(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】認証方法、認証プログラム、および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06F 21/32 20130101AFI20231012BHJP
【FI】
G06F21/32
(21)【出願番号】P 2022522167
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2020019108
(87)【国際公開番号】W WO2021229717
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼ 壮一
(72)【発明者】
【氏名】青木 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】内田 秀継
【審査官】上島 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116353(JP,A)
【文献】特開2007-72861(JP,A)
【文献】特開2004-62846(JP,A)
【文献】特開2018-197980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面の一部に視野制限が設けられた表示装置において、前記一部に認証に関する操作情報を表示させ、
カメラにより撮影された撮影画像を取得し、
取得した前記撮影画像に含まれる複数の顔画像それぞれの前記撮影画像上の位置に基づき、
前記カメラにより撮影される撮影画像と、前記撮影画像において前記表示装置における前記操作情報の視認可能範囲に基づいて定めた所定の位置範囲との格納されている関係を用いて、前記複数の顔画像
から前記位置範囲に含まれる顔画像を選択し、
複数の顔画像それぞれに対応付けられた生体情報を記憶する記憶部を参照して、選択した前記顔画像との類似度が基準を満たす顔画像に対応付けられた生体情報を特定し、
センサにより検出された生体情報を受け付けると、受け付けた前記生体情報と、特定した前記生体情報との照合による認証を行う、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする認証方法。
【請求項2】
前記センサにより前記生体情報が検出された時刻を含む所定時間範囲内に前記カメラにより撮影された前記撮影画像から、前記顔画像を選択する処理を前記コンピュータが実行することを特徴とする請求項1に記載の認証方法。
【請求項3】
前記画面の前記一部に、異なる方向に視認可能角度範囲が複数設定されていることを特徴とする請求項
1または請求項2に記載の認証方法。
【請求項4】
前記カメラから被写体までの距離を考慮して、前記撮影画像から前記顔画像を選択する処理を、前記コンピュータが実行することを特徴とする請求項1~
請求項3のいずれか一項に記載の認証方法。
【請求項5】
センサにより検出された生体情報と、登録された生体情報との照合による認証処理を実行する認証方法において、
画面の一部に視野制限が設けられた表示装置において、前記一部に認証に関する操作情報を表示させ、
前記センサにより前記生体情報が検出された時刻を含む所定時間範囲内にカメラにより撮影された撮影画像に顔画像が含まれる場合、
前記カメラにより撮影される撮影画像と、前記撮影画像において前記表示装置における前記操作情報の視認可能範囲に基づいて定めた所定の位置範囲との格納されている関係を用いて、登録された前記生体情報のうち、前記顔画像との類似度が基準を満たす顔画像に対応付けられた生体情報を、検出した前記生体情報との照合対象とするか否かを決定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする認証方法。
【請求項6】
前記画面の一部に、異なる方向に視認可能角度範囲が複数設定されていることを特徴とする
請求項5に記載の認証方法。
【請求項7】
画面の一部に視野制限が設けられ、前記一部に認証に関する操作情報を表示させる表示装置と、
カメラにより撮影された撮影画像に含まれる複数の顔画像それぞれの前記撮影画像上の位置に基づき、
前記カメラにより撮影される撮影画像と、前記撮影画像において前記表示装置における前記操作情報の視認可能範囲に基づいて定めた所定の位置範囲との格納されている関係を用いて、前記複数の顔画像
から前記位置範囲に含まれる顔画像を選択する選択部と、
複数の顔画像それぞれに対応付けられた生体情報を記憶する記憶部を参照して、選択した前記顔画像との類似度が基準を満たす顔画像に対応付けられた生体情報を特定する特定部と、
