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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】可撓性受動電子部品およびその生産方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/08 20210101AFI20231011BHJP
   G01K 7/16 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G01K1/08 N
G01K7/16 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022505450
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2020074315
(87)【国際公開番号】W WO2021047948
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】19196138.2
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516311238
【氏名又は名称】ヘレウス ネクセンソス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ノイマン
(72)【発明者】
【氏名】ティム アスムス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ディートマン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ニック
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-16671(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0112347(US,A1)
【文献】国際公開第2013/084835(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
H01L21/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性受動電子部品(1)おいて、
- 絶縁層(3)と、部側(2a)および下部側(2b)を伴う無機層(2)とを含み、それによって前記絶縁層(3)は前記機層(2)の前記上部側(2a)を少なくとも部分的に覆っている、基板(10)と、
- 前記絶縁層(3)を少なくとも部分的に覆っている電気的構造(4)と、
を含む可撓性受動電子部品であって、
前記絶縁層(3)が、金属酸化物および/または金属窒化物でできており、前記無機層(2)が、無機結晶質材料または無機非晶質材料でできているか、またはシリコン-オン-インシュレータ(SOI)ウエハから作られており、
前記基板(10)が、多くとも50μmある厚み(t10)を有すること、および
前記可撓性受動電子部品(1)が、多くとも150μmある高さ(h1)を有すること、
を特徴とする可撓性受動電子部品(1)。
【請求項2】
少なくとも5mm屈曲曲率半径で曲げることのできる可撓性を有し、かつ
曲げの前後の前記電気的構造(4)の抵抗率の相対的差異(dR/R0)が0.5%を超えることができない、
請求項1に記載の可撓性受動電子部品(1)。
【請求項3】
前記無機層(2)が、ケイ素、炭化ケイ素、ガリウムヒ素またはサファイアでできているか、または英ガラス、ホウケイ酸ガラスまたはガラスでできている請求項1または2に記載の可撓性受動電子部品(1)。
【請求項4】
前記可撓性受動電子部品(1)が、長さと幅の積が多くとも4mm2 ある、長さ、幅および高さ(h1)を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)。
【請求項5】
前記電気的構造(4)が少なくとも1つの導体トラック(4b)および少なくとも2つの電気接触パッド(4a)を含み、前記少なくとも2つの電気接触パッド(4a)が前記少なくとも1つの導体トラック(4b)に電気的に接続されており、
記少なくとも1つの導体トラック(4b)が均一な幅を有し、前記幅が5μm以下であり、前記幅の標準偏差が前記幅の5%以下である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)。
【請求項6】
前記導体トラック(4b)が、少なくとも3,000ppm/K電気抵抗温度係数を有する、請求項5に記載の可撓性受動電子部品(1)。
【請求項7】
各々少なくとも1つの導体トラックを含む少なくとも1つの追加の電気的構造をさらに含み、
前記電気的構造(4)および前記少なくとも1つの追加の電気的構造が、多層構造の形で配設され、こうして、
a) 前記電気的構造(4)および前記少なくとも1つの追加の電気的構造の前記導体トラック(4b)が、異なる平面上で互いに上下に配設され、
b) 互いに上下に存在している前記隣接する導体トラック(4b)が、追加の絶縁層により互いに少なくとも部分的に分離されており、
c) 互いに上下に存在している前記隣接する導体トラック(4b)が、前記追加の絶縁層を通って形成された1つ以上の導電性ビアを介して互いに電気的に接続されている、
請求項1から6のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)。
【請求項8】
前記絶縁層(3)が、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウムまたは窒化ハフニウムでできている、
請求項1から7のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)。
【請求項9】
前記電気的構造(4)が、白金、ニッケル、アルミニウムあるいは白金、ニッケルおよび/またはアルミニウムを含有する合金でできている、
請求項1から8のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)。
【請求項10】
前記電気的構造(4)を少なくとも部分的に覆うカバー層(5)をさらに含み、前記カバー層(5)が無機層から形成されている、請求項1から9のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)。
【請求項11】
前記電気的構造(4)がセンサ素子および/またはヒータ素子として設計されている、
請求項1から10のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)。
【請求項12】
