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特許7364969電磁場解析プログラム、電磁場解析装置及び電磁場解析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】電磁場解析プログラム、電磁場解析装置及び電磁場解析方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/398 20200101AFI20231012BHJP
   G06F 30/27 20200101ALI20231012BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20231012BHJP
   G06F 119/10 20200101ALN20231012BHJP
【FI】
G06F30/398
G06F30/27
H05K3/00 D
G06F119:10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022553323
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2020037206
(87)【国際公開番号】W WO2022070329
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 崇史
(72)【発明者】
【氏名】山根 昇平
(72)【発明者】
【氏名】山田 広明
(72)【発明者】
【氏名】大原 敏靖
(72)【発明者】
【氏名】巨智部 陽一
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-107870(JP,A)
【文献】特開2003-76741(JP,A)
【文献】特開2006-53908(JP,A)
【文献】特開2013-171361(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0086615(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/398
G06F 30/27
H05K 3/00
G06F 119/10
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回路情報に含まれる配線の幅の大きさと厚みの大きさとを特定し、
前記幅の大きさと前記厚みの大きさとの比に基づいて、前記幅の大きさ又は前記厚みの大きさのうち一方をゼロに変更した第2の回路情報を生成し、
前記第2の回路情報に基づいて電磁場解析を実行する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする電磁場解析プログラム。
【請求項2】
請求項1において、
前記生成する処理では、前記幅の大きさが前記厚みの大きさよりも大きく、かつ、前記厚みの大きさに対する前記幅の大きさが閾値以上であることを前記比が示す場合、前記厚みの大きさをゼロに変更することによって前記第2の回路情報を生成する、
ことを特徴とする電磁場解析プログラム。
【請求項3】
請求項1において、さらに、
前記電磁場解析の結果に基づいて、機械学習モデルの生成に用いられる訓練データを生成する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする電磁場解析プログラム。
【請求項4】
請求項3において、
前記訓練データを生成する処理では、前記電磁場解析によって特定した回路の電流分布を示す情報が含まれるように、前記訓練データの生成を行う、
ことを特徴とする電磁場解析プログラム。
【請求項5】
請求項1において、
前記生成する処理では、前記厚みの大きさが前幅の大きさよりも大きく、かつ、前記幅の大きさに対する前記厚みの大きさが閾値以上であることを前記比が示す場合、前記幅の大きさをゼロに変更することによって前記第2の回路情報を生成する、
ことを特徴とする電磁場解析プログラム。
【請求項6】
第1の回路情報を記憶する記憶部と、
前記第1の回路情報に含まれる配線の幅の大きさと厚みの大きさとを特定し、前記幅の大きさと前記厚みの大きさとの比に基づいて、前記幅の大きさ又は前記厚みの大きさのうち一方をゼロに変更した第2の回路情報を生成し、前記第2の回路情報に基づいて電磁場解析を実行する制御部と、を有する、
ことを特徴とする電磁場解析装置。
【請求項7】
第1の回路情報に含まれる配線の幅の大きさと厚みの大きさとを特定し、