センサにより検出された生体情報を受け付けると、受け付けた前記生体情報と、特定した前記生体情報との照合による認証を行う認証部と、を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
センサにより検出された生体情報と、登録された生体情報との照合による認証処理を実行する認証部と、
画面の一部に視野制限が設けられ、前記一部に認証に関する操作情報を表示させる表示装置と、
前記センサにより前記生体情報が検出された時刻を含む所定時間範囲内にカメラにより撮影された撮影画像に顔画像が含まれる場合、
前記カメラにより撮影される撮影画像と、前記撮影画像において前記表示装置における前記操作情報の視認可能範囲に基づいて定めた所定の位置範囲との格納されている関係を用いて、前記顔画像の前記撮影画像上の位置に基づき、登録された前記生体情報のうち、前記顔画像との類似度が基準を満たす顔画像に対応付けられた生体情報を、検出した前記生体情報との照合対象とするか否かを決定する決定部と、を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項9】
コンピュータに、
画面の一部に視野制限が設けられた表示装置において、前記一部に認証に関する操作情報を表示させ、
カメラにより撮影された撮影画像を取得し、
取得した前記撮影画像に含まれる複数の顔画像それぞれの前記撮影画像上の位置に基づき、
前記カメラにより撮影される撮影画像と、前記撮影画像において前記表示装置における前記操作情報の視認可能範囲に基づいて定めた所定の位置範囲との格納されている関係を用いて、前記複数の顔画像
から前記位置範囲に含まれる顔画像を選択し、
複数の顔画像それぞれに対応付けられた生体情報を記憶する記憶部を参照して、選択した前記顔画像との類似度が基準を満たす顔画像に対応付けられた生体情報を特定し、
センサにより検出された生体情報を受け付けると、受け付けた前記生体情報と、特定した前記生体情報との照合による認証を行う、
処理を実行させることを特徴とする認証プログラム。
【請求項10】
センサにより検出された生体情報と、登録された生体情報との照合による認証処理を実行する認証プログラムにおいて、
コンピュータに、
画面の一部に視野制限が設けられた表示装置において、前記一部に認証に関する操作情報を表示させ、
前記センサにより前記生体情報が検出された時刻を含む所定時間範囲内にカメラにより撮影された撮影画像に顔画像が含まれる場合、
前記カメラにより撮影される撮影画像と、前記撮影画像において前記表示装置における前記操作情報の視認可能範囲に基づいて定めた所定の位置範囲との格納されている関係を用いて、前記顔画像の前記撮影画像上の位置に基づき、登録された前記生体情報のうち、前記顔画像との類似度が基準を満たす顔画像に対応付けられた生体情報を、検出した前記生体情報との照合対象とするか否かを決定する、
処理を実行させることを特徴とする認証プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、認証方法、認証プログラム、および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1生体情報(例えば、顔特徴)を用いた認証により候補者を絞り込み、第2生体情報(例えば、手のひら静脈特徴)を用いた認証により本人認証を行なう生体認証技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カメラの設置状況やユーザの利用状況によっては、同時に複数の顔が撮影される場合がある。この場合、絞り込まれる候補者が多くなってしまい、認証時間が長くなるおそれがある。候補者を少なくするために絞込み率を高くすると、顔認証の処理時間が増大するおそれがあり、顔認証の精度によっては取りこぼす(正解者が絞込みリストに入らない)おそれがある。
【0005】
1つの側面では、本発明は、認証時間を短縮化することができる認証方法、認証プログラム、および情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、認証方法は、画面の一部に視野制限が設けられた表示装置において、前記一部に認証に関する操作情報を表示させ、カメラにより撮影された撮影画像を取得し、取得した前記撮影画像に含まれる複数の顔画像それぞれの前記撮影画像上の位置に基づき、前記カメラにより撮影される撮影画像と、前記撮影画像において前記表示装置における前記操作情報の視認可能範囲に基づいて定めた所定の位置範囲との格納されている関係を用いて、前記複数の顔画像から前記位置範囲に含まれる顔画像を選択し、複数の顔画像それぞれに対応付けられた生体情報を記憶する記憶部を参照して、選択した前記顔画像との類似度が基準を満たす顔画像に対応付けられた生体情報を特定し、センサにより検出された生体情報を受け付けると、受け付けた前記生体情報と、特定した前記生体情報との照合による認証を行う、処理をコンピュータが実行する。
