C~75Fは、ホルダー75内に液体が流入可能にするために設けた開口である。回収容器4の外側には、液位検出装置4Aのセンサ76が設置され、フロート74がストッパ75Aの位置に存在する期間中、液位検出信号を出力するようにしている。なお、この液位検出装置4Aにおけるフロート74は、内部に検出体として磁石86を設置する磁石式フロートを用いており、センサ76はこの磁石86が近接したときに液位検出信号(電気信号)を出力する磁石方式の近接センサとしている。この液位検出装置4Aの詳細な動作は、既に説明したので省略する。
【0058】
なお、この近接センサとしては、磁石式のセンサ以外の近接センサ、例えば「高周波発信方式の近接センサ」などその他の公知の近接センサを用いることができる。高周波発信方式の近接センサは、フロート内に金属を設け、容器外部にセンサとして、コイルに高周波電流を与えて高周波磁界を発生させておき、液位変化に伴いこの高周波磁界にフロート(金属)が接近すると金属中に誘導電流が流れて発振が減衰(又は停止)するので、この発振状態変化を発信状態検出回路で検出して出力回路を動作させることで実現できる。
【0059】
次に、図6及び図7により、本実施例に用いる各液位検出装置の「フロート」の具体的な構成例を説明する。図6は、フロートの構成を示す図であり、図6の(A)は上面図、(B)は正面断面図、(C)は(B)のM-M断面を示す図である。図7は、フロートの構成部品を分解図として示している。
【0060】
図6および図7において、液位検出装置のフロート、例えばフロート74は、ハウジング87と、蓋89と、蓋のシール部材88と、磁石86と、磁石86を固定する磁石固定部87Bとで構成される。なお、ハウジング87は、容器内の位置決めを行う容器内位置決め部87Aを有する構成としている。蓋固定部87Cは、蓋89をハウジング87に固定するためのものである。
【0061】
(洗浄ユニットにおける洗浄動作)
次に、洗浄ユニット3の動作について、図8図10により説明する。図8は、洗浄ユニット3に印字ヘッド2をセットした状態の洗浄ユニット断面図である。図9は、洗浄ユニット3において、回収容器4内の液体量(洗浄後の洗浄液69Bの収容量)がほぼ一杯になったことを検出した状態を示す図である。図10は、洗浄ユニットにおいて、回収容器4を取外した状態を示す図である。
【0062】
図8において、印字ヘッド2を洗浄する際には、印字ヘッド2を洗浄ユニット3にセット(挿入)する。セット時には、印字ヘッド2の保護カバー17は外す。なお、保護カバーにスライド扉を設け、挿入の際にそのスライド扉をスライドして印字ヘッド2の内部の部品(ノズル、帯電電極、偏向電極、など)を洗浄槽71内で露出する構成にすれば、保護カバー17を取り外す手間が省ける。
【0063】
洗浄は、そのセット後に開始される。洗浄ノズル72は、矢印J,Kで示すように洗浄液を印字ヘッドに向けて噴出し印字ヘッドを洗浄する。洗浄液により、印字ヘッド2の内部に組付けられたノズル21や帯電電極23、偏向電極24やガター25などの構成部品を洗浄しながら、矢印Lで示したように重力で下方に流れ落ちていく。洗浄槽71の下部に流れ落ちてきた洗浄液は、矢印Mに示したように回収容器4に向かって流れていき、回収容器4の内部に収容される。印字ヘッドの洗浄が終了すると、エアノズル73により、印字ヘッドを乾燥させる。
【0064】
洗浄の実施により洗浄槽71から洗浄後の洗浄液69Bが落下し、回収容器4内の洗浄液69Bの液位が上昇するが、図8の場合はまだ液位が低い位置であり、液位検出装置4Aのフロート74は変動せず、センサ76は液位検出信号を出力している。この液位検出信号は、電線76Aを介して制御部7に取込まれる。制御部7は、センサ76が液位検出信号を出力している期間中は、回収容器4が洗浄液69Bをまだ十分に収容可能であると判断し、洗浄液69Bを排出するための警告表示は行わない。
【0065】
回収容器4内に洗浄液69Bがほぼ満杯である場合、図9に示すような状態になる。すなわち、回収容器4内の液位上昇により、フロート74が浮上がり、センサ76は、液位検出信号を出力することができなくなっている。この場合、制御部7は、回収容器4内にさらに収容可能な洗浄液69Bの量は少なく、ほぼ満杯であることを検知(判断)することができるので、このような状態で制御部は操作表示部8に警告を表示する。例えば、回収容器4を取外して中の洗浄液69Bを排出すべきことを表示しても良い。なお、警告は、操作表示部8に表示することのみを述べてきたが、ブザーや音声で作業者に知らせても良い。表示に加えて、ブザーや音声等で警告するもできる。このような警告により、作業員は、図10に示すように、回収容器4を取外し、回収容器4内の洗浄液69Bを排出することができる。そして、空になった回収容器4を、再び洗浄槽71の底部に取付ける。液位検出装置のセンサを回収容器の外側に設置しているので、回収容器4の取外し、取付け作業は容易である。