前記センサ素子としての前記電気的構造(4)が少なくとも100オーム電気抵抗を有し、
前記ヒータ素子としての前記電気的構造(4)が多くとも5オーム電気抵抗を有する、
請求項11に記載の可撓性受動電子部品(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の少なくとも1つの可撓性受動電子部品(1)および少なくとも1つの電気的制御機構を含み、前記電気的制御機構が、前記電気的構造(4)に電気的に接続され、前記可撓性受動電子部品(1)を制御するように構成されている、可撓性受動電子部品システム。
【請求項14】
求項1から12のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)を生産するための方法において、以下のプロセスステップ、すなわち、
a) 上部側(2a’)および下部側(2b’)を有する無機ウエハ(2’)を提供するステップと、
b) 前記無機ウエハ(2’)の上部側(2a’)上に絶縁層(3’)を適用するステップと、
c) 前記絶縁層(3’)上に電気的構造(4’)または多層電気的構造を適用し構造化するステップと、
d) 前記電気的構造(4’)上にカバー層(5’)を適用するステップと、
e) 前記下部側(2b’)上で前記無機ウエハ(2’)を、前記絶縁層(3)および記無機ウエハ(2’)を含む基板(10)が多くとも50μm厚み(t10)を有するまで薄化するステップと、
を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の可撓性受動電子部品を生産するための方法において、
f) 前記電気的構造(4’)の側および/または前記基板(10)の前記下部側(2b)上に第1の保護層(7)を適用するステップと、
g) 前記無機ウエハ(2’)の前記薄化ステップの後に前記第1の保護層(7)を除去するステップと、
をさらに含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性受動電子部品、詳細には、温度、ガス吸収、化学反応、粒子流、光入力および力入力などの外部影響によってひき起こされる電気抵抗の変化を測定するセンサに関する。可撓性受動電子部品は、電気的構造の電気抵抗が外部入力によって変化する電気的構造を有する。電気的構造は基板上に提供される。本発明は同様に、可撓性受動電子部品、特にセンサを生産するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
温度センサがこのようなセンサの一例である。正の温度係数を有する現在使用されている薄膜温度センサは、基板に適用される平坦な金属層に基づいている。温度変化ΔTに伴って、金属シートの電気抵抗は、R(0)がT=0における抵抗に等しいものとして、R(T)=R(0)・(1+ξ(T)・ΔT)にしたがって変化する。多くの金属において、温度係数ξ(T)(少なくとも温度0<T<200℃において)は恒常であり、温度と無関係である。温度と無関係である抵抗係数は、抵抗測定値からの温度の決定を容易にすることから、有利である。
【0003】
温度などに対する抵抗の線形依存性のための重要な前提条件としては、金属の好適な選択以外では、基板の正しい選択がある。理想的には、基板は、上に被着されたセンサ金属のものと類似の熱膨張係数(CTE)を有しているべきである。特に、基板のCTEが金属のCTEよりも大きい場合、金属層内に亀裂が発生する可能性があり、これがセンサの望ましくないドリフトを導く。酸化アルミニウム(Al23)が、Pt薄膜センサ用として極めて好適な基板である。Al23のCTEは6.5~8.9E-6(1/K)であり、したがって、8.8E-6(1/K)の白金のCTEに類似している。
【0004】
しかしながら、温度センサのための基板としてのセラミック体には、500μm未満の基板厚みでは機械的安定性が欠如するという欠点がある。詳細には、より大きい基板の取り扱い性は、高い破断傾向に起因して1000μm未満の厚みでさえ困難になる。
【0005】
米国特許第9209047号は、デバイス層がポリマ層上に配設されている可撓性半導体デバイスを開示している。
【0006】
しかしながら、ポリマフィルム、特にポリイミドフィルムなどの平坦な基板は、ポリマフィルムが形状または物理的特性を経時的に変化させるため、精密な薄膜温度センサには適していない。さらに、20E-6(1/K)というポリイミドフィルムのCTEは、白金には高過ぎる。単一の封入ダイおよび薄い基板を生産する従来の技術は、IC用に限って記述されており、高精度の極小フラットセンサについては記述されていない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、精密であると同時に可撓性のある受動電子部品、フラットセンサを実現することにある。
【0008】
この目的は、多くとも50μmの合計厚みを有する絶縁層と任意にはさらなる無機層から形成された基板を有しかつ多くとも150μmの高さを有する可撓性受動電子部品、詳細にはセンサにしたがって達成される。可撓性受動電子部品の高精度で長期の安定性は、無機層を使用することによって保証される。ポリマ基板とは対照的に、無機層は経時変化を全く示さず、比較的低いCTEを有する。さらに、セラミック基板とは対照的に、無機層または絶縁層と無機層で構成された基板は、機械的安定性を保ちながら、50μm以下の厚みに至るまで薄化可能である。薄化された基板は、可撓性受動電子部品に可撓性を提供する。この可撓性は、最大限でも150μmという全体的高さに可撓性受動電子部品が制限されていることによって、なおも維持され得る。さらに質量が小さい可撓性受動電子部品、特にセンサは、急速に周囲環境に追従し、測定における高速応答を結果としてもたらす。
【0009】
詳細には、可撓性受動電子部品は集積回路(IC)ではなく、または、集積回路(IC)を含まない。
【0010】
好ましい実施形態において、基板は、多くとも35μm、特に好ましくは多くとも20μmの厚みを有する。基板が薄ければ薄いほど、その安定性を維持しながらもより高い可能性が提供されることから、これは、とりわけ有利であることが判明している。絶縁層と併せた無機層の最小厚みの典型的例は、10μmである。
【0011】
本発明の一実施形態において、基板が絶縁層のみで構成されていることが可能である。
【0012】
好ましい実施形態において、可撓性受動電子部品は、多くとも70μm、特に好ましくは多くとも40μmの高さを有する。可撓性受動電子部品の削減した高さは、より高い可撓性およびより迅速な応答性の観点から見て有利であることが判明している。
【0013】
