(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】発泡ポリウレタン樹脂組成物および発泡ポリウレタンエラストマー
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20231011BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20231011BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20231011BHJP
C08G 18/18 20060101ALI20231011BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/48 004
C08G18/75 010
C08G18/18
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2022505182
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007399
(87)【国際公開番号】W WO2021177175
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2020037726
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】青木 航
(72)【発明者】
【氏名】橋口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】森田 裕史
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-023656(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092744(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102383311(CN,A)
【文献】国際公開第2018/207807(WO,A1)
【文献】特開2014-037505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート原料と、ポリオール原料と、水と、触媒とを含む発泡ポリウレタン樹脂組成物であり、
前記ポリイソシアネート原料は、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有し、
前記ポリオール原料は、
結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、
非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールと
を含有し、
前記ポリイソシアネート原料の総量に対して、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの割合が、98質量%以上であり、
前記ポリオール原料の総量に対して、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールの合計量が、90質量%以上であり、
結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールの総量に対して、前記結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールが、60質量%以上90質量%以下である
ことを特徴とする、発泡ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記発泡ポリウレタン樹脂組成物は、
前記ポリイソシアネート原料、および、前記ポリオール原料の一部の反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーを含む第1液と、
前記ポリオール原料の前記一部に対する残部、前記水および前記触媒を含有する第2液と
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の発泡ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記触媒が、1,3,5-トリス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]ヘキサヒドロ-s-トリアジンを含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の発泡ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の発泡ポリウレタン樹脂組成物の発泡硬化物を含むことを特徴とする、発泡ポリウレタンエラストマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ポリウレタン樹脂組成物および発泡ポリウレタンエラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緩衝材、衝撃吸収材、振動吸収材、クッション材、マットレス材、吸音材などとして、発泡ポリウレタンエラストマーが用いられている。
【0003】
そのような発泡ポリウレタンエラストマーとして、例えば、イソシアネート基末端プレポリマーおよびポリオールを含むポリウレタン樹脂組成物を、金型に注入した後、発泡および硬化させるとともに、所望の形状に成形して得られる発泡ポリウレタンエラストマーが知られている。
【0004】
このような発泡ポリウレタンエラストマーとして、より具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)の反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)および/またはポリオキシプロピレングリコール(PPG)と、発泡剤としてのイオン交換水とを混合し、モールドに注入および発泡させて得られるポリウレタンフォームが、知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、このような発泡性のポリウレタンとしては、用途に応じて、優れた破断特性(強度、伸び)および屈曲耐性の両立が要求される場合がある。
【0007】
本発明は、優れた破断特性(強度、伸び)および屈曲耐性を有する発泡ポリウレタンエラストマーを得ることができる発泡ポリウレタン樹脂組成物、および、破断特性(強度、伸び)および屈曲耐性に優れる発泡ポリウレタンエラストマーである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、ポリイソシアネート原料と、ポリオール原料と、水と、触媒とを含む発泡ポリウレタン樹脂組成物であり、前記ポリイソシアネート原料は、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有し、前記ポリオール原料は、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールとを含有し、前記ポリオール原料の総量に対して、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールの合計量が、90質量%以上であり、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールの総量に対して、前記結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールが、60質量%以上90質量%以下である、発泡ポリウレタン樹脂組成物を含んでいる。
【0009】
本発明[2]は、前記発泡ポリウレタン樹脂組成物は、前記ポリイソシアネート原料、および、前記ポリオール原料の一部の反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーを含む第1液と、前記ポリオール原料の前記一部に対する残部、前記水および前記触媒を含有する第2液とを含む、上記[1]に記載の発泡ポリウレタン樹脂組成物を含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、前記触媒が、1,3,5-トリス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]ヘキサヒドロ-s-トリアジンを含む、上記[1]または[2]に記載の発泡ポリウレタン樹脂組成物を含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の発泡ポリウレタン樹脂組成物の発泡硬化物を含む、発泡ポリウレタンエラストマーを含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発泡ポリウレタン樹脂組成物では、ポリイソシアネート原料は、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有し、ポリオール原料は、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールとを含有し、ポリオール原料の総量に対して、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールの合計量が、90質量%以上であり、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールの総量に対して、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールが、60質量%以上90質量%以下である。
【0013】
すなわち、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールとが、バランスよく含まれている。
