(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】ガラスフィルムの製造方法、及びガラスフィルムの製造装置
(51)【国際特許分類】
C03B 33/09 20060101AFI20231012BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20231012BHJP
B65H 20/10 20060101ALI20231012BHJP
B65H 35/02 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
C03B33/09
B23K26/38 Z
B65H20/10 B
B65H35/02
(21)【出願番号】P 2019232570
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 直弘
(72)【発明者】
【氏名】村田 憲一
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150131(JP,A)
【文献】特開2012-031031(JP,A)
【文献】特開2016-113342(JP,A)
【文献】特開2015-044711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/00-33/14,
B23K 26/00-26/70,
B65H 35/02,
B21C 47/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の一次ガラスフィルムを搬送装置で所定の方向に搬送しながら切断することで一又は複数の二次ガラスフィルムを得るガラスフィルムの製造方法であって、
前記一次ガラスフィルムの切断は、レーザー切断装置を用いて所定の切断ゾーンで前記一次ガラスフィルムにレーザーを照射することにより行われると共に、
前記搬送装置は、相対的に前記一次ガラスフィルムの搬送方向上流側に位置する上流側コンベアと、相対的に前記一次ガラスフィルムの搬送方向下流側に位置して前記二次ガラスフィルムを搬送可能な下流側コンベアとで構成され、
前記下流側コンベアは、ベルトで前記二次ガラスフィルムを接触支持可能な複数の下流側ベルトコンベアで構成され、かつ
前記複数の二次ガラスフィルムがそれぞれ専用の前記下流側ベルトコンベアで支持可能なように、前記各下流側ベルトコンベアの前記ベルトの位置が、前記一次ガラスフィルムの幅方向に調整可能に構成されていることを特徴とする、ガラスフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記レーザー切断装置は、複数のレーザー照射部を有し、
前記各レーザー照射部の位置が、前記一次ガラスフィルムの幅方向に調整可能に構成されている請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記一次ガラスフィルムの切断により、それぞれ所定の幅方向寸法を有する複数の前記二次ガラスフィルムを取得し、
前記各二次ガラスフィルムの幅方向位置及び幅方向寸法に応じて、前記ベルトの位置を調整する請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記一次ガラスフィルムの切断により、それぞれ所定の幅方向寸法を有する複数の前記二次ガラスフィルムを取得し、
前記各二次ガラスフィルムの幅方向位置及び幅方向寸法に応じて、前記ベルトの位置及び前記レーザー照射部の位置をそれぞれ調整する請求項2に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記各二次ガラスフィルムの幅方向中央位置に応じて、前記ベルトの位置を調整する請求項3又は4に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記各二次ガラスフィルムの幅方向両端位置に応じて、前記ベルトの位置を調整する請求項3又は4に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項7】
幅方向で隣り合う任意の一組の前記二次ガラスフィルムの間に幅方向隙間を形成するための隙間形成部が、前記下流側コンベアよりも前記一次ガラスフィルムの搬送方向下流側に設けられている請求項3~6の何れか一項に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記隙間形成部は、前記各二次ガラスフィルムが上方に凸となる向きに湾曲変形するように、幅方向中央が最も大径となる樽状の支持ローラを前記二次ガラスフィルムと同じ数だけ有する請求項7に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記複数の下流側ベルトコンベアの少なくとも一部が、前記二次ガラスフィルムを前記ベルトに向けて吸着可能に構成されている請求項1~8の何れか一項に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記上流側コンベアは、ベルトで前記一次ガラスフィルムを接触支持可能な複数の上流側ベルトコンベアで構成され、かつ
前記複数の上流側ベルトコンベアのうち前記一次ガラスフィルムの幅方向中央に位置する上流側ベルトコンベアが、前記一次ガラスフィルムを前記ベルトに向けて吸着可能に構成されている請求項1~9の何れか一項に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の方法で得た二次ガラスフィルムを、前記下流側コンベアよりも前記搬送方向下流側に位置する巻取り装置でロール状に巻き取ってガラスロールを得る、ガラスロールの製造方法。
【請求項12】
帯状の一次ガラスフィルムを所定の方向に搬送しながら切断することで一又は複数の二次ガラスフィルムを得るためのガラスフィルムの製造装置であって、
前記一次ガラスフィルムを所定の方向に搬送可能な搬送装置と、
前記搬送装置で搬送されている前記一次ガラスフィルムにレーザーを照射して所定の切断ゾーンで切断可能なレーザー切断装置とを備え、
前記搬送装置は、相対的に前記一次ガラスフィルムの搬送方向上流側に位置する上流側コンベアと、相対的に前記一次ガラスフィルムの搬送方向下流側に位置して前記二次ガラスフィルムを搬送可能な下流側コンベアとで構成され、
前記下流側コンベアは、ベルトで前記二次ガラスフィルムを接触支持可能な複数の下流側ベルトコンベアで構成され、かつ
前記複数の二次ガラスフィルムがそれぞれ専用の前記下流側ベルトコンベアで支持可能なように、前記各下流側ベルトコンベアの前記ベルトの位置が、前記一次ガラスフィルムの幅方向に調整可能に構成されていることを特徴とする、ガラスフィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィルムの製造方法、及びガラスフィルムの製造装置に関し、特に帯状のガラスフィルムをレーザーで切断して所定の幅方向寸法に切り出すための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)に用いられる板ガラス、有機EL照明に用いられる板ガラス、タッチパネルの構成要素である強化ガラス等の製造に用いられる板ガラス、更には太陽電池のパネル等に用いられる板ガラスにおいては、薄肉化が推進されているのが実情である。
【0003】
例えば特許文献1には、厚み方向寸法が数百μm以下の板ガラス(ガラスフィルム)が開示されている。この種の板ガラスは、同文献にも記載されるように、いわゆるオーバーフローダウンドロー法を利用した成形装置によって連続的に成形されるのが一般的である。
【0004】
この場合、オーバーフローダウンドロー法により連続的に成形された長尺のガラスフィルムは、その搬送方向を鉛直方向から水平方向に変換した後、搬送装置の横搬送部(水平搬送部)によって引き続き下流側に搬送される。この搬送途中で、ガラスフィルムの幅方向両端部(厚肉部)が切断除去される。その後、ガラスフィルムは、巻取りローラによってロール状に巻き取られることで、ガラスロールとされる。
【0005】
ガラスフィルムを切断する技術として、特許文献1では、レーザーを利用した切断方法が開示されている。この切断方法はいわゆるレーザー割断と呼ばれる方法で、ガラスフィルムをその長手方向に搬送しつつ、ダイヤモンドカッタ等のクラック形成手段によりガラスフィルムに初期クラックを形成した後、この部分にレーザーを照射して加熱し、その後、加熱された部分を冷却手段により冷却するものである。これにより、ガラスフィルムに熱応力が生じ、この熱応力によって初期クラックが進展することで、当該ガラスフィルムが切断される。
【0006】
