IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マルホ発條工業株式会社の特許一覧

特許7364820コイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法
<>
  • 特許-コイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法 図1
  • 特許-コイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法 図2
  • 特許-コイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法 図3
  • 特許-コイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法 図4
  • 特許-コイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法 図5
  • 特許-コイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法 図6
  • 特許-コイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法 図7
  • 特許-コイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法 図8
  • 特許-コイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法 図9
  • 特許-コイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】コイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/04 20060101AFI20231011BHJP
   H01F 41/071 20160101ALI20231011BHJP
【FI】
H01F41/04 F
H01F41/071
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023121098
(22)【出願日】2023-07-25
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2023099989
(32)【優先日】2023-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591206108
【氏名又は名称】マルホ発條工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】奥村 誠
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10300160(DE,A1)
【文献】国際公開第2016/193457(WO,A1)
【文献】特開2007-11981(JP,A)
【文献】特開2021-106267(JP,A)
【文献】特開2005-316744(JP,A)
【文献】特開昭59-199135(JP,A)
【文献】特開昭50-131844(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/226380(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/04 -41/098
G06K 19/04
G06K 19/077
B21F 3/00 - 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を供給する供給ヘッドを有する線材供給ユニットと、
前記供給ヘッドからの前記線材の供給方向に対して傾斜し且つ前記線材をコイルの巻回方向へ案内する案内溝が形成された傾斜面を有し、前記供給ヘッドに対向して配置された状態で、前記供給ヘッドから供給される前記線材が前記案内溝に導入されると、前記線材が前記案内溝に沿って曲折されてコイルが形成されるコイル形成ツールと、
前記コイル形成ツールにおける前記供給ヘッドから供給される前記線材の接触位置と前記供給ヘッドとの間の距離を変化させることにより、形成される前記コイルのコイル径を変化させるコイル形成ツール駆動部と、
前記コイルの内側にチップを供給するチップ供給ユニットと、を備え、