【0014】
そのため、発泡ポリウレタン樹脂組成物によれば、優れた破断特性(強度、伸び)および屈曲耐性を有する発泡ポリウレタンエラストマーを得ることができる。
【0015】
また、本発明の発泡ポリウレタンエラストマーは、上記の発泡ポリウレタン樹脂組成物の発泡硬化物であるため、破断特性(強度、伸び)および屈曲耐性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の発泡ポリウレタン樹脂組成物は、発泡ポリウレタンエラストマーを製造するための発泡ポリウレタンエラストマー用組成物であって、ポリイソシアネート原料と、ポリオール原料と、水と、触媒とを含んでいる。
【0017】
なお、詳しくは後述するが、ポリイソシアネート原料およびポリオール原料は、未反応状態で発泡ポリウレタン樹脂組成物に含まれていてもよく、また、ポリイソシアネート原料と、ポリオール原料の一部との反応生成物(後述)が、発泡ポリウレタン樹脂組成物に含まれていてもよい。
【0018】
ポリイソシアネート原料は、耐変色性および破断特性(強度、伸び)の観点から、必須要素として、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,4-H6XDI)を含有する。
【0019】
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、例えば、国際公開第2009/051114号、特開2011-140618号公報などの記載に準拠して調製される。
【0020】
また、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンには、シス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、シス体と記載する。)、および、トランス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、トランス体と記載する。)の幾何異性体が存在する。
【0021】
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、好ましくは、シス体よりもトランス体を多量に含有する(以下、高トランス体と記載する。)。
【0022】
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの高トランス体は、トランス体を、例えば、50モル%以上、好ましくは、75モル%以上、より好ましくは、80モル%以上、さらに好ましくは、85モル%以上含有し、また、例えば、96モル%以下、好ましくは、93モル%以下含有する。なお、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの高トランス体において、シス体は、トランス体の残部である。
【0023】
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、好ましくは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの高トランス体である。
【0024】
また、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、単量体であってもよく、誘導体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体など)であってもよい。
【0025】
好ましくは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、単量体である。
【0026】
また、ポリイソシアネート原料は、任意要素として、その他のポリイソシアネート(1,4-H6XDIを除くポリイソシアネート)を含有することができる。
【0027】
その他のポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0028】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカメチレントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアナトメチルオクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-ω、ω’-ジイソシアネート、リジンイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、2-イソシアナトプロピル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、ビス(4-イソシアネート-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートなどの鎖状脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0029】
また、脂肪族ポリイソシアネートには、脂環族ポリイソシアネート(1,4-H6XDIを除く。)が含まれる。
【0030】
脂環族ポリイソシアネート(1,4-H6XDIを除く。)としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トランス,トランス-、トランス,シス-、およびシス,シス-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびこれらの混合物(水添MDI)、1,3-または1,4-シクロヘキサンジイソシアネートおよびこれらの混合物、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-H6XDI)、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,5-ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、その異性体である2,6-ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン(NBDI)、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-5-イソシアナトメチルビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-6-イソシアナトメチルビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル3-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル3-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタンなどの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0031】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネートおよび2,6-トリレンジイソシアネート、ならびに、これらトリレンジイソシアネートの異性体混合物(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ならびに、これらジフェニルメタンジイソシアネートの任意の異性体混合物(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0032】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)などの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
また、その他のポリイソシアネートは、単量体であってもよく、誘導体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体など)であってもよい。
【0034】
これらその他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0035】
その他のポリイソシアネートとして、好ましくは、脂環族ポリイソシアネート(1,4-H6XDIを除く。)の単量体が挙げられ、より好ましくは、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-H6XDI)の単量体が挙げられる。
【0036】
その他のポリイソシアネートの含有割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲で、適宜設定されるが、例えば、ポリイソシアネート原料の総量に対して、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。
【0037】
すなわち、ポリイソシアネート原料は、破断特性(強度、伸び)、硬度および耐変色性の観点から、とりわけ好ましくは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからなる。
【0038】
ポリオール原料は、必須要素として、高分子量ポリオールを含有する。
【0039】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量(GPCによる標準ポリオキシエチレン換算分子量、または、平均水酸基価および平均官能基数に基づいて算出した分子量(以下同様))250以上10000以下の化合物である。
【0040】
高分子量ポリオールは、必須要素として、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールとを、含有する。
【0041】
