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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】プレス成形装置および成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 24/00 20060101AFI20231012BHJP
   B21D 22/22 20060101ALI20231012BHJP
   B21D 24/04 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B21D24/00 H
B21D22/22
B21D24/00 F
B21D24/04 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023548721
(86)(22)【出願日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2023021045
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2022091684
(32)【優先日】2022-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】漆畑 諒
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-53651(JP,A)
【文献】特許第6849160(JP,B1)
【文献】特許第5470812(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2016/354824(US,A1)
【文献】国際公開第2014/97421(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D24/00
B21D22/22
B21D24/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス方向において互いに対向する位置にあり、前記プレス方向に相対移動する第1金型と第2金型とを具備し、
前記第1金型は、第1支持面と、前記第1支持面から突出したパンチ部とを備え、
前記第2金型は、前記プレス方向において前記パンチ部に対向する位置から外れた位置に配置されたプレス面と、前記プレス面に連続する壁面とを備え、
前記プレス方向における前記第2金型側から見て、前記パンチ部は、前記壁面に対向しかつ前記壁面側に開口する開口部を含む側面を有し、
前記プレス方向における、前記第1金型と前記第2金型との相対移動の成形下死点において、前記壁面は、前記パンチ部の側面に対向する、プレス成形装置。
【請求項2】
前記パンチ部は、複数の支持部を有し、
前記パンチ部の前記側面は、前記複数の支持部の側面からなり、
前記複数の支持部において隣り合う2つの前記支持部の側面は、前記開口部を介して離隔して配置される、請求項1に記載のプレス成形装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記複数の支持部において隣り合う2つの前記支持部を接続する接続部を有し、
前記プレス方向における前記第2金型側から見て、前記接続部の側面と前記壁面との間の距離は、前記支持部の側面と前記壁面との間の距離よりも長い、請求項2に記載のプレス成形装置。
【請求項4】
前記開口部は、前記複数の支持部において隣り合う2つの前記支持部を接続する接続部を有し、
前記プレス方向において、前記複数の支持部の少なくとも1つの頂部の位置と、当該支持部に隣接する前記接続部の頂部の位置とは異なる、請求項2に記載のプレス成形装置。
【請求項5】
前記プレス方向において、前記複数の支持部のうち、少なくとも1つの支持部の頂部の位置は、他の支持部の頂部の位置と異なる、請求項2に記載のプレス成形装置。
【請求項6】
前記第2金型は、前記プレス方向において、前記パンチ部に対向する位置に配置されたパッドを備える、請求項1から5のいずれかに記載のプレス成形装置。
【請求項7】
プレス方向において、ブランクを挟んで対向する第1金型と第2金型とが、前記プレス方向に相対移動して前記ブランクに対してプレス成形を行う、成形品の製造方法であって、
前記第1金型は、第1支持面と、前記第1支持面から突出したパンチ部とを備え、
前記第2金型は、前記プレス方向において、前記パンチ部に対向する位置から外れた位置に配置されたプレス面と、前記プレス面に連続する壁面とを備え、
前記ブランクは、第1板状部と、前記プレス方向において前記第1板状部に対向する第2板状部とを有し、
前記第1金型側から前記第1支持面によって前記第1板状部を支持しつつ、前記第1板状部に対し、前記第1金型側から前記プレス方向に横切る前記パンチ部によって前記第2板状部を支持した状態で、
前記パンチ部に対し前記プレス方向に相対移動する前記プレス面によって前記第2板状部に曲げ変形を加え、
前記プレス方向における、前記第1金型と前記第2金型との相対移動の成形下死点において、前記壁面は、前記第2板状部の一部を介して前記パンチ部の側面に対向する、成形品の製造方法。
【請求項8】
前記パンチ部によって前記第2板状部を支持するに際して、前記パンチ部は、前記第1板状部に形成された貫通孔を通ることで前記第1板状部を横切る、請求項7に記載の成形品の製造方法。
【請求項9】
プレス方向において、ブランクを挟んで対向する第1金型と第2金型とが、前記プレス方向に相対移動して前記ブランクに対してプレス成形を行う、成形品の製造方法であって、
前記第1金型は、第1支持面と、前記第1支持面から突出したパンチ部とを備え、
前記第2金型は、前記プレス方向において前記パンチ部に対向する位置から外れた位置に配置されたプレス面と、前記プレス面に連続する壁面とを備え、
前記プレス方向における前記第2金型側から見て、前記パンチ部は、前記壁面に対向しかつ前記壁面側に開口する開口部を含む側面を有し、
前記ブランクは、板状部と、前記板状部から前記板状部の厚み方向に向かって突出する凸部とを有し、
前記パンチ部によって前記第1金型側から前記プレス方向に前記板状部を支持した状態で、
前記パンチ部に対し前記プレス方向に相対移動する前記プレス面によって前記板状部に曲げ変形を加え、
前記プレス方向における、前記第1金型と前記第2金型との相対移動の成形下死点において、前記壁面は、前記板状部の一部を介して前記パンチ部の側面に対向し、前記凸部は前記側面に接触せずに、前記開口部に入り込む、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形装置および成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の軽量化および高強度化の観点から、高張力鋼板からなる成形品が車体の構造部材(例えば、フレームを構成する部材)として利用されている。具体的には、例えば、図1(a)に示すような閉断面形状の成形品1、および図1(b)に示すようなハット型の成形品2が用いられている。
【0003】
図1(a)に示す閉断面形状の成形品1は、板状のフランジ部1a,1b、縦壁部1c,1dおよび天板部1eを有している。成形品1は、閉断面形状を有し、フランジ部1aと天板部1eとが互いに対向し、縦壁部1cと縦壁部1dとが互いに対向するように設けられている。
【0004】
上記の成形品1は、例えば、ロール成形またはプレス成形を利用して製造することができる。しかしながら、特許文献1に開示されているように、ロール成形を利用する場合には、複数のローラを並べて配置する必要があり、成形装置が大型化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-120227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、プレス成形を利用する場合には、ロール成形を利用する場合に比べて、成形装置を小型に構成することができる。しかしながら、成形品1のように、天板部に対向するフランジ部を有する成形品を製造するためには、中子が必要になったり、工程数が多くなったりするという問題が生じる。この場合、成形品の生産効率が悪くなる。
【0007】
