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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20231012BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231012BHJP
   B60C 9/04 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C1/00 A
B60C9/04 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019161202
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021037881
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】山村 健太
(72)【発明者】
【氏名】野口 侑利
(72)【発明者】
【氏名】池ケ谷 誠斗
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135436(JP,A)
【文献】特開平07-195906(JP,A)
【文献】特開平08-216608(JP,A)
【文献】特開2003-072317(JP,A)
【文献】特開2001-039116(JP,A)
【文献】特開2009-035129(JP,A)
【文献】特開2005-255016(JP,A)
【文献】特開2010-000901(JP,A)
【文献】特開2015-164985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚のカーカスプライと、前記カーカスプライをコートするカーカスコート用ゴムと、前記カーカスプライのタイヤ径方向外側に配置されるキャップトレッドゴムと、を備える自動二輪車用タイヤにおいて、
前記キャップトレッドゴムは、タイヤ接地面を構成するとともにタイヤ径方向外側に凸で円弧状に湾曲して延び、
前記キャップトレッドゴムは、ゴム100質量部に対し窒素吸着比表面積(NSA)が70~150m/gカーボンブラックを60~120質量部含有し、
前記キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 CAP)と前記カーカスコート用ゴムの100%モジュラス(M100 カーカス)が下記式を満たし、
前記キャップトレッドゴムの0℃におけるtanδ(tanδ0℃ CAP)と前記カーカスコート用ゴムの60℃におけるtanδ(tanδ60℃ カーカス)が下記式を満たし、
前記(M100 CAP)が1.8~2.5MPaであり、かつ前記(tanδ60℃ カーカス)が0.07~0.2である、
ことを特徴とする自動二輪車用タイヤ。
0.3≦(M100 CAP)/(M100 カーカス)≦1.2
1.0≦(tanδ0℃ CAP)/(tanδ60℃ カーカス)≦10.0
【請求項2】
前記キャップトレッドゴムは、前記ゴム100質量部中、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが60質量部以上を占め、かつ前記ゴム100質量部に対し、硫黄の配合割合が0.5~6質量部であることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記カーカスプライが2枚以下であり、1枚あたりのカーカスプライの厚みが0.7mm~1.5mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記カーカスプライを構成するコードの径が0.3mm~1.2mmであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用タイヤに関するものであり、詳しくは、実用上十分なウェットトラクション性、旋回性および低転がり抵抗性を有する自動二輪車用タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車用タイヤは左右一対のビード部およびサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるとともにタイヤ接地面を構成するキャップトレッドゴムを有するトレッド部から主に構成されている。タイヤの内側にはカーカスプライが設けられ、カーカスプライの両端部はビードコアをタイヤ内側から外側へ包みこむように折り返されている。キャップトレッドゴムは、タイヤ接地面を構成するとともにタイヤ径方向外側に凸で円弧状に湾曲して延びている。
【0003】
一方、自動二輪車用タイヤは、雨天時の転倒を防ぐために四輪以上にウェットトラクション性(ウェット路面での発進性)が求められる。ウェットトラクション性を高めるには、キャップトレッドを柔らかくする;低温のtanδを高くする;等の手法がある。しかし、これらの手法では剛性不足による旋回性能低下や転がり抵抗性が悪化するという問題点がある。
【0004】
なお、自動二輪車用タイヤのウェットトラクション性の向上を図る技術としては、例えば特許文献1に開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-321287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、実用上十分なウェットトラクション性、旋回性および低転がり抵抗性を有する自動二輪車用タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、キャップトレッドゴムの組成、キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 CAP)とカーカスコート用ゴムの100%モジュラス(M100 カーカス)の比率、およびキャップトレッドゴムの0℃におけるtanδ(tanδ0℃ CAP)とカーカスコート用ゴムの60℃におけるtanδ(tanδ60℃ カーカス)の比率を特定化することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0008】