また、この種のレーザーによる切断方法は、帯状のガラスフィルムの幅方向両端に位置する厚肉部を切断する場合に用いられるだけでなく、上記厚肉部を除去した後のガラスフィルムに対して行われる場合もある。この場合、例えば特許文献2に記載のように、一度目のレーザー切断により厚肉部を除去したガラスフィルムをロール状に巻き取り、ロール状に巻き取った状態のガラスフィルム(ガラスロール)を次工程に搬送した後、当該ガラスロールからガラスフィルムを引出して再びレーザー切断を施すことにより、所定の幅方向寸法にガラスフィルムが切断し直される。二度目のレーザー切断では、成形時に生じた厚肉部(耳部)が既に除去されているため、一度目のレーザー切断に比べて精度よく所定の幅方向寸法にガラスフィルムを切断することが可能となる。
【0007】
上述のようにガラスフィルムを切断する場合、レーザーの照射によるガラスフィルムの切断は、ベルトコンベア等の搬送装置によって帯状のガラスフィルムをその長手方向に沿った向きに搬送しながら所定の位置に設置されたレーザー照射装置により鉛直下方に向けてレーザーを照射することにより行われる。ここで、搬送装置にベルトコンベアを用いる場合、ガラスフィルムの下面をその幅方向全域にわたって一本のベルトで接触支持する形態(特許文献1を参照)や、レーザーの照射位置を避ける目的で、ガラスフィルムの下面をその幅方向に所定の間隔を空けて配設した複数本のベルトで接触支持する形態(特許文献2を参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-240883号公報
【文献】国際公開2019/049646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、厚肉部を除去した後のガラスフィルムに対して再度の切断を施す形態としては、上述のように一枚のガラスフィルムから一枚のガラスフィルムを所定の幅方向寸法に切り出す(切断し直す)形態だけなく、一枚のガラスフィルムから二枚以上のガラスフィルムをそれぞれ所定の幅方向寸法に切り出す形態が考えられる。この場合、例えばガラスフィルムの切断位置に応じてレーザー切断装置(レーザー照射装置)の幅方向位置を調整することで、一つの製造ラインでガラスフィルムの切り出し枚数の変更に対応することができる。ところが、ベルトコンベアに関しては、大型であるため、レーザー照射装置のように容易に幅方向の位置を変更することができない。そのため、上述のように複数のベルトコンベアがガラスフィルムの幅方向に並んで配設される場合、切り出し枚数や切り出し後のガラスフィルムの幅方向寸法によっては、切断後のガラスフィルムの幅方向一方側に偏った位置でベルトが接触して、切断後のガラスフィルムが斜行する事態を招くおそれが生じる。これでは、ガラスフィルムの切断位置に影響が及ぶため安定した切断品質のガラスフィルムを得ることが難しい。
【0010】
以上の事情に鑑み、本発明は、切断条件の変更に伴うガラスフィルムの搬送不良を回避して、良好な品質のガラスフィルムを安定的に得ることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題の解決は、本発明に係るガラスフィルムの製造方法により達成される。すなわち、この製造方法は、帯状の一次ガラスフィルムを搬送装置で所定の方向に搬送しながら切断することで一又は複数の二次ガラスフィルムを得るガラスフィルムの製造方法であって、一次ガラスフィルムの切断は、レーザー切断装置を用いて所定の切断ゾーンで一次ガラスフィルムにレーザーを照射することにより行われると共に、搬送装置は、相対的に一次ガラスフィルムの搬送方向上流側に位置する上流側コンベアと、相対的に一次ガラスフィルムの搬送方向下流側に位置して二次ガラスフィルムを搬送可能な下流側コンベアとで構成され、下流側コンベアは、ベルトで二次ガラスフィルムを接触支持可能な複数の下流側ベルトコンベアで構成され、かつ各下流側ベルトコンベアのベルトの位置が、一次ガラスフィルムの幅方向に調整可能に構成されている点をもって特徴付けられる。なお、ここでいう一次ガラスフィルムには、フィルム状に成形された後でかつ一度目の切断加工を受ける前のガラスフィルムだけでなく、一度目の切断加工を受けた後でかつ二度目の切断加工を受ける前のガラスフィルムが含まれるものとする。また、ここでいう二次ガラスフィルムには、この後に更なる加工を受けるガラスフィルムだけでなく、本発明に係る切断加工が最終の加工となるガラスフィルム(すなわち実質的に最終製品となるガラスフィルム)が含まれるものとする。また、ここでいう一次ガラスフィルムの幅方向とは、当該フィルムの長手方向及び厚み方向の何れに対しても直交する向きを意味する。
【0012】
このように、本発明に係るガラスフィルムの製造方法では、搬送装置を、相対的に一次ガラスフィルムの搬送方向上流側に位置する上流側コンベアと、搬送方向下流側に位置して二次ガラスフィルムを搬送可能な下流側コンベアとで構成すると共に、下流側コンベアを、ベルトで二次ガラスフィルムを接触支持可能な複数の下流側ベルトコンベアで構成し、各下流側ベルトコンベアのベルトの位置を、一次ガラスフィルムの幅方向に調整可能とした。これにより、一次ガラスフィルムを搬送するための上流側コンベアの構成を変えることなく、二次ガラスフィルムの幅方向におけるベルトとの接触支持位置を自由に設定できるので、レーザー切断により取得すべき二次ガラスフィルムの幅方向位置又は幅方向寸法に応じて、各下流側ベルトコンベアを適切な幅方向位置に配設することができる。従って、必要最小限の設備変更で、二次ガラスフィルムの幅方向一方側に偏った位置にベルトが接触する事態を回避して、当該接触位置の偏りに起因した二次ガラスフィルムの斜行など二次ガラスフィルムの搬送不良を防止することが可能となる。また、斜行させずに二次ガラスフィルムを搬送できれば、幅方向で隣り合う一方の二次ガラスフィルムの切断面(側端面)が他方の二次ガラスフィルムの切断面(側端面)に干渉する事態を可及的に回避することができるので、良好な切断品質のガラスフィルムを得ることが可能となる。
【0013】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、レーザー切断装置は、複数のレーザー照射部を有し、各レーザー照射部の位置が、一次ガラスフィルムの幅方向に調整可能に構成されてもよい。
【0014】
このように構成することで、一次ガラスフィルムに対するレーザーの照射位置を幅方向で自由に設定できるので、例えば幅方向で隣接する一対のレーザー照射部の幅方向距離を調整することで、要求される二次ガラスフィルムの幅方向寸法が変更された場合においても、当該変更後の幅方向寸法を精度よく管理することが可能となる。
【0015】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、一次ガラスフィルムの切断により、それぞれ所定の幅方向寸法を有する複数の二次ガラスフィルムを取得する場合に、各二次ガラスフィルムの幅方向位置及び幅方向寸法に応じて、ベルトの位置を調整してもよい。
【0016】
このように、それぞれ所定の幅方向寸法を有する複数の二次ガラスフィルムを切り出す場合には、各二次ガラスフィルムの幅方向位置及び幅方向寸法に応じて、下流側ベルトコンベアのベルトの幅方向位置を調整するのがよい。このように、ベルトの幅方向位置を設定することで、切り出される二次ガラスフィルムそれぞれの位置、大きさに適した位置にベルトを配置することができるので、切り出される全ての二次ガラスフィルムの斜行を避けて正確な向きに安定的に搬送することが可能となる。
【0017】
あるいは、上述のようにレーザー照射部の位置を調整可能に構成する場合、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、一次ガラスフィルムの切断により、それぞれ所定の幅方向寸法を有する複数の二次ガラスフィルムを取得する場合に、各二次ガラスフィルムの幅方向位置及び幅方向寸法に応じて、ベルトの位置及びレーザー照射部の位置をそれぞれ調整してもよい。
【0018】
また、レーザー照射部の位置を調整可能とする場合には、各二次ガラスフィルムの幅方向位置及び幅方向寸法に応じて、下流側ベルトコンベアのベルトの位置及びレーザー照射部の位置をそれぞれ調整するのがよい。このように、ベルト並びにレーザー照射部の幅方向位置を設定することで、切り出される二次ガラスフィルムそれぞれの位置、大きさに適した位置にベルトを配置すると共に、レーザー切断に適した位置にレーザー照射部を配置することができる。よって、正確な幅方向寸法にそれぞれの二次ガラスフィルムを切断しつつ、これら全ての二次ガラスフィルムを正確な向きに安定的に搬送することが可能となる。
【0019】
