IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボレアリス エージーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】長鎖分岐プロピレンポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/00 20060101AFI20231011BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20231011BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08F8/00
C08F10/06
C08L23/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021577875
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 EP2020067136
(87)【国際公開番号】W WO2021001175
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】19184437.2
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジンボ
(72)【発明者】
【氏名】ガーライトナー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】バーンライトナー クラウス
(72)【発明者】
【氏名】クリムケ カトヤ エレン
(72)【発明者】
【氏名】ベルガー フリートリヒ
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-532415(JP,A)
【文献】特表2017-532422(JP,A)
【文献】特表2017-532425(JP,A)
【文献】特表2018-503738(JP,A)
【文献】特開2009-275123(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108715658(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/00-8/50
C08F 10/06
C08L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長鎖分岐プロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー組成物であって、
前記長鎖分岐プロピレンポリマーが、
a)0.8~6.0g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)と、
b)前記長鎖分岐プロピレンポリマーの総重量量に基づいて、0.80重量%以下の量の熱キシレン不溶(XHU)画分と、
c)少なくとも160.0℃の融解温度Tmと、
d)5.0~30.0cN未満のF30溶融強度と、
e)少なくとも108℃の熱変形温度(HDT)と
を有するプロピレンポリマー組成物。
【請求項2】
前記長鎖分岐プロピレンポリマーが、120.0℃超の結晶化温度Tcを有する請求項1に記載のプロピレンポリマー組成物。
【請求項3】
前記長鎖分岐プロピレンポリマーが、少なくとも190mm/sのV30溶融伸展性を有する請求項1又は請求項2に記載のプロピレンポリマー組成物。
【請求項4】
前記長鎖分岐プロピレンポリマーが、1900MPa超の曲げ弾性率を有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物の製造方法であって、
a)重合触媒の存在下でプロピレンを重合して、プロピレンポリマーを生成する工程と、
b)前記プロピレンポリマーを回収する工程と、
c)前記プロピレンポリマーに長鎖分岐を導入するために、過酸化物の存在下で前記プロピレンポリマーを押し出す工程と、
d)前記プロピレンポリマー組成物を回収する工程と
を含む方法。
【請求項6】
前記重合触媒が、Ziegler-Natta触媒である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
回収された前記プロピレンポリマーが、100~1200μmのメジアン粒子サイズd50、及び/又は300~2500μmのトップカット粒子サイズd95を有する請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
回収された前記プロピレンポリマーが、プロピレンホモポリマーである請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
回収された前記プロピレンポリマーが、回収された前記プロピレンポリマーの総重量量に基づいて、3.0重量%未満の量の冷キシレン可溶(XCS)画分を有する請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記プロピレンポリマー及び前記過酸化物を溶融混合することが、溶融混合装置内で、160~280℃の範囲のバレル温度で溶融混合される請求項5から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記過酸化物が160~280℃のバレル温度において6分以下の半減期(t1/2)を有し、かつ/又は前記過酸化物が、プロピレンポリマー100重量部に対して0.1~5.0重量部(ppw)の量で前記プロピレンポリマーに添加される請求項5から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記長鎖分岐が、官能性不飽和化合物の不存在下で前記プロピレンポリマーに導入される請求項5から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程d)の回収された前記プロピレンポリマー組成物が、工程b)の回収された前記プロピレンポリマーと比較して、より低いメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する請求項5から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物を含む物品。
【請求項15】
物品の製造のための、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長鎖分岐プロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー組成物、プロピレンポリマーの反応器後の改質によってそのようなプロピレンポリマー組成物を調製するためのプロセス、そのようなプロピレンポリマー組成物を含む物品、物品の製造のためのそのようなプロピレンポリマー組成物の使用、及びプロピレンポリマー組成物の溶融強度を高めるための長鎖分岐プロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー組成物を調製するためのそのようなプロセスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンのホモポリマー及びコポリマーは、包装、繊維製品、自動車、実験装置、パイプ等の多くの用途に適している。これらのポリマーは、例えば、高い弾性率、引張強度、剛性及び耐熱性等の様々な特性を呈する。これらの特性により、ポリプロピレンは、例えばフィルム、発泡体、成形品又は自動車部品等の多くの用途において、非常に魅力的な材料となっている。
【0003】
これらの用途では、軽量構造は永遠のテーマであり、材料の使用量を削減するために、より高い剛性を持つソリューションが求められている。これはコスト面から導かれているだけでなく、原材料の消費量を削減し、環境へのダメージを軽減するためでもある。物質密度を下げるための最も適切なアプローチは発泡であるが、しかしながら、直鎖構造のプロピレンポリマーはそれにはあまり適していない。別の重要な特徴は耐熱性である。多くの用途、とりわけ成形分野では、成形品に熱い食品を詰めるために高い耐熱性が要求され、それゆえ、熱変形温度(HDT)が非常に重要である。より高いHDTは、とりわけ包装の分野での、とりわけ成形用途には明らかに有益である。
【0004】
この目的は、ポリプロピレンを、例えば高溶融強度(HMS)プロセス等の反応器後の改質プロセスに供することにより達成することができる。このプロセスでは、ポリプロピレン材料に分岐が生じ、長鎖分岐ポリプロピレンが得られる。この長鎖分岐は、一般に溶融強度の向上につながる。それゆえ、これらの長鎖分岐ポリプロピレンは、発泡体の製造によく用いられる。
【0005】
既存の長鎖分岐ポリプロピレン及びその組成物の分野における課題は、それらの製造が一般にゲルの形成につながることである。ゲルの形成は、ポリプロピレンの望ましくない低い溶融強度、限られた劣悪な機械的性能、及びそれに基づく物品の劣悪な外観をもたらす。ゲルの形成は、いわゆる熱キシレン不溶(XHU)画分によって反映される。従って、高い溶融強度を有するポリプロピレンを、ゲル含有量に関して改良することが望まれている。このような改良により、そのようなポリプロピレンを使用した場合に得られる物品は、改良された剛性、より高い耐熱性、及び優れた外観等の改良された非常に望ましい特性を有することになる。
【0006】
国際公開第2014/0016205号パンフレット(BOREALIS AG(ボレアリス)名義)は、過酸化物及びブタジエンを使用して長鎖分岐ポリプロピレン(b-PP)材料を作る、高溶融強度(HMS)の反応器後の改質プロセスを記載する。国際公開第2014/0016205号パンフレットの長鎖分岐ポリプロピレンは、ゲル含有量が低減された発泡体を調製するために使用される。国際公開第2014/0016205号パンフレットの長鎖分岐ポリプロピレンの調製には、特定のポリプロピレンがベース材料として使用される。
