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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023514791
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2022035900
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-145238(JP,A)
【文献】特開2019-176032(JP,A)
【文献】特開2007-043042(JP,A)
【文献】特開2000-311932(JP,A)
【文献】特開2013-155971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハを載置可能なウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
冷媒流路を有する金属-セラミック複合材料製の冷却プレートと、
前記セラミックプレートと前記冷却プレートとを接合する接合層と、
を備えたウエハ載置台であって、
前記ウエハ載置面から前記冷媒流路の上底及び下底の少なくとも一方までの長さは、前記冷媒流路の全体にわたって一定ではなく変化しているところがあり、
前記冷却プレートは、互いに接合された第1プレート部及び第2プレート部を含む複数のプレート部を金属接合した構造であり、前記第1プレート部は、平面視で前記冷媒流路と同じ形状となるように設けられた貫通溝である第1流路部を有し、前記第2プレート部は、前記第1流路部と対向する位置の少なくとも一部に設けられた有底溝である第2流路部を有する、
ウエハ載置台。
【請求項2】
前記冷媒流路の幅は、前記冷媒流路の全体にわたって一定ではなく変化しているところがある、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項3】
前記冷媒流路は、前記冷媒流路の上底及び下底の少なくとも一方にフィンを有しているところがある、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
前記冷却プレートは、前記第1プレート部のうち前記第2プレート部と反対側の面に接合された第3プレート部を備え、前記第3プレート部は、前記第1流路部と対向する位置の少なくとも一部に設けられた有底溝である第3流路部を有する、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項5】
前記冷却プレートは、前記第1プレート部のうち前記第2プレート部と反対側の面に接合された第3プレート部を備え、前記第3プレート部のうち前記第1流路部と対向する面は平坦である、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエハ載置面を有し電極を内蔵するセラミックプレートと、冷媒流路を有する冷却プレートと、セラミックプレートと冷却プレートとを接合する接合層とを備えたウエハ載置台が知られている。例えば、特許文献1には、こうしたウエハ載置台の冷却プレートとして、線熱膨張係数がセラミックプレートと同程度の金属マトリックス複合材料で作製されたものを用いる点が記載されている。冷却プレートを作製するにあたっては、まず円板状のプレートである上基板、中基板及び下基板を用意する。次に、中基板の一方の面から他方の面まで冷媒流路と同じ形状となるように打ち抜いて、中基板に打ち抜き部を形成する。上基板及び下基板は、両面とも平坦な面である。そして、上基板と中基板との間に金属接合材を挟むと共に、中基板と下基板との間に金属接合材を挟み、これらの基板を熱圧接合する。これにより、打ち抜き部が冷媒流路になった冷却プレートが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5666748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、冷媒流路の上底からウエハ載置面までの距離や冷媒流路の下底からウエハ載置面までの距離は冷媒流路の全体にわたって一定であるため、ウエハの均熱性が十分得られないことがあった。そのため、ウエハの均熱性が十分得られるウエハ載置台の開発が望まれていた。また、そうしたウエハ載置台の製造コストを低く抑えることも望まれていた。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ウエハの均熱性を高めると共に製造コストを低く抑えることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明のウエハ載置台は、