また、上述のように複数の二次ガラスフィルムを得る場合、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、各二次ガラスフィルムの幅方向中央位置に応じて、ベルトの位置を調整してもよい。あるいは、各二次ガラスフィルムの幅方向両端位置に応じて、ベルトの位置を調整してもよい。
【0020】
上述のように、本発明に係るガラスフィルムの製造方法によれば、切出された二次ガラスフィルムに要求される搬送態様に応じて、ベルトの位置を適宜設定することができる。例えば、二次ガラスフィルムの搬送時のばたつき等の変動を抑制する狙いを主とする場合には、二次ガラスフィルムの幅方向両端位置に応じて、ベルトの位置を調整することで、二次ガラスフィルムをその幅方向両側で安定的に接触支持することができる。よって、上述した変動を抑えて安定的に二次ガラスフィルムを搬送することが可能となる。あるいは、後述するように、幅方向で隣接する任意の一対の二次ガラスフィルムの切断面同士の接触を回避する狙いを主とする場合には、二次ガラスフィルムの幅方向中央位置に応じて、ベルトを調整することで、二次ガラスフィルムをその幅方向中央側で接触支持することができる。この場合、二次ガラスフィルムが幅方向中央に比べて幅方向両端側を垂下させた形状(上方に凸となる形状)に湾曲変形することで、切断直後の二次ガラスフィルムの切断面同士の接触を回避しつつ下流側に各二次ガラスフィルムを搬送することが可能となる。
【0021】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、複数の下流側ベルトコンベアの少なくとも一部が、二次ガラスフィルムをベルトに向けて吸着可能に構成されてもよい。
【0022】
このように二次ガラスフィルムをベルトに向けて吸着可能に構成することによって、二次ガラスフィルムのベルトに対する接触支持形態を常に一定の状態に保つことができる。よって、さらに安定的に二次ガラスフィルムを搬送することが可能となる。ただし、後述するように、切断直後の二次ガラスフィルムの切断面同士の接触を回避することを考慮した場合には、例えば後述するが、相互に近接する一方の二次ガラスフィルムの幅方向一方側を支持するベルトと、他方の二次ガラスフィルムの幅方向他方側を支持するベルトのうち何れか一方を吸着し、他方を非吸着とする構成をとることも可能である。
【0023】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、上流側コンベアは、ベルトで一次ガラスフィルムを接触支持可能な複数の上流側ベルトコンベアで構成され、かつ複数の上流側ベルトコンベアのうち一次ガラスフィルムの幅方向中央に位置する上流側ベルトコンベアが、一次ガラスフィルムをベルトに向けて吸着可能に構成されてもよい。
【0024】
レーザー切断前のガラスフィルム(一次ガラスフィルム)は、成形後の寸法のばらつき等を未だ許容し、また巨大サイズであることから反り等の変形を生じた状態で搬送されることが少なくない。そのため、上述した形態の一次ガラスフィルムを複数のベルトで吸着して搬送しようとすると、長手方向寸法の左右差(幅方向一端側と他端側とでの長手方向寸法の差)に起因して、しわが生じ易いといった問題がある。以上より、しわの発生を抑える観点からは、上述のように、複数の上流側ベルトコンベアのうち一次ガラスフィルムの幅方向中央に位置する上流側ベルトコンベアが、一次ガラスフィルムをベルトに向けて吸着可能に構成するのがよい。幅方向中央のみを吸着した状態で一次ガラスフィルムを搬送することで、しわの発生を抑えつつ一次ガラスフィルムをレーザーによる切断ゾーンに供給することが可能となる。
【0025】
また、一次ガラスフィルムの切断により複数の二次ガラスフィルムを得る場合、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、幅方向で隣り合う任意の一組の二次ガラスフィルムの間に幅方向隙間を形成するための隙間形成部が、下流側コンベアよりも一次ガラスフィルムの搬送方向下流側に設けられてもよい。
【0026】
このように下流側コンベアよりも一次ガラスフィルムの搬送方向下流側に隙間形成部を設けることにより、下流側コンベアの構造を複雑化させることなく、二次ガラスフィルムの間に所定の幅方向隙間を形成することができる。ここで、二次ガラスフィルムはその基端(切断ゾーンに位置する)から下流側に向けて連続した形態をなしているため、下流側コンベアよりも下流側に隙間形成部を設けた場合であっても、比較的容易に切断直後の二次ガラスフィルムの間に所定の幅方向隙間を形成することが可能となる。
【0027】
また、上述のように隙間形成部を設ける場合、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、隙間形成部は、各二次ガラスフィルムが上方に凸となる向きに湾曲変形するように、幅方向中央が最も大径となる樽状の支持ローラを二次ガラスフィルムと同じ数だけ有してもよい。
【0028】
このように、隙間形成部が、幅方向中央が最も大径となる樽状の支持ローラを有する構成とすることによって、例えば支持ローラよりも下流側で二次ガラスフィルムを巻き取るのに伴って二次ガラスフィルムのうち隙間形成部の支持ローラ上を通過する部分が上方に凸となる向きに湾曲変形する。よって、簡素な構成で二次ガラスフィルム同士の接触を回避して各二次ガラスフィルムを安全に搬送することが可能となる。
【0029】
また、以上の説明に係るガラスフィルムの製造方法によれば、切り出し枚数の変更に伴いガラスフィルムの支持搬送位置が幅方向一方側に偏ることによるガラスフィルムの搬送不良を防止して、良好な品質のガラスフィルムを安定的に得ることが可能となる。そのため、例えば上述の方法で得た二次ガラスフィルムを、下流側コンベアよりも搬送方向下流側に位置する巻取り装置でロール状に巻き取ってガラスロールを得ることにより、二次ガラスフィルムの切り出し数やその幅方向寸法に関わらず、巻取り時のずれを防止して、良好な品質のガラスロールを安定的に得ることが可能となる。
【0030】
また、前記課題の解決は、本発明に係るガラスフィルムの製造装置によっても達成される。すなわち、この製造装置は、帯状の一次ガラスフィルムを所定の方向に搬送しながら切断することで一又は複数の二次ガラスフィルムを得るためのガラスフィルムの製造装置であって、一次ガラスフィルムを所定の方向に搬送可能な搬送装置と、搬送装置で搬送されている一次ガラスフィルムにレーザーを照射して所定の切断ゾーンで切断可能なレーザー切断装置とを備え、搬送装置は、相対的に一次ガラスフィルムの搬送方向上流側に位置する上流側コンベアと、相対的に一次ガラスフィルムの搬送方向下流側に位置して二次ガラスフィルムを搬送可能な下流側コンベアとで構成され、下流側コンベアは、ベルトで二次ガラスフィルムを接触支持可能な複数の下流側ベルトコンベアで構成され、かつ各下流側ベルトコンベアのベルトの位置が、一次ガラスフィルムの幅方向に調整可能に構成されている点をもって特徴付けられる。
【0031】
このように、本発明に係るガラスフィルムの製造装置においても、搬送装置を、相対的に一次ガラスフィルムの搬送方向上流側に位置する上流側コンベアと、搬送方向下流側に位置して二次ガラスフィルムを搬送可能な下流側コンベアとで構成すると共に、下流側コンベアを、ベルトで二次ガラスフィルムを接触支持可能な複数の下流側ベルトコンベアで構成し、各下流側ベルトコンベアのベルトの位置を、一次ガラスフィルムの幅方向に調整可能とした。これにより、一次ガラスフィルムを搬送するための上流側コンベアの構成を変えることなく、二次ガラスフィルムの幅方向におけるベルトとの接触支持位置を自由に設定できるので、レーザー切断により取得すべき二次ガラスフィルムの幅方向位置又は幅方向寸法に応じて、各下流側ベルトコンベアを適切な幅方向位置に配設することができる。従って、必要最小限の設備変更で、二次ガラスフィルムの幅方向一方側に偏った位置にベルトが接触する事態を回避して、当該接触位置の偏りに起因した二次ガラスフィルムの斜行など二次ガラスフィルムの搬送不良を防止することが可能となる。また、斜行させずに二次ガラスフィルムを搬送できれば、幅方向で隣り合う一方の二次ガラスフィルムの切断面が他方の二次ガラスフィルムの切断面に干渉する事態を可及的に回避することができるので、良好な切断品質のガラスフィルムを得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
以上に述べたように、本発明によれば、切断条件の変更に伴うガラスフィルムの搬送不良を回避して、良好な品質のガラスフィルムを安定的に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るガラスフィルムの製造装置の全体構成を示す側面図である。
