IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許-エンジンの回転検出装置およびエンジン 図1
  • 特許-エンジンの回転検出装置およびエンジン 図2
  • 特許-エンジンの回転検出装置およびエンジン 図3
  • 特許-エンジンの回転検出装置およびエンジン 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】エンジンの回転検出装置およびエンジン
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20231012BHJP
   G01D 5/249 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
G01D5/245 110W
G01D5/249 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020213933
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099876
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 怜央
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 卓
(72)【発明者】
【氏名】坂口 久美子
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-164542(JP,A)
【文献】米国特許第5218199(US,A)
【文献】特開平10-220263(JP,A)
【文献】特開平6-213916(JP,A)
【文献】特開平8-170576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
G01P 3/00-3/80
F02P 1/00-23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの回転軸の回転を検出することで、前記エンジンの気筒の判別を行うための回転検出装置であって、
複数の検出用の検出端子部を有し、前記回転軸と一体となって回転する回転検出部材と、
前記検出端子部に対向する位置に設けられ、前記回転軸の回転に伴って通過する前記検出端子部を検出することで前記エンジンの前記気筒を判別するための検出信号を発生する回転検出センサと、
を備え、
前記回転検出部材と前記回転軸との間の領域には、潤滑用のオイルを溜めるオイル溜め部が設けられていることを特徴とするエンジンの回転検出装置。
【請求項2】
前記回転検出部材は、前記回転軸に取り付けられる円盤部を有し、
前記検出端子部は、前記円盤部から突出するとともに前記回転検出センサに対向するように前記円盤部から屈曲し、前記回転検出センサに対面する検出用の平坦面部を有することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの回転検出装置。
【請求項3】
前記回転軸は、大径部と、前記大径部の径よりも小さい径の小径部と、前記大径部と前記小径部との境界に形成された段差部と、を有し、
前記円盤部は、前記大径部に密着して取り付けられたギヤの側端部に密着した状態で前記側端部に締結されており、
前記オイル溜め部は、前記円盤部の面と、前記側端部と、前記段差部と、前記小径部の外周面と、の間に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエンジンの回転検出装置。
【請求項4】
前記回転検出部材は、パルサホイルであり、
前記オイルは、前記回転軸を伝って前記オイル溜め部に供給されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のエンジンの回転検出装置。
【請求項5】
前記回転軸は、コモンレール式のディーゼルエンジンの吸排気シャフトであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のエンジンの回転検出装置。
【請求項6】
エンジンの回転軸の回転を検出することで、前記エンジンの気筒の判別を行うためのエンジンの回転検出装置を備えるエンジンであって、
前記回転検出装置は、
複数の検出用の検出端子部を有し、前記回転軸と一体となって回転する回転検出部材と、
前記検出端子部に対向する位置に設けられ、前記回転軸の回転に伴って通過する前記検出端子部を検出することで前記エンジンの前記気筒を判別するための検出信号を発生する回転検出センサと、
を有し、
