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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20231012BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20231012BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B60C11/00 H
B60C11/03 100C
B60C11/13 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019027755
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020131913
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水島 春菜
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-096683(JP,A)
【文献】特開平11-208217(JP,A)
【文献】実開平03-044002(JP,U)
【文献】実開昭58-093504(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、
前記主溝により区画される複数の陸部と、
タイヤ幅方向に延びると共に、少なくとも一端が前記陸部内で終端する複数のラグ溝と、
タイヤ周方向における位置が前記ラグ溝同士の間に位置し、トレッド接地面から凹んで形成される標章部と、
を備え
複数の前記ラグ溝は、前記標章部が形成される前記陸部を区画する前記主溝と前記ラグ溝の終端部とのタイヤ幅方向における距離が異なる長尺ラグ溝と短尺ラグ溝とを有しており、
前記長尺ラグ溝は、前記終端部と前記主溝とのタイヤ幅方向における距離が、前記短尺ラグ溝の前記終端部と前記主溝とのタイヤ幅方向における距離よりも小さくなっており、
前記標章部は、タイヤ周方向における位置が前記長尺ラグ溝同士の間に位置することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、
前記主溝により区画される複数の陸部と、
タイヤ幅方向に延びると共に、少なくとも一端が前記陸部内で終端する複数のラグ溝と、
タイヤ周方向における位置が前記ラグ溝同士の間に位置し、トレッド接地面から凹んで形成される標章部と、
を備え
前記標章部は、複数がタイヤ周方向に等間隔で配置されており、
複数の前記標章部は、それぞれの前記標章部のタイヤ周方向の全長ELの総和EL ALL が、前記標章部が形成される前記陸部の位置でのタイヤ周長RLに対して、0.01≦EL ALL /RL≦0.30の範囲内であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項3】
複数の前記ラグ溝は、前記標章部が形成される前記陸部を区画する前記主溝と前記ラグ溝の終端部とのタイヤ幅方向における距離が異なる長尺ラグ溝と短尺ラグ溝とを有しており、
前記長尺ラグ溝は、前記終端部と前記主溝とのタイヤ幅方向における距離が、前記短尺ラグ溝の前記終端部と前記主溝とのタイヤ幅方向における距離よりも小さくなっており、
前記標章部は、タイヤ周方向における位置が前記長尺ラグ溝同士の間に位置する請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記長尺ラグ溝と前記短尺ラグ溝とは、タイヤ周方向に交互に配置される請求項1または3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記標章部は、前記トレッド接地面からの深さが一律である請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記標章部は、前記トレッド接地面に形成される溝からなり、
前記標章部の溝幅Wは、W≧1.5mmである請求項1~5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記標章部の深さDは、前記主溝の溝深さHに対して、D/H≦0.1である請求項1~のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
タイヤ周方向に延びて溝幅が前記主溝の溝幅よりも狭い周方向細溝を備え、
前記標章部は、前記主溝と前記周方向細溝との間に配置される請求項1~のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤでは、濡れた路面の走行時におけるトレッド踏面と路面との間の水の排出等を目的としてトレッド部の表面に溝が複数形成されている。さらに、近年では、トレッド部の表面に様々な情報を表示するものが提案されている。例えば、特許文献1には、トレッド部の表面に各種注意事項を刻印によって表示することが記載されている。また、特許文献2には、細溝で形成されトレッド面に深さが異なる複数のインジケータを備え、インジケータの表示形状と深さとを対応させることにより、現在の溝の残存深さを読み取れるようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭58-93504号公報