【
図3】
図2中のA-A切断線に沿った搬送装置の断面図である。
【
図5】
図4中のB-B切断線に沿った第一定盤の断面図である。
【
図6】
図5中のC-C切断線に沿った第一定盤の断面図である。
【
図8】
図7中のD-D切断線に沿った第二定盤の断面図である。
【
図9】
図8中のE-E切断線に沿った第二定盤の断面図である。
【
図10】
図2に示す支持ローラによる作用を説明するための概念図である。
【
図11】本発明の第二実施形態に係る搬送装置の平面図である。
【
図12】本発明の第三実施形態に係る搬送装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係るガラスフィルムの製造方法の第一実施形態を、
図1~
図10に基づいて説明する。なお、以下では、ガラスフィルムをロール状に巻き取ってガラスロールを最終的に得る場合を例にとって説明する。
【0035】
本発明の第一実施形態に係るガラスフィルム(ガラスロール)の製造装置1は、
図1に示すように、帯状の母材ガラスフィルムGを成形する成形部2と、母材ガラスフィルムGの進行方向を縦方向下方から横方向に変換する方向変換部3と、方向変換後に母材ガラスフィルムGを横方向に搬送する第一搬送部4と、母材ガラスフィルムGにおける幅方向両端部を切断する第一切断部5と、幅方向両端部が除去されたガラスフィルム(以下、第一ガラスフィルムと称する。)G1をロール状に巻き取って第一ガラスロールGRL1を得る第一巻取り部6とを備える。なお、本実施形態では、縦方向は鉛直方向であり、横方向は水平方向である。
【0036】
また、ガラスロールの製造装置1は、第一ガラスロールGRL1から第一ガラスフィルムG1を引き出す引出し部7と、引出し部7から引き出された第一ガラスフィルムG1を横方向に搬送する第二搬送部8と、第一ガラスフィルムG1の一部を切断する第二切断部9と、第二切断部9により切断されてなるガラスフィルム(以下、第二ガラスフィルムと称する。)G2をロール状に巻き取って第二ガラスロールGRL2a,GRL2bを得る第二巻取り部10とをさらに備える。
【0037】
なお、本実施形態における第一ガラスフィルムG1が、本発明に係る一次ガラスフィルムに相当し、第二ガラスフィルムが、本発明に係る二次ガラスフィルムに相当する。よって、第一ガラスロールGRL1が、本発明に係る一次ガラスフィルムをロール状に巻き取ってなるガラスロールに相当し、第二ガラスロールGRL2が、本発明に係る二次ガラスフィルムをロール状に巻き取ってなるガラスロールに相当する。
【0038】
また、本実施形態における第二巻取り部10が、本発明に係る巻取り装置に相当し、第二切断部9が本発明に係るレーザー切断装置、第二搬送部8が本発明に係る搬送装置にそれぞれ相当する。
【0039】
成形部2は、上端部にオーバーフロー溝11aが形成された断面視略楔形の成形体11と、成形体11の直下に配置され、成形体11から溢れ出した溶融ガラスGMを表裏両側から挟むエッジローラ12と、エッジローラ12の直下に配備されるアニーラ13とを有する。
【0040】
成形部2は、成形体11のオーバーフロー溝11aから溢れ出した溶融ガラスGMを、両側面に沿ってそれぞれ流下させ、その下端部で合流させてフィルム状に成形する。エッジローラ12は、この溶融ガラスGMの幅方向収縮を規制して母材ガラスフィルムGの幅方向寸法を調整する。アニーラ13は、母材ガラスフィルムGに対して除歪処理を施すためのものである。アニーラ13は、上下方向複数段に配設されたアニーラローラ14を有する。
【0041】
アニーラ13の下方には、母材ガラスフィルムGを表裏両側から挟持する支持ローラ15が配設されている。支持ローラ15とエッジローラ12との間、又は支持ローラ15と何れか一箇所のアニーラローラ14との間には、母材ガラスフィルムGを薄肉にすることを助長するための張力が付与されている。
【0042】
方向変換部3は、支持ローラ15の下方位置に設けられている。方向変換部3には、母材ガラスフィルムGを案内する複数のガイドローラ16が湾曲状に配列されている。これらのガイドローラ16は、鉛直方向に搬送される母材ガラスフィルムGを横方向へと案内する。
【0043】
第一搬送部4は、方向変換部3の進行方向前方(下流側)に配置される。第一搬送部4は、支持搬送面を有する駆動部を駆動することにより、方向変換部3を通過した母材ガラスフィルムGをその長手方向に沿って下流側に搬送する。なお、第一搬送部4は任意の構成をとることが可能であり、例えば一又は複数のベルトコンベアで構成することが可能である。この場合、支持搬送面を有する駆動部はベルトであり、このベルトを駆動することにより、母材ガラスフィルムGを上述の態様で搬送し得る。もちろん、第一搬送部4は、上記例示の構成に限らず、ローラコンベアその他の各種搬送装置を使用することも可能である。
【0044】
第一切断部5は、第一搬送部4の上方に配置される。本実施形態では、第一切断部5は、レーザー割断により母材ガラスフィルムGを切断可能に構成される。具体的には、第一切断部5は、一対のレーザー照射装置17aと、当該レーザー照射装置17aの下流側に配置される一対の冷却装置17bとを有する。第一切断部5は、搬送される母材ガラスフィルムGの所定部位に各レーザー照射装置17aからレーザー光Lを照射して加熱した後、冷却装置17bから冷媒Rを放出して当該加熱部位を冷却する。
【0045】
第一巻取り部6は、第一搬送部4及び第一切断部5の下流側に設置されている。第一巻取り部6は、巻芯18を回転させることで、第一ガラスフィルムG1をロール状に巻き取る。このようにして得られる第一ガラスロールGRL1は、引出し部7の位置まで搬送される。引出し部7は、第一巻取り部6によって得られた第一ガラスロールGRL1から第一ガラスフィルムG1を引き出して、第二搬送部8上に供給する。
【0046】
第二搬送部8は、引出し部7において第一ガラスロールGRL1から引き出された第一ガラスフィルムG1を横方向(以下、搬送方向Xと称する。)に沿って搬送する。ここで、第二搬送部8は、
図2及び
図3に示すように、二つのコンベア19,20で構成される。この場合、第二搬送部8の支持搬送面は、第二切断部9による第一ガラスフィルムG1の切断ゾーン21(
図2中の一点鎖線で囲まれた領域)で分断される。これにより、第二搬送部8は、切断ゾーン21よりも第一ガラスフィルムG1の搬送方向上流側に位置する上流側コンベア19と、切断ゾーン21よりも搬送方向下流側に位置する下流側コンベア20とに分割された構成をなす。
【0047】
このうち上流側コンベア19は、複数の上流側ベルトコンベア22を有する。これら複数の上流側ベルトコンベア22は何れも、ベルト(以下、第一ベルト23と称する。)で同じ方向に第一ガラスフィルムG1を接触支持して下流側に搬送可能に構成される。ここで、各第一ベルト23は例えば無端帯状のベルトであり、第一ガラスフィルムG1をその長手方向で接触する全域にわたって略水平姿勢に保持するように、各第一ベルト23が同じ高さ方向位置に設定される。これにより、第一ガラスフィルムG1の支持搬送面となる各第一ベルト23の表面23aで、水平方向に沿った第一ガラスフィルムG1のパスラインPL(後述する
図5等を参照)が構成される。
【0048】
ここで、各上流側ベルトコンベア22は、
図3に示すように、上述した無端帯状の第一ベルト23と、第一ベルト23に張力を付与しつつ第一ベルト23を所定の位置に配設するための複数のプーリ24と、これら複数のプーリ24を支持する支持体25とを有する。支持体25は床面に固定されている。また、複数のプーリ24のうち所定のプーリ24(ドライブプーリ24a)には、モータなどの駆動源26が連結されており(
図2を参照)、この駆動源26によりドライブプーリ24aに駆動力を付与することで、各上流側ベルトコンベア22の第一ベルト23が所定の向きに駆動可能とされている。
【0049】
また、上記構成の複数の上流側ベルトコンベア22は、それぞれ所定の幅方向位置に設置されている。ここでは、幅方向寸法が互いに異なる複数種類の第一ガラスフィルムG1が上流側コンベア19上を搬送されることを想定して、想定される各第一ガラスフィルムG1の幅方向両端側で接触支持するように、各第一ベルト23の幅方向位置が設定される。また、本実施形態では、幅方向寸法の大きさの如何によらず、全ての第一ガラスフィルムG1がその幅方向中央位置で接触支持可能なように上流側ベルトコンベア22が配設されると共に(
図2を参照)、この上流側ベルトコンベア22が、その支持搬送面となる第一ベルト23の表面23aに第一ガラスフィルムG1を吸着可能なように構成されている。本実施形態では、第一ベルト23の表面23aに複数の穴23bが形成されており、この穴23bを通じて吸気を行うことで、第一ガラスフィルムG1が表面23aに吸着され得る。
