(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】基板吸引保持構造及び基板搬送ロボット
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20231011BHJP
B23Q 3/08 20060101ALI20231011BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20231011BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H01L21/68 B
B23Q3/08 A
B23Q7/04 K
B25J15/06 A
(21)【出願番号】P 2021566810
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2020032455
(87)【国際公開番号】W WO2021131160
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-12-08
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517340611
【氏名又は名称】カワサキロボティクス(ユーエスエー),インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】中原 一
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-029388(JP,A)
【文献】特許第6568986(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B23Q 3/08
B23Q 7/04
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の接触部と、前記接触部によって囲まれる第1真空室の底面を閉塞する底壁部とを有し、導電性を有するパッド本体と、
上面と、該上面を窪ませて形成した第2真空室とを有し、導電性を有するブレード本体と、
前記パッド本体に設けられ、前記パッド本体の前記接触部を前記第2真空室上で前記ブレード本体の前記上面よりも上方に位置させ、前記パッド本体を前記第2真空室に対して揺動可能に支持し、導電性を有する支柱と、
前記ブレード本体に固定され、前記第2真空室を覆う弾性体であって、前記支柱が挿通される挿通孔を有し、該挿通孔を形成する内周縁が前記支柱に接触する覆い体と、
前記第1真空室から延び、前記パッド本体の前記底壁部、前記第2真空室及び前記ブレード本体をこの順に通り、真空源に接続される吸引路と、を備える基板吸引保持構造。
【請求項2】
前記支柱は前記パッド本体を一点支持する、請求項1に記載の基板吸引
保持構造。
【請求項3】
前記支柱は、前記底壁部の下面から下方に向かって延びる外周面と、前記外周面に連なる外周縁を有し、該外周縁から内側に向かうに従って下方に突出する又は該外周縁の内側の領域の一部が下方に突出する突起が形成されている底面とを有し、
前記第2真空室は、前記支柱の下端を収容し、前記突起が載置される底面を有する、請求項1又は2に記載の基板吸引
保持構造。
【請求項4】
前記吸引路は、前記底壁部を貫通するパッド本体内流路と、一端が前記パッド本体内流路に連続し、前記支柱を貫通し、他端が前記支柱の前記底面に開口する支柱内流路と、前記支柱内流路の前記他端と接続されている前記第2真空室と、前記ブレード本体に形成され、一方の端部が前記第2真空室に接続され、他方の端部が真空源に接続されるブレード内流路を含む、請求項3に記載の基板吸引
保持構造。
【請求項5】
前記突起は、円錐形、円錐台形、半球形、ドーム形、又は前記外周縁との間に段差を形成する柱形である、請求項3又は4に記載の基板吸引保持構造。
【請求項6】
前記支柱と前記ブレード本体とは、前記突起を介して電気的に接続される、請求項3乃至5の何れか1項に記載の基板吸引保持構造。
【請求項7】
環状の接触部と、前記接触部によって囲まれる第1真空室の底面を閉塞する底壁部とを有し、導電性を有するパッド本体と、
上面と、該上面を窪ませて形成した第2真空室とを有し、導電性を有するブレード本体と、
前記第2真空室に設けられ、前記パッド本体の前記接触部を前記第2真空室上で前記ブレード本体の前記上面よりも上方に位置させ、前記パッド本体を前記第2真空室に対して揺動可能に支持し、導電性を有する支柱と、
前記ブレード本体に固定され、前記第2真空室を覆う覆い体と、
前記第1真空室から延び、前記パッド本体の前記底壁部、前記第2真空室及び前記ブレード本体をこの順に通り、真空源に接続される吸引路と、を備え、
前記第2真空室は、底面を有し、