上面にウエハを載置可能なウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと
冷媒流路を有する金属-セラミック複合材料製の冷却プレートと、
前記セラミックプレートと前記冷却プレートとを接合する接合層と、
を備えたウエハ載置台であって、
前記ウエハ載置面から前記冷媒流路の上底及び下底の少なくとも一方までの長さは、前記冷媒流路の全体にわたって一定ではなく変化しているところがあり、
前記冷却プレートは、互いに接合された第1プレート部及び第2プレート部を含む複数のプレート部を金属接合した構造であり、前記第1プレート部は、平面視で前記冷媒流路と同じ形状となるように設けられた貫通溝である第1流路部を有し、前記第2プレート部は、前記第1流路部と対向する位置の少なくとも一部に設けられた有底溝である第2流路部を有する、
ものである。
【0007】
このウエハ載置台では、ウエハ載置面から冷媒流路の上底及び下底の少なくとも一方までの長さは、冷媒流路の全体にわたって一定ではなく変化しているところがある。例えば、ウエハ載置面のうち高温になりやすいところや低温になりやすいところに応じて、ウエハ載置面から冷媒流路の上底及び下底の少なくとも一方までの長さを変化させることにより、ウエハの均熱性を高めることができる。一方、冷却プレートは、互いに接合された第1プレート部及び第2プレート部を含む複数のプレート部を金属接合した構造である。第1プレート部は、平面視で冷媒流路と同じ形状となるように設けられた貫通溝である第1流路部を有する。第2プレート部は、第1流路部と対向する位置の少なくとも一部に設けられた有底溝である第2流路部を有する。第1流路部は、例えばくり抜き加工により低コストで形成することができる。第2流路部は、例えば切削加工や研削加工により形成できるが、深さが比較的浅いため、短時間で形成することができ、低コストで形成することができる。
【0008】
[2]上述したウエハ載置台(前記[1]に記載のウエハ載置台)において、前記冷媒流路の幅は、前記冷媒流路の全体にわたって一定ではなく変化しているところがあってもよい。こうすれば、ウエハ載置面のうち高温になりやすいところや低温になりやすいところに応じて冷媒流路の幅を変化させることにより、ウエハの均熱性を高めることができる。
【0009】
[3]上述したウエハ載置台(前記[1]又は[2]に記載のウエハ載置台)において、前記冷媒流路は、前記冷媒流路の上底及び下底の少なくとも一方にフィンを有しているところがあってもよい。こうすれば、ウエハ載置面のうち高温になりやすいところの冷媒流路にフィンを設けることで効率よく冷却することができる。
【0010】
[4]上述したウエハ載置台(前記[1]~[3]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記冷却プレートは、前記第1プレート部のうち前記第2プレート部と反対側の面に接合された第3プレート部を備えていてもよく、前記第3プレート部は、前記第1流路部と対向する位置の少なくとも一部に設けられた有底溝である第3流路部を有していてもよい。こうすれば、冷媒流路の上底及び下底の一方の位置を変えたり両方の位置を変えたりすることができる。
【0011】
[5]上述したウエハ載置台(前記[1]~[3]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記冷却プレートは、前記第1プレート部のうち前記第2プレート部と反対側の面に接合された第3プレート部を備えていてもよく、前記第3プレート部のうち前記第1流路部と対向する面は平坦であってもよい。こうすれば、冷媒流路の上底及び下底の一方の位置を変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】チャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図。
図2】第1薄型プレート部81を通る水平面で冷却プレート30を切断した断面を上からみたときの断面図。
図3】冷却プレート30の縦断面図。
図4】ウエハ載置台10の製造工程図。
図5】第1~第3薄型プレート部81~83の加工工程図。
図6】冷却プレート130の縦断面図。
図7】冷却プレート230の縦断面図。
図8】冷却プレート330の縦断面図。