【文献】特開2001-30721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トレッド部の表面に、刻印や細溝によって文字等の標章を形成する場合、標章が形成される部分にはトレッドゴムが配置されないことになるため、標章の大きさや深さによっては、トレッドゴムが配置されない部分の体積が大きくなることになる。この場合、トレッドゴムの体積がタイヤ周上で不均一になる虞があり、これに起因してユニフォミティが悪化する虞があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ユニフォミティの悪化を抑制しつつ、標章を配置することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、前記主溝により区画される複数の陸部と、タイヤ幅方向に延びると共に、少なくとも一端が前記陸部内で終端する複数のラグ溝と、タイヤ周方向における位置が前記ラグ溝同士の間に位置し、トレッド接地面から凹んで形成される標章部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記標章部は、前記トレッド接地面からの深さが一律であることが好ましい。
【0008】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記標章部は、前記トレッド接地面に形成される溝からなり、前記標章部の溝幅Wは、W≧1.5mmであることが好ましい。
【0009】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記標章部の深さDは、前記主溝の溝深さHに対して、D/H≦0.1であることが好ましい。
【0010】
また、上記空気入りタイヤにおいて、複数の前記ラグ溝は、前記標章部が形成される前記陸部を区画する前記主溝と前記ラグ溝の終端部とのタイヤ幅方向における距離が異なる長尺ラグ溝と短尺ラグ溝とを有しており、前記長尺ラグ溝は、前記終端部と前記主溝とのタイヤ幅方向における距離が、前記短尺ラグ溝の前記終端部と前記主溝とのタイヤ幅方向における距離よりも小さくなっており、前記標章部は、タイヤ周方向における位置が前記長尺ラグ溝同士の間に位置することが好ましい。
【0011】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記長尺ラグ溝と前記短尺ラグ溝とは、タイヤ周方向に交互に配置されることが好ましい。
【0012】
また、上記空気入りタイヤにおいて、タイヤ周方向に延びて溝幅が前記主溝の溝幅よりも狭い周方向細溝を備え、前記標章部は、前記主溝と前記周方向細溝との間に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤは、ユニフォミティの悪化を抑制しつつ、標章を配置することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。
図2図2は、図1に示す空気入りタイヤのトレッド部の平面図である。
図3図3は、図2に示す外側センター主溝と周方向細溝とにより区画されるセカンド陸部の詳細図である。
図4図4は、図3に示す標章部の詳細図である。
図5図5は、図4のA-A断面図である。
図6図6は、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
[実施形態]
[空気入りタイヤ]
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。
【0017】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向、つまり車両装着時の方向が指定されている。即ち、図1に示す空気入りタイヤ1は、車両装着時に車両の内側に向く側が車両装着方向内側となり、車両装着時に車両の外側に向く側が車両装着方向外側となる。なお、車両装着方向内側及び車両装着方向外側の指定は、車両に装着した場合に限らない。例えば、リム組みした場合に、タイヤ幅方向において、車両の内側及び外側に対するリムの向きが決まっているため、空気入りタイヤ1は、リム組みした場合、タイヤ幅方向において、車両装着方向内側及び車両装着方向外側に対する向きが指定される。また、空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向を示す装着方向表示部(図示省略)を有する。装着方向表示部は、例えば、タイヤのサイドウォール部8に付されたマークや凹凸によって構成される。例えば、ECER30(欧州経済委員会規則第30条)が、車両装着状態にて車両装着方向外側となるサイドウォール部8に装着方向表示部を設けることを義務付けている。
【0018】
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ子午断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にタイヤ周方向に延在して環状に形成されるトレッド部2が配設されており、トレッド部2は、ゴム組成物から成るトレッドゴム4を有している。また、トレッド部2の表面、即ち、空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド接地面3として形成され、トレッド接地面3は、空気入りタイヤ1の輪郭の一部を構成している。トレッド部2には、トレッド接地面3にタイヤ周方向に延びる主溝30が複数形成されており、複数の主溝30により、トレッド部2の表面には複数の陸部20が区画されている。
【0019】
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両外側端にはショルダー部5が位置しており、ショルダー部5のタイヤ径方向内側には、一対のサイドウォール部8が配設されている。即ち、一対のサイドウォール部8は、トレッド部2のタイヤ幅方向両側に配設されている。このように形成されるサイドウォール部8は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出する部分を形成している。