欧州特許出願公開第3 018 153A1号明細書及び欧州特許出願公開第3 018 154A1号明細書も、過酸化物及びブタジエンを使用して、フィルム及び発泡体用途の長鎖分岐ポリプロピレン(b-PP)材料を作る、高溶融強度(HMS)の反応器後の改質プロセスを記載する。この高溶融強度(HMS)の反応器後の改質プロセスで改質されるプロピレンポリマーは、フタル酸類を含まない触媒系の存在下で重合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2014/0016205号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第3 018 153A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3 018 154A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
所望のメルトフローレート(MFR)範囲を有する長鎖分岐プロピレンポリマー組成物を得るためには、長鎖分岐ポリプロピレンの調製のために、非常に低いMFRを有するベースポリプロピレン材料を使用しなければならないことが、これらのプロセスについて開示されている。というのも、これらの文献に記載されている改質プロセスによって、長鎖分岐プロピレンポリマー組成物のMFRは、ベースポリプロピレン材料と比較して一般に増加するからである。この方法の短所のいくつかは、ベースポリプロピレンの特定のMFR範囲に必要な制約であり、さらに、長鎖分岐ポリプロピレン組成物の任意の所望のMFRに到達するための制限である。それゆえ、長鎖分岐ポリプロピレン材料の特性、より具体的にはゲル含有量を改善し、結果として得られる長鎖分岐ポリプロピレン組成物の剛性及び耐熱性等の機械的特性を改善する必要性が依然として存在する。
【0009】
驚くべきことに、改変された高溶融強度(HMS)の反応器後の改質プロセスによって、耐熱性及び機械的特性の所望の改善を示す長鎖分岐プロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー組成物を製造できるということが見出された。好ましくは、その改変されたプロセスに導入される慎重に設計された反応器で製造されたプロピレンポリマーは、上記特性を有するプロピレンポリマー組成物を得ることに寄与することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、長鎖分岐プロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー組成物であって、
a)0.8~6.0g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)と、
b)上記プロピレンポリマー組成物の総重量量に基づいて、0.80重量%以下の量の熱キシレン不溶(XHU)画分と、
c)少なくとも160.0℃の融解温度Tmと、
d)5.0~30.0cN未満のF30溶融強度と、
e)少なくとも108℃の熱変形温度(HDT)と
を有するプロピレンポリマー組成物に関する。
【0011】
本発明はさらに、プロピレンポリマー組成物の製造方法であって、
a)重合触媒の存在下でプロピレンを重合して、プロピレンポリマーを生成する工程と、
b)このプロピレンポリマーを回収する工程と、
c)このプロピレンポリマーに長鎖分岐を導入するために、過酸化物の存在下で上記プロピレンポリマーを押し出す工程と、
d)このプロピレンポリマー組成物を回収する工程と、
を含む方法に関する。
【0012】
なおさらに、本発明は、上で又は以降に規定されるプロピレンポリマー組成物を含む物品に関する。
【0013】
加えて、本発明は、物品の製造のための、上で又は以降に規定されるプロピレンポリマー組成物の使用に関する。
【0014】
最後に、本発明は、プロピレンポリマー組成物の溶融強度を高めるための、上で又は以降に規定される方法の使用に関する。
【0015】
定義
本発明によれば、表現「プロピレンホモポリマー」は、実質的に、すなわち、少なくとも99.0重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも99.8重量%、例えば少なくとも99.9重量%のプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。別の実施形態では、プロピレン単位のみが検出可能であり、すなわち、プロピレンのみが重合されている。
【0016】
本発明によれば、用語「フタル酸」又は「フタル酸化合物」は、フタル酸(CAS番号88-99-3)、その脂肪族アルコール、脂環式アルコール及び芳香族アルコールとのモノエステル並びにジエステル、並びに無水フタル酸を指す。
【0017】
本明細書では、異なる記載がないかぎり、百分率による割合は、通常、重量%で与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
プロピレンポリマー組成物
本発明は、長鎖分岐プロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー組成物であって、
a)0.8~6.0g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)と、
b)上記プロピレンポリマー組成物の総重量量に基づいて、0.80重量%以下の量の熱キシレン不溶(XHU)画分と、
c)少なくとも160.0℃の融解温度Tmと、
d)5.0~30.0cN未満のF30溶融強度と、
e)少なくとも108℃の熱変形温度(HDT)と
を有するプロピレンポリマー組成物に関する。
【0019】
当該プロピレンポリマー組成物は、上記長鎖分岐プロピレンポリマーを、添加剤及び/又はポリマーから選択される他の化合物と一緒に含むことができる。
当該プロピレンポリマー組成物は、好ましくは、唯一のポリマー成分としての上記長鎖分岐プロピレンポリマーと、任意の添加剤とを含み、より好ましくは、唯一のポリマー成分としての上記長鎖分岐プロピレンポリマーと、任意の添加剤とからなる。
【0020】
本発明のプロピレンポリマー組成物に使用される例示的な添加剤としては、酸化防止剤(例えば立体的にヒンダードな(立体障害の大きい)フェノール類、ホスファイト/ホスホナイト、硫黄含有酸化防止剤、アルキルラジカル捕捉剤、芳香族アミン、ヒンダードアミン安定剤、若しくはそれらのブレンド)、金属不活性化剤(例えばIrganox(登録商標)MD 1024)、又は紫外線安定剤(例えばヒンダードアミン光安定剤)等の安定剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の代表的な添加剤は、帯電防止剤又は防曇剤等の改質剤(例えばエトキシル化されたアミン及びアミド、若しくはグリセリンエステル等)、酸捕捉剤(例えばステアリン酸Ca)、発泡剤、付着剤(cling agent)(例えばポリイソブテン)、滑剤及び樹脂(例えばアイオノマーワックス、ポリエチレンワックス及びエチレンコポリマーワックス、フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)ワックス、モンタン系ワックス、フッ素系化合物、又はパラフィンワックス)、核形成剤(例えばタルク、安息香酸塩、亜リン酸系化合物、ソルビトール、ノニトール系化合物、又はアミド系化合物)、並びにスリップ剤及びブロッキング防止剤(例えばエルカミド(エルカ酸アミド)、オレイン酸アミド、タルク、天然シリカ、及び合成シリカ又はゼオライト)、並びにこれらの混合物である。
一般に、当該プロピレンポリマー組成物中の添加剤の総量は、当該プロピレンポリマー組成物の総重量に基づいて、5.0重量%以下、好ましくは1.0重量%以下、例えば0.005~0.995重量%の範囲内、より好ましくは0.8重量%以下である。
【0021】
本発明のプロピレンポリマー組成物に使用するポリマーは、好ましくは熱可塑性ポリマーを含む。
好ましくは、本発明に係るプロピレンポリマー組成物中の添加剤、ポリマー及び/又はこれらの組み合わせの総量は、本発明に係るプロピレンポリマー組成物の総重量に基づいて、5.0重量%以下、より好ましくは0.995重量%以下、例えば0.005~1.0重量%の範囲内である。
【0022】
好ましくは、当該プロピレンポリマー組成物は、5.0重量%を超える量のフィラー及び/又は強化剤を含有しない。1つの実施形態では、当該プロピレンポリマー組成物は、フィラー及び/又は強化剤を含有しない。
【0023】
好ましいわけではないが、本発明に係るプロピレンポリマー組成物は、フィラー及び/又は強化剤をさらに含むことができる。本発明に係る長鎖分岐ポリプロピレン組成物(b-PP-C)に使用されるフィラーとしては、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、クレー、カオリン、シリカ、ガラス、ヒュームドシリカ、マイカ、ウォラストナイト、長石、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ三水和物等の水和アルミナ、ガラス微小球、セラミック微小球、木粉、大理石粉、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、及び/又は二酸化チタンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に係るプロピレンポリマー組成物に使用される強化剤としては、鉱物繊維、ガラス繊維、炭素繊維、有機繊維及び/又はポリマー繊維が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