図9】冷却プレート430の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図1はチャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図(ウエハ載置台10の中心軸を含む面で切断したときの断面図)、図2は第1薄型プレート部81を通る水平面で冷却プレート30を切断した断面を上からみたときの断面図である。なお、図2には端子穴51、給電端子54及び絶縁管55などを省略した。
【0014】
ウエハ載置台10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものであり、半導体プロセス用のチャンバ94の内部に設けられた設置板96に固定されている。ウエハ載置台10は、セラミックプレート20と、冷却プレート30と、金属接合層40とを備えている。
【0015】
セラミックプレート20は、円形のウエハ載置面22aを有する中央部22の外周に、環状のフォーカスリング載置面24aを有する外周部24を備えている。以下、フォーカスリングは「FR」と略すことがある。ウエハ載置面22aには、ウエハWが載置され、FR載置面24aには、フォーカスリング78が載置される。セラミックプレート20は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成されている。FR載置面24aは、ウエハ載置面22aに対して一段低くなっている。
【0016】
セラミックプレート20の中央部22は、ウエハ載置面22aに近い側に、ウエハ吸着用電極26を内蔵している。ウエハ吸着用電極26は、例えばW、Mo、WC、MoCなどを含有する材料によって形成されている。ウエハ吸着用電極26は、円板状又はメッシュ状の単極型の静電吸着用電極である。セラミックプレート20のうちウエハ吸着用電極26よりも上側の層は誘電体層として機能する。ウエハ吸着用電極26には、ウエハ吸着用直流電源52が給電端子54を介して接続されている。給電端子54は、ウエハ載置台10のうちウエハ吸着用電極26の下面と冷却プレート30の下面との間に設けられた端子穴51に挿通されている。給電端子54は、端子穴51のうち冷却プレート30及び金属接合層40を上下方向に貫通する貫通穴に配置された絶縁管55を通過して、セラミックプレート20の下面からウエハ吸着用電極26に至るように設けられている。ウエハ吸着用直流電源52とウエハ吸着用電極26との間には、ローパスフィルタ(LPF)53が設けられている。
【0017】
冷却プレート30は、冷媒が流通可能な冷媒流路32を有する円盤状のプレートであり、第1~第3薄型プレート部81~83を互いに金属接合したものである。冷媒流路32を流れる冷媒は、液体が好ましく、電気絶縁性であることが好ましい。電気絶縁性の液体としては、例えばフッ素系不活性液体などが挙げられる。第1~第3薄型プレート部81~83は、いずれも、金属とセラミックとの複合材料(以下、金属-セラミック複合材料とも称する)で形成されている。冷却プレート30は、第1薄型プレート部81の下面に第1金属接合層84を介して第2薄型プレート部82が接合され、第1薄型プレート部81の上面に第2金属接合層85を介して第3薄型プレート部83が接合されている。金属-セラミック複合材料としては、金属マトリックス複合材料(メタル・マトリックス・コンポジット(MMC))やセラミックマトリックス複合材料(セラミック・マトリックス・コンポジット(CMC))などが挙げられる。こうした金属-セラミック複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。セラミックプレート20がアルミナプレートの場合、冷却プレート30に用いる金属-セラミック複合材料としては熱膨張係数がアルミナに近いMMC(AlSiCやSiSiCTiなど)が好ましい。冷却プレート30は、RF電源62に給電端子64を介して接続されている。冷却プレート30とRF電源62との間には、ハイパスフィルタ(HPF)63が配置されている。冷却プレート30は、下面側にウエハ載置台10を設置板96にクランプするのに用いられるフランジ部34を有する。
【0018】