【0020】
一対のサイドウォール部8のそれぞれのタイヤ径方向内側には、ビード部10が配設されている。ビード部10は、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されており、即ち、ビード部10は、一対がタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側に配設されている。また、各ビード部10には、それぞれビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外側にはビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤを束ねて円環状に形成される環状部材になっている。ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配設されるゴム部材になっている。
【0021】
また、トレッド部2にはベルト層14が配設されている。ベルト層14は、複数のベルト141、142と、ベルトカバー143とが積層される多層構造によって構成されており、本実施形態では、2層のベルト141、142が積層されている。ベルト層14を構成するベルト141、142は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対するベルトコードの傾斜角として定義されるベルト角度が、所定の範囲内(例えば、20°以上55°以下)になっている。また、2層のベルト141、142は、ベルト角度が互いに異なっている。このため、ベルト層14は、2層のベルト141、142が、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成されている。つまり、2層のベルト141、142は、それぞれのベルト141、142が有するベルトコードが互いに交差する向きで配設される、いわゆる一対の交差ベルトとして設けられている。
【0022】
また、ベルトカバー143は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対するベルトカバーコードの傾斜角として定義されるベルト角度が、所定の範囲内(例えば、0°以上10°以下)になっている。また、ベルトカバー143は、例えば、1本あるいは複数本のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して成るストリップ材であり、このストリップ材を2層のベルト141、142のタイヤ径方向外側から、タイヤ回転軸を中心とする螺旋状に巻き付けることにより構成される。
【0023】
ベルト層14のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部8のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス層13が連続して設けられている。このため、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、いわゆるラジアルタイヤとして構成されている。カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設される一対のビード部10間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。
【0024】
詳しくは、カーカス層13は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外側に巻き返されている。ビードフィラー12は、このようにカーカス層13がビード部10で折り返されることにより、ビードコア11のタイヤ径方向外側に形成される空間に配置されるゴム材になっている。また、ベルト層14は、このように一対のビード部10間に架け渡されるカーカス層13における、トレッド部2に位置する部分のタイヤ径方向外側に配置されている。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードを、コートゴムで被覆して圧延加工することによって構成されている。カーカスプライを構成するカーカスコードは、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつ、タイヤ周方向にある角度を持って複数並設されている。
【0025】
ビード部10における、ビードコア11及びカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側やタイヤ幅方向外側には、リムフランジRに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム17が配設されている。また、カーカス層13の内側、或いは、当該カーカス層13の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ16がカーカス層13に沿って形成されている。インナーライナ16は、空気入りタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内面18を形成している。
【0026】
[トレッドパターン]
