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特許7364902リベット接合継手構造の製造方法、リベット接合継手構造および自動車部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】リベット接合継手構造の製造方法、リベット接合継手構造および自動車部品
(51)【国際特許分類】
   B21J 15/00 20060101AFI20231012BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20231012BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20231012BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20231012BHJP
   B21J 15/02 20060101ALI20231012BHJP
   B21J 15/14 20060101ALI20231012BHJP
   F16B 5/04 20060101ALI20231012BHJP
   F16B 19/06 20060101ALI20231012BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20231012BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B21J15/00 W
B23K26/21 G
B23K9/00 101Z
B23K11/11 540
B21J15/02 N
B21J15/02 P
B21J15/00 F
B21J15/14 G
F16B5/04 A
F16B19/06
B60R19/04 M
B62D25/04 B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020060161
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021154377
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】富士本 博紀
(72)【発明者】
【氏名】今村 高志
(72)【発明者】
【氏名】松井 翔
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-27455(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176371(WO,A1)
【文献】特表2006-507128(JP,A)
【文献】特開昭51-57366(JP,A)
【文献】国際公開第2015/8589(WO,A1)
【文献】特開2017-159896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 15/00
B23K 26/21
B23K 9/00
B23K 11/11
B21J 15/02
B21J 15/14
F16B 5/04
F16B 19/06
B60R 19/04
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通し穴が形成された複数の部材を、前記通し穴の深さ方向に沿って見た場合に前記通し穴の少なくとも一部が重なるように重ね合わせる工程と、
前記通し穴に、軸部と前記軸部の一方の端部に設けられた頭部とを有する金属製のリベットを挿通する工程と、
前記リベットを一対の電極で挟み、前記軸部の軸線に沿った方向において前記複数の部材のうちで前記頭部に最も近い部材と前記頭部との間に隙間を生じさせた状態で、前記リベットを加圧しかつ前記一対の電極に通電して前記リベットに抵抗発熱を生じさせることにより、前記頭部が設けられていない方の前記軸部の端部に変形部を形成しかつ、前記軸部の一部を前記隙間へ拡径させて拡径部を形成する工程と、
を備える
ことを特徴とするリベット接合継手構造の製造方法。
【請求項2】
前記隙間の前記軸部の軸線に沿った方向における距離が、0.1mm以上1.4mm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のリベット接合継手構造の製造方法。
【請求項3】
前記部材の1つ以上が鋼板であり、前記リベットが鋼材である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリベット接合継手構造の製造方法。
【請求項4】
前記部材のうちの少なくとも1つの部材の引張強さが980MPa以上である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造の製造方法。
【請求項5】
前記複数の部材を重ね合わせる工程の前に、前記部材の、少なくとも前記通し穴の周辺に接着層又はシール層を設ける工程を、さらに有する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造の製造方法。
【請求項6】
スポット溶接、レーザ溶接、およびアーク溶接からなる群から選択される一種以上の溶接方法によって、前記部材同士を接合する工程を、さらに有する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造の製造方法。
【請求項7】
前記リベットを挿通する工程の前、又は前記変形部および前記拡径部を形成する工程の後で、
前記リベットの前記軸部の軸線に平行な断面視で、前記頭部又は前記変形部の少なくとも一方の頂面が、前記軸部の軸線に沿った方向において、前記リベット近傍の前記部材の面から、前記軸部から離れる側へ向けて0.6mm離れた位置よりも前記軸部側に位置するように、前記複数の部材のうちの少なくとも1つの部材を変形させる工程をさらに備える
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造の製造方法。
【請求項8】
通し穴が形成された複数の部材を重ね合わせ、軸部と頭部とを有するリベットを用いて接合したリベット接合継手構造であって、
前記通し穴に前記軸部が挿通され、
前記軸部の一方の端部に設けられた頭部と前記軸部の他方の端部に設けられた締結部とによって前記複数の部材がかしめられ、
前記複数の部材のうちで前記頭部に最も近い部材と前記頭部との間に拡径部が設けられている
ことを特徴とするリベット接合継手構造。
【請求項9】
前記軸部の直径を100%とした場合、前記拡径部の円相当径としての直径が、105%以上130%以下である
ことを特徴とする請求項8に記載のリベット接合継手構造。
【請求項10】
前記拡径部の厚みが0.1mm以上1.4mm以下である
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のリベット接合継手構造。
【請求項11】
前記部材の1つ以上が鋼板であり、前記リベットが鋼材である
ことを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造。
【請求項12】
前記部材のうちの少なくとも1つの部材の引張強さが980MPa以上である
ことを特徴とする請求項8~11のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造。
【請求項13】
前記部材の、少なくとも前記通し穴の周辺に接着層又はシール層が設けられている
ことを特徴とする請求項8~12のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造。
【請求項14】
前記部材間に溶接部が設けられた