好ましい実施形態において、可撓性受動電子部品は、少なくとも5mm、好ましくは少なくとも2mm、好ましくは少なくとも1mmの屈曲曲率半径で曲げることのできる可撓性を有し、ここで曲げの前後の電気的構造の抵抗率の相対的差異(dR/R0、式中dはデルタつまりでΔを意味する)は0.5%を超えない可能性がある。このような可撓性を有する可撓性受動電子部品は、熱膨張/収縮または外部機械的応力に起因する曲げ応力の下での使用に好適であり得る。
【0014】
可撓性受動電子部品のこのような可撓性は、以下のように測定することができる。可撓性受動電子部品は、その可撓性を決定するために、ポリイミドホイル(Kapton(登録商標)、25μm)上に接着される。接着に先立ち、Kaptonフィルムの表面は、コロナ放電での処理によって活性化される。薄い可撓性受動電子部品の裏側にシアノ系接着剤(MINEA、強力瞬間接着剤)を塗布し、接着剤の反応時間中、可撓性受動電子部品をポリイミドホイル上に押圧する。可撓性受動電子部品を外側に向けた状態で、ポリイミドホイルを円筒形の棒の周りに巻き付ける。棒の直径は、0.5mm~10mmの範囲内となるように選択される。巻き付けられた時点で、ポリイミドホイルは、円筒形棒の表面と密に接触している。したがって、可撓性受動電子部品に適用される曲率半径は、棒の直径のおおよそ半分である。最大曲げが適用される持続時間は、おおよそ1秒に設定される。電気的構造の抵抗率の相対的差異dR/R(0)(式中dはデルタまたはΔを意味する)は、各曲げサイクルの前後で測定される。可撓性受動電子部品は、曲率半径が最小半径Rmより小さくないかぎり可撓性であるように意図されている。Rmは、dR/R(0)=0.5%である半径によって定義される。
【0015】
無機層は、好ましくは無機結晶質材料、詳細にはケイ素、炭化ケイ素、ガリウムヒ素またはサファイアでできているか、または無機非晶質材料、詳細には石英ガラス、ホウケイ酸ガラスまたはガラスでできているか、または好ましくはシリコン-オン-インシュレータ(SOI)ウエハから作られている。
【0016】
好ましい実施形態において、可撓性受動電子部品は、断面積(長さ×幅)が多くとも4mm2、好ましくは多くとも2mm2、特に好ましくは多くとも1mm2である、長さ、幅および高さを有する。高さが制限され長さと幅が比較的小さいことから、有利にも、低い質量ひいては急速応答性が保証される。
【0017】
好ましい実施形態において、電気的構造は、少なくとも1つの導体トラックおよび少なくとも2つの電気接触パッドを含み、ここで少なくとも2つの電気接触パッドは、少なくとも1つの導体トラックに電気的に接続されている。導体トラックは蛇行形状で延在するように構築され得る。
【0018】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの導体トラックは、均一な幅を有し、ここで幅は5μm以下であり、幅の標準偏差は幅の5%以下である。薄く均一な導体トラックは、急速に変化する測定パラメータに対する迅速かつ安定した応答のために有利である。導体トラックは、導体トラックの全体的抵抗のインライントリミングを可能にするため、少なくとも部分的に調整歪み負荷として形成され得る。
【0019】
好ましい実施形態において、導体トラックは、少なくとも3,000ppm/K、好ましくは少なくとも3,500ppm/K、特に好ましくは少なくとも3,800ppm/Kの電気抵抗温度係数を有する。
【0020】
好ましい実施形態において、可撓性受動電子部品は、各々少なくとも1つの導体トラックを含むことができる。各々の追加の電気的構造は、少なくとも1つの導体トラックを含み得る。電気的構造および少なくとも1つの追加の電気的構造は、多層構造の形で配設され、こうして、
a) 電気的構造および少なくとも1つの追加の電気的構造の導体トラックは、異なる平面上で互いに上下に配設され、
b) 互いに上下に存在している隣接する導体トラックは、追加の絶縁層により互いに少なくとも部分的に分離されており、任意には、
c) 互いに上下に存在している隣接する導体トラックは、追加の絶縁層を通って形成された1つ以上の導電性ビアを介して互いに電気的に接続されている。
【0021】
多層電気的構造での検知面積の増加は、可撓性受動電子部品を小さく保ちながら検知精度および性能を改善するために有利である。
【0022】
好ましい実施形態において、絶縁層は、金属酸化物および/または金属窒化物、詳細には二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウムまたは窒化ハフニウムでできている。このような材料でできた絶縁層は、無機層上で安定した電気的絶縁を示す。しかしながら、絶縁層の材料は、基板の表面上で必要な電気的絶縁を得ることができる限り、これらの材料に限定されない。
【0023】
さらなる好ましい実施形態において、可撓性受動電子部品は、電気的構造を少なくとも部分的に覆うカバー層をさらに含む。カバー層は、無機層から形成されていてよい。これによって、電気的構造は、特に攻撃的な環境において保護されており、こうして長期安定性を達成することができる。
【0024】
さらなる好ましい実施形態において、可撓性受動電子部品はさらに第1の保護層を含むことができる。第1の保護層は、少なくとも部分的に、詳細には完全に、カバー層を覆う。第1の保護層は、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)およびポリイミド(PI)などのポリマ材料でできていてよい。好ましくは、材料は、光構造化性ポリイミド(PS-PI)からなる。材料は、カバー層のマスクにしたがって光構造化される。
【0025】
好ましい実施形態において、電気的構造は、センサ素子および/またはヒータ素子として設計されている。センサは、温度センサ、流量センサ、粒子センサまたは化学センサとして設計され得る。
【0026】
流量センサの一例においては、流れ方向における2つの温度センサの間に1つのヒータ素子が配設されていてよい。
【0027】
温度センサの例においては、電気的構造は、少なくとも100オーム、好ましくは少なくとも1,000オーム、特に好ましくは少なくとも10,000オームの電気抵抗を有し得る。これによって低い自己発熱が達成される。
【0028】
ヒータ素子としての電気的構造の例において、この電気的構造は、多くとも5オーム、好ましくは多くとも2オーム、好ましくは多くとも1オームの電気抵抗を有し得る。ヒータ素子の導体トラックは、好ましくは、正方形、U-ループとして設計される。好ましくは、ヒーターは、多数の並列アドレス指定の導体トラックとして設計され、一方導体トラックは均一な幅を有し、この幅は5μm以下であり、幅の標準偏差は幅の5%以下である。
【0029】
さらなる好ましい実施形態において、電気的構造は通信システムと組合わされる。通信システムには、1つ以上の無線インタフェースおよび/または1つ以上の有線インタフェースが含まれていてよく、これらにより電気的構造は1つ以上のネットワークを介して通信することが可能になる。