図2は、図1に示す空気入りタイヤ1のトレッド部2の平面図である。トレッド部2に形成される主溝30は、本実施形態では3本が形成されている。3本の主溝30は、タイヤ赤道面CLの両側に1本ずつ配置されるセンター主溝31、32と、2本のセンター主溝31、32のうち一方のセンター主溝31のタイヤ幅方向外側に配置される1本のショルダー主溝33とを有している。以下の説明では、2本のセンター主溝31、32のうち、タイヤ赤道面CLに対して車両装着方向内側に配置されるセンター主溝31は、内側センター主溝31と呼び、タイヤ赤道面CLに対して車両装着方向外側に配置されるセンター主溝32は、外側センター主溝32と呼ぶ。また、ショルダー主溝33は、内側センター主溝31と接地端Tとの間に配設されており、即ち、ショルダー主溝33は、内側センター主溝31より車両装着方向内側に配置されている。これらにより、3本の主溝30は、全て接地端Tのタイヤ幅方向内側に配設されている。
【0027】
ここでいう接地端Tは、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みして規定内圧を充填し、静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に相当する荷重を加えられたときの、トレッド接地面3における平板に接触する領域のタイヤ幅方向の両最外端をいい、タイヤ周方向に連続する。ここでいう規定リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、規定内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、規定荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
【0028】
また、主溝30とは、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在する縦溝をいう。一般に主溝30は、3.0mm以上の溝幅を有し、6.0mm以上の溝深さを有し、摩耗末期を示すトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を内部に有する。本実施形態では、主溝30は、溝幅が5.0mm以上25.0mm以下の範囲内になっており、溝深さが5.0mm以上12.0mm以下の範囲内になっている。また、本実施形態では、主溝30は、タイヤ赤道面CLとトレッド接地面3とが交差するタイヤ赤道線(センターライン)と実質的に平行になっている。主溝30は、タイヤ周方向に直線状に延在してもよく、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅する波形状やジグザグ状に設けられてもよい。
【0029】
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における、対向する溝壁同士の距離の最大値として測定される。陸部が切欠部や面取部をエッジ部に有する構成では、溝長さ方向を法線方向とする断面視にて、トレッド接地面3と溝壁の延長線との交点を測定点として、溝幅が測定される。また、溝がタイヤ周方向にジグザグ状あるいは波状に延在する構成では、溝壁の振幅の中心線を測定点として、溝幅が測定される。
【0030】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド接地面3から溝底までの距離の最大値として測定される。また、溝が部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0031】
また、トレッド部2には、タイヤ周方向に延びて溝幅が主溝30の溝幅よりも狭い周方向細溝35が形成されている。周方向細溝35は、外側センター主溝32よりも車両装着方向外側に配置されており、外側センター主溝32と接地端Tとの間に配設されている。このため、周方向細溝35は、主溝30と同様に接地端Tのタイヤ幅方向内側に配設されている。このように形成される周方向細溝35は、溝幅が3.0mm以上7.0mm以下の範囲内になっている。また、周方向細溝35は、溝深さが主溝30の溝深さよりも浅くなっており、周方向細溝35の溝深さは、3.0mm以上7.0mm以下の範囲内になっている。
【0032】
トレッド部2は、これらのように形成される複数の主溝30と周方向細溝35とにより、複数の陸部20が区画されており、具体的には、センター陸部21と、セカンド陸部22と、ショルダー陸部23とを有している。このうち、センター陸部21は、内側センター主溝31と外側センター主溝32との間に位置する陸部20になっている。セカンド陸部22は、内側センター主溝31とショルダー主溝33との間、及び外側センター主溝32と周方向細溝35との間に位置する陸部20になっている。ショルダー陸部23は、ショルダー主溝33のタイヤ幅方向外側、及び周方向細溝35のタイヤ幅方向外側に位置する陸部20になっている。即ち、セカンド陸部22とショルダー陸部23とは、それぞれタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側に配置されている。
【0033】
また、トレッド部2には、タイヤ幅方向に延びるラグ溝40が複数形成されている。ラグ溝40としては、センターラグ溝41と、セカンドラグ溝42と、ショルダーラグ溝43と、クローズドラグ溝45とが設けられている。このうち、センターラグ溝41は、センター陸部21に形成されており、一端が内側センター主溝31に開口し、他端はセンター陸部21内で終端している。また、セカンドラグ溝42は、内側センター主溝31とショルダー主溝33とにより区画されるセカンド陸部22に形成されており、一端がショルダー主溝33に開口し、他端はセカンド陸部22内で終端している。また、ショルダーラグ溝43は、タイヤ幅方向における両側のショルダー陸部23にそれぞれ形成され、接地端Tに対してタイヤ幅方向に交差すると共に、タイヤ幅方向内側の端部がショルダー陸部23内で終端している。また、クローズドラグ溝45は、周方向細溝35に対してタイヤ幅方向に交差して形成されており、一端が外側センター主溝32と周方向細溝35とにより区画されるセカンド陸部22内で終端し、他端が周方向細溝35のタイヤ幅方向外側に位置するショルダー陸部23内で終端している。