なお、図1(b)に示したハット型の成形品2は、中子を使用することなく、公知の金型を用いた通常の曲げ成形または絞り成形によって製造することができる。しなしながら、図1(c)に示すように、一対の縦壁部2a,2bに、内側に向かって突出する凸部2c,2d(例えば、バーリング加工によって形成された円筒部)が設けられる場合、成形時に凸部2c,2dが金型に接触することを防止しなければならない。このため、公知の金型を用いた通常の曲げ成形または絞り形成によって凸部2c,2dを有する成形品2を製造することは難しい。なお、凸部2c,2dは、外側から見ると凹部となるため、凹部と称しても良い。
【0008】
そこで、本発明は、成形品を効率よく製造することができるプレス成形装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一側面におけるプレス成形装置は、
プレス方向において互いに対向する位置にあり、前記プレス方向に相対移動する第1金型と第2金型とを具備し、
前記第1金型は、第1支持面と、前記第1支持面から突出したパンチ部とを備え、
前記第2金型は、前記プレス方向において前記パンチ部に対向する位置から外れた位置に配置されたプレス面と、前記プレス面に連続する壁面とを備え、
前記プレス方向における前記第2金型側から見て、前記パンチ部は、前記壁面に対向しかつ前記壁面側に開口する開口部を含む側面を有し、
前記プレス方向における、前記第1金型と前記第2金型との相対移動の成形下死点において、前記壁面は、前記パンチ部の側面に対向する、プレス成形装置。
【0010】
(2)上記プレス成形装置において、
前記パンチ部は、複数の支持部を有し、
前記パンチ部の側面は、前記複数の支持部の側面からなり、
前記複数の支持部において隣り合う2つの前記支持部の側面は、前記開口部を介して離隔して配置されてもよい。
【0011】
(3)上記プレス成形装置において、
前記開口部は、前記複数の支持部において隣り合う2つの前記支持部を接続する接続部を有し、
前記プレス方向における前記第2金型側から見て、前記接続部の側面と前記壁面との間の距離は、前記支持部の側面と前記壁面との間の距離よりも長くてもよい。
【0012】
(4)上記プレス成形装置において、
前記開口部は、前記複数の支持部において隣り合う2つの前記支持部を接続する接続部を有し、
前記プレス方向において、前記複数の支持部の少なくとも1つの頂部の位置と、当該支持部に隣接する前記接続部の頂部の位置とは異なっていてもよい。
【0013】
(5)上記プレス成形装置において、
前記プレス方向において、前記複数の支持部のうち、少なくとも1つの支持部の頂部の位置は、他の支持部の頂部の位置と異なっていてもよい。
【0014】
(6)上記プレス成形装置において、
前記第2金型は、前記プレス方向において、前記パンチ部に対向する位置に配置されたパッドを備えていてもよい。
【0015】
(7)本発明の他の側面における成形品の製造方法は、
プレス方向において、ブランクを挟んで対向する第1金型と第2金型とが、前記プレス方向に相対移動して前記ブランクに対してプレス成形を行う、成形品の製造方法であって、
前記第1金型は、第1支持面と、前記第1支持面から突出したパンチ部とを備え、
前記第2金型は、前記プレス方向において、前記パンチ部に対向する位置から外れた位置に配置されたプレス面と、前記プレス面に連続する壁面とを備え、
前記ブランクは、第1板状部と、前記プレス方向において前記第1板状部に対向する第2板状部とを有し、
前記第1金型側から前記第1支持面によって前記第1板状部を支持しつつ、前記第1板状部に対し、前記第1金型側から前記プレス方向に横切る前記パンチ部によって前記第2板状部を支持した状態で、
前記パンチ部に対し前記プレス方向に相対移動する前記プレス面によって前記第2板状部に曲げ変形を加え、
前記プレス方向における、前記第1金型と前記第2金型との相対移動の成形下死点において、前記壁面は、前記第2板状部の一部を介して前記パンチ部の側面に対向する。
【0016】
(8)上記製造方法において、
前記パンチ部によって前記第2板状部を支持するに際して、前記パンチ部は、前記第1板状部に形成された貫通孔を通ることで前記第1板状部を横切ってもよい。
【0017】
(9)本発明のさらに他の側面における成形品の製造方法は、
プレス方向において、ブランクを挟んで対向する第1金型と第2金型とが、前記プレス方向に相対移動して前記ブランクに対してプレス成形を行う、成形品の製造方法であって、
前記第1金型は、第1支持面と、前記第1支持面から突出したパンチ部とを備え、
前記第2金型は、前記プレス方向において前記パンチ部に対向する位置から外れた位置に配置されたプレス面と、前記プレス面に連続する壁面とを備え、
前記プレス方向における前記第2金型側から見て、前記パンチ部は、前記壁面に対向しかつ前記壁面側に開口する開口部を含む側面を有し、
前記ブランクは、板状部と、前記板状部から前記板状部の厚み方向に向かって突出する凸部とを有し、
前記パンチ部によって前記第1金型側から前記プレス方向に前記板状部を支持した状態で、
前記パンチ部に対し前記プレス方向に相対移動する前記プレス面によって前記板状部に曲げ変形を加え、
前記プレス方向における、前記第1金型と前記第2金型との相対移動の成形下死点において、前記壁面は、前記板状部の一部を介して前記パンチ部の側面に対向し、前記凸部は前記側面に接触せずに、前記開口部に入り込む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、成形品を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、成形品を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係るプレス成形装置を利用して製造される成形品の一例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係るプレス成形装置を示す概略図である。
図4図4は、パンチ、ダイおよびパッドの位置関係を示す概略図である。
図5図5は、第1実施形態に係る製造方法において素材として用いられるブランクを示す図である。
図6図6は、第1実施形態に係る製造方法を説明するための図である。
図7図7は、プレス成形装置の他の例を示す図である。
図8図8は、プレス成形装置のその他の例を示す概略図である。
図9図9は、プレス成形装置のその他の例を示す概略図である。
図10図10は、成形品の製造方法の他の例を示す概略図である。
図11図11は、成形品の他の例を示す概略図である。
図12図12は、図11の成形品の製造方法を説明するための図である。
図13図13は、プレス成形装置のその他の例を示す概略図である。
図14図14は、プレス成形装置のその他の例を示す概略図である。
図15図15は、成形品の製造方法のその他の例を示す図である。
図16図16は、プレス成形装置のその他の例を示す概略図である。
図17図17は、プレス成形装置のその他の例を示す概略図である。
図18図18は、成形品のその他の例を示す概略図である。
図19図19は、プレス成形装置のその他の例を示す概略図である。
図20図20は、プレス成形装置のその他の例を示す概略図である。
図21図21は、プレス成形装置のその他の例を示す概略図である。
図22図22は、プレス成形装置のその他の例を示す概略図である。
図23図23は、プレス成形装置のその他の例を示す概略図である。
図24図24は、成形品のその他の例を示す概略図である。
図25図25は、成形品のその他の例を示す概略図である。
図26図26は、第2実施形態に係る製造方法において素材として用いられるブランクを示す図である。
図27図27は、第2実施形態に係るプレス成形装置を示す概略図である。
図28図28は、プレス成形装置のその他の例を示す概略図である。
図29図29は、プレス成形装置のその他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係るプレス成形装置および成形品の製造方法について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(第1実施形態)
(成形品)
まず、本発明の第1実施形態に係るプレス成形装置を利用して製造される成形品について簡単に説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係るプレス成形装置を利用して製造される成形品の一例を示す図である。
