(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】波長可変レーザー装置
(51)【国際特許分類】
H01S 3/13 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
H01S3/13
(21)【出願番号】P 2019159646
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】519318764
【氏名又は名称】セブンシックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 達俊
(72)【発明者】
【氏名】西浦 匡則
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-110103(JP,A)
【文献】特開平10-107355(JP,A)
【文献】米国特許第05504771(US,A)
【文献】国際公開第2018/206980(WO,A1)
【文献】特表2013-504216(JP,A)
【文献】特開2002-118315(JP,A)
【文献】特開2012-080013(JP,A)
【文献】特開2010-225688(JP,A)
【文献】特開2017-108017(JP,A)
【文献】特開2009-033078(JP,A)
【文献】米国特許第06567432(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第101132109(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102017129637(DE,A1)
【文献】特開平05-063258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
H01S 5/00-5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成するレーザー光の波長が可変である波長可変レーザー装置であって、
通過する前記レーザー光を増幅する増幅部と、
通過する前記レーザー光のうち、予め設定された通過帯域の波長成分を通過させるフィルタ部と
を備え、
前記フィルタ部は、前記レーザー光を発振させるループ中または往復経路中に配置され、
前記レーザー光の波長を目標波長に変更する場合に、前記フィルタ部は、前記通過帯域の設定を、現在の前記通過帯域である現通過帯域から、前記レーザー光の前記目標波長に対応する目標通過帯域まで、
前記レーザー光の発振を維持しつつ少なくとも2回のステップに分けて変化させ
、
それぞれの前記ステップにおいて前記フィルタ部に設定される前記通過帯域は、一つ前の前記ステップにおいて前記フィルタ部に設定される前記通過帯域と、一部の帯域が重複する
、
波長可変レーザー装置。
【請求項2】
生成するレーザー光の波長が可変である波長可変レーザー装置であって、
通過する前記レーザー光を増幅する増幅部と、
通過する前記レーザー光のうち、予め設定された通過帯域の波長成分を通過させるフィルタ部と
を備え、
前記フィルタ部は、前記レーザー光を発振させるループ中または往復経路中に配置され、
前記レーザー光の波長を目標波長に変更する場合に、前記フィルタ部は、前記通過帯域の設定を、現在の前記通過帯域である現通過帯域から、前記レーザー光の前記目標波長に対応する目標通過帯域まで、前記レーザー光の発振を維持しつつ少なくとも2回のステップに分けて変化させ、
それぞれの前記ステップにおいて前記フィルタ部に設定される前記通過帯域は、一つ前の前記ステップにおいて前記フィルタ部に入力されている前記レーザー光の波長帯域に含まれる、
波長可変レーザー装置。
【請求項3】
生成するレーザー光の波長が可変である波長可変レーザー装置であって、
通過する前記レーザー光を増幅する増幅部と、
通過する前記レーザー光のうち、予め設定された通過帯域の波長成分を通過させるフィルタ部と
を備え、
前記レーザー光の波長を目標波長に変更する場合に、前記フィルタ部は、前記通過帯域の設定を、現在の前記通過帯域である現通過帯域から、前記レーザー光の前記目標波長に対応する目標通過帯域まで、少なくとも2回のステップに分けて変化させ、
それぞれの前記ステップにおいて前記フィルタ部に設定される前記通過帯域は、一つ前の前記ステップにおいて前記フィルタ部に設定される前記通過帯域と、一部の帯域が重複し、
それぞれの前記ステップの時間間隔は、前記フィルタ部を通過した前記レーザー光が前記フィルタ部に再度入力される周期以上である、
波長可変レーザー装置。
【請求項4】
生成するレーザー光の波長が可変である波長可変レーザー装置であって、
通過する前記レーザー光を増幅する増幅部と、
通過する前記レーザー光のうち、予め設定された通過帯域の波長成分を通過させるフィルタ部と
を備え、
前記レーザー光の波長を目標波長に変更する場合に、前記フィルタ部は、前記通過帯域の設定を、現在の前記通過帯域である現通過帯域から、前記レーザー光の前記目標波長に対応する目標通過帯域まで、少なくとも2回のステップに分けて変化させ、
それぞれの前記ステップにおいて前記フィルタ部に設定される前記通過帯域は、一つ前の前記ステップにおいて前記フィルタ部に入力されている前記レーザー光の波長帯域に含まれ、
それぞれの前記ステップの時間間隔は、前記フィルタ部を通過した前記レーザー光が前記フィルタ部に再度入力される周期以上である、
波長可変レーザー装置。
【請求項5】
生成するレーザー光の波長が可変である波長可変レーザー装置であって、
