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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/16 20060101AFI20231012BHJP
   F28D 5/00 20060101ALI20231012BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
F28D7/16 A
F28D5/00
F28F9/22
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021536196
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 US2019066727
(87)【国際公開番号】W WO2020131794
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】16/225,539
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,マイケル ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ページ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】モロクス,ルイス エイ.
(72)【発明者】
【氏名】スタンプ,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】井上 智嗣
(72)【発明者】
【氏名】コブ,シャノン
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-080756(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106766398(CN,A)
【文献】米国特許第02854828(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/16
F28D 5/00
F28F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気圧縮システムにおいて用いられるよう構成される熱交換器であって、
少なくとも液冷媒を含む冷媒が通って流れる冷媒入口と、シェル冷媒蒸気排出口と、を有するシェルであって、前記シェルの長手方向中心軸が水平面と平行に延びているシェルと、
前記冷媒入口と流体連通し、前記シェル内に配置される冷媒分配器であって、液冷媒を分配する少なくとも一の液冷媒分配開口部を有する冷媒分配器と、
前記冷媒分配器から放出される液冷媒が供給されるよう、前記シェルの内部で前記冷媒分配器の下方に配置される管束であって、集合的に配置される複数の伝熱管を有する管束と、
前記シェルの第一側部から延設される第一バッフルであって、前記第一バッフルは、鉛直方向において、前記シェルの底部縁部の上方の前記シェルの全高の5%~40%の範囲内に配置され、かつ、前記第一バッフルの位置において前記長手方向中心軸に対して垂直方向に測定される前記シェルの幅の20%以下の距離で、前記シェルの前記第一側部から横方向内側に延設される第一バッフルと、
を備え、
前記複数の伝熱管は、前記伝熱管の入口端部が、前記熱交換器に水を供給する水入口管と流体連通している下側集合群と、前記下側集合群の前記伝熱管を流れた水が流れる上側集合群とを形成し、通過経路が前記上側集合群と前記下側集合群との間に配置されるようグループ化され、
前記第一バッフルは、前記通過経路よりも鉛直方向下方に配置され、
前記第一バッフルは、前記下側集合群の前記伝熱管の内、最上部に配置される前記伝熱管よりも下方に配置される、
熱交換器。
【請求項2】
前記第一バッフルは、
水平面と平行な第一側方部と、
前記シェルの前記第一側部から横方向に間隔を空けた位置において、前記第一側方部から下方へ延設される第一フック部と、
を有している、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第一フック部は、横方向に関して、前記シェルの前記第一側部からの最遠部である前記第一側方部の端部に配置されている、
請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第一フック部は、水平面に対して垂直である、
請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第一バッフルは、冷媒が通過しない非透過性材料で形成されている、
請求項3又は4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記第一バッフルは、金属板で形成されている、
請求項5に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記第一フック部は、水平面に対して垂直方向に延設されている、
請求項2に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記第一バッフルは、冷媒が通過しない非透過性材料で形成されている、
請求項2に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記第一バッフルは、金属板で形成されている、
請求項8に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記下側集合群の前記伝熱管のうちのいくつかは、液冷媒に浸漬されており、
前記第一バッフルは液冷媒の液位の鉛直方向上方に配置されている、
請求項1から9のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記第一バッフルは、鉛直方向に関して、前記液位よりも前記通過経路の近くに配置されている、
請求項10に記載の熱交換器。
【請求項12】
前記伝熱管の前記下側集合群の横幅は、前記伝熱管の前記上側集合群の横幅より大きい、
請求項1~11のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項13】
前記伝熱管のうちのいくつかは液冷媒に浸漬されており、
前記第一バッフルは、液冷媒の液位の鉛直方向上方に配置されている、
請求項1~9のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項14】
前記伝熱管のうちの少なくとも一つは、前記第一バッフルの鉛直方向下方に、かつ、前記シェルの前記第一側部からの最遠部である前記第一バッフルの端部より横方向外側に配置されており、前記第一バッフルは、鉛直方向に見て、前記少なくとも一つの伝熱管と鉛直方向に重なっている
請求項1~13のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項15】
前記伝熱管のうちの少なくとも一つは、前記長手方向中心軸に対して垂直方向に測定して、前記第一バッフルの内側の端部から横方向内側に前記伝熱管の管直径の距離の範囲内に配置されている、
請求項1~14のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項16】
前記シェルの第二側部から延設される第二バッフルであって、前記第二バッフルは、鉛直方向において、前記シェルの前記底部縁部の上方の前記シェルの前記全高の5%~40%の範囲内に配置され、前記第二バッフルの位置において前記長手方向中心軸に対して垂直方向に測定される前記シェルの幅の20%以下の距離で、前記シェルの前記第二側部から横方向内側に延設される第二バッフルを更に備える、
請求項1~15のいずれか1項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、蒸気圧縮システムにおいて用いられるよう構成される熱交換器に関する。より詳細には、本発明は、蒸気の流れの制限、局所的な蒸気速度の低減、液漏れ(liquid leackage)の分離、及び/又は、液のトラップを行うよう配置される少なくとも一のバッフルを有する熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気圧縮冷凍は、大規模な建築物などの空気調和に最も一般的に用いられている方法である。従来の蒸気圧縮冷凍システムは、通常、蒸発器を有する。蒸発器は、蒸発器を通過する被冷却液体から熱を吸収して、冷媒を液体から蒸気へと蒸発させることが可能な熱交換器である。あるタイプの蒸発器は、複数の水平に延設された、内部を被冷却液体が循環する伝熱管を有する管束を備える。管束は、円筒シェル内に収容されている。このタイプの蒸発器において冷媒を蒸発させる方法には、いくつか知られたものがある。浸漬式蒸発器においては、シェルが液冷媒で満たされているとともに、液冷媒が、沸騰及び/又は蒸気として蒸発するよう、伝熱管が液冷媒のプールに浸漬されている。流下液膜式蒸発器においては、伝熱管の外部表面が上方から液冷媒で被覆され、これにより、層状あるいは薄膜状の液冷媒が伝熱管の外部表面に沿って形成される。伝熱管の壁部からの熱は、対流及び/又は液体膜を通じた伝導によって、液冷媒の一部が蒸発する気液界面へと伝達され、これにより、伝熱管内を流れる水から熱が取り去られる。蒸発しなかった液冷媒は、重力により伝熱管の上方位置から伝熱管の下方位置に向かって鉛直方向に落下する。また、管束における伝熱管のうちの一部の外部表面が液冷媒で被覆され、管束における他の伝熱管がシェルの底部に集められた液冷媒に浸漬される、ハイブリッド流下液膜式蒸発器もある。