ことを特徴とする請求項8~13のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造。
【請求項15】
前記リベットの前記軸部の軸線に平行な断面視で、前記頭部又は前記締結部の少なくとも一方の頂面が、前記軸部の軸線に沿った方向において、前記リベット近傍の前記部材の面から、前記軸部から離れる側へ向けて0.6mm離れた位置よりも前記軸部側にある
ことを特徴とする請求項8~14のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造。
【請求項16】
請求項8~15のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造を備える自動車部品。
【請求項17】
バンパー、又はBピラーである
ことを特徴とする請求項16に記載の自動車部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リベット接合継手構造の製造方法、リベット接合継手構造および自動車部品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の軽量化および衝突安全性の向上を目的として、構造部材としての高強度鋼板の適用が進められている。一方、高強度鋼板から構成されるスポット溶接継手には、母材鋼板の引張強さが780MPaを超えると十字引張強さ(Cross Tension Strength、CTS)が低下するという課題がある。また、鋼板の引張強さが1500MPaを超えると、十字引張強さのみならず引張せん断強さ(Tensile Shear Strength、TSS)も低下する傾向にある。
【0003】
スポット溶接継手の強度が低下すると、非常に厳しい条件における衝突などにより部材が変形した時に溶接部の破断が生じる虞がある。従って、たとえ鋼板の強度を向上させたとしても、部材全体としての耐荷重が不足する虞がある。そこで、高強度鋼板から構成される継手の強度を向上させる接合方法が求められている。
【0004】
継手の十字引張強さを向上させる手段の一つとして、リベット接合がある。リベット接合とは、鋼板に通し穴を形成し、この通し穴に頭部と軸部とを有するリベットを挿通させ、リベットの軸部の先端を室温で塑性変形させ、そしてリベットの頭部および塑性変形部によって鋼板をかしめる接合法である。高強度鋼板に限らないが、リベット接合継手構造の製造方法に関し、例えば以下のような技術が検討されている。
【0005】
特許文献1には、締結具によって2個以上の構成部材を互いに結合させる方法が開示されている。この方法では、各構成部材は、穴を備えるとともに、穴が互いに重なり合って締結具を穴内において受けるように配置され、穴内に配置される締結具は、機械的に加圧および加熱されることで、締結具が変形させられる。これにより、構成部材が互いに結合させられる。
【0006】
特許文献2には、1対の電極の間にリベットの頭部と先端部分とをはさんで通電加熱すると共に押圧してリベッティングする方法が開示されている。この方法では、リベットの頭部裏面と被リベット材との間に、断面積が小さく、且つ、リベット穴にリベットの軸部が十分密着充填すると共に、又は、それ以後に、頭部裏面と被リベット材とが接触するような高さを有する間座部を設けて、リベッティングする。
【0007】
特許文献3には、リベットを電極ではさみ、電気を通して抵抗熱により加熱し、加圧成形を行うリベットの締結方法において、通電加熱後一旦成形側頭部電極をリベットから離して、リベットの先端部まで加熱をゆきわたらせるリベットの締結方法が開示されている。
【0008】
特許文献4には、結合されるべき少なくとも2部材に貫通して形成されるリベット穴を少なくとも一部テーパ状穴に形成し、このリベット穴にリベットを嵌合させ、通電かしめによりリベットの軸部をテーパ状穴に沿った形状に膨出変形させ、通電かしめ後のリベットの熱収縮によりリベットの軸部とテーパ状穴とを密着させ隙間なく結合させるリベットの通電かしめによる部材結合方法が開示されている。ここで、通電かしめ時のリベット温度は700~900℃であるとされている。
【0009】
特許文献5には、複数のワークをリベットを用いて結合するリベット締め方法であって、複数のワークに挿通したリベットを1対の電極間に挟んで加圧した状態で通電し、通電によるリベット自体の抵抗発熱でリベットを軟化させて、リベットの端部をかしめるリベット締め方法が開示されている。
【0010】
特許文献1~5では、種々の形態のリベット接合が検討されている。しかし特許文献1~5のいずれにおいても、リベット接合継手構造の十字引張強さおよび引張せん断強さについて何ら検討されておらず、また、これらを向上させるための構成についても検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特表2006-507128号公報
【文献】特開昭55-27456号公報
【文献】特開昭53-78486号公報
【文献】特開昭61-165247号公報
【文献】特開平10-205510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、十字引張強さがより高い構造を提供可能なリベット接合継手構造の製造方法、並びに、十字引張強さがより高いリベット接合継手構造および自動車部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の一態様に係るリベット接合継手構造の製造方法は、
通し穴が形成された複数の部材を、前記通し穴の深さ方向に沿って見た場合に前記通し穴の少なくとも一部が重なるように重ね合わせる工程と、
前記通し穴に、軸部と前記軸部の一方の端部に設けられた頭部とを有する金属製のリベットを挿通する工程と、
前記リベットを一対の電極で挟み、前記軸部の軸線に沿った方向において前記複数の部材のうちで前記頭部に最も近い部材と前記頭部との間に隙間を生じさせた状態で、前記リベットを加圧しかつ前記一対の電極に通電して前記リベットに抵抗発熱を生じさせることにより、前記頭部が設けられていない方の前記軸部の端部に変形部を形成しかつ、前記軸部の一部を前記隙間へ拡径させて拡径部を形成する工程と、
を備えることを特徴とする。
(2)上記(1)に記載のリベット接合継手構造の製造方法では、
前記隙間の前記軸部の軸線に沿った方向における距離が、0.1mm以上1.4mm以下であってもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載のリベット接合継手構造の製造方法では、
前記部材の1つ以上が鋼板であり、前記リベットが鋼材でもよい。
(4)上記(1)~(3)のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造の製造方法では
前記部材のうちの少なくとも1つの部材の引張強さが980MPa以上であってもよい。
(5)上記(1)~(4)のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造の製造方法では
前記複数の部材を重ね合わせる工程の前に、前記部材の、少なくとも前記通し穴の周辺に接着層又はシール層を設ける工程を、さらに有してもよい。
(6)上記(1)~(5)のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造の製造方法では
スポット溶接、レーザ溶接、およびアーク溶接からなる群から選択される一種以上の溶接方法によって、前記部材同士を接合する工程を、さらに有してもよい。
(7)上記(1)~(6)のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造の製造方法では