前記幅の大きさと前記厚みの大きさとの比に基づいて、前記幅の大きさ又は前記厚みの大きさのうち一方をゼロに変更した第2の回路情報を生成し、
前記第2の回路情報に基づいて電磁場解析を実行する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする電磁場解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁場解析技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板の特性を求める場合、例えば、有限差分時間領域法(FDTD法:Finite Difference Time Domain method)やスペクトル法を用いた電磁場解析が行われる。
【0003】
そして、上記のような電磁場解析を陽解法によって行う場合、支配方程式(Maxwellの方程式)が双曲型であるため、電磁場解析を行う作業者(以下、単に作業者とも呼ぶ)は、数値計算の安定性を確保する観点から時間の離散化刻み幅をCFL(Courant-Friedrichs-Lewy)条件に従って決定する。具体的に、作業者は、この場合、空間の最小離散化刻み幅を光速で除算することによって算出される時定数よりも時間の離散化刻み幅が小さくなるように、時間の離散化刻み幅の決定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-040308号公報
【文献】特開2006-053908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記のような電子回路基板は、一般的に、電子回路基板の面内の配線形状における最小の長さスケールよりも、電子回路基板の面内に対する垂直方向(以下、単に垂直方向とも呼ぶ)の配線形状における最小の長さスケールの方が小さい。そのため、上記のような電磁場解析において、空間の最小離散化刻み幅は、例えば、電子回路基板の垂直方向の配線形状における最小の長さスケールに対応する配線の幅や厚みの大きさによって決定される。
【0006】
しかしながら、例えば、電子回路基板の面内の配線形状における最小の長さスケールが10(mm)から10-1(mm)のオーダであるのに対し、電子回路基板の垂直方向における最小の長さスケールが10-2(mm)程度のオーダである場合のように、各方向の配線形状における最小の長さスケールが大きく異なる場合がある。そのため、電子回路基板に含まれる回路の離散化(メッシュ分割)が行われる場合、配線の幅や厚みの大きさによっては、空間の最小離散化刻み幅が極端に小さくなる場合がある。そして、この場合、CFL条件を満たす必要性から時間の離散化刻み幅についても小さくなり、電磁場解析を行うために要する計算量が増大する場合がある。
【0007】
そこで、一つの側面では、本発明は、電磁場解析に伴う計算量を抑えることを可能とする電磁場解析プログラム、電磁場解析装置及び電磁場解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態の一態様では、第1の回路情報に含まれる配線の幅の大きさと厚みの大きさを特定し、前記幅の大きさと前記厚みの大きさとの比に基づいて、前記幅の大きさ又は前記厚みの大きさのうち一方をゼロに変更した第2の回路情報を生成し、前記第2の回路情報に基づいて電磁場解析を実行する、処理をコンピュータに実行される。
【発明の効果】
【0009】
一つの側面によれば、電磁場解析に伴う計算量を抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、情報処理システム10の構成を示す図である。
図2図2は、解析対象の電子回路基板の具体例について説明する図である。
図3図3は、解析対象の電子回路基板の具体例について説明する図である。
図4図4は、情報処理装置1のハードウエア構成を示す図である。
図5図5は、情報処理装置1の機能のブロック図である。
図6図6は、第1の実施の形態における電磁場解析処理の概略を示すフローチャート図である。
図7図7は、第1の実施の形態における電磁場解析処理の詳細を示すフローチャート図である。
図8図8は、第1の実施の形態における電磁場解析処理の詳細を示すフローチャート図である。
図9図9は、第1の実施の形態における電磁場解析処理の詳細を示すフローチャート図である。
図10図10は、回路情報131の具体例を示す図である。
図11図11は、変更後回路情報132の具体例を示す図である。
図12図12は、回路情報131の具体例を示す図である。