【0003】
浸漬式蒸発器の伝熱性能は高いが、伝熱管を液冷媒のプールに浸漬するため、浸漬式蒸発器では相当量の冷媒が必要となる。最近開発された新しい冷媒(R1234ze又はR1234yf等)は、地球温暖化係数が非常に低いが、コストが高いので、蒸発器における冷媒充填を低減することが望ましい。流下液膜式蒸発器の主たる利点は、良好な伝熱性能を提供しながら冷媒充填を低減できることにある。したがって、流下液膜式蒸発器は、大規模な冷凍システムにおいて浸漬式蒸発器と置き換わる可能性が十分にある。例えば浸漬式、流下液膜式又はハイブリッド式等の蒸発器のタイプに関わらず、蒸発器に入る冷媒は、管束における液体からの加熱により、冷媒が蒸発する管束に分配される。冷媒が蒸発すると、冷媒蒸気が存在することになる。
【発明の概要】
【0004】
蒸気速度が非常に高くなってしまう場合、ある蒸発器では、液滴が圧縮器の入口に入る液キャリーオーバーの可能性が高まることが分かっている。これにより、チラー効率が低下し、潜在的にインペラの羽根の腐食の可能性が高まるおそれがある。これらの問題は冷媒にかかわらず生じ得るが、R1233zd等の低圧冷媒が用いられる場合、これらの問題はより生じやすい。
【0005】
したがって、本発明の一の目的は、圧縮機へと送られる噴霧(スプレー)液滴を低減する又は無くす蒸発器を提供することにある。
【0006】
スプレー液滴を低減する又は無くすために用いられる一つの技術は、ミストエリミネータである。ミストエリミネータが効果的な場合もあるが、ミストエリミネータは比較的高価であるとともに嵩張り、蒸発器において多くの場所を占めてしまう。また、ミストエリミネータは高圧を低下させる場合があり、システムの成績係数(COP)に悪影響を及ぼすおそれがある。必要な空間のために、シェルのサイズ及びチラーのサイズが大きくなってしまう。
【0007】
したがって、本発明の他の目的は、蒸発器内部の蒸気の流れを再分配する1以上のバッフルを有する蒸発器を提供することにある。このようなバッフルは、流れを均等化し、局部的な流速を低減することができる。低速とすることにより、液滴を流れから落とすことができる。さらに、このようなバッフルは、ミストエリミネータほど高価ではなく、占める空間も小さい。
【0008】
他の目的は、上向きの蒸気の流れを制限することにより、流下液膜バンクの最上部の近傍の蒸気流れを均一にするために用いられるバッフルを提供することにある。
【0009】
他の目的は、第一チューブ・パスと第二チューブ・パスとの間の局所的な蒸気速度を低減し、液滴を運動量によって除去するために用いられるバッフルを設けることにある。
【0010】
他の目的は、蒸気のバルク流れから分配器からの液漏れを分離するために用いられるバッフルを提供することにある。また、このようなバッフルを、流下液膜バンクの最上列と分配器の底部との間で高速蒸気から液体を捕らえ排出するために用いることもできる。
【0011】
さらに他の目的は、シェルの側部を上がってくる液体をトラップし、チューブへと案内し蒸発させるために用いられるバッフルを提供することにある。
【0012】
上記目的のうち一つ以上を、以下の面のうちのいずれか一つ以上の面にかかる熱交換器によって達成することができる。なお、以下に記載する面の及びそれらの組み合わせは、上記目的のうち一つ以上の目的を達成できるここで開示する実現可能な面の例及びそれらの組み合わせの例の単なる例示である。
【0013】
本発明の第一の観点にかかる熱交換器は、蒸気圧縮システムにおいて用いられるよう構成される。熱交換器は、シェルと、冷媒分配器と、管束と、第一バッフルと、を有する。シェルは、少なくとも液冷媒を含む冷媒が流れる冷媒入口と、シェル冷媒蒸気出口と、を有する。シェルの長手方向中心軸は、水平面と実質的に平行に延びる。冷媒分配器は、冷媒入口と流体連通し、シェル内に配置される。冷媒分配器は、液冷媒を分配する少なくとも一の液冷媒分配開口部を有している。管束は、シェルの内部で、冷媒分配器の下方に配置される。第一バッフルは、シェルの第一側部から延設される。第一バッフルは、鉛直方向において、シェルの底部縁部の上方のシェルの全高の5%~40%の範囲内に配置されており、かつ、第一側部から横方向内側に、シェルの幅の20%以下の距離で、延設されている。
【0014】
第二観点では、第一観点の熱交換器において、第一バッフルは、水平面と実質的に平行である第一側方部と、シェルの第一側部から横方向に間隔を空けた位置において第一側方部から下方へ延設される第一フック部と、を有する。
【0015】
第三観点では、第二観点の熱交換器において、第一フック部は、横方向に関して、シェルの第一側部からの最遠部である第一側方部の端部に配置されている。
【0016】
第四観点では、第三観点の熱交換器において、第一フック部は、水平面に対して実質的に垂直である。
【0017】
第五観点では、第三観点又は第四観点の熱交換器において、第一バッフルは、非透過性材料で形成されている。
【0018】
第六観点では、第五観点の熱交換器において、第一バッフルは、金属板で形成されている。
【0019】
第七観点では、第二観点の熱交換器において、第一フック部は、水平面に対して実質的に垂直方向に延設されている。
【0020】
第八観点では、第二観点の熱交換器において、第一バッフルは、非透過性材料で形成されている。
【0021】
第九観点では、第八観点の熱交換器において、第一バッフルは、金属板で形成されている。
【0022】
第十観点では、第一観点から第九観点のいずれかの熱交換器において、複数の伝熱管は、上側集合群と下側集合群とを形成し、通過経路が上側集合群と下側集合群との間に配置されるようグループ化される。第一バッフルは、通過経路よりも鉛直方向下方に配置されている。
【0023】
第十一観点では、第十観点の熱交換器において、下側集合群の伝熱管のうちのいくつかは、液冷媒に浸漬されており、第一バッフルは、液冷媒の液位の鉛直方向上方に配置されている。
【0024】
第十二観点では、第十一観点の熱交換器において、第一バッフルは、鉛直方向に関して、液位よりも通過経路に近い側に配置されている。
【0025】
第十三観点では、第十観点から第十二観点のいずれかの熱交換器において、伝熱管の下側集合群の横幅は、伝熱管の上側集合群の横幅より大きい。
【0026】
第十四観点では、第一観点から第九観点のいずれかの熱交換器において、伝熱管のうちのいくつかは、液冷媒に浸漬されており、第一バッフルは、液冷媒の液位の鉛直方向上方に配置されている。
【0027】
第十五観点では、第一観点から第十四観点のいずれかの熱交換器において、伝熱管のうちの少なくとも一つは、第一バッフルの鉛直方向下方に、かつ、シェルの第一側部からの最遠部である第一バッフルの端部より横方向外側に配置されており、第一バッフルは、鉛直方向に見て、少なくとも一つの伝熱管と鉛直方向に重なっている。
【0028】
第十六観点では、第一観点から第十五観点のいずれかの熱交換器において、伝熱管のうちの少なくとも一つは、長手方向中心軸に対して垂直方向に測定して、第一バッフルから横方向に管直径内に配置されている。
【0029】
第十七観点では、第一観点から第十六観点のいずれかの熱交換器において、第二バッフルが、シェルの第二側部から延設される。第二バッフルは、鉛直方向において、シェルの底部縁部の上方のシェルの全高の5%~40%の範囲内に配置される。第二バッフルは、第二バッフルの位置において長手方向中心軸に対して垂直方向に測定されるシェルの幅の20%以下の距離で、シェルの第二側部から横方向内側に延設される。
【0030】
これら及び他の目的、特徴、態様、及び利点は、添付の図面と組み合わせて、本発明の好ましい態様を開示する以下の説明から当業者に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
当開示の一部をなす添付の図面を参照しながら以下に説明を行う。
【0032】
図1図1は、本発明の第一実施形態にかかる熱交換器を有する蒸気圧縮システムの全体的概略斜視図である。
【0033】
図2図2は、本発明の第一実施形態にかかる熱交換器を有する蒸気圧縮システムの冷凍回路を示すブロック図である。
【0034】
図3図3は、本発明の第一実施形態にかかる熱交換器の概略斜視図である。
【0035】