前記リベットを挿通する工程の前、又は前記変形部および前記拡径部を形成する工程の後で、
前記リベットの前記軸部の軸線に平行な断面視で、前記頭部又は前記変形部の少なくとも一方の頂面が、前記軸部の軸線に沿った方向において、前記リベット近傍の前記部材の面から、前記軸部から離れる側へ向けて0.6mm離れた位置よりも前記軸部側に位置するように、前記複数の部材のうちの少なくとも1つの部材を変形させる工程をさらに備えてもよい。
【0014】
(8)本発明の一態様に係るリベット接合継手構造は、
通し穴が形成された複数の部材を重ね合わせ、軸部と頭部とを有するリベットを用いて接合したリベット接合継手構造であって、
前記通し穴に前記軸部が挿通され、
前記軸部の一方の端部に設けられた頭部と前記軸部の他方の端部に設けられた締結部とによって前記複数の部材がかしめられ、
前記複数の部材のうちで前記頭部に最も近い部材と前記頭部との間に拡径部が設けられていることを特徴とする。
(9)上記(8)に記載のリベット接合継手構造では、
前記軸部の直径を100%とした場合、前記拡径部の円相当径としての直径が、105%以上130%以下であってもよい。
(10)上記(8)又は(9)に記載のリベット接合継手構造では、
前記拡径部の厚みが0.1mm以上1.4mm以下であってもよい。
(11)上記(8)~(10)のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造では、
前記部材の1つ以上が鋼板であり、前記リベットが鋼材であってもよい。
(12)上記(8)~(11)のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造では、
前記部材のうちの少なくとも1つの部材の引張強さが980MPa以上であってもよい。
(13)上記(8)~(12)のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造では、
前記部材の、少なくとも前記通し穴の周辺に接着層又はシール層が設けられていてもよい。
(14)上記(8)~(13)のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造では、
前記部材間に溶接部が設けられてもよい。
(15)上記(8)~(14)のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造では、
前記リベットの前記軸部の軸線に平行な断面視で、前記頭部又は前記締結部の少なくとも一方の頂面が、前記軸部の軸線に沿った方向において、前記リベット近傍の前記部材の面から、前記軸部から離れる側へ向けて0.6mm離れた位置よりも前記軸部側にあってもよい。
【0015】
(16)本発明の一態様に係る自動車部品は、上記(8)~(15)のいずれか一項に記載のリベット接合継手構造を備える。
(17)上記(16)に記載の自動車部品は、バンパー、又はBピラーであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、十字引張強さがより高い構造を提供可能なリベット接合継手構造の製造方法、並びに、十字引張強さがより高いリベット接合継手構造および自動車部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法を説明するための概略的な断面図であり、部材を示す図である。
図2】第1実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法を説明するための概略的な断面図であり、部材とリベットを示す図である。
図3】第1実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法を説明するための概略的な断面図であり、図2のリベットを電極によって挟んだ状態を示す図である。
図4】第1実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法を説明するための概略的な断面図であり、リベット接合が完了した状態を示す図である。
図5】第1実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法によって得られたリベット接合継手構造の一例を説明するための概略的な断面図である。
図6】第1実施形態に係るリベット接合継手構造における通し穴の形状を説明するための概略的な平面図である。
図7】第1実施形態に係るリベット接合継手構造における通し穴の他の形状を説明するための概略的な平面図である。
図8】第1実施形態に係るリベット接合継手構造における通し穴の他の形状を説明するための概略的な平面図である。
図9】第1実施形態に係るリベット接合継手構造における通し穴の他の形状を説明するための概略的な平面図である。
図10】第1実施形態に係るリベット接合継手構造における通し穴の他の形状を説明するための概略的な平面図である。
図11】第1実施形態に係るリベット接合継手構造における通し穴の他の形状を説明するための概略的な平面図である。
図12】第1実施形態に係るリベット接合継手構造の他の例を説明するための概略的な断面図である。
図13】第1実施形態に係る部材に設けられた接着層又はシール層を説明するための概略的な平面図である。
図14】第2実施形態に係るリベット接合継手構造の一例を説明するための概略的な断面図である。
図15】第2実施形態に係るリベット接合継手構造の一例を説明するための概略的な断面図である。
図16】第2実施形態に係るリベット接合継手構造の一例を説明するための概略的な断面図である。
図17】本発明の一実施形態に係る自動車部品の一例であるBピラーの断面図である。
図18】本発明の一実施形態に係る自動車部品の一例であるバンパーの断面図である。
図19】本発明の一実施形態に係る自動車部品の一例であるバンパーの斜視図である。
図20】本発明に係るリベット接合継手構造の一例を示す断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述のような従来の技術に鑑み、本発明者らはリベット接合継手における十字引張強さの向上に着目した。本発明者らは、高強度鋼板をリベット接合することにより得られる継手(リベット接合継手)の十字引張強さが、スポット溶接継手のそれよりも、著しく高いことを見出した。鋼板を機械的に接合するリベット接合によれば、接合部の脆化が生じないので、高強度鋼板から構成される接合継手の十字引張強さを高く保持可能であると考えられる。
【0019】
本発明者らが、リベット接合部の十字引張強さを高める方法について検討を重ねた結果、被接合部材とリベットの頭部との間に隙間が設けられ、この隙間に拡径部が設けられることで、十字引張強さが飛躍的に高められることが見いだされた。
【0020】
以下、本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されないことは自明である。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。また、以下の実施形態の各構成要素は、互いに組み合わせることができる。
【0021】
[第1実施形態]
本実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法では、
通し穴が形成された複数の部材を、通し穴の深さ方向に沿って見た場合に通し穴の少なくとも一部が重なるように重ね合わせる工程と、
通し穴に、軸部と軸部の一方の端部に設けられた頭部とを有する金属製のリベットを挿通する工程と