通過する前記レーザー光を増幅する増幅部と、
通過する前記レーザー光のうち、予め設定された通過帯域の波長成分を通過させるフィルタ部と
を備え、
前記レーザー光の波長を目標波長に変更する場合に、前記フィルタ部は、前記通過帯域の設定を、現在の前記通過帯域である現通過帯域から、前記レーザー光の前記目標波長に対応する目標通過帯域まで、少なくとも2回のステップに分けて変化させ、
前記フィルタ部は、複数の前記通過帯域が設定可能であり、前記レーザー光の波長を前記目標波長に変更する場合に、前記現通過帯域を維持したまま、新たな前記通過帯域を、前記現通過帯域から前記目標通過帯域まで、少なくとも2回のステップに分けて変化させる
波長可変レーザー装置。
【請求項6】
生成するレーザー光の波長が可変である波長可変レーザー装置であって、
通過する前記レーザー光を増幅する増幅部と、
通過する前記レーザー光のうち、予め設定された通過帯域の波長成分を通過させるフィルタ部と
を備え、
前記レーザー光の波長を目標波長に変更する場合に、前記フィルタ部は、前記通過帯域の設定を、現在の前記通過帯域である現通過帯域から、前記レーザー光の前記目標波長に対応する目標通過帯域まで、少なくとも2回のステップに分けて変化させ、
前記フィルタ部は、複数の前記通過帯域が設定可能であり、
前記レーザー光の波長を第1波長から、前記第1波長よりも長いもしくは短い第2波長に変更する場合に、前記フィルタ部は、前記通過帯域の設定を前記現通過帯域から前記目標通過帯域まで少なくとも2回のステップに分けて変化させ、
前記第2波長のレーザー光を生成している状態で、前記第2波長より短い第3波長のレーザー光を生成する場合に、前記フィルタ部は、前記第2波長に対応する前記通過帯域を維持したまま、前記第3波長に対応する新たな前記通過帯域を設定する
波長可変レーザー装置。
【請求項7】
生成するレーザー光の波長が可変である波長可変レーザー装置であって、
通過する前記レーザー光を増幅する増幅部と、
通過する前記レーザー光のうち、予め設定された通過帯域の波長成分を通過させるフィルタ部と
を備え、
前記レーザー光の波長を目標波長に変更する場合に、前記フィルタ部は、前記通過帯域の設定を、現在の前記通過帯域である現通過帯域から、前記レーザー光の前記目標波長に対応する目標通過帯域まで、少なくとも2回のステップに分けて変化させ、
前記フィルタ部は、前記通過帯域を前記現通過帯域から前記目標通過帯域まで変更する間の前記通過帯域の幅を、前記レーザー光の波長が前記目標波長となった後の前記通過帯域の幅よりも広くする
波長可変レーザー装置。
【請求項8】
生成するレーザー光の波長が可変である波長可変レーザー装置であって、
通過する前記レーザー光を増幅する増幅部と、
通過する前記レーザー光のうち、予め設定された通過帯域の波長成分を通過させるフィルタ部と
を備え、
前記レーザー光の波長を目標波長に変更する場合に、前記フィルタ部は、前記通過帯域の設定を、現在の前記通過帯域である現通過帯域から、前記レーザー光の前記目標波長に対応する目標通過帯域まで、少なくとも2回のステップに分けて変化させ、
前記増幅部および前記フィルタ部が配置された第1ループと、
非線形増幅ループミラーとして機能する第2ループと、
前記第1ループおよび前記第2ループを接続する光カプラーと
を備える
、波長可変レーザー装置。
【請求項9】
前記フィルタ部は、前記光カプラーから前記増幅部に前記レーザー光が進む経路に配置されている
請求項8に記載の波長可変レーザー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変レーザー装置およびレーザー出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバー等を用いたレーザー発振器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2002-118315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レーザー発振器等のレーザー装置においては、レーザーの波長が可変であることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、生成するレーザー光の波長が可変である波長可変レーザー装置を提供する。波長可変レーザー装置は、通過するレーザー光を増幅する増幅部を備えてよい。波長可変レーザー装置は、通過するレーザー光のうち、予め設定された通過帯域の波長成分を通過させるフィルタ部を備えてよい。レーザー光の波長を目標波長に変更する場合に、フィルタ部は、通過帯域の設定を、現在の通過帯域である現通過帯域から、レーザー光の目標波長に対応する目標通過帯域まで、少なくとも2回のステップに分けて変化させてよい。
【0005】
それぞれのステップにおいてフィルタ部に設定される通過帯域は、一つ前のステップにおいてフィルタ部に設定される通過帯域と、一部の帯域が重複してよい。
【0006】
それぞれのステップにおいてフィルタ部に設定される通過帯域は、一つ前のステップにおいてフィルタ部に入力されているレーザー光の波長帯域に含まれてよい。
【0007】
それぞれのステップの時間間隔は、フィルタ部を通過したレーザー光がフィルタ部に再度入力される周期以上であってよい。
【0008】
フィルタ部は、複数の通過帯域が同時に設定可能であってよい。フィルタ部は、レーザー光の波長を目標波長に変更する場合に、現通過帯域を維持したまま、新たな通過帯域を、現通過帯域から目標通過帯域まで、少なくとも2回のステップに分けて変化させてよい。