【0022】
図2に示すように、成形品3は閉断面形状を有している。本実施形態では、成形品3は、板状のフランジ部3a,3b、板状の縦壁部3c,3dおよび天板部3eを有している。フランジ部3a,3bおよび天板部3eは平板形状を有している。
【0023】
本実施形態では、成形品3が閉断面形状を有するように、フランジ部3a上にフランジ部3bが重ねられている。縦壁部3cは、フランジ部3aの縁から屈曲して上方に延びるように設けられている。縦壁部3dは、フランジ部3a上において、フランジ部3bの縁から屈曲して上方に延びるように設けられている。天板部3eは、縦壁部3cの上縁と縦壁部3dの上縁とを接続するように設けられている。
【0024】
本実施形態では、縦壁部3c,3dおよび天板部3eは、上方から見て(天板部3eの厚み方向から見て)、弧状に湾曲している。なお、フランジ部3aにおいて、天板部3eに対向する部分には、後述する支持部24(図3参照)を挿入するための4つの貫通孔5(図5参照)が形成されている。
【0025】
(プレス成形装置)
図3は、本発明の第1実施形態に係るプレス成形装置を示す概略図である。より具体的には、図3には、図2に示した成形品3を製造することができるプレス成形装置が示されている。
【0026】
なお、図3においては、ブランクに対してプレス成形を行う際に第1金型(パンチ)または第2金型(ダイ)が移動する方向を矢印X(以下、プレス方向Xと記載する。)で示し、プレス成形装置の幅方向を矢印Y(以下、幅方向Yと記載する。)で示している。幅方向Yは、プレス方向Xに直交する方向である。また、プレス方向Xと幅方向Yとに交差する方向を矢印Z(以下、交差方向Zと記載する。)で示している。本実施形態では、交差方向Zは、プレス方向Xと幅方向Yとに直交する方向である。
【0027】
なお、詳細な説明は省略するが、プレス成形装置の各構成要素は、公知の金型と同様の材料によって製造することができる。また、プレス成形装置の各構成要素は、公知のプレス機と同様の駆動機構(電動シリンダー、油圧シリンダー、ガスクッション装置)によって駆動することができる。
【0028】
図3に示すように、本実施形態に係るプレス成形装置10は、プレス方向Xにおける一方側に設けられた第1金型12と、プレス方向Xにおける他方側に設けられた第2金型14とを備えている。すなわち、第1金型12と第2金型14とは、プレス方向Xにおいて対向する位置に設けられている。第1金型12と第2金型14とは、プレス方向Xにおいて相対移動する。本実施形態では、第1金型12は、パンチ20を含み、第2金型14は、ダイ40およびパッド50を含む。
【0029】
図4は、パンチ20、ダイ40およびパッド50の位置関係を示す概略図である。なお、図4は、プレス成形装置10を上方から見た図である。図3および図4に示すように、パンチ20は、第1支持面22と、第1支持面22から突出したパンチ部23とを備えている。本実施形態では、第1支持面22は、プレス方向Xにおいて他方側(第2金型14側)を向いている。パンチ部23は、第1支持面22からプレス方向Xにおける他方側に突出している。プレス方向Xにおける第2金型14側から見て、パンチ部23は、ダイ40の後述する壁面44に対向している。本実施形態では、パンチ部23は、第1支持面22からプレス方向Xにおける他方側に突出する複数の支持部24を有している。支持部24は突出部と称しても良い。
【0030】
複数の支持部24は、互いに離隔し、かつプレス方向Xにおける第2金型14側から見て、曲線状に並ぶように設けられている。本実施形態では、各支持部24は、断面円形の側面24aを有するように円柱状に形成されている。なお、図1に示す支持部24の形状は単なる一例であり、支持部24の形状は上述の例に限定されない。後述する図6に示すように、各支持部24の頂部は、平坦形状を有することが好ましいが、球冠形状を有していてもよい。
【0031】
本実施形態では、複数の支持部24の複数の側面24aによって、パンチ部23の側面23aが構成される。プレス方向Xにおける第2金型14側から見て、パンチ部23の側面23aは、ダイ40の後述する壁面44側に向かって開口する開口部23bを含む。本実施形態では、パンチ部23の側面23aは、複数の開口部23bを含む。本実施形態では、隣り合う2つの支持部24の側面24aは、開口部23bを介して離隔して配置されている。言い換えると、隣り合う2つの支持部24は、開口部23bを介して離隔して配置されている。なお、本実施形態では、開口部23bは、プレス方向Xにおいて第2金型14側に向かっても開口している。また、本実施形態では、開口部23bは、隣り合う2つの支持部24の間を、幅方向Yに貫通するように形成されている。
【0032】
第1支持面22は、交差方向Zにおいて、少なくとも各支持部24の両側に設けられている。図4に示すように、本実施形態では、第1支持面22は、複数の支持部24の並び方向Aにおいて、少なくとも複数の支持部24の間および複数の支持部24の両側に設けられている。なお、本明細書において並び方向Aとは、プレス方向Xにおける第2金型14側(上方)から見て、各支持部24の中心を結んで得られる線(図4の例では曲線)に沿った方向を意味する。
【0033】
図3および図4に示すように、ダイ40は、プレス面42と、プレス面42に連続する壁面44とを有している。本実施形態では、プレス面42は、プレス方向Xにおいて一方側(第1金型12側)を向いている。壁面44は、プレス面42の縁からプレス方向Xにおける他方側(第1金型12とは反対側)に延びている。プレス面42は、幅方向Yにおいてパンチ部23(複数の支持部24)の一方側に設けられている。本実施形態では、プレス面42は、プレス方向Xにおいてパンチ部23に対向する位置から外れた位置に配置されている。壁面44は、幅方向Yにおいて、パンチ部23(複数の支持部24)とプレス面42との間に位置付けられている。
【0034】
プレス面42および壁面44は、交差方向Zにおいて、各支持部24に対して、支持部24よりも一方側から他方側まで延びるように設けられている。本実施形態では、図4に示すように、プレス面42および壁面44は、並び方向Aに沿うように、かつ並び方向Aにおいて複数の支持部24よりも一方側から他方側まで延びるように設けられている。また、本実施形態では、壁面44は、プレス方向Xにおける第1金型12側から見て、幅方向Yにおける一方側に向かって凸となるように弧状に湾曲している。
【0035】
図3を参照して、プレス方向Xにおいて、ダイ40は、パンチ20の第1支持面22に対して相対的に進退可能に設けられている。すなわち、プレス面42および壁面44は、プレス方向Xにおいて、第1支持面22に対して相対的に進退可能である。
【0036】
図3および図4に示すように、パッド50は、プレス方向Xにおいてパンチ部23(複数の支持部24)に対向する位置に配置されている。本実施形態では、パッド50は、プレス方向Xにおいてパンチ部23(複数の支持部24)に対向する第2支持面52を有している。第2支持面52は、交差方向Zにおいて、各支持部24に対して、支持部24よりも一方側から他方側まで延びるように設けられている。本実施形態では、図4に示すように、第2支持面52は、並び方向Aにおいて複数の支持部24よりも一方側から他方側まで延びるように設けられている。
【0037】
図3を参照して、プレス方向Xにおいて、パッド50は、パンチ20のパンチ部23(複数の支持部24)に対して相対的に進退可能に設けられている。すなわち、第2支持面52は、プレス方向Xにおいて、複数の支持部24に対して相対的に進退可能である。
【0038】
(成形品の製造方法)
次に、成形品の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法では、予め加工されたブランクに対して、上述のプレス成形装置10を用いてプレス成形を行うことによって、成形品3が製造される。以下、具体的に説明する。
【0039】
図5は、本実施形態に係る製造方法において素材として用いられるブランクを示す図である。図5に示すように、ブランク4は、第1板状部4aと、第2板状部4bと、第3板状部4cとを備えている。
【0040】