リベットを一対の電極で挟み、軸部の軸線に沿った方向において複数の部材のうちで頭部に最も近い部材と頭部との間に隙間を生じさせた状態で、リベットを加圧しかつ一対の電極に通電してリベットに抵抗発熱を生じさせることにより、頭部が設けられていない方の軸部の端部に変形部を形成しかつ、軸部の一部を隙間へ拡径させて拡径部を形成する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0022】
上記の構成からなるリベット接合継手構造の製造方法では、リベットを変形させる際に、部材とリベットの頭部との間に隙間を生じさせることで、軸部の一部が隙間へ拡張して拡径部が形成される。この領域が設けられることで、継手の十字引張評価における応力集中部であるリベットの通し穴近傍への応力集中が軽減するため、継手構造の十字引張強さが上昇する。
【0023】
以下、本実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法について説明する。
まず、通し穴が形成された複数の部材と軸部を有するリベットを準備する。本実施形態の例では、2つの部材を接合する場合を例に説明するが、接合される部材の数が3つ以上であっても、本発明の要件を満たす限り、本発明に特有の効果が得られる。
【0024】
次の工程では、図1に示すように、通し穴101および101’が形成された複数の部材100および100’を、通し穴101および101’の深さ方向に沿って見た場合に通し穴101および101’の少なくとも一部が重なるように重ね合わせる。部材100および100’は、リベット接合継手構造1の母材となる。通し穴101および101’の深さ方向に沿って見た場合に、リベット110が挿通可能な程度に、通し穴101および101’の少なくとも一部が重なっていることが好ましい。本実施形態では、部材100および100’の対向する面をそれぞれ重ね合わせ面103と重ね合わせ面103’と称し、これらの重ね合わせ面103又は103’と反対の面をそれぞれ外面104又は104’と称する。
【0025】
なお、通し穴101および101’近傍以外の箇所で、部材同士が接していても、あるいは部材同士が離間していてもよい。図1の102および102’は、それぞれ通し穴101および101’の内面である。
【0026】
次の工程では、図2に示すように、通し穴101および101’に、軸部111と頭部112とを有するリベット110を挿通する。
【0027】
リベット110は、図2の例のように、軸部111と軸部111の一方の端部に設けられた頭部112を有し、軸部111の頭部112が設けられていない方には、端面113を有する端部114がある。また、頭部112は頂面115を有する。
【0028】
次の工程では、図3に示すように、リベット110を一対の電極(150および150’)間に挟む。このとき、軸部111の軸線に沿った方向において複数の部材100および100’のうちで頭部112に最も近い部材である部材100’と頭部112との間に隙間Sを生じさせた状態とする。具体的には、重ね合わせた複数の部材100および100’を治具などで固定し、部材100’と頭部112との間に隙間Sが生じるように、一対の電極(150および150’)の位置を調整する。より具体的には、本実施形態の図3の例では、軸部111の軸線に沿った方向において、部材100’の外面104’と頭部112のフランジ面116との間に隙間Sが生じている。一対の電極(150および150’)は、例えば、それぞれロボットアームなどに接続され、治具や被接合部材(部材100および100’)に対して移動自在に構成されてもよい。
【0029】
上述のような状態で、リベット110を加圧し、かつ一対の電極(150および150’)に通電してリベット110に抵抗発熱を生じさることにより、図4に示すように、リベット110の少なくとも一方の端部114を変形させて変形部117を形成し、かつリベット110の軸部111の一部を隙間Sへ拡径させて拡径部118を形成する。
【0030】
この工程では、一対の電極(150および150’)がリベット110の頭部112(頭部112の頂面115)および端面113に接触し、これらを介して、リベット110の軸部111の軸線に沿った方向へ加圧する。
【0031】
さらにこの工程では、一対の電極(150および150’)に通電してリベット110に抵抗発熱を生じさることでリベット110が軟化する。この状態で、一対の電極(150および150‘)によってリベット110を加圧することで、リベット110の一方の端部が変形する。このとき、頭部側では、(例えば、固定治具などによって、)隙間Sが保たれている。本実施形態の例では、図4に示すように、頭部112と反対側の端部114が変形して、変形部117を構成する。この変形では、軸部111が軸部111の軸線方向へ縮小されるとともに、端部114が軸部111の径外方向へ拡張することで、変形部117が形成される。
【0032】
また、本実施形態では、端部114が変形するとともに、リベット110の軸部111の一部が隙間Sへ拡張する。すなわち、リベット110の軸部111の軸線に沿った方向で見た場合、軸部111の一部が隙間S内で拡径する。隙間Sへ拡張した部分を拡径部118と称する。本実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法では、部材100’の外面104’とリベット110の頭部112のフランジ面116との間に隙間Sが形成されていることで、加圧および通電されて軟化したリベット110の軸部111の一部が、この隙間Sへ向けて拡径する。
【0033】
リベット110の軸部111の軸線方向における平面視では、軸部111が軸部111の径外方向へ拡張、すなわち拡径することで、隙間Sの内部に拡径部118が形成される。
【0034】
以上の工程を経て、図5に示すようなリベット接合継手構造1が得られる。
図5のリベット接合継手構造1は、通し穴(101および101’)が形成された複数の部材(100および100’)を重ね合わせ、軸部111と頭部112とを有するリベット110を用いて接合したリベット接合継手構造であって、通し穴(101および101’)に軸部111が挿通され、軸部111の一方の端部に設けられた頭部112と軸部111の他方の端部に設けられた締結部119とによって複数の部材(100および100’)がかしめられ、複数の部材(100および100’)のうちで頭部112に最も近い部材100’と頭部112との間に拡径部118が設けられている。
【0035】
上記の構成からなるリベット接合継手構造では、継手構造の十字引張強さが上昇する。
【0036】
(部材)
部材100又は100’の構成は特に限定されない。例えば、部材100又は100’を鋼板などの金属材料からなる板材、特に高強度鋼板(例えば引張強さTSが約590MPa以上の鋼板)とした場合、リベット接合継手構造1の強度を向上させることができて好ましい。
【0037】
本実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法では、部材の引張強さが980MPa以上であることがより好ましい。本実施形態に係るリベット接合方法は、十字引張強さの低下を招く脆化を高強度鋼板に生じさせないので、高強度鋼板(ホットスタンプ鋼板、TRIP鋼板、複合組織鋼板、マルテンサイト鋼板、中Mn鋼板)の接合に適用された場合に、高い十字引張強さを有するリベット接合継手構造を提供することができる。
【0038】
より好適には、引張強さが1180MPa以上、さらに最適には1500MPa以上である。引張強さの上限は特に限定されないが、2700MPa以下の鋼板が挙げられる。
【0039】
また、スポット溶接によって高強度鋼板に溶接部を形成した場合、溶接部やその近傍が脆化しやすくなり、十字引張強さの低下を招くことがある。しかし、本実施形態に係るリベット接合では、このような脆化の要因が無いため、高強度鋼板の接合に適用された場合に、高い十字引張強さと引張せん断強さを両立するリベット接合継手構造を提供することができる。