【0030】
このような無線インタフェースは、Bluetooth(登録商標)および/またはWiFi(例えばIEEE802,11プロトコル)および/またはロングタームエボリューション(LTE)および/またはWiMAX(例えばIEEE802,16規格)および/または無線周波数ID(RFID)プロトコルおよび/または近距離無線通信(NFC)および/または他の無線通信プロトコルなどの、1つ以上の無線通信プロトコルの下での通信を提供することができる。
【0031】
好ましい一実施形態において、可撓性受動電子部品はさらに、無機層の下部側に第2の保護層を含むことができる。第2の保護層は、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)およびポリイミド(PI)などのポリマ材料でできていてよい。保護層は、適切な機械的安定性、電気絶縁性および伝熱特性を有するかぎりにおいて、これらの材料に限定されない。
【0032】
以上の目的は、発明力ある可撓性受動電子部品システムにしたがって達成される。この可撓性受動電子部品システムは、以上の発明力ある態様のいずれかに係る少なくとも1つの可撓性受動電子部品および少なくとも1つの電気的制御機構を含む。電気的制御機構は、電気的構造に電気的に接続されていてよい。この電気的制御機構は、可撓性受動電子部品を制御するように構成されている。
【0033】
温度可撓性受動電子部品の例において、電気的制御機構は、電気的構造(抵抗素子)に対して定電流を供給し、電気的構造を横断する電圧を測定し、オームの法則に基づいて抵抗値を計算し、抵抗値に対応する温度を導出するように構成されている。
【0034】
上述の目的は、可撓性受動電子部品、詳細には本発明に係る上述の可撓性受動電子部品を生産するための発明力ある方法にしたがって達成される。該方法は、以下のプロセスステップ、すなわち:
a) 上部側および下部側を有する無機ウエハを提供するステップと、
b) 無機ウエハの上部側上に絶縁層を適用するステップと、
c) 絶縁層上に電気的構造または多層電気的構造を適用し構造化するステップと、
d) 電気的構造上にカバー層を適用するステップと、
e) その下部側上で無機ウエハを、詳細には機械的除去および/またはエッチングプロセスによって、絶縁層および任意には無機ウエハを含む基板の多くとも50μm、好ましくは多くとも35μm、特に好ましくは多くとも20μmという厚みまで薄化するステップと、
を含む。
【0035】
好ましい実施形態においては、電気的構造を適用するために、シリコンウエハ、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウエハまたはガラスウエハなどの無機ウエハに対してまず金属層が適用され、これが次にフォトリソグラフィによって構造化される。金属層は、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)または、Al99.5%およびCu0.5%のアルミニウム-銅(Al-Cu)合金または少なくともPt、Alおよび/またはNiを含有する合金などの合金で製造され得る。
【0036】
好ましい実施形態において、該方法は、さらに:
f) 電気的構造の側および/または基板の下部側上に保護層を適用するステップと、任意には、
g) 無機ウエハの薄化ステップの後に第1の保護層を除去するステップと、
をさらに含み得る。
【0037】
本発明の一実施形態においては、ステップe)で、無機ウエハを完全に除去して、基板が絶縁層のみを含むようにすることが可能である。
【0038】
これは、薄化プロセス中に電気的構造が損傷を受けないようにできるという点において有利であることが判明している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の可撓性受動電子部品、詳細にはセンサの第1の好ましい実施形態の断面図を示す。
図2図1に係る可撓性受動電子部品の平面図を示す。
図3A】本発明に係る可撓性受動電子部品を製造するための技術の断面図を示す。
図3B】本発明に係る可撓性受動電子部品を製造するための技術の断面図を示す。
図3C】本発明に係る可撓性受動電子部品を製造するための技術の断面図を示す。
図3D】本発明に係る可撓性受動電子部品を製造するための技術の断面図を示す。
図3E】本発明に係る可撓性受動電子部品を製造するための技術の断面図を示す。
図3F】本発明に係る可撓性受動電子部品を製造するための技術の断面図を示す。
図3G】本発明に係る可撓性受動電子部品を製造するための技術の断面図を示す。
図3H】本発明に係る可撓性受動電子部品を製造するための技術の断面図を示す。
図3I】本発明に係る可撓性受動電子部品を製造するための技術の断面図を示す。
図3J】本発明に係る可撓性受動電子部品を製造するための技術の断面図を示す。
図3K】本発明に係る可撓性受動電子部品を製造するための技術の断面図を示す。
図3L】本発明に係る可撓性受動電子部品を製造するための技術の断面図を示す。
図3M】本発明に係る可撓性受動電子部品を製造するための技術の断面図を示す。
図4】本発明の可撓性受動電子部品の第2の好ましい実施形態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の説明においては、主として温度センサについて記述される。しかしながら、本発明の利用分野は温度センサに限定されず、本発明は有利には、流量センサ、化学(ガス)センサ、粒子センサなどに利用可能である。
【0041】
図1および2によると、センサ1は基板10を含む。基板10は、上部側2aおよび下部側2bを伴う無機層2、絶縁層3、および電気的構造4を含む。絶縁層3は無機層2の上部側2aを少なくとも部分的に覆う。絶縁層3は、描写されている通り、無機層2の上部側表面全体を覆っていてよい。電気的構造4は、絶縁層3を少なくとも部分的に覆う。
【0042】
基板10は、多くとも50μm、好ましくは多くとも35μm、特に好ましくは多くとも20μmである厚みt10を有する。換言すると、基板10の厚みt10は、無機層2の厚みt2と絶縁層3の厚みt3で構成されている。基板10が絶縁層3のみを有する場合には、厚みt10は厚みt3と等価である。
【0043】
センサ1は、多くとも150μm、好ましくは多くとも70μm、特に好ましくは多くとも40μmである高さh1を有する。薄化された基板10は、センサ1に可撓性を提供する。この可撓性はなお、多くとも150μmというセンサ1の制限された全体的高さh1によって維持され得る。さらに、質量が小さいセンサ1は、周囲環境に急速に追従し、測定における迅速な応答を結果としてもたらす。
【0044】