【0007】
他の態様では、認証方法は、センサにより検出された生体情報と、登録された生体情報との照合による認証処理を実行する認証方法において、画面の一部に視野制限が設けられた表示装置において、前記一部に認証に関する操作情報を表示させ、前記センサにより前記生体情報が検出された時刻を含む所定時間範囲内にカメラにより撮影された撮影画像に顔画像が含まれる場合、前記カメラにより撮影される撮影画像と、前記撮影画像において前記表示装置における前記操作情報の視認可能範囲に基づいて定めた所定の位置範囲との格納されている関係を用いて、登録された前記生体情報のうち、前記顔画像との類似度が基準を満たす顔画像に対応付けられた生体情報を、検出した前記生体情報との照合対象とするか否かを決定する、処理をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0009】
認証時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は情報処理装置の全体構成を例示するブロック図であり、(b)は情報処理装置のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【
図2】格納部に格納されているテーブルを例示する図である。
【
図3】(a)および(b)は顔撮影カメラの設置場所を例示する図であり、(c)は視認可能範囲を例示する図であり、(d)は格納部に格納されている視認可能範囲の情報を例示する図であり、(e)は顔画像の位置のずれを例示する図である。
【
図4】情報処理装置の処理の一例を表すフローチャートである。
【
図5】(a)~(c)は撮影画角と視認可能範囲との関係を例示する図である。
【
図6】(a)および(b)は画面の一部に視認制限を設けた場合を例示する図である。
【
図7】視認可能範囲を別方向に設けた場合を例示する図である。
【
図8】表示装置の画面において操作情報の位置を指定して表示させる場合を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施例の説明に先立って、一つ目のモダリティで検索集合を絞り込んで別のモダリティで利用者を特定するマルチ生体認証について説明する。
【0012】
生体認証は、指紋、顔、静脈などの生体特徴を用いて本人確認をおこなう技術である。生体認証では、確認が必要な場面においてセンサによって取得した照合用生体情報と、予め登録しておいた登録生体情報とを比較(照合)し、類似度が本人判定閾値以上になるか否かを判定することで、本人確認を行なっている。
【0013】
生体認証は、銀行ATM、入退室管理など様々な分野で利用されており、特に近年、スーパーマーケットやコンビニなどにおけるキャッシュレス決済にも利用され始めている。
【0014】
生体認証には、IDやカード等で指定した登録生体情報との一致を確認する1:1認証と、複数の登録生体情報の中から一致する登録生体情報を検索する1:N認証とがある。店舗などでは、利便性の点から1:N認証が望まれることが多い。しかしながら、生体情報は取得状況などによって揺らぎを持つため、検索する登録生体情報の数が多くなると誤照合を起こす可能性が高くなる。このため、簡易なPINコードなどで絞込み、検索集合を十分小さくしてから1:N認証を実施するといった運用がなされている。どの程度まで小さくすると実用レベルになるかは生体認証の方式に依存する。しかしながら、簡易であってもPINコード入力は利便性を損なうため、IDやカードを必要としない生体認証システムが望まれている。
【0015】
そこで、複数種類のモダリティを用い、1つ目のモダリティで検索集合を絞込み、2つ目のモダリティで利用者を特定する方式が提案されている。モダリティとは、生体特徴の種類のことであり、例えば、指紋、静脈、虹彩、顔形状、手のひら形状などである。したがって、同一の指における指紋および静脈は、異なるモダリティである。複数のモダリティを個別に入力すると利便性が悪いため、指紋入力と同時に手のひら静脈を取得する方式や、手のひら静脈入力時の顔画像を撮影する方式などが提案されている。
【0016】
