(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】形鋼の矯正装置および矯正方法
(51)【国際特許分類】
B21D 3/05 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
B21D3/05 D
(21)【出願番号】P 2020060525
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩史
(72)【発明者】
【氏名】横林 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】大手 里奈
(72)【発明者】
【氏名】三輪 武史
(72)【発明者】
【氏名】松尾 嘉顕
(72)【発明者】
【氏名】安達 直光
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特公昭56-040646(JP,B2)
【文献】特開平07-148526(JP,A)
【文献】特開平04-081225(JP,A)
【文献】特開昭63-268518(JP,A)
【文献】特開2016-190268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 3/05
B21D 3/02
B21B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブおよび一対のフランジを有し、前記一対のフランジが前記ウェブの厚み方向において前記ウェブから一方側に離れるほど互いの距離が大きくなるように前記ウェブに対して傾斜している形鋼の形状を矯正する装置であって、
前記ウェブの両面が鉛直方向を向いた状態で搬送されている前記形鋼の前記ウェブに対して曲げ力を付与する3つ以上のローラを備え、
前記3つ以上のローラは、前記形鋼の搬送方向において間隔をあけて前記ウェブに接触するように前記ウェブの上下に互い違いに配置されており、
前記3つ以上のローラのうち、前記厚み方向における前記ウェブの前記一方側に配置される前記ローラの直径は、前記厚み方向における前記ウェブの他方側に配置される前記ローラの直径よりも小さい、矯正装置。
【請求項2】
鉛直方向から見て前記搬送方向に隣り合う一対の前記ローラの間隔は、前記搬送方向における下流側ほど小さい、請求項1に記載の矯正装置。
【請求項3】
ウェブおよび一対のフランジを有し、前記一対のフランジが前記ウェブの厚み方向において前記ウェブから一方側に離れるほど互いの距離が大きくなるように前記ウェブに対して傾斜している形鋼の形状を矯正する方法であって、
前記ウェブの両面が鉛直方向を向いた状態で前記形鋼を一方向に搬送するステップと、
前記一方向に搬送されている前記形鋼の前記ウェブに対して、3つ以上のローラを用いて曲げ力を付与するステップとを備え、
前記3つ以上のローラは、前記形鋼の搬送方向において間隔をあけて前記ウェブに接触するように前記ウェブの上下に互い違いに配置され、
前記3つ以上のローラのうち、前記厚み方向における前記ウェブの前記一方側に配置される前記ローラの直径は、前記厚み方向における前記ウェブの他方側に配置される前記ローラの直径よりも小さい、矯正方法。
【請求項4】
鉛直方向から見て前記搬送方向に隣り合う一対の前記ローラの間隔は、前記搬送方向における下流側ほど小さい、請求項3に記載の矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブおよび一対のフランジを備えた形鋼の形状を矯正する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物などの大梁に使用されるH形鋼は、厚板を溶接することによって製造されるBH鋼と、圧延によって製造されるRH鋼に大別される。このうち、RH鋼については、圧延工程において断面形状不良(フランジの直角度不良)が発生することが知られている。
【0003】
