(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】再生砂原料組成物及びその製造方法、並びに再生砂及びレジンコーテッドサンドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B22C 5/00 20060101AFI20231011BHJP
B22C 1/00 20060101ALI20231011BHJP
B22C 1/22 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B22C5/00 A
B22C1/00 D
B22C1/22
(21)【出願番号】P 2022162671
(22)【出願日】2022-10-07
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】河津 洋
(72)【発明者】
【氏名】日高 浩作
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-216950(JP,A)
【文献】特開2012-076118(JP,A)
【文献】国際公開第2006/019047(WO,A1)
【文献】特開2003-136184(JP,A)
【文献】西村勝ら,石炭の粉砕によるコークス粉乃粒度分布制御,鉄と鋼,日本,日本鉄鋼協会,1998年08月,Vol.84, No.8,pp.541-546
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00-25/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃砂と平均粒径10μm~20mmの可燃性物質とを含む再生砂原料組成物
であって、前記再生砂原料組成物の強熱減量が1.0%~6.0%である、再生砂原料組成物。
【請求項2】
前記可燃性物質が、RPF、フラフ燃料、RDF、木粉、石炭粉、油脂、及び食物残渣からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項
1に記載の再生砂原料組成物。
【請求項3】
前記可燃性物質の比重と前記廃砂の比重との比(前記可燃性物質の比重/前記廃砂の比重)が0.1~1.0である、請求項1又は2に記載の再生砂原料組成物。
【請求項4】
前記廃砂が有機粘結剤を含む鋳物砂に由来する廃砂を含む、請求項1又は2に記載の再生砂原料組成物。
【請求項5】
廃砂と平均粒径10μm~20mmの可燃性物質とを混合することを含む再生砂原料組成物の製造方法
であって、前記再生砂原料組成物の強熱減量が1.0%~6.0%となるように、前記可燃性物質の混合量を調整することを更に含む、再生砂原料組成物の製造方法。
【請求項6】
前記可燃性物質が、RPF、フラフ燃料、RDF、木粉、石炭粉、油脂、及び食物残渣からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記可燃性物質の比重と前記廃砂の比重との比(前記可燃性物質の比重/前記廃砂の比重)が0.1~1.0である、請求項
5又は
6に記載の方法。
【請求項8】
前記廃砂が有機粘結剤を含む鋳物砂に由来する廃砂を含む、請求項
5又は
6に記載の方法。
【請求項9】
前記廃砂の解砕を前記混合と同時に行うことを含む、請求項
5又は
6に記載の方法。
【請求項10】
可燃性物質前駆体の粉砕を前記混合と同時に行って、前記再生砂原料組成物中で前記可燃性物質を形成することを含む、請求項
5又は
6に記載の方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の再生砂原料組成物を焼成することを含む、再生砂の製造方法。
【請求項12】
前記焼成における焼成温度が400℃~900℃である、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の再生砂原料組成物を焼成して再生砂を得ること、及び
前記再生砂に有機粘結剤をコーティングすること
を含むレジンコーテッドサンドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生砂原料組成物及びその製造方法、並びに再生砂及びレジンコーテッドサンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造工場で生型又は中子の形成に使用された鋳物砂(廃砂)を再生して使用することが広く行われている。廃砂から再生砂を製造する場合、廃砂の耐火性骨材に付着した有機分及び無機分を除去する必要がある。廃砂の再生方法としては、例えば、ロータリーキルン等の焙焼炉を用い、廃砂を流動させつつ上部又は下部からバーナーで加熱することにより、廃砂の付着物を燃焼除去する方法が知られている。
