(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】射出成形機の制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20231011BHJP
B29C 45/78 20060101ALI20231011BHJP
B29C 45/62 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/78
B29C45/62
(21)【出願番号】P 2022528917
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2021021410
(87)【国際公開番号】W WO2021246524
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2020098815
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】並木 謙佑
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-262886(JP,A)
【文献】特開2001-225372(JP,A)
【文献】特開平10-217305(JP,A)
【文献】特開2016-144924(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0117573(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダとその周囲に配置されるヒータと前記シリンダの内部に配置されるスクリューとを有し、所定時刻における前記ヒータから樹脂に伝わるエネルギー量を算出する射出成形機の制御装置であって、
前記所定時刻の直前の所定期間における前記ヒータのヒータ出力と前記ヒータの設定温度と前記スクリューの回転数とを含む動作情報を取得する動作情報取得部と、
前記ヒータの放熱の特性に関する特性情報を取得する特性情報取得部と、
取得された動作情報に含まれる所定期間における前記ヒータの表面温度を取得する表面温度取得部と、
前記ヒータのヒータ出力の推移に対する前記ヒータの表面温度と設定温度との比の推移の実績を実績情報として取得する実績情報取得部と、
前記動作情報、前記実績情報、及び取得された前記表面温度に基づいて、前記所定時刻における前記ヒータの表面温度を推定する推定部と、
推定された表面温度、前記特性情報、及び前記動作情報に基づいて、前記ヒータの表面から雰囲気への放熱量を算出するとともに、少なくとも前記ヒータから前記樹脂に伝わる伝熱エネルギー量及び前記スクリューによるせん断エネルギー量を算出するエネルギー量算出部と、
を備える射出成形機の制御装置。
【請求項2】
前記エネルギー量算出部は、前記ヒータから樹脂に伝わる伝熱エネルギー量と前記スクリューによるせん断エネルギー量との割合を算出する請求項1に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項3】
取得された前記動作情報と取得された前記表面温度とに基づいて、前記動作情報に含まれるヒータ出力の推移に対する前記表面温度と前記設定温度との比の推移を算出する算出部をさらに備え、
前記推定部は、前記実績情報に含まれる実績のうち、前記動作情報及び算出された比の
推移に一致する実績を用いて、前記所定時刻の表面温度を推定する請求項1又は2に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項4】
前記表面温度取得部は、前記ヒータの表面温度と設定温度との比の形式で前記ヒータの表面温度を取得し、
前記推定部は、前記実績情報に含まれる実績のうち、前記動作情報及び取得された比の
推移に一致する実績を用いて、前記所定時刻の表面温度を推定する請求項1又は2に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項5】
前記推定部は、
前記算出された比の推移に一致する実績によって示される、前記所定時刻に対応する時刻の表面温度と設定温度との比から前記所定時刻の表面温度を推定する請求項3又は4に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項6】
前記エネルギー量算出部は、前記表面温度から算出したパラメータを前記特性情報の一部に用いて前記エネルギー量を算出する請求項1から5のいずれかに記載の射出成形機の制御装置。
【請求項7】
シリンダとその周囲に配置されるヒータと前記シリンダの内部に配置されるスクリューとを有し、所定時刻における前記ヒータから樹脂に伝わるエネルギー量を算出する射出成形機の制御装置としてコンピュータを動作させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記所定時刻の直前の所定期間における前記ヒータのヒータ出力と前記ヒータの設定温度と前記スクリューの回転数とを含む動作情報を取得する動作情報取得部、