そこで、従来、上記のような形鋼の製造工程においてフランジの直角度を矯正するための種々の装置が提案されている。例えば、特許文献1には、H形鋼のウェブ面を拘束する上下の水平ロールと、フランジ外面を傾動可能に押圧する左右の竪ロールとを備えたH形鋼フランジ直角度矯正装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の矯正装置では、竪ロールの傾動量を調整することによって、フランジの直角度を矯正することができる。しかしながら、竪ロールを用いることによって装置構成が複雑になるとともに、設備コストが上昇する。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構成で形鋼のフランジの直角度を矯正できる装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
竪ロールを用いることなく形鋼のフランジの直角度を矯正する方法の一つとして、オフラインでプレス矯正装置を用いて矯正する方法が考えられる。この場合、インラインで竪ロールを用いる場合に比べて、矯正装置の構成を簡単にすることができる。しかしながら、インラインで矯正する場合に比べて、形鋼の生産効率が低下する。
【0008】
一方、インラインで竪ロールを用いることなくフランジの直角度を矯正する方法としては、形鋼の搬送方向において該形鋼のウェブの上下に互い違いに配置された複数の矯正ローラを備えた矯正装置を用いて矯正する方法が考えられる。この場合も、竪ロールを用いる場合に比べて、矯正装置の構成を簡単にすることができる。しかしながら、この場合、フランジの直角度を適切に矯正するためには、ウェブに対する矯正ローラの押込み量を比較的大きくする必要があり、形鋼の靭性が低下するおそれがある。
【0009】
上記のような問題点を考慮して、本発明者らは、インラインでかつ簡単な構成で形鋼を矯正する方法について種々の検討を行った。具体的には、上記のように、ウェブの上下に互い違いに配置された複数の矯正ローラを備えた矯正装置において、より効率よく矯正を行う方法について検討した。その結果、本発明者らは、上下に配置される矯正ローラの直径を変えることによって、ウェブに対する矯正ローラの押込み量を抑えつつ、フランジの直角度を効率よく矯正できることを見出した。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、下記の矯正装置および矯正方法を要旨とする。
【0011】
(1)ウェブおよび一対のフランジを有し、前記一対のフランジが前記ウェブの厚み方向において前記ウェブから一方側に離れるほど互いの距離が大きくなるように前記ウェブに対して傾斜している形鋼の形状を矯正する装置であって、
前記ウェブの両面が鉛直方向を向いた状態で搬送されている前記形鋼の前記ウェブに対して曲げ力を付与する3つ以上のローラを備え、
前記3つ以上のローラは、前記形鋼の搬送方向において間隔をあけて前記ウェブに接触するように前記ウェブの上下に互い違いに配置されており、
前記3つ以上のローラのうち、前記厚み方向における前記ウェブの前記一方側に配置される前記ローラの直径は、前記厚み方向における前記ウェブの他方側に配置される前記ローラの直径よりも小さい、矯正装置。
【0012】
(2)鉛直方向から見て前記搬送方向に隣り合う一対の前記ローラの間隔は、前記搬送方向における下流側ほど小さい、上記(1)に記載の矯正装置。
【0013】
(3)ウェブおよび一対のフランジを有し、前記一対のフランジが前記ウェブの厚み方向において前記ウェブから一方側に離れるほど互いの距離が大きくなるように前記ウェブに対して傾斜している形鋼の形状を矯正する方法であって、
前記ウェブの両面が鉛直方向を向いた状態で前記形鋼を一方向に搬送するステップと、
前記一方向に搬送されている前記形鋼の前記ウェブに対して、3つ以上のローラを用いて曲げ力を付与するステップとを備え、
前記3つ以上のローラは、前記形鋼の搬送方向において間隔をあけて前記ウェブに接触するように前記ウェブの上下に互い違いに配置され、
前記3つ以上のローラのうち、前記厚み方向における前記ウェブの前記一方側に配置される前記ローラの直径は、前記厚み方向における前記ウェブの他方側に配置される前記ローラの直径よりも小さい、矯正方法。
【0014】
(4)鉛直方向から見て前記搬送方向に隣り合う一対の前記ローラの間隔は、前記搬送方向における下流側ほど小さい、上記(3)に記載の矯正方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構成で形鋼のフランジの直角度を適切に矯正できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る矯正装置および該矯正装置によってフランジの直角度が矯正される形鋼を示す概略図である。