好ましくは、本発明に係るプロピレンポリマー組成物中の添加剤、ポリマー、フィラー、強化剤及び/又はこれらの組み合わせの総量は、本発明に係るプロピレンポリマー組成物の総重量に基づいて、5.0重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下、例えば0.005~0.995重量%の範囲である。
【0025】
当該プロピレンポリマー組成物は、0.8~6.0g/10分、好ましくは0.9~5.5g/10分、より好ましくは1.0~5.0g/10分、最も好ましくは1.1~2.0g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
【0026】
さらに、当該プロピレンポリマー組成物は、当該プロピレンポリマー組成物の総重量量に基づいて、0.80重量%以下、好ましくは0.65重量%以下、より好ましくは0.50重量%以下、最も好ましくは0.30重量%以下の量の熱キシレン不溶(XHU)画分を有する。下限として、いくつかの実施形態では、当該プロピレンポリマー組成物中に熱キシレン不溶(XHU)画分は検出されない。
【0027】
なおさらに、当該プロピレンポリマー組成物は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、少なくとも160.0℃、好ましくは161.0~175.0℃、より好ましくは162.0~172.0℃、最も好ましくは164.0~170.0℃の融解温度Tmを有する。
【0028】
加えて、当該プロピレンポリマー組成物は、Rheotens(レオテンス)法によって決定される、5.0~30.0cN未満、好ましくは6.0~28.0cN、より好ましくは7.0~26.0cN、最も好ましくは10.0~21.0cNのF30溶融強度を有する。
【0029】
さらに、当該プロピレンポリマー組成物は、ISO 75 Bに準拠して決定される、少なくとも108℃、好ましくは109~130℃、より好ましくは110~128℃、最も好ましくは112~125℃の熱変形温度(HDT)を有する。
【0030】
当該プロピレンポリマー組成物が、DSCによって決定される、120.0℃超、より好ましくは122.0~145.0℃、さらにより好ましくは126.0~140.0℃、最も好ましくは129.0~138.0℃の結晶化温度Tcを有することがさらに好ましい。
【0031】
加えて、当該プロピレンポリマー組成物は、DSCによって決定される、好ましくは、106J/g超、より好ましくは108~125J/g、さらにより好ましくは109~123J/g、最も好ましくは110~120J/gの融解エンタルピーHmを有する。
【0032】
さらに、当該プロピレンポリマー組成物は、レオテンス法によって決定される、好ましくは少なくとも190mm/s、より好ましくは200~500mm/s、さらにより好ましくは210~400mm/s、最も好ましくは210~300mm/sのV30溶融伸展性(melting extensibility)を有する。
【0033】
なおさらに、当該プロピレンポリマー組成物は、好ましくは、当該プロピレンポリマー組成物の総重量量に基づいて、3.0重量%未満、好ましくは0.5~2.8重量%、より好ましくは0.8~2.6重量%、最も好ましくは1.0~2.4重量%の量の冷キシレン可溶(XCS)画分を有する。
加えて、当該プロピレンポリマー組成物は、ISO 178に準拠して決定される、好ましくは1900MPa超、より好ましくは少なくとも1925MPa、さらにより好ましくは少なくとも1950MPa、最も好ましくは1975MPa~2500MPaの曲げ弾性率を有する。
【0034】
本発明に係るプロピレンポリマー組成物は、驚くべきことに、そのF30溶融強度及びV30溶融伸展性に見られる良好な溶融強度、その融解温度、融解エンタルピー及び結晶化温度及び低いXCS画分量に見られる高い結晶性、低いXHU画分量で示される低いゲル含有量、曲げ弾性率に見られる高い剛性、並びに熱変形温度(HDT)で示される改善された耐熱性の特性の改良されたバランスを兼ね備えている。それゆえ、本発明に係るプロピレンポリマー組成物は、とりわけ軽量用途、自動車用途、及び食品包装用途等の包装用途におけるフィルム、発泡体、及び成形品にとりわけ適用できる。
【0035】
上で又は以降に規定される本発明に係るプロピレンポリマー組成物は、プロピレンポリマーに長鎖分岐を導入する改変された高溶融強度(HMS)の反応器後の改質プロセスで調製される。
【0036】
プロセス
本発明はさらに、プロピレンポリマー組成物の製造方法であって、
a)重合触媒の存在下でプロピレンを重合して、プロピレンポリマーを生成する工程と、
b)このプロピレンポリマーを回収する工程と、
c)このプロピレンポリマーに長鎖分岐を導入するために、過酸化物の存在下で上記プロピレンポリマーを押し出す工程と、
d)このプロピレンポリマー組成物を回収する工程と
を含む方法に関する。
【0037】
これにより、上記プロセスから得られるプロピレンポリマー組成物は、好ましくは、上で又は以降に規定される本発明に係るプロピレンポリマー組成物として規定される。
【0038】
プロピレンポリマーの重合
工程a)で重合されるプロピレンポリマーは、プロピレンのホモポリマー又はプロピレンのコポリマーであることができる。上記プロピレンポリマーがプロピレンのホモポリマーであることがとりわけ好ましい。
【0039】
上記プロピレンポリマーは、直列構成であり異なる反応条件で動作する複数の反応器を用いて、逐次工程プロセスで製造することができる。その結果、特定の反応器で調製された各画分は、製造されるプロピレンポリマーの種類(プロピレンのホモポリマー又はコポリマー)に応じて、独自の分子量分布及び/又はコモノマー含有量分布を有することができる。これらの画分からの分布曲線(分子量又はコモノマー含有量)を重ね合わせて、最終的なポリマーの分子量分布曲線又はコモノマー含有量分布曲線を得ると、これらの曲線は、2つ以上の極大値を示すか、又は個々の画分の曲線と比較して少なくともはっきりと幅が広がることがある。このように2つ以上の連続的な工程を経て製造されるポリマーは、工程数に応じてバイモーダル(二峰性)又はマルチモーダル(多峰性)と呼ばれる。従って、上記プロピレンのホモポリマー又はコポリマーは、製造されるプロピレンポリマーの種類(プロピレンのホモポリマー又はコポリマー)に応じて、分子量及び/又はコモノマー含有量の観点から、マルチモーダル、例えばバイモーダルであってもよい。
【0040】
上記プロピレンコポリマーが、コモノマー含有量から見て、マルチモーダル性、例えばバイモーダル性である場合には、個々の画分が材料の特性に影響を与える量で存在することが理解される。従って、これらの各画分は、プロピレンコポリマーに基づいて少なくとも10重量%の量で存在することが理解される。従って、特にコモノマー含有量の観点からバイモーダル系の場合、2つの画分の分割(比)は、好ましくは40:60~60:40、例えば約50:50である。
【0041】
上記プロピレンポリマーを製造するのに適した重合プロセスは、先行技術で知られており、少なくとも1つの重合段階を含み、重合は通常、溶液、スラリー、バルク(塊状)又は気相で行われる。典型的には、重合プロセスは、追加の重合段階又は反応器を含む。1つの特定の実施形態では、当該プロセスは、少なくとも1つのバルク反応器ゾーン及び少なくとも1つの気相反応器ゾーンを含み、各ゾーンは少なくとも1つの反応器を含み、すべての反応器はカスケード状に配置される。1つの特に好ましい実施形態では、重合プロセスは、少なくとも1つのバルク反応器と少なくとも1つの気相反応器とを含み、これらがこの順序で配置されている。いくつかの好ましいプロセスでは、そのプロセスは1つのバルク反応器と少なくとも2つ、例えば2つ又は3つの気相反応器とを含む。当該プロセスは、前反応器及び後反応器をさらに含んでいてもよい。前反応器は、典型的には予備重合反応器を含む。この種のプロセスでは、ポリマーの特定の特性を実現するために、より高い重合温度を使用することが好ましい。これらのプロセスにおける典型的な温度は、70℃以上、好ましくは80℃以上、さらには85℃以上である。上述のような高い重合温度は、反応器カスケードの一部又はすべての反応器に適用することができる。
【0042】
好ましい多段階プロセスは、Borealisによって開発されたもの(BORSTAR(登録商標)技術として公知)等の「ループ-気相」プロセスであり、例えば欧州特許出願公開第0 887 379号明細書、国際公開第92/12182号パンフレット、国際公開第2004/000899号パンフレット、国際公開第2004/111095号パンフレット、国際公開第99/24478号パンフレット、国際公開第99/24479号パンフレット又は国際公開第00/68315号パンフレット等の特許文献に記載されている。さらなる好適なスラリー-気相プロセスは、Basell(ベーセル)のSpheripol(登録商標)プロセスである。
【0043】
好適には、上記プロピレンポリマーを重合するために、特定のタイプのZiegler-Natta(ツィーグラー・ナッタ)触媒が使用される。Ziegler-Natta触媒の内部ドナーが非フタル酸化合物であることがとりわけ好ましい。好ましくは、触媒の調製全体を通してフタル酸化合物は使用されず、従って、最終的な触媒はいかなるフタル酸化合物も含有しない。それゆえ、工程a)で重合されたプロピレンポリマーは、フタル酸化合物を含まない。
【0044】
