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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】PCB処理施設の解体撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20231011BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
F24F7/007 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022160701
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2021136526の分割
【原出願日】2021-08-24
(65)【公開番号】P2023031316
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592141927
【氏名又は名称】JFE環境テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】庄 智裕
(72)【発明者】
【氏名】福井 馨
(72)【発明者】
【氏名】梅本 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】大井 一彦
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-144388(JP,A)
【文献】特許第6031406(JP,B2)
【文献】特開2013-139689(JP,A)
【文献】特開2018-204283(JP,A)
【文献】特開2021-026643(JP,A)
【文献】特開2018-145629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
F24F 7/007
E04G 23/02
G21F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCB処理施設に存在する機器、装置、配管、配線又は建築物を含む全ての解体対象物を解体して撤去する際に、
PCB処理施設の建屋内の搬出口付近の非汚染エリアに、前記解体対象物を解体撤去して、前記解体対象物を仮置きする仮置きスペースを形成し、
前記仮置きスペースに、解体対象物のうち汚染物に区分された解体対象物を搬出して、所定期間待機させる、
ことを特徴とするPCB処理施設の解体撤去方法。
【請求項2】
解体対象物のうち非汚染物に区分された解体対象物は、前記汚染物の搬出に邪魔な前記非汚染物を搬出口に向かう通路から離れた位置に移動させた後、解体対象物のうち汚染物に区分された解体対象物を前記仮置きスペースに搬出する、
ことを特徴とする請求項1記載のPCB処理施設の解体撤去方法。
【請求項3】
解体対象物のうち非汚染物に区分された解体対象物のうち前記汚染物の搬出口に向かう通路の邪魔にならない前記非汚染物は残置し、前記仮置きスペースに解体対象物のうち前記汚染物に区分された解体対象物を搬出する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のPCB処理施設の解体撤去方法。
【請求項4】
前記仮置きスペースの一部に、出入口が同時に開かない仮設扉が設けられたラッピング室を設ける、
ことを特徴とする請求項1記載のPCB処理施設の解体撤去方法。
【請求項5】
前記ラッピング室には、ラッピングマシーンが設けられ、該ラッピングマシーンにより前記汚染物に区分された解体対象物をラッピングする、
ことを特徴とする請求項4記載のPCB処理施設の解体撤去方法。
【請求項6】
PCB処理施設全体を覆う上屋テントを設置せず、既設の換気・排気設備を使用し、汚染エリアの汚染度の高いエリアを負圧にして、それ以外のエリアとの室圧差を形成し、前記汚染物に区分された解体対象物を解体撤去する、
ことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のPCB処理施設の解体撤去方法。
【請求項7】