【
図2】
図2は、ローラと形鋼との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、矯正装置の他の構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、ローラ径比と直角度変化量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る矯正装置および該矯正装置を用いた矯正方法について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
(矯正装置の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る矯正装置および該矯正装置によってフランジの直角度が矯正される形鋼を示す概略図であり、(a)は矯正装置および形鋼を示す概略側面図であり、(b)は(a)のb-b部分を示す断面図である。
【0019】
図1(a)に示すように、本実施形態に係る矯正装置10は、一方向に搬送される形鋼100の形状をインラインで矯正するための装置である。
図1においては、形鋼100の搬送方向を矢印Xで示している。以下、形鋼100の搬送方向を搬送方向Xと記載する。
【0020】
本実施形態では、矯正装置10は、例えば、圧延工程後の精整工程において、形鋼100の形状を矯正する。なお、矯正装置10は、所定の製品寸法に切断(鋸断)された形鋼を矯正するために用いられてもよく、所定の製品寸法に切断される前の形鋼を矯正するために用いられてもよい。
【0021】
図1(b)に示すように、形鋼100は、ウェブ102および一対のフランジ104a,104bを有している。本実施形態では、形鋼100は、ウェブ102の両面102a,102bが鉛直方向を向いた状態で搬送されている。本実施形態では、ウェブ102の一方の面102aが上方を向き、ウェブ102の他方の面102bが下方を向いている。
【0022】
形鋼100には、圧延工程において断面形状不良が生じている。具体的には、一対のフランジ104a,104bがウェブ102の厚み方向Yにおいてウェブ102から一方側に離れるほど互いの距離が大きくなるようにウェブ102に対して傾斜している。すなわち、形鋼100には、フランジ104a,104bの直角度不良が生じている。
【0023】
本実施形態では、一対のフランジ104a,104bは、ウェブ102から下方に離れるほど互いの距離が大きくなるようにウェブ102に対して傾斜している。なお、本明細書においてフランジ104a,104bの直角度とは、ウェブ102の厚み方向Yが上下方向となるように水平面上に形鋼100を載置した状態で、フランジ104a,104bの上端面の中心(形鋼100の長さ方向に直交する断面における中心)と、フランジ104a,104bの下端面の中心(上記断面における中心)との水平方向における距離dを意味する。
【0024】
矯正装置10は、ウェブ102の厚み方向Yにおける一方側(本実施形態では下方)に配置される複数のローラ12a,12b,12c,12dと、厚み方向Yにおける他方側(本実施形態では上方)に配置される複数のローラ14a,14b,14c,14dとを備えている。ローラ12a,12b,12c,12dおよびローラ14a,14b,14c,14dは、形鋼100のウェブ102に曲げ力を付与するように設置されている。
【0025】
本実施形態では、ローラ12a,12b,12c,12dおよびローラ14a,14b,14c,14dはそれぞれ、図示しない支持装置によって回転自在に支持されている。また、詳細な説明は省略するが、ローラ14a,14b,14c,14dは、高さが固定された状態で支持されており、ローラ12a,12b,12c,12dは、高さを調整自在に支持されている。本実施形態では、例えば、ローラ12a,12b,12c,12dからウェブ102に付与される曲げ力が互いに等しくなるように、ローラ12a,12b,12c,12dの高さが調整されている。
【0026】
図2(a)は、ローラ14aと形鋼100との関係を示す図であり、
図2(b)は、ローラ12aと形鋼100との関係を示す図である。
図1(a)および
図2(a)に示すように、ローラ14aは、一対のローラ本体部16aと、一対のローラ本体部16aを連結する軸部16bとを有している。ローラ14b,14c,14dもローラ14aと同様の構成を有している。
【0027】
図1(a)および