前記回転検出部材と前記回転軸との間の領域には、潤滑用のオイルを溜めるオイル溜め部が設けられていることを特徴とするエンジン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等のエンジンの回転検出装置およびエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン、特にコモンレール式のディーゼルエンジンでは、気筒を判別するためのパルサホイルが使用されている。パルサホイルは、カムシャフトに取り付けられており、カムシャフトと一体となって回転し、円周方向に所定の間隔で設けられた複数の突起状の検出用の検出端子部を有している。回転検出センサは、パルサホイルの検出端子部の通過を検出することで検出信号を発生して、検出信号をエンジンECU(エンジン制御ユニット)に送る。これにより、エンジンECUは各気筒の判別を行う。回転検出センサがパルサホイルの検出端子部を確実に検出できるようにするために、回転検出センサとパルサホイルの検出端子部との間の距離、パルサホイルの検出端子部の回転方向の幅、パルサホイルの検出端子部の延長部分の長さを確保する必要がある。特許文献1には、パルサホイル(パルサプレート)を備えるディーゼルエンジンが開示されている。
【0003】
通常用いられているパルサホイルは、板金で作られている。そのため、検出端子部の板厚が比較的薄く、検出端子部の剛性が比較的低いことがある。この場合において、検出端子部が変形すると、気筒判別のためのセンシング性能が低下するか、気筒判別ができなくなる可能性がある。そこで、パルサホイルの板厚を厚くすることで検出端子部の変形を抑制することが一策として考えられる。しかし、パルサホイルの板厚を厚くすると、検出端子部を曲げ加工で形成する際に、曲げ部分の半径(曲げR)が大きくなる。そうすると、検出端子部の平坦面部を確保することが難しくなる。このため、パルサホイルの検出端子部に対する回転検出センサのセンシング性能を向上させるという点において改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-181557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、検出端子部に対する回転検出センサのセンシング性能を向上させることができるエンジンの回転検出装置およびエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、エンジンの回転軸の回転を検出することで、前記エンジンの気筒の判別を行うための回転検出装置であって、複数の検出用の検出端子部を有し、前記回転軸と一体となって回転する回転検出部材と、前記検出端子部に対向する位置に設けられ、前記回転軸の回転に伴って通過する前記検出端子部を検出することで前記エンジンの前記気筒を判別するための検出信号を発生する回転検出センサと、を備え、前記回転検出部材と前記回転軸との間の領域には、潤滑用のオイルを溜めるオイル溜め部が設けられていることを特徴とする本発明に係るエンジンの回転検出装置により解決される。
【0007】
本発明に係るエンジンの回転検出装置によれば、回転検出部材と回転軸との間の領域には、潤滑用のオイルを溜めるオイル溜め部が設けられている。このため、回転検出部材の回転に伴って回転検出部材に外力が働いても、オイル溜め部は、オイルダンパ効果を発揮して回転検出部材に働く外力を吸収することができ、回転検出部材が変形しながら回転するのを防ぐことができる。これにより、検出用の検出端子部の板厚を厚くしなくとも検出用の検出端子部の剛性を確保することができ、気筒を判別するために回転検出センサが検出用の検出端子部を確実に検出できる。そのため、検出端子部に対する回転検出センサのセンシング性能を向上させることができる。
【0008】
本発明に係るエンジンの回転検出装置において、好ましくは、前記回転検出部材は、前記回転軸に取り付けられる円盤部を有し、前記検出端子部は、前記円盤部から突出するとともに前記回転検出センサに対向するように前記円盤部から屈曲し、前記回転検出センサに対面する検出用の平坦面部を有することを特徴とする。
本発明に係るエンジンの回転検出装置によれば、回転検出部材が変形しながら回転するのを防ぐことができるので、検出用の検出端子部の平坦面部は、回転検出センサに対面することができる。そのため、気筒を判別するために回転検出センサが検出用の検出端子部を確実に検出できる。これにより、検出端子部に対する回転検出センサのセンシング性能を向上させることができる。
【0009】