【0009】
レーザー光の波長を第1波長から、第1波長よりも長いもしくは短い第2波長に変更する場合に、フィルタ部は、通過帯域の設定を現通過帯域から目標通過帯域まで少なくとも2回のステップに分けて変化させてよい。第2波長のレーザー光を生成している状態で、第2波長より短い第3波長のレーザー光を生成する場合に、フィルタ部は、第2波長に対応する通過帯域を維持したまま、第3波長に対応する新たな通過帯域を設定してよい。
【0010】
フィルタ部は、通過帯域を現通過帯域から目標通過帯域まで変更する間の通過帯域の幅を、レーザー光の波長が目標波長となった後の通過帯域の幅よりも広くしてよい。
【0011】
波長可変レーザー装置は、増幅部およびフィルタ部が配置された第1ループを備えてよい。波長可変レーザー装置は、非線形増幅ループミラーとして機能する第2ループを備えてよい。波長可変レーザー装置は、第1ループおよび第2ループを接続する光カプラーを備えてよい。
【0012】
フィルタ部は、光カプラーから増幅部にレーザー光が進む経路に配置されていてよい。
【0013】
本発明の第2の態様においては、レーザー出力装置を提供する。レーザー出力装置は、第1の態様に係る波長可変レーザー装置と、波長可変レーザー装置が出力するレーザー光を増幅する増幅装置とを備える。
【0014】
増幅装置は、増幅する波長が異なる複数の増幅器を有してよい。レーザー出力装置は、波長可変レーザー装置が出力するレーザー光を、複数の増幅器のいずれかに入力する選択部を有してよい。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る波長可変レーザー装置100の構成例を示す図である。
【
図2】波長可変レーザー装置100の他の構成例を示す図である。
【
図4】光伝送部101の他の構成例を示す図である。
【
図5】光伝送部101および可飽和吸収部102の他の構成例を示す図である。
【
図6】光伝送部101を伝送するレーザー光のスペクトル波形の一例を模式的に示す図である。
【
図7】フィルタ部10における通過帯域の設定方法を説明する図である。
【
図8】ステップnと、次のステップn+1における各波長帯域を拡大した図である。
【
図9】フィルタ部10における通過帯域の設定の他の例を示す図である。
【
図10】フィルタ部10における通過帯域の設定の他の例を示す図である。
【
図11】レーザー出力装置200の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る波長可変レーザー装置100の構成例を示す図である。波長可変レーザー装置100は、生成するレーザー光の波長が可変な装置である。波長可変レーザー装置100は、フィルタ部10および増幅部20を備える。
【0019】
フィルタ部10および増幅部20の間において、光ファイバー等によりレーザー光が伝搬する。フィルタ部10および増幅部20は、レーザー光が周回するループ中に配置されていてよく、レーザー光が往復する経路中に配置されていてもよい。
【0020】
増幅部20は、通過するレーザー光の強度を増幅する。増幅部20は、例えば不純物が添加された光ファイバーを有してよい。当該不純物は例えばイッテルビウム(Yb)であるが、これに限定されない。また光ファイバーの材料は、例えば石英ガラスであるが、これに限定されない。
【0021】
フィルタ部10は、通過するレーザー光のうち、予め設定された通過帯域の波長成分を通過させ、通過帯域以外の波長成分を減衰させるバンドパスフィルタである。フィルタ部10における通過帯域は、中心波長が可変である。フィルタ部10における通過帯域は、帯域幅も可変であってよい。フィルタ部10は、例えばファイバブラッググレーティング構造を有するが、これに限定されない。波長可変レーザー装置100は、フィルタ部10の通過帯域の中心波長を変更することで、レーザー光の波長を変更する。
【0022】
図2は、波長可変レーザー装置100の他の構成例を示す図である。本例の波長可変レーザー装置100は、光伝送部101と、可飽和吸収部102とを備える。光伝送部101は、
図1に示したフィルタ部10および増幅部20を備え、レーザー光を生成する。
【0023】
可飽和吸収部102は、光伝送部101を伝送するレーザー光の波長成分のうち、比較的に強度の低い時間成分を構成する波長を吸収する。可飽和吸収部102は、比較的に強度の高い時間成分を構成する波長は、吸収せずに光伝送部101を伝搬させる。強度の高い時間成分とは、スペクトル波形の中心近傍である。つまり可飽和吸収部102は、レーザー光のパルスを、時間軸において狭帯域化する。可飽和吸収部102を設けることで、光伝送部101を伝送するレーザー光を短パルス化できる。
【0024】
図3は、光伝送部101の構成例を示す図である。本例の光伝送部101は、レーザー入力部30、増幅部20、レーザー出力部40、フィルタ部10および光ファイバー50を有する。光伝送部101の各構成要素は、光ファイバー50により接続されている。本例の光伝送部101においては、レーザー光が光伝送部101中を往復する。また、光伝送部101は、各構成要素が光ファイバーにより形成された、全ファイバー装置であってよい。本例の光伝送部101は、光ファイバー50により可飽和吸収部102と接続されており、光伝送部101と可飽和吸収部102との間でレーザー光が往復する。本例では可飽和吸収部102として、半導体可飽和吸収ミラー(SESAM)を用いている。
【0025】