【0040】
部材100又は100’は、板材であってもよい。また、部材100又は100’は、鋼板、アルミ板やチタン板、これらの合金板、又はCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)などであってもよい。また、複数の部材がそれぞれ異なる材料から構成されてもよい。例えば、鋼板とアルミ板との組み合わせ、又は鋼板とCFRP板との組み合わせでもよい。
【0041】
また、部材100又は100’に種々の表面処理がなされていてもよい。例えば、部材100又は100’がGAめっき、GIめっき、EGめっき、Zn-Mgめっき、Zn-Alめっき、Zn-Niめっき、Zn-Alめっき、Zn-Al-Mgめっき、Alめっき、塗装、並びにホットスタンプによって母材金属と合金化されたZn系めっき(Zn-Fe、Zn-Ni-Fe)およびAl系めっき(Al-Fe-Si)などからなるめっき層を有してもよい。
【0042】
部材の厚さにも特に限定はなく、例えば、通し穴101又は101’の深さ方向に0.5mm~3.6mmの厚さを有してもよい。また、複数の部材の厚さが異なってもよい。
【0043】
部材100又は100’としては、限定されないが、例えば、板厚が1.6mmと2.3mmの板材の2枚重ね、板厚が0.75mmと1.8mmと1.2mmの板材の3枚重ねでもよい。部材100又は100’の好適な組み合わせの範囲として例えば、板厚が約0.6mm~2.9mmの板材と0.6mm~2.9mmの板材との2枚重ね、又は板厚が0.6mm~1.6mmの板材、と0.6mm~2.9mmの板材と、0.6mm~2.9mmの板材との3枚重ねが挙げられる。部材は、冷間もしくは熱間でのプレス成形、冷間でのロール成形、ハイドロフォーム成形された成形品であっても良い。また、部材はパイプ状に成形されていても良い。
【0044】
(通し穴)
通し穴101又は101’の構成は特に限定されない。通し穴101又は101’の形状は、通し穴101又は101’の深さ方向における平面視において、例えば、図6に示すような円状とすることができる。
【0045】
通し穴の形状は、通し穴の深さ方向における平面視において、図7に示すような楕円状、図8に示すような多角形、図9に示すような扇状、図10に示すような一部に凸部のある円状、図11に示すような十字状であってもよい。また通し穴の形状は、一部に凹部のある形状であってもよい。通し穴の形状をこれらの形状とすることで、部材同士が強固に固定されていなくとも、リベットを中心として部材が相対的に回転することやガタついたりすることを抑制できる。
【0046】
通し穴の形状が4角形、5角形、6角形、8角形など多角形であってもよい。これらの多角形の角部に曲率を持たせても良い。また、通し穴の形状が部材毎に異なっていてもよい。
【0047】
通し穴101又は101’の大きさは、リベット110の軸部111の径より大きく‘する必要がある。
【0048】
また、通し穴101又は101’の大きさはその深さ方向に一定であってもよい。一方、深さ方向に沿って通し穴101又は101’の大きさが段階的に変化する段形状、または漸次的に変化するテーパ形状としてもよい。
【0049】
通し穴101又は101’は、レーザ切断、金型を用いた打ち抜き、ドリルを用いた穿孔などの任意の手段で形成することができる。例えば、部材100又は100’がホットスタンプ鋼板である場合は、熱間での金型打ち抜き、あるいはレーザ切断が望ましい。
【0050】
通し穴の直径(通し穴が円形でない場合は、円相当径に換算する)は、全ての部材で同一であってもよいし、部材毎に異なっていてもよい。通常のリベット接合においては、接合部の隙間を減少させる観点から、通し穴の直径を一定化することが好ましいと考えられる。通し穴の直径の相違の程度は特に限定されないが、例えば、隣接する部材における通し通し穴の直径の差が0.3mm~3.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0051】
リベットを挿通させる作業の容易化の観点からは、リベットを挿通させる側(リベットの頭部がある側)とは逆側の部材の通し穴の直径を大きくする方がより好ましい。また、通し穴の直径の最小値は、挿通するリベットの軸部の直径の最大値よりも0.1mm~3.0mm大きいことが望ましい。この差が、0.1mmより小さいと挿通性が悪化し、3.0mmより大きいと通し穴の隙間を変形したリベットで十分に充填させることが難しくなるためである。より望ましくは、0.3mm~2.5mmの範囲であり、最適には0.3mm~1.5mmの範囲である。また、複数の被接合材間の通し穴101と101’の中心軸のずれは1.5mm以内が望ましく、0.75mm以下がさらに望ましい。
【0052】
通し穴101又は101’の大きさは部材100又は100’の深さ方向に一定であってもよい。一方、深さ方向に通し穴101又は101’の大きさが相違する段形状、またはテーパ形状を、通し穴101又は101’に適用してもよい。また、複数の被接合材間の通し穴の中心軸は一致していなくてもよい。
【0053】
なお、通し穴の深さ方向は、リベット110の軸部111の軸線方向と一致してもよい。
【0054】
(リベット)
リベット110の構成も特に限定されず、被接合材である部材100および100’の厚さおよび機械特性、並びに通し穴101および101’の大きさなどに応じて適宜選択することができる。例えば、リベット110の軸部111の径(軸部111の断面が円形ではない場合は、軸部111の円相当径に換算する)は、継手強度を確保する観点から3.0mm以上としてもよい。また、リベット110の軸径が大きすぎると、電流密度が低下しリベットが軟化しにくくなる虞があるため、軸径の上限は16.0mm以下あるいは12mm以下としてもよい。
【0055】
軸部111の長さ(リベット110の長さから、頭部112の厚さを除いた値)は、部材100および100’の合計厚さより大きくする必要があり、より好ましくは、以下の範囲内とする。
(部材の合計厚さ+軸部の径×0.3)≦軸部の長さ≦(部材の合計厚さ+軸部の径×2.0)
【0056】
リベット110の軸部111の長さを、「部材100および100’の合計厚さ+軸部111の径×0.3」以上とすることにより、軸部111の端部114を変形させた後の変形部である締結部119の大きさを確保し、継手強度を一層高めることができる。軸部111の長さを「部材100および100’の合計厚さ+軸部111の径×2.0」以下とすることにより、製造効率を高めることができる。部材の合計厚さとは、通し穴の深さ方向における、重ね合わせられる部材の厚さの合計値である。
【0057】
軸部111の径は一定であってもよい。あるいは、軸部111の形状は、リベット110の一端に向かって、軸部111の径が減少する形状(いわゆるテーパ形状)であってもよい。軸部111の全体にわたってテーパ部が形成されていてもよく、軸部111の一部にのみテーパ部が形成されていてもよい。テーパ形状を有するリベット110は、通し穴101又は101’に挿通させやすいのでより好ましい。
【0058】
リベット110の頭部112の形状は、一般的なフランジ形状とすればよい。例えば頭部112の形状を、半球形(いわゆる丸頭)、円盤形(いわゆる平頭)、又は表面側が平らで根本が円錐形となる形状(いわゆる皿頭)とすることができる。頭部112の、リベット110の軸部111の軸線方向における平面視での形状は、例えば円形、四角形、又は六角形などの多角形とすることができる。頭部112の頂面115の中心部に、電極との位置決め用の凹部が設けられていてもよい。
【0059】