顔認証で絞り込み、手のひら静脈で照合を行う方式では、例えば、顔認証で候補となるN人のIDリストを作成し、得られたIDリストの集合内で手のひら静脈を用いた1:N認証が実行され、利用者を特定するといった処理が実施される。ここで、顔画像を撮影するカメラの設置状況やユーザの利用状況によっては、同時に複数の顔が撮影される場合がある。例えば、3人の顔が取得された場合、得られるIDリストはN×3人分となるため、手のひら静脈認証の照合時間を長大化させる。最初に設定されたNが、手のひら静脈認証の1:N認証の性能上限であった場合には、他人受入れのリスクが増大する。しかしながら、顔認証で1/3の人数まで絞り込もうとすると、顔認証の処理時間が増大するおそれがあり、顔認証の精度によっては取りこぼす(正解者が絞込みリストに入らない)おそれがある。
【0017】
そこで、以下の実施例では、認証時間を短縮することができる情報処理装置、認証方法、および認証プログラムを提供することを目的とする。
【実施例1】
【0018】
図1(a)は、情報処理装置100の全体構成を例示するブロック図である。
図1(a)で例示するように、情報処理装置100は、格納部10、顔検出部20、顔選択部30、顔認証部40、静脈取得部50、静脈認証部60、認証結果出力部70などとして機能する。
【0019】
図1(b)は、情報処理装置100のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図1(b)で例示するように、情報処理装置100は、CPU101、RAM102、記憶装置103、インタフェース104、表示装置105、入力装置106、顔撮影カメラ107、静脈センサ108等を備える。
【0020】
CPU(Central Processing Unit)101は、中央演算処理装置である。CPU101は、1以上のコアを含む。RAM(Random Access Memory)102は、CPU101が実行するプログラム、CPU101が処理するデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置103は、不揮発性記憶装置である。記憶装置103として、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、ハードディスクドライブに駆動されるハードディスクなどを用いることができる。記憶装置103は、認証プログラムを記憶している。インタフェース104は、外部機器とのインタフェース装置である。例えば、インタフェース104は、LAN(Local Area Network)とのインタフェース装置である。
【0021】
表示装置105は、LCD(Liquid Crystal Device)などのディスプレイ装置などである。入力装置106は、キーボード、マウスなどの入力装置である。顔撮影カメラ107は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)センサ、CCD(Charged Coupled Device)センサなどである。静脈センサ108は、MOSセンサ、CCDセンサなどを備えるとともに、近赤外照明などを備えていてもよい。
【0022】
CPU101が認証プログラムを実行することで、格納部10、顔検出部20、顔選択部30、顔認証部40、静脈取得部50、静脈認証部60、認証結果出力部70が実現される。なお、格納部10、顔検出部20、顔選択部30、顔認証部40、静脈取得部50、静脈認証部60、認証結果出力部70として、専用の回路などのハードウェアを用いてもよい。
【0023】
格納部10は、事前に登録されている利用者の複数種類の生体情報を格納している。なお、本実施例においては、複数種類の生体情報として、異なる2種類のモダリティを用いる。本実施例においては、一例として、
図2で例示するように、各利用者のIDに関連付けて、顔特徴が登録顔特徴として格納されており、さらに静脈特徴が登録静脈特徴として格納されている。
【0024】
本実施例においては、表示装置105が、認証に関する操作情報を表示する。例えば、表示装置105は、ユーザに、手のひらを静脈センサ108に対してかざすことを指示する内容を表示する。ユーザは、操作情報を視認すると、指示に従って手のひら画像を静脈センサ108に入力する。ユーザが手のひら画像を静脈センサ108に入力する際に、顔撮影カメラ107は、ユーザの顔を含む画像を取得する。表示装置105は、ユーザの視認可能範囲に指向性を有している。したがって、表示装置105に表示される情報を視認するユーザの顔位置は、おおよその範囲内に定まることになる。取得した画像の当該範囲内の顔画像を選択して顔認証を行なうことで、本人候補を絞り込む。その後、絞り込んだ候補を対象に静脈認証を行なうことで、本人認証を行なう。以下、詳細について説明する。