【0003】
特許文献1(特開昭60-216950号公報)には、鋳物砂に含有される可燃物が少ない又は鋳物砂に可燃物が含有されていない場合に、コークス粉、炭素系ダスト等の粒状可燃物を鋳物砂に添加し、この鋳物砂を自然焙焼することを含む鋳物砂の再生方法が記載されている。
【0004】
特許文献2(特公昭54-3042号公報)には、鋳物古砂に油脂、合成樹脂等の液体又は粉状、細粒状等の固体の可燃物を添加混合して流動層焙焼炉に入れ、古砂中に既に含まれている可燃性の粘結剤、配合剤及びそれらが不完全燃焼した炭化物とともに、炉内に送入される空気中の酸素と燃焼反応させることによって恒温で焙焼を行い、古砂に含まれている可燃物の燃焼並びに付着水及び構造水の蒸発を行うことを特徴とする鋳物古砂の再生方法が記載されている。
【0005】
特許文献3(特開2018-183812号公報)には、使用済み鋳物砂の再生方法であって、少なくとも砂及びゴムチップを混合した補助可燃物を用意する工程と、上記鋳物砂と上記補助可燃物とを混合する工程と、上記混合工程で得られた混合物を焼成する工程とを有する鋳物砂の再生方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭60-216950号公報
【文献】特公昭54-3042号公報
【文献】特開2018-183812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
廃砂は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、「廃棄物処理法」という。)に基づく産業廃棄物のうち鉱さいに該当する。廃砂の再生を、鋳造工場とは別の場所で行う場合、又は鋳造業者とは別の事業者が行う場合、廃砂の収集、運搬、中間処理、受渡し等は、廃棄物処理法に従って行われる必要がある。そのため、廃砂の再生に際しては、作業、処理費、及び事務手続に関連する多大なコストが発生する。また、産業廃棄物に該当する廃砂を焼成する場合、一般的には600℃~850℃の高温焼成が要求されるため、焙焼炉内の温度維持に多量の燃料を必要とし、このこともコストの増大を招く。
【0008】
廃砂に含まれる可燃物の量は、鋳造品の種類及び鋳造工程によって様々である。一般に、生型砂にはベントナイト等の無機粘結剤及び有機系添加物が使用され、中子砂にはフェノール樹脂等の有機粘結剤が使用される。鋳造品の形状によって生型砂及び中子砂の使用量は異なるため、使用済みの生型砂と中子砂とが分離されずに廃砂として回収されると、廃砂に含まれる可燃物の量は変動する。また、鋳造工程、特に鋳造温度は、鋳造品に含まれる金属の種類によって異なることから、鋳造工程は有機粘結剤の炭化度に影響する。
【0009】
廃砂に含まれる有機系添加物、有機粘結剤及びその炭化物は、廃砂の焼成の際に可燃物として燃焼して熱を生成する。この生成熱は焙焼炉内の温度に影響する。可燃物の付着量の少ない廃砂を焼成するときに、外部から燃料を加えずに焼成を行うと、焙焼炉内の温度が低下してしまい、焼成が不十分となるおそれがある。焙焼炉内への燃料の投入量が多いと、燃焼を制御して焙焼炉内の温度を安定させることが難しく、燃料のコストも増大する。したがって、廃砂の焼成時に外部から焙焼炉に投入する燃料、例えばA重油の量は、処理される廃砂の種類に応じて、焙焼炉の温度を監視しながら精密に制御する必要がある。
【0010】
本発明は、廃砂の再生に際して、取扱いが容易であり、安定的かつ効率的に焼成可能な再生砂原料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の態様を包含する。
[態様1]
廃砂と平均粒径10μm~20mmの可燃性物質とを含む再生砂原料組成物。
[態様2]
前記再生砂原料組成物の強熱減量が1.0%~6.0%である、態様1に記載の再生砂原料組成物。
[態様3]
前記可燃性物質が、RPF、フラフ燃料、RDF、木粉、石炭粉、油脂、及び食物残渣からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、態様1又は2に記載の再生砂原料組成物。
[態様4]
前記可燃性物質の比重と前記廃砂の比重との比(前記可燃性物質の比重/前記廃砂の比重)が0.1~1.0である、態様1~3のいずれかに記載の再生砂原料組成物。
[態様5]
前記廃砂が有機粘結剤を含む鋳物砂に由来する廃砂を含む、態様1~4のいずれかに記載の再生砂原料組成物。