また、頭部112の厚みは0.8mm~5.0mmとすることがより好ましい。頭部112の厚みが0.8mm未満だと、継手強度が十分に得られない。一方、頭部112の厚みが5.0mm超であると頭部が大きすぎ、他部品との干渉がおきやすくなる。頭部112の直径は、通し穴101および101’の直径より1.5mm以上大きく、15.0mm以下であることが、接合強度の確保と頭部による重量増加を抑制するという理由から好ましい。
【0060】
また、締結部119の厚みは、0.8mm~5.0mmとすることが好ましい。締結部119の直径は、通し穴101および101’の直径より1.5mm以上大きく、15.0mm以下であることが、接合強度の確保と頭部による重量増加を抑制するという理由から好ましい。なお、図5の締結部119は、図4の変形部117に相当する。
【0061】
リベット110は鋼材、ステンレス、チタン、アルミニウムなど金属製であることが必要である。例えば、部材が鋼板である場合、リベットは低炭素鋼などの鋼材であることが好ましい。ただし、耐食性が特に必要な場合や、部品の後塗装レスでの耐食性確保が必要な場合、ステンレスを用いることが望ましい。
【0062】
リベットは例えば、コイル線材を切断し、切削加工、もしくは冷間鍛造加工によって製造されれば良い。生産性の観点では、冷間鍛造加工が望ましい。リベットは加工ままでもよいが、特に継手強度が必要な場合は、冷間鍛造後に焼き入れ、焼き戻しの熱処処理をしても良い。熱処理よりリベット頭部も含めたリベット全体の硬さを上げることで、継手強度がさらに向上する。リベットは表面処理がされていないものでよいが、耐食性が必要な場合は表面処理がなされていてもよい。例えば、リベットの表面に、亜鉛系めっき、アルミ系めっき、クロム系めっき、ニッケル系めっき、クロメート処理などが施されてもよい。
【0063】
本実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法では、部材のうち1つ以上が鋼板であり、リベットが鋼材であることがより好ましい。これにより異種金属同士の接触による腐食を抑制できる効果が得られる。特に、部材100および100’が高強度鋼材である場合、リベット110も相応の強度を持つ高強度鋼材とすることがより好ましい。
【0064】
本実施形態に係る、他のリベット接合継手構造の製造方法では、部品の位置精度を高めるため、リベット接合部とは異なる位置で、予めスポット溶接などの接合を行なうことで、部材同士を予め仮接合してもよい。
【0065】
本実施形態に係るリベット接合継手構造が複数設けられる場合、全てのリベット接合継手構造に、拡径部を形成してもよい。一方、一部のリベット接合継手構造に拡径部を形成する方がより望ましい。例えば、部材の形状が変化した部分など、応力が集中する部位に限定して拡径部を有するリベット接合継手構造を形成することは製造時のコストと部材性能のバランスの観点から望ましい。
【0066】
本実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法では、軸部111の軸線に沿った方向において、部材100’の外面104’と頭部112のフランジ面116との間の隙間Sの高さは、高い接手強度の確保という理由から、0.2mm~1.4mmが好ましい。
【0067】
本実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法では、図12に例示するリベット接合継手構造2のように、任意の断面で見た場合に、リベット210の軸部211の軸線に沿った方向における左右の拡径部218の高さに差があっても良い。例えば、図12に示すように、軸部211の軸線を含む断面で断面視した場合、頭部212の頂面215に対して、通し穴201および201’が形成された部材200および200’の外面204および204’が傾斜していることで、拡径部218の高さに差が生じる。応力集中の抑制という理由から、拡径部218の最大値と最小値との差は0.6mm以下が望ましく、より好ましくは0.3mm以下である。
【0068】
(加圧・通電)
電極150および150’による加圧および通電は、リベット110が所望の形状に変形される条件を備えていれば、特に限定されるものではない。
【0069】
加圧は通電より前に開始される。例えば、リベット110を1対の電極150および150’間に挟んで加圧した状態で通電し、通電によるリベット110自体の抵抗発熱でリベット110を軟化させてかしめてもよい。通電前に加圧を開始することにより、通電を安定化させることができる。
【0070】
リベット110への加圧条件および通電条件(電流値、電圧値、および通電時間など)は特に限定されず、リベット110の形状および材質に応じて適宜選択することができる。
【0071】
リベット110のより好ましい条件として、例えば以下を採用できる。電圧値の記載は省略するが、電圧値はリベット110および電流値に応じて決まる。リベット110の軸部111の径を増大させた場合、電流値および通電時間の一方又は両方を増大させて、入熱量を増大させればよい。
【0072】
リベット110は、部材100と100’とが重ね合わされ、例えば、リベット供給装置により通し穴101および101’に挿入される。そして、例えば、スポット溶接機を用いて、加圧をかけながら通電加熱される。
【0073】
なお、リベット110を部材100および100’に挿通する前に高周波加熱でリベット110を予め加熱および軟化させてもよい。溶接時の電流を下げられるという効果がある。
【0074】
電極の構造は特に限定されない。例えば、スポット溶接用の電極は加圧および通電を実施することが可能であるので、これを用いて本実施形態に係るリベット接合を行ってもよい。電極の形状は、リベットの形状に合わせて適宜選択することができる。例えば、フラット型電極、シングルR型、CF型、DR型であっても良い。電極の材質は導電性に優れた、クロム銅、アルミナ分散銅、クロムジルコニウム銅が挙げられる。一対の電極のそれぞれの電極形状が異なっていても良い。
【0075】
溶接機の電源は単相交流、直流インバータ、交流インバータが挙げられる。ガンの形式は定置式もしくはC型、X型が挙げられ、リベット供給装置が取り付けられている。電極がリベットに印加する加圧力は、例えば150kgf~1000kgfである。加圧力は、好適には250kgf~600kgfである。加圧力の設定値は一定値で良いが、必要に応じて、加圧力を変化させてもよい。軟化したリベットにブローホールが発生する場合は、ブローホールを潰すために通電後半もしくは通電終了後に加圧力を上げてもよい。また、通電終了後の保持時間の間に加圧力を変化させてもよい。
【0076】
電極によるリベットの加圧方向はリベットの軸が伸びる方向に対して、10°以下の角度とすることが、良好な接合部を得る観点から望ましい。より望ましくは4°以下である。
【0077】
通電時間は、例えば0.15秒~2.00秒である。通電時間は好適には0.20秒~1.00秒である。電流値は、4kA~16kAが、上記の通電時間内で安定して軟化できるという理由で好ましい。通電回数は1回でも良い(いわゆる単通電)が、必要に応じて2段通電、3段以上の多段通電や電流を調整して焼き戻しのテンパー通電を行っても良い。また、パルス通電や、電流を徐々に上げるアップスロープ、電流を徐々に下げるダウンスロープの通電でも良い。また、通電の前半に高い電流を流して軟化部を形成させ、後半に電流を下げても良い。
【0078】
電流は1回だけ通電する単通電でも良いが、必要に応じて2段通電、3段の多段通電でも良く、パルス通電や、電流を徐々に上げるアップスロープ、電流を徐々に下げるダウンスロープの通電でも良い。また、通電の前半に高い電流を流してリベットを軟化させ、後半に電流を下げながら加圧を上げても良い。
【0079】