図4図4は、図3の切断線4-4に沿って見た、図1図3に示した熱交換器の概略長手方向断面図である。
【0036】
図5図5は、図3の切断線5-5に沿って見た、図1図3に示した熱交換器の概略横方向断面図である。
【0037】
図6図6は、図1図5に示した熱交換器の複数の管支持及びバッフルの部分の拡大斜視図である。
【0038】
図7図7は、図1図6に示した熱交換器のバッフルのうちのいくつかの拡大斜視図である。
【0039】
図8図8は、例示のために上側バッフルの鉛直方向の寸法範囲を示した、図5の構成の一部の拡大斜視図である。
【0040】
図9図9は、上側バッフルの横方向寸法を示した、図8において円で囲んだ部分Aのさらなる拡大図である。
【0041】
図10図10は、管径に対する鉛直バッフルの鉛直方向の寸法及び横方向の寸法を示した、図8において円で囲んだ部分Aに対応する部分の拡大図である。
【0042】
図11図11は、例示のために中間バッフルの鉛直方向の寸法及び横方向の寸法の範囲を示した、図5の構成の一部の拡大斜視図である。
【0043】
図12図12は、例示のために下側バッフルの鉛直方向の寸法及び横方向の寸法の範囲を示した、図5の構成の一部の拡大斜視図である。
【0044】
図13図13は、図6に示した複数の管支持板のうちの一つの管支持板の立面図である。
【0045】
図14図14は、変形実施形態にかかる、任意選択的な追加の伝熱管を有する、図5に示した構造の一部の拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の選択的な実施形態を、図面を用いて、説明する。以下の本発明にかかる実施形態の説明は単なる例示であって、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって定義される本発明を限定するものではないことは、本開示から、当業者には明らかであろう。
【0047】
まず図1及び図2を参照して、第一実施形態にかかる熱交換器1を有する蒸気圧縮システムを説明する。図1から分かる通り、第一実施形態にかかる蒸気圧縮システムは、大きな建築物等の、暖房、換気及び空気調和(HVAC)システムにおいて用いることができるチラーである。第一実施形態の蒸気圧縮システムは、蒸気圧縮冷凍サイクルを介して被冷却液(例えば水、エチレングリコール、塩化カルシウムブライン等)から熱を取り去るよう構成され配置される。
【0048】
図1及び図2に示すように、蒸気圧縮システムは次の四つの主要な構成要素、蒸発器1、圧縮機2、凝縮器3、膨張装置4、及び制御ユニット5を有する。制御ユニット5は、蒸気圧縮システムの動作を制御するよう圧縮機2の駆動機構と膨張装置4とに機能的に連結される電子コントローラ(制御器)を有する。例示の実施形態では、図4図5に示す通り、蒸発器1は、以下により詳細に説明するように、本発明にかかる複数のバッフル40,50,60,70を有する。
【0049】
蒸発器1は、循環する冷媒が蒸発器1において蒸発することで、蒸発器1を通過する被冷却液(この例では水)から熱を取り去り、水の温度を下げる熱交換器である。蒸発器1に入る冷媒は、典型的には、気液二相状態にある。冷媒は、少なくとも液冷媒を有する。液冷媒は、水から熱を吸収し、蒸発器1において蒸気冷媒として蒸発する。
【0050】
低圧低温蒸気冷媒は、蒸発器1から放出され、吸引によって圧縮機2に入る。圧縮機2において、蒸気冷媒は、高圧高温の蒸気へと圧縮される。圧縮機2は、任意のタイプの従来の圧縮機、例えば遠心式圧縮機、スクロール圧縮機、往復式圧縮機、スクリュー圧縮機とできる。
【0051】
次に、高温高圧蒸気冷媒が、凝縮器3へと入る。凝縮器3は、蒸気冷媒から熱を取り去ってガス状態から液状態に凝縮させる他の熱交換器である。凝縮器3は、空冷式、水冷式又は任意の適当なタイプの凝縮器とできる。熱は、凝縮器3を通過する冷却水又は空気の温度を上昇させ、熱は、冷却水又は空気で運ばれて、システムの外部へと排出される。
【0052】
その後、凝縮された液冷媒は、冷媒が圧力の急激な低下を受ける膨張装置4に入る。膨張装置4は、オリフィスプレートと同程度に簡単な構成とすることができ、又は電子可変熱膨張弁と同程度に複雑な構成とすることもできる。膨張装置4が制御ユニット5に接続されるか否かは、制御可能な膨張装置4を利用するか否かによって決まることになろう。急激な圧力降下により、通常、液冷媒は部分的に蒸発し、その結果、通常、蒸発器1に入る冷媒は、気液二相状態となる。
【0053】
蒸気圧縮システムにおいて用いられる冷媒の例として、ハイドロフルオロカーボン(HFC)ベースの冷媒(例えばR410A、R407CやR134a)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、不飽和HFCベースの冷媒(例えばR1234zeやR1234yf)、及び自然冷媒(例えばR717やR718)が挙げられる。R1234ze及びR1234yfは、R134aと同様な密度を有する中密度冷媒である。R450A及びR513Aもまた利用可能な冷媒である。いわゆる低圧冷媒(LPR)1233zdもまた適切なタイプの冷媒である。低圧冷媒(LPR)1233zdは、R1233zdの蒸気密度が上述した他の冷媒より低いため、低密度冷媒(LDR)と呼ばれる場合もある。R1233zdの密度は、いわゆる中密度冷媒であるR134a、R1234ze及びR1234yfより低い。ここでいう密度は、蒸気密度であって液体密度ではない。R1233zdの液体密度は、R134Aより多少大きいからである。ここに開示する実施形態は、任意のタイプの冷媒を用いた場合にも有用であるが、ここに開示する実施形態は、1233zd等のLPRを用いた場合特に有用である。R1233zd等のLPRの蒸気密度は、他の選択肢より比較的低く、蒸気の流速がより速いからである。R1233zd等のLPRを用いる従来の装置においては、“発明の要約”に記載したように、より速い速度の蒸気フローによって、液キャリーオーバーが生じる場合がある。冷媒を個々に説明したが、本開示から、上記冷媒の任意の二つ以上を用いた冷媒の組み合わせを用いることができることは当業者に明らかであろう。例えば、R1233zdを部分的にのみ含む、組み合わせ冷媒を利用することができよう。
【0054】
本発明を実施するために、従来の圧縮機、凝縮器及び膨張装置を、それぞれ、圧縮機2、凝縮器3及び膨張装置4として用いることができることは、本開示から当業者には明らかであろう。言いかえれば、圧縮機2、凝縮器3及び膨張装置4は、当該技術において周知の従来の構成要素である。圧縮機2、凝縮器3及び膨張装置4は、当該技術において周知であるので、これらの構造をここでは詳細に説明・例示しない。蒸気圧縮システムは、複数の蒸発器1、圧縮機2及び/又は凝縮器3を有することもできる。
【0055】
次に図3図13を参照して、第一実施形態にかかる熱交換器である蒸発器1の詳細な構造を説明する。蒸発器1は、基本的に、シェル10と、冷媒分配器20と、熱伝達ユニット30と、を有する。上述の通り、例示の実施形態では、蒸発器1は、バッフル40,50,60,70を有する。バッフル40,50,60,70を、熱伝達ユニット30の一部と見なすことも、熱交換器1の別部品と見なすこともできる。例示の実施形態において、熱伝達ユニット30は管束である。したがって、熱伝達ユニット30をここでは管束30と呼ぶこともある。冷媒は、シェル10に入り、冷媒分配器20に供給される。その後、以下により詳細に説明する通り、冷媒分配器20は、好ましくは、気液分離を行い、管束30上に液冷媒を供給する。また以下により詳細に説明する通り、蒸気冷媒は、分配器20から出て、シェル10の内部に流入する。以下により詳細に説明する通り、バッフル40,50,60,70は、シェル10内の冷媒蒸気の流れの制御に役立つ。
【0056】
図3図5からよく分かる通り、例示の実施形態において、シェル10は、略円筒形状で、曲面状の両側部LSを有し、長手方向中心軸C(図5)が実質的に水平方向に延びる。両側部LSはそれぞれが互いに鏡像であり、第一側部及び/又は第二側部と呼ぶことができ、第二側部及び/又は第一側部と呼ぶこともできる。このように、シェル10は、水平面Pと略平行に延設されている。シェル10は、入口水室13a及び出口水室13bを有する接続ヘッド部材13と、水室14aを有する戻りヘッド部材14と、を有する。接続ヘッド部材13及び戻りヘッド部材14は、シェル10の円筒状本体の長手方向両端部に固定して連結される。入口水室13a及び出口水室13bは、水バッフル13cによって分割されている。接続ヘッド部材13は、シェル10へと水を入れる水入口管15と、シェル10から水を排出する水出口管16と、を有する。
【0057】