前記ヒータの放熱の特性に関する特性情報を取得する特性情報取得部、
取得された動作情報に含まれる所定期間における前記ヒータの表面温度を取得する表面温度取得部、
前記ヒータのヒータ出力の推移に対する前記ヒータの表面温度と設定温度との比の推移の実績を実績情報として取得する実績情報取得部、
前記動作情報、前記実績情報、及び取得された前記表面温度に基づいて、前記所定時刻における前記ヒータの表面温度を推定する推定部、
推定された表面温度、前記特性情報、及び前記動作情報に基づいて、前記ヒータの表面から雰囲気への放熱量を算出するとともに、少なくとも前記ヒータから前記樹脂に伝わる伝熱エネルギー量及び前記スクリューによるせん断エネルギー量を算出するエネルギー量算出部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形機の制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホッパに入れられたペレット(樹脂)をシリンダ内で溶融して、金型に注入する射出成形機が知られている。射出成形機のシリンダの外周には、ヒータが配置される。ヒータがシリンダを加熱することにより、ペレットが溶融される。
【0003】
成形状態の監視及び条件設定の適正化のために、射出成形機に与えられる熱量と温度変化との関係をモニタリングすることが有用である。そこで、例えば、ヒータのみにより発生される熱量と加熱されたシリンダの温度との対応関係を予め計測しておき、実成型におけるシリンダ温度と計測された対応関係におけるシリンダ温度との差をせん断発熱による温度変化として算出する射出成形機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、射出成形機において、ホッパ口から投入されたペレットは、ヒータからの伝熱とスクリューの回転によるせん断発熱により溶融される。一般的に、「伝熱」は、熱量の供給能力が比較的低いものの、ばらつきが比較的小さいという特徴をもつ。また、「せん断」は、熱量の供給能力が比較的高いものの、ばらつきが比較的大きいという特徴をもつ。「伝熱」と「せん断」との割合は、成形品に対する要求に応じて最適に配分されるのが好ましい。これに対し、成形条件を適切に設定する難易度は、ペレットの種類の増加及び成形品の形状の複雑化により、高くなってきている。そのため、成形条件の適正性の判断は、熟練技術者による経験と勘に基づいて実施されることが多い。特許文献1では、せん断の温度変化のみが算出される。そのため、特許文献1では、条件変更時における温度変化が条件変更によるものか否か把握するのが難しい。条件変更においては、温度変化の要因を定量的に得られることが好適である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示は、シリンダとその周囲に配置されるヒータと前記シリンダの内部に配置されるスクリューとを有し、所定時刻における前記ヒータから樹脂に伝わるエネルギー量を算出する射出成形機の制御装置であって、前記所定時刻の直前の所定期間における前記ヒータのヒータ出力と前記ヒータの設定温度と前記スクリューの回転数とを含む動作情報を取得する動作情報取得部と、前記ヒータの放熱の特性に関する特性情報を取得する特性情報取得部と、取得された動作情報に含まれる所定期間における前記ヒータの表面温度を取得する表面温度取得部と、前記ヒータのヒータ出力の推移に対する前記ヒータの表面温度と設定温度との比の推移の実績を実績情報として取得する実績情報取得部と、前記動作情報、前記実績情報、及び取得された前記表面温度に基づいて、前記所定時刻における前記ヒータの表面温度を推定する推定部と、推定された表面温度、前記特性情報、及び前記動作情報に基づいて、前記ヒータの表面から雰囲気への放熱量を算出するとともに、少なくとも前記ヒータから前記樹脂に伝わる伝熱エネルギー量及び前記スクリューによるせん断エネルギー量を算出するエネルギー量算出部と、を備える射出成形機の制御装置に関する。
【0007】
(2)また、本開示は、シリンダとその周囲に配置されるヒータと前記シリンダの内部に配置されるスクリューとを有し、前記ヒータから樹脂に伝わるエネルギー量を算出する射出成形機の制御装置としてコンピュータを動作させるプログラムであって、前記コンピュータを、前記所定時刻の直前の所定期間における前記ヒータのヒータ出力と前記ヒータの設定温度と前記スクリューの回転数とを含む動作情報を取得する動作情報取得部、前記ヒータの放熱の特性に関する特性情報を取得する特性情報取得部、取得された動作情報に含まれる所定期間における前記ヒータの表面温度を取得する表面温度取得部、前記ヒータのヒータ出力の推移に対する前記ヒータの表面温度と設定温度との比の推移の実績を実績情報として取得する実績情報取得部、前記動作情報、前記実績情報、及び取得された前記表面温度に基づいて、前記所定時刻における前記ヒータの表面温度を推定する推定部、推定された表面温度、前記特性情報、及び前記動作情報に基づいて、前記ヒータの表面から雰囲気への放熱量を算出するとともに、少なくとも前記ヒータから前記樹脂に伝わる伝熱エネルギー量及び前記スクリューによるせん断エネルギー量を算出するエネルギー量算出部、として機能させるプログラムに関する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、温度変化の要因を定量的に得ることが可能な射出成形機の制御装置及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る制御装置を含む射出成形機を示す概略図である。