図13図13は、第1の実施の形態における電磁場解析処理の詳細を示す図である。
図14図14は、第1の実施の形態における電磁場解析処理の詳細を示す図である。
図15図15は、第1の実施の形態における電磁場解析処理の詳細を示す図である。
図16図16は、第1の実施の形態における電磁場解析処理の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[情報処理システムの構成]
初めに、情報処理システム10の構成について説明を行う。図1は、情報処理システム10の構成を示す図である。
【0012】
図1に示す情報処理システム10は、情報処理装置1と操作端末2とを有する。
【0013】
操作端末2は、ネットワークNWを介して情報処理装置1とアクセスが可能な端末であって、例えば、開発者が必要な情報の入力等を行うPC(Personal Computer)等であってよい。
【0014】
情報処理装置1は、例えば、1台以上の物理マシンである。具体的に、情報処理装置1は、解析対象の電子回路基板に含まれる配線(例えば、線路や面パタン等)についての電磁場解析を行う。
【0015】
[解析対象の電子回路基板の具体例]
図2及び図3は、解析対象の電子回路基板の具体例について説明する図である。図2は、電子回路基板S1の垂直断面図であり、図3は、電子回路基板S2の垂直断面図である。なお、以下、電子回路基板S1と電子回路基板S2とを総称して電子回路基板Sとも呼ぶ。
【0016】
具体的に、図2に示す電子回路基板S1では、誘電体S12の表面において線路S11が配置されている。
【0017】
また、図3に示す電子回路基板S2では、誘電体S22及び誘電体S23に上下から挟まれる位置において線路S21が配置されている。
【0018】
ここで、例えば、図2に示す線路S11の幅の大きさ(図2における線路S11の左右方向の大きさ)や線路S11の厚さの大きさ(図2における線路S11の上下方向の大きさ)が、線路S11の長さ(図2における線路S11の奥行方向の長さ)よりも小さい場合、電子回路基板S1の幾何構造についての最小の長さスケールは、線路S11の幅又は厚みの大きさによって決定される。
【0019】
同様に、例えば、図3に示す線路S21の幅の大きさ(図3における線路S21の左右方向の大きさ)や線路S21の厚さの大きさ(図3における線路S21の上下方向の大きさ)が、線路S21の長さ(図3における線路S21の奥行方向の長さ)よりも小さい場合、電子回路基板S2の幾何構造についての最小の長さスケールは、線路S21の幅又は厚みの大きさによって決定される。
【0020】
しかしながら、例えば、電子回路基板Sの面内における最小の長さスケールが10(mm)から10-1(mm)のオーダであるのに対し、電子回路基板Sの面内に対する垂直方向における最小の長さスケールが10-2(mm)程度のオーダになる場合のように、各方向の配線形状における最小の長さスケールが大きく異なる場合がある。そのため、電子回路基板Sに含まれる回路の離散化(メッシュ分割)が行われる場合、線路の幅や厚みの大きさによっては、空間の最小離散化刻み幅が極端に小さくなる場合がある。そして、この場合、CFL条件を満たす必要性から時間の離散化刻み幅についても小さくなり、電磁場解析を行うために要する計算量が増大する場合がある。
【0021】
そこで、本実施の形態における情報処理装置1は、例えば、電子回路基板Sに含まれる回路についての回路情報(以下、第1の回路情報とも呼ぶ)を参照し、回路情報に含まれる線路の幅の大きさと厚みの大きさとを特定する。そして、情報処理装置1は、特定した幅の大きさと厚みの大きさとの比に基づいて、特定した幅の大きさ又は厚みの大きさのうち一方をゼロに変更した変更後回路情報(以下、第2の回路情報とも呼ぶ)を生成する。その後、情報処理装置1は、生成した第2の回路情報に基づいて電磁場解析を実行する。
【0022】
すなわち、電子回路基板Sに含まれる回路の特性は、例えば、線路の幅や厚さの大きさ、電子回路基板Sを構成する層の厚さの大きさ及び比誘電率に基づく特性インピーダンスによって決定される。そのため、例えば、線路の厚さの大きさと線路の幅の大きさとが大きく異なる場合、線路の厚さと幅とのうちの小さい方の大きさは、特性インピーダンスに与える影響が小さいと判断できる。
【0023】
したがって、例えば、線路の厚さの大きさが線路の幅の大きさよりも十分に小さい場合、線路の厚さの大きさをより小さく変更した場合であっても、離散化が行われた後の回路の特性に与える影響は小さいものと判断できる。一方、例えば、線路の幅の大きさが線路の厚さの大きさよりも十分に小さい場合、線路の幅の大きさをより小さく変更した場合であっても、離散化が行われた後の回路の特性に与える影響は小さいものと判断できる。