1.少なくとも1枚のカーカスプライと、前記カーカスプライをコートするカーカスコート用ゴムと、前記カーカスプライのタイヤ径方向外側に配置されるキャップトレッドゴムと、を備える自動二輪車用タイヤにおいて、
前記キャップトレッドゴムは、タイヤ接地面を構成するとともにタイヤ径方向外側に凸で円弧状に湾曲して延び、
前記キャップトレッドゴムは、ゴム100質量部に対し窒素吸着比表面積(NSA)が70~150m/gカーボンブラックを60~120質量部含有し、
前記キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 CAP)と前記カーカスコート用ゴムの100%モジュラス(M100 カーカス)が下記式を満たすとともに、
前記キャップトレッドゴムの0℃におけるtanδ(tanδ0℃ CAP)と前記カーカスコート用ゴムの60℃におけるtanδ(tanδ60℃ カーカス)が下記式を満たす
ことを特徴とする自動二輪車用タイヤ。
0.3≦(M100 CAP)/(M100 カーカス)≦1.2
1.0≦(tanδ0℃ CAP)/(tanδ60℃ カーカス)≦10.0
2.前記キャップトレッドゴムは、前記ゴム100質量部中、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが60質量部以上を占め、かつ前記ゴム100質量部に対し、硫黄の配合割合が0.5~6質量部であることを特徴とする前記1に記載の自動二輪車用タイヤ。
3.前記カーカスプライが2枚以下であり、1枚あたりのカーカスプライの厚みが0.7mm~1.5mmであることを特徴とする前記1または2に記載の自動二輪車用タイヤ。
4.前記カーカスプライを構成するコードの径が0.3mm~1.2mmであることを特徴とする前記1~3のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動二輪車用タイヤは、少なくとも1枚のカーカスプライと、前記カーカスプライをコートするカーカスコート用ゴムと、前記カーカスプライのタイヤ径方向外側に配置されるキャップトレッドゴムと、を備え、前記キャップトレッドゴムは、タイヤ接地面を構成するとともにタイヤ径方向外側に凸で円弧状に湾曲して延び、前記キャップトレッドゴムは、ゴム100質量部に対し窒素吸着比表面積(NSA)が70~150m/gカーボンブラックを60~120質量部含有し、前記キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 CAP)と前記カーカスコート用ゴムの100%モジュラス(M100 カーカス)が0.3≦(M100 CAP)/(M100 カーカス)≦1.2を満たすとともに、 前記キャップトレッドゴムの0℃におけるtanδ(tanδ0℃ CAP)と前記カーカスコート用ゴムの60℃におけるtanδ(tanδ60℃ カーカス)が1.0≦(tanδ0℃ CAP)/(tanδ60℃ カーカス)≦10.0を満たすことを特徴としているので、実用上十分なウェットトラクション性、旋回性および低転がり抵抗性を有する。
【0010】
上述のように、ウェットトラクション性を高めるには、キャップトレッドを柔らかくする;低温のtanδを高くする;等の手法があるが、これらの手法では剛性不足による旋回性能低下や転がり抵抗性が悪化するという問題点がある。すなわち、ウェットトラクション性、旋回性および低転がり抵抗性は背反性能である。本発明では、キャップトレッドゴムの組成、キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 CAP)とカーカスコート用ゴムの100%モジュラス(M100 カーカス)の比率、およびキャップトレッドゴムの0℃におけるtanδ(tanδ0℃ CAP)とカーカスコート用ゴムの60℃におけるtanδ(tanδ60℃ カーカス)の比率を特定化することを特徴とする。まず、(M100 CAP)/(M100 カーカス)を規定し、キャップトレッドゴムとカーカスコート用ゴムの剛性を適切な範囲にすることで、サイドウォール部の剛性を確保し、優れたウェットトラクション性および旋回性を両立している。また、(tanδ0℃ CAP)/(tanδ60℃ カーカス)を適切な範囲にすることで、優れたウェットトラクション性および低転がり抵抗性を両立できる。このようにして、背反性能であるウェットトラクション性、旋回性および低転がり抵抗性を実用上十分なレベルで維持することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明の自動二輪車用タイヤに用いられるカーカスプライは、タイヤ幅方向両側のビードコア間に架け渡されてタイヤの骨格を形成する部材である。なお、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向を指す。本発明において、1枚のカーカスプライの厚みは、0.7mm~1.5mmであることが好ましい。1枚のカーカスプライの厚みがこの範囲外である場合、および/または、カーカスプライが2枚以下である場合に、本発明の効果をさらに高めることができる。
【0013】
カーカスプライの種類はとくに制限されず公知のものの中から適宜選択することができるが、本発明の効果がさらに向上するという観点から、カーカスプライを構成するコードは有機繊維を含むことが好ましい。有機繊維としては、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアクリレート繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、レーヨン繊維、リヨセル繊維等を例示することができる。なお、該コードの径は0.3mm~1.2mmであるのが好ましい。