【0025】
顔撮影カメラ107は、表示装置105の表示内容をユーザが視認する場合に当該ユーザの顔を撮影できる場所に設置されている。例えば、表示装置105の上部などに顔撮影カメラ107が設置されている。
【0026】
図3(a)および
図3(b)は、顔撮影カメラ107の設置場所を例示する図である。
図3(a)は、正面図である。
図3(b)は、上面図である。
図3(a)および
図3(b)の例では、顔撮影カメラ107は、表示装置105の上部に設置されている。静脈センサ108は、表示装置105の下部などに設置されている。顔撮影カメラ107の撮影画角は、ユーザによる表示装置105の視認可能範囲を含むように設定されている。この場合、
図3(c)で例示するように、顔撮影カメラ107が取得する撮影画像内に、視認可能範囲が含まれるようになる。
【0027】
視認可能な角度範囲を制限する方法として、フードや覗き見防止フィルムを用いることができる。覗き見防止フィルムは、微細なルーバー(羽板)を並べて表示画面の光の出射方向を制限するものである。ここで、視認可能範囲は、ユーザ1人が視認できる程度の範囲であることが好ましい。視認可能範囲は角度で制限されるため、顔撮影カメラ107からの距離が遠くなるほど視認可能範囲の面積は広くなり、複数のユーザが視認可能となる。しかしながら、キー操作や静脈入力などを行うためには、ユーザは、入力装置106や静脈センサ108に手の届く距離に近づくことになる。その距離における視認可能範囲の面積をユーザ1人分程度にすることが好ましい。
【0028】
格納部10は、顔撮影カメラ107が取得する撮影画像内における視認可能範囲の情報を格納している。
図3(d)は、格納部10に格納されている視認可能範囲の情報を例示する図である。視認可能範囲は、撮影画像内の一部の領域である。例えば、撮影画像の縦軸のうちY1(>0%)からY2(<100%)の範囲、かつ、撮影画像の横軸のうちX1(>0%)からX2(<100%)の範囲などに設定されている。例えば、撮影画像の縦軸の最下端位置が0%であり、最上端位置が100%であり、横軸の最左端位置が0%であり、最右端位置が100%であるものとする。
図3(d)の情報を参照することで、撮影画像内において選択するべき顔画像を決定することができる。
【0029】
ユーザは、
図3(c)のような視認可能範囲にちょうど収まるように位置するとは限らない。
図3(e)のように少し左右にずれた位置からでも視認は可能であり、この場合、視認可能範囲だけを撮影すると、顔の一部分が欠けた画像しか得られないため、顔認証処理に支障をきたす。このため、視認可能範囲よりも広めの範囲を撮影して、視認可能範囲内で最も大きく(面積が多く)検出された顔を選択することで、顔画像の欠損を防いでもよい。
【0030】
図4は、情報処理装置100の処理の一例を表すフローチャートである。
図4で例示するように、静脈取得部50は、表示装置105に、静脈入力指示に係る情報を表示させる(ステップS1)。ユーザは、表示装置105の画面に表示された静脈入力指示を視認すると、手のひらを静脈センサ108にかざす。静脈取得部50は、静脈センサ108から手のひら画像を受け付けると、手のひら画像から静脈特徴を照合用静脈特徴として抽出する(ステップS2)。静脈取得部50は、手のひら画像を取得した時刻を顔選択部30に送る(ステップS3)。
【0031】
ステップS1~ステップS3と並行して、以下のステップS4~ステップS5が実行される。まず、顔検出部20は、ステップS3で受け取った時刻を含む所定時間範囲の撮影画像を顔撮影カメラ107から取得する(ステップS4)。このようにすることで、静脈センサ108に手をかざす利用者の顔画像を選択できる精度が高くなる。
【0032】
次に、顔検出部20は、格納部10に格納されている視認可能範囲を取得することで、顔画像位置を検出する(ステップS5)。
【0033】
ステップS3およびステップS5の実行後、顔選択部30は、撮影画像のうち、対象となる顔画像を選択する(ステップS6)。例えば、顔選択部30は、視認可能範囲に含まれる顔画像が1つである場合には、当該顔画像を対象として選択する。視認可能範囲に含まれる顔画像が複数である場合には、視認可能範囲内で最も大きく(面積が多く)検出された顔画像を対象として選択する。
【0034】