【0050】
下流側コンベア20は、複数の下流側ベルトコンベア27を有する。これら複数の下流側ベルトコンベア27は何れも、ベルト(以下、第二ベルト28と称する。)で同じ方向に切断後の第一ガラスフィルムG1、すなわち第二ガラスフィルムG2a,G2bを接触支持して下流側に搬送可能に構成される。ここで、各第二ベルト28は例えば無端帯状のベルトであり、第二ガラスフィルムG2a,G2bをその長手方向で接触する全域にわたって略水平姿勢に保持するように、各第二ベルト28が同じ高さ方向位置に設定される。これにより、第一ガラスフィルムG1の支持搬送面となる各第一ベルト23の表面23aと、第二ガラスフィルムG2a,G2bの支持搬送面となる各第二ベルト28の表面28aとで、水平方向に沿った第一ガラスフィルムG1の切断前後におけるパスラインPL、すなわち第二搬送部8によるパスラインPLが構成される。
【0051】
ここで、各下流側ベルトコンベア27は、
図3に示すように、上述した無端帯状の第二ベルト28と、第二ベルト28に張力を付与しつつ第二ベルト28を所定の位置に配設するための複数のプーリ29と、これら複数のプーリ29を支持する支持体30とを有する。また、複数のプーリ29のうち所定のプーリ29(ドライブプーリ29a)には、モータなどの駆動源31が連結されており(
図2を参照)、駆動源31によりドライブプーリ29aに駆動力を付与することで、各下流側ベルトコンベア27の第二ベルト28が所定の向きに駆動可能とされている。この駆動源31は、上流側ベルトコンベア22の駆動源26と別個独立して設けられている。そのため、連動することなく個別に各駆動源26,31、ひいては上流側ベルトコンベア22と下流側ベルトコンベア27の駆動を制御可能とされる。
【0052】
また、複数の下流側ベルトコンベア27は、それぞれ所定の幅方向位置に設置可能であると共に、各第二ベルト28の位置が、第一ガラスフィルムG1の幅方向に調整可能に構成されている。具体的には、各下流側ベルトコンベア27の下方には、第一ガラスフィルムG1の幅方向に延びるレール部32が配設されている。そして、各下流側ベルトコンベア27を構成する支持体30の下部には、レール部32との間で相対移動可能なスライド部33が取付けられている。これにより、レール部32に対して各支持体30のスライド部33が幅方向にスライドすることで、各支持体30に支持された複数のプーリ29及びこれらプーリ29に支持された第二ベルト28が一体的に幅方向にスライド可能とされている。なお、各下流側ベルトコンベア27のドライブプーリ29aは、共通のシャフト34に対して幅方向にスライド可能に支持されている。そのため、シャフト34に対する幅方向の位置を自由に変更しつつも、任意の幅方向位置で駆動源31からの駆動力を受けて駆動することが可能とされている。
【0053】
本実施形態では、
図2に示すように、切断後の第一ガラスフィルムG1である各第二ガラスフィルムG2a,G2bの幅方向両端近傍に一対の第二ベルト28が位置するように、各第二ベルト28(各下流側ベルトコンベア27)の幅方向位置が調整される。なお、本実施形態のように、第一ガラスフィルムG1の幅方向両端部を切り捨てつつ、この一枚の第一ガラスフィルムG1一枚から二枚の第二ガラスフィルムG2a,G2bを切り出す場合、下流側ベルトコンベア27が一個不要となるため、例えば最も幅方向外側に位置する下流側ベルトコンベア27を退避スペース35にまで移動させておくのがよい。これにより、不要な下流側ベルトコンベア27が第二ガラスフィルムG2a,G2bに干渉する事態を確実に回避しつつ、各二個の下流側ベルトコンベア27で二枚の第二ガラスフィルムG2a,G2bが支持搬送されると共に、各一個の下流側ベルトコンベア27で、切り捨てた第一ガラスフィルムG1の幅方向端部がそれぞれ支持搬送される。なお、本実施形態では、全ての下流側ベルトコンベア27の第二ベルト28が、
図2に示すように、その支持搬送面となる表面28aに第二ガラスフィルムG2a,G2bを吸着可能に構成されている。本実施形態では、第二ベルト28の表面28aに複数の穴28bが形成されており、この穴28bを通じて吸気を行うことで、第二ガラスフィルムG2a,G2bが表面28aに吸着され得る。
【0054】
第二切断部9は、第二搬送部8のうち上流側コンベア19と下流側コンベア20との間に位置する領域の上方に配置される(
図1及び
図3を参照)。本実施形態では、第二切断部9は、レーザー割断により第一ガラスフィルムG1を切断可能に構成され、複数のレーザー照射装置36と、各レーザー照射装置36の下流側に配置される冷却装置37とを有する。この場合、冷却装置37はレーザー照射装置36と同数だけ配置される。本実施形態では、第二切断部9による第一ガラスフィルムG1の切断ゾーン21が幅方向の三箇所に設けられるため(
図2を参照)、レーザー照射装置36と冷却装置37とが三個ずつ配設される。上記構成の第二切断部9は、搬送される第一ガラスフィルムG1の所定部位に各レーザー照射装置36からレーザー光Lを照射して加熱した後、冷却装置37から冷媒Rを放出して当該加熱部位を冷却可能に構成される。詳細は後述する。
【0055】
また、本実施形態では、上述した第一ガラスフィルムG1の切断ゾーン21から幅方向に離れた位置には、
図2に示すように、第二搬送部8により搬送されている第一ガラスフィルムG1を接触支持可能な第一定盤38が配設されている。正確には、切断後の第一ガラスフィルムG1(第二ガラスフィルムG2a,G2b)の幅方向中央側に対応する位置に、第一定盤38が配設されている。本実施形態では、二枚の第二ガラスフィルムG2a,G2bが一枚の第一ガラスフィルムG1から切り出されるので、切断ゾーン21に対して幅方向に位置し、かつ各第二ガラスフィルムG2a,G2bの幅方向中央に対応する位置に、第一定盤38がそれぞれ配設されている。これら第一定盤38は、図示は省略するが、床面に設置固定されており、常に静止した状態にある。
【0056】
ここで、第一定盤38は、
図4に示すように、第一ガラスフィルムG1を接触支持可能な第一支持面39と、第一ガラスフィルムG1を第一支持面39に向けて吸引可能な第一吸引部40とを有する。
【0057】
第一定盤38は、例えば金属で略直方体状に形成される。第一支持面39は、本実施形態では、
図5に示すように、第一定盤38の上側に設けられたシート部材41の表面で構成されている。このシート部材41は、例えば樹脂など第一ガラスフィルムG1に対する接触時の抵抗が小さい材料で、あるいは第一ガラスフィルムG1に対する滑り性の良好な材料で形成される。なお、本実施形態では、シート部材41の表面で第一支持面39を構成したが、もちろん、第一定盤38の上面で第一支持面39を構成してもかまわない。
【0058】
また、第一支持面39の高さ方向位置は、第一ガラスフィルムG1のパスラインPLと同じ位置であってもよいが、例えば
図5及び
図6に示すように、パスラインPLよりも少し(例えば3mm以内の範囲で)高く設定してもよい。これにより、第一ガラスフィルムG1と第一支持面39とをより確実に密着させ得る。
【0059】
第一吸引部40は、本実施形態では、第一支持面39に開口する第一吸気口42と、第一吸気口42と連通する連通空間43と、連通空間43内部の排気を行うポンプなどの排気部44、及び連通空間43と排気部44とを接続する接続管45(何れも
図3を参照)とを有する。本実施形態では、第一吸気口42は溝状をなす。また、この溝状をなす第一吸気口42は、第一ガラスフィルムG1の長手方向、すなわち搬送方向に沿って延びるように第一支持面39に形成されている(
図4を参照)。第一吸気口42はシート部材41を貫通しかつ第一定盤38の上面に開口するように形成されている。また、本実施形態では、第一吸気口42の長手方向両端は第一定盤38の側面に対して開口している。よって、第一吸気口42の両端開口部42a,42aは、外部空間(外気)に対して常に開放された状態にある。
【0060】
第一吸気口42の底面には複数の貫通穴42bが形成されており、第一定盤38を支持する支持部材46に形成された連通空間43とつながっている。この場合、貫通穴42bが第一定盤38に形成され、連通空間43が支持部材46に形成される。接続管45は支持部材46に取り付けられる。排気部44は例えば共通であり、一個の排気部44に対して第一定盤38と同数の接続管45で接続されてもよい。あるいは、連通空間43が共通で一個の支持部材46に複数の第一定盤38が支持されていてもよい。この場合、一本の接続管45が一個の支持部材46に取り付けられる。以上の構成をなす第一吸引部40によれば、排気部44の駆動により、第一支持面39に開口する第一吸気口42及びその長手方向両端に位置する両端開口部42a,42aからの吸気を行う。そのため、第一定盤38の第一支持面39上に第一ガラスフィルムG1が搬送される場合、上記吸気動作により、第一ガラスフィルムG1の下面が第一支持面39に対して吸引される。