無機層2は、無機結晶質材料、詳細にはケイ素、炭化ケイ素、ガリウムヒ素またはサファイアでできているか、または無機非晶質材料、詳細には石英ガラス、ホウケイ酸ガラスまたはガラスでできているか、またはシリコン-オン-インシュレータ(SOI)ウエハから作られていてよい。
【0045】
絶縁層3は、金属酸化物および/または金属窒化物、詳細には二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウムまたは窒化ハフニウムでできていてよい。
【0046】
電気的構造4は、白金、ニッケル、アルミニウムまたは、少なくとも白金、ニッケルおよび/またはアルミニウムを含有する合金またはAl99.5%およびCu0.5%のアルミニウム-銅(Al-Cu)合金などの合金で製造され得る。
【0047】
センサ1はさらに、電気的構造4を少なくとも部分的に覆うカバー層5を含み得る。カバー層5は、1つ以上の電気接触パッド4aのために電気的構造4の1つ以上の部分を露出していてよい。カバー層5は、無機層から形成され得る。
【0048】
センサ1はさらに、無機基板10の下部側2bに保護層6を含むことができる。保護層6は、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)またはポリイミド(PI)などのポリマ材料でできていてよい。保護層6は、適切な電気絶縁性および伝熱特性を有するかぎりにおいて、これらの材料に限定されない。
【0049】
電気的構造4の特定の形状は、図2から分かる。例えば、上述の2つの電気接触パッド4aは、平行にかつ互いに離隔して延在する。電気接触パッド4aおよび導体トラック4bの合計面積は、基板10の面積の半分であってよい。例えば基板10の面積が1×1mm2である場合、電気接触パッド4aの各面積は0.1mm2である。これは一例であって、センサ2および接触パッド4aの寸法は、これらに限定されない。電気的構造4は、同じ平面内に3つ以上の電気接触パッド4aを含み得る。
【0050】
接触パッド4a以外に、電気的構造4は、少なくとも1つの導体トラック4bを含む。導体トラック4bは、両方の電気接触パッド4aに電気的に接続される。導体トラック4bは第1の端部と第2の端部を有する。導体トラック4bの第1の端部は一方の接触パッド4aに接続され、導体トラック4bの第2の端部は他方の接触パッド4aに接続される。
【0051】
例示された例において、導体トラックは、繰返しS字状に曲がる蛇行形状を有する。導体トラック4bの形状は、必要な導体長さまたは抵抗値が得られるかぎり、これに限定されない。好ましくは、導体トラック4bは均一な幅を有し、ここで幅は5μm以下であり、幅の標準偏差は幅の5%以下である。薄く均一な導体トラック4bは、急速に変化する測定パラメータに対する迅速かつ安定した応答のために有利である。導体トラック4bは、少なくとも部分的に調整歪み負荷として形成され得る。
【0052】
導体トラック4bは、センサ素子および/またはヒータ素子として適用され得る。化学センサへの応用の場合、導体トラック4b上にセンサ素子として触媒材料を提供することができる。同様に、ヒータ素子としての別の導体トラック(図示せず)をセンサ素子としての導体トラック4bの上方または下方に隣接して設置することができる。流量センサへの応用においては、ヒータ素子としての1つの導体トラックを、センサ素子としての2つの導体トラックの間に配設することができる。
【0053】
温度センサの例においては、電気的構造4は、少なくとも100オーム、好ましくは少なくとも1,000オーム、特に好ましくは少なくとも10,000オームの電気抵抗を有し得る。これによって低い自己発熱が達成される。
【0054】
ヒータ素子としての電気的構造4の例において、この電気的構造は、多くとも5オーム、好ましくは多くとも2オーム、好ましくは多くとも1オームの電気抵抗を有し得る。ヒータ素子の導体トラックは、好ましくは、正方形、U-ループとして設計される。好ましくは、ヒーターは、多数の並列アドレス指定の導体トラックとして設計され、一方導体トラックは均一な幅を有し、この幅は5μm以下であり、幅の標準偏差は幅の5%以下である。
【0055】
開示されていないものの、センサ1は、少なくとも1つの追加の電気的構造をさらに含むことができる。各々の追加の電気的構造は、上述の導体トラック4bと同じ構造を有する少なくとも1つの導体トラックを含むことができる。電気的構造4および少なくとも1つの追加の電気的構造は、多層構造の形で配設され得、こうして、
a) 電気的構造4および少なくとも1つの追加の電気的構造の導体トラック4bは、異なる平面上で互いに上下に配設され、
b) 互いに上下に存在している隣接する導体トラック4bは、追加の絶縁層により互いに少なくとも部分的に分離されており、任意には、
c) 互いに上下に存在している隣接する導体トラック4bは、追加の絶縁層を通って形成された1つ以上の導電性ビアを介して互いに電気的に接続されている。
【0056】
多層電気的構造4での検知面積の増加は、センサ1を小さく保ちながら検知精度および性能を改善するために有利である。追加の絶縁層は、無機層2上の絶縁層3と同じ構成を有していてよい。
【0057】
温度センサのためのセンサの設計例は、以下の通りであり得る:すなわち
1×1mm2(長さ1mmおよび幅1mm)のセンサ面積では、基板の半分が接触パッド4aおよび導体トラック4bにより覆われ、これにより、接触パッド4aの面積は少なくとも2×0.15mm2となり、導体トラックは蛇行として形成される。白金の導体トラック(ライン)の幅は、1μmであり、隣接する金属ラインの間の離隔距離は1.5μmである。平行な金属ラインの数は、200で合計長さは20cmである。白金の電気抵抗(ρPt)は、1.06μOhm mである。導体トラックの電気抵抗RはR=ρPt×L/(B×H)によって得られる。
【0058】
【表1】
【0059】
図3A~3Mを参照しながら、図1および2に示されたセンサ1を生産する方法の一実施形態について説明する。
【0060】
図3Aは、上部側2a’および下部側2b’を有する無機ウエハまたはプレート2’を示す。無機ウエハ2’は無機結晶質材料、詳細にはケイ素、炭化ケイ素、ガリウムヒ素またはサファイアでできていてよく、または無機非晶質材料、詳細には石英ガラス、ホウケイ酸ガラスまたはガラス、あるいは好ましくはシリコン-オン-インシュレータ(SOI)ウエハでできていてもよい。ウエハ2’は、その後のプロセスにおいて薄化される。そのときまでの初期ウエハ厚みは好ましくは、取り扱いを容易にする目的で約0.5mm~1mmである。
【0061】
図3Bは、絶縁層3’が無機ウエハ2’の上部側2a’上に適用されることを示している。絶縁層3’は、電気的絶縁性を有する酸化物層であり得る。このために、無機ウエハ2’としてのシリコンウエハが酸化される。当初よりSOIウエハを使用することもできる。代替的には、電気的絶縁性を有する酸化物層を被着させることもできる。