本発明で使用される触媒は、Ziegler-Natta触媒のグループに属する。一般にこれらの触媒は、チタンのようなIUPAC2013版で定義されている第4族~第6族の遷移金属の1種以上の化合物、さらにマグネシウム化合物のような第2族の金属化合物、及び内部ドナー(ID)を含む。本発明では、内部ドナー(ID)は、非フタル酸化合物であるように選択され、このようにして、触媒は、望ましくないフタル酸化合物を完全に含まない。さらに、上記固体触媒は、シリカ又はMgClのような外部担体材料を含まないことが好ましく、従って、上記触媒は自己担持型である。
【0045】
この固体触媒は、以下の一般的な手順、
a)以下の
)第2族金属化合物と、ヒドロキシル部分に加えて少なくとも1つのエーテル部分を含むアルコール(A)との反応生成物である少なくとも第2族金属アルコキシ化合物(Ax)であって、任意に有機液体反応媒体中にあってもよい少なくとも第2族金属アルコキシ化合物(Ax)、又は
)第2族金属化合物と、上記アルコール(A)及び式ROHの一価アルコール(B)のアルコール混合物との反応生成物である少なくとも第2族金属アルコキシ化合物(Ax’)であって、任意に有機液体反応媒体中にあってもよい少なくとも第2族金属アルコキシ化合物(Ax’)、又は
)上記第2族金属アルコキシ化合物(Ax)、及び第2族金属化合物と上記一価アルコール(B)との反応生成物である第2族金属アルコキシ化合物(Bx)の混合物であって、任意に有機液体反応媒体中にあってもよい混合物、又は
)式M(OR(OR2-n-mの第2族金属アルコキシ化合物、若しくは第2族アルコキシドM(ORn’2-n’とM(ORm’2-m’の混合物であって、Mは第2族金属であり、Xはハロゲンであり、R及びRは、2~16の炭素原子を有する異なるアルキル基であり、0≦n<2、0≦m<2及びn+m+(2-n-m)=2であり、ただし、n及びmが同時に0になることはなく、0<n’≦2及び0<m’≦2である第2族金属アルコキシ化合物若しくは混合物
の溶液を提供する工程と、
b)工程a)からの上記溶液を、第4族~第6族の遷移金属の少なくとも1種の化合物に加える工程と、
c)固体触媒成分粒子を得る工程と、
工程c)の前の少なくとも1つの工程で、非フタル酸系の内部電子ドナー(ID)を添加する工程と
で得ることができる。
【0046】
内部ドナー(ID)又はその前駆体は、好ましくは、工程a)の溶液を添加する前に、工程a)の溶液に、又は遷移金属化合物に添加される。
【0047】
上記の手順によれば、上記固体触媒は、物理的条件、とりわけ工程b)及びc)で使用される温度に応じて、沈殿法又はエマルション-固化法によって得ることができる。エマルションは、液-液二相系とも呼ばれる。どちらの方法(沈殿法又はエマルション-固化法)でも、触媒の化学的性質は同じである。
【0048】
沈殿法では、工程a)の溶液と工程b)の少なくとも1種の遷移金属化合物との組み合わせを行い、反応混合物全体を少なくとも50℃で、より好ましくは55~110℃の温度範囲で、より好ましくは70~100℃の温度範囲で保持して、固体触媒成分粒子の形態で触媒成分の完全な沈殿が確保される(工程c)。
【0049】
エマルション-固化法では、工程b)において、工程a)の溶液が、典型的には、より低い温度、例えば-10℃~50℃未満、好ましくは-5℃~30℃で、少なくとも1種の遷移金属化合物に添加される。エマルションの撹拌中、温度は、通常、-10~40℃未満、好ましくは-5~30℃に保たれる。エマルションの分散相の液滴が、活性触媒組成物を形成する。液滴の固化(工程c)は、好適には、エマルションを70℃~150℃、好ましくは80℃~110℃の温度に加熱することによって行われる。エマルション-固化法によって調製された触媒は、本発明で好ましく使用される。
工程a)において好ましくは、a)又はa)の溶液、すなわち(Ax’)の溶液又は(Ax)及び(Bx)の混合物の溶液が使用される。
【0050】
好ましくは、上記第2族金属はマグネシウムである。マグネシウムアルコキシ化合物(Ax)、(Ax’)、(Bx)は、上述のようにマグネシウム化合物をアルコール(複数可)と反応させることにより、触媒調製プロセスの第1工程である工程a)において、その場で調製することができる。別の選択肢は、上記マグネシウムアルコキシ化合物を別個に調製するか、又は既製のマグネシウムアルコキシ化合物として市販されているものであってもよく、本発明の触媒調製プロセスにおいてそのまま使用することができる。
【0051】
アルコール(A)の具体的な例は、グリコールモノエーテルである。好ましいアルコール(A)は、C~Cグリコールモノエーテルであり、このC~Cグリコールモノエーテルにおいてエーテル部分は、2~18個の炭素原子、好ましくは4~12個の炭素原子を含む。好ましい例は、2-(2-エチルヘキシルオキシ)エタノール、2-ブチルオキシエタノール、2-ヘキシルオキシエタノール及び1,3-プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-ブトキシ-2-プロパノールであり、2-(2-エチルヘキシルオキシ)エタノール及び1,3-プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-ブトキシ-2-プロパノールが特に好ましい。
【0052】
例示的な一価アルコール(B)は、構造式ROHで表され、Rは直鎖又は分岐したC~C16のアルキル残基、好ましくはC~C10のアルキル残基、より好ましくはC~Cのアルキル残基である。最も好ましい一価のアルコールは、2-エチル-1-ヘキサノール又はオクタノールである。
【0053】
好ましくは、Mgアルコキシ化合物(Ax)及び(Bx)の混合物、又はアルコール(A)及び(B)の混合物がそれぞれ使用され、Bx:Ax又はB:Aのモル比が10:1~1:10、より好ましくは6:1~1:6、さらにより好ましくは5:1~1:3、最も好ましくは5:1~3:1となるように採用される。
【0054】
上記マグネシウムアルコキシ化合物は、上記で規定されたアルコール(複数可)と、ジアルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムアルコキシド、マグネシウムジアルコキシド、アルコキシマグネシウムハライド、アルキルマグネシウムハライドから選択されるマグネシウム化合物との反応生成物であってもよい。さらに、マグネシウムジアルコキシド、マグネシウムジアリールオキシド、マグネシウムアリールオキシハライド、マグネシウムアリールオキシド及びマグネシウムアルキルアリールオキシドを用いることができる。マグネシウム化合物中のアルキル基は、類似又は異なるC~C20アルキル基、好ましくはC~C10アルキル基であることができる。使用される場合の代表的なアルキルアルコキシマグネシウム化合物は、エチルマグネシウムブトキシド、ブチルマグネシウムペントキシド、オクチルマグネシウムブトキシド及びオクチルマグネシウムオクトキシドである。好ましくは、ジアルキルマグネシウムが使用される。最も好ましいジアルキルマグネシウムは、ブチルオクチルマグネシウム又はブチルエチルマグネシウムである。
【0055】
マグネシウム化合物が、アルコール(A)及びアルコール(B)に加えて、式R”(OH)の多価アルコール(C)と反応して、上記マグネシウムアルコキシド化合物を得ることも可能である。使用される場合、好ましい多価アルコールは、R”が直鎖、環状又は分岐したC~C10の炭化水素残基であり、mが2~6の整数であるアルコールである。
【0056】
従って、工程a)のマグネシウムアルコキシ化合物は、マグネシウムジアルコキシド、ジアリールオキシマグネシウム、アルキルオキシマグネシウムハライド、アリールオキシマグネシウムハライド、アルキルマグネシウムアルコキシド、アリールマグネシウムアルコキシド及びアルキルマグネシウムアリールオキシド、又はマグネシウムジハライドとマグネシウムジアルコキシドの混合物からなる群から選択される。
【0057】
本発明の触媒の調製に採用される溶媒は、5~20個の炭素原子、より好ましくは5~12個の炭素原子を有する芳香族及び脂肪族の直鎖、分岐、及び環状の炭化水素、又はこれらの混合物の中から選択されてもよい。適切な溶媒としては、ベンゼン、トルエン、クメン、キシロール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びノナンが挙げられる。ヘキサン及びペンタンが特に好ましい。
【0058】
マグネシウムアルコキシ化合物を調製するための反応は、40~70℃の温度で実施されてれもよい。使用するMg化合物及びアルコール(複数可)に応じて、最も適した温度を選択する方法は、当業者であれば知っている。
IUPAC2013版で定義されている第4族~第6族の遷移金属化合物は、好ましくはチタン化合物であり、最も好ましくはTiClのようなハロゲン化チタンである。
【0059】
本発明で使用される触媒の調製に使用される非フタル酸系内部ドナー(ID)は、好ましくは、非フタル酸系カルボン酸(二酸)の(ジ)エステル、1,3-ジエーテル、これらの誘導体及び混合物から選択される。とりわけ好ましいドナーは、モノ不飽和非フタル酸系ジカルボン酸のジエステル、特に、マロン酸エステル、マレイン酸エステル、コハク酸エステル、シトラコン酸エステル、グルタル酸エステル、シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸エステル及び安息香酸エステル並びにそれらのいずれかのものの誘導体並びに/又はそれらのいずれかのものの混合物を含む群に属するエステルである。好ましい例は、例えば、置換されたマレイン酸エステル及びシトラコン酸エステルであり、最も好ましいのはシトラコン酸エステルである。
【0060】
これに関して、及び本明細書中の以降で、誘導体という用語は、置換された化合物を含む。