前記コイル形成ツールを前記供給ヘッドに対向して配置した後、前記接触位置と前記供給ヘッドとの間の距離を第1距離に設定した状態で、前記供給ヘッドから前記コイル形成ツールへ前記線材を供給することにより前記コイルの一端部に位置する第1部位を形成した後、前記接触位置と前記供給ヘッドとの間の距離を前記第1距離よりも長い第2距離に設定した状態で、前記供給ヘッドから前記コイル形成ツールへ前記線材を供給することにより前記第1部位に連続し且つ前記第1部位よりも大径の第2部位を形成し、その後、前記第2部位の内側へ前記チップを供給した後、前記接触位置と前記供給ヘッドとの間の距離を前記第1距離に設定した状態で、前記供給ヘッドから前記コイル形成ツールへ前記線材を供給することにより前記第2部位における前記第1部位側とは反対側で連続し且つ前記第2部位より小径であり、前記コイルの他端部に位置する第3部位を形成する、
コイル付きモジュール製造装置。
【請求項2】
前記供給ヘッドから供給される前記線材が前記案内溝に導入されると、前記線材が前記案内溝に沿って曲折され鉛直方向に沿った中心軸周りに巻回される、
請求項1に記載のコイル付きモジュール製造装置。
【請求項3】
前記チップ供給ユニットは、
複数の前記チップを貯留し前記チップを1つずつ鉛直下方へ排出するチップ貯留部と、
前記チップを保持するチップ保持ヘッドと、
前記チップ貯留部から排出される1つの前記チップを受け取る受け取り位置と、前記コイルの前記第2部位が形成された状態で前記第2部位の鉛直上方に位置し且つ前記チップ保持ヘッドに保持された前記チップを前記第2部位の内側へ移載する移載位置と、のいずれかへ前記チップ保持ヘッドを移動させる保持ヘッド駆動部と、を有する、
請求項1または2に記載のコイル付きモジュール製造装置。
【請求項4】
前記チップ貯留部は、鉛直方向に延在し内側に複数の前記チップが配列した状態で保持される保持溝を有し、
前記チップ供給ユニットは、更に、
前記保持溝における予め設定された位置において前記保持溝を堰き止めた閉状態と前記保持溝を開放した開状態とをとりうるシャッタと、
前記シャッタを駆動することにより、前記チップ貯留部から前記第2部位へ前記チップを1つずつ供給するシャッタ駆動部と、を有する、
請求項3に記載のコイル付きモジュール製造装置。
【請求項5】
線材を供給する供給ヘッドからの前記線材の供給方向に対して傾斜し且つ前記線材をコイルの巻回方向へ案内する案内溝が形成された傾斜面を有し、前記供給ヘッドに対向して配置された状態で、前記供給ヘッドから供給される前記線材が前記案内溝に導入されると、前記線材が前記案内溝に沿って曲折されて前記コイルが形成されるコイル形成ツールを、前記供給ヘッドに対向して配置する準備工程と、
前記案内溝における前記供給ヘッドから供給される前記線材の接触位置と前記供給ヘッドとの間の距離を第1距離に設定した状態で、前記供給ヘッドから前記コイル形成ツールへ前記線材を供給することにより前記コイルの一端部に位置する第1部位を形成する第1部位形成工程と、
前記第1部位形成工程の後、前記接触位置と前記供給ヘッドとの間の距離を前記第1距離よりも長い第2距離に設定した状態で、前記供給ヘッドから前記コイル形成ツールへ前記線材を供給することにより前記第1部位に連続し且つ前記第1部位よりも大径の第2部位を形成する第2部位形成工程と、
前記第2部位形成工程の後、前記第2部位の内側へチップを供給するチップ供給工程と、
前記チップ供給工程の後、前記接触位置と前記供給ヘッドとの間の距離を前記第1距離に設定した状態で、前記供給ヘッドから前記コイル形成ツールへ前記線材を供給することにより前記第2部位における前記第1部位側とは反対側で連続し且つ前記第2部位より小径であり、前記コイルの他端部に位置する第3部位を形成する第3部位形成工程と、を含む、
コイル付きモジュール製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導線が巻回されてなる巻回部と、この巻回部の内側に延ばされた、巻き始め線部と、巻回部の内側に延ばされた、巻き終わり線部と、を有するコイルアンテナと、巻き始め線部と巻き終わり線部とに接続されたICチップと、を備えるコイルタグの製造方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。このコイルタグの製造方法では、一対の巻回用治具の一方に、内側から外側に向けて導線を引っ掛けた後、当該巻回用治具を中心として、外側の導線を巻き返し、外側の導線を円弧状に延ばしながら巻回用治具の他方にまで配する。そして、一方の巻回用治具および他方の巻回用治具に引っ掛けながら予め設定された回数分だけ導線を巻回した後、他方の巻回用治具の外側から内側に導線を巻き返し、その後、巻き回した状態の導線を巻回用治具から取り外す。