換言すれば、ポリオール原料は、必須要素として、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールからなる群から選択される少なくともいずれか1種とを、含有する。
【0042】
結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール(結晶性PTMEG、結晶性PTG)は、炭素数4のオキシ直鎖状アルキレン基(-CH2CH2CH2CH2O-)を主鎖として有する結晶性のポリエーテルジオール(2価ポリオール)である。
【0043】
なお、結晶性とは、常温(25℃)において固体(E型粘度計により測定される10℃での粘度が500000mPa・sを超過)であることを示す。
【0044】
結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物などが挙げられる。
【0045】
これら結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0046】
結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールの数平均分子量は、250以上、好ましくは、400以上、より好ましくは、500以上、さらに好ましくは、600以上、例えば、10000以下、好ましくは、5000以下、より好ましくは、3000以下である。
【0047】
非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール(非晶性PTMEG、非晶性PTG)は、炭素数4のオキシ直鎖状アルキレン基(-CH2CH2CH2CH2O-)を主鎖として有する非晶性のポリエーテルジオール(2価ポリオール)である。
【0048】
なお、非晶性とは、常温(25℃)において液状(E型粘度計により測定される10℃での粘度が500000mPa・s以下、好ましくは、400000mPa・s以下)であることを示す。
【0049】
非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、テトラヒドロフランの重合単位に短鎖ジオールなどを共重合した非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0050】
短鎖ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールなどが挙げられる。これら短鎖ジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0051】
さらに、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、テトラヒドロフランの重合単位に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロヒドリン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフランおよび/またはベンジルグリシジルエーテルなどを共重合した非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールなども挙げられる。
【0052】
これら非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0053】
非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールの数平均分子量は、250以上、好ましくは、400以上、より好ましくは、500以上、さらに好ましくは、600以上、例えば、10000以下、好ましくは、5000以下、より好ましくは、4000以下、さらに好ましくは、3000以下、とりわけ好ましくは、2000以下である。
【0054】
ポリオキシプロピレングリコール(PPG)は、炭素数3のオキシ分岐鎖状アルキレン基(-CH(CH3)CH2O-)を主鎖として有するポリエーテルジオール(2価ポリオール)である。
【0055】
ポリオキシプロピレングリコールは、例えば、上記した短鎖ジオールを開始剤とする、プロピレンオキサイドの付加重合物が挙げられる。
【0056】
また、ポリオキシプロピレングリコールの分子末端は、必要に応じて、エチレンオキサイドにより変性されていてもよい。
【0057】
このような場合、オキシエチレン基の含有量は、分子末端がエチレンオキサイドにより変性されたポリオキシプロピレングリコールの総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。オキシエチレン基の含有量は、仕込みの配合処方から算出される。
【0058】
これらポリオキシプロピレングリコール(分子末端がエチレンオキサイドにより変性されたポリオキシプロピレングリコールを含む。(以下同様))は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0059】
ポリオキシプロピレングリコールの数平均分子量は、250以上、好ましくは、400以上、より好ましくは、500以上、さらに好ましくは、600以上、例えば、10000以下、好ましくは、8000以下、より好ましくは、6000以下、さらに好ましくは、5000以下である。
【0060】
ポリオール原料は、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールのいずれかを含んでいればよく、必要により、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールの両方を含んでいてもよい。
【0061】
破断特性(強度、伸び)の観点から、ポリオール原料は、好ましくは、ポリオキシプロピレングリコールを含む。
【0062】
また、耐屈曲性の観点から、ポリオール原料は、好ましくは、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含む。
【0063】
また、ポリオール原料は、任意要素として、その他のマクロポリオールを含有することができる。
【0064】
その他のマクロポリオールは、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールを除くマクロポリオールであり、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。
【0065】
これらその他のマクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、ポリオール原料は、その他のマクロポリオールを含まない。
【0066】
さらに、ポリオール原料は、任意要素として、低分子量ポリオールを含有できる。
【0067】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する分子量60以上250未満、好ましくは、200以下の化合物である。
【0068】
低分子量ポリオールとしては、例えば、2価アルコール(例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの炭素数2~10の直鎖アルキルジオール、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオールなどの炭素数3~10の分岐鎖アルキルジオール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテルジオール、例えば、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、イソソルビド、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,4-シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAなど、例えば、メチルジエタノールアミン、メチルジイソプロパノールアミンなどの2価のアルカノールアミンなど)、3価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなど)、4価アルコール(例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなど)、5価アルコール(例えば、キシリトールなど)、6価アルコール(例えば、ソルビトールなど)、7価アルコール(例えば、ペルセイトールなど)などが挙げられる。
【0069】
これら低分子量ポリオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0070】
低分子量ポリオールとして、好ましくは、2価アルコールが挙げられ、より好ましくは、炭素数2~10の直鎖アルキルジオールが挙げられ、さらに好ましくは、炭素数2~6の直鎖アルキルジオールが挙げられ、とりわけ好ましくは、1,4-ブタンジオールが挙げられる。
【0071】
好ましくは、ポリオール原料は、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールと、2価アルコールとからなり、さらに好ましくは、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールと、炭素数2~10の直鎖アルキルジオールとからなる。
【0072】
破断特性(強度、伸び)の観点から、とりわけ好ましくは、ポリオール原料は、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、ポリオキシプロピレングリコールと、炭素数2~6の直鎖アルキルジオールとからなる。
【0073】
また、耐屈曲性の観点から、とりわけ好ましくは、ポリオール原料は、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、炭素数2~6の直鎖アルキルジオールとからなる。