[態様6]
廃砂と平均粒径10μm~20mmの可燃性物質とを混合することを含む再生砂原料組成物の製造方法。
[態様7]
前記再生砂原料組成物の強熱減量が1.0%~6.0%となるように、前記可燃性物質の混合量を調整することを更に含む、態様6に記載の方法。
[態様8]
前記可燃性物質が、RPF、フラフ燃料、RDF、木粉、石炭粉、油脂、及び食物残渣からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、態様6又は7に記載の方法。
[態様9]
前記可燃性物質の比重と前記廃砂の比重との比(前記可燃性物質の比重/前記廃砂の比重)が0.1~1.0である、態様6~8のいずれかに記載の方法。
[態様10]
前記廃砂が有機粘結剤を含む鋳物砂に由来する廃砂を含む、態様6~9のいずれかに記載の方法。
[態様11]
前記廃砂の解砕を前記混合と同時に行うことを含む、態様6~10のいずれかに記載の方法。
[態様12]
可燃性物質前駆体の粉砕を前記混合と同時に行って、前記再生砂原料組成物中で前記可燃性物質を形成することを含む、態様6~11のいずれかに記載の方法。
[態様13]
態様1~5のいずれかに記載の再生砂原料組成物を焼成することを含む、再生砂の製造方法。
[態様14]
前記焼成における焼成温度が400℃~900℃である、態様13に記載の方法。
[態様15]
態様1~5のいずれかに記載の再生砂原料組成物を焼成して再生砂を得ること、及び
前記再生砂に有機粘結剤をコーティングすること
を含むレジンコーテッドサンドの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態に係る再生砂原料組成物は、品質管理された一般製品として取り扱うことができ、外部から投入される燃料を低減し、焼成工程を安定化することができる。焼成工程の安定化は、製造される再生砂の品質の安定化にも寄与する。
【0013】
上述の記載は、本発明の全ての実施形態及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態の再生砂原料組成物、再生砂及びレジンコーテッドサンドの製造に係る全体のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の代表的な実施形態を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0016】
[再生砂原料組成物]
一実施形態の再生砂原料組成物は、廃砂と平均粒径10μm~20mmの可燃性物質とを含む。
【0017】
廃砂としては、鋳造工程で使用された後の鋳物砂、すなわち使用済みの生型砂、中子砂、又はこれらの混合物を使用することができる。
【0018】
鋳物砂を構成する耐火性骨材は、鋳型に利用可能な粒状材料であれば特に限定されない。耐火性骨材としては、例えば、ケイ砂、再生ケイ砂等の一般砂;アルミナサンド、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド等の特殊砂;フェロクロム系スラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグ等のスラグ系粒子;アルミナ系粒子、ムライト系粒子等の人工粒子及びこれらの再生粒子;アルミナボール;並びにマグネシアクリンカーが挙げられる。耐火性骨材は単独で又は二種以上組みわせて使用することができる。耐火性骨材は、新品であってもよく、鋳物砂として鋳型の造形に一回又は複数回使用された再生品又は回収品であってもよく、新品と再生品又は回収品との混合物であってもよい。
【0019】
鋳物砂を構成する耐火性骨材は、一般に30~130の粒度を有し、好ましくは40~80の粒度を有する。鋳物砂の粒度は、JACT試験法S-1(鋳物砂の粒度試験法)に定められたAFS係数基準に従って決定される。
【0020】
鋳物砂を構成する耐火性骨材は球状であることが好ましい。具体的には、耐火性骨材の粒形係数は好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0~1.1である。粒形係数(粒径指数とも呼ばれる。)は、粒子の外形形状を示す一つの尺度であり、その値が1に近い程、粒子が球形(真球)に近い形状を有することを意味する。粒形係数は、砂表面積測定器(ジョージフィッシャー社製)を用いて1gあたりの骨材粒子の実表面積を測定し、骨材の理論表面積で割ることにより算出される。骨材の理論表面積は、骨材粒子が全て球形であると仮定した場合の表面積である。
【0021】