その後、巻き始め線部と巻き終わり線部とにICチップをはんだ付けする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-274382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されているようなコイルタグの製造方法では、コイルタグ1つ当たりの作製に要する時間を短縮することによりコイルタグの生産におけるスループットを向上させることが要請されている。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、コイル付きモジュールの生産におけるスループットを向上させることができるコイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るコイル付きモジュール製造装置は、
線材を供給する供給ヘッドを有する線材供給ユニットと、
前記供給ヘッドからの前記線材の供給方向に対して傾斜し且つ前記線材をコイルの巻回方向へ案内する案内溝が形成された傾斜面を有し、前記供給ヘッドに対向して配置された状態で、前記供給ヘッドから供給される前記線材が前記案内溝に導入されると、前記線材が前記案内溝に沿って曲折されてコイルが形成されるコイル形成ツールと、
前記コイル形成ツールにおける前記供給ヘッドから供給される前記線材の接触位置と前記供給ヘッドとの間の距離を変化させることにより、形成される前記コイルのコイル径を変化させるコイル形成ツール駆動部と、
前記コイルの内側にチップを供給するチップ供給ユニットと、を備え、
前記コイル形成ツールを前記供給ヘッドに対向して配置した後、前記接触位置と前記供給ヘッドとの間の距離を第1距離に設定した状態で、前記供給ヘッドから前記コイル形成ツールへ前記線材を供給することにより前記コイルの一端部に位置する第1部位を形成した後、前記接触位置と前記供給ヘッドとの間の距離を前記第1距離よりも長い第2距離に設定した状態で、前記供給ヘッドから前記コイル形成ツールへ前記線材を供給することにより前記第1部位に連続し且つ前記第1部位よりも大径の第2部位を形成し、その後、前記第2部位の内側へ前記チップを供給した後、前記接触位置と前記供給ヘッドとの間の距離を前記第1距離に設定した状態で、前記供給ヘッドから前記コイル形成ツールへ前記線材を供給することにより前記第2部位における前記第1部位側とは反対側で連続し且つ前記第2部位より小径であり、前記コイルの他端部に位置する第3部位を形成する。
【0007】
他の観点から見た本発明に係るコイル付きモジュール製造方法は、
線材を供給する供給ヘッドからの前記線材の供給方向に対して傾斜し且つ前記線材をコイルの巻回方向へ案内する案内溝が形成された傾斜面を有し、前記供給ヘッドに対向して配置された状態で、前記供給ヘッドから供給される前記線材が前記案内溝に導入されると、前記線材が前記案内溝に沿って曲折されて前記コイルが形成されるコイル形成ツールを、前記供給ヘッドに対向して配置する準備工程と、
前記案内溝における前記供給ヘッドから供給される前記線材の接触位置と前記供給ヘッドとの間の距離を第1距離に設定した状態で、前記供給ヘッドから前記コイル形成ツールへ前記線材を供給することにより前記コイルの一端部に位置する第1部位を形成する第1部位形成工程と、
前記第1部位形成工程の後、前記接触位置と前記供給ヘッドとの間の距離を前記第1距離よりも長い第2距離に設定した状態で、前記供給ヘッドから前記コイル形成ツールへ前記線材を供給することにより前記第1部位に連続し且つ前記第1部位よりも大径の第2部位を形成する第2部位形成工程と、
前記第2部位形成工程の後、前記第2部位の内側へチップを供給するチップ供給工程と、
前記チップ供給工程の後、前記接触位置と前記供給ヘッドとの間の距離を前記第1距離に設定した状態で、前記供給ヘッドから前記コイル形成ツールへ前記線材を供給することにより前記第2部位における前記第1部位側とは反対側で連続し且つ前記第2部位より小径であり、前記コイルの他端部に位置する第3部位を形成する第3部位形成工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コイル形成ツールの案内溝における線材の接触位置と供給ヘッドとの間の距離を第1距離に設定した状態で、供給ヘッドからコイル形成ツールへ線材を供給することによりコイルの長手方向の一端部に位置する第1部位を形成した後、前述の接触位置と供給ヘッドとの間の距離を第2距離に設定した状態で、供給ヘッドからコイル形成ツールへ線材を供給することにより第1部位よりも大径の第2部位を形成する。その後、第2部位の内側へチップを供給した後、前述の接触位置と供給ヘッドとの間の距離を第1距離に設定した状態で、供給ヘッドからコイル形成ツールへ線材を供給することにより第2部位より小径でありコイルの長手方向の他端部に位置する第3部位を形成する。これにより、供給ヘッドと、コイル形成ツールの案内溝における線材の接触位置と、の間の距離を変化させるだけで、内側にチップが固定されたコイルを作製することができるので、コイル付きモジュールを効率的に作製できる。従って、コイル付きモジュールの生産におけるスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る無線タグ製造装置の概略側面図である。