次に、顔認証部40は、ステップS6で選択された顔画像を用いて顔認証を行なう(ステップS7)。まず、顔認証部40は、顔画像から顔特徴を照合用顔特徴として抽出する。ここで用いる照合用顔特徴は、照合の高速性に重点を置いた絞込み用データである。顔認証部40は、照合用顔特徴と各登録顔特徴とを照合し、照合用顔特徴との類似度(絞込みスコア)が閾値以上となる登録顔特徴に関連付けられているIDを取得する。以上の処理により、格納部10に格納されているIDのうち、一部のIDを本人候補リストとして絞り込むことができる。
【0035】
次に、静脈認証部60は、ステップS2で抽出した照合用静脈特徴と、ステップS7で取得された本人候補リストのIDに関連付けられている登録静脈特徴とを照合する(ステップS8)。当該登録静脈特徴のうち1つについて照合用静脈特徴との類似度(照合スコア)が本人判定閾値以上となった場合に、認証結果出力部70は、認証成功に係る情報を出力する。当該照合スコアが本人判定閾値未満となった場合には、認証結果出力部70は、認証失敗に係る情報を出力する。認証結果出力部70によって出力された情報は、表示装置105に表示される。
【0036】
本実施例によれば、顔撮影カメラ107により撮影された撮影画像に含まれる複数の顔画像それぞれの撮影画像上の位置に基づき、複数の顔画像から対象となる顔画像を選択している。それにより、絞込みに使用すべき顔を特定することができ、顔認証精度を低下させずに絞込み時間を短縮化することができる。その結果、認証時間を短縮化することができる。また、認証の対象者だけを選択して顔照合するため、利用者以外の顔を照合対象から除外することができ、プライバシー保護の点でも効果がある。
【0037】
本実施例において、格納部10が、複数の顔画像それぞれに対応付けられた生体情報を記憶する記憶部の一例である。照合用静脈特徴が、センサにより検出された生体情報の一例である。顔選択部30が、カメラにより撮影された撮影画像に含まれる複数の顔画像それぞれの前記撮影画像上の位置に基づき、前記複数の顔画像より何れかの顔画像を選択する選択部の一例である、顔認証部40が、複数の顔画像それぞれに対応付けられた生体情報を記憶する記憶部を参照して、選択した前記顔画像との類似度が基準を満たす顔画像に対応付けられた生体情報を特定する特定部の一例である。静脈認証部60が、センサにより検出された生体情報を受け付けると、受け付けた前記生体情報と、特定した前記生体情報との照合による認証を行う認証部の一例である。また、静脈認証部60は、センサにより検出された生体情報と、登録された生体情報との照合による認証処理を実行する認証部の位置である。また、顔選択部30および顔認証部40は、カメラにより撮影された撮影画像に顔画像が含まれる場合、前記顔画像の前記撮影画像上の位置に基づき、登録された前記生体情報のうち、前記顔画像との類似度が基準を満たす顔画像に対応付けられた生体情報を、検出した前記生体情報との照合対象とするか否かを決定する決定部の一例である。
【0038】
(変形例1)
表示装置105と顔撮影カメラ107とを同軸(中心位置が同じ、かつ同じ方向を向いている)ように配置することは困難である。したがって、表示装置105の画面中心から離れた場所に顔撮影カメラ107を設置することが一般的である。例えば、
図5(a)で例示するように、中心から水平方向に少しずれた画面上辺に設置した場合は、
図5(b)で例示するように、視認可能範囲に該当する領域は距離に応じてずれた位置になる。そこで、顔撮影カメラ107から顔までの距離を検出し、判定領域の位置を微調整してもよい。
【0039】
撮影範囲と視認可能範囲との間の領域差は、撮影画角と視認可能角度との差によって生じる。例えば、
図5(c)で例示するように、撮影画角を2×αとし、視認可能角度を2×βとすると、距離dだけ離れた位置の撮影範囲は、下記式(1)で表すことができる。
2×w0=d×tanα×2 (1)
【0040】
視認可能範囲の幅は、下記式(2)で表すことができる。
2×w1=d×tanβ×2 (2)
【0041】
w0に対するw1は、下記式(3)で表すことができる。
w1/w0=tanβ/tanα (3)
【0042】
以上のことから、撮影範囲内における視認可能範囲の領域の相対的な大きさは、距離によらず一定となる。すなわち、表示装置105と顔撮影カメラ107とが同軸の場合は、撮影範囲内における視認可能範囲は不変であるとみなすことができる。厳密には、表示領域の大きさがオフセットとして重畳するため、距離が近いほど領域は大きく、遠いほど小さくなる。表示装置105と顔撮影カメラ107とが同軸でない場合でも、領域の大きさの関係は同軸の場合と同じである。同軸でない場合は、領域の位置が距離によってずれる。ずれ量は、表示装置105と顔撮影カメラ107の位置の差と、光軸の差と、距離とによって決まる。位置および角度の差が既知である場合は計算によって求められるが、Webカメラなどのように容易に角度が変えられるものは、設置角を厳密に知ることが難しい場合がある。このような場合には、拡散反射率の高いプロジェクタ用のスクリーンなどを表示画面の前に置いて顔撮影カメラ107で観測し、明るく見える領域を求めるといった方法で確認することができる。