鋳物砂を構成する耐火性骨材の表面には一般に粘結剤が付着している。粘結剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、架橋硬化性樹脂等の有機粘結剤;水ガラス、ベントナイト等の無機粘結剤;及び粘土等の一般的な粘結剤が挙げられる。有機粘結剤に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、及びポリスチレンが挙げられる。有機粘結剤に含まれる架橋硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、フェノールウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、及び不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。一般に、生型砂は無機粘結剤を含み、中子砂は有機粘結剤を含む。
【0022】
一実施形態では、廃砂は有機粘結剤を含む鋳物砂に由来する廃砂を含む。有機粘結剤を含む鋳物砂に由来する廃砂は、焼成工程においてより効率的に焼成することができる。鋳物砂に含まれる有機粘結剤の少なくとも一部は、一般に鋳造工程で炭化物に変換される。したがって、廃砂は有機粘結剤及び/又はその炭化物を含んでもよい。
【0023】
一実施形態では、廃砂は、0.1~10質量%の可燃性成分を含む。本開示において可燃性成分の質量とは有機系添加物、有機粘結剤及び炭化物の合計質量を意味する。
【0024】
可燃性物質の平均粒径は10μm~20mmであり、好ましくは50μm~10mm、より好ましくは100μm~1mmである。平均粒径が10μm~20mmの可燃性物質は、廃砂の耐火性骨材に付着した可燃性成分とは異なり耐火性骨材と密に接触していないため、質量あたりの表面積が比較的大きく、耐火性骨材からの燃焼抑制の影響も受けにくい。そのため、廃砂に平均粒径が10μm~20mmの可燃性物質を加えることにより、高い燃焼効率を達成することができる。また、可燃性物質の平均粒径が10μm以上であることにより、焙焼炉から集塵ダクトに飛散する可燃性物質の量を低減して、燃焼効率を高めることができる。可燃性物質の平均粒径が20mm以下であることにより、焼成工程で可燃性物質を安定的に燃焼させることができる。可燃性物質が安定的に燃焼すると、可燃性物質由来の不純物の再生砂への混入が抑制されるため、再生砂の品質を高めることもできる。可燃性物質の平均粒径は、レーザ回折散乱法により測定される体積累積粒径D50(平均粒径が10μm~53μmの場合)又はふるい分析により決定される質量累積粒径D50(平均粒径が53μm超、20mm以下の場合)である。
【0025】
可燃性物質としては、特に限定されないが、例えば、RPF、フラフ燃料、RDF、木粉、石炭粉、油脂、及び食物残渣が挙げられる。RPF(Refuse derived Paper and plastics densified Fuel)とは、産業廃棄物のうち、マテリアルリサイクルが困難な古紙及び廃プラスチック類を主原料とした固形燃料である。フラフ燃料(CPF、Cube Plastic Fuel)とは、軟質の廃プラスチック類、木くず等を破砕し、圧縮及び梱包してキューブ状にしたものである。RDF(Refuse Derived Fuel)とは、一般家庭から捨てられた生ゴミ、プラスチックゴミ等の廃棄物を原料とした固形燃料であり、廃棄物固形燃料又はごみ固形燃料とも呼ばれる。平均粒径が上記範囲外の、具体的には大きな塊のRPF、フラフ燃料、RDF等は、必要に応じて、平均粒径が10μm~20mmとなるように、粉砕、切断等により細粒化される。RPF、フラフ燃料、RDF、食物残渣などの廃棄物又は廃棄物由来燃料を可燃性物質として使用することにより、これらの廃棄物の処理及び再生砂の製造に係る排出CO2量を全体として削減することができる。可燃性物質は単独で又は二種以上組みわせて使用することができる。
【0026】
可燃性物質の単位質量あたりの発熱量は、好ましくは5,000kJ/kg~50,000kJ/kg、より好ましくは10,000kJ/kg~50,000kJ/kg、更に好ましくは20,000kJ/kg~50,000kJ/kgである。可燃性物質の単位質量あたりの発熱量を5,000kJ/kg以上とすることにより、耐火性骨材による熱抑制の影響を打ち消すような強い燃焼を生じさせることができる。可燃性物質の単位質量あたりの発熱量を50,000kJ/kg以下とすることにより、部分的又は局所的な強い発熱を抑制し、燃焼中の可燃性物質に接している廃砂の耐火性骨材の破損を防ぐことができる。可燃性物質の単位質量あたりの発熱量は、JIS M 8814:2003によって決定される。