【0024】
そこで、本実施の形態における情報処理装置1は、線路の厚さの大きさが線路の幅の大きさよりも十分に小さい場合、その線路を2次元のPEC(Perfect Electric Conductor)に置き換えることによって線路の厚さの大きさをゼロに変更した上で、電子回路基板Sに含まれる回路の離散化を行う。また、本実施の形態における情報処理装置1は、線路の幅の大きさが線路の厚さの大きさよりも十分に小さい場合、その線路を2次元のPECに置き換えることによって線路の幅の大きさをゼロに変更した上で、電子回路基板Sに含まれる回路の離散化を行う。
【0025】
これにより、本実施の形態における情報処理装置1は、電子回路基板Sについての最小の長さスケールが配線の幅及び厚みのうちの小さい方の大きさによって決定されることを防止することが可能になる。そのため、情報処理装置1は、電子回路基板Sに含まれる回路についての離散化が行われる際に、空間の最小離散化刻み幅が極端に小さくなることを防止することが可能になる。
【0026】
さらに、情報処理装置1は、空間の最小離散化刻み幅を大きくすることで、CFL条件によって決定される時間の離散化刻み幅についても小さくなることを防止することが可能になる。
【0027】
そのため、情報処理装置1は、電磁場解析を行う際の問題サイズを抑えることが可能になり、電磁場解析に要する計算量の増大を抑えることが可能になる。
【0028】
[情報処理システムのハードウエア構成]
図4は、情報処理装置1のハードウエア構成を示す図である。
【0029】
情報処理装置1は、図4に示すように、プロセッサであるCPU101と、メモリ102と、通信装置103と、記憶媒体104とを有する。各部は、バス105を介して互いに接続される。
【0030】
記憶媒体104は、例えば、電子回路基板Sに含まれる回路についての電磁場解析を行う処理(以下、電磁場解析処理とも呼ぶ)を行うためのプログラム110を記憶するプログラム格納領域(図示しない)を有する。また、記憶媒体104は、例えば、電磁場解析処理を行う際に用いられる情報を記憶する情報格納領域130を有する。なお、記憶媒体104は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)であってよい。
【0031】
CPU101は、記憶媒体104からメモリ102にロードされたプログラム110を実行して電磁場解析処理を行う。
【0032】
また、通信装置103は、例えば、ネットワークNWを介して操作端末2との通信を行う。
【0033】
[情報処理システムの機能]
図5は、情報処理装置1の機能のブロック図である。
【0034】
情報処理装置1は、図5に示すように、例えば、CPU101やメモリ102等のハードウエアとプログラム110とが有機的に協働することにより、情報受信部111と、情報管理部112と、情報生成部113と、解析実行部114とを含む各種機能を実現する。
【0035】
また、情報処理装置1は、例えば、図5に示すように、回路情報131と、変更後回路情報132とを情報格納領域130に記憶する。
【0036】
情報受信部111は、例えば、開発者が操作端末2を介して送信した回路情報131を受信する。そして、情報管理部112は、例えば、情報受信部111が受信した回路情報131を情報格納領域130に格納する。
【0037】
情報生成部113は、例えば、情報格納領域130に記憶した回路情報131を参照し、電子回路基板Sに含まれる線路の幅の大きさと厚みの大きさとを特定する。そして、情報生成部113は、特定した幅の大きさと厚みの大きさとの比に基づいて、特定した幅の大きさ又は厚みの大きさのうち一方をゼロに変更した回路情報131である変更後回路情報132を生成する。そして、情報管理部112は、例えば、情報生成部113が生成した変更後回路情報132を情報格納領域130に記憶する。
【0038】
解析実行部114は、例えば、情報格納領域130に記憶した変更後回路情報132を参照し、解析対象の電子回路基板に含まれる電磁場解析を行う。
【0039】
[第1の実施の形態の概略]
図6は、第1の実施の形態における電磁場解析処理の概略を示すフローチャート図である。
【0040】
情報処理装置1は、図6に示すように、解析タイミングになるまで待機する(S101のNO)。解析タイミングは、例えば、開発者が操作端末2を介して電磁場解析を開始する旨の情報を入力したタイミングであってよい。
【0041】