また、加圧および通電後に、リベットを冷却してもよい。リベットの冷却条件は特に限定されない。通電終了後に、リベットを大気中に放置して自然冷却させてもよい。また、内部に冷媒を流通させた電極をリベットに接触させることなどにより、リベットを加速冷却してもよい。リベットを加速冷却することにより、リベットを焼き入れし、継手の接合強度を一層高めることができる。加速冷却は、通電が終了して電極を解放するまでの時間である保持時間を用いて実施すればよく、保持時間を長くするほど加速冷却されるが、生産性向上の観点から加速冷却の時間は3秒以下が望ましい。保持時間は、より望ましくは0.01秒以上2.00秒以下である。保持時間は、最適には0.10秒以上0.80秒以下である。
【0080】
軸部111の端部114は、上述した加圧および通電によって塑性変形されて変形部117を構成する。拡径部118は部材100’に当接し、頭部112および拡径部118は、変形部117とともに複数の部材100および100’を挟持する(かしめる)働きを有する。
【0081】
本実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法では、他の接合手段を併用することも妨げられない。異なる2種以上の接合手段を組み合わせることにより、リベット接合継手構造の接合強度を一層高めることができる。
【0082】
例えば、本実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法では、スポット溶接、レーザ溶接、およびアーク溶接(MAG溶接、MIG溶接、CO2溶接、プラズマ溶接)からなる群から選択される一種以上の溶接方法によって、部材100および100’同士を接合する工程を、さらに有してもよい。溶接は、リベット接合の前に行われても後に行われてもよい。部品の組立て精度確保の観点からは、溶接後にリベット接合をすると、溶接時に固定されるため、接合する部品の組み付け精度ばらつきが小さくなり望ましい。スポット溶接の場合、スポット溶接後にリベット接合を行うか、あるいは、スポット溶接で仮止めをしてリベット接合を行い、その後にスポット溶接で増し打ちを実施することがより望ましい。
【0083】
また本実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法では、複数の部材100および100’を重ね合わせる工程の前に、部材100又は100’の、少なくとも通し穴101および101’の周辺に接着層又はシール層を設ける工程を、さらに有してもよい。
【0084】
接着層により剛性、耐振性が向上し継手強度も向上する。また、シール層により耐水性および耐食性が向上する。なお、部材のスポット溶接においては、爆飛を防止するために、例えば接着剤の塗布箇所とスポット溶接箇所とを離隔させる必要が生じることがある。しかし本実施形態に係るリベット接合継手構造の製造方法では、爆飛が生じないので、接着層又はシール層を設ける箇所が限定されないという利点がある。また、異種金属や金属とCFRPの接合において、重ね面の接触腐食を防止することもできる。また、リベット頭部を覆うようにシーラーを塗布しても良い。これによりリベット頭部と鋼板の隙間から水の侵入を防ぐことができるさらに、異種金属の接合の場合や、金属とCFRPとの接合の場合は、少なくとも片側の金属板に、リベット接合前に化成処理と塗装を施してもよい。これにより、異種材料間の接触腐食についてもさらに強く抑制し、耐食性を高めることができる。
【0085】
接着剤としては、エポキシ系あるはゴム系が好ましく用いられる。熱硬化型接着剤の場合、リベット接合後、電着塗装ラインでの焼き付け工程の加熱で接着剤が硬化してもよい。反応硬化型の接着剤の場合は、リベット接合後、時間が経過することにより接着剤が硬化してもよい。また、シーラーとしては、スポットシーラーが好ましく用いられる。通し穴の周辺とは、通し穴周辺の部材同士の重ね合わせ面と定義される。また、接着層として、アイオノマーなどの樹脂接着テープを用いても良い。
【0086】
図13に、部材300および300’上の通し穴301および通し穴301’(図示せず)の周辺に、接着層又はシール層が設けられる箇所350を例示する。
【0087】
[第2実施形態]
次に、本発明に係るリベット接合継手構造について説明する。
本実施形態に係るリベット接合継手構造は、図5に例示するように、通し穴(101および101’)が形成された複数の部材(100および100’)を重ね合わせ、軸部111と頭部112とを有するリベット110を用いて接合したリベット接合継手構造であって、通し穴(101および101’)に軸部111が挿通され、軸部111の一方の端部に設けられた頭部112と軸部111の他方の端部に設けられた締結部119とによって複数の部材(100および100’)がかしめられ、複数の部材(100および100’)のうちで頭部112に最も近い部材100’と頭部112との間に拡径部118が設けられている。
【0088】
上記の構成からなるリベット接合継手構造では、軸部の一部が部材とリベットの頭部との間の隙間へ拡張して拡径部が形成される。この領域が設けられることで、リベットへの応力集中が軽減するため、継手構造の十字引張強さが上昇する。
【0089】
第2実施形態に係るリベット接合継手構造の各構成要件は、上述した第1実施形態と同様である。以下に、拡径部118について詳述する。
【0090】
拡径部118の形状は、リベット110の軸部111の軸線方向に垂直な断面形状に準じた形状となる場合もあるが、電極による加圧・通電の条件や通し穴の形状、リベット110の特性、隙間Sの高さのばらつきによっても、変化する。例えば、リベット110の軸部111の軸線方向における平面視で、円状や楕円状となる場合もあるが、その他の形状となる場合もある。
【0091】
また拡径部118は、以下のように定義できる。リベット110の軸部111の軸線方向において、拡径部118が設けられている平面(軸部111の軸線に垂直な平断面)の、拡径部118の面積と軸部211の面積との合計面積は、拡径部118が設けられていない平面(軸部111の軸線に垂直な平断面)の軸部111の面積よりも大きくなる。リベット110の軸部111の軸線方向において拡径部118が設けられている平面における拡径部118の面積と軸部111の面積との合計面積Sは、リベット110の軸部111の軸線方向において拡径部118が設けられていない平面における軸部111の面積Sに対して、110~170%であることが好ましい。なお、軸部111の面積が軸部111の長さ方向で異なる場合は、リベット110の軸部111の軸線方向において、拡径部118が設けられている箇所と拡径部118が設けられていない箇所との境界における軸部111の平面(軸部111の軸線に垂直な平断面)の面積をSとする。
【0092】
なお、拡径部118が設けられていない軸部111の直径(リベット110の軸線方向に垂直な断面における直径)を100%とした場合、拡径部118の円相当径としての直径が、105%以上130%以下であることが高いCTSの確保という理由から、より好ましい。ここで、円相当径は、拡径部118の中央で軸線方向に垂直に測定した値と定義できる。
【0093】
リベット110の軸線方向に平行な断面における、リベット110の軸線方向に平行な断面における拡径部118の厚みが0.1mm以上1.4mmであることが高いCTSの確保という理由から、より好ましい。
これらの面積は、リベット接合継手構造1の、軸部111の軸線に垂直な断面を観察することで確認できる。
【0094】
拡径部118は、例えば、リベット110の軸部111の軸線を含むリベット接合継手構造1の断面を観察することで確認できる。しかし、諸条件によって、このような断面で拡径部118を特定できない場合もある。この場合には、軸部111の軸線に平行かつ軸部111の軸線を含まない断面を観察することで拡径部118を確認できる。
【0095】