第1板状部4aは、平板形状を有している。第1板状部4aには、複数の貫通孔5が形成されている。本実施形態では、複数の貫通孔5は、第1金型12(図3参照)の複数の支持部24(図3参照)に対応するように設けられている。なお、貫通孔5の形状は円形状に限定されず、支持部24を挿入することできる大きさおよび形状で形成されていればよい。したがって、貫通孔5が、楕円形状または多角形状等の他の形状を有していてもよい。貫通孔5と支持部24との関係については後述する。
【0041】
第2板状部4bは、平板形状を有し、第1板状部4aの厚み方向において第1板状部4aに対向するように設けられている。また、第2板状部4bは、第1板状部4aの厚み方向において、第1板状部4aから離隔して設けられている。第3板状部4cは、第1板状部4aの縁と第2板状部4bの縁とを接続するように、第1板状部4aの厚み方向に延びるように設けられている。本実施形態では、第3板状部4cは、成形品3(図2参照)の縦壁部3c(図2参照)に対応する部分であり、第1板状部4aの厚み方向から見て弧状に湾曲している。
【0042】
なお、ブランク4の材質および寸法は特に限定されないが、例えば、引張強さが270MPa以上で、厚みが0.5~5mmの板材(例えば、鋼板)を用いてブランク4を製造することができる。ブランク4の製造方法は特に限定されないが、例えば、複数の貫通孔5が形成された板材に対して、公知のプレス成形装置を用いてプレス成形を行うことによってブランク4を製造することができる。
【0043】
図6は、本実施形態に係る製造方法を説明するための図である。なお、図6においては、プレス成形装置10の各構成要素およびブランク4を簡略化して示している。また、図6においては、交差方向Zから見たプレス成形装置10およびブランク4を示している。
【0044】
ブランク4に対してプレス成形を行う際には、図6(a)に示すように、まず、パンチ部23(複数の支持部24)が、第1金型12側からプレス方向Xに第1板状部4aを横切り、かつ第2板状部4bを支持するように、第1金型12の第1支持面22上にブランク4を置く。より具体的には、幅方向Yにおいて第3板状部4cがパンチ部23(複数の支持部24)の他方側に位置するように、かつパンチ部23の複数の支持部24が複数の貫通孔5を通って第1板状部4aに対して第2板状部4b側に突出するように、第1板状部4aを第1支持面22によって支持する。
【0045】
次に、図6(b)に示すように、パッド50(第2支持面52)をプレス方向Xにおける一方側(第1金型12側)に移動させ、パンチ部23(複数の支持部24)と第2支持面52とで第2板状部4bを挟持する。なお、本実施形態では、図6(b)に示す状態が、「第1金型側から第1支持面によって第1板状部を支持しつつ、第1板状部に対し、第1金型側からプレス方向に横切るパンチ部によって第2板状部を支持した状態」に対応する。
【0046】
次に、図6(b),(c),(d)に示すように、ダイ40(プレス面42)をパンチ部23(複数の支持部24)の頂部に対して、プレス方向Xにおける他方側(第2金型14側)から一方側(第1金型12側)へ相対的に移動させる。これにより、第2板状部4bのうち幅方向Yにおいてパンチ部23(複数の支持部24)よりも一方側の部分が、プレス方向Xにおける一方側(第1金型12側)に押圧される。その結果、第2板状部4bに曲げ変形が加えられ、成形品3が完成する。本実施形態では、プレス方向Xにおける、第1金型12と第2金型14との相対移動の成形下死点(図6(d)に示す状態)において、ダイ40の壁面44は、第2板状部4bの一部を介してパンチ部23の側面23aに対向する。また、上記成形下死点において、ダイ40の壁面44は、幅方向Yにおいて、少なくとも一つの開口部23bに対向している。本実施形態では、上記成形下死点において、壁面44は、幅方向Yにおいて、複数の開口部23bに対向している。
【0047】
最後に、第2金型14(ダイ40およびパッド50)をプレス方向Xにおける他方側に移動させて、プレス成形装置10から成形品3が取り出される。
【0048】
(本実施形態の効果)
以上のように、本実施形態に係るプレス成形装置10によれば、天板部3eに対向する板状部(フランジ部3a)を有する成形品3をブランク4から製造するに際して、ブランク4の第2板状部4bのうち天板部3eとなる部分を、パンチ部23(支持部24)によって第1板状部4a側から支持することができる。これにより、第2金型14のプレス面42および壁面44による単純な曲げ加工よって、縦壁部3dおよびフランジ部3bを成形することができる。この場合、成形品3を製造する際に中子を用いる必要なく、かつ工程数が多くなることを防止できる。その結果、成形品3を効率よく製造することができる。
【0049】
なお、上記のようにして製造された成形品3を自動車用構造部材として用いる場合、貫通孔5は、水抜き用の孔として利用してもよいし、パッチ等によって塞いでもよい。また、貫通孔5の周辺部の剛性を十分に確保するために、貫通孔5が形成される部分にバーリング加工を行ってもよく、貫通孔5の周縁部に補剛のためのパッチ等を貼り付けてもよく、貫通孔5の周縁部を増肉してもよい。
【0050】
(変形例)
成形品3の形状は上述の例に限定されない。例えば、天板部3eの厚み方向から見て、縦壁部3c,3dおよび天板部3eが図2に示す縦壁部3c,3dおよび天板部3eとは逆方向に凸となるように湾曲していてもよい。この場合、プレス成形装置10の各部の形状は、成形品3の形状に応じて適宜変更すればよい。具体的には、例えば、図7に示すように、プレス方向Xにおける第2金型14側から見て、幅方向Yにおける他方側に向かって凸となる曲線を描くように複数の支持部24が配置され、幅方向Yにおける他方側に向かって凸となるように壁面44が設けられる。
【0051】
また、天板部3eの厚み方向から見て、縦壁部3c,3dおよび天板部3eが直線状に延びるように形成されてもよい。この場合、図示は省略するが、例えば、プレス方向Xにおける第2金型14側から見て、交差方向Zに沿って直線状に並ぶように複数の支持部24が配置され、交差方向Zに沿って平行に延びるように壁面44が設けられる。
【0052】
また、天板部3eの厚み方向から見て、縦壁部3c,3dのうちの一方が弧状に湾曲し、他方が直線状に形成されてもよい。この場合も、縦壁部3c,3dの形状に応じて、複数の支持部24を配置すればよい。
【0053】
なお、隣り合う支持部24間の距離、複数の支持部24の配置、支持部24の数、ならびに支持部24の形状および寸法は上述の例に限定されず、製造される成形品の形状および寸法等に応じて適宜変更すればよい。例えば、図8に示すように、複数の支持部24が幅方向Yに並ぶように設けられてもよい。また、図9に示すように、第1金型12のパンチ部23が、1つの支持部24によって構成されてもよい。この場合、ブランク4(図5参照)の第1板状部4aには、一つの支持部24を通すための一つの貫通孔が形成されていればよい。
【0054】
なお、上述の実施形態では、フランジ部3b(図2参照)を有する成形品3を製造する場合について説明したが、図10に示すように、フランジ部3bを有しない成形品3を製造してもよい。後述の実施形態においても同様である。なお、図10において(a)は、パンチ部23(支持部24)と第2支持面52とによってブランク4の第2板状部4bを挟持した状態のプレス成形装置10を示し、(b)は、第2板状部4bのうち幅方向Yにおいてパンチ部23(支持部24)よりも一方側の部分をプレス面42によってプレス方向Xにおける一方側(第1金型12側)に押圧した状態のプレス成形装置10を示し、(c)は、成形品3を取り出す際(離型時)のプレス成形装置10の状態を示している。
【0055】
また、上述の実施形態では、成形品3が閉断面形状を有するようにフランジ部3aの一部とフランジ部3bの一部とが重なっているが、成形品3が閉断面形状を有していなくてもよい。例えば、図11に示す成形品3のように、天板部3eの幅方向に平行な方向において、フランジ部3aとフランジ部3b(縦壁部3d)との間に隙間が形成されていてもよい。なお、図11に示す成形品3は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0056】