そして、解析タイミングになった場合(S101のYES)、情報処理装置1は、回路情報131に含まれる線路の幅の大きさと厚みの大きさとを特定する(S102)。
【0042】
続いて、情報処理装置1は、S102の処理で特定した幅の大きさと厚みの大きさとの比に基づいて、S102の処理で特定した幅の大きさ又は厚みの大きさのうち一方をゼロに変更した変更後回路情報132を生成する(S103)。
【0043】
その後、情報処理装置1は、S103の処理で生成した変更後回路情報132に基づいて電磁場解析を実行する(S104)。
【0044】
これにより、本実施の形態における情報処理装置1は、電子回路基板Sについての最小の長さスケールが配線の幅及び厚みのうちの小さい方の大きさによって決定されることを防止することが可能になる。そのため、情報処理装置1は、電子回路基板Sに含まれる回路についての離散化が行われる際に、空間の最小離散化刻み幅が極端に小さくなることを防止することが可能になる。
【0045】
さらに、情報処理装置1は、空間の最小離散化刻み幅を大きくすることで、CFL条件によって決定される時間の離散化刻み幅についても小さくなることを防止することが可能になる。
【0046】
そのため、情報処理装置1は、電磁場解析を行う際の問題サイズを抑えることが可能になり、電磁場解析に要する計算量の増大を抑えることが可能になる。
【0047】
[第1の実施の形態の詳細]
図7から図9は、第1の実施の形態における電磁場解析処理の詳細を示すフローチャート図である。また、図10から図16は、第1の実施の形態における電磁場解析処理の詳細を示す図である。
【0048】
[情報管理処理]
初めに、電磁場解析処理のうち、回路情報131の情報を管理する処理(以下、情報管理処理とも呼ぶ)について説明を行う。図7は、情報管理処理について説明するフローチャート図である。
【0049】
情報処理装置1の情報受信部111は、図7に示すように、回路情報131を受信するまで待機する(S11のNO)。具体的に、情報受信部111は、例えば、開発者が操作端末2を介して入力した回路情報131を受信するまで待機する。
【0050】
そして、情報処理装置1の情報管理部112は、S11の処理において受信した回路情報131を情報格納領域130に記憶する(S12)。
【0051】
[回路情報の具体例]
図10は、回路情報131の具体例を示す図である。
【0052】
図10に示す回路情報131は、例えば、電子回路基板Sの含まれる各線路を識別する「識別情報」と、各線路の幅の大きさが設定される「幅」と、各線路の厚さの大きさが設定される「厚さ」とを項目として有する。
【0053】
具体的に、図10に示す回路情報131における1行目の情報(「識別情報」が「1」である情報)には、「幅」として「0.3(mm)」が設定され、「厚さ」として「0.035(mm)」が設定されている。
【0054】
また、図10に示す回路情報131における2行目の情報(「識別情報」が「2」である情報)には、「幅」として「0.3(mm)」が設定され、「厚さ」として「0.018(mm)」が設定されている。図10に含まれる他の情報についての説明は省略する。
【0055】
以下、図10に示す回路情報131における1行目の情報は、図2で説明した電子回路基板S1に配置された線路S11に対応する情報であるものとして説明を行う。また、図10に示す回路情報131における2行目の情報は、図3で説明した電子回路基板S2に配置された線路S21に対応する情報であるものとして説明を行う。すなわち、以下、図2で説明した線路S11の幅及び厚さの大きさが「0.3(mm)」及び「0.035(mm)」であるものとして説明を行う。また、図3で説明した線路S21の幅及び厚さの大きさが「0.3(mm)」及び「0.018(mm)」であるものとして説明を行う。
【0056】
なお、以下、電子回路基板Sに配置されている線路についての情報が回路情報131に含まれている場合について説明を行うが、回路情報131は、例えば、電子回路基板Sに配置されている面パタンについての情報(面パタンの幅及び厚さの大きさ等)を含むものであってもよい。
【0057】
[電磁場解析処理のメイン処理]
図8及び図9は、電磁場解析処理のメイン処理について説明するフローチャート図である。
【0058】
情報処理装置1の情報生成部113は、図8に示すように、解析タイミングになるまで待機する(S21のNO)。解析タイミングは、例えば、開発者が操作端末2を介して電磁場解析を開始する旨の情報を入力したタイミングであってよい。
【0059】