PCB処理施設全体を覆う上屋テントを設置せず、既設の換気・排気設備を使用し、前記ラッピング室を負圧にし、該ラッピング室以外のエリアとの室圧差を形成し、前記汚染物に区分された解体対象物をラッピングする、
ことを特徴とする請求項又は記載のPCB処理施設の解体撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCB処理施設の解体撤去方法に関し、詳しくは、搬出口に近い方から順に奥側に設置された汚染物を解体撤去するPCB処理施設の解体撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCB処理施設の解体撤去工事においては、周辺環境を汚染させることがないように仮設テントや既存建屋などを使って、密閉下での解体撤去工法が必要とされている。
【0003】
特許文献1の技術では、PCB除染機能の維持に不要でPCB汚染の可能性を有するエリア、PCB除染機能に必要なエリア、及び解体撤去作業に必要なエリアに区分し、区分したエリアに対して、部屋単位で割り当てて、エリアと部屋の対応関係を構築し、区分したエリアの汚染度の高い順に解体を行う解体撤去方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6031406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の工法では、エリアと部屋単位の対応付けがなされ、部屋には、プラント設備や建築設備の汚染物や非汚染物が工程上に混在しているために、非汚染物であっても、汚染物と同等に建屋内での小分けや狭隘な場所での搬出を余儀なくされる。
【0006】
また、特許文献1では、部屋単位で解体すると、その部屋の中にある非汚染物についても同時に解体することになり、狭い搬出ルートや手順に制約が設けられ、効率的でない。
【0007】
さらに、特許文献1では、汚染物は、解体対象になっている高濃度処理施設内で処理するとしているが、現状では、全国に無害化処理施設が多数あるため、低濃度汚染物であれば、無害化処理施設で処理する方がより経済的である。
【0008】
また、非汚染物も一般産業廃棄物又はリサイクル品として処分できるが、部屋毎単位の処理であるため、処理単価の高い無害化処理施設での処理となり不経済である。
【0009】
さらに又、現在の高濃度処理施設内の除染機能を残しながら解体する場合、解体手順や搬出ルートに制限が出るため、効率的な解体撤去はできない。
【0010】
そこで、本発明の課題は、狭い敷地であっても、搬出口から順に解体して搬出ルートを確保できるPCB処理施設の解体撤去方法を提供することにある。
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0012】
(請求項1)
PCB処理施設(1)に存在する機器、装置、配管、配線又は建築物を含む全ての解体対象物を解体して撤去する際に、
PCB処理施設(1)の建屋(10)内の搬出口付近の非汚染エリア(2)に、前記解体対象物を解体撤去して、前記解体対象物を仮置きする仮置きスペース(6)を形成し、
前記仮置きスペース(6)に、解体対象物のうち汚染物に区分された解体対象物を搬出して、所定期間待機させる、
ことを特徴とするPCB処理施設の解体撤去方法。
(請求項
解体対象物のうち非汚染物に区分された解体対象物は、前記汚染物の搬出に邪魔な前記非汚染物を搬出口に向かう通路から離れた位置に移動させた後、解体対象物のうち汚染物に区分された解体対象物を前記仮置きスペース(6)に搬出する、
ことを特徴とする請求項記載のPCB処理施設の解体撤去方法。
(請求項
解体対象物のうち非汚染物に区分された解体対象物のうち前記汚染物の搬出口に向かう通路の邪魔にならない前記非汚染物は残置し、前記仮置きスペース(6)に解体対象物のうち前記汚染物に区分された解体対象物を搬出する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のPCB処理施設の解体撤去方法。
(請求項
前記仮置きスペース(6)の一部に、出入口が同時に開かない仮設扉が設けられたラッピング室(62)を設ける、
ことを特徴とする請求項記載のPCB処理施設の解体撤去方法。
(請求項
前記ラッピング室(62)には、ラッピングマシーンが設けられ、該ラッピングマシーンにより前記汚染物に区分された解体対象物をラッピングする、