図12は、図11の成形品3の製造方法を説明するための図である。図11の成形品3を製造する場合にも、図2の成形品3を製造する場合と同様に、図12(a)に示すように、第1金型12の第1支持面22上にブランク4を置く。ただし、図11の成形品3を製造する際に用いられるブランク4(図12参照)の第1板状部4a(図12参照)の幅方向Yにおける長さは、図2の成形品3を製造する際に用いられるブランク4(図6参照)の第1板状部4a(図6参照)の幅方向Yにおける長さよりも短い。また、図11の成形品3を製造する際に用いられるブランク4(図12参照)の第1板状部4aには、貫通孔5(図5参照)が形成されていなくてもよい。
【0057】
本実施形態では、幅方向Yにおいて第3板状部4cがパンチ部23(複数の支持部24)の他方側に位置するように、かつ幅方向Yにおける第1板状部4aの一方側で複数の支持部24が第1板状部4aに対して第2板状部4b側に突出するように、第1板状部4aを第1支持面22によって支持する。
【0058】
次に、図12(b)に示すように、パッド50(第2支持面52)をプレス方向Xにおける一方側(第1金型12側)に移動させ、パンチ部23(複数の支持部24)と第2支持面52とで第2板状部4bを挟持する。なお、本実施形態では、図12(b)に示す状態が、「第1金型側から第1支持面によって第1板状部を支持しつつ、第1板状部に対し、第1金型側からプレス方向に横切るパンチ部によって第2板状部を支持した状態」に対応する。
【0059】
次に、図12(b),(c),(d)に示すように、ダイ40(プレス面42)をパンチ部23(複数の支持部24)の頂部に対して、プレス方向Xにおける他方側(第2金型14側)から一方側(第1金型12側)へ相対的に移動させる。これにより、第2板状部4bのうち幅方向Yにおいて複数の支持部24よりも一方側の部分が、プレス方向Xにおける一方側(第1金型12側)に押圧され、図11に示す成形品3が完成する。
【0060】
上述の実施形態では、第1金型12の第1支持面22が平坦形状を有する場合について説明したが、第1金型12の形状は上述の例に限定されない。図13は、プレス成形装置10の他の例を示す概略図である。なお、図13において(a)は、成形前のブランク4およびプレス成形装置10を示し、(b)は成形後のブランク4(成形品3)およびプレス成形装置10を示している。
【0061】
図13に示すプレス成形装置10が図3に示したプレス成形装置10と異なるのは、第1金型12(パンチ20)の形状である。図13に示す第1金型12が図3に示した第1金型12と異なるのは、第1支持面22の形状である。具体的には、図13に示す第1金型12の第1支持面22は、平坦面22a、平坦面22aの幅方向Yにおける一方側の縁部から第2金型14側に延びる垂直面22b、および垂直面22bのプレス方向Xにおける第2金型14側の縁部から幅方向Yにおける一方側に延びる平坦面22cを含む。パンチ部23(支持部24)は、平坦面22aから第2金型14側に突出するように設けられている。
【0062】
この場合、図13に示すように、第1支持面22に対応するように屈曲した形状の第1板状部4aを有するブランク4を用いればよい。このように、第1支持面22の形状およびブランク4の形状を適宜変更することによって、種々の断面形状を有する成形品3を製造することができる。図13に示す例では、プレス成形装置10による成形によって、フランジ部30a、縦壁部30b、底板部30c、縦壁部30d、天板部30e、縦壁部30fおよびフランジ部30gを有する成形品3が製造される。
【0063】
なお、以下においては、プレス成形装置によって成形品3に成形された筒状の部分を成形部と呼ぶ。図13に示す成形品3では、成形部30は、互いに重ね合わされたフランジ部30a,30gから、フランジ部30a(30g)の厚み方向における両側に突出するように形成されている。
【0064】
なお、詳細な説明は省略するが、プレス成形装置10の他の構成要素の形状を適宜変更することによって、さらに種々の断面形状の成形品3を製造することができる。例えば、図14(a)に示すプレス成形装置10では、パンチ部23の支持部24は、プレス方向Xに対して傾斜する上面240を有し、パッド50の第2支持面52は、支持部24の上面240に対して略平行な傾斜面520を有している。また、図14(b)に示すプレス成形装置10では、さらに、第1支持面22が、プレス方向Xに対して傾斜する支持面22dを有している。パンチ部23の支持部24は、支持面22dから第2金型14側に突出するように設けられている。これらの場合も、第1支持面22、支持部24および第2支持面52の形状に応じたブランク4を用いることにより、第1支持面22および支持部24の形状に応じた成形品3を製造することができる。
【0065】
上述の実施形態では、第1板状部4a、第2板状部4b、および第3板状部4cを備えたブランク4から成形品3を製造する場合について説明したが、ブランク4の形状は上述の例に限定されない。例えば、図15(a)に示すように、ブランク4が、第1板状部4a、第2板状部4bおよび第3板状部4cに加えて、第4板状部4dおよび第5板状部4eを備えていてもよい。なお、第4板状部4dおよび第5板状部4eは、第1板状部4aの厚み方向において、第2板状部4bおよび第3板状部4cとは反対側に設けられている。本実施形態では、第1板状部4aのうち、第2板状部4bに対向する部分および第4板状部4dに対向する部分にそれぞれ貫通孔5が形成される。
【0066】
本実施形態では、図15(b)に示すように、まず、図6で説明した方法と同様の方法により、プレス成形装置10によって第2板状部4bに対してプレス成形を行い、フランジ部3b、縦壁部3dおよび天板部3eを形成する。図15に示す成形品3では、フランジ部3b、縦壁部3c,3dおよび天板部3eによって成形部32が構成される。
【0067】
次に、図15(c),(d)に示すように、交差方向Z(図3参照)から見てブランク4を180度回転させ、プレス成形装置10によって第4板状部4dに対してプレス成形を行う。これにより、フランジ部3f、縦壁部3g,3hおよび天板部3iによって構成される成形部34が形成される。このように、本実施形態によれば、第1板状部4aの厚み方向において互いに反対側に突出する一対の成形部32,34を有する成形品3を製造することができる。なお、成形部32がフランジ部3bを有していなくてもよく、成形部34がフランジ部3fを有していなくてもよい。
【0068】
図16は、プレス成形装置の他の変形例を示す図である。図16に示すプレス成形装置10が、図6に示したプレス成形装置10と異なるのは、以下の点である。
【0069】
図16に示すように、本実施形態では、ダイ40は、幅方向Yにおける両側に壁面44を有している。また、ダイ40の幅方向Yにおける一方側および他方側にそれぞれパッド50が設けられている。第1金型12(パンチ20)のうち、プレス方向Xにおいて各ダイ40の第2支持面52に対向する部分にそれぞれ、パンチ部23(1または複数の支持部24)が設けられている。
【0070】
本実施形態において利用されるブランク4は、一対の第2板状部4bおよび一対の第3板状部4cを有している。第1板状部4aにおいて、一対の第2板状部4bに対向する部分にそれぞれ、1または複数の支持部24を挿入するための1または複数の貫通孔5が形成されている。
【0071】
本実施形態においても、上述の実施形態と同様に、ブランク4に対してプレス成形を行う際には、図16(a)に示すように、パンチ部23(支持部24)が貫通孔5を通って第1板状部4aに対して第2板状部4b側に突出するように、第1板状部4aを第1支持面22によって支持する。次に、図16(b)に示すように、各パッド50(第2支持面52)をプレス方向Xにおける一方側(第1金型12側)に移動させ、パンチ部23(支持部24)と各パッド50の第2支持面52とで一対の第2板状部4bを挟持する。
【0072】
次に、ダイ40(プレス面42)を、パンチ部23(支持部24)の頂部に対して、プレス方向Xにおける他方側(第2金型14側)から一方側(第1金型12側)へ相対的に移動させる。これにより、各第2板状部4bのうち幅方向Yにおいてパンチ部23(支持部24)よりもダイ40側の部分が、プレス方向Xにおける一方側(第1金型12側)に押圧される。これにより、一対の成形部32を有する成形品3が完成する。
【0073】