【0034】
これらのように形成されるセンターラグ溝41、セカンドラグ溝42、ショルダーラグ溝43、クローズドラグ溝45は、それぞれ複数がタイヤ周方向に並んで配置されている。また、各ラグ溝40は、両端のいずれもが主溝30に開口しておらず、各陸部20は、ラグ溝40によってタイヤ周方向に分断されることなく形成されている。このため、各陸部20は、タイヤ周方向に連続して形成される、いわゆるリブ状の陸部20になっている。なお、各ラグ溝40は、タイヤ幅方向に直線状に延在してもよく、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に傾斜したり、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に湾曲したり屈曲したりして形成されていてもよい。
【0035】
また、トレッド部2には、複数のサイプ38が形成されている。ここでいうサイプ38は、溝幅がラグ溝40の溝幅より狭い細溝状に形成されるものであり、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みし、規定内圧の内圧条件で、無負荷時にはサイプ38を構成する壁面同士が接触しないが、平板上で垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面の部分に、サイプ38が配置される陸部20が位置する際、またはサイプ38が配置される陸部20の倒れ込み時には、当該サイプ38を構成する壁面同士、或いは壁面に設けられる部位の少なくとも一部が、陸部20の変形によって互いに接触するものをいう。このように形成されるサイプ38は、内側センター主溝31とショルダー主溝33との間に位置するセカンド陸部22と、ショルダー主溝33のタイヤ幅方向外側に位置するショルダー陸部23とに形成されている。
【0036】
さらに、トレッド部2のトレッド接地面3には、トレッド接地面3から凹んで形成される標章部50が配設されている。本実施形態では、標章部50は、主溝30と周方向細溝35との間に配置されており、即ち、標章部50は、外側センター主溝32と周方向細溝35とにより区画されるセカンド陸部22に形成されている。このため、標章部50は、タイヤ赤道面CLよりも車両装着方向外側に配置されている。標章部50は、任意の文字や図形、記号である標章を表す部位になっている。
【0037】
図3は、図2に示す外側センター主溝32と周方向細溝35とにより区画されるセカンド陸部22の詳細図である。周方向細溝35に対して交差するラグ溝40であるクローズドラグ溝45は、標章部50が形成されるセカンド陸部22を区画する主溝30である外側センター主溝32と、クローズドラグ溝45の終端部48とのタイヤ幅方向における距離が異なる長尺ラグ溝46と短尺ラグ溝47とを有している。つまり、複数のクローズドラグ溝45は、延在方向における長さが異なる長尺ラグ溝46と短尺ラグ溝47とを有している。クローズドラグ溝45である長尺ラグ溝46と短尺ラグ溝47とは、溝幅が2.0mm以上8.0mm以下の範囲内になっており、溝深さが1.0mm以上7.0mm以下の範囲内になっている。
【0038】
長尺ラグ溝46と短尺ラグ溝47とは、ショルダー陸部23内で終端する側のそれぞれの終端部48のタイヤ幅方向における位置が、ほぼ同じ位置になっている。これに対し、セカンド陸部22内で終端する側の長尺ラグ溝46の終端部48と短尺ラグ溝47の終端部48とは、タイヤ幅方向における位置が互いに異なっており、これにより、長尺ラグ溝46の終端部48と短尺ラグ溝47の終端部48とは、外側センター主溝32とのタイヤ幅方向における距離が互いに異なっている。
【0039】
詳しくは、長尺ラグ溝46は、全長が短尺ラグ溝47の全長よりも長くなっており、長尺ラグ溝46の終端部48のタイヤ幅方向における位置は、短尺ラグ溝47の終端部48のタイヤ幅方向における位置よりもタイヤ幅方向内側に位置している。このため、長尺ラグ溝46は、終端部48と外側センター主溝32とのタイヤ幅方向における距離BLが、短尺ラグ溝47の終端部48と外側センター主溝32とのタイヤ幅方向における距離BSよりも小さくなっている。これらのように形成される長尺ラグ溝46と短尺ラグ溝47とは、タイヤ周方向に交互に配置されている。
【0040】
セカンド陸部22に形成される標章部50は、タイヤ周方向における位置が、セカンド陸部22に形成されるラグ溝40同士の間に位置しており、具体的には、標章部50は、タイヤ周方向における位置が長尺ラグ溝46同士の間に位置している。
【0041】
[標章部]
図4は、図3に示す標章部50の詳細図である。標章部50は、本実施形態では文字が表されており、複数の文字がタイヤ周方向に並んでいる。標章部50によって表されるそれぞれの文字は、トレッド接地面3に形成される溝からなり、溝が組み合わされることにより、標章部50は平面視において任意の文字を表す形状になっている。即ち、標章部50は、文字を構成する線が、トレッド接地面3に形成される溝により形成されている。このように、トレッド接地面3に形成される溝が組み合わされることにより文字を表す標章部50の溝の溝幅Wは、W≧1.5mmになっている。なお、標章部50の溝の溝幅Wは、2mm≦W≦4mmの範囲内であるのが好ましい。
【0042】