前記支柱は、該第2真空室の底面から上方に延びる外周面と、前記外周面に連なる外周縁を有し、該外周縁から内側に向かうに従って上方に突出する又は該外周縁の内側の領域の一部が上方に突出する突起が形成されている上面とを有する、基板吸引
保持構造。
【請求項8】
前記突起は、円錐形、円錐台形、半球形、ドーム形、又は前記外周縁との間に段差を形成する柱形である、請求項7に記載の基板吸引保持構造。
【請求項9】
前記覆い体は、弾性体であり、前記支柱が挿通される挿通孔を有し、該挿通孔を形成する内周縁が前記支柱又は前記パッド本体に接触する、請求項7に記載の基板吸引保持構造。
【請求項10】
前記パッド本体の材質は、導電性PEEK樹脂である、請求項1乃至9の何れか1項に記載の基板吸引保持構造。
【請求項11】
前記覆い体は、導電性を有する、請求項1乃至10の何れか1項に記載の基板吸引保持構造。
【請求項12】
前記覆い体の外周縁を覆う形状を有する固定枠と、
前記固定枠を前記ブレード本体に係脱可能に締結する締結具とを有する、請求項1乃至11の何れか1項に記載の基板吸引保持構造。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載の前記基板吸引保持構造が前記ブレード本体に保持される基板の中心を中心とする円周方向に複数並ぶブレードを備える基板搬送ロボット。
【請求項14】
先端部に前記ブレードが設けられたロボットアームを更に有し、
前記接触部から前記ロボットアームまで連続する電気路を有する、請求項13に記載の基板搬送ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板吸引保持構造及び基板搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からウェハ等の基板を吸引して保持するための基板吸引保持構造が知られている。例えば、特許文献1に示す吸引保持装置は、保持対象物であるウエハを真空吸着する吸着保持部材を有する。吸着保持部材にはウエハと接触する接触部が形成されており、接触部の内部には真空管路が開口している。これによって、ウエハを真空吸着によって保持することができる。また、接触部及び吸着保持部材の上面は静電気拡散性被膜によりコートされており、ウエハや吸着保持部材への帯電を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ウエハの中には反っているものがあり、特許文献1に記載の吸引保持装置を用いてこのような反ったウエハを真空吸着しようとしても、吸着保持部材とウエハとの間隙によって、ウエハの真空吸着が行えない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、基板吸引保持構造は、環状の接触部と、前記接触部によって囲まれる第1真空室の底面を閉塞する底壁部とを有し、導電性を有するパッド本体と、上面と、該上面を窪ませて形成した第2真空室とを有し、導電性を有するブレード本体と、前記第2真空室又は前記パッド本体の何れか一方に設けられ、前記パッド本体の前記接触部を前記第2真空室上で前記ブレード本体の前記上面よりも上方に位置させ、前記パッド本体を前記第2真空室に対して揺動可能に支持し、導電性を有する支柱と、前記ブレード本体に固定され、前記第2真空室を覆う覆い体と、前記第1真空室から延び、前記パッド本体の前記底壁部、前記第2真空室及び前記ブレード本体をこの順に通り、真空源に接続される吸引路と、を備える。
【0006】
この構成によれば、反った基板をパッドの上に置くとパッドが揺動し、接触部を基板の下面に沿わせることができる。これによって、反った基板を確実に保持でき、反った基板の搬送効率を向上させることができる。また、この反った基板の搬送時に基板の静電気を拡散させることができ、基板へのパーティクルの付着を防止することができ、基板の加工工程における歩留まりを向上させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、基板の搬送効率を向上させることができ、また、基板の加工工程における歩留まりを向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る基板吸引保持構造が設けられたブレードの構成例を示す平面図である。
【
図2】
図1のブレードを備える基板搬送ロボットの構成例を示す側面図である。
【
図4】
図1の基板吸引保持構造の構成例を示す断面図である。
【
図5】
図1の基板吸引保持構造の構成例を示す平面図である。
【
図6】
図1の基板吸引保持構造が基板を保持する状態を示す断面図である。
【
図7】
図1の基板吸引保持構造のパッドの支柱の構成例を示す底面斜視図である。
【