本発明に係るエンジンの回転検出装置において、好ましくは、前記回転軸は、大径部と、前記大径部の径よりも小さい径の小径部と、前記大径部と前記小径部との境界に形成された段差部と、を有し、前記円盤部は、前記大径部に密着して取り付けられたギヤの側端部に密着した状態で前記側端部に締結されており、前記オイル溜め部は、前記円盤部の面と、前記側端部と、前記段差部と、前記小径部の外周面と、の間に形成されていることを特徴とする。
本発明に係るエンジンの回転検出装置によれば、オイル溜め部は、回転検出部材の円盤部の面と、ギヤの側端部と、段差部と、小径部の外周面と、の間に形成されている。このため、オイルはオイル溜め部に封じ込められる。そのため、オイル溜め部は、オイルダンパ効果を発揮して回転検出部材に働く外力を吸収することができ、回転検出部材が変形しながら回転するのを防ぐことができる。
【0010】
本発明に係るエンジンの回転検出装置において、好ましくは、前記回転検出部材は、パルサホイルであり、前記オイルは、前記回転軸を伝って前記オイル溜め部に供給されることを特徴とする。
本発明に係るエンジンの回転検出装置によれば、潤滑用のオイルが回転軸を伝ってオイル溜め部に供給される。これにより、オイル溜め部は、常時オイルを溜めておくことができる。
【0011】
本発明に係るエンジンの回転検出装置において、好ましくは、前記回転軸は、コモンレール式のディーゼルエンジンの吸排気シャフトであることを特徴とする。
本発明に係るエンジンの回転検出装置によれば、コモンレール式のディーゼルエンジンの吸排気シャフトを利用することで、回転検出部材の回転に伴って回転検出部材に外力が働いても、オイル溜め部は、オイルダンパ効果を発揮して回転検出部材に働く外力を吸収することができ、回転検出部材が変形しながら回転するのを防ぐことができる。
【0012】
また、前記課題は、エンジンの回転軸の回転を検出することで、前記エンジンの気筒の判別を行うためのエンジンの回転検出装置を備えるエンジンであって、前記回転検出装置は、複数の検出用の検出端子部を有し、前記回転軸と一体となって回転する回転検出部材と、前記検出端子部に対向する位置に設けられ、前記回転軸の回転に伴って通過する前記検出端子部を検出することで前記エンジンの前記気筒を判別するための検出信号を発生する回転検出センサと、を有し、前記回転検出部材と前記回転軸との間の領域には、潤滑用のオイルを溜めるオイル溜め部が設けられていることを特徴とする本発明に係るエンジンにより解決される。
【0013】
本発明に係るエンジンによれば、回転検出部材と回転軸との間の領域には、潤滑用のオイルを溜めるオイル溜め部が設けられている。このため、回転検出部材の回転に伴って回転検出部材に外力が働いても、オイル溜め部は、オイルダンパ効果を発揮して回転検出部材への外力を吸収することができ、回転検出部材が変形しながら回転するのを防ぐことができる。これにより、検出用の検出端子部の板厚を厚くしなくとも検出用の検出端子部の剛性を確保することができ、気筒を判別するために回転検出センサが検出用の検出端子部を確実に検出できる。そのため、検出端子部に対する回転検出センサのセンシング性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検出端子部に対する回転検出センサのセンシング性能を向上させることができるエンジンの回転検出装置およびエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの回転検出装置を備えるエンジンを示す図である。
図2図1に示すエンジンの回転検出装置を示す正面図である。
図3】回転検出部材の形状例を示す斜視図である。
図4図1に示す領域Aを拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0017】
(エンジン100の概要)
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンの回転検出装置1を備えるエンジン100を示している。図1に示すエンジン100は、例えばコモンレール式のディーゼルエンジンであり、エンジン100は、例えば産業用ディーゼルエンジンである。エンジン100は、例えばターボチャージ付きの過給式の高出力な4気筒エンジンである。エンジン100は、例えば建設機械、農業機械、芝刈り機のような各用途の機器に搭載される。
【0018】
図1に示すエンジン100は、図面の簡単化のために、断面を示すハッチングの図示を省略している。エンジン100は、カムシャフト101を有し、カムシャフト101は回転中心軸CLを中心にして連続回転可能に保持されている。カムシャフト101は回転軸の例である。図1の例では、カムシャフト101は、コモンレール式のディーゼルエンジンの吸排気シャフトであり、4気筒の各気筒に対応した複数の吸排気弁動作用のカムを有しており、カムシャフト101が回転することにより、各カムは各気筒の吸排気弁の操作を行う。