【
図2】一実施形態の制御装置に学習される実績情報の一例を示す表である。
【
図3】一実施形態の制御装置のヒータ及びスクリューによる発熱量と放熱量とペレットに与える熱量との関係を示す概略図である。
【
図4】一実施形態の制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】一実施形態の制御装置の動作情報の一例を示す概略図である。
【
図6】一実施形態の制御装置の実績情報の一例を示す概略図である。
【
図7】一実施形態の制御装置の表示部に表示される画面を示す画面図である。
【
図8】一実施形態の制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図9】変形例の制御装置に係る表示部に表示される画面を示す画面図である。
【
図10】他の変形例の制御装置の表示部に表示される画面を示す画面図である。
【
図11】さらに他の変形例の制御装置の表示部に表示される画面を示す画面図である。
【
図12】さらに他の変形例の制御装置の表示部に表示される画面を示す画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態に係る射出成形機10の制御装置1及びプログラムについて、
図1から
図8を参照して説明する。
まず、本実施形態により制御される射出成形機10について説明する。
射出成形機10は、ペレットを溶融して金型(図示せず)に注入することで成形する装置である。射出成形機10は、例えば、
図1に示すように、シリンダ101と、ヒータ102と、安全カバー103と、を備える。
【0011】
シリンダ101は、例えば、筒状体である。シリンダ101の軸方向一端部は、端部に向けて縮径する。シリンダ101は、軸方向に沿って、内部にスクリュー(図示せず)を有する。スクリューは、溶融したペレットを攪拌しつつシリンダ101の一端側に移動させる。
【0012】
ヒータ102は、シリンダ101の周囲に配置される。ヒータ102は、例えば、シリンダ101の軸方向に沿って、複数配置される。本実施形態において、ヒータ102はシリンダ101の外周を覆うように、軸方向に沿って3つ配置される。ヒータ102は、例えば、シリンダ101を200度以上に加熱する。
【0013】
安全カバー103は、ヒータ102の周囲に配置される凹状体である。安全カバー103は、比較的高温となるヒータ102への接触を回避するために配置される。
【0014】
以上の射出成形機10によれば、ヒータ102によって200度以上に加熱されたシリンダ101の内部において、ペレットが溶融される。スクリューは、溶融したペレットをシリンダ101の一端から金型に注入する。これにより、射出成形機10は、例えば、プラスチック製品を成形する。
【0015】
ここで、安全カバー103がヒータ102の周囲に配置されているため、ヒータ102の表面温度を外部から直接計測することは容易ではない。一方、ヒータ102の実際の表面温度と、ヒータ102に設定される設定温度と、ヒータ102のヒータ出力との間には相関があることがわかっている。具体的には、ヒータ102の平均ヒータ出力と、ヒータ102の表面温度と設定温度との比との間には相関があることがわかっている。例えば、
図2に示すように、ヒータ102の設定温度とスクリューの回転数とを(1)220度,50rpm、(2)180度,100rpm、(3)180度,50rpmに設定した。その結果、表面温度/設定温度は、それぞれ1.19、0.792、0.919となり、平均ヒータ出力は、それぞれ46.6%、6.62%、14.5%となった。その結果、表面温度/設定温度とヒータ出力との相関係数は、0.991であった。したがって、表面温度/設定温度とヒータ出力との間には、強い相関があることがわかった。なお、以下の実施形態において、ヒータ出力は、ヒータ102を制御するコントローラ(図示せず)からのヒータ102の操作量を指示する指令値として説明される。また、コントローラは、一例として、温度制御点における検出値に基づいて指令値を定める。
【0016】
また、ヒータ102の発熱量E
Hiは、
図3に示すように、対流放熱量E
Ci、放射放熱量E
Ri、冷却水に奪われる熱量E
W、機械本体(ホッパ側)への伝熱量E
0、樹脂が受け取った熱量E
M、及びせん断エネルギーE
Sによって示され得る。ここで、i(i=1,2・・・,k)は、自然数であり、k個のヒータ102を識別するための数を表す。例えば、雰囲気への放熱量(対流放熱+放射放熱)は、以下の数1で示され得る。