ことを特徴とする請求項記載のPCB処理施設の解体撤去方法。
(請求項
PCB処理施設(1)全体を覆う上屋テント(8)を設置せず、既設の換気・排気設備(9)を使用し、汚染エリア(3)の汚染度の高いエリアを負圧にして、それ以外のエリアとの室圧差を形成し、前記汚染物に区分された解体対象物を解体撤去する、
ことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のPCB処理施設の解体撤去方法。
(請求項
PCB処理施設(1)全体を覆う上屋テント(8)を設置せず、既設の換気・排気設備(9)を使用し、前記ラッピング室(62)を負圧にし、該ラッピング室(62)以外のエリアとの室圧差を形成し、前記汚染物に区分された解体対象物をラッピングする、
ことを特徴とする請求項4、5又は6記載のPCB処理施設の解体撤去方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、狭い敷地であっても、排出口から順に解体して搬出ルートを確保できるPCB処理施設の解体撤去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のPCB処理施設の解体撤去方法の一例を示す概略平面図
図2】本発明のPCB処理施設の解体撤去方法の一例を示す概略平面図
図3】本発明のPCB処理施設の解体撤去方法の他の一例を示す概略平面図
図4】本発明のPCB処理施設の解体撤去方法の一例を示す概略平面図
図5】本発明のPCB処理施設の解体撤去方法の一例を示す概略平面図
図6】本発明のPCB処理施設の解体撤去方法の一例を示す概略平面図
図7】本発明のPCB処理施設の解体撤去方法の一例を示す概略平面図
図8】本発明のPCB処理施設の解体撤去方法の他の好ましい態様を示す図
図9】本発明のPCB処理施設の解体撤去方法の他の好ましい態様を示す図
図10】従来例を示す概略平面図
図11】本発明のPCB処理施設の解体撤去方法のさらに他の好ましい態様を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態について図面に基づいて説明する。
まず、本発明の実施形態が実施される場面では、予め、高濃度PCBが洗浄等により除去されている状態であり、全ての解体対象物は、低濃度に分類される汚染物であるか、非汚染物の状態であることが前提となっている。低濃度に分類される汚染物(低濃度汚染物)に関しては後述する。
【0016】
したがって、PCB処理施設に存在する機器、装置、配管、配線又は建築物を含む解体対象物において、非汚染物に区分される解体対象物と、汚染物に区分される解体対象物とが混在している場合、これらを解体して撤去する際に、搬出するスペースを確保しながら搬出口に近い方から順に奥側に設置された前記解体対象物を解体撤去していく方が、効率的に作業を進めることができる。
【0017】
本発明においては、搬出口付近の解体対象物が撤去されていき、搬出口の近い場所には大きなスペースが生まれるため、建屋内の搬出口付近で、搬出時に有利な仮置きスペースとして利用することができる。また、大きな仮置きスペースが形成されているため、このスペースを、汚染物搬送に必要なラッピング又はシート養生エリアとしても有効活用することができる。
【0018】
本実施形態においては、解体撤去作業前に、予め、PCB処理施設に存在する機器、装置、配管、配線又は建築物を含む解体対象物の汚染度を、例えば、分析しておき、汚染物と、非汚染物とに区分しておくことで、より迅速、かつ安定した解体撤去する方法を実現できる。ここで、解体対象物を汚染物と非汚染物に分類する方法における前提としては、各解体対象物に対して、環境省が定める低濃度汚染物「低濃度PCB該当性判断基準」に規定された分析方法で分析することを基本とする。
【0019】
本発明のPCB処理施設の解体撤去方法は、汚染物に区分された解体対象物を解体して撤去する際に、どのように撤去するかを提案するものである。
【0020】
本発明のPCB処理施設の解体撤去方法は、PCB管理区域に区分されたエリアによらず、搬出するスペースを確保しながら搬出口に近い方から順に奥側に設置された汚染物を解体撤去していくことを特徴とする。
【0021】
