(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】プリーツ製エアフィルタの製造装置およびプリーツ製エアフィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 46/52 20060101AFI20231011BHJP
B01D 39/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B01D46/52 A
B01D46/52 C
B01D39/00 B
(21)【出願番号】P 2022122060
(22)【出願日】2022-07-29
【審査請求日】2022-09-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522305036
【氏名又は名称】トウデプラスワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115510
【氏名又は名称】手島 勝
(72)【発明者】
【氏名】東出 泰幸
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0366252(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0192293(US,A1)
【文献】特開2003-290615(JP,A)
【文献】特開2002-030563(JP,A)
【文献】特開平08-229313(JP,A)
【文献】特表2013-511334(JP,A)
【文献】特開2007-244928(JP,A)
【文献】特開2003-181234(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194542(WO,A1)
【文献】特開2010-162449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-46/90
B01D 39/00-41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリーツ製エアフィルタを製造するエアフィルタ製造装置であって、
濾過材が蛇腹状に折られた構造を有するプリーツ製エアフィルタのピッチに対応した複数の凸部を備えたフィルタ固定治具と、
前記フィルタ固定治具にセットされる蛇腹形状濾過材の一部を圧縮して溶着するヘッドを備え、
前記複数の凸部は、前記複数の凸部の間に位置する溝部を備えており、
前記ヘッドは、前記フィルタ固定治具における前記複数の凸部によって構築されるフィルタ固定領域の外縁に対応したヘッドであり、
前記複数の凸部のそれぞれの端部は、テーパ形状を有して
おり、
前記ヘッドは、前記フィルタ固定領域の外縁を一括で溶着する一括溶着部を有しており、
前記一括溶着部は、前記複数の凸部のそれぞれの端部の外側に位置する前記外縁であって、前記複数の凸部の稜線が延びる方向に対して直角の方向に沿った方向に延びた部分に対応した形状を有している、エアフィルタ製造装置。
【請求項2】
前記フィルタ固定治具における前記複数の凸部は、フィルタ固定板の上において、規則的間隔で配列されている、請求項1に記載のエアフィルタ製造装置。
【請求項3】
前記フィルタ固定板は木製であり、
前記フィルタ固定板の上に、金属板部材が配置されている、請求項2に記載のエアフィルタ製造装置。
【請求項4】
前記ヘッドは、昇降可能な機構に接続されており、
前記ヘッドは、交換可能な構成を有している、請求項1から
3の何れか一つに記載のエアフィルタ製造装置。
【請求項5】
さらに、前記フィルタ固定領域の前記外縁に沿って前記蛇腹形状濾過材の不要部分を一括でカットするフィルタ切除治具を備えている、請求項1から
3の何れか一つに記載のエアフィルタ製造装置。
【請求項6】
プリーツ製エアフィルタを製造するエアフィルタ製造方法であって、
濾過材が蛇腹状に折られた構造を有するプリーツ製エアフィルタのピッチに対応した複数の凸部を備えたフィルタ固定治具の上に、蛇腹形状濾過材を配置する工程と、
前記フィルタ固定治具の上に配置された前記蛇腹形状濾過材の一部を溶着する工程と
を含み、
前記フィルタ固定治具には、前記複数の凸部によって構築されるフィルタ固定領域が存在しており、
前記溶着する工程において、前記蛇腹形状濾過材の少なくとも一部は、前記フィルタ固定領域の外縁に沿って一括で溶着され、
前記複数の凸部のそれぞれの端部はテーパ形状を有しており、
前記溶着する工程において、前記蛇腹形状濾過材のうちの、前記テーパ形状を有する前記端部に対応する部位に傾斜部が形成さ
れ、
前記溶着する工程において、前記フィルタ固定領域の外縁に沿った部分を一括して溶着することを実行し、
前記フィルタ固定領域の外縁に沿った部分は、前記複数の凸部のそれぞれの端部の外側に位置し、前記複数の凸部の稜線が延びる方向に対して直角の方向に沿って延びた部分に対応した箇所である、エアフィルタ製造方法。
【請求項7】
前記溶着する工程の後、前記蛇腹形状濾過材の不要部分を切り取る工程を実行する、請求項
6に記載のエアフィルタ製造方法。
【請求項8】
前記不要部分を切り取る工程において、前記不要部分は、前記フィルタ固定領域の外縁の形状に対応したフィルタ切除治具によって一括で切り取られる、請求項
7に記載のエアフィルタ製造方法。
【請求項9】
前記切り取る工程の後、前記蛇腹形状濾過材の溶着部分に、可撓性を有する保護材を取り付ける工程を実行する、請求項
7または8に記載のエアフィルタ製造方法。
【請求項10】
前記溶着する工程の後、前記蛇腹形状濾過材を湾曲させることを実行する、請求項6に記載のエアフィルタ製造方法。
【請求項11】
前記溶着する工程の後、前記蛇腹形状濾過材を筒形状にすることを実行する、請求項6に記載のエアフィルタ製造方法。
【請求項12】
濾過材が蛇腹状に折られた構造を有するプリーツ製エアフィルタであって、
凸部を有する蛇腹形状濾過材と、
蛇腹形状濾過材の周囲に形成された溶着部と
を備え、
前記プリーツ製エアフィルタは、前記凸部が延びる方向に対して直角の方向に沿った厚さ方向において湾曲可能であり、
前記蛇腹形状濾過材の前記凸部の端部には、当該蛇腹形状濾過材の一部が圧縮されて生じる傾斜部が形成されて
おり、