【数1】
【0017】
以下の実施形態に係る射出成形機10の制御装置1は、上記相関を用いて、ヒータ102の表面温度を外部から推測する。これにより、以下の実施形態に係る射出成形機10の制御装置1は、温度制御点及び追加センサ等の検出点から方程式を用いてヒータ102の表面温度を推定するのに比べ、より精度よくヒータ102の表面温度を推測するものである。そして、以下の実施形態に係る射出成形機10の制御装置1は、ヒータ102から樹脂に伝わるエネルギー量を算出する。射出成形機10の制御装置1は、例えば、ヒータ102による伝熱エネルギー量と、スクリューによるせん断エネルギー量とを算出する。また、以下の実施形態に係る射出成形機の制御装置1は、伝熱エネルギー量とせん断エネルギー量との割合を算出する。これにより、以下の実施形態に係る射出成形機の制御装置1は、動作条件を変更した際におけるエネルギーの変化を定量的に得られるものである。なお、以下の実施形態において、「動作中」とは、射出成形機10が現に動作している瞬間をいう。また、以下の実施形態において「所定時刻」とは、ヒータ102の表面温度の推定対象となる時刻をいう。
【0018】
次に、本開示の一実施形態に係る射出成形機10の制御装置1について、
図1から
図8を参照して説明する。
制御装置1は、射出成形機10を制御する装置である。具体的には、制御装置1は、射出成形機10の成形条件を制御する装置である。制御装置1は、例えば、
図1に示すように、射出成形機10に接続される。制御装置1は、射出成形の速度、圧力、シリンダ101の温度、金型温度、及び溶融されたペレットの射出量等の成形条件を指定して制御する。制御装置1は、
図4に示すように、動作情報格納部11と、動作情報取得部12と、特性情報格納部20と、特性情報取得部21と、実績情報格納部13と、実績情報取得部14と、表面温度取得部15と、算出部16と、推定部17と、エネルギー量算出部22と、出力部18と、出力制御部19と、を備える。
【0019】
動作情報格納部11は、例えば、ハードディスク等の記録媒体である。動作情報格納部11は、射出成形機10のヒータ102に対する設定温度及び動作中のヒータ102のヒータ出力に関する動作情報を格納する。また、動作情報格納部11は、例えば、射出成形機10の動作に関する指示の内容を動作情報として格納する。動作情報格納部11は、例えば、
図5に示すように、動作開始時を0、所定時刻をTとして、サンプリング周期t_1(s)ごとに、所定時刻の直前t_T-1まで、ヒータ出力y_0、y_1、...y_T-1を格納する。また、動作情報格納部11は、設定温度として、S(℃)を格納する。また、動作情報格納部11は、上記成形条件を動作情報として格納する。動作情報格納部11は、例えば、単位時間当たりのスクリュー回転量、成形時の負荷電流率、室温、冷却水の流量、冷却水出口温度、及び冷却水入口温度を動作情報として格納する。
【0020】
動作情報取得部12は、例えば、CPUが動作することにより実現される。動作情報取得部12は、所定時刻の直前の所定期間における、ヒータ102のヒータ出力とヒータ102の設定温度とを動作情報として取得する。本実施形態において、動作情報取得部12は、動作情報格納部11から動作情報を取得する。動作情報取得部12は、例えば、射出成形機10の運転開始から所定時刻の直前までの期間における、ヒータ102のヒータ出力とヒータ102の設定温度とを動作情報として取得する。動作情報取得部12は、例えば、所定時刻の直前まで、予め定められたサンプリング周期で示されるヒータ出力を取得する。また、動作情報取得部12は、スクリューに設定される回転数である、スクリュー回転量、負荷電流率、室温、流量、冷却水出口温度、及び冷却水入口温度を動作情報として取得する。
【0021】
特性情報格納部20は、例えば、ハードディスク等の記録媒体である。特性情報格納部20は、ヒータ102の放熱の特性に関する特性情報を格納する。特性情報格納部20は、特性情報として、ヒータ102に固有の情報を格納する。特性情報格納部20は、例えば、機械効率及び減速比を含むモータトルク、空転時の負荷電流率、ヒータ容量、ヒータ102の表面積、放射率、ステファン-ボルツマン係数、水の密度、及び水の比率を特性情報として格納する。
【0022】
特性情報取得部21は、例えば、CPUが動作することにより実現される。特性情報取得部21は、ヒータ102の放熱の特性に関する特性情報を取得する。
【0023】
実績情報格納部13は、例えば、ハードディスク等の記録媒体である。実績情報格納部13は、ヒータ102のヒータ出力の推移に対するヒータ102の表面温度と設定温度との比の推移の実績を実績情報として格納する。実績情報格納部13は、例えば、予め測定されたヒータ102のヒータ出力の推移を入力データとして、同時に測定されるヒータ102の表面温度とヒータ102の設定温度との比(表面温度/設定温度)の推移を実績情報として格納する。実績情報格納部13は、ヒータ出力を入力とする教示データの学習によって予め得られた実績情報を格納する。実績情報格納部13は、例えば、予めヒータ102の表面に接触された温度センサ(図示せず)を用いて、