冷媒流路32は、図2に示すように、冷媒流路32を水平面で切断した断面を上からみたときに、冷却プレート30のうちフランジ部34を除く領域の全体にわたって入口32aから出口32bまで一筆書きの要領で形成されている。入口32aは冷媒供給路36に接続され、出口32bは冷媒排出路38に接続されている。冷媒は、冷媒供給路36から入口32aを介して冷媒流路32を通過して出口32bを介して冷媒排出路38から排出される。冷媒排出路38から排出された冷媒は、外部の冷媒循環器(図示せず)で温度調整されたあと再び冷媒供給路36に戻される。本実施形態では、冷媒流路32は渦巻き状に形成されている。ウエハ載置面22aから冷媒流路32の上底までの距離d1やウエハ載置面22aから冷媒流路32の下底までの距離d2は、図1に示すように、冷媒流路32の全体にわたって一定ではなく短いところもあれば長いところもある。距離d1,d2は、ウエハ載置台10の使用時にウエハWが高温になりやすいところや低温になりやすいところに応じて設定される。冷媒流路32の幅wは、図1に示すように、冷媒流路32の全体にわたって一定ではなく狭いところもあれば広いところもある。幅wは、ウエハ載置台10の使用時にウエハWが高温になりやすいところや低温になりやすいところに応じて設定される。例えば、ウエハWが高温になりやすいところの直下の冷媒流路32では、冷媒とウエハWとの熱交換を促進させるために、距離d1を短くしてもよいし、圧力損失を大きくしてもよい。圧力損失を大きくするには、例えば、流路断面積が小さくなるように距離d2を短くしたり幅wを狭くしたりしてもよい。なお、図2では、便宜上、冷媒流路32の幅wは冷媒流路32の全体にわたって一定とした。
【0019】
第1薄型プレート部81は、第1流路部86を有する。第1流路部86は、平面視で冷媒流路32と同じ形状の貫通溝(第1薄型プレート部81を上下方向に貫通する溝)である。第2薄型プレート部82は、第2流路部87を有する。第2流路部87は、第1流路部86と対向する位置の少なくとも一部に設けられた有底溝(止まり溝)である。第3薄型プレート部83は、第3流路部88を有する。第3流路部88は、第1流路部86と対向する位置の少なくとも一部に設けられた有底溝である。各金属接合層84,85には、第1流路部86と対向する位置に平面視で第1流路部86と同形状の貫通溝84a,85bが設けられている。そのため、冷媒流路32は、第2流路部87、貫通溝84a、第1流路部86、貫通溝85a及び第3流路部88によって構成されている。各金属接合層84,85は、後述する金属接合層40と同様にして形成することができる。
【0020】
金属接合層40は、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面とを接合する。金属接合層40は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。
【0021】
セラミックプレート20の外周部24の側面、金属接合層40の外周及び冷却プレート30の側面は、絶縁膜42で被覆されている。絶縁膜42としては、例えばアルミナやイットリアなどの溶射膜が挙げられる。
【0022】
こうしたウエハ載置台10は、チャンバ94の内部に設けられた設置板96にクランプ部材70を用いて取り付けられる。クランプ部材70は、断面が略逆L字状の環状部材であり、内周段差面70aを有する。ウエハ載置台10と設置板96とは、クランプ部材70によって一体化されている。ウエハ載置台10の冷却プレート30のフランジ部34に、クランプ部材70の内周段差面70aを載置した状態で、クランプ部材70の上面からボルト72が差し込まれて設置板96の上面に設けられたネジ穴に螺合されている。ボルト72は、クランプ部材70の円周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所(例えば8箇所とか12箇所)に取り付けられる。クランプ部材70やボルト72は、絶縁材料で作製されていてもよいし、導電材料(金属など)で作製されていてもよい。
【0023】
次に、ウエハ載置台10の製造例を図4及び図5を用いて説明する。図4はウエハ載置台10の製造工程図、図5は第1~第3薄型プレート部81~83の加工工程図である。
【0024】
まず、セラミックプレート20を、セラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製する(図4A)。セラミックプレート20は、ウエハ吸着用電極26を内蔵している。次に、セラミックプレート20の下面からウエハ吸着用電極26までの間に端子穴上部151aを形成する(図4B)。そして、端子穴上部151aに給電端子54を挿入して給電端子54とウエハ吸着用電極26とを接合する(図4C)。
【0025】
これと並行して、穴や溝を有しない円板部材である第1~第3薄型プレート部81~83を用意する(図5A)。セラミックプレート20がアルミナの場合、第1~第3薄型プレート部81~83はSiSiCTiかAlSiCであることが好ましい。SiSiCTiやAlSiCは、アルミナの熱膨張係数と概ね同じにすることができるからである。