前記溶着部は、前記凸部の端部の外側に位置し、前記凸部が延びる方向に対して直角の方向に沿った部分に形成されている、プリーツ製エアフィルタ。
【請求項13】
前記溶着部は、前記蛇腹形状濾過材の前記周囲のすべてに形成されている、請求項1
2に記載のプリーツ製エアフィルタ。
【請求項14】
前記プリーツ製エアフィルタは、筒状形状を有している、請求項
12または13に記載のプリーツ製エアフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリーツ製エアフィルタの製造装置およびプリーツ製エアフィルタの製造方法に関する。特に、曲線形状や複雑形状を有するプリーツ製エアフィルタ、または、形状柔軟性(フレキシブル性)を有するプリーツ製エアフィルタを製造することができる製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気中に含まれる塵埃を除去するために、空気清浄機、自動車の空気ライン、クリーンルームに種々のエアフィルタが組み込まれている(特許文献1など)。従来のプリーツ製エアフィルタは、例えば特許文献1に示すように、濾過材を蛇腹状に折り曲げた構造をしている。具体的には、従来のプリーツ製エアフィルタは、蛇腹状に折り曲げた濾過材の端部に、接着剤で端板を取り付けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図18は、本願発明者が検討したプリーツ製エアフィルタ1000である。
図18に示したプリーツ製エアフィルタ1000は、蛇腹状に折り曲げられた濾過材112と、その濾過材112の端面(四辺)に接着されたプリーツ製フィルタ端板119とから構成されている。濾過材112には、等間隔で溝115が形成されている。プリーツ製フィルタ端板119が四方(四辺端部)を支持していることから、プリーツ製エアフィルタ1000はしっかりした平坦な形状を維持できる。
【0005】
今日普及しているプリーツ製エアフィルタは、
図18に示した矩形(または正方形)の形状をしている。これは、プリーツ製エアフィルタの端部を曲線、斜線にすることが極めて難しいことに起因している。以下、さらに説明を続ける。
【0006】
図19は、濾過材112の上端が円弧状形状133を有するようなプリーツ製エアフィルタ1100を模式的に示している。なお、円弧状形状133の部分は、円弧形状と溝部(凹凸)115がわかりやすいような形状を模式的に表現したものである。
【0007】
ここで、
図19に示したプリーツ製エアフィルタ1100を作製するには、
図20に示した折り曲げ前の平面素材(展開図)1110を用意して、その平面素材1110を折ることが必要になる。当該平面素材1110の端部135は、一見、規則性があるように思えるが、実際には、端部溝139の左右の辺131、132は、角度も長さも不規則なものであり、そのような不規則なパターンの辺131、132を正確にカッティングして、平面素材1110を作製することは極めて難しい。すなわち、端部溝139の左右の辺131、132を最初は一律で規則正しくカッティングしておいて、折り方によってなんとか強引に、
図19に示した円弧状端部133を作り上げていくということは現実にはできない。
【0008】
図19および
図20では、円弧状形状133の部分を有するプリーツ製エアフィルタ1100について説明したが、矩形のものを斜めにカットしたような形状の場合(例えば、
図18に示した斜線113に沿ってカットした形状の場合)のプリーツ製エアフィルタについても同様に展開図は複雑になる。
図21は、矩形のものを斜め(例えば、四角形の平行線に対して斜めの線113)にカットされたような場合のプリーツ製エアフィルタを組み立てるための展開図の一例である。具体的には、
図21は、平面素材1110の端部135のパターンを示しており、これは
図20に示した端部135のパターンとも異なる。矩形でなく、斜めの端面(斜線)を有する形状(三角形、台形など)のプリーツ製エアフィルタの作製する場合において、その形状・構造にあわせた複雑な展開図(平面素材1110)を毎回作製(カッティング)し、組立てることは現実的でなく、また、端部溝139の左右の辺131、132を最初は一律で規則正しくカッティングしておいて、折り方によってなんとか強引に、斜めの端面を有する形状(三角形、台形など)のプリーツ製エアフィルタを作り上げていくということは現実にはできない。
【0009】
また、プリーツ製エアフィルタ1000では、プリーツ製フィルタ端板119が四方(四辺端部)を支持しているので、しっかりした平坦な形状を維持できる。一方で、プリーツ製エアフィルタ1000に形状柔軟性(フレキシブル性)はなく、平坦な構造のフィルタ収納部にしか、プリーツ製エアフィルタ1000をセットすることができない。今日では、凸部・凹部・曲面・湾曲・波打ちの様々な形状の製品が存在しており、そこに、平坦な構造のフィルタ収納部だけしか設けることができないとなると、製品デザイン上の制約が大きく好ましくない。言い換えると、凸部・凹部・曲面・湾曲・波打ちの様々な形状の製品において、柔軟に形状を変更できるフレキシブル性を有するプリーツ製エアフィルタを作製することができたらメリットが大きい。しかも、それは、製造コストが高くては意味がなく、製造が容易であることが好ましい。
【0010】
本願発明者は、矩形のプリーツ製エアフィルタ1000だけでなく、曲線や斜線の端部を有するプリーツ製エアフィルタをなんとか簡便に作製できないかについて模索していた。さらには、フレキシブル性を有するプリーツ製エアフィルタを比較的簡便に作製できないかについても鋭意検討した。そのような中、本発明のアイデアを思い付き、本発明を完成させた。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、曲線や斜線の端部を有するプリーツ製エアフィルタ、及び/又は、柔軟性を有するプリーツ製エアフィルタを比較的簡単に作製できる製造装置および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るエアフィルタ製造装置は、プリーツ製エアフィルタを製造するエアフィルタ製造装置であり、プリーツ製エアフィルタのピッチに対応した複数の凸部を備えたフィルタ固定治具と、前記フィルタ固定治具にセットされる蛇腹形状濾過材の一部を圧縮して溶着するヘッドを備えている。前記複数の凸部は、前記複数の凸部の間に位置する溝部を備えている。前記ヘッドは、前記フィルタ固定治具における前記複数の凸部によって構築されるフィルタ固定領域の外縁に対応したヘッドである。
