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特許7364878タイヤ製造用加硫金型及びそれを用いた空気入りタイヤの製造方法
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  • 特許-タイヤ製造用加硫金型及びそれを用いた空気入りタイヤの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】タイヤ製造用加硫金型及びそれを用いた空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20231012BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20231012BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20231012BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019179154
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021053927
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 範好
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-016408(JP,A)
【文献】特開2009-160870(JP,A)
【文献】特開2011-116277(JP,A)
【文献】特開2007-290442(JP,A)
【文献】特開2011-240558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 35/00-35/18
B29D 30/00-30/72
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤを製造するための加硫金型において、前記空気入りタイヤの外表面を成形するための成形面を有し、前記成形面は前記空気入りタイヤの構成部材の端部位置に対応する部位に配置された粗面領域と該粗面領域以外の部位に配置された平滑領域とを含み、前記粗面領域がタイヤ周方向に沿って環状に延在し、前記粗面領域のタイヤ径方向の幅が6mm~10mmの範囲にあり、前記粗面領域を前記平滑領域よりも粗くし、前記粗面領域の表面粗さが5μm~25μmの範囲にあることを特徴とするタイヤ製造用加硫金型。
【請求項2】
前記粗面領域の表面粗さが前記平滑領域の表面粗さの1.2倍~5.0倍であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ製造用加硫金型。
【請求項3】
前記粗面領域は前記平滑領域に隣接する端部から中央部に向かうに連れて表面粗さが段階的に徐々に粗くなる複数の区域を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ製造用加硫金型。
【請求項4】
前記複数の区域の表面粗さの変化割合が前記中央部に近づくに連れて大きくなることを特徴とする請求項に記載のタイヤ製造用加硫金型。
【請求項5】
前記複数の区域の隣り合う区域の表面粗さの変化割合が2倍未満であることを特徴とする請求項又はに記載のタイヤ製造用加硫金型。
【請求項6】
前記粗面領域は前記平滑領域に隣接する端部から中央部に向かうに連れて表面粗さが連続的に徐々に粗くなることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ製造用加硫金型。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載のタイヤ製造用加硫金型に未加硫状態の空気入りタイヤを投入し、該空気入りタイヤを内側からブラダーにより加圧した状態で該空気入りタイヤの加硫を行うことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造用加硫金型及びそれを用いた空気入りタイヤの製造方法に関し、更に詳しくは、エア残りに起因する外観不良を効果的に抑制することを可能にしたタイヤ製造用加硫金型及びそれを用いた空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤを製造する場合、加硫金型内に未加硫状態の空気入りタイヤを投入し、その空気入りタイヤを内側からブラダーにより加圧した状態で該空気入りタイヤの加硫を行う。このような加硫工程において、空気入りタイヤと加硫金型との間にエアが残留すると外観不良が発生し、屑タイヤが発生したり、手直しが必要になったりするという問題がある。特に、タイヤ構成部材の端部位置(例えば、カーカス層の巻き上げ端部の位置やビードフィラーの上端部の位置)にはエアが残留し易く、外観不良が生じ易い。
【0003】
その対策として、エア溜まりが発生し易い箇所にベントホールを追加することが行われているが(例えば、特許文献1~3参照)、その場合、ベントホールによって形成されるスピューの切断工数が増加し、或いは、スピューの増加に起因して製品タイヤの見た目が悪化するという不都合がある。そのため、ベントホールを増加させることなく、エア残りに起因する外観不良を抑制することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-88310号公報