【0074】
ポリオール原料の総量に対して、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールの合計量は、破断特性(強度、伸び)および耐屈曲性の観点から、90質量%以上、好ましくは、92質量%以上、より好ましくは、94質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、98質量%以下である。
【0075】
また、ポリオール原料の総量に対して、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールの含有割合が、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上であり、例えば、85質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0076】
また、ポリオール原料の総量に対して、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールの含有割合が、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0077】
また、ポリオール原料が、その他のマクロポリオール、および/または、低分子量ポリオールを含む場合(好ましくは、低分子量ポリオールを含む場合)、その他のマクロポリオールおよび低分子量ポリオールの含有割合(総量)が、ポリオール原料の総量に対して、例えば、0質量%以上、好ましくは、2質量%以上であり、例えば、10質量%以下、好ましくは、8質量%以下、より好ましくは、6質量%以下である。
【0078】
そして、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールの総量に対して、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール(総量)が、破断特性(強度、伸び)、硬度および耐変色性の観点から、60質量%以上、好ましくは、65質量%以上、より好ましくは、70質量%以上であり、耐屈曲性の観点から、90質量%以下、好ましくは、85質量%以下、より好ましくは、80質量%以下である。また、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコール(総量)が、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、40質量%以下、好ましくは、35質量%以下、より好ましくは、30質量%以下である。
【0079】
ポリオール原料の平均水酸基数(平均官能基数)は、例えば、2以上、例えば、5以下、好ましくは、4以下、より好ましくは、3以下、さらに好ましくは、2.5以下、とりわけ好ましくは、2である。なお、平均水酸基数(平均官能基数)は、仕込み成分から算出することができる(以下同様)。
【0080】
発泡ポリウレタン樹脂組成物中のポリオール原料の総量は、ポリイソシアネート原料に対して後述するイソシアネートインデックスとなるように、適宜設定される。
【0081】
水は、発泡ポリウレタンエラストマー(後述)を製造するための発泡剤である。
【0082】
また、水は、その他の発泡剤(水を除く発泡剤)と併用されていてもよい。
【0083】
その他の発泡剤としては、例えば、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、塩化メチレン、トリクロロトリフルオロエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、四塩化炭素などのハロゲン置換脂肪族炭化水素が挙げられる。これらその他の発泡剤は、単独使用または2種以上を併用することができる。
【0084】
その他の発泡剤は、好ましくは、発泡ポリウレタン樹脂組成物に含まれない。
【0085】
換言すれば、好ましくは、水が、発泡剤として単独使用される。
【0086】
水の割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、発泡ポリウレタン樹脂組成物の総質量に対して、例えば、0.50質量%以上、好ましくは、0.60質量%以上、より好ましくは、0.70質量%以上、さらに好ましくは、0.75質量%以上、さらに好ましくは、0.80質量%以上、さらに好ましくは、0.85質量%以上、とりわけ好ましくは、0.90質量%以上であり、例えば、5.00質量%以下、好ましくは、3.00質量%以下、より好ましくは、1.50質量%以下、さらに好ましくは、1.20質量%以下、とりわけ好ましくは、1.00質量%以下である。
【0087】
触媒としては、例えば、金属触媒、含窒素有機触媒などが挙げられる。
【0088】
金属触媒としては、例えば、ネオデカン酸ビスマス(III)、オクチル酸ビスマス(III)などのビスマスを含有する金属触媒、例えば、オクチル酸亜鉛、亜鉛ジアセチルアセトネート、Zn-K-KAT XK-633(KING社製)、Zn-K-KATXK-614(KING社製)などの亜鉛を含有する金属触媒、例えば、無機スズ化合物(例えば、酢酸スズ、オクチル酸スズなど)、有機スズ化合物(例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズクロライド、ジメチルスズジネオデカノエート、ジメチルスズジチオグリコレートなど)などのスズを含有する金属触媒、例えば、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛を含有する金属触媒、例えば、ナフテン酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトネートなどのニッケルを含有する金属触媒、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートなどのジルコニウムを含有する金属触媒、例えば、オクチル酸カリウム、オクチル酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属を含有する金属触媒、例えば、オクチル酸コバルト、コバルトアセチルアセトネートなどのコバルトを含有する金属触媒、オクチル酸マンガン、マンガンアセチルアセトネートなどのマンガンを含有する金属触媒、アルミニウムアセチルアセトネートなどのアルミニウムを含有する金属触媒などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0089】
金属触媒としては、好ましくは、ビスマスを含有する金属触媒と、亜鉛を含有する金属触媒とを併用する。
【0090】
含窒素有機触媒としては、例えば、芳香環を含有する含窒素有機触媒(以下、含窒素芳香族系触媒と称する。)、芳香環を含有しない含窒素有機触媒(以下、含窒素脂肪族系触媒と称する。)などが挙げられる。
【0091】
含窒素芳香族系触媒としては、例えば、イミダゾール触媒(複素芳香族系触媒)が挙げられ、具体的には、例えば、イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0092】
含窒素脂肪族系触媒としては、例えば、複素脂環族系触媒が挙げられ、具体的には、例えば、1,3,5-トリス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]ヘキサヒドロ-s-トリアジン、1,3,5-トリス[3-(ジメチルアミノ)エチル]ヘキサヒドロ-s-トリアジン、1,3,5-トリス[3-(ジメチルアミノ)メチル]ヘキサヒドロ-s-トリアジンなどのヘキサヒドロトリアジン化合物、例えば、トリエチレンジアミン、1,8―ジアザビシクロ(5,4,0)―7-ウンデセン,N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)モルホリンなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0093】
また、含窒素脂肪族系触媒としては、脂肪族アミン触媒も挙げられ、具体的には、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンなどの3級アミン化合物、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウム、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩化合物などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0094】
触媒は、含窒素有機触媒を含んでいてもよく、また、含窒素有機触媒を含んでいなくともよい。
【0095】
触媒としては、耐屈曲性の向上を図る観点から、好ましくは、含窒素有機触媒が挙げられ、より好ましくは、含窒素脂肪族系触媒が挙げられ、さらに好ましくは、複素脂環族系触媒が挙げられ、さらに好ましくは、ヘキサヒドロトリアジン化合物が挙げられ、とりわけ好ましくは、1,3,5-トリス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]ヘキサヒドロ-s-トリアジンが挙げられる。
【0096】
なお、発泡ポリウレタン樹脂組成物の総量に対して、触媒(総量)の割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0097】
より具体的には、触媒の割合(金属触媒および含窒素有機触媒の総量)は、ポリオール原料100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、8質量部以下である。
【0098】