【0026】
SiSiCTi製の円板部材は、例えば以下のように作製することができる。まず、炭化珪素と金属Siと金属Tiとを混合して粉体混合物を作製する。次に、得られた粉体混合物を一軸加圧成形により円板状の成形体を作製し、その成形体を不活性雰囲気下でホットプレス焼結させることにより、SiSiCTi製の円板部材を得る。
【0027】
次に、第1薄型プレート部81に第1流路部86及び第1端子穴構成部81aを形成する。また、第2薄型プレート部82に第2流路部87、冷媒供給路36、冷媒排出路38及び第2端子穴構成部82aを形成する。また、第3薄型プレート部83に第3流路部88及び第3端子穴構成部83aを形成する(図5B)。第1流路部86は、第1薄型プレート部81を上下方向に貫通する貫通溝であるため、くり抜き加工で形成することができる。くり抜き加工は、例えばワイヤーソーやワイヤー放電を利用して行ってもよいし、切削や研削により行ってもよい。ワイヤーソーやワイヤー放電を利用する場合、まず貫通溝を形成しようとする領域のどこかに貫通孔を設けて、その貫通孔にワイヤーを通してから加工を開始すればよい。第1~第3端子穴構成部81a~83aも、くり抜き加工で形成することができる。一方、第2流路部87及び第3流路部88は、有底溝であるため、切削や研削により形成することができる。有底溝の側面と底面との境界にはRを付けることが好ましい。冷媒供給路36及び冷媒排出路38は、第2薄型プレート部82の下面から第2流路部87に繋がる上下方向の穴であり、切削や研削により形成することができる。
【0028】
図4に戻り、給電端子54を取り付けたセラミックプレート20の下面と第3薄型プレート部83との間に金属接合材90を配置し、第3薄型プレート部83の下面と第1薄型プレート部81の上面との間に第2金属接合材185を配置し、第1薄型プレート部81の下面と第2薄型プレート部82との間に第1金属接合材184を配置し、これらを積層する(図4D)。第1及び第2金属接合材184,185には、予め第1薄型プレート部81の第1流路部86及び第1端子穴構成部81aに対向する位置に貫通穴を開けておく。給電端子54は、第1~第3端子穴構成部81a~83aを通過するようにする。こうして得られた積層体を加熱しながら加圧することにより(TCB)、接合体110を得る(図4E)。接合体110は、冷却プレート30の上面に、金属接合層40を介してセラミックプレート20が接合されたものである。冷却プレート30は、第2薄型プレート部82と第1薄型プレート部81とが第1金属接合層84を介して接合されると共に、第1薄型プレート部81と第3薄型プレート部83とが第2金属接合層85を介して接合されたものである。端子穴51は、端子穴上部151aと第1~第3端子穴構成部81a~83aとが連なった穴である。
【0029】
TCBは、例えば以下のように行われる。すなわち、金属接合材の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材は金属接合層になる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0030】
続いて、セラミックプレート20の外周を切削して段差を形成することにより、中央部22と外周部24とを備えた構造とする。また、冷却プレート30の外周を切削して段差を形成することにおり、フランジ部34を備えた構造とする。また、端子穴51のうちセラミックプレート20の下面から冷却プレート30の下面まで、給電端子54を挿通する絶縁管55を配置する。更に、セラミックプレート20の外周部24の側面、金属接合層40の周囲及び冷却プレート30の側面を、セラミック粉末を用いて溶射することにより絶縁膜42を形成する(図4F)。これにより、ウエハ載置台10を得る。
【0031】
次に、ウエハ載置台10の使用例について図1を用いて説明する。チャンバ94の設置板96には、上述したようにウエハ載置台10がクランプ部材70によって固定されている。チャンバ94の天井面には、プロセスガスを多数のガス噴射孔からチャンバ94の内部へ放出するシャワーヘッド98が配置されている。
【0032】