【0061】
また、本実施形態では、上述した第一ガラスフィルムG1の切断ゾーン21に、
図2に示すように、第一ガラスフィルムG1を接触支持可能な第二定盤47が配設されている。本実施形態では、第一ガラスフィルムG1を幅方向の三箇所で切断する形態を採っていることから、三箇所の切断ゾーン21それぞれに対して三個の第二定盤47が配設されている。これら第二定盤47は、図示は省略するが、床面に設置固定されており、常に静止した状態にある。
【0062】
ここで、第二定盤47は、
図7に示すように、第一ガラスフィルムG1を接触支持可能な第二支持面48と、第一ガラスフィルムG1を第二支持面48に向けて吸引可能な第二吸引部49とを有する。
【0063】
第二定盤47は、例えば金属で略直方体状に形成される。第二支持面48は、本実施形態では、
図8に示すように、第二定盤47の上側に設けられたシート部材50の表面で構成されている。このシート部材50は、例えば樹脂など第一ガラスフィルムG1に対する接触時の抵抗が小さい材料で、あるいは第一ガラスフィルムG1に対する滑り性の良好な材料で形成される。なお、本実施形態では、シート部材50の表面で第二支持面48を構成したが、もちろん、第二定盤47の上面で第二支持面48を構成してもかまわない。
【0064】
また、第二支持面48の高さ方向位置は、第一ガラスフィルムG1のパスラインPLと同じ位置であってもよいが、例えば
図8及び
図9に示すように、パスラインPLよりもわずかに(例えば3mm以内の範囲で)高く設定してもよい。これにより、第一ガラスフィルムG1と第二支持面48とをより確実に密着させ得る。
【0065】
第二吸引部49は、本実施形態では、
図8及び
図9に示すように、第二支持面48に開口する第二吸気口51と、第二吸気口51の幅方向両側に位置する一対の第三吸気口52,52と、第二吸気口51及び第三吸気口52,52と連通する連通空間53と、連通空間53内部の排気を行うポンプなどの排気部54、及び連通空間53と排気部54とを接続する接続管55とを有する。
【0066】
第二吸気口51及び第三吸気口52は、本実施形態では、何れも第一ガラスフィルムG1の搬送方向Xに沿って伸びる長穴形状をなすように、第二支持面48に形成されている。ここで、第二吸気口51の幅方向寸法や長手方向寸法は、第三吸気口52の幅方向寸法や長手方向寸法との兼ね合いで適宜の大きさに設定される。言い換えると、必要とされる第一ガラスフィルムG1に対する吸引力(変形力)に応じて、上述した寸法、特に第二吸気口51の各種寸法と、第三吸気口52の各種寸法との大小関係を適宜に設定するのがよい。
【0067】
上記構成の第二吸気口51及び一対の第三吸気口52,52は、シート部材50と第二定盤47に形成されている。これら第二吸気口51及び第三吸気口52,52はシート部材50と第二定盤47をそれぞれ上下方向に貫通するように形成されており、第二定盤47を下方から支持する支持部材56に形成された連通空間53とつながっている。この場合、連通空間53が支持部材56に形成され、接続管55は支持部材56の下側に取り付けられる。排気部54は例えば共通であり、一個の排気部54に対して第二定盤47と同数の接続管55で接続されてもよい。あるいは、連通空間53が共通で一個の支持部材56に複数の第二定盤47が支持されていてもよい。この場合、一本の接続管55が一個の支持部材56に取り付けられる。また、本実施形態では、支持部材56と第二定盤47との間に、支持部材56の幅方向に開口し、外部の空気を吸引可能とするスリット部57が形成されている。
【0068】
以上の構成をなす第二吸引部49によれば、排気部54の駆動により、第二支持面48に開口する第二吸気口51と第三吸気口52,52及びスリット部57からの吸気を行う。そのため、第二定盤47の第二支持面48上に第一ガラスフィルムG1が搬送される場合、上記吸気動作により、第一ガラスフィルムG1の下面が第二支持面48に対して吸引される。
【0069】
また、本実施形態のように、第一吸引部40と第二吸引部49とで別個独立した排気部44,54を設ける場合には、個別に吸引力を制御することが可能となる。例えば、第一吸引部40による第一ガラスフィルムG1の吸引力が、第二吸引部49による第一ガラスフィルムG1の吸引力よりも小さくなるように、各吸引部40,49による吸引力、言い換えると各排気部44,54による排気量を個別に調整することも可能である。もちろん、第一吸引部40と第二吸引部49とで排気部を共通にして(図示は省略)、構造を簡素化することも可能である。
【0070】
レーザー照射装置36は、搬送方向Xに沿って移動する第一ガラスフィルムG1の所定部位にレーザー光Lを照射することにより、当該部位を局部加熱する。レーザー照射装置36は、
図9に示すように、複数のレーザー照射部36aを有する。各レーザー照射部36aは、第二定盤47の第二吸気口51の上方に配置される。これによりレーザー照射部36aは、第二支持面48に開口した第二吸気口51を通過する第一ガラスフィルムG1の複数箇所にレーザー光Lを照射する。各レーザー照射部36aからのレーザー光Lの照射位置Oは、第一ガラスフィルムG1の搬送方向Xにほぼ平行な直線上に位置するように設定される。
【0071】
冷却装置37は、第一ガラスフィルムG1の搬送方向Xにおいて、レーザー照射装置36の下流側に配置される。冷却装置37は、第一ガラスフィルムG1のうち上述したレーザー光Lの照射により局部加熱された部位に冷媒Rを供給して当該部位を冷却する。
【0072】
第二搬送部8よりも下流側には、幅方向で隣り合う一組の第二ガラスフィルムG2a,G2bの間に幅方向隙間を形成するための隙間形成部58が設けられている。この隙間形成部58は、本実施形態では、各第二ガラスフィルムG2a,G2bが上方に凸となる向きに湾曲変形するように、幅方向中央が最も大径となる樽状の支持ローラ59a,59bを有する。本実施形態では二枚の第二ガラスフィルムG2a,G2bが切り出されるので、二個の支持ローラ59a,59bが配設される。また、本実施形態では、
図10に示すように、支持ローラ59a,59bによって支持された各第二ガラスフィルムG2a,G2bの幅方向両端部に向けて上方からエアなどの気体を吹き付けるためのノズル60a,60bが配設されている。
【0073】
第二巻取り部10は、第二搬送部8よりも下流側に配設される。具体的に、第二巻取り部10は、第二搬送部8で搬送される第二ガラスフィルムG2a,G2bを巻芯61a,61bによって巻き取ることで第二ガラスロールGRL2a,GRL2bを得る。本実施形態では、二枚の第二ガラスフィルムG2a,G2bが切り出されるので、これら二枚の第二ガラスフィルムG2a,G2bをそれぞれ巻き取ることで、二個の第二ガラスロールGRL2a,GRL2bが得られる。
【0074】
上記構成の製造装置1により製造される第二ガラスフィルムG2a,G2b(第一ガラスフィルムG1)の材質としては、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。本発明におけるアルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
【0075】
また、第二ガラスフィルムG2a,G2b(第一ガラスフィルムG1)の厚み寸法は、10μm以上300μm以下とされ、好ましくは30μm以上200μm以下であり、最も好ましくは30μm以上100μm以下である。
【0076】
以下、上記構成の製造装置1を使用して第二ガラスフィルムG2a,G2b(本実施形態では第二ガラスロールGRL2a,GRL2b)を製造する方法について説明する。本方法は、成形工程S1と、両端部除去工程S2と、第一巻取り工程S3と、引出し工程S4と、切断工程S5と、第二巻取り工程S6とを備える。
【0077】
成形工程S1では、
図1に示すように、成形部2における成形体11のオーバーフロー溝11aから溢れ出した溶融ガラスGMを成形体11の両側面に沿ってそれぞれ流下させ、その下端で合流させてフィルム状に成形する。この際、溶融ガラスGMの幅方向収縮をエッジローラ12により規制して所定幅の母材ガラスフィルムGとする。その後、母材ガラスフィルムGに対してアニーラ13により除歪処理を施す(徐冷工程)。支持ローラ15の張力により、母材ガラスフィルムGは所定の厚みに形成される。
【0078】
両端部除去工程S2では、同じく