図1図5に示す通り、シェル10はさらに、冷媒入口管11bに接続された冷媒入口11aと、冷媒出口管12bに接続されるシェル冷媒蒸気出口12aと、を有する。冷媒入口管11bは、流体が通るよう膨張装置4に接続され、二相冷媒がシェル10へと導入される。膨張装置4を、冷媒入口管11bに直接連結することもできる。このように、シェル10は、少なくとも液冷媒を含む冷媒が通って流れる冷媒入口11aと、シェル冷媒蒸気出口12aと、を有する。シェル10の長手方向中心軸Cは、水平面Pと実質的に平行に延びている。二相冷媒における液体成分は、蒸発器1を通る水から熱を吸収すると、蒸発器1において沸騰し及び/又は蒸発し、液体から蒸気へと相転移する。蒸気冷媒は、冷媒出口管12bから圧縮機2へと圧縮機2の吸引によって吸い込まれる。冷媒入口11aに入る冷媒は、少なくとも液冷媒を含む。多くの場合、冷媒入口11aに入る冷媒は、二相の冷媒である。冷媒入口11aから、冷媒は、管束30上に液冷媒を分配する冷媒分配器20へと流れ込む。
【0058】
次に、図4図5を参照して、冷媒分配器20は、冷媒入口11aと流体連通しており、シェル10内に配置される。冷媒分配器20は、好ましくは、気液分離器と液冷媒分配器との両方として機能するよう構成され配置される。冷媒分配器20は、シェル10の長手方向中心軸Cと略平行にシェル10内に長手方向に延設される。図4図5からよく分かる通り、冷媒分配器20は、底部トレイ部22と最上部蓋部24とを有する。冷媒入口11aと冷媒分配器20とを流体連通させるように、入口管26は、最上部蓋部24及び冷媒入口11aに接続される。底部トレイ部22と最上部蓋部24は、管状形状を形成するよう強固に一体に接続される。端部部分28を、任意選択的に、底部トレイ部22及び最上部蓋部24の長手方向両端部に取り付けることができる。以下により詳細に説明する通り、冷媒分配器20は、管束30の一部によって支持される。
【0059】
冷媒分配器20の構造の細部は、本発明において重大ではない。したがって、あらゆる適当な従来の冷媒分配器20を用いることができることは、本開示から当業者には明らかであろう。なお、図5から分かる通り、好ましくは、冷媒分配器20は、液冷媒を分配する少なくとも一の液冷媒分配開口部23を有する。例示の実施形態では、底部トレイ部22は、液冷媒を管束30上に分配する複数の液冷媒分配開口部23を有する。さらに、例示の実施形態では、図4から分かる通り、冷媒分配器20は、好ましくは、少なくとも一の気体又は蒸気冷媒分配開口部25を有する。例示の実施形態では、底部トレイ部22は、蒸気冷媒をシェル10へと分配する複数の気体又は蒸気冷媒分配開口部25を有する。複数の気体又は蒸気冷媒分配開口部25によって分配された蒸気冷媒は、管束30との接触により蒸発した冷媒とともに、シェル冷媒蒸気出口12aを通じてシェル10から出る。蒸気冷媒分配開口部25は、冷媒分配器20内の冷媒(図示せず)の液位よりも上方に配置される。冷媒分配器20の構造の細部は本発明に重大ではないので、ここでは冷媒分配器20をさらに詳細には説明又は例示しない。
【0060】
次に、図4図7を参照して、熱伝達ユニット(管束)30をより詳細に説明する。管束30は、シェル10内部において冷媒分配器20の下方に配置されており、冷媒分配器20から放出される液冷媒は、管束30上へと供給される。図4図6からよく分かる通り、管束30は、シェル10の長手方向中心軸Cと略平行に延設される複数の伝熱管31を有する。以下により詳細に説明する通り、伝熱管31は集合的にまとめて配置されている。伝熱管31は、金属等の高い熱伝導率を有する材料で形成されている。伝熱管31は、好ましくは冷媒と伝熱管31の内部を流れる水との間の熱交換をさらに促進するために、内部溝及び外部溝が形成されている。このような内部溝及び外部溝を有する伝熱管は当該技術において周知である。例えば、ウィーランド・コッパー・プロダクツ社(Wieland Copper Products, LLC)のGEWA-Bチューブを本実施形態の伝熱管31として用いることができる。
【0061】
図4図6からよく分かる通り、伝熱管31は、複数の鉛直方向に延設される支持板32によって、従来の方法で支持される。支持板32を、シェル10に固定して連結することができ、又はシェル10内に単に載置することもできる。また、冷媒分配器20を支持するために、支持板32は底部トレイ部22を支持することができる。より具体的には、冷媒分配器20は、底部トレイ部22において、支持板32に固定され取り付けられる、又は、冷媒分配器20は、底部トレイ部22が単に支持板32上に載置できる。さらに、図4図6から分かる通り、支持板32はバッフル40,50,60,70を支持する。図4においては、バッフル40,50,60,70が支持板32によってどのように支持されるかを示すために、伝熱管31が取り外されている。
【0062】
本実施形態において、管束30は、二経路(ツーパス)システムを構成するよう配置される。ツーパスシステムでは、伝熱管31は、管束30の下部に配置されている供給ライングループと、管束30の上部に配置されている戻りライングループと、に分割される。このように、図5から分かる通り、複数の伝熱管31は、上側集合群UGと下側集合群LGとを形成するようグループ化され、これにより、パス・レーン(通過経路)PLが上側集合群UGと下側集合群LGとの間に形成される。図4図5から分かる通り、供給ライングループにおける伝熱管31の入口端部は、接続ヘッド部材13の入口水室13aを介して水入口管15と流体連通しており、これにより、蒸発器1に入る水が供給ライングループにおける伝熱管31へと分配される。供給ライングループにおける伝熱管31の出口端部と戻りライン管の伝熱管31の入口端部とは、戻りヘッド部材14の水室14aと流体連通している。
【0063】
したがって、供給ライングループ(下側集合群LG)における伝熱管31の内部を流れる水は、水室14aへと放出され、戻りライングループ(上側集合群UG)における伝熱管31へと再分配される。戻りライングループにおける伝熱管31の出口端部は、接続ヘッド部材13の出口水室13bを介して水出口管16と流体連通している。このように、戻りライングループにおける伝熱管31の内部を流れる水は、水出口管16を通って蒸発器1から出る。典型的なツーパス蒸発器において、水入口管15に入る水の温度を華氏約54度(約12℃)とでき、水出口管16から出るとき水は華氏約44度(約7℃)に冷却される。
【0064】
図5に示すように、例示の実施形態の管束30は、流下液膜領域と、液位LLの下方である浸漬領域と、を有するハイブリッド管束である。例示の液位LLは最低液位である。なお、液位をより高くすることができ、例えば供給ライングループ(下側集合群LG)における二行よりも多くの行の伝熱管31を覆うことができる。液冷媒に浸漬されていない伝熱管31は、流下液膜領域の管として機能する。流下液膜領域における伝熱管31は、液冷媒の流下液膜式蒸発を行うよう構成され配置される。より具体的には、冷媒分配器20から放出される液冷媒が、伝熱管31の内部を流れる水から熱を吸収して液冷媒が蒸気冷媒として蒸発する伝熱管31のそれぞれの外壁に沿って、層(すなわち膜)を形成するよう、流下液膜領域における伝熱管31は配置される。図5に示す通り、シェル10の長手方向中心軸Cと平行な方向から見て(図5で見て)、流下液膜領域における伝熱管31は、互いに平行に延設されている複数の鉛直方向の列に配置されている。したがって、冷媒は、伝熱管31の複数の列のそれぞれにおいて、重力によって一の伝熱管から他の伝熱管へと下方へ落下する。液冷媒分配開口部23から放出される液冷媒は、それぞれの列における伝熱管31の最も上にある一の管上へと落ちて被覆するよう、伝熱管31の各列は、冷媒分配器20の対応する液冷媒分配開口部23に対して配置される。
【0065】
流下液膜領域において蒸発しなかった液冷媒は、浸漬領域内へと重力で落下を続ける。浸漬領域には、ハブシェル11の底部(ボトム・ポーション)における流下液膜領域の下方のグループに配置される複数の伝熱管31が含まれる。例えば、システムに充填される冷媒の量に応じて、底側の一、二、三又は四行の管31を、浸漬領域の部分として配置することができる。伝熱管31の供給ライングループ(下側集合群LG)に入ってくる冷媒を華氏約54度(約12℃)とできるので、浸漬領域において液冷媒は未だ沸騰し蒸発できる。
【0066】
本実施形態において、流体導管(コンジット)8を、シェル10内の浸漬領域に流体が通るよう接続することができる。ポンプ装置(図示せず)を、シェル10の底部から圧縮機2に液体を戻すよう流体コンジット8に接続することができる、あるいは冷媒分配器20に戻して供給するよう入口管11bに分岐させることができる。浸漬領域に貯留した液体が所定レベルに達したとき、ポンプを選択的に動作させて、液体を蒸発器1の外部へと排出することができる。例示の実施形態では、流体コンジット8は、浸漬領域の最下点に接続される。なお、流体コンジット8を、浸漬領域の最下点と浸漬領域における液位LLに対応する場所との間の(例えば最下点と浸漬領域における管31の最上部層との間の)任意の場所で、流体が通るよう浸漬領域へと接続できることは、本開示から当業者には明らかであろう。また、ポンプデバイス(図示せず)の代りにエジェクタ(図示せず)とすることもできることは本開示から当業者には明らかであろう。ポンプデバイスをエジェクタで置き換える場合、エジェクタもまた圧縮機2から圧縮冷媒を受ける。その後、特定のオイル濃度で圧縮機2に供給するよう、エジェクタは、圧縮機2からの圧縮冷媒を浸漬領域から受けた液体と混合することができる。上述したポンプやエジェクタは当該技術において周知であるので、ここではさらに詳細には説明や例示をしない。