締結部119は、第1実施形態で説明した、変形部117に相当する構成要素である。締結部119は、頂面120を有する。
【0096】
本実施形態に係るリベット接合継手構造では、部材のうち1つ以上が鋼板であり、リベットが鋼材であってもよい。
【0097】
本実施形態に係るリベット接合継手構造では、部材の引張強さが980MPa以上であってもよい。
【0098】
本実施形態に係るリベット接合継手構造では、部材の、少なくとも通し穴の周辺に接着層又はシール層が設けられてもよい。
【0099】
本実施形態に係るリベット接合継手構造では、部材間に溶接部が設けられてもよい。
【0100】
本発明に係る自動車部品は、上述した第2実施形態に係るリベット接合継手構造を備える。これにより、高い接合強度を有する。自動車部品とは、例えば、衝突安全性を確保するために重要な部材であるバンパーやBピラーである。
【0101】
本実施形態に係るリベット接合継手構造では、リベットの軸部の軸線に平行な断面視で、リベットの少なくとも一方の頂面が、軸部の軸線に沿った方向において、リベット近傍の部材の面から、軸部から離れる側に向けて0.6mm離れた位置よりも軸部側にあってもよい。好ましくは、頭部および/又は締結部の頂面が、リベットの近傍の板材の外面よりも軸部側にある。これにより、他の部品との干渉を抑制することができる。図14および図16の例では、リベット210の締結部219の頂面220が、リベット210近傍の部材200の外面204よりも軸部211側(点線Hよりも軸部211側)にある。図15の例では、リベット210の締結部219および頭部212の双方の頂面220および頂面215が、リベット210近傍の部材200および200’のそれぞれに対してこれらの外面204および204’よりも軸部211側(点線Hよりも軸部211側)にある。ここで、外面とは、それぞれの部材において、上述した重ね合わせ面ではない、他の部材と接していない方の面を意味する。図14図16の点線Hは外面204又は204’を延長した線である。なお、図14図16ではリベット210の締結部219の頂面220および/又は頭部212の頂面215が、リベット210の近傍の板材の外面よりも軸部211側にあるが、締結部219の頂面220および/又は頭部212の頂面215が最大で0.6mmだけ外面からはみ出していてもよい。即ち、図14図16の例において、締結部219の頂面220および/又は頭部212の頂面215が、点線Hから0.6mm突出したとしても、他の部品との干渉を抑制する効果が得られる。
【0102】
実施形態1で説明した手法によりリベット接合する前、あるいは、リベット接合してから、部材200および/又は200’をプレス成形することで、リベット210近傍の部材200および/又は200’を変形させ、締結部219および/又は頭部212の頂面が、リベット近傍の部材の面から、軸部211から離れる側に向けて0.6mm離れた位置よりも軸部211側となるようにしてもよい。図14の例では、部材200のリベット210近傍の箇所が部材200’側へ変形されている。図15の例では、部材200のリベット210近傍の箇所が部材200’側へ変形されかつ、部材200’のリベット210近傍の箇所が部材200側へ変形されている。図16の例では、部材200のリベット210近傍の箇所が部材200’側へ変形されかつ、部材200’のリベット210近傍の箇所が部材200に対応して変形されている。
【0103】
図17に、リベット410および420で部材11が接合された、本発明の一実施形態に係る自動車部品の一例であるBピラーの断面図を示す。図17の例では、リベット410は、3つの部材を接合し、リベット420は2つの部材を接合している。
【0104】
また図18に、リベット510で部材11が接合された、本発明の一実施形態に係る自動車部品の一例であるバンパーの断面図を示す。これらの自動車部品は、本発明に係るリベット接合継手構造により結合されている。
【0105】
図19に、上述した実施形態に係る接合継手構造と溶接部(スポット溶接、レーザ溶接、及びアーク溶接からなる群から選択される一種以上の溶接方法によって形成された溶接部)とを併用した例を示す。図19は、部材11を接合した構造を含むバンパー構造である。図19に示すように、例えば、衝突時に、負荷される応力が高くなると予想される部位に、本発明のリベット接合継手構造3(図19の黒丸で示されるリベット610)を用い、その他の接合箇所では、安価なスポット溶接(図19の白丸で示されるスポット溶接部800)を採用してもよい。
【0106】
また、Aピラー、サイドシル、ルーフレール、フロアメンバー、フロントサイドメンバー、リアサイドメンバー、フロアパン、フロントサスタワ―、トンネルリンフォース、ダッシュパネル、トルクボックス、シート骨格、シートレール、バッテリーケースのフレームおよびそれらのピラー同士の結合部(Bピラーとサイドシルの結合部、Bピラーとルーフレールの結合部、ルーフクロスメンバーとルーフレールの結合部)を、本発明の一実施形態に係る自動車部品としてもよい。
【実施例
【0107】
以下に、本発明の実施例を説明する。
【0108】
2つの部材をリベット接合し、リベット接合継手構造を作製した。
【0109】
部材として、引張強さ2100MPaの高強度鋼板(板厚1.6mm)を2枚用いた。鋼板には、レーザピアスによって通し穴を設けた。通し穴の直径、上板と下板の穴の直径は表1に記載の通りである。リベットとして、表1に示す、軸径、軸長の円柱状の軸部を有するリベットを用いた。リベットは、炭素を0.2%添加したボロン鋼からなるリベットである。リベットの頭部の大きさは、直径12.0mmおよび厚み2.0mmとした。
【0110】
実施例1では、鋼板とリベットのフランジ間に隙間ができるように、鋼板を配置し接合することで、2つの鋼板間に隙間(空間)を生じさせた。フランジ部と部材表面との隙間の距離を表1に示す値となるようにした。また、通し穴の深さ方向(鋼板の板面に略垂直な方向)から見たとき、2つの通し穴が一致するようにした。
【0111】
比較例1では、鋼板とリベットのフランジを密着させて隙間をなくした。また、通し穴の深さ方向(鋼板の板面に略垂直な方向)から見たとき、2つの通し穴が一致するようにした。
【0112】
表1に示す条件で、2つの鋼板をリベット接合し、リベット接合継手構造を作製した。保持時間とは、リベットへの通電の終了から、リベットへの加圧の解放までに経過した時間のことである。電極の面形状は全て上下電極共にフラット面の直径が16mmであるCr-Cu製のフラット形状である。
【0113】
【表1】
【0114】
図20に、本発明に係るリベット接合継手構造の断面写真の一例を示す。
【0115】
このようにして得られた各リベット接合継手構造の十字引張強さCTSをJIS Z 3137に準拠して測定した。その結果を表2に示す。
【0116】
【表2】
【0117】
表2に示されるように、拡径部を有するリベット接合継手構造のCTSは、拡径部を有さないリベット接合継手のCTSと比べて飛躍的に高められた。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明では、十字引張強さがより高い構造を提供可能なリベット接合継手構造の製造方法、並びに、十字引張強さがより高いリベット接合継手構造および自動車部品を提供することができるので、高い産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0119】
100、100’、200、200’ 部材
110、210 リベット
111、211 軸部
112、212 頭部
113 端面
118、218 拡径部
図1
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