【0061】
エマルション-固化法では、単純に撹拌することと、任意に(さらなる)溶媒及び/又は添加剤、例えば乱流最小化剤(TMA)及び/又は乳化剤及び/又は、界面活性剤のような、エマルション安定剤を添加することとにより、二相の液液系が形成されてもよく、これらの溶媒及び/又は添加剤は当該技術分野で知られている方法で使用される。これらの溶媒及び/又は添加剤は、エマルションの形成を容易にするため、及び/又はエマルションを安定化させるために使用される。好ましくは、界面活性剤はアクリルポリマー又はメタクリルポリマーである。特に好ましいのは、例えばポリ(ヘキサデシル)メタクリレート、ポリ(オクタデシル)メタクリレート等の非分岐のC12~C20(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物である。使用される場合、乱流最小化剤(TMA)は、好ましくは、6~20個の炭素原子を有するα-オレフィンモノマーのポリマー、例えばポリオクテン、ポリノネン、ポリデセン、ポリウンデセン若しくはポリドデセン、又はこれらの混合物から選択される。最も好ましいのはポリデセンである。
【0062】
沈殿法又はエマルション-固化法によって得られた固体微粒子生成物は、少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回、最も好ましくは少なくとも3回洗浄されてもよい。洗浄は、芳香族炭化水素及び/又は脂肪族炭化水素、好ましくはトルエン、ヘプタン又はペンタンを用いて行うことができる。洗浄は、任意に芳香族炭化水素及び/又は脂肪族炭化水素と組み合わせたTiClでも行うことができる。洗浄液は、ドナー及び/又は第13族の化合物、例えばトリアルキルアルミニウム、ハロゲン化アルキルアルミニウム化合物、アルコキシアルミニウム化合物を含有することもできる。アルミニウム化合物は、触媒の合成時に添加することもできる。この触媒はさらに、例えばエバポレーション又は窒素流下に置くことによって乾燥させることができ、又はこの触媒は、乾燥工程なしで油状の液体にスラリー化することができる。
【0063】
最終的に得られるZiegler-Natta触媒は、一般に5~200μm、好ましくは10~100μmの平均粒子サイズ範囲を有する粒子の形態で得られることが望ましい。粒子は一般に低空隙でコンパクトであり、一般に20g/m未満、より好ましくは10g/m未満の表面積を有する。典型的には、触媒中に存在するTiの量は1~6重量%の範囲であり、Mgの量は10~20重量%の範囲であり、触媒中に存在する内部ドナーの量は触媒組成物の10~40重量%の範囲である。本発明で使用される触媒の調製についての詳細な説明は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012/007430号パンフレット、欧州特許出願公開第2610271号明細書及び欧州特許出願公開第2610272号明細書に開示されている。
【0064】
本発明にとりわけ適しているのは、粒子サイズ範囲が小さいZiegler-Natta触媒である。好ましい粒子サイズは、5.0~50.0μmの範囲のメジアンd50粒子サイズであり、より好ましいのは7.5~40μmであり、最も好ましいのは10.0~30.0μmである。加えて、上記Ziegler-Natta触媒は、好ましくは15.0~70.0μmの範囲、より好ましくは20.0~60.0μmの範囲、最も好ましくは30μm~50.0μmの範囲のトップカット(top cut)d90粒子サイズを有する。
これらの低い粒子サイズ範囲は、調製方法、好ましくは上述のような調製方法から得られるか、又は、調製後に高い粒子サイズ範囲が得られる場合には、例えばふるい分け等の当該技術分野で知られている小さい粒子サイズ範囲の粒子を分離する方法によって得られる。
【0065】
外部ドナー(ED)は、好ましくは、重合プロセスにおけるさらなる成分として存在する。適切な外部ドナー(ED)としては、特定のシラン、エーテル、エステル、アミン、ケトン、複素環化合物、及びこれらのブレンドが挙げられる。シランを使用することがとりわけ好ましい。一般式(III)のシランを用いることが最も好ましい。
Si(OR(4-p-q) (III)
式(III)中、R、R及びRは、炭化水素ラジカル、特にアルキル基又はシクロアルキル基を表し、p及びqは、0~3の範囲の数であり、それらの和(p+q)は3以下である。R、R及びRは、互いに独立して選ぶことができ、同じであってもよいし異なっていてもよい。式(III)に係るシランの具体例は、(tert-ブチル)Si(OCH、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH、(フェニル)Si(OCH、及び(シクロペンチル)Si(OCHである。別の最も好ましいシランは、一般式(IV)による。
Si(OCHCH(NR) (IV)
式(IV)中、R及びRは、同じであってもよいし異なっていてもよく、1~12個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基を表す。R及びRが、独立に、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、オクチル、デカニル、iso-プロピル、iso-ブチル、iso-ペンチル、tert-ブチル、tert-アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びシクロヘプチルからなる群から選択されることが特に好ましい。最も好ましくはエチルが用いられる。
【0066】
Ziegler-Natta触媒と任意の外部ドナー(ED)に加えて、共触媒を使用することができる。この共触媒は、好ましくは周期表(IUPAC、2013年版)の第13族の化合物であり、例えばアルミニウム化合物、例えば有機アルミニウム化合物又はハロゲン化アルミニウム化合物である。適切な有機アルミニウム化合物の例は、アルミニウムアルキル又はアルミニウムアルキルハライド化合物である。従って、1つの特定の実施形態では、共触媒(Co)は、トリアルキルアルミニウム、例えばトリエチルアルミニウム(TEAL)、ジアルキルアルミニウムクロリド若しくはアルキルアルミニウムジクロリド、又はこれらの混合物である。1つの特定の実施形態では、共触媒(Co)はトリエチルアルミニウム(TEAL)である。
【0067】
一般に、共触媒(Co)と外部ドナー(ED)との比[Co/ED]及び/又は共触媒(Co)と遷移金属(TM)との比[Co/TM]は、プロセスごとに慎重に選択される。共触媒(Co)と外部ドナー(ED)との比[Co/ED]は、好適には3.0~45.0mol/molの範囲、好ましくは4.0~35.0mol/molの範囲、より好ましくは5.0~30.0mol/molの範囲とすることができる。好適な下限値は、3.0mol/mol、好ましくは4.0mol/mol、より好ましくは5.0mol/molとすることができる。好適な上限値は、45.0mol/mol、好ましくは35.0mol/mol、より好ましくは30.0mol/molとすることができる。範囲の下限表示値及び上限表示値は含まれる。
【0068】
共触媒(Co)と遷移金属(TM)との比[Co/TM]は、好適には40.0~500mol/molの範囲、好ましくは50.0~400mol/molの範囲、より好ましくは60.0~350mol/molの範囲とすることができる。好適な下限値は、40.0mol/mol、好ましくは50.0mol/mol、より好ましくは60.0mol/molとすることができる。好適な上限値は、500mol/mol、好ましくは400mol/mol、より好ましくは350mol/molとすることができる。範囲の下限表示値及び上限表示値は含まれる。
【0069】
回収されたプロピレンポリマー
本発明のプロセスの工程b)の重合工程から回収されるプロピレンポリマーを、本明細書では「回収されたプロピレンポリマー」又は単に「プロピレンポリマー」と表記する。
【0070】
このプロピレンポリマーは、好ましくは、フタル酸化合物を含まない。
【0071】
プロピレンポリマーは、プロピレンホモポリマーであることが好ましい。
上記プロピレンポリマーは、94%超、より好ましくは95~99%の範囲のペンタッドアイソタクティシティを有することがさらに好ましい。
上記プロピレンホモポリマーは、さらに好ましくは、0.2mol%未満の2,1位置欠陥の含有量を有する。
【0072】
好ましくは、上記プロピレンポリマーは、そのプロピレンポリマーの総重量量に基づいて、3.0重量%未満、より好ましくは0.5~2.8重量%、さらにより好ましくは0.8~2.6重量%、最も好ましくは1.0~2.4重量%の量の、ISO 16152(25℃)に従って測定された冷キシレン可溶(XCS)画分を有する。
【0073】
さらに、上記プロピレンポリマーは、好ましくは、1.0~10.0g/10分、より好ましくは2.0~8.0g/10分、さらにより好ましくは2.5~6.0g/10分、最も好ましくは3.0~5.0g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
【0074】
本発明のプロピレンのホモポリマー又はコポリマーの空隙率及び比細孔容積は、DIN 66133に準拠した水銀ポロシメトリーとDIN 66137-2に準拠したヘリウム密度測定との組み合わせによって測定される。空隙率は、以下の式(II)によって算出される。
【数1】
【0075】
本発明のプロピレンのホモポリマー又はコポリマーの空隙率は、好ましくは8.0%超であり、より好ましくは8.5~20.0%の範囲であり、さらにより好ましくは9.0~15.0%の範囲である。本発明のプロピレンのホモポリマー又はコポリマーの比細孔容積は、一般に0.10cm/g超であり、好ましくは0.11~0.22cm/gの範囲であり、より好ましくは0.12~0.20cm/gの範囲である。