レーザー入力部30には、励起レーザー光が入力される。レーザー入力部30は、光伝送部101を伝送しているレーザー光と、励起レーザー光とを結合して、光ファイバー50を伝送させる。レーザー入力部30は、例えばWDM(波長分割多重)カプラーである。
【0026】
本例の増幅部20は、レーザー入力部30と、レーザー出力部40との間に設けられている。増幅部20は、励起レーザー光により、光伝送部101を伝送しているレーザー光の強度を増幅する。増幅部20の配置は、
図3の例に限定されない。
【0027】
本例のレーザー出力部40は、増幅部20と、フィルタ部10との間に配置されている。レーザー出力部40は、光伝送部101を伝送しているレーザー光のうち、予め定められた割合を出力する。例えばレーザー出力部40は、通過するレーザー光の10%から20%程度を、出力レーザー光として外部に出力する。残りのレーザー光は、光伝送部101を伝送する。レーザー出力部40は、例えばOC(出力カプラー)である。
【0028】
フィルタ部10は、光伝送部101を伝送するレーザー光のうち、設定される通過帯域の波長成分を通過させ、通過帯域外の波長成分は減衰させる。本例のフィルタ部10は、レーザー出力部40を通過したレーザー光を受け取り、フィルタ処理されたレーザー光をレーザー出力部40に入力する。
【0029】
可飽和吸収部102は、レーザー入力部30を通過したレーザー光を受け取り、所定の強度以下のパルスの時間成分を構成する波長成分を吸収する。可飽和吸収部102は、受光したレーザー光のうち、所定の強度より高い波長成分をレーザー入力部30に入力する。
【0030】
本例の波長可変レーザー装置100は、可飽和吸収部102と、フィルタ部10との間でレーザー光が往復する。フィルタ部10における通過帯域を変更することで、出力レーザー光の波長を変更できる。
【0031】
図4は、光伝送部101の他の構成例を示す図である。本例の光伝送部101は、
図3に示した光伝送部101と同様に、レーザー入力部30、増幅部20、レーザー出力部40、フィルタ部10および光ファイバー50を有してよい。レーザー入力部30、増幅部20、レーザー出力部40、フィルタ部10および光ファイバー50は、
図3の例と同様である。
【0032】
本例の光伝送部101は、光アイソレーター60および結合部70を更に有する。光伝送部101の各構成要素は、光ファイバー50により接続されている。本例の光伝送部101においては、各構成要素が光ファイバー50によりループ状に接続されており、レーザー光が光伝送部101中を周回する。光伝送部101は、各構成要素が光ファイバーにより形成された、全ファイバー装置であってよい。本例の光伝送部101は、結合部70により可飽和吸収部102と接続されており、結合部70と可飽和吸収部102との間でレーザー光が往復する。
【0033】
本例の光伝送部101では、レーザー入力部30、増幅部20、光アイソレーター60、レーザー出力部40、結合部70およびフィルタ部10が、この順番でループ状に配置されている。ただし、各構成の配置は、これに限定されない。
【0034】
光アイソレーター60は、光伝送部101におけるレーザー光の周回方向を規定する。本例の光アイソレーター60は、増幅部20からレーザー出力部40に向かう方向のレーザー光を通過させ、レーザー出力部40から増幅部20に向かう方向のレーザー光を遮断する。
【0035】
結合部70は、光伝送部101の光ファイバー50と、可飽和吸収部102とを結合する。結合部70は、光伝送部101を周回するレーザー光を、可飽和吸収部102に伝搬させる。可飽和吸収部102により一部の波長成分が吸収されたレーザー光は、結合部70を介して光伝送部101に戻る。結合部70は、例えば光サーキュレーターである。
【0036】
本例のフィルタ部10は、結合部70から増幅部20に向かってレーザー光が進む経路に配置されている。本例においても、フィルタ部10における通過帯域を変更することで、出力レーザー光の波長を変更できる。
【0037】
図5は、光伝送部101および可飽和吸収部102の他の構成例を示す図である。本例の光伝送部101は、
図4に示した光伝送部101と同様に、レーザー入力部30、増幅部20、レーザー出力部40、フィルタ部10、光アイソレーター60および結合部70を有する。レーザー入力部30、増幅部20、レーザー出力部40、フィルタ部10、光ファイバー50および光アイソレーター60は、
図4の例と同様である。
【0038】
光伝送部101の各構成要素は、光ファイバー50により接続されている。本例の光伝送部101においては、各構成要素が光ファイバー50によりループ状に接続されており、レーザー光が光伝送部101中を周回する。光伝送部101は、各構成要素が光ファイバーにより形成された、全ファイバー装置であってよい。
【0039】
本例においては、光伝送部101が増幅部20およびフィルタ部10等が配置された第1ループを有し、可飽和吸収部102が、非線形増幅ループミラー(Nonlinear Amplifying Loop Mirror:NALM)として機能する第2ループを有する。結合部70は、第1ループと第2ループとを結合する光カプラーである。
【0040】
結合部70は、NALMのループに入力されるレーザー光を、ループを時計回りに伝搬する成分と、ループを反時計回りに伝搬する成分とに分離する。本例の結合部70は、光アイソレーター60と、レーザー出力部40との間に配置されているが、結合部70の配置はこれに限定されない。
【0041】