図2(b)に示すように、ローラ12aは、一対のローラ本体部18aと、一対のローラ本体部18aを連結する軸部18bとを有している。ローラ12b,12c,12dもローラ12aと同様の構成を有している。
【0028】
本実施形態では、ローラ12a,12b,12c,12dおよびローラ14a,14b,14c,14dは、形鋼100の搬送方向Xにおいて間隔をあけてウェブ102に接触するように、ウェブ102の上下に互い違いに配置されている。本実施形態では、ローラ14a,14b,14c,14dのローラ本体部16aがウェブ102の一方の面102aに接触し、ローラ12a,12b,12c,12dのローラ本体部18aがウェブ102の他方の面102bに接触している。なお、本実施形態では、搬送方向Xにおいて隣り合うローラ間の距離(中心間距離)は、互いに等しい。すなわち、本実施形態では、複数のローラが等間隔で配置されている。
【0029】
本実施形態では、ローラ12a,12b,12c,12dの直径は互いに等しい。同様に、ローラ14a,14b,14c,14dの直径は互いに等しい。また、本実施形態では、ローラ12a,12b,12c,12dの直径は、ローラ14a,14b,14c,14dの直径よりも小さい。なお、本実施形態においてローラ12a,12b,12c,12dの直径とは、ローラ本体部18aの軸方向における中心部の直径を意味する。同様に、ローラ14a,14b,14c,14dの直径とは、ローラ本体部16aの軸方向における中心部の直径を意味する。
【0030】
(作用効果)
図1(a)に示すように、本実施形態では、搬送方向Xに搬送される形鋼100のウェブ102に対して、まず、ローラ14aによって曲げ力が与えられる。本実施形態では、ローラ14aによってウェブ102が下方に押される。これにより、
図2(a)に示すように、フランジ104a,104bの上端側が互いに近付くように形鋼100が変形する。その結果、フランジ104a,104bの直角度dが一時的に大きくなる。なお、
図2(a),(b)においては、矯正装置10によって矯正される前のフランジ104a,104bの位置が点線で示されている。
【0031】
次に、
図1(a)に示すように、形鋼100のウェブ102に対して、ローラ12aによって曲げ力が与えられる。本実施形態では、ローラ12aによってウェブ102が上方に押される。これにより、
図2(b)に示すように、フランジ104a,104bの上端側が互いに離れるように形鋼100が変形する。その結果、フランジ104a,104bの直角度dが小さくなる。
【0032】
ここで、上述したように、本実施形態では、ローラ12aの直径は、ローラ14aの直径よりも小さい。このため、ローラ14aによってウェブ102に与えられる曲げ力による変形よりも、ローラ12aによってウェブ102に与えられる曲げ力による変形の方が大きくなる。これにより、形鋼100がローラ14aを通過する際のフランジ104a,104bの直角度dの変化量(増加量)よりも、形鋼100がローラ12aを通過する際のフランジ104a,104bの直角度dの変化量(減少量)の方が大きくなる。したがって、形鋼100がローラ14aを通過する際にフランジ104a,104bの直角度dが一時的に大きくなったとしても、形鋼100がローラ12aを通過することによって、フランジ104a,104bの直角度dを、ローラ14aを通過する前の形鋼100のフランジ104a,104bに対して小さくすることができる。
【0033】
ローラ12aを通過した形鋼100は、ローラ14b、ローラ12b、ローラ14c、ローラ12c、ローラ14dおよびローラ12dによる曲げ力を順に受ける。上述したように、ローラ12b,12c,12dの直径は、ローラ14b,14c,14dよりも小さい。したがって、形鋼100がローラ14b、ローラ12b、ローラ14c、ローラ12c、ローラ14dおよびローラ12dを順に通過することによって、フランジ104a,104bの直角度dは、増加およびその増加量よりも多い量の減少を繰り返すことになり、その結果、直角度dが徐々に小さくなっていく。このようにして、フランジ104a,104bの直角度dが矯正される。矯正装置10を通過した後の直角度dをゼロにするためには、直角度dの初期値(矯正装置10に進入する前の直角度d)に応じて、ローラ12a,12b,12c,12dによるフランジ104a,104bの直角度dの減少量と、ローラ14a,14b,14c,14dによるフランジ104a,104bの直角度dの増加量との差が適正化されるように、上下のローラの直径の比を適切に設定すればよい。