図2に示すような、ヒータ出力と表面温度との関係の学習によって得られる実績情報を格納してよい。実績情報格納部13は、例えば、複数の実績を実績情報として格納する。実績情報格納部13は、例えば、
図5に示すように、測定された実績ごとに、測定番号をM(Mは自然数)、測定開始時刻(動作開始時刻)を0、ヒータ出力を取得した時刻をtM_N(Nは自然数)として、ヒータ出力の値をx_MN、表面温度/設定温度の値をR_MNとする実績情報を格納する。
【0024】
実績情報取得部14は、例えば、CPUが動作することにより実現される。実績情報取得部14は、実績情報格納部13から実績情報を取得する。実績情報取得部14は、例えば、ヒータ102のヒータ出力の推移に対するヒータ102の表面温度と設定温度との比の推移の実績を実績情報として取得する。具体的には、実績情報取得部14は、過去のヒータ出力ごとに、過去の設定温度と過去の表面温度との比(表面温度/設定温度)を実績情報として取得する。
【0025】
表面温度取得部15は、例えば、CPUが動作することにより実現される。表面温度取得部15は、取得された動作情報に含まれる期間におけるヒータ102の表面温度を取得する。表面温度取得部15は、例えば、取得された動作情報に含まれる期間において、後述する推定部17によって推定された表面温度を取得する。また、表面温度取得部15は、推定された表面温度に代えて、実測され又は外部から提供される表面温度を取得する。表面温度取得部15は、例えば、サンプリング周期t_1ごとに、表面温度TP_A(℃)(A=1、2、...t-1)を取得する。
【0026】
算出部16は、例えば、CPUが動作することにより実現される。算出部16は、取得された動作情報と取得された表面温度に基づいて、動作情報に含まれるヒータ出力の推移に対する表面温度と設定温度との比の推移を算出する。算出部16は、例えば、動作情報に含まれるヒータ出力ごとに、表面温度/設定温度の値を算出する。本実施形態において、算出部16は、サンプリング周期t_1ごとに、(TP_A/S)(A=1、2、...t-1)を算出する。
【0027】
推定部17は、例えば、CPUが動作することにより実現される。推定部17は、動作情報、実績情報、及び取得された表面温度に基づいて、所定時刻におけるヒータ102の表面温度を推定する。具体的には、推定部17は、実績情報に含まれる実績のうち、動作情報及び算出された比の推移に類似又は一致する実績を用いて、所定時刻の表面温度を推定する。推定部17は、推移に類似又は一致する実績によって示される、所定時刻に対応する時刻の設定温度と表面温度との比から所定時刻の表面温度を推定する。推定部17は、例えば、所定時刻の直前から所定期間の動作情報に含まれるヒータ出力の推移、及び設定温度と表面温度との比の推移と類似又は一致する期間となる実績を実績情報から特定する。推定部17は、特定した実績に含まれる類似又は一致する期間経過後の次の時刻(所定時刻に対応)における設定温度と表面温度との比を取得する。そして、推定部17は、取得した比と動作情報に含まれる設定温度とを乗算することで、所定時刻における表面温度を推定する。
【0028】
エネルギー量算出部22は、例えば、CPUが動作することにより実現される。エネルギー量算出部22は、推定された表面温度と特性情報とに基づいて、ヒータ102の表面から雰囲気への放熱量を算出する。すなわち、エネルギー量算出部22は、k個のヒータ102の対流放熱と放射放熱との和を雰囲気への放熱量として算出する。ここで、エネルギー量算出部22は、ヒータ102から雰囲気への放熱量(J)をE
Ai、対流放熱量(J)をE
Ci、放射放熱量(J)をE
Ri、ヒータ102の表面温度(K)をT
H、室温(K)をT
R、ヒータ102の表面積(m
2)をA
i、熱伝達率(W/m
2K)をh、放射率をε、ステファン-ボルツマン係数(W/m
2K
4)をσ、k個のヒータ102を識別する数をi=1、2...kとして、以下の数2を用いて放熱量E
Aiを算出する。
【数2】
なお、エネルギー量算出部22は、熱伝達率hとして、ヒータ102の表面温度と雰囲気温度との温度差の関数を用いてE
Aiを算出してもよい。
【0029】
また、エネルギー量算出部22は、少なくともヒータ102から樹脂(ペレット)に伝わる伝熱エネルギー量とスクリューによるせん断エネルギー量とを算出する。エネルギー量算出部22は、スクリューによるせん断エネルギー(J)をE
S、機械効率及び減速比を含むモータトルク(N・m)をT、単位時間当たりのスクリュー回転量(rad/s)をR、成形時の負荷電流率をr
M、空転時の負荷電流率をr
M0として、以下の数3を算出することで、せん断エネルギーE
Sとして、スクリューの回転用モータの仕事量を算出する。モータトルクは、定格トルクであっても、最大トルクであってもよい。負荷電流率は、スクリューの回転用モータを制御するコントローラからの指令値であって、モータトルクに対する負荷トルクの割合を表している。