【0014】
本発明では、キャップトレッドゴムの組成が特定される。すなわち、キャップトレッドゴムは、ゴム100質量部に対し窒素吸着比表面積(NSA)が70~150m/gカーボンブラックを60~120質量部含有する。
【0015】
前記カーボンブラックの配合割合が60~120質量部の範囲外である場合、および/または、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が70~150m/gの範囲外である場合は、実用上十分なウェットトラクション性、旋回性および低転がり抵抗性を同時に得ることができない。
【0016】
ここで、本発明の効果向上の観点から、下記の形態が好ましい。
(1)前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記カーボンブラックの配合割合は、80~110質量部が好ましい。
(2)前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は70~120m/gが好ましい。
なお窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K 6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0017】
本発明において、前記キャップトレッドゴム中のゴム成分は、例えばジエン系ゴムが挙げられ、具体的には天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。本発明で使用されるジエン系ゴムは、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
【0018】
また、前記キャップトレッドゴムには、前記した成分に加えて、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛などのキャップトレッドゴムに一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0019】
なお、ウェットトラクション性、旋回性および低転がり抵抗性をさらに向上するという観点から、前記キャップトレッドゴムは、前記ゴム100質量部中、SBRが60質量部以上、好ましくは80~100質量部を占め、かつ前記ゴム100質量部に対し、硫黄の配合割合が0.5~6質量部、好ましくは1.0~3.0質量部であることが好適である。
【0020】
また、加硫後のキャップトレッドゴムの最大厚み(カーカスとの接触面からタイヤ径方向におけるタイヤ表面までの最大長さ)はとくに制限されないが、例えば7.0mm~11.0mmであるのが好ましい。
【0021】
本発明において、前記カーカスプライをコートするカーカスコート用ゴムの組成は、下記で説明する(M100 CAP)/(M100 カーカス)および(tanδ0℃ CAP)/(tanδ60℃ カーカス)の関係を満たすことができれば、とくに制限されず、適宜選択することができる。
例えば、ジエン系ゴム、シリカやカーボンブラック等の各種充填剤、カップリング剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛などのカーカスコート用ゴムに一般的に配合されている各種成分を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0022】
加硫後のカーカス層の厚み(前記カーカスプライと前記カーカスコート用ゴムの合計厚み)はとくに制限されないが、例えば1.0mm~2.5mmであるのが好ましい。
【0023】
また、本発明の自動二輪車用タイヤにおけるその他の部材、例えばビード部やサイドウォール部等を構成する部材についても、各成分の配合割合はとくに制限されず、適宜選択することができる。
例えばその他の部材のゴム組成物として、ジエン系ゴム、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛等の一般的に配合されている各種成分を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0024】
本発明の自動二輪車用タイヤは、前記キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 CAP)と前記カーカスコート用ゴムの100%モジュラス(M100 カーカス)が、下記式を満たすことが必要である。
【0025】
0.3≦(M100 CAP)/(M100 カーカス)≦1.2
【0026】
すなわち、(M100 CAP)/(M100 カーカス)が0.3~1.2の範囲であることにより、上述のように、サイドウォール部の剛性が確保され、優れたウェットトラクション性および旋回性が得られる。
【0027】
また、本発明の自動二輪車用タイヤは、前記キャップトレッドゴムの0℃におけるtanδ(tanδ0℃ CAP)と前記カーカスコート用ゴムの60℃におけるtanδ(tanδ60℃ カーカス)が下記式を満たすを満たすことが必要である。
【0028】
1.0≦(tanδ0℃ CAP)/(tanδ60℃ カーカス)≦10.0
【0029】
すなわち、(tanδ0℃ CAP)/(tanδ60℃ カーカス)が1.0~10.0の範囲であることにより、上述のように、優れたウェットトラクション性および低転がり抵抗性を両立できる。
【0030】
本発明で言う100%モジュラスは、JIS K6251に準拠し、500mm/分で引張り試験を行い100%伸長時の応力を測定した値(MPa)とする。