【0034】
以上のように、本実施形態では、ローラ12a,12b,12c,12dの直径をローラ14a,14b,14c,14dの直径よりも小さくすることによって、形鋼100のフランジ104a,104bの直角度dを矯正することができる。これにより、矯正装置10の構成を複雑にすることなく、インラインでフランジ104a,104bの直角度dを矯正することができる。
【0035】
また、本実施形態では、ローラ12a,12b,12c,12dおよびローラ14a,14b,14c,14dの直径をともに小さくする場合に比べて、ローラ14a,14b,14c,14dからウェブ102に与えられる曲げ力を小さくすることができる。この場合、フランジ104a,104bの直角度dの矯正時に生じるウェブ102の変形を抑制することができる。これにより、形鋼100の靭性の低下を抑制しつつ、フランジ104a,104bの直角度dを適切に矯正することができる。
【0036】
また、本実施形態では、上記のように、ローラ12a,12b,12c,12dによるフランジ104a,104bの直角度dの減少量と、ローラ14a,14b,14c,14dによるフランジ104a,104bの直角度dの増加量とが異なる。これにより、複数のローラが等間隔で配置されている場合でも、フランジ104a,104bの直角度dを徐々に小さくすることが可能になる。これにより、矯正装置10の構成をより簡単にすることができる。
【0037】
本実施形態では、異なる直角度dを有する複数の形鋼100を矯正する場合でも、隣り合うローラ間の距離を変更することなく、直角度dの初期値(矯正装置10に進入する前の直角度d)に応じてローラ12a,12b,12c,12dの直径を適宜調整することによって、直角度dを適切に矯正することができる。この場合、隣り合うローラ間の距離を変更して直角度dの矯正量(変化量)を調整する場合に比べて、矯正装置100の調整が容易になる。
【0038】
なお、本実施形態では、ローラ12a,12b,12c,12dおよびローラ14a,14b,14c,14dは、ウェブ102に曲げ力を付与することによって、フランジ104a,104bの直角度dを矯正しつつ、ウェブ102の上下方向(厚み方向Y)における曲がりも矯正することができる。
【0039】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、
図2に示したように、フランジ104a,104bが下方に向かって開いた状態を維持しつつフランジ104a,104bの直角度dを矯正する場合について説明したが、フランジ104a,104bの直角度dを矯正する過程において、フランジ104a,104bが上方に向かって開いた状態となってもよい。例えば、フランジ104a,104bが下方に向かって開いた状態および上方に向かって開いた状態を交互に繰り返すように、複数のローラによって形鋼100を変形させてもよい。
【0040】
上述の実施形態では、矯正装置10が8つのローラを備える場合について説明したが、ウェブ102に対して曲げ力を付与できればよいので、ローラの数は3つ以上であればよい。なお、矯正前のフランジ104a,104bの直角度dに応じて、各ローラの直径およびローラの数は適宜設定すればよい。
【0041】
上述の実施形態では、複数のローラが等間隔で配置される場合について説明したが、
図3に示すように、形鋼100の搬送方向Xにおいて隣り合う一対のローラの間隔(中心間距離)が、搬送方向Xにおける下流側ほど小さくなるように複数のローラを配置してもよい。この場合、ローラを通過する際のフランジ104a,104bの直角度dの変化量を、搬送方向Xにおける下流側程小さくすることができる。すなわち、搬送方向Xにおける上流側においてフランジ104a,104bの直角度dを大きく変化させた後、徐々にフランジ104a,104bの直角度dの変化量を小さくする態様で、直角度dを徐々に小さくすることができる。フランジ104a,104bの直角度dは、増加およびその増加量よりも多い量の減少、さらにその減少量よりも少ない量または同等の増加を繰り返すことになり、その結果、直角度dが徐々に小さくなっていく。このようにして、フランジ104a,104bの直角度dが矯正される。