【数3】
【0030】
また、エネルギー量算出部22は、伝熱エネルギー量(J)をE
T、ヒータ102の発熱量(J)をE
Hi、ヒータ102及びシリンダ101の一部からの対流放熱量(J)をE
Ci´、ヒータ102及びシリンダ101の一部からの放射放熱量(J)をE
Ri´、冷却水に奪われる熱量(J)をE
W、ホッパ側への伝熱量(J)をE
0、ヒータ102の容量(W)をW
i、ヒータ出力をr
i、ヒータ102が巻かれていない領域からの対流放熱量(J)をE
CNi、ヒータ102が巻かれていない領域からの放射放熱量(J)をE
RNi、水の密度(g/cm
3)をρ、水の比熱(J/g・K)をC
W、水の流量(cm
3/s)をQ、冷却水出口温度(K)をT
OUT、冷却水入口温度(K)をT
INとして、以下の数4を算出することで伝熱エネルギー量ETを算出する。
【数4】
【0031】
また、エネルギー量算出部22は、ヒータ102から樹脂(ペレット)に伝わる伝熱エネルギー量とスクリューによるせん断エネルギー量との割合を算出する。エネルギー量算出部22は、伝熱エネルギー量とせん断エネルギー量との比を算出することで割合を算出する。
【0032】
出力部18は、例えば、ディスプレイ等の表示部である。出力部18は、算出された放熱量を外部に出力する。出力部18は、例えば、
図7に示すように、伝熱エネルギー量、せん断エネルギー量、及び割合の少なくとも1つを表示する。
【0033】
出力制御部19は、例えば、CPUが動作することにより実現される。出力制御部19は、算出された放熱量を出力部18に出力させる。出力制御部19は、算出された伝熱エネルギー量、せん断エネルギー量、及び割合の少なくとも1つを出力部18に出力させる。
【0034】
次に、制御装置1による処理の流れについて、
図8を参照して説明する。
まず、実績情報取得部14は、実績情報を取得する(ステップS1)。実績情報取得部14は、例えば、複数の実績情報を実績情報格納部13から取得する。
【0035】
次いで、特性情報取得部21は、特性情報を取得する(ステップS2)。特性情報取得部21は、例えば、予め特性情報格納部20に格納されている特性情報を取得する。
【0036】
次いで、動作情報取得部12は、動作情報を取得する(ステップS3)。動作情報取得部12は、例えば、予め動作情報格納部11に格納されている動作情報を取得する。
【0037】
次いで、表面温度取得部15は、動作情報に対応する表面温度を取得する(ステップS4)。
【0038】
次いで、算出部16は、取得された動作情報と取得された表面温度に基づいて、動作情報に含まれるヒータ出力の推移に対する表面温度と設定温度との比の推移を算出する(ステップS5)。次いで、推定部17は、動作情報、表面温度、及び実績情報からヒータ102の表面温度を推定する(ステップS6)。
【0039】
ステップS7において、エネルギー量算出部22は、推定されたヒータ102の表面温度と、特性情報とに基づいて放熱量を算出する。エネルギー量算出部22は、例えば、ヒータ102ごとに放熱量を算出する。また、エネルギー量算出部22は、伝熱エネルギー量と、せん断エネルギー量と、伝熱エネルギー量とせん断エネルギー量との割合とを算出する。
【0040】
ステップS8において、出力制御部19は、出力部18に、算出された放熱量、伝熱エネルギー量、せん断エネルギー量、伝熱エネルギー量、及び割合を出力する。出力部18は、例えば、算出された放熱量、伝熱エネルギー量、せん断エネルギー量、伝熱エネルギー量、及び割合を表示する。
【0041】
次いで、放熱量の算出を繰り返すか否かが判断される(ステップS9)。推定が繰り返される場合(ステップS9:YES)、処理は、ステップS3に戻る。一方、推定が終了される場合(ステップS9:NO)、本フローによる処理は、終了する。
【0042】
次に、本実施形態のプログラムについて説明する。
射出成形機10の制御装置1に含まれる各構成は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0043】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、表示プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0044】
以上、一実施形態に係る射出成形機の制御装置1及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