ここで、「PCB管理区域に区分されたエリアによらず」というのは、施設全体を非管理区域、管理区域に区分けし、管理区域は、PCB処理施設において、PCBを処理していた際の扱っていたPCB濃度が低い順に、レベル1エリア、レベル2エリア、レベル3エリアに区分けされており、PCB濃度の汚染度の違いにより区分されたレベル1エリア、レベル2エリア、レベル3エリアの順番に拘束されないという意味である。
つまり、本発明では、汚染度の違いにより区分されたレベル1エリア、レベル2エリア、レベル3エリアの順番に拘束されずに、搬出するスペースを確保しながら搬出口に近い方から順に奥側に設置された汚染物を解体撤去していくのである。
【0022】
図1図7は、本発明のPCB処理施設の解体撤去方法の一例を示す概略平面図である。
【0023】
図1において、1はPCB処理施設である。PCB処理施設1は、非汚染エリア2と、非汚染エリア2の内側の汚染エリア3に区分される。
【0024】
本態様の汚染エリア3は、汚染レベルがL1<L2<L3の順に高くなる場合を示している。
【0025】
図示のように、最外側にレベル1エリアL1、その内側にレベル2エリアL2、最内側にレベル3エリアL3が各々配置されている。図において、4は汚染物を解体して搬出する際の搬出口である。本態様では、搬出口4は、PCB処理施設1の建屋10の図面上右側に位置している。
【0026】
レベルエリアの順番に拘束されずに、搬出するスペースを確保しながら搬出口に近い方から順に奥側に設置された汚染物を解体撤去していく際の第1段階について図2に基づいて説明する。
【0027】
第1段階は、PCB処理施設1の建屋10内の搬出口4に近い、非汚染エリア2の一部エリア6aに存在する解体対象物を解体撤去することによって、仮置きスペース6を形成することである。この非汚染エリア2の一部エリア6aは、元から非汚染エリアであるため、除染の必要もなく、このエリアの解体対象物を撤去することによって、建屋10内の搬出口4付近に、広いスペースが生まれる。この広いスペースが、仮置きスペース6として機能する。この仮置きスペース6を形成することで、建屋10内には、搬出口4に付近で、搬出する際に、搬出効率の良い作業スペースが形成されるのである。
【0028】
この仮置きスペース6は、建屋10内に形成されるため、汚染物に区分された解体対象物を雨水などにさらすことがなく、環境への汚染の懸念がない。また、解体対象物の搬出調整などの一時的な貯留スペースとして機能させることもできる。さらに、払出のために、PCB汚染度の分析に要する期間の待機スペースとしても機能させることができる。これらは、搬出口4付近で実施されることによって、作業効率を格段に上昇させることができる。
【0029】
また、図3に示すように、仮置きスペース6には、非汚染エリア2の一部エリア6aに加えて、汚染エリアのレベル1エリアL1の搬出口4に近いエリアを、除染処理により非汚染レベルまで低減したエリア6bを含めることも好ましい。これにより、搬出口4付近に、更に大きな作業スペースを確保することができる。
【0030】
次に、解体撤去していく際の第2段階について図4に基づいて説明する。
図4に示すように、汚染エリア3のレベル1エリアL1の上部側、レベル1エリアL1の下部側、レベル2エリアL2の右側を、レベル3エリアL3の右端に達する部位に相当する解体部61を解体撤去する。
【0031】
この解体撤去される解体部61に存在する解体対象物は、解体され、仮置きスペース6に搬送される。この際、非汚染物に区分される解体対象物は、汚染物に区分される解体対象物の搬送に邪魔になる場合には、汚染物に区分される解体対象物の搬出口に向かう通路を避けるように移動させ、邪魔にならない場合には、残置することが好ましい。
【0032】
次に、解体撤去していく際の第3段階について図5に基づいて説明する。
図5に示すように、汚染エリア3のエリアL1の上部側、レベル1エリアL1の下部側、エリアL2の上部側、エリアL2の下部側、レベル3エリアL3の部位に相当する解体部61を解体撤去していく。
【0033】
この解体撤去される解体部61に存在する解体対象物は、ほとんどが汚染物に区分される解体対象物であるため、これらの解体対象物は解体され、仮置きスペース6に搬送される。
【0034】