また、触媒の総量100質量部に対して、金属触媒の割合が、例えば、80質量部以上、好ましくは、85質量部以上であり、例えば、100質量部以下、好ましくは、97質量部以下である。また、含窒素有機触媒の割合が、例えば、0質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。
【0099】
また、発泡ポリウレタン樹脂組成物は、必要に応じて、架橋剤、整泡剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤など)を含有することができる。
【0100】
架橋剤は、例えば、発泡ポリウレタンエラストマー(後述)の成形安定性を向上させるために、発泡ポリウレタン樹脂組成物に添加される。
【0101】
架橋剤としては、例えば、アルカノールアミン、4価脂肪族アミン、脂肪族2級ジアミン、脂環族2級ジアミンなどが挙げられ、好ましくは、アルカノールアミンが挙げられる。
【0102】
アルカノールアミンとしては、例えば、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミンなどのトリアルカノールアミン(トリC2~4アルカノールアミン)や、ジエタノールアミンなどのジアルカノールアミン(ジC2~4アルカノールアミン)などのポリアルカノールアミンや、モノエタノールアミンが挙げられる。好ましくは、ジアルカノールアミンが挙げられる。
【0103】
これら架橋剤は、単独使用また2種以上併用することもできる。
【0104】
架橋剤として、好ましくは、アルカノールアミン、より好ましくは、ポリアルカノールアミン、さらに好ましくは、ジアルカノールアミン、とりわけ好ましくは、ジエタノールアミンが挙げられる。
【0105】
架橋剤の含有割合は、発泡ポリウレタン樹脂組成物の総量に対して、成形安定性の観点から、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上であり、耐変色性の観点から、例えば、1質量%以下、好ましくは、0.5質量%以下である。
【0106】
整泡剤としては、発泡ポリウレタンエラストマーの製造に通常使用される公知の整泡剤を用いることができる。
【0107】
整泡剤としては、例えば、シリコーン系整泡剤が挙げられ、例えば、モメンティブ社製のL-568、L-580、L-590、L-598、L-600、L-620、L-635、L-638、L-650、L-680、L-682、SC-155、Y-10366、Y-10366J、L-5309、L-5614、L-5617、L-5627、L-5639、L-5624、L-5690、L-5693、L-5698、L-6100、L-6900例えば、信越シリコーン社製のF-607、F-606、F-242T、F-114、F-348、例えば、エボニック社製のDC5598、DC5933、DC5609、DC5986、DC5950、DC2525、DC2585、DC6070、DC3043、B-8404、B-8407、B-8465、B-8444、B-8467、B-8433、B-8466、B-8545、B-8450、例えば、東レダウコーニングシリコーン社製のSZ-1919、SH-192、SH-190、SZ-580、SRX280A、SZ-584、SF2904、SZ-5740M、SZ-1142、SZ-1959などが挙げられる。
【0108】
また、整泡剤としては、フッ素系整泡剤も挙げられ、例えば、AGCセイミケミカル社製のサーフロンS-242、サーフロンS-243、サーフロンS-386、サーフロンS-647、サーフロンS-651、サーフロンS-653、サーフロンAF-5000などが挙げられる。
【0109】
これら整泡剤は、単独使用また2種以上併用することもできる。
【0110】
整泡剤の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0111】
安定剤としては、例えば、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール化合物、有機リン化合物、チオエーテル系化合物、ヒドロキシルアミン系化合物など)、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール化合物、フォルムアミジン系化合物など)、耐光安定剤(例えば、ヒンダードアミン化合物など)などが挙げられる。
【0112】
これら安定剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0113】
安定剤の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0114】
そして、上記各成分は、未反応状態で発泡ポリウレタン樹脂組成物に含まれていてもよく、また、上記各成分の一部が反応した状態で発泡ポリウレタン樹脂組成物に含まれていてもよい。
【0115】
好ましくは、発泡ポリウレタン樹脂組成物において、ポリイソシアネート原料と、ポリオール原料の一部とが反応し、それらの反応生成物としてのイソシアネート基末端プレポリマーが、発泡ポリウレタン樹脂組成物に含まれる。
【0116】
換言すれば、発泡ポリウレタン樹脂組成物は、好ましくは、イソシアネート基末端プレポリマーを含み、さらに、ポリオール原料の上記一部に対応する残部(以下、単に残部と称する。)と、水と、触媒とを含む。
【0117】
また、このような場合において、発泡ポリウレタン樹脂組成物は、例えば、イソシアネート基末端プレポリマーと、ポリオール原料の残部と、水と、触媒とを、ともに含む1液型の発泡ポリウレタン樹脂組成物として調製することができる。
【0118】
また、発泡ポリウレタン樹脂組成物は、例えば、イソシアネート基末端プレポリマーを含む第1液と、ポリオール原料の残部、水および触媒を含む第2液とを、別々に含む2液型の発泡ポリウレタン樹脂組成物として調製することもできる。
【0119】
なお、水および触媒は、第1液および第2液とは別途用意され、第1液および第2液の配合時に添加されてもよい。また、第1液および第2液とは別途、水および/または触媒を含む第3液が用意され、発泡ポリウレタン樹脂組成物が、第1液、第2液および第3液を含む3液型の発泡ポリウレタン樹脂組成物として調製されていてもよい。
【0120】
好ましくは、発泡ポリウレタン樹脂組成物は、イソシアネート基末端プレポリマーを含む第1液と、ポリオール原料の残部、水および触媒を含有する第2液とを含む、2液型の発泡ポリウレタン樹脂組成物であるか、イソシアネート基末端プレポリマーを含む第1液と、ポリオール原料の残部および水を含有する第2液と、触媒を含有する第3液とを含む、3液型の発泡ポリウレタン樹脂組成物である。
【0121】
以下において、第1液と第2液とを含む2液型の発泡ポリウレタン樹脂組成物について、詳述する。
【0122】
なお、以下において、イソシアネート基末端プレポリマーの調製に用いられるポリオール原料を、プレポリマー用ポリオールと称する。すなわち、プレポリマー用ポリオールは、上記ポリオール原料の一部である。
【0123】
また、以下において、イソシアネート基末端プレポリマーと反応するポリオール原料を、発泡成形用ポリオールと称する。すなわち、発泡成形用ポリオールは、上記ポリオール原料の残部である。
【0124】
なお、ポリオール原料の必須要素(結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールと)は、それぞれ、プレポリマー用ポリオールに含まれていてもよく、また、発泡成形用ポリオールに含まれていてもよく、さらには、これらの両方に含まれていてもよい。
【0125】
より具体的には、2液型の発泡ポリウレタン樹脂組成物において、第1液は、ポリイソシアネート液である。ポリイソシアネート液は、ポリイソシアネート原料とプレポリマー用ポリオールとの反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーを含んでいる。
【0126】
ポリイソシアネート原料は、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有し、好ましくは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからなる。
【0127】
プレポリマー用ポリオールは、好ましくは、高分子量ポリオールを含有し、破断特性(強度、伸び)の観点から、より好ましくは、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含有する。
【0128】
また、プレポリマー用ポリオールは、耐屈曲性の観点から、さらに、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールを含有することができる。
【0129】
すなわち、プレポリマー用ポリオールは、好ましくは、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールからなるか、または、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールとからなる。
【0130】
プレポリマー用ポリオールは、破断特性(強度、伸び)の観点から、とりわけ好ましくは、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールを含有せず、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールからなる。
【0131】
また、プレポリマー用ポリオールは、耐屈曲性の観点から、とりわけ好ましくは、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールからなるか、または、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールとからなる。
【0132】
