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特許7364778学習用データセット生成装置および学習用データセット生成方法
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  • 特許-学習用データセット生成装置および学習用データセット生成方法 図1
  • 特許-学習用データセット生成装置および学習用データセット生成方法 図2
  • 特許-学習用データセット生成装置および学習用データセット生成方法 図3
  • 特許-学習用データセット生成装置および学習用データセット生成方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】学習用データセット生成装置および学習用データセット生成方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20231011BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20231011BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20231011BHJP
   G05B 19/4155 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B25J9/22 A
B25J13/08 A
G05B19/42 J
G05B19/4155 V
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022501926
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2021005864
(87)【国際公開番号】W WO2021166939
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020026277
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 俊之
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-058960(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0084151(US,A1)
【文献】特開2019-153246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/22
B25J 13/08
G05B 19/42
G05B 19/4155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークおよびコンテナの3次元CADデータと、3次元実空間内のコンテナを撮像した距離画像とを記憶するメモリと、
ハードウェアを含む1つ以上のプロセッサとを備え、
該プロセッサが、
前記メモリに記憶されている前記ワークおよび前記コンテナの3次元CADデータを用いて、前記コンテナ内に複数の前記ワークが異なる形態でバラ積みされた複数の被写体を仮想3次元空間内に生成し、
前記距離画像に基づいて、前記コンテナと仮想3次元計測機の配置を設定し、
生成された各前記被写体を前記仮想3次元計測機により計測して複数の仮想距離画像を取得し、
取得された各前記仮想距離画像に対して少なくとも1つのワークの重心位置に対応する教示位置を受け付け、
受け付けた前記教示位置を各前記仮想距離画像に対応付けることにより学習用データセットを生成する学習用データセット生成装置。
【請求項2】
前記プロセッサが、3次元実空間内に設置された3次元計測機により取得された前記距離画像を用いて、前記コンテナに対する前記3次元計測機の配置に一致する位置に、前記仮想3次元空間内の前記コンテナに対する前記仮想3次元計測機の位置を設定する請求項1に記載の学習用データセット生成装置。
【請求項3】
ワークおよびコンテナの3次元CADデータを用いて、前記コンテナ内に複数の前記ワークが異なる形態でバラ積みされた複数の被写体を仮想3次元空間内に生成し、
3次元実空間内のコンテナを撮像した距離画像に基づいて、前記コンテナと仮想3次元計測機の配置を設定し、
生成された各前記被写体を前記仮想3次元計測機により計測して複数の仮想距離画像を取得し、
取得された各前記仮想距離画像に対して少なくとも1つのワークの重心位置に対応する教示位置を受け付け、
受け付けた前記教示位置を各前記仮想距離画像に対応付けることにより学習用データセットを生成する学習用データセット生成方法。
【請求項4】