【0027】
可燃性物質の配合量は、廃砂に含まれる可燃性成分、及び可燃性物質の単位質量あたりの発熱量に応じて適宜調整することができる。可燃性物質の配合量は、例えば、廃砂100質量部を基準として、0.1質量部~10質量部とすることができ、好ましくは0.5質量部~5.0質量部、より好ましくは1.0質量部~3.0質量部である。可燃性物質の配合量を上記範囲とすることにより、再生砂原料組成物の焼成温度を適切な範囲に容易に維持することができる。
【0028】
一実施形態では、再生砂原料組成物の強熱減量(LOI、Loss of Ignition)は1.0%~6.0%であり、好ましくは1.5%~5.0%、より好ましくは2.0%~4.0%である。強熱減量は、熱分解及び燃焼したときに生じる再生砂原料組成物の質量変化の程度を示す指標であり、焼成時に再生砂原料組成物が焙焼炉内の環境に放出することのできる熱エネルギー量に対応する。再生砂原料組成物の強熱減量を1.0%~6.0%とすることにより、再生砂原料組成物の焙焼炉への投入速度の変動を小さくすることができ、これにより製造される再生砂の品質を安定化することができる。特に、再生砂原料組成物の強熱減量を1.0%以上とすることにより、再生砂原料組成物の焼成温度の低下を抑制し、焙焼炉内の温度を維持するために外部から任意で焙焼炉内に投入される燃料の使用量を削減することができる。再生砂原料組成物の強熱減量を6.0%以下とすることにより、焼成時の燃焼を制御して、焙焼炉の損傷を抑制することができ、製造される再生砂の品質も安定化することができる。強熱減量は、JACT試験法S-2(鋳物砂の強熱減量試験法)に準拠して決定される。具体的には、再生砂原料組成物の遊離水分をJIS Z 2601:1993に準拠して除去する。正確に秤量した再生砂原料組成物10g(W1)をるつぼに入れる。このるつぼを予め1000℃に加熱した電気炉内に15分間放置する。引き続き、るつぼを1000℃の電気炉内で45分間強熱する。電気炉から取り出したるつぼをデシケータ内で室温まで放冷する。その後、再生砂原料組成物の質量(W2)を測定する。下式に従って強熱減量を算出する。
強熱減量(%)=(W1-W2)/W1×100
【0029】
一実施形態では、可燃性物質の比重と廃砂の比重との比(可燃性物質の比重/廃砂の比重)は0.1~1.0であり、好ましくは0.15~0.8、より好ましくは0.2~0.7である。可燃性物質の比重と廃砂の比重との比を上記範囲とすることにより、再生砂原料組成物の製造時の可燃性物質と廃砂の均一な混合を容易にし、再生砂原料組成物の保管中及び運搬時の可燃性物質と廃砂の分離を抑制し、再生砂原料組成物の焼成安定性を長期間にわたって維持することができる。本開示において可燃性物質及び廃砂の比重とは嵩比重を意味する。以下の手順で嵩比重が決定される。再生砂原料組成物の廃砂と可燃性物質とを、風力選別、水中選別、目視又は顕微鏡による手動選別などにより分離する。廃砂には大きな塊状のものが含まれている場合があるため、ふるいによって20mm以下のサイズにしたものを嵩比重の決定に使用する。廃砂1000gを3Lメジャーカップに量り取り、その容量から廃砂の嵩比重を算出する。同じ廃砂1000gと、所定量例えば100gの可燃性物質を均一になるまで混合し、混合物を3Lメジャーカップに入れ、廃砂の容量と比較して増加した容量から、可燃性物質のみの嵩比重を算出する。再生砂原料組成物の調製に使用した廃砂及び可燃性物質の各比重から上記比を算出することもできる。
【0030】
[再生砂原料組成物の製造方法]
再生砂原料組成物は、廃砂と平均粒径10μm~20mmの可燃性物質とを混合することにより製造することができる。混合装置としては、例えば、鉱物又は粉粒体用の混合ミキサー、及びセメント又はモルタル用のミキサーが挙げられる。
【0031】
一実施形態では、再生砂原料組成物の強熱減量が1.0%~6.0%となるように、可燃性物質の混合量を調整する。廃砂に含まれる可燃性成分は、鋳造工程、鋳造品の種類などによって様々であるため、廃砂の強熱減量を測定した後、可燃性物質の単位質量あたりの発熱量に基づき、可燃性物質の混合量を強熱減量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0032】
一実施形態では、廃砂の解砕が、廃砂と可燃性物質との混合と同時に行われる。鋳造工程で使用された鋳型は、回収時にその形状の一部乃至全部を保持している場合があり、そのような鋳型に含まれる廃砂は再生時に解砕される必要がある。この実施形態によれば、廃砂の解砕と、廃砂と可燃性物質との混合を同時に行うことにより、別個の解砕工程をなくすことができ、再生砂原料組成物の全体の製造効率を高めることができる。この実施形態において使用できる混合装置としては、例えば、鉱物又は粉粒体用の混合ミキサー、及びセメント又はモルタル用のミキサーが挙げられる。