【文献】特開平8-25364号公報
【文献】特開平8-47929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、エア残りに起因する外観不良を効果的に抑制することを可能にしたタイヤ製造用加硫金型及びそれを用いた空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のタイヤ製造用加硫金型は、空気入りタイヤを製造するための加硫金型において、前記空気入りタイヤの外表面を成形するための成形面を有し、前記成形面は前記空気入りタイヤの構成部材の端部位置に対応する部位に配置された粗面領域と該粗面領域以外の部位に配置された平滑領域とを含み、前記粗面領域がタイヤ周方向に沿って環状に延在し、前記粗面領域のタイヤ径方向の幅が6mm~10mmの範囲にあり、前記粗面領域を前記平滑領域よりも粗くし、前記粗面領域の表面粗さが5μm~25μmの範囲にあることを特徴とするものである。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤの製造方法は、上述したタイヤ製造用加硫金型に未加硫状態の空気入りタイヤを投入し、該空気入りタイヤを内側からブラダーにより加圧した状態で該空気入りタイヤの加硫を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るタイヤ製造用加硫金型では、成形面が空気入りタイヤの構成部材の端部位置に対応する部位に配置された粗面領域と該粗面領域以外の部位に配置された平滑領域とを含み、粗面領域を平滑領域よりも粗くしている。加硫時の未加硫ゴムの流動は、加硫金型の成形面が滑らかであると遅くなり、粗いと速くなる傾向がある。本発明では、この特性を利用し、外観不良が発生し易い部分(空気入りタイヤの構成部材の端部位置に対応する部位)では、加硫金型の成形面の表面粗さを局所的に粗くすることにより、当該部分のゴム流れを良化させ、エアの滞留を効果的に抑制することができる。また、表面粗さを局所的に粗くした部分では未加硫ゴムと加硫金型の成形面との間に隙間が形成され、その隙間をエアが通り易くなる。これにより、ベントホール等のエア排出部の設置数を最小限にしながら、エア残りに起因する外観不良を効果的に抑制することができる。
【0009】
本発明において、粗面領域の表面粗さは平滑領域の表面粗さの1.2倍~5.0倍であることが好ましい。これにより、エアの滞留を効果的に抑制すると共に加硫後の製品タイヤの見た目が悪化するのを回避することができる。
【0010】
粗面領域はタイヤ周方向に沿って環状に延在し、粗面領域のタイヤ径方向の幅が6mm~10mmの範囲にあることが好ましい。これにより、エアの滞留を効果的に抑制することができる。
【0011】
粗面領域の表面粗さは5μm~25μmの範囲にあることが好ましい。これにより、エアの滞留を効果的に抑制すると共に加硫後の製品タイヤの見た目が悪化するのを回避することができる。
【0012】
粗面領域は平滑領域に隣接する端部から中央部に向かうに連れて表面粗さが段階的に徐々に粗くなる複数の区域を有することが好ましい。これにより、円滑なゴム流れを生じさせることができる。この場合、複数の区域の表面粗さの変化割合が中央部に近づくに連れて大きくなることが好ましい。つまり、中央部に近づくほど表面粗さが加速度的に増加するような配置とすることにより、更に円滑なゴム流れを生じさせることができる。但し、複数の区域の隣り合う区域の表面粗さの変化割合が2倍未満であることが好ましい。複数の区域の表面粗さの変化割合が過大であると、区域の境界において円滑なゴム流れが阻害される恐れがある。
【0013】
或いは、粗面領域は平滑領域に隣接する端部から中央部に向かうに連れて表面粗さが連続的に徐々に粗くなることが好ましい。これにより、円滑なゴム流れを生じさせることができる。
【0014】
本発明によれば、上述したタイヤ製造用加硫金型に未加硫状態の空気入りタイヤを投入し、該空気入りタイヤを内側からブラダーにより加圧した状態で該空気入りタイヤの加硫を行うことにより、エア残りに起因する外観不良を効果的に抑制しながら、空気入りタイヤを製造することができる。
【0015】
本発明において、表面粗さはJIS-B0601:2013に規定される最大高さ粗さRzである。また、評価の方式及び手順並びに測定器の特性は、JIS-B0633:2001及びJIS-B0651:2001の規定に準拠する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明で使用されるタイヤ製造用加硫金型の一例を示す子午線断面図である。
図2】本発明で製造される空気入りタイヤの一例を示す子午線半断面図である。
図3図1のタイヤ製造用加硫金型のサイドプレートを示す平面図である。
図4図3における粗面領域の具体例を示す平面図である。
図5図3における粗面領域の他の具体例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明で使用されるタイヤ製造用加硫金型Mを示し、図2は本発明で製造される空気入りタイヤの一例を示し、図3はタイヤ製造用加硫金型Mのサイドプレートを示し、図4及び図5はそれぞれ粗面領域の具体例を示すものである。図2において、CLはタイヤ中心線である。