【0013】
ある好適な実施形態において、前記ヘッドは、前記フィルタ固定領域の外縁を一括で溶着する一括溶着部を有している。
【0014】
ある好適な実施形態において、前記フィルタ固定治具における前記複数の凸部は、フィルタ固定板の上において、規則的間隔で配列されている。前記フィルタ固定領域の外縁の少なくとも一部は、曲線形状をしている。
【0015】
ある好適な実施形態において、前記フィルタ固定治具における前記複数の凸部は、フィルタ固定板の上において、規則的間隔で配列されている。前記フィルタ固定領域の外縁は、斜線部分を有している。
【0016】
ある好適な実施形態において、前記フィルタ固定板は木製であり、前記フィルタ固定板の上に、金属板部材が配置されている。
【0017】
ある好適な実施形態において、前記複数の凸部のそれぞれの端部は、テーパ形状を有している。
【0018】
ある好適な実施形態において、前記ヘッドは、昇降可能な機構に接続されており、前記ヘッドは、交換可能な構成を有している。
【0019】
ある好適な実施形態において、さらに、前記フィルタ固定領域の前記外縁に沿って前記蛇腹形状濾過材の不要部分を一括でカットするフィルタ切除治具を備えている。
【0020】
本発明に係るエアフィルタ製造方法は、プリーツ製エアフィルタを製造するエアフィルタ製造方法であり、プリーツ製エアフィルタのピッチに対応した複数の凸部を備えたフィルタ固定治具の上に、蛇腹形状濾過材を配置する工程と、前記フィルタ固定治具の上に配置された前記蛇腹形状濾過材の一部を溶着する工程とを含んでいる。前記フィルタ固定治具には、前記複数の凸部によって構築されるフィルタ固定領域が存在しており、前記フィルタ固定領域の外縁の少なくとも一部は、曲線形状および斜線形状の少なくとも一部を有している。前記溶着する工程において、前記蛇腹形状濾過材の少なくとも一部は、前記フィルタ固定領域の外縁に沿って溶着される。
【0021】
ある好適な実施形態では、前記溶着する工程において、前記フィルタ固定領域の外縁に沿った部分を一括して溶着することを実行する。
【0022】
ある好適な実施形態において、前記複数の凸部のそれぞれの端部はテーパ形状を有している。前記溶着する工程において、前記蛇腹形状濾過材のうちの、前記テーパ形状を有する前記端部に対応する部位に傾斜部が形成される。
【0023】
ある好適な実施形態では、前記溶着する工程の後、前記蛇腹形状濾過材の不要部分を切り取る工程を実行する。
【0024】
ある好適な実施形態では、前記不要部分を切り取る工程において、前記不要部分は、前記フィルタ固定領域の外縁の形状に対応したフィルタ切除治具によって一括で切り取られる。
【0025】
ある好適な実施形態では、前記切り取る工程の後、前記蛇腹形状濾過材の溶着部分に、可撓性を有する保護材を取り付ける工程を実行する。
【0026】
本発明に係るエアフィルタ製造方法は、プリーツ製エアフィルタを製造するエアフィルタ製造方法でありプリーツ製エアフィルタのピッチに対応した複数の凸部を備えたフィルタ固定治具の上に、蛇腹形状濾過材を配置する工程と、前記フィルタ固定治具の上に配置された前記蛇腹形状濾過材の一部を溶着する工程とを含んでいる。前記フィルタ固定治具には、前記複数の凸部によって構築されるフィルタ固定領域が存在している。前記溶着する工程において、前記蛇腹形状濾過材の少なくとも一部は、前記フィルタ固定領域の外縁に沿って一括で溶着される。
【0027】
ある好適な実施形態において、前記複数の凸部のそれぞれの端部はテーパ形状を有している。前記溶着する工程において、前記蛇腹形状濾過材のうちの、前記テーパ形状を有する前記端部に対応する部位に傾斜部が形成される。
【0028】
ある好適な実施形態では、前記溶着する工程の後、前記蛇腹形状濾過材を湾曲させることを実行する。
【0029】
ある好適な実施形態では、前記溶着する工程の後、前記蛇腹形状濾過材を筒形状にすることを実行する。
【0030】
本発明に係るプリーツ製エアフィルタは、凸部を有する蛇腹形状濾過材と、蛇腹形状濾過材の周囲に形成された溶着部とを備えている。前記プリーツ製エアフィルタは、前記凸部が延びる方向に対して直角の方向に沿った厚さ方向において湾曲可能である。
【0031】
ある好適な実施形態において、前記蛇腹形状濾過材の前記凸部の端部には傾斜部が形成されている。
【0032】
ある好適な実施形態において、前記溶着部は、前記蛇腹形状濾過材の前記周囲のすべてに形成されている。
【0033】
ある好適な実施形態において、前記溶着部で囲まれた前記蛇腹形状濾過材の外縁の少なくとも一部は、曲線形状および斜線形状の少なくとも一方を有している。
【0034】
ある好適な実施形態において、前記プリーツ製エアフィルタは、筒状形状を有している。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るプリーツ製エアフィルタ製造装置では、エアフィルタのピッチに対応した複数の凸部を備えたフィルタ固定治具と、蛇腹形状濾過材の一部を溶着するヘッドとを備え、そして、複数の凸部によって構築されるフィルタ固定領域の外縁の少なくとも一部は曲線形状及び/又は斜線形状を有している。したがって、フィルタ固定領域の外縁に沿って蛇腹形状濾過材を溶着することにより、曲線及び/又は斜線の端部を有するエアフィルタを比較的簡単に作製することができる。
【0036】
また、本発明に係るプリーツ製エアフィルタ製造方法では、複数の凸部を備えたフィルタ固定治具の上に蛇腹形状濾過材を配置した後、蛇腹形状濾過材の一部を溶着する。そして、フィルタ固定治具には、複数の凸部によって構築されるフィルタ固定領域が存在しており、溶着する工程では、フィルタ固定領域(25)の外縁に沿って蛇腹形状濾過材を一括で溶着する。これにより、柔軟性を有するプリーツ製エアフィルタを比較的簡単に作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の実施形態に係るプリーツ製エアフィルタ製造装置100の構成を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るプリーツ製フィルタ固定治具20の構成を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る蛇腹形状濾過材10の構成を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るプリーツ製エアフィルタ製造方法を説明するフローチャートである。