ウエハ載置台10のFR載置面24aには、フォーカスリング78が載置され、ウエハ載置面22aには、円盤状のウエハWが載置される。フォーカスリング78は、ウエハWと干渉しないように上端部の内周に沿って段差を備えている。この状態で、ウエハ吸着用電極26にウエハ吸着用直流電源52の直流電圧を印加してウエハWをウエハ載置面22aに吸着させる。そして、チャンバ94の内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、シャワーヘッド98からプロセスガスを供給しながら、冷却プレート30にRF電源62からのRF電圧を印加する。すると、ウエハWとシャワーヘッド98との間でプラズマが発生する。そして、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。冷媒流路32には温度を調節された冷媒が循環される。なお、ウエハWがプラズマ処理されるのに伴ってフォーカスリング78も消耗するが、フォーカスリング78はウエハWに比べて厚いため、フォーカスリング78の交換は複数枚のウエハWを処理したあとに行われる。
【0033】
ハイパワープラズマでウエハWを処理する場合には、ウエハWを効率的に冷却する必要がある。ウエハ載置台10では、セラミックプレート20と冷却プレート30との接合層として、熱伝導率の低い樹脂層ではなく、熱伝導率の高い金属接合層40を用いている。そのため、ウエハWから熱を引く能力(抜熱能力)が高い。また、セラミックプレート20と冷却プレート30との熱膨張差は小さいため、金属接合層40の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。更に、冷媒流路32の流路断面積のサイズは、ウエハ載置台10の使用時にウエハWが高温になりやすいところや低温になりやすいところに応じて設定される。冷媒流路32の流路断面積のサイズを調整するにあたっては、ウエハ載置面22aから冷媒流路32の上底まで距離d1やウエハ載置面22aから冷媒流路32の下底まで距離d2を変化させてもよいし、冷媒流路32の幅wを変化させてもよい。また、ウエハWが高温になりやすいところでは、距離d1を短くしてもよい。冷媒流路32を流れる冷媒の流速は、15~50L/minとするのが好ましく、20~40L/minとするのがより好ましい。
【0034】
上述した実施形態において、第1薄型プレート部81が本発明の第1プレート部に相当し、第2薄型プレート部82が本発明の第2プレート部に相当し、第3薄型プレート部83が本発明の第3プレート部に相当する。
【0035】
以上説明した本実施形態のウエハ載置台10によれば、ウエハ載置面22aに載置されたウエハWのうち高温になりやすいところや低温になりやすいところに応じて、ウエハ載置面22aから冷媒流路32の上底及び下底の少なくとも一方までの長さを変化させている。そのため、ウエハWの均熱性を高めることができる。
【0036】
また、冷却プレート30は、互いに接合された第1薄型プレート部81及び第2薄型プレート部82を含む複数の薄型プレート部を金属接合した構造である。第1薄型プレート部81は、平面視で冷媒流路32と同じ形状となるように設けられた貫通溝である第1流路部86を有する。第2薄型プレート部82は、第1流路部86と対向する位置の少なくとも一部に設けられた有底溝である第2流路部87を有する。第1薄型プレート部81に設ける第1流路部86は、例えばくり抜き加工により低コストで形成することができる。第2薄型プレート部82に設ける第2流路部87は、例えば切削加工や研削加工により形成できるが、深さが比較的浅いため、短時間で形成することができ、低コストで形成することができる。
【0037】
更に、冷媒流路32の幅wは、冷媒流路32の全体にわたって一定ではなく変化しているところがある。ウエハ載置面22aのうち高温になりやすいところと低温になりやすいところに応じて冷媒流路32の幅wを変化させることにより、ウエハWの均熱性を高めることができる。
【0038】
更にまた、冷却プレート30は、第1薄型プレート部81のうち第2薄型プレート部82と反対側の面に接合された第3薄型プレート部83を備えており、第3薄型プレート部83は、第1流路部86と対向する位置の少なくとも一部に設けられた有底溝である第3流路部88を有している。そのため、冷媒流路32の上底及び下底の一方の位置を変えたり両方の位置を変えたりすることができる。
【0039】
冷媒流路32の側面と上底との境界や側面と下底との境界にはRが付けられていることが好ましい。こうすれば、これらの境界を起点とするクラックが発生しにくい。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0041】