そして、解析タイミングになった場合(S21のYES)、情報生成部113は、情報格納領域130に記憶した回路情報131に情報が含まれる線路の幅の大きさと厚みの大きさとの組合せを特定する(S22)。
【0060】
具体的に、図10に示す回路情報131には、例えば、「識別情報」が「1」である線路についての情報(1行目の情報)と、「識別情報」が「2」である線路についての情報(2行目の情報)とが含まれている。そのため、情報生成部113は、例えば、「識別情報」に「1」が設定された情報の「幅」及び「厚さ」に設定された情報である「0.3(mm)」及び「0.035(mm)」の組合せを特定する。また、情報生成部113は、例えば「識別情報」に「2」が設定された情報の「幅」及び「厚さ」に設定された情報である「0.3(mm)」及び「0.018(mm)」の組合せを特定する。
【0061】
なお、例えば、面パタンについての情報が回路情報131に含まれている場合、情報生成部113は、面パタンの幅の大きさと厚みの大きさとの組合せについての特定を併せて行うものであってもよい。そして、情報処理装置1は、この場合、S23以降の処理において面パタンについての処理を併せて行うものであってよい。
【0062】
続いて、情報生成部113は、例えば、S22の処理で特定した組合せごとに、S22の処理で特定した幅の大きさをS22の処理で特定した厚みの大きさで除算する(S23)。
【0063】
具体的に、情報生成部113は、例えば、線路の幅の大きさと厚さの大きさの組合せとして「0.3(mm)」及び「0.035(mm)」が特定されている場合、「0.3(mm)」を「0.035(mm)」で除算することによって「8.57・・・」を算出する。また、情報生成部113は、例えば、線路の幅の大きさと厚さの大きさの組合せとして「0.3(mm)」及び「0.018(mm)」が特定されている場合、「0.3(mm)」を「0.018(mm)」で除算することによって「16.66・・・」を算出する。
【0064】
さらに、情報生成部113は、例えば、S22の処理で特定した組合せのうち、S23の処理で算出した値が閾値以上である組合せを特定する(S24)。
【0065】
その結果、S23の処理で算出した値が閾値以上である組合せが特定された場合(S25のYES)、情報生成部113は、情報格納領域130に記憶した回路情報131に含まれる情報のうち、S24の処理で特定した組合せに対応する線路の厚みの大きさをゼロにすることによって変更後回路情報132を生成する(S26)。
【0066】
一方、S23の処理で算出した値が閾値以上である組合せが特定されなかった場合(S25のNO)、情報生成部113は、S26の処理を行わない。
【0067】
[変更後回路情報の具体例(1)]
図11は、変更後回路情報132の具体例を示す図である。図11に示す変更後回路情報132は、図10に示す回路情報131を変更することによって生成された情報である。
【0068】
具体的に、例えば、図10に示す回路情報131における「識別情報」が「1」である情報についての算出結果(S23の処理の算出結果)として「8.57・・・」が算出され、かつ、S24の処理における閾値が「5」であった場合、情報生成部113は、「識別情報」が「1」である情報に対応する線路の厚みの大きさをゼロにすることを決定する。そして、情報生成部113は、この場合、例えば、図11の下線部分に示すように、「識別情報」が「1」である情報(1行目の情報)の「厚さ」を「0(mm)」に更新する。
【0069】
また、例えば、図10に示す回路情報131における「識別情報」が「2」である情報についての算出結果(S23の処理の算出結果)として「16.66・・・」が算出され、かつ、S24の処理における閾値が「5」であった場合、情報生成部113は、「識別情報」が「2」である情報に対応する線路の厚みの大きさをゼロにすることを決定する。そして、情報生成部113は、この場合、例えば、図11の下線部分に示すように、「識別情報」が「2」である情報(2行目の情報)の「厚さ」を「0(mm)」に更新する。
【0070】
すなわち、図11に示す変更後回路情報132における1行目の情報は、図12に示すように、厚みを有する線路S11の代わりに厚みを有しない線路S14が電子回路基板S1に配置されることを示している。また、図11に示す変更後回路情報132における2行目の情報は、図13に示すように、厚みを有する線路S21の代わりに厚みを有しない線路S25が電子回路基板S2に配置されることを示している。
【0071】
図9に戻り、情報生成部113は、例えば、S22の処理で特定した組合せのうち、S23の処理で算出した値の逆数が閾値以上である組合せを特定する(S31)。