図5は、図4のA-A断面図である。標章部50を形成する溝は、トレッド接地面3からの深さが変化しておらず、標章部50は、トレッド接地面3からの深さが一律になっている。なお、この場合における「深さが一律」とは、標章部50においてトレッド接地面3からの深さが最も浅い位置と最も深い位置との深さ差が、0.1mm以下となる状態をいう。このように、トレッド接地面3からの深さが一律になっている標章部50の深さDは、主溝30の溝深さHに対して、D/H≦0.1になっている。なお、主溝30の溝深さHに対する標章部50の深さDは、0.05≦D/H≦0.08の範囲内であるのが好ましい。また、標章部50の深さDは、0.1mm以上1.0mm以下の範囲内であるのが好ましい。
【0043】
複数の文字がタイヤ周方向に並んで形成される標章部50は、タイヤ周方向における位置が長尺ラグ溝46同士の間に位置しているため、標章部50は、一部の位置のタイヤ周方向における位置が、短尺ラグ溝47のタイヤ周方向における位置と同じ位置になっている。
【0044】
また、標章部50は、タイヤ周方向における位置が長尺ラグ溝46同士の間に位置しているため、標章部50のタイヤ周方向の全長ELは、タイヤ周方向に隣り合う長尺ラグ溝46同士のタイヤ周方向における距離、即ち、長尺ラグ溝46のタイヤ周方向におけるピッチPよりも短くなっている。標章部50のタイヤ周方向の全長ELは、長尺ラグ溝46のタイヤ周方向におけるピッチPに対して、0.3≦EL/P≦0.7の範囲内であるのが好ましい。
【0045】
また、標章部50は、タイヤ幅方向における最大幅EWが、標章部50が形成される陸部20であるセカンド陸部22のタイヤ幅方向における幅RWに対して、0.05≦EW/RW≦0.5の範囲内になっている。この場合におけるセカンド陸部22のタイヤ幅方向における幅RWは、タイヤ周方向における位置が標章部50のタイヤ周方向における位置と同じ位置となる範囲内における、最大幅になっている。
【0046】
さらに、標章部50は、セカンド陸部22を区画する外側センター主溝32や周方向細溝35に対してタイヤ幅方向に離間しており、タイヤ周方向における位置が標章部50の一部のタイヤ周方向における位置と同じ位置になる短尺ラグ溝47に対しても、タイヤ幅方向に離間している。また、標章部50は、タイヤ周方向おいて標章部50の両側に位置する長尺ラグ溝46に対しても、離間して配置されている。標章部50と、外側センター主溝32や周方向細溝35、短尺ラグ溝47、長尺ラグ溝46との距離Fは、それぞれ2.0mm以上になっている。また、標章部50と、外側センター主溝32や周方向細溝35、短尺ラグ溝47、長尺ラグ溝46との距離Fは、標章部50の最大幅EWに対して、30%以上であるのが好ましい。
【0047】
これらのように形成される標章部50は、本実施形態ではタイヤ周上の8箇所に配置されており、8箇所の標章部50は、タイヤ周方向にほぼ等間隔で配置されている。8箇所の標章部50は、それぞれの標章部50の全長ELの総和ELALLが、標章部50が形成される陸部20の位置でのタイヤ周長RL、即ち、セカンド陸部22の位置でのタイヤ周長RLに対して、0.01≦ELALL/RL≦0.30の範囲内になっている。
【0048】
[作用・効果]
本実施形態に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、ビード部10にリムホイールを嵌合することによってリムホイールに空気入りタイヤ1をリム組みし、内部に空気を充填してインフレートした状態で車両に装着する。その際に、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向が指定されているため、指定されている方向で車両に装着する。即ち、サイドウォール部8に付された装着方向表示部によって指定されている方向で車両に装着する。
【0049】
空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド部2のトレッド接地面3のうち下方に位置するトレッド接地面3が路面に接触しながら空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド接地面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド接地面3と路面との間の水が主溝30や周方向細溝35、ラグ溝40等の溝に入り込み、これらの溝でトレッド接地面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド接地面3は路面に接地し易くなり、トレッド接地面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
【0050】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、トレッド部2に、トレッド接地面3から凹んで形成される標章部50を有しており、標章部50によって任意の情報を表示することが可能になっている。ここで、このようにトレッド接地面3から凹んで標章部50が形成される場合、標章部50の位置にはトレッドゴム4が配置されないことになるため、標章部50の大きさや配置される位置によっては、タイヤ周上におけるトレッドゴム4の体積が大きく不均一になる虞がある。トレッドゴム4の体積が大きく不均一になった場合、空気入りタイヤ1のユニフォミティが悪化する虞があるが、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、標章部50は、タイヤ周方向における位置がラグ溝40同士の間に位置している。このため、トレッド部2に、トレッド接地面3から凹む標章部50を形成しても、トレッドゴム4が配置されない部分が、タイヤ周上において局部的に集中することを抑制することができ、タイヤ周上におけるトレッドゴム4の体積が不均一になることを、極力低減することができる。これにより、トレッドゴム4の体積がタイヤ周上で大きく不均一になることに起因して、ユニフォミティが悪化することを抑制することができる。この結果、ユニフォミティの悪化を抑制しつつ、標章部50を配置することができ、即ち、ユニフォミティの悪化を抑制しつつ、トレッド接地面3に標章を配置することができる。