上述した実施形態において、冷却プレート30に代えて、図6に示す冷却プレート130を採用してもよい。図6では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。冷却プレート130は、冷媒流路32の上底に、1又は複数のフィン33を有している。ウエハ載置面22aのうち高温になりやすいところの冷媒流路32にフィン33を設けることで効率よくウエハWを冷却することができる。フィン33は、ウエハ載置面22aのうち高温になりやすいところほど多くなるように(あるいは長くなるように)設けてもよい。フィン33は、比較的浅い有底溝である第3流路部88の底面に設けられているため、容易に加工することができる。フィン33は、冷媒流路32の上底に設ける代わりに冷媒流路32の下底(有底溝である第2流路部87の底面)に設けてもよいし、上底と下底の両方に設けてもよい。
【0042】
上述した実施形態において、冷却プレート30に代えて、図7に示す冷却プレート230を採用してもよい。図7では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。冷却プレート230は、第1及び第2薄型プレート部81,82を金属接合層84で接合した2層構造である。冷却プレート230の第1薄型プレート部81の上面とセラミックプレート20の下面とが金属接合層40を介して接合されている。この場合、冷媒流路32の上部開口は金属接合層40(セラミックプレート20)によって封鎖される。
【0043】
上述した実施形態において、冷却プレート30に代えて、図8に示す冷却プレート330を採用してもよい。図8では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。冷却プレート330は、第1及び第2薄型プレート部81,82を金属接合層84で接合し、第1及び第3薄型プレート部81,83を金属接合層85で接合した3層構造である。第1薄型プレート部81は第1流路部86(貫通溝)を有し、第2薄型プレート部82は第2流路部87(有底溝)を有する。冷却プレート330の第3薄型プレート部83の上面とセラミックプレート20の下面とが金属接合層40を介して接合されている。第3薄型プレート部83は、第3流路部88(有底溝)を有していない。つまり、第3薄型プレート部83のうち第1薄型プレート部81に対向する面は平坦である。この場合、冷媒流路32の上底の位置はすべて同じ高さになる。
【0044】
上述した実施形態において、冷却プレート30に代えて、図9に示す冷却プレート430を採用してもよい。図9では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。冷却プレート430は、第1及び第2薄型プレート部81,82を金属接合層84で接合し、第1及び第3薄型プレート部81,83を金属接合層85で接合した3層構造である。第1薄型プレート部81は第1流路部86(貫通溝)を有し、第3薄型プレート部83は第3流路部88(有底溝)を有する。冷却プレート430の第3薄型プレート部83の上面とセラミックプレート20の下面とが金属接合層40を介して接合されている。第2薄型プレート部82は、第2流路部87(有底溝)を有していない。つまり、第2薄型プレート部82のうち第1薄型プレート部81に対向する面は平坦である。この場合、冷媒流路32の下底の位置はすべて同じ高さになる。この冷却プレート430に限って、第1薄型プレート部81が本発明の第1プレート部に相当し、第3薄型プレート部83が本発明の第2プレート部に相当し、第2薄型プレート部82が本発明の第3プレート部に相当する。
【0045】
上述した実施形態では、冷却プレート30を第1~第3薄型プレート部81~83を備えた3層構造としたが、4層以上の構造としてもよい。
【0046】
上述した実施形態において、ウエハ載置面22aに外縁に沿ってシールバンドを形成し、ウエハ載置面22aの全面に複数の小突起を形成し、シールバンドの頂面及び複数の小突起の頂面でウエハWを支持するようにしてもよい。
【0047】
上述した実施形態において、ウエハ載置台10は、ウエハ載置台10を上下方向に貫通する穴を複数有していてもよい。こうした穴としては、ウエハ載置面22aに開口する複数のガス穴やウエハ載置面22aに対してウエハWを上下させるリフトピンを挿通させるためのリフトピン穴がある。ガス穴は、ウエハ載置面22aを平面視したときに適当な位置に複数個設けられている。ガス穴には、Heガスのような熱伝導ガスが供給される。通常、ガス穴は、前出のシールバンドや小突起が設けられたウエハ載置面22aのうちシールバンドや小突起が設けられていない箇所に開口するように設けられる。ガス穴に熱伝導ガスが供給されると、ウエハ載置面22aに載置されたウエハWの裏面側の空間に熱伝導ガスが充填される。リフトピン穴は、ウエハ載置面22aを平面視したときにウエハ載置面22aの同心円に沿って等間隔に複数個設けられる。