【
図5】蛇腹形状濾過材10の一部を圧縮して溶着する工程を説明するための図である。
【
図6】蛇腹形状濾過材10の圧着部分35に保護材(18、19)を取り付ける工程を説明するための図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るプリーツ製エアフィルタ製造装置50の構成を示す斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るプリーツ製エアフィルタ製造装置50の構成を示す斜視図である。
【
図9】本実施形態に係る切除治具(カッター)60の構成を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るプリーツ製エアフィルタ101の構成を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態に係るプリーツ製円筒状エアフィルタ200の構成を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態に係るプリーツ製エアフィルタ101の構成を示す斜視図である。
【
図13】本実施形態に係るプリーツ製フィルタ固定治具20の構成を示す図である。
【
図14】本実施形態に係るプリーツ製フィルタ固定治具20の構成を示す斜視図である。
【
図15】本実施形態に係るプリーツ製フィルタ固定治具20の構成を示す斜視図である。
【
図16】本発明の実施形態に係るプリーツ製エアフィルタ101を波打ち形状にした構成を示す斜視図である。
【
図17】本発明の実施形態に係るプリーツ製エアフィルタ101を半円状(湾曲状態)にした構成を示す斜視図である。
【
図18】本願発明者が検討したプリーツ製エアフィルタ1000の構成を示す図である。
【
図19】濾過材112の上端が円弧状形状133を有するようなプリーツ製エアフィルタ1100の構成を示す図である。
【
図20】プリーツ製エアフィルタ1100における折り曲げ前の平面素材(展開図)1110を示す図である。
【
図21】斜線を有する形状のプリーツ製エアフィルタにおける折り曲げ前の平面素材(展開図)1110を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のために、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を正確に反映していない場合がある。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。加えて、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0039】
図1は、本発明の実施形態に係るプリーツ製エアフィルタ製造装置100の構成を模式的に示す図(斜視図)である。また、
図2は、プリーツ製エアフィルタの製造において蛇腹形状濾過材(10)を固定するフィルタ固定治具20である。
図3は、本実施形態の蛇腹形状濾過材10の構成を示す図(上面図)である。
【0040】
まず、
図1に示すように、本実施形態のプリーツ製エアフィルタ製造装置100は、フィルタ固定治具(プリーツ製フィルタ固定治具)20と、フィルタ固定治具20にセットされる蛇腹形状濾過材10の一部を圧縮して溶着するヘッド53を備えている。ヘッド53は、圧着機50の一部として取り付けられている。また、
図2に示すように、フィルタ固定治具20は、エアフィルタ(プリーツ製エアフィルタ)のピッチに対応した複数の凸部22を備えている。
【0041】
本実施形態の蛇腹形状濾過材10は、
図3に示すように、濾過材が蛇腹形状に折られた構造をしている。蛇腹形状濾過材10は、プリーツ状に形成されており、それによって体積あたりの表面積を増やし、フィルタ性能(濾過性能)を高めたものとなっている。具体的には、蛇腹形状濾過材10は、フィルタ凸部(稜線を含む山部)12が形成されるように濾過材15を折って作製されている。本実施形態のフィルタ凸部12の間は等間隔(又は規則的間隔)であり、そのピッチは、例えば、2mm~10mm(一例では、5mm±0.5mm)であるが、それに限定されるものではない。また、本実施形態の構成において、蛇腹形状濾過材10を濾過材15は、樹脂材料(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニール樹脂(PVC)、ナイロン(PA)などであり、好適な例ではポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などである。また、濾過材15の厚さは、例えば、0.5mm~3.0mm(一例では、1.0mm±0.2mm)であるが、それに限定されるものではない。
【0042】
図2に示したフィルタ固定治具20では、フィルタ固定板21の上において、製品となるプリーツ製エアフィルタのピッチ(ここでは、
図3に示した蛇腹形状濾過材10のフィルタ凸部12のピッチ)に対応した複数の凸部22が形成されている。フィルタ固定板21は、複数の凸部22を固定する部材である。本実施形態のフィルタ固定板21は、例えば、木材、金属材料、樹脂材料から構成されているが、それに限らず、他の材料(セラミック材料など)から構成されていてもよい。また、複数の凸部22は、例えば、金属材料、樹脂材料、木材から構成されているが、それに限らず、他の材料(セラミック材料など)から構成されていてもよい。木材から構成されたフィルタ固定板21は、コストが安く、軽いというメリットがある。なお、ヘッド53を接触させて圧着する部分が、熱に弱い材料や振動が吸収される材料で構成されている場合、耐熱性材料(例えば、金属や熱硬化性樹脂等)の部材をフィルタ固定板21の上に取り付けて使用することが好ましい。
【0043】