図2】実施の形態に係る無線タグを示す概略側面図である。
図3】実施の形態に係る線材供給ユニットを示し、(A)は概略正面図であり、(B)は-Z方向側から見た概略側面図である。
図4】実施の形態にコイル形成ツールの一部を示し、(A)は底面図であり、(B)は側面図である。
図5】実施の形態に係る無線タグ製造装置の一部を示し、(A)は第1部位の形成開始時の様子を示す図であり、(B)は第1部位を形成する様子を示す図であり、(C)は第1部位が形成される様子を示す図である。
図6】実施の形態に係る無線タグ製造装置の一部を示し、(A)は第2部位の形成開始時の様子を示す図であり、(B)は第2部位を形成する様子を示す図である。
図7】実施の形態に係る無線タグ製造装置の概略側面図である。
図8】実施の形態に係る無線タグ製造装置の概略側面図である。
図9】実施の形態に係る無線タグ製造装置の概略側面図である。
図10】実施の形態に係る無線タグ製造装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るコイル付きモジュール製造装置について、図を参照しながら説明する。本実施の形態に係るコイル付きモジュール製造装置は、線材を供給する供給ヘッドを有する線材供給部と、供給ヘッドからの線材の供給方向に対して傾斜し且つ鉛直方向に沿っており、線材をコイルの巻回方向へ案内する案内溝が形成された傾斜面を有し、供給ヘッドに対向して配置された状態で、供給ヘッドから供給される線材が案内溝に導入されると、線材が案内溝に沿って曲折されて鉛直方向に沿った中心軸周りに巻回された長尺のコイルが形成されるコイル形成ツールと、案内溝における供給ヘッドから供給される線材の接触位置と供給ヘッドとの間の距離を変化させることにより、形成されるコイルのコイル径を変化させるコイル形成ツール駆動部と、コイルの内側にチップを供給するチップ供給部と、を備える。そして、コイル形成ツールを供給ヘッドに対向して配置した後、前述の接触位置と供給ヘッドとの間の距離を第1距離に設定した状態で、供給ヘッドからコイル形成ツールへ線材を供給することによりコイルの長手方向の一端部に位置する第1部位を形成した後、接触位置と供給ヘッドとの間の距離を第1距離よりも長い第2距離に設定した状態で、供給ヘッドからコイル形成ツールへ線材を供給することにより第1部位に連続し且つ第1部位よりも大径の第2部位を形成する。その後、第2部位の内側へチップを供給した後、接触位置と供給ヘッドとの間の距離を第1距離に設定した状態で、供給ヘッドからコイル形成ツールへ線材を供給することにより第2部位における第1部位側とは反対側で連続し且つ第2部位より小径であり、コイルの長手方向の他端部に位置する第3部位を形成する。
【0011】
本実施の形態に係る無線タグ製造装置は、図1に示すように、線材供給ユニット11と、コイル形成ツールユニット21と、チップ供給ユニット30と、コイル支持ユニット23と、切断ユニット24と、コイル回収ユニット31と、を備えるコイル付きモジュール製造装置である。なお、以下の説明においてZ軸方向は鉛直方向に相当する。そして、+Z方向が鉛直上方向に相当する。本実施の形態に係る無線タグは、例えば図2に示すように、長尺のコイルCo1とコイルCo1の内側に配置されたチップCPと、を備えるパッシブタグである。ここで、チップCPは、パッシブタグとして機能するための回路が形成されたチップである。コイルCo1は、その長手方向における一端部に位置する第1部位Po1と、第1部位Po1と連続し第1部位Po1よりも大径の第2部位Po2と、コイルCo1の長手方向における他端部に位置し第2部位Po2における第1部位Po1側とは反対側で第2部位Po2に連続するとともに第2部位Po2よりも小径の第3部位Po3と、を有する。
【0012】
図1に戻って、線材供給ユニット11は、供給ヘッド112と、供給ヘッド112へ線材を供給する本体部111と、を有する。供給ヘッド112は、図3(A)および(B)に示すように、線材F1を案内する案内溝112aと、傾斜部112bと、を有する。本体部111は、図3(A)の矢印AR1に示すように、供給ヘッド112を案内溝112aの延在方向に沿った軸周りに回転させる回転駆動部1111を有する。また、本体部111は、図3(B)の矢印AR2に示すように、線材F1を、案内溝112aを通じて繰り出していく。傾斜部112bは、-Y方向側ほど突出量が大きくなるように傾斜している。そして、線材供給ユニット11は、供給ヘッド112の傾きを変化させることにより、作製されるコイルCo1のピッチ量を変化させる。