【0033】
一実施形態では、可燃性物質前駆体の粉砕が、廃砂と可燃性物質との混合と同時に行なわれて、再生砂原料組成物中で可燃性物質が形成される。可燃性物質前駆体とは、可燃性物質について説明した材料、例えば、RPF、フラフ燃料、RDF、木粉、石炭粉、油脂、食物残渣などのうち、平均粒径が20mm超のものを指す。この実施形態によれば、可燃性物質前駆体の粉砕と、廃砂と可燃性物質との混合を同時に行うことにより、別個の粉砕工程をなくすことができ、再生砂原料組成物の全体の製造効率を高めることができる。この実施形態において、廃砂は可燃性物質の粉砕媒体として作用することもできる。この実施形態において使用できる混合装置としては、例えば、鉱物又は粉粒体用の混合ミキサー、及びセメント又はモルタル用のミキサーが挙げられる。
【0034】
製造された再生砂原料組成物は、フレキシブルコンテナバッグ等の包装容器に収容してもよく、粉粒体運搬車のタンクに収容してもよい。再生砂原料組成物は、廃棄物処理法上の産業廃棄物としてではなく、品質管理された一般製品として運搬、保管、及び取引することができる。そのため、再生砂原料組成物を用いて、焼成工程を含む再生処理を鋳造工場とは別の場所で容易に行うことができる。
【0035】
[再生砂の製造方法]
一実施形態の再生砂の製造方法は、再生砂原料組成物を焼成することを含む。この焼成により再生砂を製造することができる。再生砂原料組成物に含まれる可燃性物質は燃料として作用するため、焙焼炉内の温度を適切な範囲に維持して、焼成を効率よく進行させることができる。任意で廃砂に含まれる可燃性成分も燃料として作用する。
【0036】
焼成工程では、再生砂原料組成物を焙焼炉内に投入することにより焼成が行われる。焙焼炉としては、例えば、流動床式焙焼炉、ロータリーキルン、及びトンネルキルンが挙げられる。
【0037】
焼成温度は、好ましくは400℃~900℃、より好ましくは500℃~850℃、更に好ましくは600℃~800℃である。焼成温度を400℃以上とすることにより、可燃性物質、及び任意に廃砂に含まれる可燃性成分を十分に燃焼させることができる。焼成温度を900℃以下とすることにより、焙焼炉への熱負荷を抑制し、焙焼炉内の温度維持に係るコスト、例えば燃料コストを低減することができる。
【0038】
焼成工程において、焙焼炉内の温度を維持するために、必要に応じて燃料を投入してもよい。燃料としては、例えばA重油、灯油、都市ガス、プロパンガス、LPG、LNG等が挙げられる。
【0039】
再生砂の製造方法は、焼成工程の後に、焼成工程で得られた砂を研磨する工程、研磨工程後の砂を分級する工程、又はこれらの両方を含んでもよい。研磨工程により焼成工程後の砂表面の付着物を除去して高純度の再生砂を製造することができる。分級工程により粒径の揃った高品質の再生砂を製造することができる。
【0040】
研磨工程で使用可能な装置としては、例えば、ロータリーリクレーマー、ハイブリッドサンドマスター、サンドフレッシャー、及びサンドシャイナーが挙げられる。
【0041】
分級工程は、空気流により研磨工程後の砂を流動させ、集塵装置によりこの砂に含まれる微粉体を取り除く工程と、ふるいにより研磨工程後の砂に含まれる異物を取り除く工程とを含むことが好ましい。これにより、研磨工程後の砂に混入した微粉及び異物を適切に取り除くことができる。分級工程は、上記2つの工程のいずれかのみを含むものであってもよい。
【0042】
[レジンコーテッドサンドの製造方法]
一実施形態のレジンコーテッドサンドの製造方法は、再生砂原料組成物を焼成して再生砂を得ること、及び再生砂に有機粘結剤をコーティングすることを含む。
【0043】
再生砂の製造については、再生砂の製造方法について上述したとおりである。
【0044】
再生砂にコーティングされる有機粘結剤は、レジンコーテッドサンドに使用されているものであれば特に限定されない。一例として、有機粘結剤は、ノボラック型フェノール樹脂等の樹脂成分と、ヘキサメチレンテトラミン等の硬化促進剤と、ステアリン酸カルシウム等の滑剤を含む。
【0045】
有機粘結剤のコーティング方法は特に限定されない。例えば、コーティングは、130~180℃に加熱された再生砂に硬化性樹脂成分を添加して混合した後、硬化促進剤及び滑剤を添加して更に混合することによって行うことができる。これにより、再生砂を利用したレジンコーテッドサンドを得ることができる。