【0076】
本発明によれば、上記プロピレンのホモポリマー又はコポリマーのメジアン粒子サイズ(粒径)d50及びトップカット粒子サイズd95は、ISO 3310に従ったふるい分析によって測定され、ISO 9276-2に従って評価される。メジアン粒子サイズd50は、100~1200μm、好ましくは150~1000μm、さらにより好ましくは200~800μm、最も好ましくは250~500μmの範囲にある。トップカット粒子サイズd95は、300~2500μm、好ましくは350~2200μm、さらにより好ましくは400~2000μm、最も好ましくは450~1000μmの範囲にある。
【0077】
上記プロピレンポリマーは、分子量分布及び/又はコモノマー含有量分布(後者はプロピレンコポリマーの場合のみ)の観点から、ユニモーダル(単峰性)又はマルチモーダルであることができる。
【0078】
上記プロピレンポリマーが、分子量分布及び/又はコモノマー含有量に関してユニモーダルである場合、そのプロピレンポリマーは、例えば、それぞれスラリー反応器又は気相反応器におけるスラリープロセス又は気相プロセスとして、一段階のプロセスで調製されてもよい。
【0079】
好ましくは、ユニモーダルのプロピレンポリマーはスラリー反応器で調製される。あるいは、ユニモーダルのプロピレンポリマーは、類似のポリマー特性をもたらすプロセス条件を各段階で使用する多段階プロセスで製造されてもよい。
【0080】
本明細書で使用される表現「マルチモーダル」又は「バイモーダル」は、ポリマーの様相(モーダル性)、すなわち
ポリマーの分子量の関数としての分子量分率のグラフ表示である、ポリマーの分子量分布曲線の形
又は
ポリマー画分の分子量の関数としてのコモノマー含有量のグラフ表示である、コポリマーのコモノマー含有量分布曲線の形
を指す。
上で説明したように、上記プロピレンポリマーのポリマー画分は、直列構成であり異なる反応条件で動作する複数の反応器を用いて、逐次工程プロセスで製造することができる。その結果、特定の反応器で調製された各画分は、製造されるプロピレンポリマーの種類(プロピレンのホモポリマー又はコポリマー)に応じて、独自の分子量分布及び/又はコモノマー含有量分布を有することができる。これらの画分からの分布曲線(分子量又はコモノマー含有量)を重ね合わせて、最終的なポリマーの分子量分布曲線又はコモノマー含有量分布曲線を得ると、これらの曲線は、2つ以上の極大値を示すか、又は個々の画分の曲線と比較して少なくともはっきりと幅が広がることがある。このように2つ以上の連続的な工程を経て製造されるポリマーは、工程数に応じてバイモーダル又はマルチモーダルと呼ばれる。従って、上記プロピレンポリマーは、製造されるプロピレンポリマーの種類(プロピレンのホモポリマー又はコポリマー)に応じて、分子量及び/又はコモノマー含有量の観点から、マルチモーダル、例えばバイモーダルであってもよい。
【0081】
上記プロピレンコポリマーが、コモノマー含有量から見て、マルチモーダル性、例えばバイモーダル性である場合には、個々の画分が材料の特性に影響を与える量で存在することが理解される。従って、これらの各画分は、プロピレンコポリマーに基づいて少なくとも10重量%の量で存在することが理解される。従って、特にコモノマー含有量の観点からバイモーダル系の場合、2つの画分の割合は、好ましくは40:60~60:40、例えば約50:50である。
【0082】
本発明のプロセスの工程c)において、プロピレンポリマーに長鎖分岐を導入するために、プロピレンポリマーは、過酸化物の存在下で押出し工程の間に改質される。
【0083】
押出し工程での長鎖分岐の導入
長鎖分岐は、プロピレンポリマーの反応性改質(修飾)によってプロピレンに導入される。この反応性改質プロセスも本発明の一部である。長鎖分岐プロピレンポリマーを製造するための反応性改質は、プロピレンポリマーと熱分解性フリーラジカル形成剤との反応によって行われることが好ましい。
【0084】
反応性改質には、
a)少なくとも1種の二官能性不飽和モノマー及び/若しくはポリマー、又は
b)少なくとも1種の多官能性不飽和モノマー及び/若しくはポリマー、又は
c)(a)及び(b)の混合物
から選ばれる官能性不飽和化合物が存在しないことがとりわけ好ましい。上で用いられた「二官能性不飽和」又は「多官能性不飽和」は、それぞれ2つ又はより多くの非芳香族二重結合が存在することを意味する。例は、例えば、ジビニルベンゼン、シクロペンタジエン又はポリブタジエンである。
【0085】
長鎖分岐プロピレンポリマーを製造するための反応性改質工程は、好ましくは、本発明のプロセスの工程b)で回収されたプロピレンポリマーを溶融混合装置に導入する工程と、過酸化物等の熱分解性フリーラジカル形成剤を上記溶融混合装置にさらに導入する工程と、上記溶融混合装置内で上記プロピレンポリマー及び熱分解性フリーラジカル形成剤を160~280℃の範囲、より好ましくは170~270℃の範囲、最も好ましくは180~235℃の範囲のバレル温度で溶融混合する工程とを含む。
【0086】
好適には、上記溶融混合装置は、例えば、単軸押出機、同方向回転(共回転)二軸押出機又は同方向回転ニーダーのような連続溶融混合装置である。好ましくは、上記溶融混合装置は、供給ゾーン、混練ゾーン及びダイゾーンを含む。より好ましくは、溶融混合装置のスクリューに沿って特定の温度プロファイルが維持され、供給ゾーンの初期温度T1、混練ゾーンの中間温度T2、及びダイゾーンの最終温度T3を有し、すべての温度はバレル温度として規定される。バレル温度T1(供給ゾーン内)は、好ましくは160~220℃の範囲にある。バレル温度T2(混練ゾーン内)は、好ましくは180~260℃の範囲にある。バレル温度T3(ダイゾーン内)は、好ましくは210~270℃の範囲にある。溶融混合装置のスクリュー回転数(スクリュー速度)は、材料の特性に応じて調整することができる。当業者はこのことをよく知っており、適切なスクリュー回転数を容易に決定することができる。一般に、スクリュー回転数は、毎分100~750回転(rpm)の範囲、好ましくは毎分150~650回転(rpm)の範囲に調整することができる。溶融混合工程に続いて、得られた長鎖分岐プロピレンホモポリマー又はコポリマーの溶融物を、例えば水中ペレタイザーで、又は水浴中で1本以上のストランドを固化させた後、ストランドペレタイザーで、ペレット化することができる。
【0087】
上記プロピレンポリマー及び熱分解性フリーラジカル形成剤が、溶融混合装置に導入される前の予備混合工程で、より低い温度で予備混合されないことがとりわけ好ましい。さらに、上述した官能性不飽和化合物が溶融混合装置に添加されないことがとりわけ好ましい。
【0088】
長鎖分岐プロピレンポリマーを製造するための反応性改質において、プロピレンポリマーは、好適には、プロピレンポリマー100重量部に対して0.10重量%~5.00重量%重量部(ppw)の過酸化物と混合され、好ましくはプロピレンポリマー100重量部に対して0.30~3.50重量部(ppw)の過酸化物と、より好ましくはプロピレンポリマー100重量部に対して0.50~3.00重量部(ppw)の過酸化物の存在下で、最も好ましくはプロピレンポリマー100重量部に対して0.70~2.00重量部(ppw)の過酸化物の存在下で混合される。
【0089】
上記熱分解性フリーラジカル形成剤は、通常、過酸化物である。
【0090】
当該プロセスでは、過酸化物は、上記規定された160~280℃のバレル温度において、6分以下の半減期(t1/2)を有するように選択されることが好ましい。これに関して、半減期は、所定の温度で、組成物の元の過酸化物含有量を50%減少させるのに必要な時間であり、上記過酸化物の反応性を示す。
【0091】
好ましい過酸化物は、ジアルキルペルオキシド、例えばジアルキルペルオキシジカーボネートの群から選択される。ジアルキルペルオキシジカーボネートの適切な例は、ジ-(C2~20)-アルキルペルオキシジカーボネート、好ましくはジ-(C4~16)-アルキルペルオキシジカーボネート、より好ましくはジ-(C8~14)-アルキルペルオキシジカーボネートである。とりわけ好ましいのは、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、及びジミリスチルペルオキシジカーボネートである。とりわけ好ましいのは、ジセチルペルオキシジカーボネートである。
【0092】
押出し及び改質工程c)の間に、上述した添加剤及び/又はポリマー化合物等の他の成分を溶融混合装置に加えることもできる。これらの任意の成分は、例えばサイドフィーダーを介して溶融混合装置に導入することができる。
【0093】
上述又は後述の押出し及び改質工程c)から、当該プロピレンポリマー組成物が回収される。
【0094】
回収されたプロピレンポリマー組成物
本発明に係るプロセスの工程d)の回収されたプロピレンポリマー組成物は、好ましくは、工程b)の回収されたプロピレンポリマーと比較して、より低いメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
これは、欧州特許出願公開第3 018 153A1号明細書及び欧州特許出願公開第3 018 154A1号明細書に記載されている高溶融強度(HMS)の反応器後の改質プロセスにおいて、反応器ベースのプロピレンポリマーと比較して、得られるプロピレンポリマー組成物のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)の増加が観察されていることから、驚くべきことである。この驚くべき知見により、工程b)の回収されたプロピレンポリマーのMFRの範囲が広くなり、その結果、より高いMFRを有するプロピレンポリマーを使用することができるため、より穏やかな溶融混合条件が可能となる。