図8】実施の形態1に係る基板吸引保持構造のパッドの支柱の変形例を示す底面斜視図である。
【
図9】実施の形態1に係る基板吸引保持構造のパッドの支柱の変形例を示す底面斜視図である。
【
図10】実施の形態1に係る基板吸引保持構造のパッドの支柱の変形例を示す底面斜視図である。
【
図11】実施の形態1に係る基板吸引保持構造のパッドの支柱の変形例を示す底面斜視図である。
【
図12】実施の形態2に係る基板吸引保持構造の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0010】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る基板吸引保持構造100が設けられたブレード9の構成例を示す平面図である。
図2は、ブレード9を備える基板搬送ロボット1の構成例を示す側面図である。
【0011】
図1及び
図2に示すように、基板吸引保持構造100は、基板搬送ロボット1のブレード9に設けられる基板110を保持する構造である。ブレード9は、ロボットアーム2の先端部に設けられ、ブレード9とロボットアーム2とは電気的に接続されている。基板吸引保持構造100が設けられたブレード9は、基板110を吸引して保持して、保持した基板110を搬送する所謂バキューム型のハンドを構成する。特に、このブレード9は、例えば
図3に示すbow waferと呼称される弓なりに反ったウェハを吸引して保持することができる構造である。このような、反ったウェハは、その下面のうち、ハンドの支持部(パッド4)と接触するパッド当接領域111が傾斜している。また、反ったウェハの反り方の態様は椀型、ドーム型、カール型等多様であり、パッド当接領域111における傾斜角度及び傾斜方向は一定ではない。
【0012】
基板搬送ロボット1は、例えば、ロボットアーム2を動かして、FOUP(Front Opening Unified Pod)と称されるキャリアに複数収容された基板110をブレード9に載置する。
図1において、基板110は、ウェハを図示しているがこれに限られるものではなく、ガラス基板であってもよい。そして、基板搬送ロボット1は、ロボットアーム2を動かしてキャリアから取り出し、所定位置に移送する。基板搬送ロボット1は、例えばスカラ型の水平多関節ロボットであり、ブレード9は、基板搬送ロボット1のロボットアーム2によって、3次元的に、すなわち、互いに直交する3軸方向に移動される。
【0013】
基板吸引保持構造100は、例えば、ブレード9に保持される基板110の中心Cを中心とする円周方向に複数(例えば3つ)並ぶように設けられている。これによって、ブレード9に保持される基板110は、基板吸引保持構造100によって複数点で支持されより確実に保持される。基板吸引保持構造100は、ブレード9のブレード本体3に設けられた第2真空室30と、パッド4と、覆い体7(パッド体支持体)と、固定枠5と、締結具6と、吸引路10と、真空源8とを備える。
【0014】
ブレード本体3は、水平方向に延びる薄板状に形成され、その上面は平坦面3aを基本として形成されている。ブレード本体3は、パッド4を介して基板110を保持する。ブレード本体3は、例えばアルミニウム等の導電性を有する材質で構成される。なお、これに代えて、ブレード本体3は、アルミナ等の絶縁性を示すセラミックにメッキ等の表面処理を施し、導電性を付与してもよい。そして、ブレード本体3の基板吸引保持構造100が設けられる部分には3段の階段状の窪みが形成されている。
【0015】
パッド4は、基板110に接触し、基板110を直接支持する機能を担う。また、パッド4は、基板110からブレード本体3に向かって延びる吸引路及び電気路の一部を成す。パッド4は、導電性材料を含み、例えば、全体が導電性PEEK(Poly Ether Ether Ketone)樹脂で形成される。具体的には、カーボンを含有するPEEK樹脂で形成される。PEEK樹脂は、耐熱性、機械的強度に優れた、非エラストマーである。これによって、パーティクルの発生を抑制することができ、基板110の加工工程における歩留まりを向上させることができる。なお、導電性を有しない材質のパッド4にメッキ等の表面処理を施し、導電性を付与してもよい。
【0016】
パッド4は、パッド本体40と、支柱44を含む。パッド本体40は、水平方向に延びる環状の接触部41を有する。接触部41の頂部(上面)が基板110の下面と接触する基板支持面41aである。そして、接触部41によって囲まれる領域が第1真空室42を形成している。そして、接触部41の下縁には、底壁部43が連続して設けられ、第1真空室42の底面65は、底壁部43によって閉塞されている。すなわち、パッド本体40は全体として浅い皿状を呈し、内部に上方に開口する空間である第1真空室42が形成されている。