【0072】
その結果、S23の処理で算出した値の逆数が閾値以上である組合せが特定された場合(S32のYES)、情報生成部113は、情報格納領域130に記憶した回路情報131に含まれる情報のうち、S31の処理で特定した組合せに対応する線路の幅の大きさをゼロにすることによって変更後回路情報132を生成する(S33)。
【0073】
一方、S23の処理で算出した値の逆数が閾値以上である組合せが特定されなかった場合(S32のNO)、情報生成部113は、S33の処理を行わない。
【0074】
[変更後回路情報の具体例(2)]
図14は、変更後回路情報132の具体例を示す図である。図14に示す変更後回路情報132は、図11に示す回路情報131を変更することによって生成された情報である。
【0075】
具体的に、図10に示す回路情報131における「識別情報」が「3」である情報(3行目の情報)には、「幅」として「0.02(mm)」が設定され、「厚さ」として「0.2(mm)」が設定されている。すなわち、図10に示す回路情報131における「識別情報」が「3」である情報は、S23の処理の算出結果の逆数が「10」になることを示している。そのため、例えば、S24の処理における閾値が「5」であった場合、情報生成部113は、「識別情報」が「3」である情報に対応する線路の幅の大きさをゼロにすることを決定する。そして、情報生成部113は、この場合、例えば、図14の下線部分に示すように、「識別情報」が「3」である情報(3行目の情報)の「厚さ」を「0(mm)」に更新する。
【0076】
図9に戻り、情報処理装置1の解析実行部114は、情報格納領域130に記憶した変更後回路情報132を参照し、変更後回路情報132に情報が含まれる各線路についての離散化を行う(S34)。
【0077】
具体的に、解析実行部114は、情報格納領域130に記憶した変更後回路情報132を参照し、例えば、電子回路基板Sに含まれる線路の幅の大きさと厚みの大きさとのうち、ゼロが設定されていない大きさを空間の最小離散化刻み幅として決定する。そして、解析実行部114は、例えば、決定した空間の最小離散化刻み幅がメッシュ幅になるように、電子回路基板Sを含む3次元空間についてのメッシュ分割を行う。
【0078】
その後、解析実行部114は、S34の処理で離散化を行った各線路についての電磁場解析を行う(S35)。
【0079】
具体的に、解析実行部114は、S34の処理で決定した空間の最小離散刻み幅から時間の離散刻み幅を算出する。さらに具体的に、解析実行部114は、CFL条件に従い、空間の最小離散化刻み幅を光速で除算することによって算出される時定数よりも時間の離散化刻み幅が小さくなるように、時間の離散化刻み幅の算出を行う。そして、解析実行部114は、算出した時間の離散化刻み幅を用いることによって、電子回路基板Sについての電磁場解析を行う。
【0080】
[線路の厚みの変更による影響]
図15及び図16は、電子回路基板Sに含まれる線路の厚みの変更による影響を示す図である。図15は、図2で説明した電子回路基板S1に含まれる線路S11を線路S14に変更したことによる影響を示す図であり、図16は、図3で説明した電子回路基板S2に含まれる線路S21を線路S25に変更したことによる影響を示す図である。また、図15及び図16における横軸及び縦軸は、周波数及び入力インピーダンスをそれぞれ示している。
【0081】
なお、以下、図2における誘電体S12の上下方向の大きさ(層厚)が「0.166(mm)」であり、図3における誘電体S22の上下方向の大きさが「0.216(mm)」であり、図3における誘電体S23の上下方向の大きさが「0.784(mm)」であるものとする。
【0082】
具体的に、図15に示す例は、線路S11を用いた場合の入力インピーダンス(すなわち、図2の状態における入力インピーダンス)と、線路S14を用いた場合の入力インピーダンス(すなわち、図12の状態における入力インピーダンス)との差異が、最大でも2(Ω)程度であることを示している。
【0083】
また、図16に示す例は、線路S21を用いた場合の入力インピーダンス(すなわち、図3の状態における入力インピーダンス)と、線路S25を用いた場合の入力インピーダンス(すなわち、図13の状態における入力インピーダンス)との差異が、最大でも3(Ω)程度であることを示している。
【0084】