本実施形態の構成において、複数の凸部22は、当該複数の凸部22の間に位置する溝部29を備えている。この溝部29に、蛇腹形状濾過材10のフィルタ凸部12が収納されることになる。言い換えると、複数の凸部22は、蛇腹形状濾過材10のフィルタ凹部(フィルタ凸部12の間の溝部)に収納される。
【0044】
また、本実施形態のフィルタ固定治具20には、複数の凸部22によって構築されるフィルタ固定領域25が設けられている。そして、フィルタ固定領域25の外縁(23、24)は、曲線形状(23)を有している。
図2に示した例で説明すると、フィルタ固定治具20におけるフィルタ固定領域25の上側の外縁23は、円弧状の曲線となっている。そして、フィルタ固定治具20におけるフィルタ固定領域25の下側の外縁24は、直線状となっている。本実施形態のフィルタ固定領域25は、
図2に示したものに限られず、例えば、全体を曲線状(一例として、円形、楕円形、長円形、波形形状など)にしてもよいし、上側の外縁23において、曲線と直線とを組み合わせた外縁にしてもよいし、直線のみ(例えば、斜線(稜線12tに対して傾斜した線)など)で構成されてもよい。
【0045】
図1に示したプリーツ製エアフィルタ製造装置100は、圧着機50を備えている。圧着機50は、加熱と加圧が同時にできる装置(例えば、超音波溶着装置、高周波溶着装置など)である。図示した例では、圧着機50として、超音波溶着装置を示している。
図1に示したエアフィルタ製造装置100には、超音波ヘッド53の上方において超音波ヘッド53を支持する超音波溶着本体部55が位置しており、また、超音波ヘッド53を上下動(昇降)させるハンドル57が設けられている。超音波溶着本体部55の中には、昇降可能な機構(シリンダー)が設けられており、ヘッド53は、昇降可能な機構(シリンダー)に接続されている。ハンドル57を操作することで、超音波ヘッド53の高さを調整して様々な厚みのプリーツ製フィルタに対応させることができる。スイッチ52を押すことにより超音波ヘッド53が下降し、あらかじめ超音波溶着本体部55に設定されている圧力と超音波振動力(超音波振動に加圧された対象物が振動することにより熱を発生し溶着硬化するエネルギー)が蛇腹形状濾過材10に加わって、フィルタ固定治具20にセットされた蛇腹形状濾過材10の一部を圧縮して超音波溶着することができる。本実施形態の構成では、スイッチ52は両手用に対応しているが、1つのもの(片手用)であってもよい。
【0046】
図1に示した例では、超音波ヘッド53の下方には、フィルタ固定治具20を乗せるフィルタ作業台51が設けられている。本実施形態の構成では、フィルタ作業台51の上にフィルタ固定治具20が配置され、プリーツ製フィルタ固定治具20の上に蛇腹形状濾過材(プリーツ製フィルター材)10を押さえる金属部材30(文鎮、または、フィルタ押さえる部材)30が載せてある。金属部材30は、振幅を押さえる機能を持っている。また、図示した構成例では、フィルタ作業台51の下に、超音波ヘッド53の動作をオンオフするスイッチ52が設けられている。金属部材30は、蛇腹形状濾過材10の下に配置してもよい。本実施形態のフィルタ固定治具20におけるフィルタ固定板21が木材から構成されているときは、蛇腹形状濾過材10の下に金属部材30を配置することで、ヘッド53からの振動やエネルギー(溶着硬化するエネルギー)を金属部材30で受け止めて、圧着・溶着を上手く行うことができることに寄与する。
【0047】
次に、
図4から
図6も参照しながら、本実施形態のエアフィルタ製造方法について説明する。
図4は、本実施形態のエアフィルタ製造方法を説明するためのフローチャートである。また、
図5及び
図6は、エアフィルタ製造方法を説明するための工程図(部分拡大上面図)であり、工程をわかりやすく表現する上で蛇腹形状濾過材10の構造を模式的に示している。
【0048】
まず、
図3に示したような蛇腹形状濾過材(プリーツ製フィルター材)10を用意する(工程S100)。次いで、蛇腹形状濾過材10をフィルタ固定治具20にセットする(工程S200)。具体的には、
図2に示したようなフィルタ固定治具20の複数の凸部22に、蛇腹形状濾過材10の凹部をはめ込むようにセットする。言い換えると、フィルタ固定治具20の溝部29に、蛇腹形状濾過材10のフィルタ凸部12を嵌め込む。このようにして、フィルタ固定治具20上に蛇腹形状濾過材10が固定される。
【0049】
次に、フィルタ固定治具20上に蛇腹形状濾過材10を配置した状態で、超音波ヘッド53を用いて、フィルタ凸部12で構成されたフィルタ固定領域25の外縁(23、24)に沿って蛇腹形状濾過材10を超音波溶着する(工程S220)。具体的には、
図5に示すように、フィルタ固定治具20の上に配置された蛇腹形状濾過材10のうち、フィルタ固定領域25の外縁(曲線端)23に対応する領域(曲線端)33に沿って超音波溶着を行って圧着領域35を形成していく。また、同様に、フィルタ固定領域25の外縁(直線端)24に対応する領域(直線端)34に沿って超音波溶着を行って圧着領域35を形成していく。そして、この圧着領域35の外側は、不要部37となる。なお、
図5では、フィルタ固定領域25の外縁(直線端)24に対応する領域(直線端)34の途中までを超音波溶着によって圧着している様子を示しており、その後、直線端34に沿って残りの部分も超音波溶着されることになる。
【0050】
本実施形態の超音波溶着の条件は、例えば、圧力0.35 MPa、出力600w、振幅時間(超音波発生時間)0.7秒、HOLD(冷却時間)1秒であるが、これに限定にされるものではなく、完成品のプリーツ製フィルタの特性・構造などにあわせて適宜好適なものを採用することができる。溶着強度は、圧力と出力、振幅時間を大きくすれば相乗効果で強くなるものではなく、材料の種類厚みと圧力、出力、振幅時間のバランスにより強度は増減する。結果強度が弱いと形状が維持できず、強すぎると蛇腹形状濾過材(プリーツ製フィルター材)10が溶けてしまうことになるが、超音波溶着の場合は超音波溶着機の既定の条件だし方法に従い調整していけば適切な条件を出すことができる。また、本実施形態の構成では、接触面(圧着)が略矩形(または略正方形)の超音波ヘッド53を用いて、経緯が分かりやすいよう超音波溶着を複数回に分けて圧着領域35を形成したが、超音波溶着機の能力範囲内でプリーツ製フィルタ固定領域25の外縁(23、24)に対応した形状(構造)の超音波ヘッド53を作製して、その超音波ヘッド53によって一回で(一括で)圧着領域35を形成することできる。本実施形態のヘッド53(一括ヘッド)として、例えば、曲線等の場合、最大120mm×240m以内のヘッドを構築することができ、また、直線だと10mm幅で350mm以内のヘッドを構築することができるが、使用する設備によってその範囲は増減する。