【0019】
カムシャフト101は、大径部103と、小径部104と、を有している。カムシャフト101の大径部103の外周面には、カムギヤ102が密着して固定されている。小径部104は、大径部103の径よりも小さい径を有し、大径部103の先端に形成されている。段差部105は、大径部103と小径部104との境界部分に形成されている。段差部105は、回転中心軸CLに対して垂直になっている面であり、全周に渡って形成されている。カムシャフト101とカムギヤ102は、エンジン100のギヤケース106により覆われている。
【0020】
(エンジンの回転検出装置1)
図2は、図1に示すエンジンの回転検出装置1を示す正面図である。図1に示すエンジン100は、図1図2に示すエンジンの回転検出装置(以下、回転検出装置という)1を備えている。回転検出装置1は、回転検出部材2と、回転検出センサ10と、を有している。回転検出装置1の回転検出センサ10は、カムシャフト101の回転に伴って回転する回転検出部材2の回転を検出することで、図1に示すエンジン100の気筒判別を行うための検出信号列SSを発生する。
【0021】
<回転検出部材2>
図3は、図2に示す回転検出部材2の形状例を示す斜視図である。図2図3に示す回転検出部材2は、パルサホイルあるいはパルサプレートとも呼ばれている。回転検出部材2は、磁性材料、例えば鉄板等の金属製の板材を打ち抜き加工することで形成されている。
回転検出部材2は、円盤部3と、複数の歯状もしくは突起状の検出端子部4,5,6,7と、を有する。図3に示すように、円盤部3は、中心孔8を有している。図1に示すように、カムシャフト101の小径部104が、円盤部3の中心孔8に通っていて、小径部104の外周面と、円盤部3の中心孔8の内周面とは、オイル漏れが生じないように密着されている。
【0022】
図1に示すように、カムギヤ102は、カムシャフト101の大径部103の外周面に例えば圧入により固定されている。図2図3に示すように、円盤部3は、4つの締結用の孔9を有している。図1に示すように、4本の締結用のボルト9Bは、各締結用の孔9に通して、カムギヤ102のメネジ102Mにねじ込まれている。これにより、回転検出部材2は、4本の締結用のボルト9Bを用いて、カムギヤ102の側端部102Bに対して密着して突き当てられた状態で、カムギヤ102の側端部102Bに締結されている。回転検出部材2は、カムギヤ102とカムシャフト101に対して固定されていて、回転検出部材2とカムギヤ102とカムシャフト101は、一体の組立回転体として回転する。
【0023】
図3に示すように、回転検出部材2の円盤部3の周縁部3Dには、例えばほぼ90度ごとに検出用の検出端子部4,5,6,7が、突出して形成されている。検出端子部4,5,6,7は、延長部分4A、5A、6A、7Aと、検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bと、をそれぞれ有している。延長部分4A、5A、6A、7Aは、円盤部3から半径方向に突出して形成されている。検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bは、延長部分4A、5A、6A、7Aから、それぞれ90度の角度で屈曲しており、検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bは、回転中心軸CLに平行になっている。回転検出部材2は、図1に示すカムシャフト101とカムギヤ102の回転と一体となって、図3に示す回転方向RTに連続回転する。
【0024】
図4は、図1に示す領域Aを拡大して示している。
図4図1に示すように、回転検出部材2の円盤部3の外面3Nは、カムギヤ102の側端部102Bに突き当てられており、回転検出部材2の円盤部3はカムギヤ102に締結されている。従って、回転検出部材2は、カムギヤ102を介してカムシャフト101に対して固定されている。しかも、回転検出部材2の中心孔8の内周面は、カムシャフト101の小径部104の外周面104Hに密着されている。
【0025】
図4図1に示すように、回転検出部材2の円盤部3の外面3Nと、段差部105と、カムギヤ102の側端部102Bの内周面102Fと、小径部104の外周面104Hは、潤滑用のオイルを溜めるためのオイル溜め部150を形成している。すなわち、回転検出部材2とカムシャフト101との間の領域には、潤滑用のオイルを溜めるオイル溜め部150が、好ましくは全周囲に渡って設けられている。オイル溜め部150は、潤滑用のオイルを常時溜めておくことができる。オイルは、例えばカムシャフト101に形成されている潤滑用のオイルの案内経路(ジャーナル溝)から、オイル溜め部150内に供給されるようになっている。オイルは、オイル溜め部150内に封じ込められている。