イソシアネート基末端プレポリマーを調製するには、まず、ポリイソシアネート原料と、プレポリマー用ポリオール(ポリオール原料の一部)とを、イソシアネートインデックス(プレポリマー用ポリオールの水酸基濃度に対する、ポリイソシアネート原料のイソシアネート基濃度(NCO濃度)の比に100を乗じた値、NCO濃度/水酸基濃度×100)が、例えば、100より大きくなる割合、好ましくは、105以上、例えば、1000以下、好ましくは、600以下、より好ましくは、500以下となるように混合して、それらを、所定のイソシアネート基含有率になるまで反応させる。
【0133】
反応温度は、例えば、50℃以上であり、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下である。
【0134】
また、反応時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、15時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0135】
また、この反応において、必要に応じて、上記の金属触媒などを添加することもできる。
【0136】
金属触媒の配合割合は、ポリイソシアネート原料と原料ポリオールとの総量に対して、質量基準で、例えば、1ppm以上であり、例えば、500ppm以下、好ましくは、100ppm以下、さらに好ましくは、20ppm以下である。
【0137】
また、金属触媒の配合割合は、原料イソシアネートと原料ポリオールとの総量10000質量部に対して、0.01質量部以上、例えば、5.00質量部以下、好ましくは、1.00質量部以下、さらに好ましくは、0.20質量部以下である。
【0138】
なお、上記反応の後、必要により、公知の蒸留方法などを用いて残存モノマー(具体的には、未反応のポリイソシアネート原料)を取り除くことができる。
【0139】
これにより、第1液(イソシアネート液)として、イソシアネート基末端プレポリマーを得ることができる。
【0140】
また、第1液は、イソシアネート基末端プレポリマーの他、例えば、未反応の1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(単量体)を含むことができる。
【0141】
第1液の総量に対して、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(単量体)の割合は、例えば、0質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0142】
第1液中の1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン割合が上記範囲であると、発泡ポリウレタンエラストマー中のハードセグメントの割合(ハードセグメント濃度)を調整することができ、発泡ポリウレタンエラストマー(後述)の硬度および圧縮永久歪みを調整することができる。
【0143】
また、第1液は、必要により、さらに、その他のポリイソシアネート(上記脂肪族ポリイソシアネート、上記芳香族ポリイソシアネート、上記芳香脂肪族ポリイソシアネート、および、これらの誘導体など)を含むことができる。
【0144】
第1液の総量に対して、その他のポリイソシアネートの割合は、例えば、0質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、25質量%以下であり、とりわけ好ましくは、0質量%である。すなわち、第1液は、好ましくは、その他のポリイソシアネートを含まない。
【0145】
このような第1液は、調製後、後述の発泡ポリウレタンエラストマーの製造に供されるか、または、保存される。
【0146】
また、2液型の発泡ポリウレタン樹脂組成物において、第2液は、好ましくは、発泡成形用ポリオール(ポリオール原料の残部)と、水と、触媒とを含むレジンプレミックスである。
【0147】
発泡成形用ポリオールは、好ましくは、高分子量ポリオールを含有し、より好ましくは、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含有する。
【0148】
また、発泡成形用ポリオールは、さらに、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールを含有することができる。
【0149】
好ましくは、プレポリマー用ポリオールが非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールを含有しない場合に、発泡成形用ポリオールが非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールを含有する。
【0150】
また、好ましくは、プレポリマー用ポリオールが非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールを含有する場合に、発泡成形用ポリオールが非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールを含有しない。
【0151】
また、プレポリマー用ポリオールおよび発泡成形用ポリオールが、ともに、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールとを含有することも、好ましい。
【0152】
さらに、発泡成形用ポリオールは、好ましくは、低分子量ポリオールを含有し、より好ましくは、2価アルコールを含有し、さらに好ましくは、炭素数2~10の直鎖アルキルジオールを含有し、とりわけ好ましくは、炭素数2~6の直鎖アルキルジオールを含有する。
【0153】
具体的には、発泡成形用ポリオールの総量に対して、低分子量ポリオールの割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上であり、例えば、100質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
【0154】
また、低分子量ポリオールの配合部数は、ポリイソシアネート原料100質量部に対して、例えば、1.0質量部以上、好ましくは、2.0質量部以上であり、例えば、10.0質量部以下、好ましくは、5.0質量部以下、さらに好ましくは、4.0質量部以下である。
【0155】
第2液(レジンプレミックス)の調製では、例えば、発泡成形用ポリオールと水と触媒とを配合して、混合する。
【0156】
第2液(レジンプレミックス)の調製に用いられる触媒は、一部であってもよく、また、全部であってもよい。好ましくは、触媒の一部が、レジンプレミックスの調製に用いられる。
【0157】
第2液(レジンプレミックス)の調製に用いられる触媒として、好ましくは、含窒素脂肪族系触媒が挙げられる。
【0158】
また、第2液(レジンプレミックス)には、必要により、整泡剤、安定剤などを添加することができる。なお、整泡剤および安定剤の添加量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0159】
これにより、第2液(レジンプレミックス)が調製される。
【0160】
このような第2液は、調製後、後述の発泡ポリウレタンエラストマーの製造に供されるか、または、保存される。
【0161】
そして、このような2液型の発泡ポリウレタン樹脂組成物によれば、効率よく、発泡ポリウレタンエラストマーを製造することができる。
【0162】
以下において、2液型の発泡ポリウレタン樹脂組成物を用いて、発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法について詳述する。
【0163】
この方法では、例えば、まず、上記した発泡ポリウレタン樹脂組成物の各成分を、上記の割合で準備し、第1液(イソシアネート液)および第2液(レジンプレミックス)を調製する。
【0164】
次いで、この方法では、上記した発泡ポリウレタン樹脂組成物を発泡させる(発泡工程)。
【0165】
より具体的には、発泡工程では、第2液(レジンプレミックス)に第1液(ポリイソシアネート液)を配合し、混合して、発泡混合物を調製する。このとき、発泡混合物には、発泡ポリウレタン樹脂組成物がすべて配合される。
【0166】
また、発泡混合物には、触媒を配合することもできる。触媒としては、第2液(レジンプレミックス)の調製に用いられた触媒の残部が挙げられ、具体的には、金属触媒が挙げられる。
【0167】
発泡混合物において、第1液および第2液の配合割合は、例えば、イソシアネートインデックス(NCO/(OH+H2O))×100(つまり、第2液の水酸基および水の総和に対する第1液のイソシアネート基の総和の割合)が下記の範囲となるように混合される。
【0168】
すなわち、イソシアネートインデックスは、例えば、75以上、好ましくは、85以上、より好ましくは、90以上、例えば、300以下、好ましくは、200以下、さらに好ましくは、150以下である。
【0169】
また、第1液100質量部に対して、第2液の液比(質量比)が、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、より好ましくは、5質量部以上、さらに好ましくは、10質量部以上であり、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下、より好ましくは、50質量部以下である。
【0170】
次いで、この工程では、発泡混合物を、必要に応じて予備加熱される所定の型内に注ぎ、発泡混合物(発泡ポリウレタン樹脂組成物)を発泡させる。
【0171】
金型の予備加熱温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、60℃以上、例えば、130℃以下、好ましくは、100℃以下、さらに好ましくは、90℃以下である。
【0172】
そして、金型内において、発泡混合物(発泡ポリウレタン樹脂組成物)を発泡させる。
【0173】