すなわち、図15及び図16に示す例は、各グラフの概形が大局的に一致していることを示している。また、図15及び図16に示す例は、各グラフにおける入力インピーダンスの差異が2~3(Ω)程度であり、各グラフにおける入力インピーダンスの平均値(約45(Ω))に対して十分に小さいことを示している。そのため、図15及び図16に示す例は、電子回路基板Sに配置された線路の厚みをゼロに変更した場合であっても、特性インピーダンスに与える影響が小さいことを示していると判断できる。
【0085】
このように、本実施の形態における情報処理装置1は、解析対象の電子回路基板(図示しない)に含まれる回路についての回路情報131を参照し、回路情報131に情報が含まれる配線の幅の大きさと厚みの大きさを特定する。そして、情報処理装置1は、特定した幅の大きさと厚みの大きさとの比に基づいて、特定した幅の大きさ又は厚みの大きさのうち一方をゼロに変更した変更後回路情報132を生成する。その後、情報処理装置1は、生成した第2の回路情報に基づいて電磁場解析を実行する。
【0086】
すなわち、電子回路基板Sに含まれる回路の特性は、例えば、線路の幅や厚さの大きさ、電子回路基板Sを構成する層の厚さの大きさ及び比誘電率に基づく特性インピーダンスによって決定される。そのため、例えば、線路の厚さの大きさと線路の幅の大きさとが大きく異なる場合、線路の厚さと幅とのうちの小さい方の大きさは、特性インピーダンスに与える影響が小さいと判断できる。
【0087】
したがって、例えば、線路の厚さの大きさが線路の幅の大きさよりも十分に小さい場合、線路の厚さの大きさをより小さく変更した場合であっても、離散化が行われた後の回路の特性に与える影響は小さいものと判断できる。一方、例えば、線路の幅の大きさが線路の厚さの大きさよりも十分に小さい場合、線路の幅の大きさをより小さく変更した場合であっても、離散化が行われた後の回路の特性に与える影響は小さいものと判断できる。
【0088】
そこで、本実施の形態における情報処理装置1は、線路の厚さの大きさが線路の幅の大きさよりも十分に小さい場合、その線路を2次元のPECに置き換えることによって線路の厚さの大きさをゼロに変更した上で、電子回路基板Sに含まれる回路の離散化を行う。また、本実施の形態における情報処理装置1は、線路の幅の大きさが線路の厚さの大きさよりも十分に小さい場合、その線路を2次元のPECに置き換えることによって線路の幅の大きさをゼロに変更した上で、電子回路基板Sに含まれる回路の離散化を行う。
【0089】
これにより、本実施の形態における情報処理装置1は、電子回路基板Sについての最小の長さスケールが配線の幅及び厚みのうちの小さい方の大きさによって決定されることを防止することが可能になる。そのため、情報処理装置1は、電子回路基板Sに含まれる回路についての離散化が行われる際に、空間の最小離散化刻み幅が極端に小さくなることを防止することが可能になる。
【0090】
具体的に、例えば、格子の間隔を均等にするメッシュ分割が行われる場合、全体の格子数を抑えることが可能になり、空間の最小離散化刻み幅を大きくすることが可能になる。また、格子の間隔を不均等にするメッシュ分割が行われる場合、隣接する格子の間隔を大きく変えることはできないが、この場合においても、全体の格子数を抑えることが可能になり、空間の最小離散化刻み幅を大きくすることが可能になる。
【0091】
さらに、情報処理装置1は、空間の最小離散化刻み幅を大きくすることで、CFL条件によって決定される時間の離散化刻み幅についても小さくなることを防止することが可能になる。
【0092】
そのため、情報処理装置1は、電磁場解析を行う際の問題サイズを抑えることが可能になり、電磁場解析に要する計算量の増大を抑えることが可能になる。
【0093】
なお、近年では、電子回路基板において電流が流れた際に放射されるEMIを測定する際に、FDTD法による解析結果を正解ラベルとして生成された機械学習モデルが用いられる場合がある。そのため、本実施の形態における情報処理装置1は、例えば、本実施の形態における電磁場解析において特定した回路の電流分布を特徴量とすることにより、上記の機械学習モデルの生成に用いられる訓練データの生成を行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1:情報処理装置 2:操作端末
10:情報処理システム NW:ネットワーク
図1
図2
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図5
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図11
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図16