【0026】
<回転検出センサ10>
次に、図1図2に示す回転検出センサ10を説明する。
回転検出センサ10は、検出用の検出端子部4,5,6,7に対応するように近接して配置されている。すなわち、回転検出センサ10は、検出用の検出端子部4,5,6,7に対向する位置に設けられている。回転検出センサ10は、カムシャフト101の回転に伴って通過する検出端子部4,5,6,7の検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bを検出することで、図3に例示するような気筒判別用の検出信号列SSを発生する。
【0027】
図1に示すエンジンECU(エンジンコントロールユニット)のような制御部200は、回転検出センサ10から、例えば図3に例示するような検出信号列SSの検出信号(検出パルス)P1、P2、P3、P4を受けることで、検出信号P1、P2、P3、P4に基づいて各気筒を判別する。回転検出センサ10が、検出端子部4,5,6,7の検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bの通過を検出することで、回転検出センサ10は、制御部200に検出信号P1.P2.P3.P4を供給する。
【0028】
検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bは、ほぼ90度回転する毎に、回転検出センサ10の検出面11に対向した位置にきて、検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bは、検出面11に平行になるように近接される。図4図1に示すように、検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bと検出面11とは、予め定めた隙間DTを有している。
【0029】
回転検出センサ10は、磁気センサであり、磁性体である検出端子部4,5,6,7の検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bが検出面11を通過することにより生じる磁束変化を検出することで、検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bの通過を検出する。回転検出センサ10は、図1に示すように、ギヤケース106に設けられた取付部107に対して挿入して固定されている。回転検出センサ10は、回転検出センサ10の軸方向QLに沿って位置がずれないように、取付部107に対して確実に固定されている。これにより、検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bと検出面11とは、予め定めた隙間DTを維持することができる。
【0030】
上述したように、回転検出部材2とカムシャフト101との間の領域には、潤滑用のオイルを溜めるオイル溜め部150が設けられている。これにより、オイル溜め部150は、回転検出部材2の高速回転に伴って回転検出部材2に外力が働いても、オイルダンパ効果を発揮して回転検出部材2の外力を吸収することができる。例えば、オイル溜め部150のオイルダンパ効果により、薄い板金で作られている回転検出部材2が、カムギヤ102とカムシャフト101とともに高速回転する際に、回転検出部材2がおわん状あるいはすり鉢状に変形しながら回転する現象を防ぐことができる。従って、オイル溜め部150は、回転検出部材2の防振効果を発揮することができる。
【0031】
また、回転検出部材2は、オイルダンパ効果を有するオイル溜め部150を備えているので、回転検出部材2は、カムシャフト101の段差部105には直接当たらないようにして、カムギヤ102の側端部102Bに突き当てられた状態で、カムギヤ102の側端部102Bに対してボルト9Bを用いて締結されている。これにより、回転検出部材2がカムギヤ102とカムシャフト101とともに高速回転する際に、オイル溜め部150の存在により、回転検出部材2が段差部105に直接当たらないようにして回転検出部材2の変形を防いでいる。また、回転検出部材2が変形しないので回転検出部材2がカムシャフト101の大径部103側に乗り上げることがなく、乗り上げる現象を防いでいる。
【0032】