【0066】
回収容器4を取付けた場合、フロート74がストッパ75Aの位置にあるため、センサ76は液位検知信号の出力を開始する。制御部7は、センサ76からの液位検出信号を受信し、回収容器4が取付けられたことを判断することができる。この判断により、制御部7は、操作表示部8に表示していた警告表示を消去する。あるいは、洗浄ユニット3が動作可能(洗浄可能)な状態であることを表示することや、洗浄動作の禁止状態を解除し、洗浄を許可するよう制御することができる。
【0067】
(実施例における効果)
以上説明したように、本発明の実施例によれば、インクジェット記録装置に用いる液位検出装置の構成を、容器内側に液位変動により上下動するフロートと、容器外側にそのフロートが所定位置に近接したことを検知する少なくとも1個のセンサを設ける構成としたので、容器の取付け及び取外しを簡単に実施することができる。また、この実施例で説明した液位検出装置の場合、液位検出装置の液位検出信号の出力状態により、容器が取外されているか取付けられているかを検知することができる。さらに、洗浄ユニットの回収容器内の液位を検出するに液位検出装置では、少なくとも1個のセンサで構成することができるので、構造が簡単で低コストの液位検出装置を実現することもできる。
【他の実施例】
【0068】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本発明は様々な変形例が含まれる。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0069】
1…本体、2…印字ヘッド、3…洗浄ユニット、4…回収容器、4A…液位検出装置、5…導管、6…導管、7…制御部、8…操作表示部、11…ベルトコンベア、12A…印字対象物、12B…印字対象物、13…印字ヘッド固定用金具、16…ヘッドベース、17…保護カバー、21…ノズル、23…帯電電極、24…偏向電極、25…ガター、26…切替弁、31…インク容器、31A…液位検出装置、32…補助インク容器、32A…液位検出装置、33…溶剤容器、33A…液位検出装置、34…ポンプ、35…ポンプ、37…ポンプ、38…ポンプ、39…フィルタ、40…フィルタ、41…フィルタ、43…フィルタ、45…粘度測定器、46…調圧弁、47…圧力センサ、49…電磁弁、50…電磁弁、53…電磁弁、54…電磁弁、55…電磁弁、56…電磁弁、68A…インク、68B…インク粒子、68C…インク、69A…溶剤、69B…洗浄液、70…電源、71…洗浄槽、71A…液出口部、71B…取付部、72…洗浄ノズル、72A…液吐出穴、72B…液吐出穴、73…エアノズル、73A…エア吐出穴、73B…エア吐出穴、74…フロート、75…ホルダー、75A…、ストッパ、75B…ストッパ、75C~75F…開口、76…センサ、76A…電線、77A…取付部、81…蓋ブロック、81A…印字ヘッドの挿入部、82…蓋ヒンジ、83…蓋部材、84…液継手、85…カバー、86…磁石、87…ハウジング、87A…容器内位置決め部、87B…磁石固定部、87C…蓋固定部、88…シール部材、89…蓋、89A…固定部、91…固定用治具(本体用)、92…固定用治具(コンベア用)、93…篏合部、100…インクジェット記録装置、311…フロート、312…ホルダー、313…センサ、314…センサ、315…支持部材、321…フロート、322…ホルダー、323…センサ、324…センサ、325…支持部材、331…フロート、332…ホルダー、333…センサ、334…センサ、335…支持部材、510…容器ユニット、520…流路ボード、530…ポンプユニット、540…電磁弁ユニット、701…マイクロプロセッシングユニット(MPU)、702…リードオンリーメモリ(ROM)、703…ランダムアクセスメモリ(RAM)、704…印字ヘッド制御回路、705…ポンプ制御回路、電磁弁制御回路、707…液位検出信号入力部、708…バス、801~803…経路、804…経路、805…経路、809…経路、810…経路、811…経路、812…経路、821…経路、825…経路、901…合流経路、903…分岐経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10