【0017】
そして、底壁部43の下面から円柱状の支柱44が下方に向かって延びている。支柱44の円筒形の外周面51は、接触部41の径よりも小さい径(例えば略1/2の径)を有し、底壁部43の下面から下方に向かって延びる。外周面51には、上下方向における中間部に、外周面51の周方向に延びる円環状の凹溝52が形成されている。そして、支柱44の底面56の外周縁57は、外周面51の下縁に連なっている。
【0018】
そして、支柱44の底面56に突起58が形成されている。突起58は、外周縁57から内側(支柱44の中心軸)に向かうに従って下方に突出する形状に形成されている。具体的には、
図4及び
図7に示すように、突起58は円錐形に形成されている。しかし、これに代えて、突起58は、円錐台形(
図8参照)、又はドーム形(
図9参照)であってもよい。また、突起58は、外周縁57の内側の領域の一部が突出する形状に形成されてもよい。具体的には、外周縁57との間に段差を形成する柱形(
図10参照)や半球形(
図11参照)であってもよい。このように、底面56は、内側領域の一部がこの内側領域の外側において内側領域を取り囲む外側領域の一部よりも下方に突出している。接触部41、底壁部43及び支柱44がパッド体を構成する。また、突起58の頂部は、支柱44の中心軸上に位置していてもよい。
【0019】
そして、底壁部43及び支柱44を貫通するパッド内流路45が形成されている。パッド内流路45は、支柱44の中心軸と平行に延び、パッド4の内部を通る貫通孔であり、上端はパッド4の上面に開口している。具体的には、パッド内流路45は、パッド本体40に形成されたパッド本体内流路45aと、支柱44に形成された支柱内流路45bとを含む管路である。パッド本体内流路45aの上端は、第1真空室42の底面65に開口し、第1真空室42と連続している。そして、パッド本体内流路45aは、下方に延び、底壁部43を貫通している。支柱内流路45bは、上端がパッド本体内流路45aの下端と連続し、支柱44を貫通している。そして、支柱内流路45bの下端は支柱44の底面56に開口している。本実施の形態においては、パッド内流路45は、支柱44の中心軸に対して偏心して2つ形成され、突起58の頂部の側方に形成されている。
【0020】
第2真空室30は、ブレード本体3の上面に設けられている窪みのうち、底部にあたる部分に形成される。具体的には、3段の階段状の窪みの最下段(上から3段目)の窪みが第2真空室30である。この第2真空室30は、パッド内流路45の下端が開口するパッド4の支柱44の下端を収容し、これによって、パッド内流路45は、第2真空室30に接続される。また、第2真空室30の底面66は、平坦であり、この底面66上にパッド4の突起58が載置される。これによって、パッド4は、底面66の上で直立する姿勢、すなわち、基板支持面41aが水平面上に位置する基準姿勢(
図4参照)をとることができる。また、パッド4は、基準姿勢から、基板吸引保持構造100の中心を中心とする径方向D1及びこの径方向D1と直交する方向D2(
図1参照)に揺動し、傾斜した姿勢、すなわち基板支持面41aが水平面に対して傾斜する傾斜姿勢(
図6参照)をとることができる。このように、支柱44は、第2真空室30の底面66と支柱44の底面56とが接触する部分を揺動中心として、パッド本体40を第2真空室30に対して揺動可能に支持する。
【0021】
また、底面66上に突起58が載置されることによって、第2真空室30の底面66と支柱44の底面56とが接触し、突起58と第2真空室30の底面66との接触部分を介して電気的に接続される。これによって、パッド4とブレード本体3とを接続する電気路の構成を簡素化することができる。
【0022】
そして、パッド4の高さ寸法、すなわち、接触部41の上端から支柱44の下端までの高さ寸法は、ブレード本体3の上面の平坦面3aから第2真空室30の底面66までの深さ寸法よりも、大きく形成されている。そして、パッド4の基板支持面41aが基準姿勢及び傾斜姿勢の双方においてブレード本体3の平坦面3aよりも上方に位置するように、上記の深さ寸法及び高さ寸法が規定されており、パッド4の基板支持面41aが、ブレード本体3の窪みの中に沈みこまないように規定されている。このようにして、支柱44は、パッド本体40の接触部41を第2真空室30の上でブレード本体3の上面(平坦面3a)よりも上方に位置させてパッド本体40を1点支持する。
【0023】
そして、ブレード本体3にはブレード本体内流路31が設けられられている。ブレード本体内流路31は、一方の端部が第2真空室30に開口して連なる管路である。本実施の形態において、ブレード本体内流路31は、ブレード本体3の底面に形成された細い溝であり、第2真空室30からブレード本体3の基端まで延びる。そして、ブレード本体3の底面を覆う裏蓋32がブレード本体3に取り付けられることによって、ブレード本体内流路31がブレード本体3の底面側から覆われ、ブレード本体3の内部を通る管路を成すように形成されている。