次に、解体撤去していく際の第4段階について図6に基づき説明する。
図6に示すように、汚染エリア3のレベル1エリアL1の上部側、レベル1エリアL1の下部側、レベル2エリアL2の左側の部位に相当する解体部61を解体撤去していく。
【0035】
次に、解体撤去していく際の第5段階について図7に基づき説明する。
図7に示すように、汚染エリア3のレベル1エリアL1の左側に相当する解体部61を解体撤去していく。
【0036】
このレベル1エリアL1は、汚染物に区分される解体対象物と、非汚染物に区分される解体対象物が混在していることがある。このため、非汚染物に区分される解体対象物は、汚染物に区分される解体対象物の搬送に邪魔になる場合には、汚染物を搬送するための、搬出口4に向かう通路を避けるように移動させ、邪魔にならない場合には、残置することができる。
【0037】
このように、本発明は、まず、仮置きスペース6を建屋10内に確保した上で、図4図7のように、搬出口4に近い方から順次解体撤去していく。この結果、搬出するスペースを確保しながら搬出口に近い方から順に奥側に設置された前記解体対象物を解体撤去していく方が、効率的に作業を進めることができる。
【0038】
上記説明では、図4図7の各段階を分けて解体撤去する例を説明したが、これに限定されない。本実施形態においては、建屋内の解体対象物を、搬出口4に近い方から解体撤去できればよく、例えば、図4図5の解体部61を同時に解体撤去してもよいし、図4図6図4図7までを同時に行ってもよい。
【0039】
また、本実施形態においては、図4図7に示す汚染エリア3のレベル1エリアL1、レベル2エリアL2、及びレベル3エリアL3の境界となる壁は原則的に残す。しかしながら必要に応じて、取り除くようにしてもよい。この際、後述する各汚染エリア3において、室圧差を設ける場合には、室圧差のコントロールを阻害しないように汚染された壁を取り除くことが好ましい。
【0040】
次に、本発明の好ましい他の態様を図8図9に基づき説明する。
低濃度PCB汚染物は、運搬ガイドラインに従い、密閉容器のラッピングの着脱、ラッピング、シート養生などで漏洩防止することが義務付けられている。このため、場外への汚染物を搬出するためには、建屋内に搬入搬出側に扉を設けた気密性を確保した空間を形成して、漏洩防止を行う必要がある。
ラッピングする方法としては、例えば、ラッピングをするためのラッピングマシーンを用いて、密閉容器のラッピング、汚染物を直接ラッピングすることができる。
【0041】
汚染物であってもラッピング、シート養生をすることによって、PCBの漏洩防止やコンタミの心配がなくなる。このため、形成された仮置きスペース6への仮置きが可能となり、仮置きスペース6の汚染を防ぐことができる。
【0042】
本発明においては、例えば、汚染エリア3のエリアL1の右側部分を、ラッピング室62として設け、このラッピング室62内で、密閉容器のラッピングの着脱、ラッピング、シート養生などを行うことが好ましい。汚染エリア3のエリアL1は、非汚染エリア2との境界に位置し、気密性を確保できる扉が設けられていると共に、レベルの異なるエリアの境界にも、汚染拡大を防ぐために、気密性を確保できる扉が設けられているため、このエリアL1の右側の部位は、ラッピング室62を設ける場所として好ましい。
【0043】
ラッピング室62内での密閉容器に汚染物を封入する場合、密閉容器を汚染エリア3に搬送し、汚染エリア3内で、汚染物を密閉容器に封入して、汚染物が封入された密閉容器をラッピング室62に搬送する。
【0044】
この場合、まず、ラッピング室62で、空の密閉容器にラッピングをし、ラッピングされた空の密閉容器を、汚染エリア3に搬送し、汚染エリア3内で、密閉容器に汚染物を封入する。この汚染物が封入された密閉容器をラッピング室62に搬送し、密閉容器のラッピングを取り除くことによって、密閉容器は汚染物に晒されていない状態となる。これによって、密閉容器は、ラッピング室62から外部に搬出し、必要であれば、仮置きスペース6に仮置きすることができる。密閉容器への汚染物の収納は、解体場所の付近で行われる場合が多いため、上述のようにすることにより、外部から持ち込まれる密閉容器が、汚染エリアで汚染するのを防ぐことができる。
【0045】