また本発明で言うtanδ(0℃)およびtanδ(60℃)は、(株)東洋精機製作所製、粘弾性スペクトロメーターを用い、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度0℃および60℃の条件でそれぞれ測定される。
【0031】
前記(M100 CAP)、(M100 カーカス)、(tanδ0℃ CAP)、(tanδ60℃ カーカス)の調整は、例えば可塑剤、充填剤、加硫剤または架橋剤の増減および種類の変更により可能である。
【0032】
なお本発明の効果が一層向上するという観点から、前記(M100 CAP)/(M100 カーカス)は、0.4~1.1であることが好ましく、0.5~0.8であることがさらに好ましい。また前記(tanδ0℃ CAP)/(tanδ60℃ カーカス)は、3.0~7.0であることが好ましく、3.0~5.0であることがさらに好ましい。
【0033】
また本発明の自動二輪車用タイヤは、従来の自動二輪車用タイヤの製造方法に従って製造が可能である。
【実施例
【0034】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0035】
実施例1~8および比較例1~2
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を16リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、各種キャップトレッドゴム組成物を得た。
【0036】
一方、カーカス用コートゴムを常法にしたがい調製し、可塑剤もしくは充填剤の種類および量を変更することにより、表1に示す各種(M100 カーカス)および(tanδ60℃ カーカス)を有するカーカス用コートゴムを得た。
【0037】
次に、カーカスプライを構成するコードとしてポリエステル繊維を用い、常法にしたがい該コードを該カーカス用コートゴムで被覆した。カーカスプライの厚みおよびコードの径は、表1で示す通りであり、カーカス層の厚み(カーカスプライとカーカス用コートゴムのタイヤ径方向における合計厚み)は2.4mmであった。
【0038】
(M100 CAP)、(M100 カーカス)、(tanδ0℃ CAP)および(tanδ60℃ カーカス)を上述のようにして測定した。結果を表1に示す。
【0039】
前記カーカスコート用ゴムでコートされたカーカスプライと、前記キャップトレッドゴムとを組み込み、タイヤサイズ100/90-10の各種自動二輪車用試験タイヤを製造した。なおカーカスプライ、カーカスコート用ゴムおよびキャップトレッドゴム以外の各部材の条件は、各種自動二輪車用試験タイヤ間で同一とした。
【0040】
得られた各種自動二輪車用試験タイヤについて、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
ウェットトラクション性:試験タイヤを100ccの排気量の試験車両(スクーター)に装着し、空気圧をフロント175kPa、リヤ225kPaに調整し、水深1mmの舗装路面上を走行させ、時速6~21km/hの加速時における後輪のスリップ率を計測した。結果は、実施例1の値を100とする指数で示した。指数が大きいほど、ウェットトラクション性に優れることを意味する。
【0042】
旋回性:前記100ccの排気量の試験車両(スクーター)を用いテストドライバーの実車走行による官能試験により測定した。評価は5段階評価とし、「3」点を基準とし、相対評価した。
5:「3」点に対し、旋回性に顕著な向上が見られる。
4:「3」点に対し、旋回性に向上が見られる。
3:基準
2:「3」点に対し、旋回性に劣っていた。
1:「3」点に対し、旋回性に顕著に劣っていた。
【0043】
転がり抵抗性:規定の空気圧200kPaを充填した試験タイヤをドラム表面に垂直方向に押付け、転動時の単位移動距離におけるエネルギー損失(進行方向逆向きの力)を測定した。結果は、実施例1の値を100とする指数で示した。指数が大きいほど、低転がり抵抗性であることを意味する。
【0044】
【表1】
【0045】
*1:NR(TSR20)
*2:SBR(日本ゼオン(株)製 NIPOL 1502)
*3:カーボンブラック(キャボットジャパン社製商品名ショウブラックN330、NSA=80m/g)
*4:ステアリン酸(日油(株)製ステアリン酸YR)
*5:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*6:老化防止剤(FLEXSYS社製SANTOFLEX 6PPD)
*7:アロマオイル(出光興産(株)製ダイアナプロセスNH-60)
*8:硫黄(四国化成工業(株)製ミュークロンOT-20)
*9:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラー NS-P)
【0046】
上記の表1から明らかなように、各実施例で調製された自動二輪車用タイヤは、キャップトレッドゴムの組成、キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 CAP)とカーカスコート用ゴムの100%モジュラス(M100 カーカス)の比率、およびキャップトレッドゴムの0℃におけるtanδ(tanδ0℃ CAP)とカーカスコート用ゴムの60℃におけるtanδ(tanδ60℃ カーカス)の比率を特定化したので、比較例に比べ、ウェットトラクション性、旋回性および低転がり抵抗性を実用上十分なレベルで維持している。
これに対し、比較例1は、カーボンブラックの配合量が本発明で規定する上限を超え、(M100 CAP)/(M100 カーカス)が本発明で規定する下限未満であるので、ウェットトラクション性が悪化した。
比較例2は、カーボンブラックの配合量が本発明で規定する下限未満であり、(M100 CAP)/(M100 カーカス)が本発明で規定する下限未満であり、(tanδ0℃ CAP)/(tanδ60℃ カーカス)が本発明で規定する上限を超えているので、旋回性および転がり抵抗性が悪化した。