これによって、発泡ポリウレタン樹脂組成物が発泡および硬化して、発泡ポリウレタンエラストマーを形成するとともに、発泡ポリウレタンエラストマーが所定の形状に成形される。
【0174】
反応温度(成形温度)の範囲は、上記した予備加熱温度の範囲と同じである。
【0175】
反応時間(成形時間)は、例えば、5分以上、好ましくは、10分以上、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下、さらに好ましくは、20分以下である。
【0176】
次いで、発泡ポリウレタンエラストマーを金型から脱型する。その後、必要に応じて、発泡ポリウレタンエラストマーを、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上、より好ましくは、60℃以上、例えば、130℃以下、好ましくは、100℃以下、さらに好ましくは、90℃以下において、24時間以内程度で熱成させてもよい。
【0177】
以上によって、発泡ポリウレタンエラストマーが製造される。
【0178】
このような方法によれば、破断特性(強度、伸び)および耐屈曲性に優れる発泡ポリウレタンエラストマーを、効率よく得ることができる。
【0179】
より具体的には、上記の発泡ポリウレタン樹脂組成物では、ポリイソシアネート原料は、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有し、ポリオール原料は、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールとを含有し、ポリオール原料の総量に対して、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールの合計量が、90質量%以上であり、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリオキシプロピレングリコールの総量に対して、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールが、60質量%以上90質量%以下である。
【0180】
すなわち、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリオキシプロピレングリコールとが、バランスよく含まれている。
【0181】
そのため、発泡ポリウレタン樹脂組成物によれば、優れた破断特性(強度、伸び)および屈曲耐性を有する発泡ポリウレタンエラストマーを得ることができる。
【0182】
つまり、破断特性(強度、伸び)の向上と、耐屈曲性の向上とは、通常、トレードオフの関係(破断特性(強度、伸び)を向上させると、耐屈曲性が低下し、耐屈曲性を向上させると、破断特性(強度、伸び)が低下するという関係)にある。
【0183】
しかし、上記の発泡ポリウレタンエラストマーでは、破断特性(強度、伸び)の向上と耐屈曲性の向上との両立を図ることができる。
【0184】
また、発泡ポリウレタンエラストマーの製造において、3液型のポリウレタン樹脂組成物を用いることもできる。この方法では、上記第1液と、第2液と、第3液とが個別に調製され、混合されることにより、発泡混合物が調製される。
【0185】
3液型のポリウレタン樹脂組成物において、第1液は、イソシアネート基末端プレポリマーを含有する。
【0186】
また、第2液は、発泡成形用ポリオールの一部と、水(さらに、必要に応じて、触媒)とを含有する。
【0187】
また、第3液は、発泡成形用ポリオールの残部と、触媒(好ましくは、金属触媒)とを含有する。
【0188】
なお、触媒として金属触媒が用いられる場合、その金属触媒とイソシアネート基末端プレポリマーとが共存すると、金属触媒がイソシアネート基と反応し、触媒寿命が低下する場合がある。また、金属触媒が水と共存すると、金属触媒が加水分解され、触媒寿命が低下する場合がある。
【0189】
そのため、触媒として金属触媒が用いられる場合、好ましくは、金属触媒を、イソシアネート基末端プレポリマーおよび水とは別の液(すなわち、第3液)として調製する。これにより、触媒寿命の低下を抑制できる。
【0190】
また、金属触媒を除く触媒(例えば、含窒素有機触媒など)は、第2液および第3液のいずれに含まれていてもよい。好ましくは、金属触媒を除く触媒(例えば、含窒素有機触媒など)は、第2液に含まれる。
【0191】
また、第1液、第2液および第3液には、それぞれ、必要に応じて、整泡剤、安定剤などを添加することができる。なお、整泡剤および安定剤の添加量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0192】
このような3液型の発泡ポリウレタン樹脂組成物でも、上記と同様に、優れた破断特性(強度、伸び)および屈曲耐性を有する発泡ポリウレタンエラストマーを得ることができる。
【0193】
次いで、本発明の発泡ポリウレタンエラストマーについて説明する。
【0194】
発泡ポリウレタンエラストマーは、上記の発泡ポリウレタン樹脂組成物の発泡体である。発泡ポリウレタンエラストマーは、上記の発泡ポリウレタン樹脂組成物の発泡硬化物を含み、好ましくは、発泡ポリウレタン樹脂組成物の発泡硬化物からなる。
【0195】
発泡ポリウレタンエラストマーは、発泡ポリウレタン樹脂組成物の反応生成物であるポリウレタン樹脂中に、気泡が分散した構造を有する。発泡ポリウレタンエラストマーの気泡構造は、気泡が独立した(連続していない)独立気泡構造、または、気泡が部分的に連続した半独立気泡構造である。
【0196】
発泡ポリウレタンエラストマーは、見かけ密度(JIS K 7222(2005))により、ポリウレタンフォーム(軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム)とは区別される。
【0197】
より具体的には、発泡ポリウレタンエラストマーの見掛け密度は、ポリウレタンフォームの密度(例えば、0.100g/cm3未満)よりも高く、例えば、0.100g/cm3以上、好ましくは、0.150g/cm3以上、より好ましくは、0.200g/cm3以上、さらに好ましくは、0.220g/cm3以上、さらに好ましくは、0.230g/cm3以上、とりわけ好ましくは、0.240g/cm3以上であり、例えば、0.800g/cm3以下、好ましくは、0.600g/cm3以下、より好ましくは、0.400g/cm3以下、さらに好ましくは、0.300g/cm3以下、さらに好ましくは、0.280g/cm3以下、とりわけ好ましくは、0.260g/cm3以下である。
【0198】
そして、このような発泡ポリウレタンエラストマーは、上記の発泡ポリウレタン樹脂組成物の発泡硬化物であるため、破断特性(強度、伸び)および屈曲耐性に優れる。
【0199】
発泡ポリウレタンエラストマーの破断強度は、例えば、1.20MPa以上、好ましくは、1.30MPa以上、より好ましくは、1.35MPa以上、さらに好ましくは、1.40MPa以上、とりわけ好ましくは、1.45MPa以上であり、例えば、2.00MPa以下、好ましくは、1.80MPa以下、より好ましくは、1.60MPa以下である。
【0200】
また、発泡ポリウレタンエラストマーの破断伸びは、例えば、250%以上、好ましくは、270%以上、より好ましくは、300%以上、さらに好ましくは、330%以上、とりわけ好ましくは、350%以上であり、通常、600%以下である。
【0201】
なお、破断強度および破断伸びは、JIS K 6400-5(2012)に準拠して測定できる(以下同様)。
【0202】
また、発泡ポリウレタンエラストマーの耐屈曲性は、JIS K 6260(2010)に準拠したデマッチャ耐屈曲試験における屈曲回数が、例えば、50,000回以上、好ましくは、60,000回以上、より好ましくは、70,000回以上、さらに好ましくは、80,000回以上、さらに好ましくは、90,000回以上、とりわけ好ましくは、100,000回以上である。
【0203】
また、発泡ポリウレタンエラストマーは、硬度にも優れる。
【0204】
より具体的には、発泡ポリウレタンエラストマーの硬度(C硬度)は、例えば、30ポイント以上、好ましくは、40ポイント以上であり、例えば、60ポイント以下、好ましくは、55ポイント以下である。
【0205】
なお、硬度(C硬度)は、JIS K 7312(1996)に準拠して測定できる(以下同様)。
【0206】
さらに、発泡ポリウレタンエラストマーは、耐変色性にも優れる。
【0207】
より具体的には、発泡ポリウレタンエラストマーの加熱前後の色差Δb(後述する実施例に準拠)が、例えば、8以下、好ましくは、7以下、より好ましくは、6以下、さらに好ましくは、5以下、さらに好ましくは、4以下、とりわけ好ましくは、3以下、通常、0.1以上である。
【0208】
そして、このような発泡ポリウレタンエラストマーは、例えば、シューズのインナーソール、アウターソール、ミッドソール(インナーソールとアウターソールとの間の部分)などのシューズのソール部材、例えば、シューズのショックアブソーバー、自動車のショックアブソーバー、ヘルメットのショックアブソーバー、グリップテープのショックアブソーバーなどのショックアブソーバー、例えば、自動車の内装材、例えば、シューズ、ヘルメット、グリップテープ、バット(打球反発材)、サッカーボールのクッション材などのスポーツ用品、例えば、ヘッドフォンの部材、例えば、土木建材のパッキン部材、例えば、梱包材、枕、マットレス、シートクッション、シーリング材、防音フローリング材などの緩衝材料、例えば、ブラジャー、ブラジャー用パッド、ブラジャー用カップ、肩パッドなどの衣料用品、例えば、二輪車、モビリティ部材、例えば、ロボット用緩衝材料、例えば、介護用品、電気・電子製品の緩衝材からなる群から選択される工業製品の材料として用いられる。発泡ポリウレタンエラストマーは、好ましくは、シューズのミッドソール、ショックアブソーバー、自動車の内装材、および、スポーツ用品からなる群から選択される工業製品の材料として用いられる。