【0067】
次に図4図13を参照して、バッフル40,50,60,70をより詳細に説明する。例示の実施形態では、蒸発器は、一ペアの上側バッフル40と、一ペアの中間バッフル50と、一ペアの下側バッフル60と、一ペアの直立バッフル70と、を有する。一ペアの上側バッフル40は、管束30の最上部であって、冷媒分配器20及び管束30のそれぞれの両側部に配置される。一ペアの中間バッフル50は、上側バッフル40の下方であって管束30の両側部に配置される。一ペアの下側バッフル60は、中間バッフル50の下方であって管束30の両側部に配置される。一ペアの直立バッフル70は、冷媒分配器20の下方であって管束30の両側部において上側バッフル40の内側端部に配置される。
【0068】
バッフル40,50,60,70は、管支持板32によって支持される。具体的には、例示の実施形態では、図13からよく分かる通り、それぞれの管支持板32は、一ペアの横方向に間隔を空けて配置された上面34と、一ペアの横方向に間隔を空けて配置された中間スロット35と、一ペアの横方向に間隔を空けて配置された下側スロット36と、一ペアの上側スロット37と、を有する。図4図7及び図13からよく分かる通り、一ペアの横方向に間隔を空けて配置された上面34は、上側バッフル40を支持し、一ペアの横方向に間隔を空けて配置された中間スロット35は、中間バッフル50を支持し、一ペアの横方向に間隔を空けて配置された下側スロット36は、下側バッフル60を支持し、一ペアの上側スロット37は、直立バッフル70を支持する。
【0069】
次に図4図9を参照して、上側バッフル40をより詳細に説明する。上述の通り、例示の実施形態では、熱交換器1は一ペアの上側バッフル40を有し、それぞれの上側バッフル40は、冷媒分配器20及び管束30の対応する側部に配置される。一ペアの上側バッフル40は、互いに同一である。なお、図5図6からよく分かる通り、一ペアの上側バッフル40は、中心軸Cを通る鉛直平面Vに対して鏡像配置で、互いに対向するよう装着される。したがって、ここでは、一方の上側バッフル40のみを詳細に説明及び/又は例示する。なお、一方の上側バッフル40に関する説明及び例示が他方の上側バッフル40にも当てはまることは当業者には明らかであろう。また、上側バッフル40の一方を第一上側バッフル40、上側バッフル40の他方を第二上側バッフル40と呼ぶことができ、あるいは上側バッフル40の一方を第二上側バッフル40と呼び、上側バッフル40の他方を第一上側バッフル40と呼ぶことができることも明らかであろう。
【0070】
図6から分かる通り、上側バッフル40は、内側部42と、内側部42から横方向外側に延設される外側部44と、外側部44の外縁から下方へ延設されるフランジ部46と、を有する。例示の実施形態において、内側部42、外側部44及びフランジ部46は、それぞれ、孔48が形成されていなければ液冷媒やガス冷媒が通り抜けることができない、金属等の剛性のシート状/板状の材料から形成される。さらに、例示の実施形態において、内側部42、外側部44及びフランジ部46は、単一の一体構造部材として互いに一体的に形成される。なお、これらの板42,44,46を別々の部材として構成し、溶接等のあらゆる従来の技術を用いて互いに取り付けることもできることは本開示から当業者には明らかであろう。いすれの場合も、内側部42は、好ましくは、液冷媒及びガス冷媒が通り抜けることがない中実な非通過部分である。一方、外側部44は、好ましくは、液冷媒及びガス冷媒が通り抜けることができる通過部分である。フランジ部46は、非通過部分とすることも通過部分とすることもできる。
【0071】
さらに図4図9を参照して、内側部42は、冷媒分配器20の下側で、隣接する直立バッフル70の上方に配置される内側縁部を有する。このように、バッフル40は、冷媒分配器20と直立バッフル70との間に挟持される。また、内側部42及び外側部44は、管支持板32の上面34に支持される。フランジ部46は、管支持板32の外側でシェル10の側部と当接する。例示の実施形態では、図6及び図9からよく分かる通り、外側部44は管支持板32の上方の位置では中実体である。内側部42は、管支持板32の支持フランジ39(図13)を収容するよう配置されるスロット49(図7)を有する。支持フランジ39は、上面34から上方へ延設される。支持フランジ39の間で、冷媒分配器20を横方向に支持するよう、支持フランジ39は配置されている。
【0072】
上側バッフル40の内側部42と外側部44とは、水平面Pと実質的に平行な同一平面に配置される。上側バッフル40の内側部42と外側部44とは、シェル10の底部から上方にシェル10の全高の40%~70%の範囲に配置される。例示の実施形態では、上側バッフル40の内側部42と外側部44とは、シェル10の底部から上方にシェル10の全高の約55%の位置に配置される。図8から分かる通り、管支持板32の上面34は、上側バッフル40と略同じ高さの管束30の最上部の、少し上方に配置される。
【0073】
図7からよく分かる通り、例示の実施形態では、外側部44は、内側部42と同じ非透過性材料から構成されるが、液及びガス冷媒が通過できる開口部48が形成されている。この構造により、外側部44は、外側部44を通過する冷媒の流れをほとんど妨げない。このような冷媒の流れを邪魔することなく自由な流れとするために、開口部48は、外側部44の大部分に、好ましくは外側部44の面積の75%を超える部分に、形成される。これを実現するため、開口部48の数を比較的少なくし、大きさを大きくする。より具体的には、例示の実施形態では、開口部48のそれぞれの横幅は、外側部44の横幅と等しい。例示の実施形態では、図7から分かる通り、単一の開口部48が、隣接する管支持板32間毎に配置されており、端部にある開口部48は長手方向に短くされている。
【0074】
さらに図4図9を参照して、通過できる外側部が内側部42とシェル10との間の何もない空間によって形成されるよう、外側部44及びフランジ部46をなくすこともできる。なお、例示の実施形態では、バッフル40の内側部42の装着性と安定性を高めるために、外側部44及びフランジ部46が備えられている。いずれの場合も、通り抜けできる部分(例えば外側部44)の横幅は、好ましくは、シェル10と隣接する直立バッフル70との間の距離の50%以下である。さらに、通過できる部分(例えば外側部44)の横幅は、好ましくは、シェル10と冷媒分配器20の隣接する部分との間の距離の50%以下である。例示の実施形態では、図9から分かる通り、隣接する直立バッフル70は、冷媒分配器20の隣接する側部と同一線上に配置されている。
【0075】
次に、上側バッフル40の機能をより詳細に説明する。上側バッフル40は、管束30と、冷媒蒸気がシェル10から吸引されるシェル冷媒蒸気出口12aと、の間に配置されるので、蒸発した蒸気はすべて上側バッフル40を通って流れる必要がある。上側バッフルは、上向きの蒸気の流れを制限することにより流下液膜バンクの最上部近傍の蒸気の流れを均一とするよう機能する。内側部42の中実領域は、冷媒流れが管バンクからずれることを許容せず、管束30の最上部における高速の流れをシェル10の他の部分における低速の流れと強制的に混合させる。外側部44の開口領域により、管束30から蒸発した蒸気を、冷媒分配器20の上方の蒸気と混合できる。例示の実施形態では、開口部をすべて同じ大きさとしているが、蒸気の流れを方向付けるのに異なる大きさの開口部を配置することもできる。
【0076】
上記の説明からから分かる通り、上側バッフル40は鉛直方向に関して管束30の最上部に配置されるとともに、上側バッフル40は、管束30から、横方向外側に、シェル10の第一側部LSに向かって延設されている。また、好ましくは、上側バッフルは、管束30に隣接して横方向に配置される上側非通過部分42と、上側非通過部分42の横方向外側に配置される上側通過部分44と、を有し、上側通過部分44は、シェル10の側部LSに隣接している。また、好ましくは、上側通過部分44の横幅は、上側バッフル40の全体の横幅の50%未満である。したがって、各上側非通過部分の横幅は各上側通過部分の横幅より大きい。また、上述の通り、上側バッフル40は、非透過性材料から好ましくは形成され、上側通過部分44を形成するよう孔48が形成されている。また、上述の通り、上側バッフル40は、好ましくは、鉛直方向に関して冷媒分配器20の底部に配置される。上側バッフルを、冷媒分配器20の底部に取り付けることもできる。例示の実施形態では、上側バッフル40は、好ましくは、管束30を支持する少なくとも一の管支持32によって鉛直方向に支持される。上側バッフルは、鉛直方向に関して、シェルの底部縁部の上方のシェルの全高の40%~70%の範囲内の位置に配置される。