図8は、搬入扉620と搬出扉621とを備えるラッピング室62が設けられた場合における、図4に示す解体部61を解体撤去する段階を示す図であり、図9は、図5に示す解体部を解体撤去する段階を示す図である。
【0046】
ラッピング室62の搬入扉620は、レベル2エリアL2とレベル1エリアL1との境界の扉であり、搬出扉621は、汚染エリア3のエリアL1と非汚染エリア2との境界の扉である。これらの扉は気密性を確保できると共に、一方の扉が閉まらない限り、他方の扉は必ず閉まっている状態であり開かない、すなわち、両方同時に開放された状態にならない仕組みが構築されていることが好ましい。汚染の拡大を防ぐためである。
【0047】
本実施形態においては、ラッピング室62の出入口となる搬入扉620、搬出扉621は、既存の扉を用いて、既存の扉のある仮置きスペース6の一部をラッピング室62として利用してもよいし、搬入扉620、搬出扉621を、仮設扉として形成して、ラッピング室62を設けることもできる。
【0048】
また、後述する既存の換気設備を利用して、汚染拡大を防ぐ観点から、汚染エリア3、ラッピング室62、ラッピング室62以外の仮置きスペース6の順に室圧差を形成し、汚染エリア3を最も負圧にすることが好ましい。さらに、搬入扉、及び搬出扉を備えたラッピング室を設けると共に、後述する既存の換気設備を利用することにより、汚染拡大をより確実に防ぐことができる。
【0049】
これにより、外部への空気の流出が防げるため、汚染エリア3からのラッピング室62への汚染拡大を防止でき、また、仮にラッピング室62が汚染された場合であっても、ラッピング室からのラッピング室62以外の仮置きスペース6への汚染拡大を防ぐことができる。
【0050】
図8に示す解体部61の解体対象物のうち、汚染物に区分された解体対象物は、ラッピング室62に搬送され、密閉容器のラッピングの取り外し、ラッピング、シート養生等で汚染の拡大を防止するように処理される。図8において、非汚染物に区分された解体対象物は、汚染物に区分される解体対象物の搬送に邪魔になる場合には、汚染物に区分される解体対象物の搬出口に向かう通路を避けるように移動させ、邪魔にならない場合には、残置することが好ましい。
【0051】
具体的には、図9に示すように、例えば、汚染物に区分された解体対象物610を、搬入扉620からラッピング室62へ搬送する際、図9の前段階である図8の段階では、残置された非汚染物に区分された解体対象物63が、搬出口へ向かう通路上に、残置されている場合、汚染物に区分された解体対象物610の搬送の邪魔になる場合がある。
【0052】
この場合、汚染物に区分された解体対象物610の搬送前に、予め汚染物に区分された解体対象物610のラッピング室62への搬送の邪魔になる非汚染物に区分された解体対象物63を、例えば、図示のように、搬出口へ向かう通路を避けるように移動させておく。これにより、汚染物に区分された解体対象物610の搬送をスムーズに行えるようにする。この結果、ラッピング作業や搬送作業をスムーズに行うことができる。
【0053】
ここで、図10に基づいて、特許文献1の解体撤去方法について説明し、本発明の優位性を明らかにする。
特許文献1では、部屋単位で解体するとしており、管理区域レベルが高い方から、低い方の順に解体するとしている。
【0054】
管理区域レベルは、図10に示すように、汚染度の違いにより、レベル1エリア、レベル2エリア、レベル3エリアに区分けされる。図示の例では、汚染レベルがL1<L2<L3の順に高くなる。
従って、管理区域レベルは、汚染レベルに応じて、レベル3エリアL3>レベル2エリアL2>レベル1エリアL1の順になる。
【0055】
特許文献1では、汚染物の処理を所内処理しながら、施設を解体していく方法である。つまり、処理の過程で処理の順番に沿って、管理区域レベルが高い方から、低い方の順に解体するため、最初の第1段階は、レベル3エリアL3(エリアA)を解体撤去する。次いで第2段階は、レベル2エリアL2(エリアB)を解体撤去する。最後の第3段階は、レベル1エリアL1(エリアC)を解体撤去する。
【0056】
これに対して、本発明の解体撤去工法は、PCB管理区域に区分されたエリアによらず、搬出口の付近に解体対象物を搬出する仮置きスペースを形成するため、スペースを確保しながら搬出口に近い方から順に奥側に設置された前記汚染物を解体撤去していく。すなわち、搬出口(排出ルート)から順に荷捌きスペースを確保しながら奥へ向かって解体していくことになる。