【0013】
図1に戻って、コイル形成ツールユニット21は、コイル形成ツール211と、コイル形成ツール211を支持するアーム212と、を有する。また、コイル形成ツールユニット21は、アーム212をX軸方向に沿って移動させることでコイル形成ツール211を移動させるコイル形成ツール駆動部213を有する。コイル形成ツール211は、図4(A)および(B)に示すように、供給ヘッド112からの線材F1の供給方向、即ち、Y軸方向に対して傾斜し且つZ軸方向と平行である傾斜面211aを有する。傾斜面211aには、Z軸方向に対して傾斜したコイルCo1の巻回方向に沿って延在しており、線材F1をコイルCo1の巻回方向へ案内する案内溝211bが形成されている。コイル形成ツール211は、例えば図5(A)および(B)に示すように、Y軸方向において供給ヘッド112に対向して配置された状態で、供給ヘッド112から供給される線材F1が案内溝211bに導入されると、線材F1が案内溝211bに沿って曲折されてZ軸方向に沿った中心軸C1周りに巻回された長尺のコイルCo1が形成される。
【0014】
コイル形成ツールユニット21は、案内溝211bにおける線材F1の接触位置と供給ヘッド112との間の距離を第1距離W1に設定した状態で、供給ヘッド112からコイル形成ツール211へ線材F1を供給されることで、コイルCo1の半径R1の第1部位Po1を形成する。このとき、コイルCo1は、図5(C)の矢印AR3に示すように、供給ヘッド112から-Z方向側へ螺旋状に延伸していく。次に、コイル形成ツールユニット21は、図6(A)および(B)に示すように、コイル形成ツール211を矢印AR3に示すように-X方向へ移動させることにより、案内溝211bにおける線材F1の接触位置と供給ヘッド112との間の距離を第1距離W1よりも長い第2距離W2に設定する。この状態で、コイル形成ツールユニット21は、供給ヘッド112からコイル形成ツール211へ線材F1を供給されることで、コイルCo1の第1部位Po1よりも大径の半径R2を有する第2部位Po2を形成する。その後、コイル形成ツールユニット21は、コイル形成ツール211を再び+X方向へ移動させることにより、案内溝211bにおける線材F1の接触位置と供給ヘッド112との間の距離を第1距離W1に設定し、この状態で、コイル形成ツールユニット21は、供給ヘッド112からコイル形成ツール211へ線材F1を供給されることで、コイルCo1の第3部位Po3を形成する。
【0015】
図1に戻って、チップ供給ユニット30は、複数のチップCPを貯留するチップ貯留ユニット32と、チップCPをコイルCo1の第2部位Po2へ移載する移載位置Pos2へ搬送するチップ搬送ユニット22と、を有するチップ供給ユニットである。チップ貯留ユニット32は、複数のチップCPを貯留しチップCPを1つずつ鉛直下方へ排出する。チップ貯留ユニット32は、鉛直方向に延在し内側に複数のチップCPが配列した状態で保持される保持溝321aを有するチップ貯留部321と、保持溝321aにおける予め設定された位置において保持溝321aを堰き止めた閉状態と保持溝321aを開放した開状態とをとりうるシャッタ324と、シャッタ324を駆動することにより、チップ貯留部321からコイルCo1の第2部位Po2へチップCPを1つずつ供給するシャッタ駆動部322と、を有する。また、チップ貯留ユニット32は、チップ貯留部321とシャッタ駆動部322とを纏めて支持する支持体323を有する。
【0016】
チップ搬送ユニット22は、チップCPを保持するチップ保持ヘッド221と、先端部でチップ保持ヘッド221を支持する保持ツール222と、保持ツール222を支持するアーム223と、を有する。また、チップ搬送ユニット22は、アーム223をその長手方向に沿って移動させることにより、チップ保持ヘッド221をチップ貯留部321から排出される1つのチップCPを受け取る受け取り位置Pos1と、コイルCo1の第2部位Po2が形成された状態で、第2部位Po2の鉛直上方に位置し、チップ保持ヘッド221に保持されたチップCPを第2部位Po2の内側へ移載する移載位置Pos2と、のいずれかへ移動させる保持ヘッド駆動部224を有する。
【0017】
コイル支持ユニット23は、先端部でコイルCo1を支持する支持ツール231と、支持ツールを支持するアーム232と、を有する。また、コイル支持ユニット23は、アーム232をX軸方向に沿って移動させることにより、支持ツール231の先端部でコイルCo1を支持する支持位置Pos3と、コイルCo1から離脱した離脱位置Pos4と、へ移動させる支持ツール駆動部233を有する。