【0051】
次に、フィルタ固定領域25の外縁(23、24)に対応する領域(33、34)に沿って超音波溶着を行って圧着領域35を形成した後、不要部37の切り取りを行う(工程S240)。不要部37は、圧着領域35の一部(例えば、中央部、又は、圧着領域35の外縁)に沿って、切断用具(カッター、ハサミなど)で切除することができる。または、フィルタ固定領域25の外縁(23、24)の形状に対応したフィルタ切除治具を用いて、一回(一括)の工程で切除(または、型抜き)することで、不要部37の切り取りを行うことが可能である。このようにして、本実施形態のプリーツ製エアフィルタを得ることができる。
【0052】
なお、続いて、不要部37を切除した後、
図6に示すように、圧着領域35の部分に保護材18(18a、18b)を取り付けることができる(工程S300)。図示した例では、曲線形状(13)の圧着領域35(上側)に、同様の曲線形状の保護材18aを取付け、そして、直線形状(14)の圧着領域35(下側)に同様の直線形状の保護材18bを取り付けている。保護材18を柔軟性のある素材(例えば、ウレタンフォーム、発泡フォーム、または、他の柔軟性素材)を使用した場合、プリーツ製エアフィルタ101の形状柔軟性(フレキシブル)を維持することができる。本実施形態のプリーツ製エアフィルタ101では、
図18に示したプリーツ製エアフィルタ1000のプリーツ製フィルタ端板119が存在しないので、厚さ方向(エアフィルタ101を水平にしたときに鉛直方向)に柔軟に変形させることができる。
図6に示した保護材18が柔軟性を有するものであると、同様に、プリーツ製エアフィルタ101を厚さ方向に容易に変化させることができる。
【0053】
本実施形態のエアフィルタ製造装置100は、プリーツ製エアフィルタのピッチに対応した複数の凸部22を備えたフィルタ固定治具20と、蛇腹形状濾過材10の一部を圧縮して溶着するヘッド53とを備えている。そして、複数の凸部22によって構築されるフィルタ固定領域25の外縁(23、24)は、曲線や斜線などの多様な形状にすることができる。したがって、プリーツ製フィルタ固定領域25の外縁に沿ってヘッド53で蛇腹形状濾過材10を溶着することにより、曲線や斜線などの多様な形状の端面を有するプリーツ製エアフィルタ101を比較的簡単に作製することができる。
【0054】
図7は、本実施形態に係るプリーツ製エアフィルタ製造装置50の他の構成を示している。
図7に示したエアフィルタ製造装置50におけるヘッド53A(53)は、フィルタ固定領域(25)の外縁を一括で溶着する一括溶着部59を備えている。一括溶着部59は、
図5及び
図6に示したようなプリーツ製エアフィルタ101の外縁(溶着部35、フィルタ固定領域(25)の外縁)に対応した形状を有している。プリーツ製エアフィルタ101の外縁の形状が変われば、それに対応して、一括溶着部59の形状も変化する。また、ヘッド53は、取り替え可能な構造をしている。
【0055】
図8は、本実施形態に係るプリーツ製エアフィルタ製造装置50の他の構成を示しており、ヘッド53Bの圧着部(溶着部)が直線形状のものである。このヘッド53Bを用いて、斜線の端部(溶着部35、フィルタ固定領域(25)の外縁)を製作することができる。また、
図8に示したエアフィルタ製造装置50(直線の圧着部)と、円弧(半円)のような曲線の圧着部を有するエアフィルタ製造装置とを組み合わせて、複数回(ここでは2回)で、
図5及び
図6に示したようなプリーツ製エアフィルタ101の外縁(溶着部35、フィルタ固定領域(25)の外縁)を作製することも可能である。なお、組み合わせ方は、プリーツ製エアフィルタ101の外縁(溶着部35、フィルタ固定領域(25)の外縁)にあわせて決定することができる。
【0056】
図9は、不要部分(37)を一括でカットするフィルタ切除治具60の構成を模式的に示している。フィルタ切除治具60は、プリーツ製エアフィルタ101の外縁(圧着領域(溶着部)35、フィルタ固定領域(25)の外縁)に対応した切断刃(カッター)62を備えている。本実施形態の切断刃62は、切断刃支持部61の上に配置されている。図示した切断刃62は、曲線部62aと直線部62bとを組み合わせたもので構成されている。曲線部62aと直線部62bとが1つの繋がり(一体もの)になったものを使用することも可能である。
【0057】
不要部分(37)を一括でカットするときは、不要部分(37)および圧着領域(溶着部)35を有する蛇腹形状濾過材10をフィルタ切除治具60の上に配置し、その状態でプレス機を用いてプレスすることで、不要部分を一括で取り除くことができる。なお、切断刃62の方を移動させて、不要部分(37)をカットする手法を使ってもよい。このような一括(一度)で除去できるフィルタ切除治具60を用いることにより、蛇腹形状濾過材10の不要部分(37)を効率よく除去することができ、スループットを向上させることができる。
【0058】
次に、
図10および
図11を参照しながら、本実施形態のエアフィルタ製造方法およびエアフィルタについて説明する。
図10は、本実施形態に係るエアフィルタ101の構成を示す図(平面図)である。また、
図11は、本実施形態の円筒状エアフィルタ200の構成を示す図(斜視図)である。
【0059】
図10に示したエアフィルタ101は、
図3に示した蛇腹形状濾過材10(プリーツ製フィルター材)の外周を溶着(超音波溶着)した圧着領域38を備えている。具体的には、
図2に示したフィルタ固定治具20におけるフィルタ固定領域25が長方形(または、略矩形、略正方形)のものを用意した後、そのフィルタ固定治具20の上に蛇腹形状濾過材10を配置し、次いで、フィルタ固定領域25の外縁に対応する領域(16、17)に沿ってヘッド53にて圧着する。そうると、
図10に示したエアフィルタ101が作製される。
【0060】
そして、
図11に示したプリーツ製エアフィルタ200は、