【0057】
本発明では、PCB汚染物の外部へ漏洩を防止しながら、解体撤去していくことが好ましい。そのために、従来の管理レベルに関係なく、例えば、屋外から建屋内非汚染エリアまでを第1段階とし(図2参照)、これに続く、建屋内非汚染エリアから汚染エリアまでを第2段階~第5段階とし(図4図7参照)、エリア管理区分にて解体工事を進めることも好ましい。
【0058】
建物内部に汚染物がなくなれば、存在しないことを確認後、従前の一般建物解体方法で解体することもできる。
【0059】
本発明において、汚染物だけでなく、足場共通で一緒に解体できるのであれば、非汚染物も解体する方が合理的である。そうすれば排出スペースが広くでき、ストック量を多く滞留できる。このため搬出調整待ちによる手持ちがなくなり、継続的な解体工事が可能となる効果がある。またスペースが広くなることにより、これに接する解体工事が各所で可能になり、工事量の増大による工程の短縮が可能になる。
【0060】
特許文献1の解体撤去工法と、本発明の作用効果の差異を整理すると、以下のように表すこともできる。
【0061】
第1に、特許文献1の解体撤去工法では、高濃度PCBが存在している状態で、管理区域の汚染度の高い区域から、低い区域に向かって、除染をしながら解体撤去するのに対して、本発明では、高濃度PCBはすでに除染されて、低濃度PCBの汚染物、若しくは非汚染物になっている状態で、搬出口側から奥に向かって解体撤去するので、結果として、管理区域の汚染度の低い方から高い方に向かって搬出することになるので、搬出作業の安全性が確保される。さらに、本発明は、高濃度PCBが無い状態での解体物の取扱いになり、コンタミ防止が可能になる。
【0062】
第2に、特許文献1の解体撤去工法では、搬出ルート、搬出サイズが限定されるのに対して、本発明では、搬出ルート、搬出サイズは自由で制限がない効果がある。
【0063】
第3に、特許文献1の解体撤去工法では、搬出ストック空き地がないのに対して、本発明では、搬出口側(出口側)に大きなスペースを確保できる効果がある。
【0064】
第4に、特許文献1の解体撤去工法では、空き地は高濃度区域から空いてくるのに対して、本発明では、空地が多く、貯留でき、搬出調整ができ、搬出時の手待ちの発生がない効果がある。
【0065】
第5に、特許文献1の解体撤去工法では、汚染物の処理は所内処理が前提であるのに対して、本発明では、無害化処理施設送りが前提である。
【0066】
第6に、特許文献1の解体撤去工法では、管理区分ごとに段階踏んで解体撤去していくのに対して、本発明では、管理区分によらず、同時に複数個所の解体ができ、汚染物搬出が短期で済む効果がある。
【0067】
第7に、特許文献1の解体撤去工法では、汚染物の除染から解体までを所内処理で行っており、結果として、解体対象物の搬送作業の手間がかかる工法にならざるを得ないため、解体工程が長いのに対して、本発明では、解体工程が短期で済む効果がある。
【0068】
次に本発明の他の好ましい態様を説明する。
他の好ましい態様は、PCB処理施設全体を覆う上屋テントを設置せず、既設の換気・排気設備を使用しながら前記汚染物を解体撤去することである。この態様を図11に示す。
【0069】
PCBの外部漏洩を防止するため、図11の左図のように、上屋テントを設置するケースがある。図11の左図は、建物7の上部に、上屋テント8を設置した態様で、仮設設置型である。9は換気排気設備である。
【0070】
しかし、建物外壁が堅固なものであり気密性が保たれた場合には、建物外壁での気密性保持が可能であり、上屋テント8は不要である。図11の右図は、建物外壁が堅固なものであり気密性が保たれているので、建物外壁での気密性保持が可能であり、上屋テント8は省略されている。この態様は、既設流用型と称される。
【0071】
図11の左図に示すような、解体時に新たな仮設の換気排気設備を設けて解体工事を行う場合に比べ、図11の右図に示す態様では、既設を流用し、建屋内の負圧管理を行うので、上屋テントの設置工事が不要であり、工期の短縮及び経済的に有利である。
【0072】