【0018】
切断ユニット24は、先端部で線材F1を切断する切断ツール241と、切断ツール241を支持するアーム242と、を有する。また、切断ユニット24は、アーム242をその長手方向に沿って移動させることにより、切断ツール241の先端部に設けられた刃を線材F1に当接させて押し付けることでコイルCo1を線材F1から切り離す切断ツール駆動部243を有する。
【0019】
コイル回収ユニット31は、筒状であり線材F1から切り離されたコイルCo1を保持するコイル保持ヘッド311と、コイル保持ヘッド311をZ軸へ駆動するヘッド駆動部312と、を有する。ヘッド駆動部312は、コイル保持ヘッド311が固定されたヘッド支持部3122と、ヘッド支持部3122をZ軸方向へ駆動する支持部駆動部3121と、を有する。
【0020】
次に、本実施の形態に係る無線タグ製造装置を使用した無線タグ製造方法について説明する。まず、コイル形成ツールユニット21が、図1に示すように、コイル形成ツール211を、供給ヘッド112に対向して配置する準備工程を行う。その後、線材F1とコイル形成ツール211における案内溝211bとの接触位置と供給ヘッド112との間の距離を第1距離W1に設定した状態で、供給ヘッド112からコイル形成ツール211へ線材F1を供給することにより、コイルCo1の第1部位Po1を形成する第1部位形成工程を行う。このとき、第1部位Po1は、供給ヘッド112から線材F1が供給されるに伴って、供給ヘッド112から鉛直下方に向かって螺旋状に延伸していく。次に、前述の接触位置と供給ヘッド112との間の距離を第2距離W2に設定した状態で、供給ヘッド112からコイル形成ツール211へ線材F1を供給することにより、第1部位Po1に連続し且つ第1部位Po1よりも大径の第2部位Po2を形成する第2部位形成工程を行う。このとき、第2部位Po2は、供給ヘッド112から線材F1が供給されるに伴って、供給ヘッド112から鉛直下方に向かって螺旋状に延伸していく。
【0021】
また、チップ搬送ユニット22は、チップ保持ヘッド221をチップ貯留部321から排出される1つのチップCPを受け取る受け取り位置Pos1に配置し、チップ貯留ユニット32は、1つのチップCPを、チップ貯留部321の鉛直下方に配置されたチップ保持ヘッド221へ排出する。これにより、チップ保持ヘッド221が、1つのチップCPを保持した状態となっている。続いて、コイル形成ツールユニット21が、コイル形成ツール211を図7の矢印AR11に示すように-X方向側へ移動させてコイル形成ツール211をコイルCo1から離脱させるとともに、コイル支持ユニット23が、支持ツール231を矢印AR12に示すように-X方向へ移動させることにより、支持ツール231の先端部でコイルCo1を支持した状態にする。その後、チップ搬送ユニット22は、矢印AR13に示すように、チップ保持ヘッド221を、コイルCo1の鉛直上方の移載位置Pos2へ移動させる。その後、チップ搬送ユニット22は、チップ保持ヘッド221によるチップCPの保持を解除することにより、図8に示すように、チップCPをコイルCo1の第2部位Po2の内側へ落下させるチップ供給工程を行う。
【0022】
次に、チップ搬送ユニット22が、図9の矢印AR14に示すように、チップ保持ヘッド221を再び受け取り位置Pos1へ移動させる。また、コイル支持ユニット23が、矢印AR15に示すように、支持ツール231を+X方向側へ移動させて支持ツール231をコイルCo1から離脱させる。そして、コイル形成ツールユニット21が、矢印AR16に示すように、コイル形成ツール211を+X方向へ移動させることで、再び、コイル形成ツール211を供給ヘッド112に対向して配置する。その後、線材F1とコイル形成ツール211における案内溝211bとの接触位置と供給ヘッド112との間の距離を第1距離W1に設定した状態で、供給ヘッド112からコイル形成ツール211へ線材F1を供給されることにより、コイルCo1の第3部位Po3を形成する第3部位形成工程を行う。このとき、第3部位Po3は、供給ヘッド112から線材F1が供給されるに伴って、供給ヘッド112から鉛直下方に向かって螺旋状に延伸していく。
【0023】