(1)シリンダ101とその周囲に配置されるヒータ102とシリンダ101の内部に配置されるスクリューとを有し、所定時刻における前記ヒータから樹脂に伝わるエネルギー量を算出する射出成形機10の制御装置1であって、所定時刻の直前の所定期間におけるヒータ102のヒータ出力とヒータ102の設定温度とスクリューの回転数とを含む動作情報を取得する動作情報取得部12と、ヒータ102の放熱の特性に関する特性情報を取得する特性情報取得部21と、取得された動作情報に含まれる所定期間におけるヒータ102の表面温度を取得する表面温度取得部15と、ヒータ102のヒータ出力の推移に対するヒータ102の表面温度と設定温度との比の推移の実績を実績情報として取得する実績情報取得部14と、動作情報、実績情報、及び取得された表面温度に基づいて、所定時刻におけるヒータ102の表面温度を推定する推定部17と、推定された表面温度、特性情報、及び動作情報に基づいて、ヒータ102の表面から雰囲気への放熱量を算出するとともに、少なくともヒータ102から樹脂に伝わる伝熱エネルギー量及びスクリューによるせん断エネルギー量を算出するエネルギー量算出部22と、を備える。
また、シリンダ101とその周囲に配置されるヒータ102とシリンダ101の内部に配置されるスクリューとを有し、所定時刻における前記ヒータから樹脂に伝わるエネルギー量を算出する射出成形機10の制御装置1としてコンピュータを機能させるプログラムであって、コンピュータを、所定時刻の直前の所定期間におけるヒータ102のヒータ出力とヒータ102の設定温度とスクリューの回転数とを含む動作情報を取得する動作情報取得部12、ヒータ102の放熱の特性に関する特性情報を取得する特性情報取得部21、取得された動作情報に含まれる所定期間におけるヒータ102の表面温度を取得する表面温度取得部15、ヒータ102のヒータ出力の推移に対するヒータ102の表面温度と設定温度との比の推移の実績を実績情報として取得する実績情報取得部14、動作情報、実績情報、及び取得された表面温度に基づいて、所定時刻におけるヒータ102の表面温度を推定する推定部17、推定された表面温度と特性情報とに基づいて、ヒータ102の表面から雰囲気への放熱量を算出するとともに、少なくともヒータ102から樹脂に伝わる伝熱エネルギー量及びスクリューによるせん断エネルギー量を算出するエネルギー量算出部22、として機能させる。
これにより、シリンダ101の周囲の形状(凹凸)にかかわらず、推定されるヒータ102の表面温度の精度をより向上することができる。また、ヒータ102の表面に物理的なセンサ等を設置する必要がないため、コストを抑制することができる。そして、推定された表面温度に基づいて、ヒータ102のそれぞれの放熱量を算出することができる。したがって、ヒータ102の表面からの空気への放熱量をより精度よく算出することができる。その結果、放熱量が最小となるような操作や成形条件の設定をすることで、ヒータ102の長寿命化や射出成形機10の駆動電力を抑制することが可能である。
【0045】
(2)エネルギー量算出部22は、ヒータ102から樹脂に伝わる伝熱エネルギー量とスクリューによるせん断エネルギー量との割合を算出する。これにより、温度変化の要因をより定量的に得ることができる。
【0046】
(3)射出成形機10の制御装置1は、取得された動作情報と取得された表面温度に基づいて、動作情報に含まれるヒータ出力の推移に対する表面温度と設定温度との比の推移を算出する算出部16をさらに備え、推定部17は、実績情報に含まれる実績のうち、動作情報及び算出された比の推移に類似又は一致する実績を用いて、所定時刻の表面温度を推定する。これにより、ヒータ出力及び設定温度を取得することで、容易に表面温度を推定することができる。
【0047】
(4)表面温度取得部15は、ヒータ102の表面温度と設定温度との比の形式でヒータ102の表面温度を取得し、推定部17は、実績情報に含まれる実績のうち、動作情報及び算出された比の推移に類似又は一致する実績を用いて、所定時刻の表面温度を推定する。これにより、ヒータ出力及び設定温度を取得することで、容易に表面温度を推定することができる。
【0048】
(5)推定部17は、推移に類似又は一致する実績によって示される、所定時刻に対応する時刻の表面温度と設定温度との比から所定時刻の表面温度を推定する。これにより、過去の実績に基づいて表面温度を推定するので、推定される表面温度の精度を向上することができる。
【0049】
(6)エネルギー量算出部22は、表面温度から算出したパラメータを特性情報の一部に用いてエネルギー量を算出する。これにより、推定された表面温度を用いるので、算出されるエネルギー量の精度をより向上することができる。
【0050】
以上、本開示の射出成形機の制御装置及びプログラムの好ましい各実施形態につき説明したが、本開示は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態において、実績情報取得部14は、1つのヒータ102に対して、表面の複数点における実績情報を取得してもよい。これにより、推定部17は、1つのヒータ102の表面の複数点における表面温度を推定してもよい。そして、エネルギー量算出部22は、1つのヒータ102の表面の複数点における放熱量を算出してもよい。この際、エネルギー量算出部22は、対流放熱量E
Ci及び放射放熱量E
Riについて、各測定点でのヒータ102の表面温度(K)をT
Hm、ヒータ102の表面内の各測定点の占める面積(m
2)をA
im、各測定点を示す数字をm=1,2...として、以下の数5を算出することで放熱量を求めてもよい。