図10に示したプリーツ製エアフィルタ101を筒状に(円筒状に)丸めて固定(接着、圧着など)したものである。このような筒状のものを作製できるのは、
図10に示したエアフィルタ101が柔軟性を有しているからであり、
図18に示したエアフィルタ1000では筒状のものを作製することはできない。
【0061】
図12は、
図10に示したエアフィルタ101の斜視図である。本実施形態のエアフィルタ101は、厚さ方向91に沿って湾曲させることができる(矢印90参照)。これにより、
図11に示したような筒状のエアフィルタ200を簡単に構築することができる。ここで、厚さ方向91は、エアフィルタ101を水平方向に配置したときに鉛直方向(上下方向)となるものである。また、湾曲する方向(矢印90)は、凸部12(稜線12t)が延びる方向92に対して直角の方向(93)に沿った方向での厚さ方向91である。凸部12(稜線12t)が延びる方向92には、凸部12が構造上の抵抗となって、湾曲できないか湾曲しずらくなっている。
【0062】
また、本実施形態のエアフィルタ101では、少なくとも長辺16(矢印93方向)に沿って延びる圧着部(溶着部)38aが形成されていればよいが、短辺17(矢印92)に沿って延びる圧着部(溶着部)38bも形成されている方が好ましい。全周囲(16、17)を囲むように圧着部(溶着部)38(38a、38b)が存在していると、複数の凸部12が存在する領域(フィルタ領域)15の形状をより安定させることができる。なお、エアフィルタ101を収納するフィルタ収納部(不図示)の構造によっては、長辺16(矢印93)に沿った部分に圧着部38aがあって、短辺17(矢印92)に沿った部分に圧着部38bのないエアフィルタ101であってもよい場合がある。
【0063】
さらに、本実施形態のエアフィルタ101では、蛇腹形状濾過材10の凸部12の端部に傾斜部19が形成されている。この傾斜部19は、圧着部38(38a)を形成する際に、凸部12の端部に力(テンション)が加わってその箇所が破れたり・薄くなったりすることを防止するためにある。
図13および
図14を参照しながら、傾斜部19についてさらに説明する。
【0064】
図13および
図14は、それぞれ、
図12に示したエアフィルタ101を作製するためのフィルタ固定治具20の上面図および斜視図である。
図13及び
図14に示したフィルタ固定治具20には、凸部22の端部にはテーパ構造となっており、傾斜面27が形成されている。また、蛇腹形状濾過材10の圧着部(溶着部)38(38a)に対応する位置に金属部材(金属板)30(30A)がフィルタ固定板21上に配置されている。金属部材30は固定式でも、移動式でもどちらでもよい。
【0065】
金属部材30の厚さ(上面高さ)を凸部22の高さの真ん中にすると、圧着部38の位置は、エアフィルタ101の厚さ(表の稜線12tと裏の稜線12tの距離)の真ん中に位置する。言い換えると、圧着部38の位置は、厚さ方向91に基準で、エアフィルタ101の厚さの中央に位置付けることができる。圧着部38の位置を、エアフィルタ101の厚さの中央部(例えば、表の稜線12tと裏の稜線12tとの間の真ん中の線から±15%の距離の範囲内(好まくは、中心線から±10%の距離の範囲内)にすることにより、圧着時の後の凸部22に加わる力(テンションなど)を一定にすることができて、形状安定性・寿命の面などから好ましい。また、金属部材30の厚さ(上面高さ)を調整することで、厚さ方向91に基準の圧着部38の位置を所望の位置に形成することが可能となる。
【0066】
図14に示したフィルタ固定治具20の上に蛇腹形状濾過材10を乗せて、ヘッド53にて圧着(溶着)すると、不要部37(
図5参照)を含んだ形で、
図12に示したような凸部12が得られる。ここで、
図14に示したフィルタ固定治具20の凸部22には傾斜部(テーパー部、面取り部)27が形成されていることから、
図12に示した蛇腹形状濾過材10の凸部12の端部にも傾斜部(テーパー部、面取り部)19が形成される。凸部22の傾斜部(テーパー部)27の角度(ここでは、上面と傾斜面との間の角度)θtは、例えば5°~25°(一例では、10°)であるがこれに限定されるものではない。そして、蛇腹形状濾過材10の凸部12の端部には、それに対応した角度θtの傾斜面19が形成される。ヘッド35の圧着(溶着)の具合によって、完全に同一の角度(傾斜形状)にならないことがあるが、おおよそ、凸部22の傾斜部(テーパー部)27に対応した凸部12の傾斜面19が得られる。また、図示した例では、固定治具20の凸部22の両端部のそれぞれの傾斜面27(傾斜角度θt)は同一にしているが、異なるものにしても構わない。特別の理由がなければ、同一のものにする方が左右対称となるので好ましい。
【0067】
ここで、
図12に示した蛇腹形状濾過材10の凸部12の端部に傾斜部(テーパー部)19がないものの場合、凸部12の稜線12tと側面(壁面)との角度が90°(または略直角)となる。言い換えると、フィルタ固定治具20の凸部22の上面と側面(壁面)との角度が90°(または略直角)となる。そのときは、圧着をしたときに、その90°の角部に位置する蛇腹形状濾過材10は、他の箇所と比較して、圧着によって過度に引っ張られることとなり、損傷したり、薄くなったり、破れてしまう可能性がある。一方、本実施形態の構成では、フィルタ固定治具20の凸部22の上面と側面(壁面)との間の角部に傾斜面(テーパ面)27があるため、圧着をしたときに、90°の角部の場合と比較して、過度に力(テンション)が加わることを緩和することができる。その結果、損傷したり、薄くなったり、破れてしまうことを防止することができる。したがって、本実施形態のエアフィルタ101の強度(特に、凸部12の端部(19)の強度)を向上させることができ、そして、エアフィルタ101の寿命を長くすることができる。
【0068】
図15は、
図2に示した構成に対応するフィルタ固定治具20の斜視図である。
図15に示したフィルタ固定治具20にも、凸部22のそれぞれの端部(角部)に傾斜面(テーパ面)27が形成されている。図示したフィルタ固定治具20において、金属部材30を配置してもよい。
【0069】
図15では、