矯正装置10を通過した後の直角度dをゼロにするためには、直角度dの初期値(矯正装置10に進入する前の直角度d)に応じて、各ローラにおける直角度dの変化量が適正化されるように、上下のローラの直径の比を適切に設定すればよい。詳細な説明は省略するが、ウェブ102に対するローラ12a,12b,12c,12dの押込み量を徐々に小さくすることによっても、同様の効果が得られる。なお、本実施形態においてウェブ102に対するローラの押込み量は、以下のようにして定義される。まず、ウェブ102が変形しないように当該ウェブ102の両面に複数のローラを接触させると仮定したときの各ローラの位置を、そのローラの基準位置とする。そして、当該基準位置からローラをウェブ102側に向かって移動させたときの、当該ローラの基準位置からの移動距離を、ローラの押込み量とする。
【0042】
上述の実施形態では、形鋼100が最初にローラ14aを通過するように複数のローラが配置されているが、形鋼100が最初にローラ12aを通過するように複数のローラが配置されてもよい。
【0043】
上述の実施形態では、フランジ104a,104bが下方に向かって開いた状態で矯正装置10に搬送される場合について説明したが、フランジ104a,104bが上方に向かって開いた状態で矯正装置10に搬送されてもよい。この場合、複数のローラ12a,12b,12c,12dをウェブ102の上方に配置し、複数のローラ14a,14b,14c,14dをウェブ102の下方に配置すればよい。
【0044】
上述の実施形態では、各ローラが、一対のローラ本体部を有する場合について説明したが、各ローラが備えるローラ本体部の数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0045】
上述の実施形態では、矯正装置10によってH形鋼100のフランジ104a,104bの直角度dの矯正を行う場合について説明したが、
図4に示す溝形鋼100aおよび
図5に示す溝形鋼100bのフランジ104a,104bの矯正を行う場合にも本発明を適用できる。なお、これらの溝形鋼100a,100bのフランジ104a,104bの直角度の矯正を行う場合にも、ウェブ102の厚み方向Yにおける一方側に配置されるローラの直径を、ウェブ102の厚み方向Yにおける他方側に配置されるローラの直径よりも小さくすればよい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
実施例の矯正装置では、H形鋼のウェブの上方および下方にそれぞれ2つのローラを配置した。具体的には、4つのローラをH形鋼のウェブの上下に互い違いに配置した。また、実施例の矯正装置では、
図1に示した矯正装置10と同様に、ウェブの下方に配置されたローラ(本実施例では、2つのローラ。以下、小径ローラと記載する。)の直径を、ウェブの上方に配置されたローラ(本実施例では、2つのローラ。以下、大径ローラと記載する。)の直径よりも小さくした。なお、本実施例では、大径ローラの直径を1300mmに固定し、小径ローラの直径を種々変えて、H形鋼のフランジの直角度の矯正を実施し、ローラ径比(大径ローラ/小径ローラ)と直角度変化量との関係について調査した。なお、直角度の変化量とは、直角度の初期値(矯正装置に進入する前の直角度)と、矯正装置通過後の直角度との差を示す。表1に、実施例の条件および各条件における直角度変化量を示し、
図6に、ローラ径比と直角度変化量との関係を示す。
【0048】
【0049】
表1に示した結果から、小径ローラの直径を小さくすることによって、直角度変化量を大きくすることができることが分かる。したがって、本発明に係る矯正装置によって形鋼のフランジの直角度を矯正する場合には、矯正対象となる形鋼のフランジの直角度に応じて小径ローラの直径を適宜調整すればよいことが分かる。
【0050】
また、
図6に示した結果から、ローラ径比と直角度変化量との間には、良好な正の相関関係があることが分かる。このため、ローラ径比と直角度変化量との関係を予め求めておくことによって、形鋼の直角度の初期値に応じて好ましい直径を有する小径ローラを容易に選定することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、簡単な構成で形鋼のフランジの直角度を適切に矯正できる。
【符号の説明】
【0052】
10 矯正装置
12a~12d,14a~14d ローラ
100,100a,100b 形鋼
102 ウェブ
104a,104b フランジ