【0062】
図3Cは、金属層4’が電気的絶縁層3’上に適用されることを示している。金属層4’は、絶縁層3’上に蒸発またはスパッタリングされ得る。金属層4’は、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)または、Al99.5%およびCu0.5%のアルミニウム-銅(Al-Cu)合金または少なくともPt、Alおよび/またはNiを含有する合金などの合金で製造され得る。
【0063】
図3Dは、金属層4’上にマスクMが適用されることを示している。このために、金属層4’上にフォトレジストが適用され、予め定められたパターンに露光され現像される。
【0064】
図3Eは、各々少なくとも2つの電気接触パッド4aと少なくとも1つの導体トラック4bを含む複数の電気的構造4が金属層4’から構造化されることを示している。金属層4’は、湿式化学エッチングまたは乾式エッチングによってエッチングされて、マスクMで覆われた部分を残す。
【0065】
図3Fは、マスクMが例えばストリッピングなどによって除去されることを示している。
【0066】
図3Gは、カバー層5が電気的構造4の一部分上に適用され、電気接触パッド4aとなる部分を自由な状態に残すことを示している。このために、二酸化ケイ素(SiO2)そして任意には窒化ケイ素(Si34)などの無機材料が適用され、乾式エッチングおよび/または湿式エッチングによって構造化されて、追加のマスク(図示せず)で覆われた部分を残す。カバー層5を適用した後、マスクは、例えばリフトオフなどにより除去される。
【0067】
図3Hは、第1の保護層7が電気的構造4の側に適用され、電気的構造4、カバー層5および電気的構造4から露出した絶縁層3の部分を覆うことを示している。第1の保護層7は、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)などで製造されたポリマ層であり得る。好ましくは、有機材料は、光構造化性ポリイミド(PS-PI)からなる。材料は、カバー層5のマスクにしたがって光構造化される。
【0068】
任意には、電気接触パッド4aは、上に適用されたガルバニック貴金属層(図示せず)で不動態化される。電気接触パッド4a上に、電気ニッケル無電解金(ENIG)などの電気メッキを適用することができる。
【0069】
図3Iは、研削、化学機械的研摩(CMP)、エッチングまたはそれらの組合せなどのさまざまなプロセスによって、無機ウエハ2’を絶縁層3’と併せて、多くとも50μm、好ましくは多くとも35μm、特に好ましくは多くとも20μmまで薄化させることを示している。電気的構造4、カバー層5および絶縁層3’に対する除去された廃棄物による損傷および/または汚染を、第1の保護層7による保護下で効果的に防止できることが有利であることが判明している。その上、無機ウエハ2’は、第1の保護層7による補強を用いて、安定した状態で薄化され得る。
【0070】
図3Jは、保護層6となるべき第2の保護層6’が無機ウエハ2’の薄化された表面(下部側)上に適用されることを示している。第2の保護層6’は、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)などでできたポリマ層であってよい。
【0071】
図3Kは、無機ウエハ2’が、絶縁層3’、第1の保護層7’、第2の保護層6’およびカバー層5’と共に、図1に示された個別のセンサ1へとダイシングされることを示している。これらのカットは、ソー、レーザによって行なわれる。これらのセンサ1はさらに、SMTと相容性あるあらゆる電子プロセスにおいてさらに加工されてよい。センサ1の生産は完了する。
【0072】
図3Lは、第1の保護層7’および第2の保護層6’が除去されることを示している。カバー層5、電気的構造4の部分および無機ウエハ2’は再び露出される。2つの保護層6’および7’は、例えばバーンオフされ得る。
【0073】
図3Mは、センサ接続の一例を示す。センサ1は、保護層6が搭載ボードSに面した状態で、搭載ボードS上に組付けられ得る。温度センサへの応用においては、センサ1は、測定すべき表面にしっかりと接続される。センサ1の電気接触パッド4aおよび搭載ボードSは、ワイヤによって電気的に接続され得る。
【0074】
発明対象のセンサのさらなる利点は、以下の点に見出すことができる:
- 詳細には断面積1mm2未満×高さ100μmという低い質量による速い応答時間、
- 薄化された無機基板によるセンサの高い機械的可撓性、
- 100オーム~10000オームの導体トラックの電気抵抗の場合の低い自己発熱、
- 低い製造コスト(100mm×100mmの無機ウエハからおよそ10,000個のセンサを生産することができる)、
- 実証済みのリソグラフィプロセスを使用することができる。
【0075】
図4は、電気接触パッド4aが回路板(図示せず)の電線路に直接接続されている本発明のさらなる好ましい実施形態を示す。電気接触パッド4aの厚みt4aは、電気的構造4の導体トラック4bの厚みt4bよりも大きい。この構造は、導体トラック4bおよび電気接触パッド4aを同じ厚みで一旦構造化し、その後導体トラック4bに対応する部分を選択的にエッジングすることによって達成される。代替的には、これは、導体トラック4bおよび電気接触パッド4aを同じ厚みで一旦構造化し、その後さらなる蒸着またはメッキによって電気接触パッド4aに対応する部分を選択的に肥厚させることによって達成することができる。この設計の利点は、熱センサと回路板の間の熱的接触面積をさらに削減して、特に放射熱の検出において熱センサとして設計された電気的構造の感度を増大させるという点にある。好ましい実施形態において、電気的接続性は、機械的安定性をさらに改善する等方導電性接着剤(ICA)および/または異方導電性接着剤(ACA)の使用によって保証される。
【0076】
[実施例]
実施例1:本発明に係る可撓性受動電子部品、詳細には可撓性センサの設計
本発明に係る可撓性センサのための無機ウエハとして、一方の側に酸化ケイ素層および1.2μmの層の厚みを有する200mmのシリコンウエハを使用する。酸化ケイ素層の上に金属層を被着させる。金属層は850nmの合計厚みを有し、Al99.5%およびCu0.5%のAl-Cu合金で構成されている。金属層を次に、任意には互いに絶縁された個別の電気的構造へとリソグラフィによって分割する。電気的構造は各々、導体トラックおよびこの導体トラックの2つの端部にある2つの接触パッドで構成されている。導体トラックの各ラインは、均一の幅を有し、2つの接触パッド間で蛇行形状に配設されている。ウエハ上に異なる形で設計されている電気的構造は、詳細には、以下のパラメータによって定義される:
a) 導体トラックの長さ(L)、
b) 導体トラックの幅(W)。
【0077】
金属層を構造化するためのレイアウトは、シリコンウエハが正方形のフィールドに分割され、フィールド面積が各々400mm2に対応するような形で選択される。フィールドの各々は、個別の横列に配設された222個の個別の電気的構造からなる同じパターンを有する。電気的構造は異なる群に分割され、こうして1つの群内の電気的構造は同一である。パラメータLまたはWのうちの少なくとも1つについて、電気的構造は群の間で異なっている。
【0078】
金属層の構造化の後、金属層の全表面をまず、酸化物および窒化物層からなる無機カバー層でコーティングする。無機カバー層の合計厚みは、1.4μmである。その後の電気的アドレス指定を保証するため、このカバー層は、接触パッドにおいて開放されている。
【0079】
その後、およそ3μmの乾燥層厚みを有する光構造化性ポリイミド(PS-PI)で表面をコーティングし、カバー層のマスクにしたがって光構造化する。接触パッドの表面は、無機カバー層およびポリイミド層から自由な状態にとどまる。その後、コーティングされていない接触パッドを、厚みおよそ12μmのニッケル/金層で電気メッキする(ENIGプロセス)。
【0080】
実施例2:実施例1からの本発明に係る可撓性センサの電気的特徴付け
個別の構造を順次電気的に特徴付けする。電気的構造の2つの接触パッドを、ウエハテスタの2つの2重接点チップと接触させる。接点チップに電圧を印加することによって、R0すなわち0℃の温度における電気的構造の電気抵抗を決定する。第2の温度における抵抗Rを決定することによって、抵抗温度係数(TCR)を決定する。
【0081】
Table1は、群Z1の電気的構造の電気抵抗R0の平均値および標準偏差ならびに温度係数TCRを示す。この目的で、ウエハ上に分布した個別のフィールドを評価する。フィールド51は、ウエハの中心に、フィールド1および5はその下縁部にそしてフィールド79および83はその上縁部に位置設定される。群Z1の8つの構造が各フィールド上で評価される。群Z1の構造は、6.5μmに等しいライン幅Wを有する。
【0082】
【表2】
【0083】
Table1を見れば分かるように、検討対象の5つのフィールドに関連して、構造Z1の抵抗R0の平均値は247.2オームであり、標準偏差は2.1オームである。したがって、抵抗R0の相対的標準偏差は0.85%である。TCRの平均値は、4137.9ppm/Kであり、標準偏差は2.4ppm/Kである。したがって、TCRの相対的標準偏差は0.058%である。
【0084】
Table2において、群Z18からの電気的構造の電気抵抗は、統計的に評価される。電気的構造は0.5μmに等しいライン幅を有する。各フィールド上で最下位の横列内に18の隣接する電気的構造が存在する。それらの電気抵抗は、各々ウエハの中心、頂部および底部からの1つのフィールドについて、Table2に示されている。電気的構造の電気抵抗Rは、室温で決定した。
【0085】
【表3】
【0086】
Table2が示す通り、検討対象の3つのフィールドに関連して、構造Z2の抵抗Rの平均値は9285.6オームであり、標準偏差は131.7オームである。したがって、抵抗Rの相対的標準偏差は1.4%である。
【0087】
Table3は、フィールド51からの異なる群の電気的構造のTCRの平均値および標準偏差を示す。
【0088】
【表4】
【0089】
Table3が示す通り、ライン幅が広くなるにつれての平均TCRのわずかではあるものの系統的な増加は明らかであるが、TCRおよびTCRの標準偏差は、少なくとも0.5μm~6.5μmの範囲内の導体トラック幅について、導体トラックの幅とは無関係であることが多い。
【0090】
実施例3:実施例1からの本発明に係るセンサの完成
設計例1からのシリコンウエハの裏面を、およそ10μmのウエハと絶縁体の厚みまで、化学機械的に薄化する。その後、薄化した裏面に対し、およそ13μmのポリイミド保護層を適用する。
【0091】
その後、レーザまたはダイシングにより、電気的構造を分離する。個別の構造は機械的に可撓性であり、1mm未満の半径を有する丸棒の周りで曲げることができる。丸棒の周りで前後にくり返し曲げることによって電気的構造のR0値およびTCR値が著しく改変されることはない。
【0092】
実施例4:温度を測定するための本発明に係る可撓性センサの使用
供試体の表面温度を決定するために、設計例3からの電気的構造を供試体の表面に取付け、2つの接触パッドを、リード線を介して抵抗測定デバイスに接続する。電気的構造の電気抵抗を決定し較正曲線を使用することによって、試料の表面温度を演繹することができる。
【0093】
実施例5:
一方の側の酸化ケイ素層が20μmの層厚みを有するという点が異なる、実施例3に係るセンサ。シリコンウエハの裏側を、何も残らなくなるまで化学機械的に薄化する。その後、薄化した裏面にたいしておよそ15μmのポリイミド保護層を適用する。
【0094】
このセンサは、実施例3に係るセンサと類似の可撓性を有する。
【0095】
実施例6:
さらなる例において、接触パッドは両方共電気的構造の導体トラックの上方に持ち上げられる。この設計の利点は、センサとそのマウントの間の熱的接触面積を削減することにある。センサ構造は浮動しており、熱の漏出は削減される。温度センサの浮動式配設は、回路板の電線路に直接、持上った接触パッドを接続することによって実現される。
【0096】
実施例7:
R0=9.285オームの実施例3に係るセンサを、25μmのポリイミドホイル上に接着させ、異なる直径を有するさまざまな円筒形の棒の周りに巻き付け、dR/R0を測定する。無機層厚みは合計20μmである(薄化したケイ素無機層:10μm、無機絶縁層および保護層の厚み:10μm)。結果は、Table4に概説されている。
【0097】
【表5】
【0098】
Table4によると、センサは、曲率半径が1mm未満、平均でRm<1mmでない場合に、可撓性を有する。
上述の実施形態は下記のように記載され得るが、下記に限定されるものではない。
[構成1]
可撓性受動電子部品(1)、詳細にはセンサにおいて、
絶縁層(3)と、任意には上部側(2a)および下部側(2b)を伴う無機層(2)とを含み、それによって前記絶縁層(3)は前記任意の無機層(2)の前記上部側(2a)を少なくとも部分的に覆っている、基板(10)と、
前記絶縁層(3)を少なくとも部分的に覆っている電気的構造(4)と、
を含む可撓性受動電子部品であって、
前記基板(10)が、多くとも50μm、好ましくは多くとも35μm、特に好ましくは多くとも20μmである厚み(t10)を有すること、および