【数5】
【0051】
また、エネルギー量算出部22は、以下の数6を算出することで、複数点の測定に対する対流放熱量E
Ci´及び放射放熱量E
Ri´を算出してもよい。
【数6】
【0052】
また、上記実施形態において、出力制御部19は、
図9に示すように、伝熱エネルギー量、せん断エネルギー量、及び合計を棒グラフで出力部18に表示させてもよい。これにより、エネルギー量の状況を容易に把握することが可能になる。
【0053】
また、上記実施形態において、出力制御部19が、
図10に示すように、エネルギー量の割合を円グラフで出力部18に表示させてもよい。これによっても、エネルギー量の割合を容易に把握することができる。
【0054】
また、上記実施形態において、出力制御部19が、
図11に示すように、エネルギー量について、所定時刻毎にまとめた散布図を出力部18に表示させてもよい。これにより、時系列的にエネルギー量を表示することができるので、エネルギー量の異常監視を容易にすることができる。
【0055】
また、上記実施形態において、出力制御部19は、
図12に示すように、伝熱エネルギー量、せん断エネルギー量、割合、及び合計エネルギー量を所定の時刻ごとに、出力部18に一覧表示させてもよい。出力制御部19は、例えば、項目ごとに、最大値、最小値、平均値、最大値と最小値との差、及び標準偏差を出力部18に表示させてもよい。
【0056】
また、上記実施形態において、実績情報取得部14が実績情報を取得した後に、動作情報取得部12が動作情報を取得するとしたが、これに制限されない。動作情報取得部12は、実績情報取得部14による実績情報の取得よりも前に、動作情報を取得するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態において、射出成形機10は、インラインスクリュ式又はプランジャ式のいずれであってもよい。また、上記実施形態において、実績情報に含まれる、ヒータ102の表面温度は、直接的な方法である温度センサ(図示せず)で測定されたものであってもよく、間接的な方法であるサーモグラフィ(放射温度計、図示せず)で測定されたものであってもよい。
【0058】
また、上記実施形態において、出力部18は、制御装置1(射出成形機10)とは別体として構成されてもよい。また、制御装置1は、複数の射出成形機10を管理してもよい。また、上記実施形態において、出力制御部19は、放熱量に加え、ヒータ102の表面温度を出力部18に表示させてもよい。
【0059】
また、上記実施形態において、エネルギー量算出部22は、単位時間当たり又はサイクルタイム毎等の所定時間で計算するようにしてもよい。また、上記実施形態において、エネルギー量算出部22は、総エネルギー量又は所定時間の単位時間当たりのエネルギー量を算出するようにしてもよい。また、エネルギー量算出部22は、一定時間毎の平均値又は特定のタイミングでのエネルギー量を算出するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態において、ヒータ102の発熱量EHは、数4のように算出されることに制限されない。ヒータ102の発熱量EHは、ヒータ102に流れる電流値と、ヒータ102の抵抗値とから算出されるヒータの消費電力に基づいて算出されてもよい。
【0061】
また、上記実施形態において、スクリュー回転量Rは、射出成形機10上での設定値として取得されてよい。また、スクリュー回転量Rは、スクリューの回転用モータ(図示せず)に備わっている検出器(エンコーダ)からの検出値を取得してもよい。モータの挙動は、常に設定通りの回転数になっているわけではない。モータには、例えば、立ち上がり及び立ち下がり時間が必要である。また、樹脂との摩擦が大きい場合、スクリューの回転数は、設定回転数に達しないことがある。そのため、検出値を用いることにより、エネルギー量の算出の精度を向上することができる。
【0062】
また、上記実施形態において、せん断エネルギーESとして、モータの仕事量を数3のように算出したが、これに制限されない。せん断エネルギーESは、スクリューの回転用モータに取り付けられる電力計(図示せず)によって示される値を用いて算出されてもよい。
【0063】
また、上記実施形態において、せん断エネルギーESは、モータ仕事量を算出する以外の方法で算出されてもよい。せん断エネルギーESは、例えば、スクリューと樹脂との摩擦熱による樹脂の温度上昇分から算出されてもよい。また、せん断エネルギーESは、例えば、樹脂の粘度とひずみ速度とから算出されてもよい。
【0064】
また、上記実施形態において、表面温度取得部15は、表面温度に代えて、設定温度と表面温度との比を取得してもよい。この場合、制御装置1は、算出部16を備えずともよい。
【符号の説明】
【0065】
1 制御装置
10 射出成形機
12 動作情報取得部
14 実績情報取得部
16 算出部
17 推定部
21 特性情報取得部
22 エネルギー量算出部
101 シリンダ
102 ヒータ
103 安全カバー