【0077】
上述の通り、例示の実施形態では、互いの鏡像となる一ペアの上側バッフル40が好ましくは備えられる。なお、上側バッフル40が一つであっても利点が得られ、したがって、熱交換器1は好ましくは少なくとも一つの上側バッフル40を有し、必ずしも両方の上側バッフルを必要とするものではない。
【0078】
次に図4図7及び図11を参照して、中間バッフル50をより詳細に説明する。上述の通り、例示の実施形態では、熱交換器1は、一ペアの中間バッフル50を有しており、それぞれの中間バッフル50は冷媒分配器20及び管束30の各側部に配置される。一ペアの中間バッフル50は互いに同一である。なお、図5図6からよく分かる通り、一ペアの中間バッフル50は、中心軸Cを通る鉛直平面Vに対して鏡像配置で、互いに対向するよう装着される。したがって、ここでは、一方の中間バッフル50のみを詳細に説明及び/又は例示する。なお、一方の中間バッフル50に関する説明及び例示が他方の中間バッフル50にも当てはまることは当業者には明らかであろう。また、中間バッフル50の一方を第一中間バッフル50と呼び、中間バッフル50の他方を第二中間バッフル50と呼ぶことができ、あるいは中間バッフル50の一方を第二中間バッフル50と呼び、中間バッフル50の他方を第一中間バッフル50と呼ぶことができることも明らかであろう。ここではバッフル50を中間バッフル50と呼ぶが、バッフル50を上側バッフル40に対する下側バッフルとみなすことができ、また、バッフル50を下側バッフル60に対する上側バッフルとみなすこともできる。言い換えれば、中間バッフル50の相対的な位置は、他の部分に対する位置に依存する。
【0079】
中間バッフル50は、主要部52と、主要部52の外縁から上方へ延設される外側フランジ部54と、主要部52に装着される補強リブ56と、を有する。例示の実施形態において、主要部52及び外側フランジ部54はそれぞれ、孔58が形成されていなければ液冷媒やガス冷媒が通り抜けることができない、金属等の剛性のシート状/板状の材料から形成される。さらに、例示の実施形態において、主要部52及び外側フランジ部54は、単一の一体構造部材として、互いに一体的に形成される。なお、これらの板52,54を別々の部材として構成し、溶接等のあらゆる従来の技術を用いて互いに取り付けることもできることは本開示から当業者には明らかであろう。いずれの場合も、主要部52は、好ましくは、外縁を除いて、液冷媒及びガス冷媒が通り抜けることができる通過部分である。外側フランジ部54は、非通過部分とすることも、通過部分とすることもできる。なお、例示の実施形態では、外側フランジ部54は、非通過部分であり、透過性材料として形成される場合よりもより剛性な外側の部分となる。補強リブ56は、好ましくは、主要部52と同じ材料から構成される別部材であり、管支持板32から間隔を空けた位置において強度を追加するために装着される。
【0080】
さらに図4図7及び図11を参照して、主要部52は、管支持板32を収容する長手方向に間隔を空けて配置される複数のスロット59を有する。また、主要部52及び外側フランジ部54は、中間バッフル50の外側端部で、管支持板32の溝35によって支持される。主要部52の内側部分は、図11に示す通り、管支持板32を支持している複数の補強バー33(図では六個)のうちの一つによって鉛直方向に支持される。図6では、便宜上補強バー33を省略している。例示の実施形態では、図6及び図11からよく分かる通り、外側フランジ部54は主要部分52の外縁に沿った中実体である。主要部52には、複数の孔58が形成されている。例示の実施形態では、孔58は数が多いが、大きさは小さい。例示の実施形態では、孔58の直径は伝熱管31の直径より小さい。なお、孔58を細長いスロットとすることも、主要部52をルーバー状の構成とすることもできる。外側フランジ54は、好ましくは、組み込むときに有用な一ペアの垂直タブを有する。
【0081】
図11からよく分かる通り、主要部52は水平面Pと実質的に平行である。主要部52は、シェル10の底部から上方に、シェル10の全高の20%~40%の範囲に配置される。例示の実施形態では、中間バッフル50の主要部52は、シェル10の底部から上方に、シェル10の全高の約30%の位置に配置される。なお、主要部52は、好ましくは、通過経路PLの上方に配置される。20%~40%の寸法上の位置範囲は、図11では正確にはスケーリングされていない(特に20%の位置)。また、中間バッフル50の横幅は、中間バッフル50において測定されるシェル10の全幅の20%以下である。
【0082】
次に、中間バッフル50の機能をより詳細に説明する。上述の通り、主要部52は孔58を有する。あるいは、主要部52を格子状又はルーバー状の領域とすることもできる。いずれの場合も、主要部58は、高速箇所を均一にし、液滴を捕集し、液溜部へと排出する。このように、中間バッフル50は、第一チューブ・パスと第二チューブ・パスとの間の局所的な蒸気速度を低減し、液滴を運動量によって除去するために用いられる。液滴は、主要部52に形成される格子、多孔板、ルーバー等との衝突によって上昇が(物理的に)停止される。中間バッフル50はそれ自体でいくつもの利点があるが、特に上側バッフル40と組み合わせて用いられたときに中間バッフルは有用である。これは、上側バッフル40が備えられることで、高速な蒸気の流れと、そのような蒸気の流れとともに運ばれる液滴を案内できるからである。主要部52の全開口面積は、好ましくは全面積の35%~65%の範囲である。例示の実施形態では、全開口面積は約50%である。また、用いられている開口58の個々の開口大きさは、好ましくは、直径2~10ミリメートルの範囲である。孔58の孔径は、上側バッフルの開口部48の孔径より小さい。さらに、孔58の総面積は、好ましくは、上側バッフル40の総面積より小さい。
【0083】
上記の説明から分かる通り、中間バッフル50は上側バッフル40の鉛直方向下方に配置されるとともに、中間バッフル50はシェルの側部LSから横方向内側に延設されている。このように、中間バッフル50は、上側バッフル40よりも下にあるので、中間バッフル50をまた下側バッフル50とみなすこともできる。中間(下側)バッフル50は、上側バッフルよりも下にあるが、中間(下側)バッフル50は、好ましくは通過経路PLの鉛直方向上方に配置される。また、図11からよく分かる通り、中間(下側)バッフル50は、鉛直方向に関して、シェル10の底部縁部の上方のシェル10の全高の20%~40%の範囲に配置される。また、中間(下側)バッフル50は、シェルの側部LSから横方向内側に、中間(下側)バッフル50の位置で長手方向中心軸Cに対して垂直方向に測定されるシェル10の幅の20%以下の距離で、延設される。中間バッフル50を下側バッフル50とみなすこともできるので、中間(下側)バッフル50は、好ましくは下側通過部分52を有する。また、中間(下側)バッフル50は、非透過性材料から形成され、下側通過部分52を形成するよう孔58が形成されている。図7から分かる通り、それぞれの下側通過部分52は、それぞれの中間(下側)バッフル50の大部分を形成している。また、中間(下側)バッフル50は、管束30から横方向に離間した位置にある中間(下側)バッフル50の自由端へと、管束30に向かって横方向内側に延設されている。
【0084】
上述の通り、例示の実施形態では、互いの鏡像となる一ペアの中間(下側)バッフル50が好ましくは備えられる。なお、中間(下側)バッフル50が一つであっても利点が得られ、したがって、熱交換器1は、好ましくは少なくとも一つの中間(下側)バッフル50を有し、必ずしも両方の上側バッフルを必要とするものではない。
【0085】
次に図4図7及び図12を参照して、下側バッフル60をより詳細に説明する。上述の通り、例示の実施形態では、熱交換器1は、一ペアの下側バッフル60を有しており、それぞれの下側バッフル60は、冷媒分配器20及び管束30の各側部に配置される。一ペアの下側バッフル60は、互いに同一である。なお、図5図6からよく分かる通り、一ペアの下側バッフル60は、中心軸Cを通る鉛直平面Vに対して鏡像配置で、互いに対向するよう装着される。したがって、ここでは、一方の下側バッフル60のみを詳細に説明及び/又は例示する。なお、一方の下側バッフル60に関する説明及び例示は、他方の下側バッフル60にも当てはまることは当業者には明らかであろう。また、下側バッフル60の一方を第一下側バッフル60と呼び、下側バッフル60の他方を第二下側バッフル60と呼ぶことができ、あるいは下側バッフル60の一方を第二下側バッフル60と呼び、下側バッフル60の他方を第一下側バッフル60と呼ぶことができることも明らかであろう。下側バッフル60は、上側バッフル40及び中間バッフル50の下方に配置される。したがって、中間バッフル50を、下側バッフル60に対して、上側バッフルとみなすこともできよう。