【0051】
また、ラグ溝40同士の間の部分は、多くのトレッドゴム4が必要になるが、空気入りタイヤ1の製造時における加硫成形の工程で、加硫成形に用いる金型におけるラグ溝40同士の間の部分にトレッドゴム4が十分に行き渡らなかった場合、トレッド接地面3の一部が若干凹んだような外観故障が発生する虞がある。これに対し、ラグ溝40同士の間に、トレッド接地面3から凹んで形成される標章部50を配置した場合、ラグ溝40同士の間の部分で必要なトレッドゴム4の量を減らすことができるため、タイヤの加硫成形時に、金型におけるラグ溝40同士の間の部分に、トレッドゴム4を適切に行き渡らせることができる。これにより、タイヤの加硫成形時に、金型におけるラグ溝40同士の間の部分に行き渡らせるトレッドゴム4が不足することに起因して、加硫成形後のトレッド接地面3の一部が、若干凹んだような形状になることを抑制することができる。この結果、ラグ溝40同士の間の部分での外観故障の発生を抑制することができる。
【0052】
また、標章部50は、トレッド接地面3からの深さが一律であるため、標章部50を形成する位置の周囲において、トレッドゴム4の体積が大きく不均一になることを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実にユニフォミティの悪化を抑制しつつ、標章部50を配置することができる。
【0053】
また、標章部50は、標章部50を形成する溝の溝幅WがW≧1.5mmであるため、標章部50の視認性を確保することができる。この結果、ユニフォミティの悪化を抑制しつつ、標章部50の視認性を確保することができる。また、標章部50を形成する溝の溝幅WがW≧1.5mmであることにより、標章部50の視認性を確保することができ、標章部50によって外観を向上させることができる。この結果、デザイン性を向上させることができる。
【0054】
また、標章部50の深さDは、主溝30の溝深さHに対してD/H≦0.1であり、主溝30の溝深さHに対して大幅に浅いため、標章部50の体積が大きくなり過ぎることを抑制することができる。これにより、標章部50を形成することによって、トレッドゴム4が配置されない部分が、タイヤ周上において局部的に集中することをより確実に抑制することができ、トレッドゴム4の体積がタイヤ周上で大きく不均一になることを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実にユニフォミティの悪化を抑制しつつ、標章部50を配置することができる。
【0055】
また、ラグ溝40は長尺ラグ溝46と短尺ラグ溝47とを有すると共に、標章部50は、タイヤ周方向における位置が長尺ラグ溝46同士の間に位置するため、標章部50を配設する位置では、長尺ラグ溝46と標章部50とをタイヤ周方向に交互に並べることができる。これにより、トレッドゴム4が配置されない部分をタイヤ周方向に分散させることができ、トレッドゴム4の体積がタイヤ周上で大きく不均一になることを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実にユニフォミティの悪化を抑制しつつ、標章部50を配置することができる。
【0056】
また、長尺ラグ溝46と短尺ラグ溝47とは、タイヤ周方向に交互に配置されるため、タイヤ周方向において長尺ラグ溝46同士の間に位置する標章部50は、タイヤ周方向において短尺ラグ溝47が位置する部分付近に配置することができる。これにより、標章部50は、タイヤ周方向における位置を、複数のラグ溝40のうち体積が比較的小さい短尺ラグ溝47のタイヤ周方向における位置と同じ位置にすることができるため、トレッドゴム4が配置されない部分が、タイヤ周上において局部的に集中することを抑制することができる。従って、より多くのラグ溝40を配置することによって濡れた路面等での走行性能を確保しつつ、トレッドゴム4の体積がタイヤ周上で大きく不均一になることを抑制することができる。この結果、ユニフォミティの悪化を抑制しつつ、標章部50を配置することと走行性能の確保とを両立することができる。
【0057】
また、標章部50は、主溝30と周方向細溝35との間に配置されるため、陸部20の剛性を確保しつつ標章部50を形成することができる。つまり、標章部50が形成される陸部20は、標章部50の分、トレッドゴム4の体積が小さくなるため、剛性が低くなり易くなるが、周方向細溝35によって区画される陸部20は、タイヤ幅方向における両側が主溝30によって区画される陸部20と比較して剛性を確保し易くなっている。このため、標章部50を、主溝30と周方向細溝35との間に配置し、周方向細溝35によって区画される陸部20に標章部50を形成することにより、標章部50を形成する陸部20の剛性を確保することができる。これにより、トレッド部2に標章部50を形成した際における陸部20の剛性を確保することができ、陸部20の剛性の低下に起因する走行性能の低下を抑制することができる。この結果、走行性能の低下を抑えつつ、標章部50を配置することができる。
【0058】