【0018】
図1に示すように、このタイヤ製造用加硫金型Mは、空気入りタイヤTのサイドウォール部を成形する一対のサイドプレート1,1と、空気入りタイヤTのビード部を成形する一対のビードリング2,2と、空気入りタイヤTのトレッド部を成形する複数のセクター3から構成されている。これら一対のサイドプレート1,1と一対のビードリング2,2と複数のセクター3とが組み合わされた状態で、タイヤ製造用加硫金型Mは、空気入りタイヤTのトレッド部、サイドウォール部及びビード部の外表面を成形するための成形面Sを形成するようになっている。
【0019】
空気入りタイヤTは、図2に示すように、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部11と、該トレッド部11の両側に配置された一対のサイドウォール部12,12と、これらサイドウォール部12のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部13,13とを備えている。
【0020】
一対のビード部13,13間にはカーカス層14が装架されている。このカーカス層14は、タイヤ径方向に延びる複数本のカーカスコードを含み、各ビード部13に配置されたビードコア15の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられている。ビードコア15の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー16が配置されている。一方、トレッド部11におけるカーカス層14の外周側には複数層のベルト層17が埋設されている。これらベルト層17はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本のベルトコードを含み、かつ層間でベルトコードが互いに交差するように配置されている。
【0021】
このような構成を有する空気入りタイヤTは、加硫時において、タイヤ構成部材のタイヤ径方向の端部位置(例えば、カーカス層14の巻き上げ端部14eの位置やビードフィラー16の上端部16eの位置)にエアが残留し易く、その部位に外観不良が生じ易い。つまり、カーカス層14の巻き上げ端部14eの位置やビードフィラー16の上端部16eの位置では剛性差に起因して屈曲や皴が形成され易く、また、部材端部位置による段差が未加硫タイヤ表面にも現れ易く、その部分にエアが滞留し易いのである。なお、エアが残留し易いタイヤ構成部材の端部位置としては、ビード部補強層やサイド部補強層の端部位置やサイドウォールゴム層のスプライス位置等も挙げることができる。
【0022】
このような状況に鑑みて、上述したタイヤ製造用加硫金型Mにおいては、図3に示すように、成形面Sにおけるタイヤ構成部材のタイヤ径方向の端部位置に対応する部位に粗面領域Xが形成されている。より具体的には、タイヤ構成部材の端部位置から成形面Sに向けた垂線が成形面Sと交差する位置をA部とした場合(図1参照)、A部を含む部位に粗面領域Xが配置されることが望ましい。図3において、粗面領域Xはカーカス層14の巻き上げ端部14eの位置に対応する部位に形成されている。このような粗面領域Xはタイヤ周方向に沿って環状に延在している。粗面領域Xはタイヤ周方向に沿って連続することが好ましいが、タイヤ周方向に沿って断続的に形成されていても良い。成形面Sにおける粗面領域X以外の部位は平滑領域Yである。そして、粗面領域Xは平滑領域Yよりも粗くなっている。
【0023】
上述したタイヤ製造用加硫金型Mでは、成形面Sにおけるタイヤ構成部材の端部位置に対応する部位に粗面領域Xが形成され、粗面領域X以外の部位に平滑領域Yが形成されると共に、粗面領域Xが平滑領域Yよりも粗くなっているので、外観不良が発生し易い部分(タイヤ構成部材の端部位置に対応する部位)におけるゴム流れを良化させ、エアの滞留を効果的に抑制することができる。また、表面粗さを局所的に粗くした粗面領域Xでは未加硫ゴムと加硫金型Mの成形面Sとの間に隙間が形成され、その隙間をエアが通り易くなる。これにより、ベントホール等のエア排出部の設置数を最小限にしながら、エア残りに起因する外観不良を効果的に抑制することができる。
【0024】
上記タイヤ製造用加硫金型Mにおいて、粗面領域Xの表面粗さ(最大高さ粗さRz)は平滑領域の表面粗さ(最大高さ粗さRz)の1.2倍~5.0倍であると良い。これにより、エアの滞留を効果的に抑制すると共に加硫後の製品タイヤの見た目が悪化するのを回避することができる。この倍率が1.2倍未満であるとゴム流れの改善効果が低下し、逆に5.0倍超であると粗面領域Xと平滑領域Yとの差が大き過ぎて製品タイヤの見た目が悪くなる。
【0025】
上記タイヤ製造用加硫金型Mにおいて、粗面領域Xはタイヤ周方向に沿って環状に延在し、粗面領域Xのタイヤ径方向の幅Wが6mm~10mmの範囲にあると良い。これにより、エアの滞留を効果的に抑制することができる。ここで、粗面領域Xの幅Wが6mmも小さいと粗面領域Xがエアの滞留を生じ易い部分から外れることでゴム流れの改善効果が低下し、逆に10mmよりも大きいと特定部位のゴム流れを改善する効果が低下する。なお、タイヤ構成部材の端部位置から成形面Sに向けた垂線が成形面Sと交差する位置をA部とした場合、A部を中心としてタイヤ径方向に±3mmの範囲に粗面領域Xが配置されることが望ましい。