なお、詳細な説明は省略するが、図17に示すように、幅方向Yにおいて一対のパッド50の間に位置するように一対のダイ40を設けてもよい。この場合も、図16で説明した製造方法と同様にダイ40およびパッド50を動作させることによって、一対の成形部32を有する成形品3を製造することができる。なお、図17に示すプレス成形装置10では、一対のダイ40を同時に動作せることによって、一対の成形部32を同時に成形してもよく、一対のダイ40を順に動作せることによって、一対の成形部32を順に成形してもよい。
【0074】
また、詳細な説明は省略するが、図16および図17に示したプレス成形装置10において、図13のプレス成形装置10と同様に第1支持面22の形状を変更することによって、図18に示すように、一対の成形部30を有する成形品3を製造することもできる。
【0075】
上述の実施形態では、第1金型12がパンチ20によって構成される場合について説明したが、第1金型12の構成は上述の例に限定されない。図19は、プレス成形装置10の他の変形例を示す図である。図19に示すプレス成形装置10が図6に示したプレス成形装置10と異なるのは、第1金型12が、パンチ20とダイ26とを備えている点である。
【0076】
本実施形態においても、パンチ20は、上述のパンチ20と同様に、第1支持面22とパンチ部23(1または複数の支持部24)とを有している。ただし、本実施形態では、図19に示すように、プレス方向Xにおいてダイ40のプレス面42に対向する部分には、第1支持面22(パンチ20)は設けられておらず、ダイ26が設けられている。
【0077】
図19に示すように、ダイ26は、プレス方向Xにおいて他方側(第2金型14側)を向くプレス面26aと、プレス面26aの縁からプレス方向Xにおける一方側(第2金型14とは反対側)に延びる壁面26bとを有している。プレス面26aは、プレス方向Xにおいてプレス面42に対向するように、幅方向Yにおいてパンチ部23(1または複数の支持部24)の一方側に設けられている。壁面26bは、幅方向Yにおいて、パンチ部23(1または複数の支持部24)とプレス面26aとの間に位置付けられている。
【0078】
プレス面42および壁面44と同様に、プレス面26aおよび壁面26bは、交差方向Z(図3参照)において、各支持部24に対して、支持部24よりも一方側から他方側まで延びるように設けられている。プレス方向Xにおいて、ダイ26は、パンチ20の第1支持面22に対して相対的に進退可能に設けられている。
【0079】
本実施形態においてブランク4に対してプレス成形を行う際には、図19(a)に示すように、まず、第1支持面22およびプレス面26a上にブランク4を置く。より具体的には、パンチ部23(1または複数の支持部24)が1または複数の貫通孔5を通って第1板状部4aに対して第2板状部4b側に突出するように、第1板状部4aを第1支持面22およびプレス面26aによって支持する。
【0080】
次に、図19(b)に示すように、パッド50を移動させ、パンチ部23(1または複数の支持部24)と第2支持面52とで第2板状部4bを挟持する。次に、ダイ26およびダイ40を、プレス方向Xにおいて互いに近付くように移動させる。これにより、第1板状部4aおよび第2板状部4bのうち、幅方向Yにおいてパンチ部23(1または複数の支持部24)よりも一方側の部分が、プレス方向Xにおいて互いに近付くように押圧される。その結果、成形部30を有する成形品3が完成する。
【0081】
上述の実施形態では、第1金型12にパンチ部23(支持部24)が設けられる場合について説明したが、第2金型14にもパンチ部23と同様の構成を有するパンチ部(支持部)が設けられてもよい。図20は、プレス成形装置10のその他の例を示す図である。なお、図20は、プレス成形装置10のパンチ20およびパッド50ならびにブランク4を幅方向Yにおける他方側から見た概略図である。
【0082】
図20に示すプレス成形装置10が図6に示したプレス成形装置10と異なるのは、パッド50が、第2支持面52から突出するパンチ部53を備えている点である。パンチ部53は、第2支持面52からプレス方向Xにおける一方側(第1金型12側)に突出している。本実施形態では、パンチ部53は、第2支持面52からプレス方向Xにおける一方側に突出する複数の支持部54を有している。本実施形態では、複数の支持部24と複数の支持部54とが、交差方向Zに沿って交互に並ぶように配置されている。
【0083】
図20に示すプレス成形装置10を用いてブランク4にプレス成形を行う場合、パンチ部23(複数の支持部24)と第2支持面52とで第2板状部4bを挟持しつつ、パンチ部53(複数の支持部54)と第1支持面22とで第1板状部4aを挟持しながら、第2板状部4bに対してプレス成形を行うことができる。これにより、プレス成形時にブランク4の移動を十分に防止でき、より高精度のプレス成形が可能になる。
【0084】
なお、上述の実施形態では、第1支持面22およびパンチ部23(支持部24)がパンチ20に一体的に設けられているが、第1支持面22およびパンチ部23(支持部24)が別個の部材として設けられてもよい。後述の第2実施形態でも同様である。また、上述の実施形態では、第2支持面52およびパンチ部53(支持部54)がパッド50に一体的に設けられているが、第2支持面52およびパンチ部53(支持部54)が異なる部材として設けられてもよい。図21は、プレス成形装置10のその他の例を示す図である。なお、図21は、プレス成形装置10のパンチ20およびパッド50ならびにブランク4を幅方向Yにおける他方側から見た概略図である。
【0085】
図21に示すプレス成形装置10が図20に示すプレス成形装置10と異なるのは、パンチ20が、別個の部材として設けられたベース部20aとパンチ部23(複数の支持部24)とを有する点、およびパッド50が、別個の部材として設けられたベース部50aとパンチ部53(複数の支持部54)とを有する点である。
【0086】
本実施形態に係るプレス成形装置10では、第1支持面22は、ベース部20aに設けられている。パンチ部23(複数の支持部24)は、第1支持面22に対してプレス方向Xに移動できるように設けられている。また、第2支持面52は、ベース部50aに設けられている。パンチ部53(複数の支持部54)は、第2支持面52に対してプレス方向Xに移動できるように設けられている。本実施形態では、各支持部24および各支持部54は、例えば、公知の支持部材28(ガスクッション等)によって、ベース部20a,50aに対してプレス方向Xに移動可能に支持されている。
【0087】
本実施形態に係るプレス成形装置10においても、図20に示したプレス成形装置10と同様に、パンチ部23(複数の支持部24)と第2支持面52とで第2板状部4bを挟持しつつ、パンチ部53(複数の支持部54)と第1支持面22とで第1板状部4aを挟持しながら、第2板状部4bに対してプレス成形を行うことができる。これにより、プレス成形時にブランク4の移動を十分に防止でき、より高精度のプレス成形が可能になる。
【0088】
なお、上述の実施形態では、幅方向Yに垂直なパンチ20の断面において、第1支持面22が平坦である場合について説明したが、第1支持面22の形状は上述の例に限定されない。第2支持面52についても同様である。具体的には、図22(a)~(c)に示すように、ブランク4(成形品3)の形状に応じて、第1支持面22および第2支持面52の形状を適宜変更してもよい。また、各支持部24の高さ(先端部の位置)も、ブランク4(成形品3)の形状に応じて適宜変更してもよい。したがって、プレス方向Xにおいて、複数の支持部24のうちの少なくとも1つの頂部の位置が、他の支持部24の頂部の位置と異なっていてもよい。
【0089】
上述の実施形態では、第2金型14が、ダイ40およびパッド50を有する場合について説明したが、第2金型14の構成は上述の例に限定されない。例えば、図6に示したプレス成形装置10のダイ40およびパッド50の代わりに、図23に示すように、ダイ40aを設けてもよい。なお、ダイ40aは、上述の実施形態におけるプレス面42、壁面44および第2支持面52と同様の構成を有するプレス面42a、壁面44aおよび第2支持面52aを有している。
【0090】
図23(a),(b)を参照して、本実施形態では、ブランク4に対してプレス成形を行う際には、プレス方向Xにおいてダイ40aをパンチ20側に相対的に移動させる。これにより、プレス面42a、壁面44aおよび第2支持面52aが順に第2板状部4bに接触し、第2板状部4bに対してプレス成形が行われる。これにより、成形部32を有する成形品3が完成する。