【0046】
図1に、一実施形態の再生砂原料組成物、再生砂及びレジンコーテッドサンドの製造に係る全体のフローチャートを示す。左側の点線の四角形は鋳物工場で行われる工程を示しており、右側の点線の四角形は再生工場で行われる工程を示す。鋳物工場及び再生工場は同一事業者によって運営されてもよく、別の事業者によって独立に運営されてもよい。
【0047】
鋳物工場では、鋳物砂を造型することにより生型及び必要に応じて中子が作られ、これらの型を型合わせすることにより鋳型が作られる。鋳型を用いた鋳造工程の後、鋳造品から使用済みの鋳型が外されて廃砂として回収される。廃砂と可燃性物質とを混合することにより再生砂原料組成物が得られる。再生砂原料組成物は品質管理された一般製品として運搬、保管及び取引することができる。
図1では、鋳物工場から再生工場に再生砂原料組成物が運搬され、必要に応じて外部倉庫に一旦保管される。
【0048】
鋳物工場から再生砂原料組成物を受け入れた再生工場では、必要に応じて前処理を行った後、再生砂原料組成物を焼成する。焼成により再生砂が得られる。焼成工程の後に必要に応じて研磨、分級等の後処理を行ってもよい。再生砂は製品として販売してもよく、次工程の中間体として使用してもよい。
図1では、同じ再生工場において再生砂に有機粘結剤をコーティングすることによりレジンコーテッドサンドが製造される。得られたレジンコーテッドサンドは再び鋳物工場において鋳物砂として使用することができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
可燃性物質として以下のものを使用した。
RPF(大和エネルフ株式会社製、平均粒径10mm、嵩比重0.4g/cm3、発熱量32,000kJ/kg)
フラフ燃料(株式会社紙資源名古屋製、平均粒径15mm、嵩比重0.35g/cm3、発熱量30,096kJ/kg)
木粉(株式会社紙資源名古屋製、平均粒径1mm、嵩比重0.5g/cm3、発熱量14,400kJ/kg)
石炭粉(旭通商株式会社、平均粒径150μm、嵩比重0.6g/cm3、発熱量30,100kJ/kg)
【0051】
表1に様々な鋳造工場から排出された廃砂の性状、並びに下記の条件で焼成したときの燃料(A重油)使用量及び総発熱量を示す。
焙焼炉処理能力:24t/日
廃砂の投入速度:1t/時間
温度:700℃
空気流量:10m3/分
【0052】
【0053】
表1に示されるように、廃砂の種類によって強熱減量及び発熱量が異なることから、総発熱量を同程度とするために、燃料の使用量を大きく変化させる必要がある。
【0054】
強熱減量はJACT試験法 S-2(鋳物砂の強熱減量試験法)に準じて測定した。
【0055】
発熱量はJIS M 8814:2003に準じて測定した。
【0056】
総発熱量はJIS M 8814:2003に準じて測定した。
【0057】
[例1~例3及び比較例1]
表2に記載の組成で廃砂と可燃性物質とをサンドミキサーを用いて25℃で10分間混合して、例1~例3の再生砂原料組成物を調製した。比較例1は廃砂Aである。表2にこれらの性状及び焼成したときの燃料(A重油)使用量及び総発熱量を示す。焼成は廃砂の焼成と同じ条件で行った。
【0058】
【0059】
例1~例3の再生砂原料組成物は、比較例1と比べて燃料使用量を低減することができた。特に、例2の再生砂原料組成物は、燃料使用量を1/5以下に低減することができた。
【0060】
[例3~例5]
表3に記載の組成で廃砂と可燃性物質とをサンドミキサーを用いて25℃で10分間混合して、例3~例5の再生砂原料組成物を調製した。表3にこれらの再生砂原料組成物の性状及び焼成したときの燃料(A重油)使用量及び総発熱量を示す。焼成は廃砂の焼成と同じ条件で行った。表3に比較例1及び例2の結果も参考までに示す。
【0061】
【0062】
例3~例5の再生砂原料組成物は、比較例1と比べて燃料使用量を低減することができた。特に、可燃性物質としてRPF(例2)、フラフ燃料(例3)、又は石炭粉(例5)を用いた場合、比較例1と比べて燃料使用量を大幅に低減することができた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示の再生砂原料組成物は、取扱いが容易であり、安定的かつ効率的に焼成できることから、廃砂の再生に有利に使用することができる。
【要約】
【課題】廃砂の再生に際して、取扱いが容易であり、安定的かつ効率的に焼成可能な再生砂原料を提供する。
【解決手段】廃砂と平均粒径10μm~20mmの可燃性物質とを含む再生砂原料組成物。
【選択図】
図1