回転検出部材2が高速回転するのに伴って回転検出部材2に外力が働いた時に回転検出部材2の変形を抑制すことができる。回転検出センサ10が検出端子部4,5,6,7の検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bの通過による磁束変化により検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bをセンシングする際に、回転検出部材2が高速回転する際に生じる負荷の変化といった外乱の影響によって、回転検出部材2の形状が変化することを阻止でき、回転検出部材2と回転検出センサ10を用いた気筒判別のセンシングのロバスト性(様々な外部の影響によってセンシング性能が影響されにくい性質)を向上できる。
【0033】
上述したように、オイル溜め部150は、回転検出部材2に外力が働いても、オイルダンパ効果を発揮して外力を吸収することができるので、回転検出部材2は、薄い板金で作られていても、検出端子部4,5,6,7の検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bは回転検出センサ10の検出面11に精度よく対面する。回転検出装置1の気筒判別のためのセンシング性能が低下することがない。従って、本発明の実施形態では、回転検出部材2の板厚を大きくする必要が無く、検出用の検出端子部4,5,6,7の検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bを折り曲げて形成する際に、曲げ部分の半径(曲げR)を小さくでき、曲げ部分の半径を小さくできる分だけ検出用の検出端子部4,5,6,7の平坦面部4B、5B、6B、7Bの面積を大きく確保することができる。
【0034】
このため、回転検出センサ10が検出用の検出端子部4,5,6,7の検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bを精度よく検出することができる。これにより、図1に示す制御部200は、回転検出センサ10から、例えば図3に例示するような検出信号列SSの検出信号P1、P2、P3、P4を受けることで、確実に気筒の判別を行える。図3に示す検出信号P1、P2、P3、P4は相互に異なるパルス波形として出力される。
【0035】
コモンレール式ディーゼルエンジンの燃料噴射装置では、クランク軸が燃料サプライポンプを駆動すると、燃料は、燃料サプライポンプからコモンレールに供給されて蓄圧され、蓄圧された燃料は燃料噴射管を経て燃料インジェクタから燃焼室に供給される。燃料噴射装置は、別のセンサで得られるエンジン回転数と、回転検出装置1により気筒判別をして、各気筒の燃料インジェクタから所定タイミングで所定量の燃料を噴射することができる。
【0036】
回転検出部材2の板厚を増加させるような形状の変更は不要であり、回転検出部材2そのものの形状は変更しないで良いことから、形状変更に伴うコストアップや、センシング性能の悪化を抑制できる。
なお、オイルが、例えばカムシャフト101に形成されている潤滑用のオイルの案内経路(ジャーナル溝)からオイル溜め部150に供給されるオイル供給方式以外に、例えばギヤケース106内のオイルが、オイル溜め部150に供給されるオイル供給方式を採用しても良い。あるいは、これらの両方のオイル供給方式を同時に採用しても良い。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
例えば、図示例では、エンジン100として産業用ディーゼルエンジン等のディーゼルエンジンを例に挙げているが、これに限らず、本発明のエンジンの構造は、ガソリンエンジンや、ハイブリッド型のエンジンにも適用でき、大型から小型のエンジンに適用できる。エンジン100は、例えばターボチャージ付きの過給式の高出力な4気筒エンジンであるが1気筒、2気筒、3気筒あるいは5気筒以上の多気筒エンジンであっても良い。
【符号の説明】
【0038】
1:回転検出装置、 2:回転検出部材、 3:円盤部、 3D:周縁部、 3N:外面、 4:検出端子部、 4A:延長部分、 4B:平坦面部、 5:検出端子部、 5A:延長部分、 5B:平坦面部、 6:検出端子部、 6A:延長部分、 6B:平坦面部、 7:検出端子部、 7A:延長部分、 7B:平坦面部、 8:中心孔、 9:孔、 9B:ボルト、 10:回転検出センサ、 11:検出面、 100:エンジン、 101:カムシャフト、 102:カムギヤ、 102B:側端部、 102F:内周面、 102M:メネジ、 103:大径部、 104:小径部、 104H:外周面、 105:段差部、 106:ギヤケース、 107:取付部、 150:オイル溜め部、 200:制御部、 A:領域、 CL:回転中心軸、 DT:隙間、 P1、P2、P3、P4:検出信号、 QL:軸方向、 R:曲げ、 RT:回転方向、
SS:検出信号列、

図1
図2
図3
図4