【0091】
なお、詳細な説明は省略するが、第2金型が第2支持面を有していなくてもよい。したがって、例えば、図6に示した第2金型14において、パッド50が設けられていなくてもよい。この場合も、パンチ20およびダイ40によって、ブランク4に対してプレス成形を行うことができる。
【0092】
詳細な説明は省略するが、上述のプレス成形装置10において、各部の形状および寸法を適宜調整することによって、図24に示すような、種々の形状の成形品を得ることができる。
【0093】
(第2実施形態)
(成形品)
図25は、本発明の第2実施形態に係るプレス成形装置を利用して製造される成形品の一例を示す図である。
【0094】
図25に示すように、成形品6は、板状のフランジ部6a、板状の縦壁部6bおよび板状のフランジ部6cを有している。縦壁部6bは、フランジ部6aの縁とフランジ部6cの縁とを接続するように設けられている。フランジ部6aとフランジ部6cとは、縦壁部6bの厚み方向において、縦壁部6bから互いに逆方向に延びるように設けられている。
【0095】
縦壁部6bには、複数の凸部7が形成されている。凸部7は、縦壁部6bから縦壁部6bの厚み方向においてフランジ部6a側に突出するように形成されている。なお、凸部7は、外側から見ると凹部となるため、凹部と称しても良い。
【0096】
(ブランク)
本実施形態では、予め複数の凸部7が形成されたブランクを素材として用いて成形品6が製造される。図26は、本実施形態において素材として用いられるブランクの一例を示す図である。図26に示すように、ブランク8は、板状部8aと、板状部8aから板状部8aの厚み方向に向かって突出する複数の凸部7とを有している。なお、本実施形態では、有底状の凸部7が形成されているが、例えば、バーリング加工等によって縦壁部6bの厚み方向に貫通する穴を有する凸部7が形成されてもよい。
【0097】
(プレス成形装置および製造方法)
図27は、本発明の第2実施形態に係るプレス成形装置を示す概略図であり、(a)は、プレス成形装置を交差方向Zから見た図であり、(b)は、プレス成形装置を上方から見た図である。なお、本実施形態においても、上述の実施形態と同様に、ブランクに対してプレス成形を行う際に第1金型または第2金型が移動する方向をプレス方向Xと記載する。プレス成形装置の幅方向Yは、プレス方向Xに直交する方向である。また、プレス方向Xと幅方向Yとに交差する方向を交差方向Zと記載する。
【0098】
図27に示すように、本実施形態に係るプレス成形装置100は、プレス方向Xにおける一方側に設けられた第1金型110と、プレス方向Xにおける他方側に設けられた第2金型120とを備えている。すなわち、第1金型110と第2金型120とは、プレス方向Xにおいて対向する位置に設けられている。第1金型110と第2金型120とは、プレス方向Xにおいて相対移動する。本実施形態では、第1金型110はパンチ60を含み、第2金型120はダイ70およびパッド80を含む。
【0099】
パンチ60は、第1支持面62と、第1支持面62から突出したパンチ部63とを備えている。本実施形態では、第1支持面62は、プレス方向Xにおいて他方側(第2金型120側)を向いている。パンチ部63は、第1支持面62からプレス方向Xにおける他方側に突出している。プレス方向Xにおける第2金型120側から見て、パンチ部63は、ダイ70の後述する壁面74に対向している。本実施形態では、パンチ部63は、第1支持面62からプレス方向Xにおける他方側に突出する複数の支持部64を有している。複数の支持部64は、互いに離隔し、かつ交差方向Zに沿って並ぶように設けられている。本実施形態では、各支持部64は、断面矩形の側面64aを有するように柱状に形成されている。なお、図27に示す支持部64の形状は単なる一例であり、支持部64の形状は上述の例に限定されない。各支持部64の頂部は、平坦形状を有することが好ましいが、球冠形状を有していてもよい。
【0100】
本実施形態では、複数の支持部64の複数の側面64aによって、パンチ部63の側面63aが構成される。プレス方向Xにおける第2金型120側から見て、パンチ部63の側面63aは、ダイ70の後述する壁面74側に向かって開口する開口部63bを含む。本実施形態では、パンチ部63の側面63aは、複数の開口部63bを含む。本実施形態では、隣り合う2つの支持部64の側面64aは、開口部63bを介して離隔して配置されている。言い換えると、隣り合う2つの支持部64は、開口部63bを介して離隔して配置されている。なお、本実施形態では、開口部63bは、プレス方向Xにおいて第2金型120側に向かっても開口している。また、本実施形態では、開口部63bは、隣り合う2つの支持部64の間を、幅方向Yに貫通するように形成されている。
【0101】
第1実施形態の第1支持面22と同様に、第1支持面62は、交差方向Zにおいて、少なくとも各支持部64の両側に設けられている。本実施形態では、第1実施形態の第1支持面22と同様に、第1支持面62は、複数の支持部64の並び方向において、少なくとも複数の支持部64の間および複数の支持部64の両側に設けられている。
【0102】
上述のダイ40と同様に、ダイ70は、プレス面72と、プレス面72に連続する壁面74とを有している。本実施形態では、プレス面72は、プレス方向Xにおいて一方側(第1金型110側)を向いている。壁面74は、プレス面72の縁からプレス方向Xにおける他方側に延びている。プレス面72は、幅方向Yにおいてパンチ部63(複数の支持部64)の一方側に設けられている。本実施形態では、プレス面72は、プレス方向Xにおいてパンチ部63に対向する位置から外れた位置に配置されている。壁面74は、幅方向Yにおいて、パンチ部63(複数の支持部64)とプレス面72との間に位置付けられている。
【0103】
上述のプレス面42および壁面44と同様に、プレス面72および壁面74は、交差方向Zにおいて、各支持部64に対して、支持部64よりも一方側から他方側まで延びるように設けられている。本実施形態では、プレス面72および壁面74は、複数の支持部64の並び方向に沿うように、かつ当該並び方向において複数の支持部64よりも一方側から他方側まで延びるように設けられている。プレス方向Xにおいて、ダイ70は、パンチ60の第1支持面62に対して相対的に進退可能に設けられている。
【0104】
上述のパッド50と同様に、パッド80は、プレス方向Xにおいてパンチ部63(複数の支持部64)に対向する位置に配置されている。本実施形態では、パッド80は、プレス方向Xにおいてパンチ部63(複数の支持部64)に対向する第2支持面82を有している。上述の第2支持面52と同様に、第2支持面82は、交差方向Zにおいて、各支持部64に対して、支持部64よりも一方側から他方側まで延びるように設けられている。本実施形態では、第2支持面82は、複数の支持部64の並び方向において複数の支持部64よりも一方側から他方側まで延びるように設けられている。プレス方向Xにおいて、パッド80は、パンチ60の複数の支持部64に対して相対的に進退可能に設けられている。
【0105】
ブランク8に対してプレス成形を行う際には、まず、パンチ部63(複数の支持部64)によってブランク8を支持する。より具体的には、各凸部7が、幅方向Yにおいて複数の支持部64の一方側に位置し、交差方向Zにおいて隣り合う2つの支持部64の間に位置し、かつプレス方向Xにおける一方側に向かって突出した状態となるように、ブランク8を複数の支持部64によって支持する。
【0106】
次に、上述の第1実施形態と同様に、パッド80(第2支持面82)をプレス方向Xにおける一方側に移動させ、パンチ部63(複数の支持部64)と第2支持面82とで板状部8aを挟持する。その後、上述の第1実施形態と同様に、ダイ70(プレス面72)をパンチ部63(複数の支持部64)の頂部に対して、プレス方向Xにおける他方側から一方側へ相対的に移動させる。これにより、板状部8aのうち幅方向Yにおいて複数の支持部64よりも一方側の部分が、プレス方向Xにおける一方側に押圧される。その結果、板状部8aに曲げ変形が加えられ、成形品6が完成する。本実施形態では、プレス方向Xにおける、第1金型110と第2金型120との相対移動の成形下死点において、ダイ70の壁面74は、板状部8aの一部を介してパンチ部63の側面63aに対向し、各凸部7は側面63aに接触せずに、開口部63bに入り込む。なお、第1金型110と第2金型120との相対移動の成形下死点におけるプレス成形装置100の状態は、図6(d)において、パンチ20をパンチ60に代え、ダイ40をダイ70に代え、パッド50をパッド80に代えた状態に相当する。