前記可撓性受動電子部品(1)が、多くとも150μm、好ましくは多くとも70μm、特に好ましくは多くとも40μmである高さ(h1)を有すること、
を特徴とする可撓性受動電子部品(1)。
[構成2]
少なくとも5mm、好ましくは少なくとも2mm、特に好ましくは少なくとも1mmの屈曲曲率半径で曲げることのできる可撓性を有し、かつ
曲げの前後の前記電気的構造(4)の抵抗率の相対的差異(dR/R0)が0.5%を超えることができない、
構成1に記載の可撓性受動電子部品(1)。
[構成3]
前記無機層(2)が無機結晶質材料、詳細にはケイ素、炭化ケイ素、ガリウムヒ素またはサファイアでできているか、または無機非晶質材料、詳細には石英ガラス、ホウケイ酸ガラスまたはガラスでできているか、または好ましくはシリコン-オン-インシュレータ(SOI)ウエハから作られている、構成1または2に記載の可撓性受動電子部品(1)。
[構成4]
前記可撓性受動電子部品(1)が、長さと幅の積が多くとも4mm 2 、好ましくは多くとも2mm 2 、特に好ましくは多くとも1mm 2 である、長さ、幅および高さ(h1)を有する、構成1から3のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)。
[構成5]
前記電気的構造(4)が少なくとも1つの導体トラック(4b)および少なくとも2つの電気接触パッド(4a)を含み、前記少なくとも2つの電気接触パッド(4a)が前記少なくとも1つの導体トラック(4b)に電気的に接続されており、
好ましくは、前記少なくとも1つの導体トラック(4b)が均一な幅を有し、前記幅が5μm以下であり、前記幅の標準偏差が前記幅の5%以下である、
構成1から4のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)。
[構成6]
前記導体トラック(4b)が、少なくとも3,000ppm/K、好ましくは少なくとも3,500ppm/K、特に好ましくは少なくとも3,800ppm/Kの電気抵抗温度係数を有する、構成5に記載の可撓性受動電子部品(1)。
[構成7]
各々少なくとも1つの導体トラックを含む少なくとも1つの追加の電気的構造をさらに含み、
前記電気的構造(4)および前記少なくとも1つの追加の電気的構造が、多層構造の形で配設され、こうして、
a) 前記電気的構造(4)および前記少なくとも1つの追加の電気的構造の前記導体トラック(4b)が、異なる平面上で互いに上下に配設され、
b) 互いに上下に存在している前記隣接する導体トラック(4b)が、追加の絶縁層により互いに少なくとも部分的に分離されており、
任意には、
c) 互いに上下に存在している前記隣接する導体トラック(4b)が、前記追加の絶縁層を通って形成された1つ以上の導電性ビアを介して互いに電気的に接続されている、
構成1から6のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)。
[構成8]
前記絶縁層(3)が、金属酸化物および/または金属窒化物、詳細には二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウムまたは窒化ハフニウムでできている、
構成1から7のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)。
[構成9]
前記電気的構造(4)が、白金、ニッケル、アルミニウムあるいは白金、ニッケルおよび/またはアルミニウムを含有する合金でできている、
構成1から8のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)。
[構成10]
前記電気的構造(4)を少なくとも部分的に覆うカバー層(5)をさらに含み、前記カバー層(5)が無機層から形成されている、構成1から9のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)。
[構成11]
前記電気的構造(4)がセンサ素子および/またはヒータ素子として設計されている、
構成1から10のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)。
[構成12]
前記センサ素子としての前記電気的構造(4)が少なくとも100オーム、好ましくは少なくとも1000オーム、好ましくは少なくとも10000オームの電気抵抗を有し、
前記ヒータ素子としての前記電気的構造(4)が多くとも5オーム、好ましくは多くとも2オーム、好ましくは多くとも1オームの電気抵抗を有する、
構成11に記載の可撓性受動電子部品(1)。
[構成13]
構成1から12のいずれか1項に記載の少なくとも1つの可撓性受動電子部品(1)および少なくとも1つの電気的制御機構を含み、前記電気的制御機構が、前記電気的構造(4)に電気的に接続され、前記可撓性受動電子部品(1)を制御するように構成されている、可撓性受動電子部品システム。
[構成14]
可撓性受動電子部品(1)、詳細には構成1から12のいずれか1項に記載の可撓性受動電子部品(1)を生産するための方法において、以下のプロセスステップ、すなわち、
a) 上部側(2a’)および下部側(2b’)を有する無機ウエハ(2’)を提供するステップと、
b) 前記無機ウエハ(2’)の上部側(2a’)上に絶縁層(3’)を適用するステップと、
c) 前記絶縁層(3’)上に電気的構造(4’)または多層電気的構造を適用し構造化するステップと、
d) 前記電気的構造(4’)上にカバー層(5’)を適用するステップと、
e) 前記下部側(2b’)上で前記無機ウエハ(2’)を、前記絶縁層(3)および任意には前記無機ウエハ(2’)を含む基板(10)が多くとも50μm、好ましくは多くとも35μm、特に好ましくは多くとも20μmという厚み(t10)を有するまで薄化するステップと、
を含む方法。
[構成15]
可撓性受動電子部品を生産するための方法において、
f) 前記電気的構造(4’)の側および/または前記基板(10)の前記下部側(2b)上に第1の保護層(7)を適用するステップと、任意には、
g) 前記無機ウエハ(2’)の前記薄化ステップの後に前記第1の保護層(7)を除去するステップと、
をさらに含む方法。
【符号の説明】
【0099】
1 受動電子部品
2 無機層
2’ 無機ウエハ
2a 上部側
2b 下部側
2a’ ウエハの上部側
2b’ ウエハの下部側
3、3’ 絶縁層
4、4’ 電気的構造
4a 電気接触パッド
4b 導体トラック
5、5’ カバー層
6、6’ 第2の保護層
7、7’ 第1の保護層
10 基板
S 搭載ボード
t2 無機層の厚み
t3 絶縁層の厚み
t10 基板の厚み
t4a 電気接触パッドの厚み
t4b 導体トラックの厚み
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図4