3次元実空間内に設置された3次元計測機により取得された前記距離画像を用いて、前記コンテナに対する前記3次元計測機の配置に一致する位置に、前記仮想3次元空間内の前記コンテナに対する前記仮想3次元計測機の位置を設定する請求項3に記載の学習用データセット生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、学習用データセット生成装置および学習用データセット生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のワークの距離画像を3次元計測機により取得し、取得された距離画像からなる教示データに、教示位置を示すラベルマップを対応付けて記憶することにより、機械学習に用いるデータセットを生成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の方法は、例えば、コンテナ内にバラ積みされた複数のワークをロボットに装着されたハンドによって1つずつ取り出す際の取り出し位置を推定する学習済みモデルの生成に用いられる。精度の高い学習済みモデルを生成するには、膨大な数のデータセットを用意する必要がある。すなわち、データセットの生成毎に複数のワークを異なる形態にバラ積みして3次元計測機により距離画像を取得する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-58960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロボットによりハンドリングされるワークは、1つ1つの重量が大きいので、各データセットの生成毎に、複数のワークを異なる形態にバラ積みし直す作業を実施する場合には、多大な時間と労力が必要となる。したがって、実際のワークをバラ積みし直す作業を実施することなく学習用データセットを生成することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ワークおよびコンテナの3次元CADデータと、3次元実空間内のコンテナを撮像した距離画像とを記憶するメモリと、ハードウェアを含む1つ以上のプロセッサとを備え、該プロセッサが、前記メモリに記憶されている前記ワークおよび前記コンテナの3次元CADデータを用いて、前記コンテナ内に複数の前記ワークが異なる形態でバラ積みされた複数の被写体を仮想3次元空間内に生成し、前記距離画像に基づいて、前記コンテナと仮想3次元計測機の配置を設定し、生成された各前記被写体を前記仮想3次元計測機により計測して複数の仮想距離画像を取得し、取得された各前記仮想距離画像に対して少なくとも1つのワークの重心位置に対応する教示位置を受け付け、受け付けた前記教示位置を各前記仮想距離画像に対応付けることにより学習用データセットを生成する学習用データセット生成装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る学習用データセット生成装置および学習用データセット生成方法を適用するロボットシステムを示す全体構成図である。
図2図1の学習用データセット生成装置を示すブロック図である。
図3図2の学習用データセット生成装置を用いた学習用データセット生成方法を説明するフローチャートである。
図4図3の学習用データセット生成方法の変形例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係る学習用データセット生成装置1および学習用データセット生成方法について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る学習用データセット生成装置1は、図1に示されるように、先端にハンド111を有するロボット110と、ロボット110に対して精度よく位置決めされ、鉛直下方に計測範囲を有する3次元計測機120とを備えるロボットシステム100に適用される。
【0009】
このロボットシステム100においては、3次元計測機120の計測範囲内に、多数のワークWがバラ積み状態に収容されたコンテナXから、ロボット110がワークWを1つ1つ取り出すための取り出し位置を推定する学習済みモデルが使用される。
本実施形態に係る学習用データセット生成装置1は、この学習済みモデルを生成するために用いる膨大な数の学習用データセットを生成する装置である。
【0010】
学習用データセット生成装置1は、図2に示されるように、コンピュータであって、メモリ2と、プロセッサ3と、モニタ4と、入力装置5としてキーボードおよびマウスとを備えている。メモリ2には、実際に取り扱うワークWの3次元CADデータおよび実際に使用されるコンテナXの3次元CADデータが記憶されている。
【0011】
プロセッサ3は、メモリ2に記憶されている3次元CADデータのコンテナX内に、3次元CADデータの複数のワークWを異なる形態でバラ積みした複数の仮想的な被写体を生成する。3次元CADデータのワークWの位置および姿勢をランダムに切り替えることにより、異なる形態でバラ積みされた複数の仮想的な被写体を、短時間で簡易に生成することができる。
【0012】
プロセッサ3は、仮想3次元空間内に、生成された3次元CADデータの各被写体を配置し、同じ仮想3次元空間内に設置された仮想3次元計測機により各被写体の距離画像を公知の方法により取得する。
プロセッサ3は、距離画像が取得される都度に、取得された距離画像をモニタ4に表示して、ロボット110による取り出し可能なワークWをユーザに選択させる。
【0013】
すなわち、モニタ4に表示された距離画像を目視したユーザが、取り出し可能と考えるワークWを入力装置5であるマウスまたはキーボードによって指定する。これにより、プロセッサ3は、ユーザによって指定された1以上のワークWの位置(例えば、重心位置)を、それらのワークWを取り出すためのロボット110の1以上の教示位置として受け付ける。
【0014】