【0209】
とりわけ、上記の発泡ポリウレタンエラストマーは、ミッドソールの材料として、好適に用いられる。
【実施例】
【0210】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
<原料>
A.第1液(イソシアネート基末端プレポリマー)の原料
A-1.ポリイソシアネート原料
(1)1,4-H6XDI
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、国際公開第2009/51114号の製造例3に従って合成した。純度(ガスクロマトグラフィー測定による。)99.9%、トランス/シス比(モル基準)=86/14
(2)1,3-H6XDI
1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、商品名:タケネート600、三井化学社製
(3)MDI
ジフェニルメタンジイソシアネート、商品名:コスモネートPH、KUMHO MITSUI CHEMICALS社製
A-2.プレポリマー用ポリオール
(1)PTG-1000
結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、商品名:PTG-1000、数平均分子量:1000、平均水酸基価:112.1mgKOH/g、保土谷化学工業社製
(2)PTG-2000
結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、商品名:PTG-2000、数平均分子量:2000、平均水酸基価:56.1mgKOH/g、保土谷化学工業社製
(3)PTG-3000
結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、商品名:PTG-3000SN、数平均分子量:3000、平均水酸基価:37.4mgKOH/g、保土谷化学工業社製
(4)PPG DL-4000
ポリオキシプロピレングリコール、商品名:PPG DL-4000、数平均分子量4000、平均水酸基価28.1mgKOH/g、三井化学SKCポリウレタン社製
B.第2液(レジンプレミックス)の原料
B-1.発泡成形用ポリオール(高分子量ポリオール)
(1)PTG-1000
結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、商品名:PTG-1000、数平均分子量:1000、平均水酸基価:112.1mgKOH/g、保土谷化学工業社製
(2)PTG-1400
結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、商品名:PTMEG-1400、数平均分子量:1400、平均水酸基価:80.1mgKOH/g、KOREAPTG社製
(3)PTG-1500
結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、商品名:PTG-1500SN、数平均分子量:1500、平均水酸基価:74.8mgKOH/g、保土谷化学工業社製
(4)ED-28
ポリオキシエチレン末端ポリオキシプロピレングリコール、商品名:ED-28、数平均分子量4000、平均水酸基価28mgKOH/g、三井化学SKCポリウレタン社製(5)ED-56
ポリオキシエチレン末端ポリオキシプロピレングリコール、商品名:ED-56、数平均分子量2000、平均水酸基価56mgKOH/g、三井化学SKCポリウレタン社製(6)EP-950
ポリオキシエチレン末端ポリオキシプロピレントリオール、商品名:EP-950、数平均分子量5000、平均水酸基価33.7mgKOH/g、三井化学SKCポリウレタン社製
(7)PTG-L2000
非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、商品名:PTG-L-2000、数平均分子量2000、平均水酸基価56.1mgKOH/g、保土谷化学工業社製
B-2.発泡成形用ポリオール(低分子量ポリオール)
(1)1,4-BD
1,4-ブタンジオール、三菱化学社製
B-3.架橋剤
(2)DEOA
ジエタノールアミン、東京化成工業社製
C.発泡剤
(1)水(イオン交換水)
D.触媒
D-1.含窒素有機触媒
(1)DABCO TMR
脂肪族アミン触媒、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム・オクチル酸塩、Evonik社製
(2)DABCO33LV
脂肪族アミン触媒、トリエチレンジアミン、Evonik社製
(3)NIAX CATALYST A-1
脂肪族アミン触媒、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルの70%ジプロピレングリコール溶液、モメンティブ社製
(4)POLYCAT41
トリアジン触媒、1,3,5―トリス[3―(ジメチルアミノ)プロピル]ヘキサヒドロー
s-トリアジン、エボニック社製
D-2.金属触媒
(1)K-KAT XK-633
亜鉛系金属触媒、KING社製
(2)BiCAT8108
ビスマス系金属触媒、ビスマスネオデカネート(ネオデカン酸ビスマス(III))、シェファードケミカル製
E.安定剤
(1)Irganox245
酸化防止剤、ヒンダードフェノール化合物、商品名:イルガノックス245、BASFジャパン社製
(2)LA-72
耐光安定剤、ヒンダードアミン化合物、商品名:アデカスタブLA-72、ADEKA社製
<実施例および比較例>
1.第1液の調製
各表に示す質量部数で、ポリイソシアネート原料と、プレポリマー用ポリオール(ポリオール原料の一部)とを、撹拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに仕込み(イソシアネートインデックスNCO/OH=3.71~5.08)、窒素雰囲気下、80℃にて1時間撹拌した。
【0211】
その後、予めジイソノニルアジペート(ジェイ・プラス社製)により4質量%に希釈したオクチル酸スズ(商品名:スタノクト、エーピーアイコーポレーション社製)を、原料イソシアネートと原料ポリオールとの総量に対して、10ppm(原料イソシアネートと原料ポリオールとの総量10000質量部に対して、0.10質量部)添加し、80℃の温調下、窒素気流下で撹拌混合した。
【0212】
これにより、イソシアネート基末端のプレポリマーを含む第1液を調製した。
【0213】
2.第2液の調製
各表に示す質量部数で、発泡成形用ポリオール(ポリオール原料の残部)と、発泡剤(イオン交換水)と、整泡剤と、含窒素有機触媒と、安定剤(耐光安定剤、酸化防止剤)とを、均一に撹拌混合して、50℃のオーブン中に1時間静置した。
【0214】
これにより、第2液として、レジンプレミックスを調製した。
【0215】
3.発泡成形
得られた第2液(レジンプレミックス)全量と、80℃に温調した第1液(イソシアネート基末端プレポリマー)100質量部と、各表に示す質量部数の金属触媒(23℃)とを配合し、それらをハンドミキサー(回転数5000rpm)によって10秒間撹拌して、発泡混合物を調製した。
【0216】
次いで、得られた発泡混合物を、調製直後に手早く、あらかじめオーブンで80℃に温調した金型(SUS製、210×300×10mm)に移液し、金型の蓋を閉め、万力で固定した。
【0217】
その後、金型を、80℃のオーブン中において、15分間静置し、発泡混合物を金型内で発泡させた。
【0218】
その後、発泡ポリウレタンエラストマーを金型から取り出し(脱型し)、60℃のオーブン中で1晩硬化させた。
【0219】
これにより、発泡ポリウレタンエラストマーを得た。
【0220】
なお、比較例4では、イソシアネート基末端プレポリマーとして、ジフェニルメタンジイソシアネートのプレポリマーを使用した。また、第1液および第2液をともに40℃で温調して反応させた。また、金型は60℃に温調した。
<評価方法>
(1)密度
発泡ポリウレタンエラストマーから測定試料を切り出し、JIS K 7222:2005に従って、測定試料の見かけ密度を測定した。結果を各表に示す。
【0221】
(2)アスカーC硬度
JIS K 7312-7:1996に従って、発泡ポリウレタンエラストマーのアスカーC硬度を測定した。結果を各表に示す。
(3)引張試験(破断強度、破断伸び)
厚さ10mmの発泡ポリウレタンエラストマーから、JIS-1号ダンベルを用いて測定試料を作製し、JIS K 6400-5:2012に従って、測定試料の破断強度および破断伸びを測定した。結果を各表に示す。
(4)デマッチャ耐屈曲性(耐屈曲き裂性)
発泡ポリウレタンエラストマーから、140mm×25mm×10mmの測定試料を切り出し、JIS K 6260:2010に準拠して、測定試料の耐屈曲性を測定した。結果を各表に示す。なお、10万回の屈曲試験ののち破断していないものは>100(×1000回)以上と表記した。
【0222】
(5)耐変色性
発泡ポリウレタンエラストマーの耐変色性を、以下の方法で評価した。
【0223】
すなわち、各実施例および比較例の発泡ポリウレタンエラストマーから、40mm×40mm×10mmの測定試料を切り出し、色差計(全自動色差計カラーエースMODEL TC-1、東京電色社製)を用いてΔbを測定した。
【0224】
この後、各測定試料を空気下オーブンにて80℃、5日間加熱試験を行った。試験後、再度色差計でΔbを測定した。加熱試験後のΔbと加熱試験前のΔbの差をとり、耐変色試験のΔbとした。結果を各表に示す。
【0225】
【0226】
【0227】
【0228】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0229】
本発明の発泡ポリウレタン樹脂組成物および発泡ポリウレタンエラストマーは、シューズのソール部材、ショックアブソーバー、自動車の内装材、スポーツ用品、緩衝材料、衣料用品、モビリティ部材、および、ロボット用緩衝材料として、好適に用いられる。