既設流用型の図11の右図のように、既設の換気排気を24時間稼働しながらの汚染物解体を行う。この際、仮設の換気排気設備は不要である。
この態様では、建物7内の換気排気設備9に導入する各室から吸引ダクト類90や排出ダクト類91も既設を流用でき、新たなダクト類を仮設することも不要になる。
【0073】
なお、管理区域が異なる部屋の解体工法においては、それぞれの制御室圧が同じになるように設定すれば、間仕切壁撤去に伴う気流によるPCB汚染物の再飛散などを防止でき、コンタミ防止に役立つ。
【0074】
本発明の好ましい態様によれば、PCB処理施設全体を覆う上屋テントを設置せず、既設の換気・排気設備を使用しながら汚染物を解体撤去することである。
【0075】
この態様の作用効果を概略説明すると、第1に、既設の換気排気装置を使うことで、汚染物解体時での建物からの有害物質の飛散はなく、近隣への環境汚染は防止できる効果がある。
【0076】
また第2に、上屋テント設置の場合、上屋テント用に新たに仮設の換気排気装置を設置する必要があるが、この態様では、上屋テントを設置しないので、仮設の換気排気装置を設置する必要がない。
【0077】
さらに第3に、堅牢な気密性を有する既設建物の外壁を用いることにより、上屋テントを設置したと同じ効果を得ることができる。
【0078】
更に又、第4に、上屋テントの設置工事が大工事であるだけでなく、上屋テント基礎工事は、杭を数十本打設しなければならないのに対して、本発明ではテント用基礎工事を省略できる。また、上屋テント自体が汚染され、汚染廃棄物となるような事態を避けることができる。
【0079】
更に第5に、本発明では、汚染物解体期間であっても、既設の居室は使用が可能である。
【0080】
更に第6に、工事期間中で作業員が一番多い時期は、汚染物解体期間であるから、この時、既設を流用できれば、工事用仮設ハウスが小規模で済む。
【0081】
更に第7に、汚染物の解体撤去が終了後には、汚染物が全て搬出され、残りは非汚染物の建物、設備になるので、一般の建築物の解体と、同じ工法で解体できる。
【0082】
以上のような効果に加え、既存の換気設備を利用し、汚染エリア3の汚染度の高いエリアを負圧にして、それ以外のエリアとの室圧差を形成する仕組みを構築することにより、汚染物解体時での汚染エリア3から非汚染エリア2への有害物質の飛散がなくなり、外部への環境汚染を確実に防止することができる。
【0083】
さらに、上述した図9図10のように、ラッピング室62を設けた場合には、ラッピング室62は、仮置きスペース6の一部に設置されるため、非汚染エリア3と汚染エリア2との境界に形成され、これに既存の換気設備を利用することが好ましい。
【0084】
ラッピング室62と、汚染エリア3と非汚染エリア2との間で、既存の換気設備を利用することにより、汚染エリア3が最も負圧にし、ラッピング室62、非汚染エリア2の順に圧力を高くし、室圧差を形成する。
【0085】
さらに、非汚染エリア2と大気との間でも、大気側に気流が発生しないように、大気よりも非汚染エリアを負圧にする。具体的には、非汚染エリアに形成した仮置きスペース6は、搬出口4を介して、大気との境界となるため、仮置きスペース6についても、外部(大気)との室圧差を設け、仮置きスペース6を、大気よりも負圧になるように設定しておくことが好ましい。これにより、汚染物質の大気への流出をより確実に防ぐことができる。
【0086】
このように室圧差を形成する仕組みを構築しておくことにより、これらの室圧差を適切にコントロールでき、どのような状況でも、大気への汚染物質の流出を防ぐことができ、環境汚染をより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 :PCB処理施設
2 :非汚染エリア
3 :汚染エリア
4 :搬出口
6 :仮置きスペース
6a :非汚染エリアの一部エリア
6b :除染処理により非汚染レベルまで低減したエリア
7 :建物
8 :上屋テント
9 :換気排気設備
90 :吸引ダクト類
91 :排出ダクト類
10 :建屋
61 :解体部
610 :解体対象物
62 :ラッピング室
620 :搬入扉
621 :搬出扉
63 :解体対象物
図1
図2
図3
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図9
図10
図11