NALMは、時計回りに伝搬する成分と、反時計回りに伝搬する成分とに対して、強度差に応じて位相差を生じさせる。結合部70においては、2つの成分の位相差に応じた透過特性で、NALMから光伝送部101にレーザー光を伝搬する。このため、NALMは、比較的に低強度の時間成分については減衰させ、比較的に高強度の時間成分については光伝送部101に伝搬させる可飽和吸収部102として機能する。
【0042】
本例の可飽和吸収部102は、増幅部103、光ファイバー106、レーザー入力部104を有する。可飽和吸収部102の各構成要素は、光ファイバー106によりループ状に接続されている。レーザー入力部104は、励起レーザー光と、可飽和吸収部102を反時計回りに伝送しているレーザー光とを結合する。
【0043】
増幅部103は、結合部70からレーザー入力部104に時計回りで向かう経路に配置され、レーザー光を増幅する。増幅部103は、例えばYbがドープされた光ファイバーである。
【0044】
本例においても、フィルタ部10における通過帯域を変更することで、出力レーザー光の波長を変更できる。なお、
図3から
図5において説明した光伝送部101および可飽和吸収部102の構成は一例であり、光伝送部101および可飽和吸収部102は多様な構造を取ることができる。例えば光伝送部101は、一部の経路が光ファイバーでなく、空間であってもよい。
【0045】
図6は、光伝送部101を伝送するレーザー光のスペクトル波形の一例を模式的に示す図である。
図6においては、横軸を波長とし、縦軸を強度としている。
図6では、一例として
図5のレーザー出力部40に入力されるレーザー光をレーザー光A、レーザー出力部40からフィルタ部10に入力されるレーザー光をレーザー光B、フィルタ部10が出力するレーザー光をレーザー光Cとする。
【0046】
本例では、フィルタ部10に設定されている通過帯域の中心波長をλ1とする。
図6では、フィルタ部10の通過帯域を破線で示している。本例では、レーザー光A、レーザー光B、レーザー光Cの波長帯域の中心波長がλ1の状態で、安定して発振している。なお、レーザー光の中心波長は、当該レーザー光の強度がピークPmaxとなる波長であってよい。また、レーザー光の波長帯域とは、中心波長を含み、且つ、レーザー光の強度が所定の閾値強度Pth以上となる波長範囲である。閾値強度Pthは、予め設定された値であってよく、いずれかのレーザー光のピーク強度を用いて定められていてもよい。
図6の例では、閾値強度Pthは、レーザー光Cのピーク強度Pmaxを用いて規定されている。閾値強度Pthは、ピーク強度Pmaxの半分以上の値であってよく、30%以上の値であってよく、20%以上の値であってよく、10%以上の値であってもよい。
図6の例では、レーザー光A、レーザー光Bおよびレーザー光Cの波長帯域を、WA、WB、WCとする。
【0047】
レーザー出力部40により、レーザー光Aの一部が外部に出力されるので、光伝送部101に残存したレーザー光Bの強度は、レーザー光Aの強度よりも低くなっている。また、波長帯域WBは、波長帯域WAよりも狭くなっている。
【0048】
フィルタ部10は、レーザー光Bのうち、中心波長λ1を含む通過帯域の波長成分を通過させる。フィルタ部10が通過させたレーザー光Cの波長帯域WCは、レーザー光Bの波長帯域WBよりも狭くなっている。増幅部20等によりレーザー光の帯域が増加して、レーザー光Aとしてレーザー出力部40に入力される。
【0049】
ここで、レーザー光Aの中心波長をλ1からλ2に変更する。この場合、フィルタ部10の通過帯域の中心波長をλ2に変更する。しかし、フィルタ部10の通過帯域の中心波長がλ1の場合、
図6に示すように、レーザー光Aおよびレーザー光Bは、波長λ2の成分をほとんど有さない場合がある。この場合、フィルタ部10の通過帯域の中心波長をλ1からλ2に変更すると、フィルタ部10が出力するレーザー光の強度が非常に低くなってしまう。このため、中心波長がλ2のレーザー光A'を生成できない場合がある。
【0050】
図7は、フィルタ部10における通過帯域の設定方法を説明する図である。本例においては、レーザー光の波長(例えば中心波長)を、現在の波長λ1から目標波長λ2に変更する。フィルタ部10は、通過帯域の設定を、現在の通過帯域である現通過帯域から、レーザー光の目標波長に対応する目標通過帯域まで、少なくとも2回のステップに分けて変化させる。つまり、フィルタ部10の通過帯域は、現通過帯域から目標通過帯域まで、徐々に変化する。
【0051】
1回のステップにおける通過帯域の中心波長の変動量は、現通過帯域および目標通過帯域の中心波長の差分λ2―λ1よりも小さい。このため、各ステップでは、前ステップにおけるレーザー光B(
図5参照)がある程度の強度を有する通過帯域を設定しやすくなる。このため、各ステップにおけるレーザー光Cの強度を確保しやすくなり、通過帯域を現通過帯域から目標通過帯域に一度に変更する場合に比べて、光伝送部101内におけるレーザー光の波長が追従しやすくなる。
【0052】
図7においては、各ステップについて、光伝送部101の各位置におけるレーザー光の波長帯域を示している。各ステップでは、
図5および
図6において説明したレーザー光A、B、Cの波長帯域WA、WB、WCに加え、増幅部20等を通過したレーザー光Dの波長帯域WDを示している。
図7において、縦軸は波長である。つまり
図7においては、縦軸における幅が広いほど、波長帯域が広いことを示している。また
図7においては、レーザー光Dから、レーザー光Aまでの間のレーザー光の波長帯域を省略している。例えば、
図5に示した可飽和吸収部102を伝搬しているレーザー光の波長帯域は、
図7では省略している。