図1に示すように、方向変換部3及び第一搬送部4によって母材ガラスフィルムGを下流側に送りつつ、第一切断部5において、レーザー照射装置17aからレーザー光Lを母材ガラスフィルムGの一部に照射して加熱する。その後、加熱した部位に冷却装置17bで冷媒Rを吹き付ける。これにより、母材ガラスフィルムGに熱応力が生じる。母材ガラスフィルムGには、予め初期クラックが形成されており、このクラックを熱応力によって進展させる。これにより、母材ガラスフィルムGの幅方向両端部が除去され、第一ガラスフィルムG1が形成される。
【0079】
続く第一巻取工程S3では、同じく
図1に示すように、第一ガラスフィルムG1を巻芯18に巻き取ることにより、第一ガラスロールGRL1を得る。その後、第一ガラスロールGRL1は、引出し部7に移送される。引出し工程S4では、引出し部7に移送された第一ガラスロールGRL1から第一ガラスフィルムG1を引き出し、第二搬送部8によって第二搬送部8上の切断ゾーン21へと搬送する(
図2及び
図3を参照)。
【0080】
切断工程S5では、第一ガラスフィルムG1のうち第二搬送部8上の切断ゾーン21を通過する部分に、レーザー照射装置36によりレーザー光Lを照射し、かつ照射した領域に冷媒Rを吹き付けることにより、第一ガラスフィルムG1の搬送方向Xに沿った向きの切断を行う。また、この際、第一ガラスフィルムG1は、上流側コンベア19により搬送方向Xに沿った向きに搬送され、切断ゾーン21に対して幅方向に離れた位置に配設される第一定盤38の第一支持面39上を通過する(
図2を参照)。ここで第一吸引部40の排気部44を作動させることで(常時作動させておくことで)、第一支持面39に開口した第一吸気口42を通じて第一支持面39上の第一ガラスフィルムG1に下向きの吸引力が作用し、第一ガラスフィルムG1が第一支持面39に向けて吸引される。これにより、第一ガラスフィルムG1が第一支持面39に向けた力(拘束力)を受けた状態で接触支持されながら搬送方向Xに沿って搬送される。また、第一吸引部40による吸引力の程度によっては、第一ガラスフィルムG1の被吸引部分が変形(例えば
図5に示すように、下方に凸となる向きに湾曲変形)する。
【0081】
また、本実施形態では、切断ゾーン21に第二定盤47を配設しているので、上述のように第一ガラスフィルムG1が切断ゾーン21上を通過するのと同時に、第二定盤47の第二支持面48上を通過する(
図2を参照)。ここで第二吸引部49の排気部54を作動させることで、第二支持面48に開口した第二吸気口51及び一対の第三吸気口52,52を通じて第二支持面48上の第一ガラスフィルムG1に下向きの吸引力が作用し、第一ガラスフィルムG1が第二支持面48に向けて吸引される。これにより、第一ガラスフィルムG1が第二支持面48に接触支持されながら搬送方向Xに沿って搬送される。また、第二吸引部49による吸引力の程度によっては、第一ガラスフィルムG1の被吸引部分が変形(例えば
図8に示すように、各吸気口51,52直上の部分がそれぞれ下方に凸となる向きに湾曲変形)する。
【0082】
なお、この際、第一吸引部40による吸引力は、例えば排気部44の出力や各開口部(第一吸気口42、両端開口部42a,42a)の形状、サイズを調整することによって適宜の大きさに制御される。同様に、第二吸引部49による吸引力は、例えば排気部54の出力や各開口部(第二吸気口51、第三吸気口52、及びスリット部57)の形状、サイズを調整することによって適宜の大きさに制御される。
【0083】
上述した吸引力の調整において、吸引力を大きくすると、上述した第一ガラスフィルムG1の変形量が大きくなる一方で、第一ガラスフィルムG1の上下動の幅は小さくなる傾向にある。逆に、吸引力を小さくすると、上述した変形量は小さくなる一方で、上下動の幅は大きくなる傾向にある。従って、許容可能な上下動の幅の範囲内で変形量を可及的に小さくすることが好ましい。
【0084】
切断工程S5では、上記のように第一定盤38の第一支持面39、及び第二定盤47の第二支持面48に第一ガラスフィルムG1を吸引しながら第二搬送部8(上流側コンベア19)によって第一ガラスフィルムG1を所定の搬送方向Xに搬送するとともに、レーザー照射装置36のレーザー照射部36aから複数のレーザー光Lを第一ガラスフィルムG1に照射する(レーザー照射工程)。レーザー光Lは、第一ガラスフィルムG1のうち第二定盤47の第二吸気口51上を通過する部分に照射される。
【0085】
上記のようなレーザー光Lの照射により、その照射位置O(
図7を参照)において第一ガラスフィルムG1が加熱される。その後、第一ガラスフィルムG1のうち加熱された部分は、第二吸気口51の下流側に位置する冷却装置37の直下に到達すると、冷却装置37から下方に向けて噴射された冷媒Rを浴びて冷却される。レーザー照射装置36の局部加熱による膨張と冷却装置37の冷却による収縮とにより第一ガラスフィルムG1に熱応力が生じる。第一ガラスフィルムG1には、図示しない手段により予め初期クラックが形成されており、上述した熱応力を利用して初期クラックを進展させることで、第一ガラスフィルムG1がその幅方向所定位置において連続的に切断(割断)される。本実施形態では、幅方向の三箇所で上述したレーザー切断を行うことにより、第一ガラスフィルムG1の幅方向両端部が切り捨てられると共に、それぞれ所定の幅方向寸法を有する二枚の第二ガラスフィルムG2a,G2bが切り出される(
図2を参照)。これら第二ガラスフィルムG2a,G2bは切断ゾーン21よりも搬送方向Xの下流側に位置する下流側コンベア20により、下流側コンベア20よりも搬送方向Xの下流側に位置する第二巻取り部10に向けて搬送される。
【0086】
第二巻取り工程S6では、それぞれ所定の位置に配設された巻芯61a,61bによって第二ガラスフィルムG2a,G2bが巻き取られる。所定長さの第二ガラスフィルムG2a,G2bが巻き取られることで、第二ガラスロールGRL2a,GRL2bが得られる。
【0087】
また、本実施形態では、下流側コンベア20と、第二巻取り部10との間に、隙間形成部58としての支持ローラ59a,59bを配設したので、各支持ローラ59a,59b上を通過する第二ガラスフィルムG2が支持ローラ59a,59bの外周面形状に倣って変形(ここでは上方に凸となる向きに湾曲変形)しながら下流側に搬送される。これにより、切断直後の第二ガラスフィルムG2a,G2bの間に所定の幅方向隙間が形成されるので(
図10を参照)、切断面同士の干渉を回避してそれぞれ第二巻取り部10に搬送することができる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態に係るガラスフィルム(第二ガラスフィルムG2a,G2b)の製造方法では、搬送装置としての第二搬送部8を、相対的に第一ガラスフィルムG1の搬送方向Xの上流側に位置する上流側コンベア19と、搬送方向Xの下流側に位置して第二ガラスフィルムG2a,G2bを搬送可能な下流側コンベア20とで構成すると共に、下流側コンベア20を、第二ベルト28で第二ガラスフィルムG2a,G2bを接触支持可能な複数の下流側ベルトコンベア27で構成し、各下流側ベルトコンベア27の第二ベルト28の位置を、第一ガラスフィルムG1の幅方向に調整可能とした。これにより、第一ガラスフィルムG1を搬送するための上流側コンベア19の構成を変えることなく、第二ガラスフィルムG2a,G2bの幅方向における第二ベルト28との接触支持位置を自由に設定できるので、レーザー切断により取得すべき第二ガラスフィルムG2a,G2bの幅方向位置又は幅方向寸法に応じて、各下流側ベルトコンベア27を適切な幅方向位置に配設することができる。従って、必要最小限の設備変更で、第二ガラスフィルムG2a,G2bの幅方向一方側に偏った位置に第二ベルト28が接触する事態を回避して、当該接触位置の偏りに起因した第二ガラスフィルムG2a,G2bの斜行など第二ガラスフィルムG2a,G2bの搬送不良を防止することが可能となる。また、斜行させずに第二ガラスフィルムG2a,G2bを搬送できれば、幅方向で隣り合う一方の第二ガラスフィルムG2aの切断面(側端面)が他方の第二ガラスフィルムG2bの切断面(側端面)に干渉する事態を可及的に回避することができるので、良好な切断品質の第二ガラスフィルムG2a,G2bを得ることが可能となる。
【0089】
また、本実施形態では、第一ガラスフィルムG1の切断により、それぞれ所定の幅方向寸法を有する複数の第二ガラスフィルムG2a,G2bを取得する場合に、各第二ガラスフィルムG2a,G2bの幅方向位置及び幅方向寸法に応じて、第二ベルト28の位置を調整するようにした。これにより、切り出される第二ガラスフィルムG2a,G2bそれぞれの位置、大きさに適した位置に第二ベルト28を配置することができるので、切り出される全ての第二ガラスフィルムG2a,G2bの斜行を避けて正確な向きに安定的に搬送することが可能となる。特に、本実施形態では、各第二ガラスフィルムG2a,G2bの幅方向両端位置に応じて、第二ベルト28の位置を調整可能に構成したので、第二ガラスフィルムG2a,G2bをその幅方向両側で安定的に接触支持することができる。よって、第二ガラスフィルムG2a,G2bの搬送時のばたつき等の変動を抑えて安定的に第二ガラスフィルムG2a,G2bを搬送することが可能となる。