【0086】
下側バッフル60は、主要部62と、主要部62の内側縁部から下方へ延設される内側フランジ部64と、を有する。例示の実施形態において、主要部62及び内側フランジ部64は、それぞれ、孔(例示の実施形態においては用いられていない)がそこに形成されていなければ液冷媒やガス冷媒が通り抜けることができない、金属等の、剛性のシート状/プレート状の材料から形成される。さらに、例示の実施形態において、主要部62及び内側フランジ部64は、単一の一体構造部材として互いに一体的に形成される。なお、これらの板62,64を別々の部材として構成し、溶接等のあらゆる従来の技術を用いて互いに取り付けることもできることは本開示から当業者には明らかであろう。いすれの場合も、主要部62は、好ましくは、液冷媒及びガス冷媒の通り抜けを防止する非通過部分である。内側フランジ部64は、非通過部分とすることも通過部分とすることもできる。なお、例示の実施形態では、内側フランジ部64は、非通過部分であり、透過性材料で形成される場合よりもより剛性な外側の部分となる。
【0087】
さらに図4図7及び図12を参照して、主要部62は、実質的に水平面Pと平行に延設される平面部分である。一方、フランジ部64は、実質的に鉛直方向に延設される。また、主要部62及び内側フランジ部64は、管支持板32の溝36(図13に示す)によって支持される。具体的には、溝36は、下側バッフル60を長手方向に摺動可能に収容する大きさと形状を有する。主要部62は、シェル10の底部から上方に、シェル10の全高の5%~40%の範囲に配置される。例示の実施形態では、下側バッフル60の主要部62は、シェル10の底部から上方にシェル10の全高の約15%の位置に配置される。なお、主要部62は、好ましくは、通過経路PLの下方に配置される。5%~40%の寸法上の位置範囲は、図12では正確にはスケーリングされていない(特に40%の位置)。また、下側バッフル60の横幅は、下側バッフル60において測定されるシェル10の全幅の20%以下である。鉛直方向位置及び横幅は、図12からよく分かるであろう。
【0088】
次に、下側バッフル60の機能をより詳細に説明する。下側バッフル60は、シェル側の浸漬領域から来る液体流を乾いている管に向かうよう方向を変えるよう用いられる。このように、下側バッフルは、液冷媒がシェルの側部を上がってくるのを遮断する障害である。浸漬領域に溜まっている液冷媒は、泡立ち、シェル10の側部を上がってくる傾向がある。これに対して、下側バッフル60は、シェル10の側部を上がってくる液冷媒をトラップし、冷媒管31へと案内し蒸発させるよう用いられる。冷媒管31の下側集合群LGにおいて、管31のうちのいくつかは、下側バッフル60の下方で、フランジ部64の下方の位置では下側バッフル60に隣接して配置される。これらの管31は、ミストエリミネータ管の機能を果たす。
【0089】
上記の説明から分かる通り、下側バッフル60は、シェル10の側部LSから延設され、下側バッフルは、シェル10の底部縁部の上方のシェル10の、鉛直方向の全高の5%から40%の範囲内に配置されており、かつ、下側バッフル60は、下側バッフルが位置する高さで長手方向中心軸Cに対して垂直方向に測定されるシェルの幅の20%以下の距離で、シェル10の側部LSから横方向内側に延設される。また、下側バッフル60は、好ましくは、水平面Pと実質的に平行な横方向(主要)部62と、シェル10の側部LSから横方向に間隔を空けた位置に側方部62から下方へ延設されるフック(フランジ)部64と、を有する。図6図7から分かる通り、フック(フランジ)部64は、好ましくは、横方向に関して、シェル10の側部LSから最も離れた横方向(主要)部62の端部に配置され、水平面Pに対して実質的に垂直である。
【0090】
上述の通り、下側バッフル60はそれぞれ、好ましくはシートメタル等の非透過性材料から構成される。また、下側バッフル60は、好ましくは、鉛直方向に関して、通過経路PLの下方に、かつ液冷媒の液位LLの上方に配置される。例示の実施形態では、下側バッフル60は、好ましくは、鉛直方向に関して、液位LLより通過経路PLの近くに配置される。また、伝熱管31の下側集合群LGの横幅は、好ましくは、伝熱管31の上側集合群UGの横幅より大きい。このような配置により、下側バッフル60の近傍のミストの除去が促進される。さらに、伝熱管31のうちの少なくとも一つの伝熱管は、好ましくは、下側バッフル60のそれぞれの鉛直方向下方に、かつ、シェル10の側部LSからの最遠部である下側バッフル60の端部から横方向外側に配置されている。したがって、鉛直方向で見て、下側バッフル60のそれぞれが、少なくとも一つの伝熱管と垂直方向に重なっている。また、伝熱管31のうちの少なくとも一つの伝熱管は、長手方向中心軸Cに対して垂直方向に測定して、下側バッフルのそれぞれから横方向に管直径の一つ分以内に配置される。
【0091】
上述の通り、例示の実施形態では、互いの鏡像となる一ペアの下側バッフル60が好ましくは備えられる。なお、下側バッフル60が一つであっても利点が得られ、したがって、熱交換器1は好ましくは少なくとも一つの下側バッフル60を有し、必ずしも両方の下側バッフルを必要とするものではない。
【0092】
次に図4図8及び図10を参照して、直立バッフル70をより詳細に説明する。上述の通り、例示の実施形態では、熱交換器1は、一ペアの直立バッフル70を有しており、それぞれの直立バッフル70は、冷媒分配器20及び管束30の対応する側部に配置される。一ペアの直立バッフル70は互いに同一である。なお、図5図6からよく分かる通り、一ペアの直立バッフル70は、中心軸Cを通る鉛直平面Vに対して鏡像配置で、互いに対向するよう装着される。したがって、ここでは、一方の直立バッフル70のみを詳細に説明及び/又は例示する。なお、一方の直立バッフル70に関する説明及び例示が他方の直立バッフル70にも当てはまることは当業者には明らかであろう。また、直立バッフル70の一方を第一直立バッフル70と呼び、直立バッフル70の他方を第二直立バッフル70と呼ぶことができ、あるいは直立バッフル70の一方を第二直立バッフル70と呼び、直立バッフル70の他方を第一直立バッフル70と呼ぶことができることも明らかであろう。
【0093】
直立バッフル70は、上側部72と、上側部72の外縁から下方へ延設されるバッフル部74と、を有する。例示の実施形態において、上側部72及びバッフル部74は、それぞれ、孔(例示の実施形態においては用いられていない)がそこに形成されていなければ液冷媒やガス冷媒が通り抜けることができない、金属等の、剛性のシート状/板状の材料から形成される。さらに、例示の実施形態において、上側部72及びバッフル部74は、単一の一体構造部材として互いに一体的に形成される。なお、これらの板72,74を別々の部材として構成し、溶接等のあらゆる従来の技術を用いて互いに取り付けることもできることは本開示から当業者には明らかであろう。いずれの場合も、上側部72は、非通過部分とすることも通過部分とすることもできる。なお、例示の実施形態では、上側部72は、非通過部分であり、透過性材料で形成される場合よりもより剛性な外側の部分となる。一方、バッフル部74は、好ましくは、液冷媒及びガス冷媒の通り抜けを防止する非通過部分である。
【0094】
さらに図4図8及び図10を参照して、上側部72は、実質的に水平面Pと平行に延設される平面部分である。一方、バッフル部74は、水平面Pに実質的に垂直に鉛直方向に延設される平面部分である。また、上側部分72及びバッフル部74は、管支持板32の溝37に支持される。具体的には、溝37は、直立バッフル70を長手方向に摺動可能に、又は、鉛直方向上側から、収容する大きさと形状を有する。図13に示す通り、溝37は上側部分72より深く、したがって、上側バッフル40の内側部分を、上側部分72上に装着できるとともに、さらに、管支持板32の上面の中央部分38と同一平面とすることができる。
【0095】
次に、直立バッフル70の機能をより詳細に説明する。直立バッフル70は、冷媒分配器20からの液漏れ(liquid leackage)をバルクの蒸気流れから分離するために用いられる。また、直立バッフルは、流下液膜バンクの最上部の行(管束30の最上部)と冷媒分配器20の底部との間の高速蒸気冷媒から液冷媒をトラップし排出するために用いられる。一部の液冷媒は、冷媒分配器20の底部から垂れ下がる場合があり、鉛直管支持板32によって支持されている側へと引き寄せられることがある。これに対して、直立バッフルは、そのような流れが管束30の外側に流れるのを防止する(又は低減する)のに役立ち、具体的には、例えば、液体が管束30上に流れるよう案内することができる。直立バッフル70を、冷媒分配器20の底部に、又は上側バッフル30(もし備えられている場合)に、装着することができる。あるいは、直立バッフル70を管支持板32に装着することもできよう。
【0096】