【0048】
上述した実施形態では、セラミックプレート20と冷却プレート30とを金属接合層40を介して接合したが、特にこれに限定されない。例えば、金属接合層40の代わりに、樹脂接合層を用いてもよい。
【0049】
上述した実施形態では、セラミックプレート20の中央部22にウエハ吸着用電極26を内蔵したが、これに代えて又は加えて、プラズマ発生用のRF電極を内蔵してもよいし、ヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよい。また、セラミックプレート20の外周部24にフォーカスリング(FR)吸着用電極を内蔵してもよいし、RF電極やヒータ電極を内蔵してもよい。
【0050】
上述した実施形態では、セラミックプレート20はセラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製したが、そのときの成形体は、テープ成形体を複数枚積層して作製してもよいし、モールドキャスト法によって作製してもよいし、セラミック粉末を押し固めることによって作製してもよい。
【0051】
上述した実施形態では、第1~第3薄型プレート部81~83として、金属-セラミック複合材料で形成されたものを例示したが、易加工材料で形成されたものを用いてもよい。加工性の指標としては、例えば、JIS B 0170(2020)に示された被削性指数を用いることができる。易加工性材料としては、被削性指数が40以上の材料が好ましく、100以上の材料がより好ましく、140以上の材料がさらに好ましい。易加工性材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼(SUS材)などが挙げられる。
【0052】
上述した実施形態では、冷媒流路32を渦巻き状に形成したが、一筆書きの形状であれば特にこれに限定されない。例えば、冷媒流路32をジグザグ状に形成してもよい。
【0053】
上述した実施形態において、セラミックプレート20はウエハ載置面22aを有するがFR載置面を有さないものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えばウエハを処理する装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 ウエハ載置台、20 セラミックプレート、22 中央部、22a ウエハ載置面、24 外周部、24a フォーカスリング載置面、26 ウエハ吸着用電極、30 冷却プレート、32 冷媒流路、32a 入口、32b 出口、33 フィン、34 フランジ部、36 冷媒供給路、38 冷媒排出路、40 金属接合層、42 絶縁膜、51 端子穴、52 ウエハ吸着用直流電源、54 給電端子、55 絶縁管、62 RF電源、64 給電端子、70 クランプ部材、70a 内周段差面、72 ボルト、78 フォーカスリング、81 第1薄型プレート部、81a 第1端子穴構成部、82 第2薄型プレート部、82a 第2端子穴構成部、83 第3薄型プレート部、83a 第3端子穴構成部、84 第1金属接合層、84a 貫通溝、85 第2金属接合層、85a 貫通溝、86 第1流路部、87 第2流路部、88 第3流路部、90 金属接合材、94 チャンバ、96 設置板、98 シャワーヘッド、110 接合体、130,230,330,430 冷却プレート、151a 端子穴上部、184 第1金属接合材、185 第2金属接合材。
【要約】
ウエハ載置台10は、ウエハ載置面22aを有し、電極を内蔵するセラミックプレート20と、冷媒流路32を有する金属-セラミック複合材料製の冷却プレート30と、両プレート20,30を接合する接合層40と、を備える。ウエハ載置面22aから冷媒流路32の上底及び下底の少なくとも一方までの長さは、冷媒流路32の全体にわたって一定ではなく変化しているところがある。冷却プレート30は、互いに接合された第1薄型プレート部81及び第2薄型プレート部82を含む複数のプレート部を金属接合した構造であり、第1薄型プレート部81は、平面視で冷媒流路32と同じ形状となるように設けられた貫通溝である第1流路部を有する。第2薄型プレート部82は、第1流路部と対向する位置の少なくとも一部に設けられた有底溝である第2流路部を有する。
図1
図2
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図6
図7
図8
図9