【0090】
また、本実施形態では、幅方向で隣り合う任意の一組の第二ガラスフィルムG2a,G2bの間に幅方向隙間を形成するための隙間形成部58(ここでは支持ローラ59a,59b)を、下流側コンベア20よりも第一ガラスフィルムG1の搬送方向下流側に設けるようにした。これにより、第二ガラスフィルムG2a,G2bのうち隙間形成部58の支持ローラ59a,59b上を通過する部分が上方に凸となる向きに湾曲変形する。よって、上述のように第二ガラスフィルムG2a,G2bの幅方向両端を下流側ベルトコンベア27で接触支持する場合であっても、切断直後の第二ガラスフィルムG2a,G2b同士の接触を回避して各第二ガラスフィルムG2a,G2bを安全に搬送することが可能となる。
【0091】
以上、本発明に係るガラスフィルムの製造方法及び製造装置の第一実施形態を説明したが、この製造方法及び製造装置は、当然に本発明の範囲内において任意の形態を採ることができる。
【0092】
図11は、本発明に係るガラスフィルムの製造方法の第二実施形態を示している。すなわち、上述した第一実施形態では、一枚の第一ガラスフィルムG1から二枚の第二ガラスフィルムG2a,G2bを切り出す際に本発明を適用した場合の構成を例示したが、本実施形態では、一枚の第一ガラスフィルムG1から三枚の第二ガラスフィルムG2a,G2b,G2cを切り出す際に本発明を適用した場合の構成を例示している。すなわち、本実施形態では、
図11に示す製造装置1において、切り出される第二ガラスフィルムG2a~G2cの幅方向位置及び幅方向寸法に応じて、下流側ベルトコンベア27の幅方向位置を調整している。すなわち、
図11に示すように、複数の下流側ベルトコンベア27が、レール部32に沿って幅方向にスライド可能に構成されており、例えば第二ガラスフィルムG2a~G2cの幅方向両端位置に応じて、これら複数の下流側ベルトコンベア27の第二ベルト28の位置を幅方向に調整している。
【0093】
また、本実施形態では、第二ガラスフィルムG2a~G2cの幅方向位置及び幅方向寸法に応じて、第一定盤38及び第二定盤47の数及び幅方向位置を調整している。また、第二ガラスフィルムG2a~G2cの幅方向位置及び幅方向寸法に応じて、レーザー照射装置36及び冷却装置37の数及び幅方向位置を調整している。すなわち、図示は省略するが、位置調整後の各第二定盤47上にレーザー照射装置36及び冷却装置37が配置される。
【0094】
なお、下流側コンベア20と第二巻取り部10との間に隙間形成部58を設ける場合には、
図11に示すように、第二ガラスフィルムG2a~G2cの幅方向位置及び幅方向寸法に応じて、適切な幅方向寸法の支持ローラ59a~59cをそれぞれ適切な幅方向位置に配置している。
【0095】
このように、第二ガラスフィルムG2a~G2cの幅方向位置及び幅方向寸法に応じて、下流側ベルトコンベア27の位置を幅方向に調整することによって、第二ガラスフィルムG2aを幅方向に均等な位置で支持搬送することができる。よって、切り出される第二ガラスフィルムG2a~G2cの枚数や幅方向寸法が変更される場合にあっても、幅方向一方側に偏った位置に第二ベルト28が接触する事態を回避して、当該接触位置の偏りに起因した第二ガラスフィルムG2a~G2cの斜行など第二ガラスフィルムG2a~G2cの搬送不良を防止することが可能となる。
【0096】
また、上記実施形態では、第一ガラスフィルムG1から切り出された各第二ガラスフィルムG2a,G2bをその幅方向両端近傍で接触支持できるように、複数の下流側ベルトコンベア27の位置を幅方向で調整した場合を例示したが(
図2及び
図11を参照)、もちろんこれ以外の配置態様をとることも可能である。
図12はその一例(本発明の第三実施形態)を示している。本実施形態では、
図12に示すように、複数の下流側ベルトコンベア27が、レール部32に沿って幅方向にスライド可能に構成されており、第二ガラスフィルムG2a~G2cのうち少なくとも一部の第二ガラスフィルムG2a,G2cの幅方向中央位置に応じて、対応する二対の下流側ベルトコンベア27の第二ベルト28の位置を幅方向に調整している。
【0097】
このように下流側ベルトコンベア27の位置を幅方向に調整することで、対応する第二ガラスフィルムG2a,G2cをその幅方向中央位置で接触支持することができる。この場合、第二ガラスフィルムG2a,G2cが幅方向中央に比べて幅方向両端側を垂下させた形状(上方に凸となる形状)に湾曲変形するので、切断直後の第二ガラスフィルムG2a(G2c),G2bの切断面同士の接触を回避しつつ下流側に各第二ガラスフィルムG2a~G2cを搬送することが可能となる。
【0098】
また、上記実施形態では、第一ガラスフィルムG1の切断ゾーン21に第二定盤47を配置すると共に、切断ゾーン21に対して幅方向に離れた位置に第一定盤38を配置した場合を例示したが、もちろんこれには限られない。レーザー切断に対してそれほど大きな影響を及ぼさないようであれば、切断ゾーン21を支持搬送面が通過するように第三のコンベア(図示は省略)を配設して、第一定盤38と第二定盤47の少なくとも一方を省略してもよい。
【0099】
また、搬送装置(第二搬送部8)の支持搬送面は、必ずしも搬送方向Xで切断ゾーン21に対応する位置において分断されている必要はない。例えば切断ゾーン21から搬送方向Xの下流側にずれた位置で、第二搬送部8の支持搬送面が分断されていてもよい。
【0100】
なお、以上の説明では、切断ゾーン21で搬送装置としての第二搬送部8が分割されてなる上流側コンベア19と下流側コンベア20をともにベルトコンベアで構成した場合を例示したが、もちろんこれ以外の形態をとることも可能である。例えば上流側コンベア19を、ローラコンベアその他の各種搬送装置で構成することも可能である。
【0101】
また、以上の説明では、一枚の第一ガラスフィルムG1から二枚(又は三枚)の第二ガラスフィルムG2a,G2b(G2a~G2c)を切り出す場合を例示したが、もちろん、幅方向寸法の異なる一枚の第二ガラスフィルムG2aを切り出す場合に本発明を適用することも可能であり、また四枚以上の第二ガラスフィルムG2a…を切り出す場合に本発明を適用することも可能である。
【0102】
また、以上の説明では、母材ガラスフィルムGの幅方向両端部を第一切断部5で切断して得た第一ガラスフィルムG1に対して本発明を適用した場合を説明したが、母材ガラスフィルムGの第一切断部5による切断に本発明を適用してもかまわない。この場合、第一搬送部4が、
図2等に示す第二搬送部8と同様の構成をとることで、本発明を実施可能となる。
【0103】
また、以上の説明では、帯状をなす第一ガラスフィルムG1に本発明を適用した場合を説明したが、もちろんこれ以外の形態をなす第一ガラスフィルムG1に本発明を適用することも可能である。すなわち、図示は省略するが、矩形状など枚葉状の板ガラス(ガラスフィルム)に本発明を適用することも可能である。また、切断して得た第二ガラスフィルムG2a…を必ずしもロール状に巻き取らずともよい。言い換えると、ロール状に巻き取ることのない第二ガラスフィルムG2a…の製造工程に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 製造装置
2 成形部
3 方向変換部
4 第一搬送部
5 第一切断部
6 第一巻取り部
7 引出し部
8 第二搬送部
9 第二切断部
10 第二巻取り部
11 成形体
17a レーザー照射装置
17b 冷却装置
19 上流側コンベア
20 下流側コンベア
21 切断ゾーン
22 上流側ベルトコンベア
23,28 ベルト
26,31 駆動源
27 下流側ベルトコンベア
32 レール部
33 スライド部
35 退避スペース
36 レーザー照射装置
37 冷却装置
38 第一定盤
39 第一支持面
40 第一吸引部
41,50 シート部材
42 第一吸気口
42a,42a 両端開口部
42b 貫通穴
43,53 連通空間
44,54 排気部
45,55 接続管
46,56 支持部材
47 第二定盤
48 第二支持面
49 第二吸引部
51 第二吸気口
52 第三吸気口
57 スリット部
58 隙間形成部
59a,59b,59c 支持ローラ
60a,60b ノズル
G 母材ガラスフィルム
G1 第一ガラスフィルム
G2a,G2b,G2c 第二ガラスフィルム
GM 溶融ガラス
GRL1 第一ガラスロール
GRL2a,GRL2b,GRL2c 第二ガラスロール
L レーザー光
PL パスライン
R 冷媒