【0024】
覆い体7は、水平方向に延びる薄い板状のエラストマーであり、弾性を有する。そして、覆い体7は、中央に挿通孔71が形成されている。挿通孔71には支柱44が挿通されている。覆い体7は、上述したブレード本体3の階段状の窪みのうち、第2真空室30を構成する窪みの一つ上の段(上から2段目)の窪みに嵌められ、覆い体7の外周縁は平面視において第2真空室30の外側に位置し、覆い体7の下面は、ブレード本体3の上面と接触する。このように、覆い体7は、第2真空室30を覆うように配置され、第2真空室30を密閉している。また、挿通孔71を形成する内周縁72は、支柱44の凹溝52に嵌められている。これによって、第2真空室30をより確実に密閉することができる。また、換言すると、覆い体7は、パッド4を上面と底面との間の位置で支持している。
【0025】
なお、覆い体7は導電性を有する材質であってもよい。この場合、パッド4とブレード本体3とは、更に覆い体7を介して電気的に接続される。これによって、覆い体7の内周縁72と支柱44とが接触し、上記突起58と第2真空室30の底面66との接触部分によるパッド4とブレード本体3を接続する電気路の導通に不良が発生した場合であっても、パッド4とブレード本体3との電気的な接続を維持することができる。
【0026】
固定枠5は、板状の枠体であり、覆い体7の外周縁を覆う形状を有する。具体的には、固定枠5は、角を丸めた四角形に形成され、平面視においてパッド4よりも大きい内孔61が固定枠5の中央部に形成されている。この内孔61を形成する固定枠5の内周縁が覆い体7の外周縁を覆う部位である。また、固定枠5の外周縁は、上述したブレード本体3の窪みのうち、覆い体7が嵌められている窪みの一つ上の段(上から1段目)の窪みに嵌められて載置される。固定枠5の外周縁は、平面視において、覆い体7の外周縁の外側且つブレード本体3の上面の平坦面3aと固定枠5が載置される窪みとの段差の内側に位置している。これによって、固定枠5をブレード本体3の窪みの上方からこの窪みに落とし込むことによって、パッド4と干渉することなく、固定枠5をブレード本体3の窪みに嵌めることができる。そして、固定枠5の四隅には、締結具6を挿通するための貫通孔5aが形成されている。
【0027】
締結具6は、固定枠5をブレード本体3に係脱可能に締結する締結具であり、例えば雄ねじである。ブレード本体3には、ブレード本体3の窪みに嵌められた固定枠5の貫通孔5aと同軸に位置するよう配置された雌ねじ穴3bが形成されており、締結具6はこの雌ねじ穴3bと螺合している。
【0028】
このように、固定枠5の四隅が締結具6によってブレード本体3に締結されることによって、覆い体7の外周縁は固定枠5によって上方からブレード本体3に押さえつけられ、覆い体7は、ブレード本体3に固定され、ブレード本体3に配置される。これによって、パッド4は、覆い体7によって、揺動姿勢から基準姿勢に向かって付勢され、基準姿勢をとるように固定枠5によって保持される。また、覆い体7の内周縁72は、パッド本体40よりも径の小さい支柱44と接触しているので、パッド本体40の径方向における覆い体7の外周縁から内周縁72に至る部分までの長さを大きくとることができ、覆い体7は大きく変形することができるようになっている。これによって、パッド本体40を大きく傾斜させることができる。
【0029】
そして、この状態において、パッド内流路45とブレード本体内流路31との間に介在する第2真空室30の上面は、覆い体7によって閉塞され、第1真空室42、パッド本体内流路45a、支柱内流路45b、第2真空室30、及びブレード本体内流路31は一続きの流路である吸引路10を成す。換言すると、吸引路10は、第1真空室42から延び、パッド本体40の底壁部43、支柱44、第2真空室30及びブレード本体内流路31をこの順に通る。そして、吸引路10は、ロボットアーム2内に設けられた管路を介して、真空源8に接続される。そして、真空源8の吸引動作によって、第1真空室42の気体を吸引することができる。吸引路10には開閉弁が設けられ、開閉弁が管路を開放することによって第1真空室42内の気体の吸引を行うことができる。また、開閉弁が管路を閉塞することによって第1真空室42の気体の吸引を停止することができる。真空源8は例えば真空ポンプであり、基板搬送ロボット1の近傍又は内部に配置されている。
【0030】
また、締結具6をブレード本体3から取り外し、その上で固定枠5をブレード本体3から取り外すことによって、パッド4及び覆い体7を取り外すことができる。したがって、パッド4を容易に交換することができる。