続いて、コイル形成ツールユニット21が、図10の矢印AR17に示すように、コイル形成ツール211を-X方向側へ移動させてコイル形成ツール211をコイルCo1から離脱させる。そして、コイル支持ユニット23が、支持ツール231を矢印AR18に示すように-X方向へ移動させることにより、再び支持ツール231の先端部でコイルCo1を支持した状態にする。その後、コイル回収ユニット31は、コイルCo1の下端側の一部がコイル保持ヘッド311の内側に配置されるように、コイル保持ヘッド311を矢印AR19に示すように+Z方向側へ移動させる。その後、切断ユニット24は、矢印AR20に示すように切断ツール241をコイルCo1に近づく方向へ移動させて、切断ツール241の先端部に設けられた刃をコイルCo1の上端部に当接させてから押し付けることで、コイルCo1を線材F1から切り離す。そして、切り離されたコイルCo1が、コイル保持ヘッド311の内側に収容される。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態に係る無線タグ製造装置によれば、コイル形成ツール211の案内溝211bにおける線材F1の接触位置と供給ヘッド112との間の距離を第1距離W1に設定した状態で、供給ヘッド112からコイル形成ツール211へ線材F1を供給することによりコイルCo1の-Z方向側の端部に位置する第1部位Po1を形成する。その後、前述の接触位置と供給ヘッド112との間の距離を第2距離W2に設定した状態で、供給ヘッド112からコイル形成ツール211へ線材F1を供給することにより第1部位Po1よりも大径の第2部位Po2を形成する。その後、第2部位Po2の内側へチップCPを供給した後、前述の接触位置と供給ヘッド112との間の距離を第1距離W1に設定した状態で、供給ヘッド112からコイル形成ツール211へ線材F1を供給することにより第2部位Po2より小径でありコイルCo1の+Z方向側の端部に位置する第3部位Po3を形成する。これにより、コイル形成ツール211の案内溝211bにおける線材F1の接触位置との間の距離を変化させるだけで、内側にチップCPが固定されたコイルCo1を作製することができるので、無線タグを効率的に作製できる。従って、無線タグの生産におけるスループットを向上させることができる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の各実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、コイル付きモジュールは、無線タグに限定されるものではなく、その他のコイル付きモジュールであってもよい。
【0026】
以上、本発明の各実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態及び変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、無線タグのようなコイル付きモジュールの製造に好適である。
【符号の説明】
【0028】
11:線材供給ユニット、21:コイル形成ツールユニット、22:チップ搬送ユニット、23:コイル支持ユニット、24:切断ユニット、30:チップ供給ユニット、31:コイル回収ユニット、32:チップ貯留ユニット、111:本体部、112:供給ヘッド、112a,211b:案内溝、112b:傾斜部、211:コイル形成ツール、211a:傾斜面、212,223,232,242:アーム、213:コイル形成ツール駆動部、221:チップ保持ヘッド、222:保持ツール、224:保持ヘッド駆動部、231:支持ツール、233:支持ツール駆動部、241:切断ツール、243:切断ツール駆動部、311:コイル保持ヘッド、312:ヘッド駆動部、321:チップ貯留部、321a:保持溝、322:シャッタ駆動部、323:支持体、324:シャッタ、3121:支持部駆動部、3122:ヘッド支持部、1111:回転駆動部、C1:中心軸、Co1:コイル、F1:線材、Po1:第1部位、Po2:第2部位、Po3:第3部位、Pos1:受け取り位置、Pos2:移載位置、Pos3:支持位置、Pos4:離脱位置、W1:第1距離、W2:第2距離
【要約】
【課題】コイル付きモジュールの生産におけるスループットを向上させることができるコイル付きモジュール製造装置およびコイル付きモジュール製造方法を提供する。
【解決手段】無線タグ製造装置は、コイル形成ツール211を供給ヘッド112に対向して配置した後、供給ヘッド112からコイル形成ツール211へ線材F1を供給することによりコイルCo1の第1部位Po1を形成した後、コイルCo1の第2部位Po2を形成する。その後、無線タグ製造装置は、コイルCo1の第2部位Po2の内側へチップCPを供給した後、供給ヘッド112からコイル形成ツール211へ線材F1を供給することにより第2部位Po2における第1部位Po1側とは反対側で連続し且つ第2部位Po2より小径の第3部位を形成する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10