【0095】
回収されたプロピレンポリマー組成物が、工程c)で長鎖分岐したプロピレンポリマーを少なくとも95.0重量%、より好ましくは少なくとも99.0重量%、最も好ましくは少なくとも99.005重量%含んでいることが好ましい。
【0096】
好ましくは、本発明に係るプロセスの工程d)の回収されたプロピレンポリマー組成物は、これまでに又は以下に記載されているようなすべての特性を有する本発明に係るプロピレンポリマー組成物を指す。
【0097】
物品
本発明はさらに、上で又は以降に規定されるプロピレンポリマー組成物を含む物品に関する。
【0098】
当該物品は、とりわけ軽量用途、自動車用途、及び食品包装用途等の包装用途におけるフィルム、発泡体、及び成形品から選択されるのが好ましい。
【0099】
好ましくは、本発明の物品は、本発明に係るプロピレンポリマー組成物を、少なくとも70.0重量%、より好ましくは少なくとも80.0重量%、最も好ましくは少なくとも90.0重量%、なお最も好ましくは少なくとも95.0重量%含む。上記の与えられた重量パーセント(重量%)は、物品に含まれる熱可塑性材料の合計に基づいて計算される。好ましい実施形態では、当該物品は、本発明に係るプロピレンポリマー組成物からなる。
【0100】
本発明に係るプロピレンポリマー組成物を含むフィルム、発泡体及び成形品の調製のためのプロセスは、当該技術分野で一般に公知である。
【0101】
使用
本発明はさらに、物品の製造のための、上で又は以降に規定されるプロピレンポリマー組成物の使用に関する。
上記物品は、上で又は以降に記載のとおり、とりわけ軽量用途、自動車用途、及び食品包装用途等の包装用途におけるフィルム、発泡体、及び成形品から選択されるのが好ましい。
【0102】
最後に、本発明は、プロピレンポリマー組成物の溶融強度を高めるための、上で又は以降に規定される方法の使用に関する。
好ましくは、上記プロピレンポリマー組成物は、上で又は以降に記載されるようなすべての特性を有する本発明に係るプロピレンポリマー組成物を指す。
【実施例
【0103】
1.決定方法
a)メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)はISO 1133に従って決定し、g/10分単位で示す。MFRは、ポリマーの流動性、ひいては加工性の指標である。メルトフローレートが高いほど、ポリマーの粘度は低い。ポリプロピレンのMFRは、230℃の温度、2.16kgの荷重の下で決定する。
【0104】
b)粒子サイズ/粒子サイズ分布
ポリマー試料に対して、ISO 3310に準拠したふるい分析を行った。このふるい分析では、以下のサイズの金網スクリーンを備えたふるいの入れ子式カラムを使用した:20μm超、32μm超、63μm超、100μm超、125μm超、160μm超、200μm超、250μm超、315μm超、400μm超、500μm超、710μm超、1mm超、1.4mm超、2mm超、2.8mm超。試料は、ふるいの目開きが最も大きい一番上のふるいに流し込んだ。カラムの中の下方の各ふるいは、上のふるいよりも小さい目開きを有する(上に示したサイズを参照)。底部には受け皿がある。このカラムをメカニカルシェーカーに置いた。シェイカーはカラムを振盪した。振盪が完了した後、各ふるい上の材料の重量を測定した。その後、各ふるいの試料の重量を総重量で割り、各ふるいに保持された割合を算出した。ISO 9276-2に従って、ふるい分析の結果から、粒子サイズ分布並びに特徴的なメジアン粒子サイズd50及びトップカット粒子サイズd95を決定した。
【0105】
c)XHU画分.ゲル含有量
熱キシレン不溶(XHU)画分は、EN 579に従って決定する。約2.0gのポリマー(m)を秤量し、秤量した金属製のメッシュに入れる。その総重量を(mp+m)で表す。メッシュの中のポリマーを、ソックスレー装置で沸騰したキシレンで5時間抽出する。その後、溶離液を新鮮なキシレンで置き換え、さらに1時間煮沸を続ける。その後、メッシュを乾燥させ、再び重量を測定する(mXHU+m)。mXHU+m-m=mXHUの式で得られた熱キシレン不溶部の質量(mXHU)をポリマーの重量(m)と関連させて、キシレン不溶物の割合mXHU/mを得る。
【0106】
d)F30溶融強度及びv30溶融伸展性
本明細書に記載する試験は、ISO 16790:2005に従う。ひずみ硬化挙動は、論文「Rheotens-Mastercurves and Drawability of Polymer Melts」、M.H.Wagner、Polymer Engineering and Sience、第36巻、第925~935ページに記載されている方法により決定する。ポリマーのひずみ硬化挙動は、Rheotens(レオテンス)装置(ジーメンス通り(Siemensstr.) 2、74711 ブーヒェン(Buchen)、ドイツのGoettfert(ゲットフェルト)の製品)により分析する。この装置では、規定の加速度で引き下げることにより、溶融物のストランドが伸長される。Rheotens実験は、工業用の紡糸及び押出成形プロセスをシミュレートする。原理的には、溶融物を丸いダイを通して圧迫するか又は押し出して、得られたストランドを引き出す。押出物にかかる応力を、溶融物の特性及び測定パラメータ(とりわけ、出力と引き出し速度の比、実用的には伸長率の尺度)の関数として記録する。
【0107】
以下に示す結果については、材料は、実験用押出機HAAKE Polylabシステムと、円筒形ダイ(L/D=6.0/2.0mm)を備えたギアポンプを用いて押し出した。ギアポンプは、ストランドの押し出し速度が5mm/sになるようにあらかじめ調整し、溶融温度は200℃に設定した。ダイとRheotensホイールの間のスピンライン長は80mmであった。実験開始時には、Rheotensホイールの巻き取り速度を、押し出されたポリマーストランドの速度に調整した(引張力ゼロ)。その後、ポリマーフィラメントが破断するまでRheotensホイールの巻き取り速度をゆっくりと上げて実験を開始した。ホイールの加速度は、引張力が準定常状態で測定されるように十分小さくした。引き下げられたメルトストランドの加速度は120mm/秒である。このRheotensは、PCプログラム「EXTENS」と組み合わせて操作した。これは、リアルタイムのデータ取得プログラムであり、引張力と引き下げ(ドローダウン)速度の測定データを表示及び保存する。Rheotens曲線(力対プーリー回転速度)の終点を、F30溶融強度及び延伸性(drawability)の値とする。
【0108】
e)冷キシレン可溶画分(XCS、重量%)
キシレンに可溶なポリマーの量は、ISO 16152;第5版;2005-07-01に従って25.0℃で測定する。
【0109】
f)融解温度
融解温度Tは、TA-Instruments(ティーエー・インスツルメンツ)のRSC冷却装置及びデータステーション付きの2920 Dual-Cellを用いて、ISO 11357-3に準拠した示差走査熱量測定(DSC)によって決定する。10℃/分の加熱及び冷却の速度で、+23~+210℃の間で加熱/冷却/加熱サイクルを行う。結晶化温度(T)は冷却工程で決定し、融解温度(T)及び融解エンタルピー(H)は2回目の加熱工程で決定する。
【0110】
g)空隙率及び比細孔容積
ポリマーの空隙率及び比細孔容積は、DIN 66133に準拠した水銀ポロシメトリーとDIN 66137-2に準拠したヘリウム密度測定との組み合わせによって測定する。まず試料を、加熱キャビネット内で70℃で3時間乾燥させ、その後、測定まで乾燥器内に保管した。試料の純粋な密度は、Quantachrome(カンタクローム)製Ultrapyknometer(ウルトラピクノメータ)1000-Tの中で、25℃でヘリウムを用いて粉砕した粉末に対して決定した(DIN 66137-2)。水銀ポロシメトリーは、DIN 66133に準拠して、非粉砕粉末に対してQuantachrome Poremaster 60-GTで行った。
【0111】
空隙率は、次のような式(II)によって計算する。
【数2】
【0112】
h)曲げ弾性率
曲げ弾性率は、EN ISO 1873-2に準拠して射出成形した80×10×4mmの試験棒を用いて、ISO 178に従って23℃で3点曲げして決定した。
【0113】
i)NMR分光法による微細構造の定量
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、プロピレンホモポリマーのアイソタクティシティ及び位置規則性を定量した。
定量的13C{H}NMRスペクトルは、H及び13Cについてそれぞれ400.15MHz及び100.62MHzで動作するBruker Advance III 400 NMR分光計を使用して、溶液状態で記録した。すべてのスペクトルを、125℃の13Cに最適化した10mm拡張温度プローブヘッドを使用し、すべての空圧について窒素ガスを使用して記録した。
プロピレンホモポリマーについては、およそ200mgの材料を1,2-テトラクロロエタン-d(TCE-d)に溶解した。均一溶液を確保するために、ヒートブロック中での最初の試料調製のあと、そのNMRチューブを回転式オーブンの中で少なくとも1時間さらに加熱した。磁石の中へ挿入したあと、チューブを10Hzで回転させた。タクチシティ分布の定量のために必要である高分解能を主な理由としてこの設定を選んだ(Busico,V.、Cipullo,R.、Prog.Polym.Sci. 26(2001)443;Busico,V.;Cipullo,R.、Monaco,G.、Vacatello,M.、Segre,A.L.、Macromolecules 30(1997)6251)。NOE及びバイレベルWALTZ16デカップリングスキーム(Zhou,Z.、Kuemmerle,R.、Qiu,X.、Redwine,D.、Cong,R.、Taha,A.、Baugh,D.、Winniford,B.、J.Mag.Reson. 187(2007)225;Busico,V.、Carbonniere,P.、Cipullo,R.、Pellecchia,R.、Severn,J.、Talarico,G.、Macromol.Rapid Commun. 2007、28、11289)を利用して、標準的なシングルパルス励起を採用した。1スペクトルあたり全部で8192(8k)の過渡信号を取得した。