【0043】
距離の検出は、超音波や光を用いた距離センサを設置してもよいが装置コストの増大や設置条件の制約につながる。そこで、顔の大きさにより略式に距離を判定するようにしてもよい。例えば、基準となる大きさを予め保持しておき、顔が当該基準よりも大きくなる場合には距離が短く、顔が当該基準よりも小さくなる場合には距離が長くなる。領域の判定は、顔が厳密に領域内にあるかどうかではないため、また、ルーバーによる視野制限はある角度から突然見えなくなるのではなく、境界付近で徐々に光量が低減するため領域の境界はぼやけることから、略式の距離判定でも十分である。
【0044】
(変形例2)
表示装置105の画面全体ではなく、認証に関する操作情報を表示するための一部の領域だけに視野制限を設けてもよい。例えば、広い範囲から視認可能な画面の一部だけを正面(あるいは特定方向)から視認可能な角度制限を設ける。例えば、
図6(a)で例示するように、表示装置105の画面105aにおいて、一部の領域105bにだけ視野制限を設けてもよい。
図6(a)の例では、領域105bを視認可能範囲から見た図である。
図6(a)のように、領域105bにおいて操作情報が見やすくなっている。
図6(b)は、領域105bを視認可能範囲外から見た図である。
図6(b)のように、領域105bにおいて操作情報が見にくくなっている。
【0045】
または、撮影範囲に1人だけしか検出されない場合は、通常画面に指示を表示して認証を実施する。しかしながら、撮影範囲に複数の顔が検出された場合、まず広い範囲から視認可能な領域に表示を出し、指示に従って限定領域に移動して検出された顔を利用者とすることができる。さらに、
図7で例示するように、部分的な視認可能範囲を別々の方向に割り当ててもよい。例えば、撮影範囲に1人だけが検出された場合、検出位置に合わせた方向に視認可能な領域に表示を行なうことができる。
図7の例では、範囲Aと、範囲Bと、範囲Cとを別の方向に割り当てている。まず広い範囲から視野可能な領域に表示を出し、範囲Aを視認可能範囲とし、次に範囲Bを視認可能範囲とし、次に範囲Cを視認可能範囲とする。このようにすることで、ユーザは、視認可能範囲の切替に伴って移動する。移動してきた顔を顔認証に用いればよい。
【実施例2】
【0046】
実施例1では、顔撮影カメラ107が取得する画像における位置に応じて、顔認証に用いる顔画像を選択したが、それに限られない。表示装置105に表示する操作情報の位置に応じて、顔認証に用いる顔画像を選択してもよい。
【0047】
図8で例示するように、静脈取得部50は、表示装置105の画面において、静脈センサ108の操作情報の位置を指定して表示装置105に表示させる。表示装置105が大画面を有している場合には、表示装置105の画面に表示される情報の位置に応じて、ユーザが当該情報を視認できる位置に移動するようになる。
【0048】
例えば、「静脈センサに手をかざしてください」というメッセージが表示装置105の画面の領域αに表示された場合、そのメッセージを見ることができるのは、Aさんだけなので(Bさんは見えない)、Aさんの顔画像だけを認証対象とすればよい。一方、メッセージが表示装置105の画面の領域βに表示された場合、そのメッセージを見ることができるのはBさんだけなので(Aさんは見えない)、Bさんの顔だけを認証対象とすればよい。
【0049】
顔選択部30は、静脈画像を抽出した時刻を含む所定時間範囲内に、顔撮影カメラ107が取得した画像において、表示装置105の表示位置に対応する位置範囲に位置する顔画像を選択する。顔画像を選択した後は、実施例1と同様の処理を行なえばよい。
【0050】
本実施例においては、顔選択部30が、カメラにより撮影された撮影画像に複数の顔画像が含まれる場合、認証に関する操作情報を表示する表示部上での前記操作情報の表示位置に基づき、前記複数の顔画像より何れかの顔画像を選択する選択部の一例である。静脈認証部60が、前記選択部が選択した前記顔画像を用いた認証を行う認証部の一例である。
【0051】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 格納部
20 顔検出部
30 顔選択部
40 顔認証部
50 静脈取得部
60 静脈認証部
70 認証結果出力部
100 情報処理装置
105 表示装置
107 顔撮影カメラ
108 静脈センサ