また、標章部50は、タイヤ赤道面CLよりも車両装着方向外側に配置されるため、空気入りタイヤ1単体の状態のみでなく、空気入りタイヤ1を車両に装着した状態でも、標章部50を視認できる機会を増やすことができる。この結果、標章部50による情報の報知性を高めることができる。
【0059】
[変形例]
なお、上述した実施形態では、標章部50がタイヤ周方向における間に配置されるラグ溝40は、両端が陸部20内で終端するクローズドラグ溝45になっているが、標章部50がタイヤ周方向における間に配置されるラグ溝40は、両端が陸部20内で終端していなくてもよい。標章部50は、タイヤ周方向における位置が、少なくとも一端が陸部20内で終端するラグ溝40同士の間に位置することにより、トレッドゴム4が配置されない部分が、タイヤ周上において局部的に集中することを抑制することができる。これにより、タイヤ周上におけるトレッドゴム4の体積が不均一になることを、極力低減することができるため、ユニフォミティの悪化を抑制しつつ、標章部50を配置することができる。
【0060】
また、上述した実施形態では、標章部50は、外側センター主溝32と周方向細溝35とにより区画されるセカンド陸部22に配置されているが、標章部50は、セカンド陸部22以外に配置してもよく、タイヤ幅方向における両側が主溝30によって区画される陸部20に配置してもよい。その際に、標章部50は、タイヤ赤道面CL上に位置する陸部20以外の陸部20に配置するのが好ましい。タイヤ赤道面CL上に位置する陸部20は、車両の走行時に大きな荷重が長時間作用し易く、走行性能への影響が大きい陸部20であるため、タイヤ赤道面CL上に位置する陸部20以外の陸部20に標章部50を配置することにより、走行性能への影響を極力抑えつつ、標章部50を配置することができる。
【0061】
また、上述した実施形態では、標章部50は、複数の文字がタイヤ周方向に並ぶものになっているが、標章部50が、これ以外の形態であってもよい。標章部50は、1つの文字であってもよく、図形や記号であったり、これらの組み合わせであったりしてもよい。また、標章部50は、タイヤ周上に8箇所以外の数で配置されていてもよく、また、標章部50は、複数の標章部50が、タイヤ幅方向における位置が異なる陸部20に配置されていてもよい。
【0062】
また、トレッド部2のトレッドパターンは、実施形態以外のものであってもよい。トレッドパターンに関わらず、少なくとも一端が陸部20内で終端するラグ溝40同士の間の位置に、トレッド接地面3から凹んで形成される標章部50を配置することにより、ユニフォミティの悪化を抑制しつつ、標章を配置することができる。
【0063】
[実施例]
図6は、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、ユニフォミティについての試験を行った。
【0064】
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが245/40R18 97Yサイズの空気入りタイヤ1を、JATMA標準のリムホイールにリム組みして、規定内圧を充填することにより行った。ユニフォミティの試験は、試験を行う空気入りタイヤにおいて、タイヤユニフォミティJASO C607「自動車タイヤのユニフォミティ試験法」に規定の方法に準じてラジアルフォースバリエーション(RFV)を測定した。ユニフォミティの評価は、この試験の測定結果を、後述する従来例1を100とした指数評価によって行い、指数評価の数値が大きいほど均一性がよく、ユニフォミティが優れていることを示している。
【0065】
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例1、2の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1~6との8種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例1の空気入りタイヤは、特許文献1のように、標章部50がサイプを跨いで形成されている。また、従来例2の空気入りタイヤは、特許文献2のように、標章部50は、陸部20における、ラグ溝40が形成されないプレーン部分に形成されている。
【0066】
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1~6は全て、標章部50のタイヤ周方向における位置がラグ溝40同士の間に位置している。さらに、実施例1~6に係る空気入りタイヤ1は、標章部50の深さDや、標章部50の溝幅W、主溝30の溝深さHに対する標章部50の深さD(D/H)が、それぞれ異なっている。
【0067】
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、図6に示すように、実施例1~6に係る空気入りタイヤ1は、従来例1、2に対して、ユニフォミティを向上させることができることが分かった。つまり、実施例1~6に係る空気入りタイヤ1は、ユニフォミティの悪化を抑制しつつ、標章を配置することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 トレッド接地面
4 トレッドゴム
8 サイドウォール部
10 ビード部
11 ビードコア
12 ビードフィラー
13 カーカス層
14 ベルト層
20 陸部
21 センター陸部
22 セカンド陸部
23 ショルダー陸部
30 主溝
31 内側センター主溝
32 外側センター主溝
33 ショルダー主溝
35 周方向細溝
38 サイプ
40 ラグ溝
41 センターラグ溝
42 セカンドラグ溝
43 ショルダーラグ溝
45 クローズドラグ溝
46 長尺ラグ溝
47 短尺ラグ溝
48 終端部
50 標章部
図1
図2
図3
図4
図5
図6