【0114】
定量的13C{H}NMRスペクトルを、独自のコンピュータープログラムを使用して処理し、積分し、関連の定量的特性を積分値から求めた。
プロピレンホモポリマーについては、すべての化学シフトは、21.85ppmのメチルアイソタクチックペンタッド(mmmm)を内部基準としている。
位置欠陥(Resconi,L.、Cavallo,L.、Fait,A.、Piemontesi,F.、Chem.Rev. 2000、100、1253;Wang,W-J.、Zhu,S.、Macromolecules 33(2000),1157;Cheng,H.N.、Macromolecules 17(1984),1950)又はコモノマーに対応する特徴的なシグナルを観察した。
タクチシティ分布は、23.6~19.7ppmのメチル領域の積分により、注目する立体配列に関連しない部位があればそれを補正して定量した(Busico,V.、Cipullo,R.、Prog.Polym.Sci. 26(2001)443;Busico,V.、Cipullo,R.、Monaco,G.、Vacatello,M.、Segre,A.L.、Macromoleucles 30(1997)6251)。
具体的には、タクチシティ分布の定量に及ぼす位置欠陥及びコモノマーの影響は、立体配列の特定の積分領域から代表的な位置欠陥及びコモノマーの積分値を減算することにより補正した。
アイソタクティシティは、ペンタッドレベルで決定し、すべてのペンタッド配列に対するアイソタクチックペンタッド(mmmm)配列の百分率として報告した。
[mmmm]%=100×(mmmm/全ペンタッドの合計)
2,1エリスロ位置欠陥の存在は、17.7及び17.2ppmの2つのメチル部位の存在によって示され、他の特徴的部位によって確認した。他のタイプの位置欠陥に対応する特徴的なシグナルは観察されなかった(Resconi,L.、Cavallo,L.、Fait,A.、Piemontesi,F.、Chem.Rev. 2000、100、1253)。
2,1エリスロ位置欠陥の量は、17.7及び17.2ppmの2つの特徴的なメチル部位の平均積分値を使用して定量した。
21e=(Ie6+Ie8)/2
1,2一次挿入プロペンの量はメチル領域に基づいて定量した。その際、この領域に含まれるが一次挿入に関連しない部位及びこの領域から除外される一次挿入部位について補正を行った。
12=ICH3+P12e
プロペンの全量は、一次挿入プロペン及び存在するすべての他の位置欠陥の合計として定量した。
total=P12+P21e
2,1エリスロ位置欠陥のモルパーセントは、全プロペンに対して定量した。
[21e]モル%=100×(P21e/Ptotal
【0115】
j)熱変形温度(HDT)
HDTは、ISO 1873-2に準拠して作成し、測定前に少なくとも96時間、+23℃で保管した80×10×4mmの射出成形試験片で決定した。この試験は、ISO 75、条件Aに準拠して、公称表面応力1.80MPaで、平板状に支持された試験片で行った。
【0116】
2.プロピレンポリマーの調製
a)触媒調製
3.4Lの2-エチルヘキサノール及び810mLのプロピレングリコールブチルモノエーテル(モル比4/1)を20.0Lの反応器に加えた。次に、Crompton GmbH(クロンプトン)が提供するBEM(ブチルエチルマグネシウム)の20.0%トルエン溶液7.8Lを、よく撹拌したアルコール混合物にゆっくりと加えた。添加の間、温度を10.0℃に保った。添加後、反応混合物の温度を60.0℃に上昇させ、この温度で30分間混合を続けた。最後に室温まで冷却した後、得られたMg-アルコキシドを貯蔵容器に移した。
【0117】
上記で調製したMgアルコキシド21.2gをビス(2-エチルヘキシル)シトラコネート4.0mLと5分間混合した。混合後、得られたMg錯体は直ちに触媒成分の調製に使用した。
【0118】
メカニカルスターラーを備えた300mLの反応器に、四塩化チタン19.5mLを25.0℃で入れた。混合速度は170rpmに調整した。上記で調製したMg錯体26.0gを、温度を25.0℃に保ったまま30分以内に添加した。3.0mLのViscoplex(登録商標)1-254と、2mgのNecadd 447(商標)を添加した1.0mLのトルエン溶液とを加えた。その後、24.0mLのヘプタンを加えてエマルションを形成した。混合を25.0℃で30分間続け、その後、30分以内に反応器の温度を90.0℃まで上げた。この反応混合物を90.0℃でさらに30分間撹拌した。その後、撹拌を停止し、反応混合物を90.0℃で15分間沈降させた。この固体材料を5回洗浄した。洗浄は、170rpmで30分間撹拌しながら80.0℃で行った。撹拌を停止した後、反応混合物を20~30分静置し、続いてサイフォンで吸引した。
【0119】
洗浄1:洗浄は、100mLのトルエン及び1mLのドナーの混合物で行った
洗浄2:洗浄は、30mLのTiCl4及び1mLのドナーの混合物で行った
洗浄3:洗浄は、100mLのトルエンで行った
洗浄4:洗浄は、60mLのヘプタンで行った
洗浄5:洗浄は、10分間の撹拌下で、60mLのヘプタンで行った
【0120】
その後、撹拌を停止し、温度を70℃に下げながら、反応混合物を10分間静置し、続いてサイフォンで吸引し、続いてN注入(スパージ、sparging)を20分間行い、空気に敏感な粉末を得た。
本発明に必要な特定の低粒子サイズ範囲は、最後のヘプタン洗浄工程の後、50μmのメッシュサイズでスクリーニングすることによって達成した。これにより、メジアンd50粒子サイズは21μm、d90粒子サイズは40μmとなった。この触媒は、Tiの含有量が2.0重量%で、内部ドナーとしてのビス(2-エチルヘキシル)シトラコネートの含有量が17.0重量%であることもさらに特徴的であった。
【0121】
b)PP-1及びPP-2の重合
発明例及び比較例に用いたプロピレンポリマーは、予備重合反応器、1つのスラリーループ反応器及び1つの気相反応器を備えたパイロットプラントで製造した。上述の固体触媒成分を、発明例IE1及びIE2並びに比較例CE1のプロピレンポリマー組成物の製造に用いたプロピレンポリマーPP-1のために、共触媒としてトリエチルアルミニウム(TEAL)、及び外部ドナーとしてジシクロペンチルジメトキシシラン(D-ドナー)とともに用いた。
【0122】
比較例CE2及びCE3のプロピレンポリマー組成物を製造するために使用するプロピレンポリマーPP-2は、内部ドナーを含まない第3世代のZiegler-Natta触媒をベースとし、外部ドナーとしてメタクリル酸メチルを使用した、炭化水素スラリープロセスからのポリプロピレンホモポリマーである。
【0123】
共触媒とドナーの比、共触媒とチタンの比、及び重合条件を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
3.反応性改質
発明例IE1及びIE2並びに比較例CE3のプロピレンポリマー組成物の調製のために、プロピレンポリマーPP-1及びPP-2を、過酸化物としてPerkadox 24L(ジセチルペルオキシジカーボネート、AkzoNobel Polymer Chemistry(アクゾノーベル・ポリマーケミストリー)から市販されている)を用いた反応性改質に供した。例えば欧州特許出願公開第3 018 153A1号明細書及び欧州特許出願公開第3 018 154A1号明細書に開示されているような二官能剤は、上記プロピレンポリマーに予め混合しなかった。代わりに、プロピレンポリマー及び過酸化物を、酸化防止剤Irganox B 215(BASF SE(ビーエーエスエフ)から市販されている)、ステアリン酸カルシウム及び酸捕捉剤ADK STAB HT(Adeka Palmarole(アデカ・パルマロール)から市販されている)の添加剤パッケージと一緒に、2つの混練ゾーンと真空脱ガス機構とを有する高強度混合スクリューを備えた18mmのバレル直径と40のL/D比を有するCoperion ZSK18型の同方向回転二軸押出機で、溶融混合工程で混合した。溶融温度プロファイルは、供給ゾーンの初期温度T1=180℃、最後の混練ゾーンの中間温度T2=200℃、ダイゾーンの最終温度T3=230℃とし、すべての温度をバレル温度として定義した。スクリューの回転数は400rpmに設定した。
【0126】
比較例CE1及びCE2のプロピレンポリマー組成物の調製のために、プロピレンポリマーPP-1及びPP-2を反応性改質なしに上記のように溶融混合した。
【0127】
溶融混合工程に続いて、得られたポリマー溶融物を、ストランドペレタイザーの水浴中で水温40℃でストランドを固化させた後、ペレット化した。反応条件及び得られたプロピレンポリマー組成物の特性を表2にまとめる。
【0128】
【表2】
【0129】
簡略化された反応性改質プロセスによって、長鎖分岐プロピレンホモポリマーを含むプロピレンポリマー組成物を得ることができ、この組成物は、高い剛性、高い融解温度及び結晶化温度、低いXCS画分の量、並びに高いHDTに関して改善された特性のバランスを示し、これはとりわけ成形用途に有益であることがわかる。