そして、プロセッサ3は、受け付けた教示位置を左記に取得した距離画像に対応付けることにより学習用データセットを生成し、メモリ2に記憶する。各被写体に対して同じ処理を繰り返すことにより、膨大な数の学習用データセットを短時間で簡易に生成することができる。
【0015】
このように構成された本実施形態に係る学習用データセット生成装置1を用いた学習用データセット生成方法について以下に説明する。
まず、プロセッサ3により定義される仮想3次元空間内に、仮想ロボットの3次元モデルおよび仮想3次元計測機を、3次元実空間に設置されているロボット110および3次元計測機120の位置関係に一致する位置関係で設置する。
【0016】
また、実際に取り扱うワークWの3次元CADデータおよびワークWをバラ積み状態に収容するコンテナXの3次元CADデータをメモリ2に記憶しておく。
次に、図3に示されるように、バラ積みのパラメータを設定する(ステップS1)。パラメータは、例えば、コンテナX内に収容するワークWの数、コンテナXの底面に配置する複数個のワークWの位置および姿勢である。
【0017】
そして、3次元CADデータのコンテナX内に、3次元CADデータの複数のワークWを、設定されたパラメータを用いてバラ積み状態に収容していく。これにより、コンテナX内に複数のワークWがバラ積み状態に収容された3次元CADデータからなる仮想的な被写体(仮想被写体)が生成される(ステップS2)。
【0018】
生成された3次元CADデータからなる仮想的な被写体を、仮想3次元空間内に設定された仮想3次元計測機により計測し、仮想的な被写体の距離画像(仮想距離画像)を取得する(ステップS3)。
そして、取得された距離画像をモニタ4に表示し(ステップS4)、表示された距離画像に対して、ユーザに、取り出し可能なワークWを指定させる(ステップS5)。これにより、指定されたワークWの重心位置が教示位置として受け付けられる。
【0019】
取出し可能なワークWの指定が終了したか否かを判定し(ステップS6)、終了していない場合には、ステップS5によるワークWの指定を繰り返す。終了した場合には、受け付けられた1以上の教示位置を距離画像に対応付けることにより、学習用データセットを生成する(ステップS7)。1の被写体に対して学習用データセットが生成された場合には、生成を終了するか否かをユーザに入力させ(ステップS8)、終了しない場合には、パラメータを変更し(ステップS9)、ステップS2からの工程を繰り返す。
【0020】
これにより、コンテナX内に複数のワークWが異なる形態にバラ積み状態に収容された多数の被写体について学習用データセットを短時間で簡易に生成することができるという利点がある。すなわち、ユーザが、学習用データセットの生成毎に、実際の大重量のワークWを取り扱って異なる形態にバラ積みする必要がなく、ユーザにかかる負担を軽減できるとともに、学習用データセットの生成に要する時間を短縮することができる。
【0021】
そして、生成された多数の学習用データセットを用いて機械学習を行うことにより、精度の高い学習済みモデルを生成することができる。
ロボット110によりコンテナX内からワークWを取り出す場合には、3次元実空間内に配置されている3次元計測機120により、その3次元計測機120の計測範囲に配置された、実際のワークWをバラ積み状態に収容したコンテナXの距離画像を取得する。そして、取得された距離画像を学習済みモデルに入力することにより、ロボット110により取り出し可能な少なくとも1つのワークWの取り出し位置を推定することができる。
【0022】
なお、本実施形態においては、仮想3次元空間に配置された仮想3次元計測機とコンテナXとの位置関係が、3次元実空間内に配置されている3次元計測機120とコンテナXとの位置関係と精度よく一致していることを前提とした。しかしながら、3次元実空間においてコンテナXを3次元計測機120に精度よく位置決めすることは困難である。
【0023】
そこで、図4に示されるように、学習用データセットの生成に先立って、3次元実空間に3次元計測機120を固定しておき、3次元計測機120の計測範囲内にコンテナXを配置してコンテナXの実際の距離画像(実距離画像)を取得する(ステップS10)。取得されたコンテナXの実際の距離画像から、3次元計測機120とコンテナXとの相対位置(実相対位置)を算出する(ステップS11)。
【0024】
そして、仮想3次元空間内において、仮想3次元計測機およびコンテナXの少なくとも一方を移動させる。これにより、仮想3次元計測機とコンテナXとの相対位置(仮想相対位置)を3次元実空間内の3次元計測機120とコンテナXとの実相対位置に一致させ(ステップS12)、ステップS1の工程に移行する。
【0025】
このような処理を学習用データセットの生成に先立って行っておくことにより、取り出し可能なワークWをユーザに指定させるためにモニタ4に表示する仮想距離画像を、実際の3次元計測機120により取得した実距離画像に近づけることができる。したがって、仮想距離画像に対応付ける教示位置の精度を向上することができ、実距離画像に基づく取り出し位置の推定精度を向上可能な学習用データセットを生成することができるという利点がある。
【符号の説明】
【0026】
1 学習用データセット生成装置
2 メモリ
3 プロセッサ
120 3次元計測機
X コンテナ
W ワーク
図1
図2
図3
図4