図2に示した構成に対応するフィルタ固定治具20を示したが、作製するエアフィルタ101の形状にあわせて、フィルタ固定治具20のフィルタ固定領域25(凸部22によって形成される領域)を変更することができる。エアフィルタ101の外縁形状を円形にしたいときは、フィルタ固定治具20のフィルタ固定領域25を円形にするとよい。エアフィルタ101の外縁形状を三角形、台形、六角形などにしたいときは、それぞれ、それに対応して、フィルタ固定治具20のフィルタ固定領域25を三角形、台形、六角形などにする。三角形、台形、六角形などの場合、外縁が斜線(
図10における斜線13参考)の部分が発生するので、本実施形態の手法で作製することの利点が大きい。すなわち、本実施形態の手法を用いると、斜線を有するエアフィルタ101であっても簡便に作製することができる。
【0070】
また、本実施形態のプリーツ製エアフィルタ製造方法では、凸部22を備えたフィルタ固定治具20の上に蛇腹形状濾過材10を配置した後、蛇腹形状濾過材10の一部を溶着する。そして、フィルタ固定治具20にはフィルタ固定領域25が存在しており、溶着する工程では、フィルタ固定領域25の外縁に沿って蛇腹形状濾過材10を圧着(溶着)することにより、
図12に示したような、柔軟性を有するエアフィルタ101を比較的簡単に作製できる。したがって、
図12に示したエアフィルタ101を変形(湾曲)させて、
図16に示すような波打ち形状のエアフィルタ102にもすることができる。あるいは、
図17に示すような半円形(略半円系)のエアフィルタ103にもすることができる。なお、
図17では、裏面側に位置する凸部12(稜線12t)は省略している。本実施形態の手法によれば、製品のフィルタ収納部(不図示)が平坦な形状のものでなくて、複雑な形状であっても対応することができ、すなわち、本実施形態のエアフィルタ101(102、103)を用いると、柔軟に対応することができる。さらには、製品のフィルタ収納部(不図示)が矩形(長方形、正方形)でなくて複雑な形状であっても(曲線および/または斜線を有するものであっても)、本実施形態のエアフィルタ101等は柔軟に対応することができる。
【0071】
さらには、
図7に示したような溶着装置50を用いることで、一括で溶着工程を行うことができて便利である。加えて、
図9に示したようなフィルタ除去治具60を用いることで、不要部分37を一括でカットすることができて便利である。
【0072】
また、上述したように、本実施形態のエアフィルタ製造方法によれば、平坦なもの、湾曲したものとともに、湾曲をさらに行って、筒状のエアフィルタ200を作製することもできる。筒状のエアフィルタ200を簡便に作製する技術的な利点も非常に大きいものである。
【0073】
多様な空気中に含まれる塵埃を除去するための機器に対して、
図18に示したようなフレキシブル性のないプリーツ製フィルタ1000では制約が大きく、さらには、四角形という制限にとらわれていた。本実施形態の手法によれば、そのような制限のない、設計自由度の大きいプリーツ製フィルタを簡便に(安価に)製造することができる。また、
図18に示したプリーツ製フィルタ1000では、プリーツ製フィルタ端板119を接着剤で取り付ける作業が必要であり、手間がかかっていた。本実施形態の手法によれば、そのような材料(フィルタ端板119、接着剤)を使用しないため、材料コスト・製造コストを低減させることができる。また、フレキシブル性のないプリーツ製フィルタ1000を組み合わせたり、さらに加工したりして、複雑な立体的な構造にするときには、そのような複雑な形状を固定するために、フィルタ材以外の材料を使用する必要があるとともに、その手間も必要となっており、さらには、フィルタ材以外の材料を使うことで圧損性能の面からも好ましくなかった。すなわち、フィルタ材以外の材料を用いることでフィルタの抜けが悪くなり、フィルタ特性に悪影響を与えていた。一方、本実施形態の手法によれば、そのようなフィルタ性能に関わらない材料を使用しないため、それと比較すると、フィルタの抜けが悪くなるようなことがなく、コスト面の性能、エコロジーの性能も向上させることができる。
【0074】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。また、上述した実施形態の各特徴は、相互に適用することが可能である。例えば、
図2に示したフィルタ固定治具20の凸部22の端部に傾斜面27を設けることもできるし、
図14及び
図15のフィルタ固定治具20の凸部22の端部に傾斜面27がない構成のものを使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、曲線や斜線の端部を有するプリーツ製エアフィルタ、及び/又は、柔軟性を有するプリーツ製エアフィルタを比較的簡単に作製できる製造装置および製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 蛇腹形状濾過材(プリーツ製フィルター材)
12 フィルタ凸部
15 濾過材
18 保護材
19 傾斜部(テーパ部)
20 フィルタ固定治具
21 フィルタ固定板
22 凸部(複数の凸部)
23 外縁(曲線端)
24 外縁(直線端)
25 フィルタ固定領域
27 傾斜面(テーパ面)
29 溝部
30 文鎮
33 曲線端
34 直線端
35 圧着領域
37 不要部
38 圧着領域
50 溶着装置
51 フィルタ作業台
52 スイッチ
53 ヘッド
55 溶着本体部
57 ハンドル
59 一括溶着部
60 フィルタ除去治具
61 切断刃支持部
62 切断刃
100 エアフィルタ製造装置
101 プリーツ製エアフィルタ
102、103 プリーツ製エアフィルタ
200 円筒状エアフィルタ
【要約】
【課題】形状の自由度が高いプリーツ製エアフィルタを比較的簡単に作製できる製造装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るプリーツ製エアフィルタ製造装置100は、複数の凸部22が設けられたフィルタ固定治具20と、フィルタ固定治具20にセットされる蛇腹形状濾過材10の一部を圧縮して溶着するヘッド53を備えている。複数の凸部22は、複数の凸部22の間に位置する溝部29を備えている。ヘッド53は、フィルタ固定治具20における複数の凸部22によって構築されるフィルタ固定領域25の外縁(23、24)に対応したヘッドである。
【選択図】
図1