【0107】
(本実施形態の効果)
以上のように、本実施形態に係るプレス成形装置100によれば、縦壁部6bに凸部7が形成された成形品6をブランク8から製造するに際して、ブランク8に予め形成された凸部7を、交差方向Zにおいて隣り合う支持部64の間に配置することができる。これにより、ブランク8に対してプレス成形を行う際に、凸部7が第1金型110に接触することを防止することができる。その結果、成形品6を効率よく製造することができる。
【0108】
なお、上述の実施形態における複数の支持部24と同様に、複数の支持部64の高さ(頂部の位置)は、成形品6の形状および寸法に応じて適宜変更してもよい。したがって、プレス方向Xにおける複数の支持部64の頂部の位置が互いに異なっていてもよい。詳細な説明は省略するが、上述の実施形態と同様に、プレス成形装置100の他の部分の形状および寸法も、成形品6の形状および寸法に応じて適宜変更してもよい。また、詳細な説明は省略するが、フランジ部6cは形成されなくてもよい。後述の実施形態においても同様に、フランジ部は形成されなくてもよい。
【0109】
(変形例)
上述の実施形態では、第2金型120が一つのダイ70を備える場合について説明したが、第2金型120の構成は上述の例に限定されない。例えば、図28に示すプレス成形装置100のように、幅方向Yにおいて、パッド80の両側にダイ70を設けてもよい。この場合、例えば、図28に示すように、幅方向Yにおいてパンチ部63(複数の支持部64)の両側にそれぞれ複数の凸部7が位置付けられるように、かつ各凸部7が交差方向Zにおいて隣り合う2つの支持部64の間に位置するようにブランク8を配置して、ブランク8に対してプレス成形を行う。これにより、プレス成形時に各凸部7が第1金型110に接触することを防止しつつ、図1(c)に示したようなハット形状の成形品を製造することができる。なお、詳細な説明は省略するが、図28に示すプレス成形装置100において、パッド80を設けなくてもよい。この場合も、プレス成形時に各凸部7が第1金型110に接触することを防止しつつ、ハット形状の成形品を製造することができる。
【0110】
上述の実施形態では、隣り合う支持部64が開口部63bを介して離隔するように第1金型110のパンチ部63が構成される場合について説明したが、第1金型110のパンチ部の構成は上述の例に限定されない。例えば、図29に示すように、第1金型110のパンチ部63が、隣り合う支持部64を接続する接続部65をさらに備えていてもよい。
【0111】
図29を参照して、本実施形態では、接続部65は、開口部63bに設けられている。言い換えると、本実施形態では、各開口部63bが、接続部65を有している。各接続部65は、支持部64と同様に、第1支持面62からプレス方向Xに突出するように設けられている。本実施形態では、複数の支持部64の複数の側面64aと、複数の接続部65の複数の側面65aとによって、パンチ部63の側面63aが構成されている。なお、本実施形態においても、パンチ部63の複数の支持部64は、第1支持面62からプレス方向Xにおける他方側に突出している。複数の支持部64は、互いに離隔しかつ交差方向Zに沿って並ぶように設けられている。プレス方向X(図27参照)における第2金型120側から見て、接続部65の側面65aとダイ70の壁面74との距離は、支持部64の側面64aと壁面74との距離よりも大きい。すなわち、幅方向Yにおいて、接続部65と壁面74との間の空間は、支持部64と壁面74との間の空間よりも大きい。本実施形態では、プレス方向Xにおいて、支持部64の頂部は、接続部65の頂部よりも他方側(第2金型120側)に位置している。
【0112】
ブランク8に対してプレス成形を行う際には、まず、パンチ部63の複数の支持部64によってブランク8を支持する。より具体的には、各凸部7が、幅方向Yにおいて複数の支持部64の一方側に位置し、交差方向Zにおいて隣り合う2つの支持部64の間に位置し、かつプレス方向Xにおける一方側(第1金型110側)に向かって突出した状態となるように、ブランク8を複数の支持部64によって支持する。
【0113】
次に、上述の実施形態と同様に、パッド80(第2支持面82)をプレス方向Xにおける一方側に移動させ、複数の支持部64と第2支持面82とで板状部8aを挟持する。その後、ダイ70(プレス面72)を複数の支持部64の頂部に対して、プレス方向Xにおける他方側(第2金型120側)から一方側(第1金型110側)へ相対的に移動させる。これにより、板状部8aのうち幅方向Yにおいて複数の支持部64よりも一方側の部分が、プレス方向Xにおける一方側に押圧される。その結果、板状部8aに曲げ変形が加えられ、成形品6が完成する。本実施形態においても、プレス方向Xにおける、第1金型110と第2金型120との相対移動の成形下死点において、ダイ70の壁面74は、板状部8aの一部を介してパンチ部63の側面63aに対向し、各凸部7は側面63aに接触せずに、開口部63bに入り込む。
【0114】
本実施形態においても、ブランク8から成形品6を製造するに際して、ブランク8に予め形成された凸部7を、交差方向Zにおいて隣り合う支持部64の間に配置することができる。これにより、ブランク8に対してプレス成形を行う際に、凸部7が第1金型110に接触することを防止することができる。その結果、成形品6を効率よく製造することができる。
【0115】
なお、上述の実施形態と同様に、複数の支持部64の高さ(頂部の位置)は、成形品6の形状および寸法に応じて適宜変更してもよい。したがって、プレス方向Xにおける複数の支持部64の頂部の位置が互いに異なっていてもよい。また、プレス方向Xにおける複数の接続部65の頂部の位置が互いに異なっていてもよい。また、プレス方向Xにおいて、複数の支持部64の少なくとも1つの頂部の位置と、当該支持部64に隣接する接続部65の頂部の位置とが異なっていてもよく、複数の支持部64の頂部の位置と、複数の接続部65の頂部の位置とが互いに等しくてもよい。
【0116】
図示は省略するが、複数の接続部65を備えたプレス成形装置100においても、図28に示したプレス成形装置100と同様に、パッド80の両側にダイ70を設けてもよい。これにより、プレス成形時に各凸部7が第1金型110に接触することを防止しつつ、図1(c)に示したようなハット形状の成形品を製造することができる。なお、詳細な説明は省略するが、図28に示すプレス成形装置100と同様に、2つのダイ70を設ける場合には、パッド80を設けなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明によれば、天板部に対向するフランジ部を有する成形品および縦壁部に凸部が形成された成形品を効率よく製造することができる。
【符号の説明】
【0118】
3,6 成形品
4,8 ブランク
5 貫通孔
7 凸部
10,100 プレス成形装置
12,110 第1金型
14,120 第2金型
20,60 パンチ
22,62 第1支持面
24,64 支持部
40,70 ダイ
42,72 プレス面
44,74 壁面
50,80 パッド
52,82 第2支持面

【要約】
プレス成形装置は、プレス方向において互いに対向する位置にあり、プレス方向に相対移動する第1金型と第2金型とを具備する。第1金型は、第1支持面と、第1支持面から突出したパンチ部とを備える。第2金型は、プレス方向においてパンチ部に対向する位置から外れた位置に配置されたプレス面と、プレス面に連続する壁面とを備える。プレス方向における第2金型側から見て、パンチ部は、壁面に対向しかつ壁面側に開口する開口部を含む側面を有する。プレス方向における、第1金型と第2金型との相対移動の成形下死点において、壁面は、パンチ部の側面に対向する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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