【0053】
図7においては、ステップk(kは1以上の整数)における各波長帯域を、WAk、WBk、WCk、WDkとする。
図6において説明したように、各ステップにおいて、レーザー光Aの波長帯域WAよりも、レーザー光Bの波長帯域WBは狭くなっている。また、レーザー光Bの波長帯域WBよりも、レーザー光Cの波長帯域WCは狭くなっている。波長帯域WCは、フィルタ部10の通過帯域とほぼ同一であってよい。また、レーザー光Dの波長帯域WDは、光伝送部101を伝搬するにつれて拡大している。
【0054】
フィルタ部10の通過帯域を変更することで、各ステップのレーザー光Cの中心波長は、通過帯域に応じて変動する。このため、各ステップのレーザー光D、A、Bの中心波長も、フィルタ部10の通過帯域に応じて変動する。
図7に示すように、各ステップにおいてフィルタ部10の通過帯域を徐々に変更することで、各ステップにおいてレーザー光の発振を維持し、各レーザー光の波長帯域を維持できる。このため、現波長λ1と、目標波長λ2との差分が大きい場合であっても、レーザー光の波長を容易に変更することができる。
【0055】
図8は、ステップnと、次のステップn+1における各波長帯域を拡大した図である。本例のフィルタ部10は、1回のステップで、通過帯域をΔλだけシフトする。また、フィルタ部10の通過帯域の波長軸における幅をWλcとする。フィルタ部10の通過帯域は、入力されるレーザー光の強度の50%以上のレーザー光を通過させる帯域であってよく、30%以上のレーザー光を通過させる帯域であってよく、10%以上のレーザー光を通過させる帯域であってもよい。
【0056】
それぞれのステップn+1においてフィルタ部10に設定される通過帯域は、一つ前のステップnにおいてフィルタ部10に設定される通過帯域と、一部の帯域が重複していてよい。通過帯域のシフト量Δλは、フィルタ部10の通過帯域の幅Wλcよりも小さくてよい。これにより、フィルタ部10の通過帯域をシフトさせた場合であっても、レーザー光Cの強度を維持しやすくなる。シフト量Δλは、通過帯域の幅Wλcの半分以下であってもよい。
【0057】
また、それぞれのステップn+1においてフィルタ部10に設定される通過帯域は、一つ前のステップnにおいてフィルタ部10に入力されているレーザー光Bの波長帯域WBnに含まれていることが好ましい。通過帯域のシフト量Δλは、レーザー光Bの波長帯域WBの幅Wλbの半分よりも小さいことが好ましい。これにより、フィルタ部10の通過帯域をシフトさせた場合であっても、レーザー光Cの強度を維持しやすくなる。シフト量Δλは、波長帯域の幅Wλbの1/4以下であってよく、1/10以下であってもよい。
【0058】
それぞれのステップの時間間隔Sは、フィルタ部10を通過したレーザー光がフィルタ部10に再度入力される周期T以上であることが好ましい。ステップの時間間隔とは、フィルタ部10の通過帯域の設定変更を行う時間間隔である。また、当該周期Tは、レーザー光が、光伝送部101および可飽和吸収部102を1周して戻ってくるのに要する時間である。これにより、フィルタ部10の通過帯域の設定変更が反映されてレーザー光の波長が安定してから、次のステップを実行できる。時間間隔Sは、周期Tの2倍以上であってよく、5倍以上であってもよい。
【0059】
また、時間間隔Sは、0.5秒以下であってよく、0.1秒以下であってよく、0.01秒以下であってもよい。これにより、レーザー光の波長を短時間で変更できる。時間間隔Sは、周期Tの100倍以下であってよく、10倍以下であってもよい。
【0060】
また、フィルタ部10は、通過帯域の設定を、現通過帯域から目標通過帯域まで変更する間の通過帯域の幅Wλcを、レーザー光の波長が目標波長となった後の通過帯域の幅よりも広くしてよい。つまりフィルタ部10は、通過帯域を変更する場合には、通常時よりも通過帯域の幅を拡張してよい。これにより、レーザー光の波長が、通過帯域の変動に追従しやすくなる。フィルタ部10は、通過帯域を変更する場合の通過帯域の幅を、通常時の通過帯域の幅の1.5倍以上にしてよく、2倍以上にしてもよい。また、フィルタ部10は、通過帯域の下側スロープおよび上側スロープをなだらかにすることで、通過帯域の幅を拡張してよい。下側スロープは、通過帯域の中心波長よりも短波長側における通過帯域特性の波形であり、上側スロープは、通過帯域の中心波長よりも長波長側における通過帯域特性の波形である。
【0061】
また、
図5に示した可飽和吸収部102を有する波長可変レーザー装置100は、フィルタ部10の通過帯域の設定を短波長から長波長に変更する場合、もしくは、長波長から短波長に変更する場合、可飽和吸収部102における励起レーザー光の強度を増大させてよい。可飽和吸収部102に入力されるレーザー光の波長が長くなる、もしくは短くなると、可飽和吸収部102の出力が低下する場合がある。これに対して、可飽和吸収部102における励起レーザー光の強度を増大させることで、可飽和吸収部102が出力するレーザー光の強度を維持しやすくなる。
【0062】
図9は、フィルタ部10における通過帯域の設定の他の例を示す図である。本例のフィルタ部10は、複数の通過帯域が同時に設定可能である。つまりフィルタ部10は、異なる波長帯域の複数のレーザー光を同時に通過させることができる。フィルタ部10に同時に設定される複数の通過帯域は、帯域が重複していてよく、帯域が重複していなくてもよい。
【0063】