上記の説明から分かる通り、直立バッフル70は、鉛直方向に関して管束30の最上部と少なくとも部分的に重なるよう、管束30の最上部において冷媒分配器20から下方へ延設される。直立バッフルは、管束30から、シェル10の側部LSに向かう方向の横方向外側に配置されている。図10からよく分かる通り、好ましくは、直立バッフル70は、伝熱管31の管直径の3倍以下の距離だけ、管束30からシェル10の側部LSに向かう方向の横方向外側に配置される。より好ましくは、直立バッフル70は、伝熱管31の管直径の2倍以下の距離だけ、管束30からシェル10の側部LSに向かう方向の横方向外側に配置される。例示の実施形態では、直立バッフル70は、伝熱管の管直径の約1倍以下の距離だけ、管束30からシェル10の側部LSに向かう方向の横方向外側に配置される。好ましくは、直立バッフル70は、伝熱管31の管直径の約1倍以下の距離だけ、管束30からシェル10の側部LSに向かう方向の横方向外側に配置される。
【0097】
さらに、図10からよく分かる通り、直立バッフル70は、好ましくは、鉛直方向に関して、管直径の1~3倍の距離で管束30の最上部と重なる。上述の通り、直立バッフル70は、それぞれ、好ましくは、水平面Pに実質的に垂直に延設されるバッフル部74を有する。直立バッフルは、好ましくは、管束30を支持する少なくとも一の管支持32によって鉛直方向に支持される。少なくとも一の管支持32は、バッフル部74を収容するスロットを有する。また、直立バッフルは、それぞれ、好ましくは、水平面Pと実質的に平行な方向にバッフル部74から延設される横方向部(上側部)72を有する。横方向部72は、少なくとも一の管支部32によって鉛直方向に支持される。横方向部(上側部)72は、好ましくは、少なくとも一の管支持32と冷媒分配器20の底部との間に鉛直方向に挟持される。横方向部(上側部)72は、バッフル部74の上端から横方向内側に、シェル10の側部LSから離間する方向に延設される。直立バッフル70を、熱交換器1の他の部分に固定して取り付けることもできる。例えば、直立バッフル70を、定位置に保持するようタック溶接することもできる。例示の実施形態では、直立バッフル70は、好ましくは板状金属等の非透過性材料から構成される。
【0098】
上述の通り、例示の実施形態では、互いの鏡像となる一ペアの直立バッフル70が好ましくは備えられる。なお、直立バッフル70が一つであっても利点が得られ、したがって、熱交換器1は好ましくは少なくとも一つの直立バッフル70を有し、必ずしも両方の直立バッフルを必要とするものではない。
【0099】
次に図13を参照して、一ペアの横方向に間隔を空けて配置された上面34と、一ペアの横方向に間隔を空けて配置された中間スロット35と、一ペアの横方向に間隔を空けて配置された下側スロット36と、一ペアの上側スロット37と、上面の中央部分38と、支持フランジ39と、を明瞭に示すために、管支持板32の一つを例示する。面38はスロット37間に配置される。これらの特徴は上で説明したので、ここでは、さらに詳細には説明しない。なお、例示の実施形態では、支持板32のそれぞれは、好ましくは、板状金属等の薄いシート材料から図13に示す所望の形状に切り出されることを記載しておく。上側バッフル40は、上側バッフル40を管支持板32上に鉛直方向下方へと移動させる、又は、上側バッフル40を管支持板32の側部から移動させることによって、装着される。直立バッフル70は、上側バッフル40より前に、鉛直方向下方へと挿入する必要がある。中間バッフル50は、管支持板32の側部から挿入される。下側バッフル60は、長手方向に管支持板32へと挿入される。好ましくは、バッフル40,50,60,70は、すべて、シェル10に管束を組み付ける前に組み付けられる。
【0100】
一ペアのバッフル40,50,60,70のそれぞれは、単独であっても利点が得られ、また各バッフルであってもそれぞれ単独で利点が得られる。なお、バッフル40,50,60,70を、任意の組み合わせで用いることができる。例えば、一方の又は両方の上側バッフル40を、他のバッフル50,60,70は用いずに、用いることができる。同様に、一方の又は両方の下側バッフル60を、他のバッフル40,50,70を用いずに、用いることができる。同様に、一方の又は両方の直立バッフル70を、他のバッフル40,50,60を用いずに、用いることができる。一方の又は両方の中間バッフル50を、他のバッフル40,60,70を用いずに、用いることができるが、中間バッフル50は、上側バッフル40と共に用いられる場合より大きな利点がある。上側バッフル40、下側バッフル60及び直立バッフル70は、単独でも、また他のバッフルのいずれかと共にも用いられても、利点がある。バッフル40,50,60,70を、シェル10内に単に載置することができ、又は一箇所以上でタック溶接することもできる。バッフル40,50,60,70を固定するために、例えば、タック溶接を、それぞれのバッフル40,50,60,70の両端部で用いることができる。
<変形例としての管構成>
【0101】
次に図14を参照して、変形実施形態かかる変形例としての管束31’を有する変形例としての蒸発器1’の一部を例示する。この変形例としての実施形態は、変形例としての管束31’を除いて先の実施形態と同一である。したがって、以下の説明及び例示以外は、先の実施形態の説明及び例示が変形例としての実施形態にも当てはまることは、本開示から当業者に明らかであろう。変形例としての管束30’には、追加の外側列の管31が配置されて、変形例としての上側集合群UGと変形例としての下側集合群LGを形成している。上側集合群UGにおいては、追加の列は、直立バッフル70から導かれる冷媒が該追加の列の上に落下するよう、配置される。下側集合群LGにおいては、ミスト除去をさらに促進するために、二つの追加の管31だけが下側バッフル60に隣接して配置される。上記配置により、直立バッフル70は、伝熱管31の管直径の1倍未満の距離だけ、管束30からシェル10の側部LSに向かう横方向外側に配置され、隣接する伝熱管31と同一線上に配置することもできる。変形例としての管支持板32’は、追加の管31を収容するためにさらなる孔を有する必要がある。それ以外、管支持板32’は、管支持板32と同一である。
<用語の概括的な説明>
【0102】
本発明の範囲の理解において、ここで用いられる用語「備える」及びその派生語は、記載された特徴、要素、構成要素、群、一体物、及び/又はステップが有ることを明記しているオープンエンドの用語を意味するのであって、記載されていない特徴、要素、構成要素、群、一体物、及び/又はステップが有ることを排除するものではない。上記は、用語「有する」、「含む」及びそれらの派生語など同様の意味を持つ語にも当てはまる。また、単数形で用いられる用語「部分(パート)」、「部分(セクション)」、「部(ポーション)」、「部材」あるいは「要素」は、単一のパーツあるいは複数のパーツの2つの意味を持ちうる。以上の実施形態の説明に用いられる、次の用語、「上側」、「下側」、「上方」、「下向き」、「鉛直」、「水平」、「下方」、「横」同じく他の同様な方向を示す用語は、図4及び図5に示すように蒸発器の長手方向中心軸が実質的水平に配置されたときの蒸発器の方向を示す用語として使用される。このように、本発明において用いられるこれらの用語は、通常の動作位置において用いられている蒸発器に対して相対的な意味で用いられる。さらには、ここでは、「実質的」、「約」、「およそ」といった程度を示す用語は、最終結果が大きく変わらないような、妥当な変形の条件の変更量を意味するものとして用いる。
【0103】
本発明の説明のためにいくつかの実施例が選択されたに過ぎず、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の変更、変形ができることは、本開示から当業者には明らかであろう。例えば、必要に応じて及び/又は所望により、種々の構成要素の大きさ、形状、配置、向きを変更できる。互いと直接的に連結あるいは接触するよう示した構成要素は、それらの間に中間構造体を有してもよい。一つの要素の機能は二つによって達成することができ、またその逆の場合も同様である。一の態様の構造及び機能を他の態様に適用することもできる。すべての利点が必ずしも同時に特定の態様にもたらされる必要はない。先行技術から区別されるそれぞれの特徴は、それ単独として、あるいは他の特徴と組み合わせとして、そのような特徴により実施される構造的あるいは機能的思想を含む、出願人によるさらなる発明の内容として付帯的に考慮されるものとする。このように、前述の本発明にかかる実施例の説明は単なる例示であって、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって決められる本発明を限定するものではないことは、本開示から当業者には明らかであろう。
図1
図2
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図8
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図14