【0026】
上記タイヤ製造用加硫金型Mにおいて、粗面領域Xの表面粗さは5μm~25μmの範囲にあると良い。これにより、エアの滞留を効果的に抑制すると共に加硫後の製品タイヤの見た目が悪化するのを回避することができる。ここで、粗面領域Xの表面粗さが5μm未満であるとゴム流れの改善効果が低下し、25μm超であると加硫後の製品タイヤの外表面が粗くなり、見た目が悪くなる。なお、平角領域Yの表面粗さは10μm以下であれば良い。
【0027】
粗面領域Xは全域にわたって一様の表面粗さを有していても良いが、表面粗さに勾配を持たせることも可能である。図4において、粗面領域Xは平滑領域Yに隣接する端部から中央部(即ち、粗面領域Xの幅方向の中央部)に向かうに連れて表面粗さが段階的に徐々に粗くなる複数の区域X1,X2,X3を有している。この場合、円滑なゴム流れを生じさせることができる。特に、複数の区域X1~X3の表面粗さの変化割合が中央部に近づくに連れて大きくなっていると良い。つまり、隣り合う領域間の表面粗さの変化割合が中央部に近づくに連れて大きくなっていると良い。より具体的には、例えば、平滑領域Yの表面粗さをRz(a)とし、粗面領域Xの区域X1の表面粗さをRz(b)とし、粗面領域Xの区域X2の表面粗さをRz(c)とし、粗面領域Xの区域X3の表面粗さをRz(d)としたとき、Rz(b)/Rz(a)<Rz(c)/Rz(b)<Rz(d)/Rz(c)のような関係を満足することが望ましい。このように粗面領域Xの中央部に近づくほど表面粗さが加速度的に増加するような配置とすることにより、更に円滑なゴム流れを生じさせることができる。但し、複数の区域X1~X3の隣り合う区域の表面粗さの変化割合は2倍未満であると良い。つまり、Rz(b)/Rz(a)<Rz(c)/Rz(b)<Rz(d)/Rz(c)<2.0であると良い。複数の区域X1~X3の表面粗さの変化割合が過大であると、区域X1~X3の境界において円滑なゴム流れが阻害される恐れがある。
【0028】
図5において、粗面領域Xは平滑領域Yに隣接する端部から中央部(即ち、粗面領域Xの幅方向の中央部)に向かうに連れて表面粗さが連続的に徐々に粗くなっている。この場合も、円滑なゴム流れを生じさせることができる。
【0029】
上述のように構成されるタイヤ製造用加硫金型Mを用いて空気入りタイヤTを製造する場合、加硫金型Mに未加硫状態の空気入りタイヤTを投入する。次いで、空気入りタイヤTを内側からブラダーBにより加圧した状態で、空気入りタイヤTをその内外から加熱することにより、空気入りタイヤTの加硫を行う。その際、タイヤ製造用加硫金型Mの成形面Sの適所に粗面領域Xが配設されているので、エア残りに起因する外観不良を効果的に抑制しながら、空気入りタイヤTを製造することができる。
【0030】
上述した実施形態では、セクショナルタイプのタイヤ製造用加硫金型の例を示したが、本発明は2分割タイプを含む各種のタイヤ製造用加硫金型に適用可能である。
【実施例
【0031】
タイヤサイズ245/40R18の空気入りタイヤを製造するにあたって、タイヤ製造用加硫金型の構造を種々異ならせた(従来例1,2及び実施例1~5)。即ち、従来例1,2及び実施例1~5においては、ビードフィラートップ位置から成形面Sに向けた垂線が成形面Sと交差する位置をA部とし、A部を中心とする幅2mmであって成形面Sにおいてタイヤ周方向に環状に延在する帯状領域aと、その幅方向両外側に隣接する幅2mmの帯状領域bと、その幅方向両外側に隣接する幅2mmの帯状領域cとを規定したとき、これら帯状領域a~cの表面粗さRz(a)~Rz(c)を表1のように設定した。また、従来例2においてはビードフィラートップ位置に対応するA部に複数のベントホールを設置し、従来例1及び実施例1~5においてはビードフィラートップ位置に対応するA部にはベントホールを設置しなかった。
【0032】
これら従来例1,2及び実施例1~5のタイヤ製造用加硫金型を用いて空気入りタイヤを加硫し、以下の評価方法により、外観不良の発生率及び見た目の奇麗さを評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0033】
外観不良の発生率:
各加硫金型によりそれぞれ200本のタイヤを加硫し、得られたタイヤのトレッド部にエア残りに起因する外観不良が発生した本数を計測し、外観不良の発生率を求めた。
【0034】
見た目の奇麗さ:
得られたタイヤのトレッド部の見た目の奇麗さについて、10人のパネラーによる評価を行い、その評価点の合計値を求めた。評価結果は従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど見た目が奇麗であることを意味する。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から判るように、実施例1~5では、従来例1との対比において、外観不良の発生率が大幅に低減されていた。従来例2では、外観不良を抑制する効果が得られるものの、得られたタイヤの見た目の奇麗さが損なわれていた。
【符号の説明】
【0037】
1 サイドプレート
2 ビードリング
3 セクター
M タイヤ製造用加硫金型
S 成形面
T 空気入りタイヤ
X 粗面領域
Y 平滑領域
図1
図2
図3
図4
図5