本例のフィルタ部10は、レーザー光の波長を目標波長λ2に変更する場合に、中心波長がλ1の現通過帯域11を維持したまま、新たな通過帯域12を設定する。新たな通過帯域12は、現通過帯域11と全体が重なっていてよく、一部が重なっていてもよい。新たな通過帯域12は、中心波長がλ1であってもよい。
【0064】
フィルタ部10は、新たな通過帯域12を、現通過帯域から目標通過帯域まで、少なくとも2回のステップに分けて変化させる。新たな通過帯域12の波長シフトの方法は、
図7および
図8において説明した例と同様である。これによりフィルタ部10には、中心波長λ1の通過帯域11と、中心波長λ2の通過帯域13が設定される。また、波長可変レーザー装置100は、2つの中心波長λ1、λ2のそれぞれに対応するレーザー光を生成できる。
【0065】
図9において説明した処理は、波長可変レーザー装置100の起動時に行ってよい。これにより波長可変レーザー装置100は、波長が異なる複数のレーザー光を常時生成する。波長可変レーザー装置100からレーザー光を受け取る装置は、いずれかのレーザー光を選択して使用してよい。
【0066】
なお本明細書における波長λ1は、波長可変レーザー装置100において、レーザー光を発振させやすい波長であってよい。レーザー光を発振させやすい波長は、波長可変レーザー装置100を構成する各部材の特性により定まる。例えば波長λ1は、増幅部20において増幅率が最も高い波長であってよい。最初に波長λ1でレーザー光を生成し、その後にフィルタ部10の通過帯域を変更することで、波長λ1以外の波長のレーザー光を容易に生成できる。
【0067】
図10は、フィルタ部10における通過帯域の設定の他の例を示す図である。本例のフィルタ部10は、複数の通過帯域が同時に設定可能である。本例においては、まずレーザー光の波長を、第1波長λ1から第2波長λ2に変更する。第1波長λ1から第2波長λ2への変更は、
図7および
図8において説明した例と同様である。
【0068】
次に、第2波長のレーザー光を生成している状態で、第2波長よりも短い第3波長を生成する。この場合、フィルタ部10は、第2波長に対応する通過帯域14を維持したまま、第3波長に対応する新たな通過帯域15を設定する。新たな通過帯域15は、通過帯域14から徐々にシフトせずに、1回のステップで設定してよい。
【0069】
第2波長のレーザー光の波長特性52は、第1波長に向かってなだらかに変化する場合がある。つまり当該レーザー光の波長特性52は、中心波長λ2よりも長波長側に比べて、中心波長λ2よりも短波長側においてなだらかに変化する。この場合、第2波長よりも短波長側においては、各波長成分の強度が比較的に高いので、新たな通過帯域15を中心波長λ3に追加しても、中心波長λ3のレーザー光を生成しやすい。
【0070】
中心波長λ3のレーザー光が不要になった場合には、フィルタ部10における通過帯域15を削除する。このように、中心波長λ2のレーザー光を維持しておくことで、中心波長λ3のレーザー光を、必要に応じて容易に生成できる。
【0071】
中心波長λ3は、中心波長λ1と同一であってよい。また、中心波長λ3は、中心波長λ1と、λ2との間の波長であってもよい。
【0072】
図11は、レーザー出力装置200の一例を示す図である。レーザー出力装置200は、例えばレーザーにより対象物を加工する加工装置、レーザーにより対象物を加熱する加熱装置、または、他の用途にレーザーを用いた装置である。レーザー出力装置200は、波長可変レーザー装置100および増幅装置204を備える。波長可変レーザー装置100は、
図1から
図10において説明したいずれかの態様の波長可変レーザー装置である。
【0073】
増幅装置204は、波長可変レーザー装置100が出力するレーザー光を増幅して出力する。本例の増幅装置204は、増幅する波長が異なる複数の増幅器201を有する。複数の増幅器201は、例えばネオジウム(Nd)が添加されたYAGを有する増幅器(Nd:YAG)と、イッテルビウム(Yb)が添加されたYAGを有する増幅器(Yb:YAG)を含む。Nd:YAGの増幅器201は、例えば1064nm近傍の波長のレーザー光を増幅する。また、Yb:YAGの増幅器201は、例えば1030nm近傍の波長のレーザー光を増幅する。
【0074】
増幅装置204は、選択部203を有する。選択部203は、波長可変レーザー装置100が出力するレーザー光を、複数の増幅器201のいずれかに入力する。それぞれの増幅器201における蛍光バンド幅は10nm以下であるので、入力されるレーザー光の波長を制御よく制御できることが好ましい。波長可変レーザー装置100は、フィルタ部10の通過帯域を制御することでレーザー光の波長を精度よく制御できる。このため、レーザー出力装置200は、効率よくレーザー光を増幅して出力できる。
【0075】
なお、波長可変レーザー装置100が出力するレーザー光のパルス長は、ピコ秒オーダー(つまり、1ナノ秒以下)であってよく、フェムト秒オーダー(つまり、1ピコ秒以下)であってもよい。
【0076】
なお、可飽和吸収部102は、NALMの他に、MOLM(非線形光ループミラー)SESAM(半導体可飽和吸収ミラー)、アクティブモードロック式の強度変調器もしくは位相変調器、単層カーボンナノチューブ、グラファイト等を用いることができる。また、光伝送部101は、偏波保持ファイバーによる全ファイバー装置、一部が偏波保持ファイバーでない全ファイバー装置、および、光ファイバーと空間素子とが組み合わされた装置のいずれかを用いることができる。
【0077】