【0031】
このように構成された基板吸引保持構造100は、
図6に示すように、基板支持面41aに反った基板110を載置すると、突起58の下端を支点として、パッド本体40が
図4に示す基準姿勢から傾斜姿勢に傾斜し、基板支持面41aを基板110の下面のパッド当接領域111に沿わせることができ、基板支持面41aとパッド当接領域111との間に隙間が生じることを防止することができる。その結果、真空源8が吸引動作を行うことによって、反った基板110をパッド本体40に確実に吸着させることができる。その結果、ロボットアーム2を高速で動かして基板110を搬送し、保持した基板110に大きな加速度が作用しても、基板110の位置ずれが生じることを防止することができる。その結果、反った基板110の搬送効率を向上させることができる。
【0032】
また、上述の通り、接触部41の基板支持面41aからロボットアーム2まで連続する電気路が形成されており、基板110のパッド当接領域111が基板支持面41aに当接することによって、基板110に帯電している静電気は、支柱44の底面56と第2真空室30の底面66との接触部分を介してブレード本体3に拡散され、更にはロボットアーム2に拡散される。これによって、搬送時のパーティクルの付着を防止することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0033】
更に、パッド本体40は、基板吸引保持構造100の中心を中心とする径方向D1及びこの径方向D1と直交する方向D2に揺動可能に構成されているので、反り方が一様ではない基板110を保持することができる。
【0034】
また、反った基板110を保持する際に基板110の端を保持部材で押圧保持する所謂エッジグリップ型のハンドで保持しようとすると、基板110がさらに反って、保持力が低下してしまう場合があったが、基板吸引保持構造100は、基板110が吸引して保持されるので、反った基板110をより確実に保持することができる。
【0035】
(実施の形態2)
以下では実施の形態2の構成について、実施の形態1との相違点を中心に述べる。
図12は、実施の形態2に係る基板吸引保持構造の構成例を示す断面図である。
【0036】
上記実施の形態1において、支柱44は、パッド本体40に設けられていた。これに対し、本実施の形態において、
図12に示すように、支柱244は、第2真空室30に設けられている。具体的には、支柱244は、下端が第2真空室30に固定されている。そして、支柱244は、第2真空室30の底面66から上方に延びる外周面251と外周面251に連なる外周縁257を有する上面256とを有する。上面256には、外周縁257から内側に向かうに従って上方に突出する又は外周縁257の内側の領域の一部が上方に突出する突起258が形成されている。
【0037】
そして、パッド本体240の底壁部243は、底面が外周縁から中央部に向かうに従って上方に窪む。そして、支柱244の突起258に底壁部243の底面の中央部が載置され、支柱244がパッド本体240を支持する。これによって、パッド本体240は、上記実施に形態1と同様に、基準姿勢と傾斜姿勢との間で揺動可能に支持される。このようにして、支柱244は、パッド本体240の接触部41を第2真空室30の上でブレード本体3の上面(平坦面3a)よりも上方に位置させてパッド本体240を1点支持する。
【0038】
また、パッド本体内流路245aは、底壁部243の底面に開口し、この開口において第2真空室30に接続される。そして、第1真空室42に連なるパッド本体内流路245a、第2真空室30、及びブレード本体内流路31が吸引路210を成す。換言すると、吸引路210は、第1真空室42から延び、パッド本体240の底壁部243、第2真空室30及びブレード本体3をこの順に通る。そして、吸引路210は、ロボットアーム2内に設けられた管路を介して、真空源8に接続される。
【0039】
そして、パッド本体240の外周面の上下方向における中間部には凹溝252が形成されている。この凹溝252に覆い体7の内周縁72が嵌められ、覆い体7がパッド本体240を揺動姿勢から基準姿勢に向かって付勢し、パッド本体240が基準姿勢をとるように保持している。
【0040】
上記説明から、当業者にとっては、本実施の形態の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【符号の説明】
【0041】
3 ブレード本体
7 覆い体
8 真空源
10 吸引路
30 第2真空室
40 パッド本体
41 接触部
42 第1真空室
43 (第1真空室の)底壁部
44 支柱
65 (第1真空室の)底面
100 基板吸引保持構造