また、モード同期方法としては、励起光源によるもののほかに、機械的操作または温度操作により同期させる方法、または、時間的に透過率を変化させる方法等を用いることができる。また、波長可変レーザー装置100の増幅部20には、イッテルビウム(Yb)が添加されてよく、エルビウム(Er)が添加されてよく、ツリウム(Tm)が添加されてよもよい。この場合、レーザー光の発振波長は、それぞれ1μm近傍(Yb)、1.5μm近傍(Er)、および、2μm近傍(Tm)となる。
【0078】
また、フィルタ部10は、通過帯域の形状が任意に変化可能な任意形状フィルタ、機械部品を操作することで通過帯域が変化する機械操作型波長可変フィルタ、干渉フィルタ、波長可変バルクフィルタ、および、サニャックファイバフィルタ等を用いることができる。
【0079】
また、波長可変レーザー装置100が出力するレーザー光のパルスの種類は、ソリトンまたは散逸性ソリトン(全正常分散構成または正常分散構成)であってよく、シミラリトンであってよく、分散管理ソリトン(ストレッチパルス)であってよく、他の種類であってもよい。
【0080】
一例として波長可変レーザー装置100は、可飽和吸収部102がNALMであり、全ファイバー装置であり、励起レーザー光を用い、増幅部20がYb添加であり、フィルタ部10が任意形状フィルタであり、パルス種類が散逸性ソリトンである。ただし、波長可変レーザー装置100は、上述した構成および特性等の任意の組み合わせを用いてよい。
【0081】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0082】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
[項目1]
生成するレーザー光の波長が可変である波長可変レーザー装置であって、
通過する前記レーザー光を増幅する増幅部と、
通過する前記レーザー光のうち、予め設定された通過帯域の波長成分を通過させるフィルタ部と、
を備え、
前記レーザー光の波長を目標波長に変更する場合に、前記フィルタ部は、前記通過帯域の設定を、現在の前記通過帯域である現通過帯域から、前記レーザー光の前記目標波長に対応する目標通過帯域まで、少なくとも2回のステップに分けて変化させる波長可変レーザー装置。
[項目2]
それぞれの前記ステップにおいて前記フィルタ部に設定される前記通過帯域は、一つ前の前記ステップにおいて前記フィルタ部に設定される前記通過帯域と、一部の帯域が重複する、項目1に記載の波長可変レーザー装置。
[項目3]
それぞれの前記ステップにおいて前記フィルタ部に設定される前記通過帯域は、一つ前の前記ステップにおいて前記フィルタ部に入力されている前記レーザー光の波長帯域に含まれる、項目1または2に記載の波長可変レーザー装置。
[項目4]
それぞれの前記ステップの時間間隔は、前記フィルタ部を通過した前記レーザー光が前記フィルタ部に再度入力される周期以上である、項目1から3のいずれか一項に記載の波長可変レーザー装置。
[項目5]
前記フィルタ部は、複数の前記通過帯域が設定可能であり、前記レーザー光の波長を前記目標波長に変更する場合に、前記現通過帯域を維持したまま、新たな前記通過帯域を、前記現通過帯域から前記目標通過帯域まで、少なくとも2回のステップに分けて変化させる、項目1から4のいずれか一項に記載の波長可変レーザー装置。
[項目6]
前記フィルタ部は、複数の前記通過帯域が設定可能であり、
前記レーザー光の波長を第1波長から、前記第1波長よりも長いもしくは短い第2波長に変更する場合に、前記フィルタ部は、前記通過帯域の設定を前記現通過帯域から前記目標通過帯域まで少なくとも2回のステップに分けて変化させ、
前記第2波長のレーザー光を生成している状態で、前記第2波長より短い第3波長のレーザー光を生成する場合に、前記フィルタ部は、前記第2波長に対応する前記通過帯域を維持したまま、前記第3波長に対応する新たな前記通過帯域を設定する、
項目1から4のいずれか一項に記載の波長可変レーザー装置。
[項目7]
前記フィルタ部は、前記通過帯域を前記現通過帯域から前記目標通過帯域まで変更する間の前記通過帯域の幅を、前記レーザー光の波長が前記目標波長となった後の前記通過帯域の幅よりも広くする、項目1から6のいずれか一項に記載の波長可変レーザー装置。
[項目8]
前記増幅部および前記フィルタ部が配置された第1ループと、
非線形増幅ループミラーとして機能する第2ループと、
前記第1ループおよび前記第2ループを接続する光カプラーと、
を備える、項目1から7のいずれか一項に記載の波長可変レーザー装置。
[項目9]
前記フィルタ部は、前記光カプラーから前記増幅部に前記レーザー光が進む経路に配置されている、項目8に記載の波長可変レーザー装置。
[項目10]
項目1から9のいずれか一項に記載の波長可変レーザー装置と、
前記波長可変レーザー装置が出力する前記レーザー光を増幅する増幅装置と、
を備えるレーザー出力装置。
[項目11]
前記増幅装置は、
増幅する波長が異なる複数の増幅器と、
前記波長可変レーザー装置が出力する前記レーザー光を、前記複数の増幅器のいずれかに入力する選択部と、
を有する項目10に記載のレーザー出力装置。
【符号の説明】
【0083】
10・・・フィルタ部、11、12、13、14、15・・・通過帯域、20・・・増幅部、30・・・レーザー入力部、40・・・レーザー出力部、50・・・光ファイバー、52・・・波長特性、60・・・光アイソレーター、70・・・結合部、100・・・波長可変レーザー装置、101・・・光伝送部、102・・・可飽和吸収部、103・・・増幅部、104・・・レーザー入力部、106・・・光ファイバー、200・・・レーザー出力装置、201・・・増幅器、203・・・選択部、204・・・増幅装置