(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】ウェブロール搬送用台車およびガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65H 19/12 20060101AFI20231012BHJP
B65H 19/30 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B65H19/12 A
B65H19/30
(21)【出願番号】P 2020559219
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2019047210
(87)【国際公開番号】W WO2020121892
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2018234082
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】北川 翔
(72)【発明者】
【氏名】天山 和幸
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 栄
(72)【発明者】
【氏名】吉良 厚則
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-251830(JP,A)
【文献】特開2000-168566(JP,A)
【文献】特開2000-264507(JP,A)
【文献】特開平08-174058(JP,A)
【文献】特開昭58-071203(JP,A)
【文献】実開平03-033844(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 19/12
B65H 19/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブロールの外周部を支持する支持面を有し、
前記ウェブロールを積載して搬送するためのウェブロール搬送用台車であって、
前記支持面が、湾曲した凹湾曲面でな
り、
使用済みウェブロールの芯体を載置するための載置部を有し、
前記載置部として、前記支持面と隣り合い且つ前記支持面と一緒に昇降する第一載置部と、当該ウェブロール搬送用台車上における固定箇所に設けられた第二載置部とを有することを特徴とするウェブロール搬送用台車。
【請求項2】
当該ウェブロール搬送用台車の車輪を包囲する包囲部材を備えることを特徴とする請求項
1に記載のウェブロール搬送用台車。
【請求項3】
前記包囲部材が、上下方向に延びる軸心周りを回転可能なローラーを備えることを特徴とする請求項
2に記載のウェブロール搬送用台車。
【請求項4】
ウェブロールの外周部を支持する支持面を有し、
前記ウェブロールを積載して搬送するためのウェブロール搬送用台車であって、
前記支持面が、湾曲した凹湾曲面でなり、
当該ウェブロール搬送用台車の車輪を包囲する包囲部材を備え、
前記包囲部材が、上下方向に延びる軸心周りを回転可能なローラーを備えることを特徴とするウェブロール搬送用台車。
【請求項5】
前記ウェブロールの積載時における前記ウェブロールの軸線方向の側面視で、前記支持面の両エッジに、高低差を設けたことを特徴とする請求項1
~4のいずれかに記載のウェブロール搬送用台車。
【請求項6】
前記支持面を昇降させるための昇降機構を備えることを特徴とする請求項1
~5のいずれかに記載のウェブロール搬送用台車。
【請求項7】
前記支持面に対して前記ウェブロールを拘束するための拘束部材を備えることを特徴とする請求項1~
6のいずれかに記載のウェブロール搬送用台車。
【請求項8】
前記ウェブロールの積載時における前記ウェブロールの軸線方向において、前記支持面が複数の分割面に分割され、
前記複数の分割面が、相互に間隔を空けて配置されていることを特徴とする請求項1~
7のいずれかに記載のウェブロール搬送用台車。
【請求項9】
前記支持面が、緩衝材の表面で構成されていることを特徴とする請求項1~
8のいずれかに記載のウェブロール搬送用台車。
【請求項10】
前記ウェブロールの積載時における前記ウェブロールの軸線方向に沿って、前記支持面を移動させる位置調節機構を備えることを特徴とする請求項1~
9のいずれかに記載のウェブロール搬送用台車。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載のウェブロール搬送用台車を用いて、前記ウェブロールを搬送する搬送工程を備えたガラス板の製造方法。
【請求項12】
前記ウェブロールは、帯状の発泡樹脂シートがロール状に巻き取られてなることを特徴とする請求項
11に記載のガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブロールを積載して搬送するためのウェブロール搬送用台車、及び、当該台車を用いてウェブロールを搬送する工程を備えたガラス板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラス板の輸送や保管を行うにあたっては、複数枚のガラス板を重ね合わせて積層体とした状態で梱包する場合が多い。隣り合うガラス板の相互間には、ガラス板を傷の発生や破損から保護するための保護シートを介在させることが通例である。保護シートは、例えば発泡樹脂(PFS)やガラス合紙等でなる。
【0003】
保護シートは、例えば、これの元となる長尺な帯状保護シートを所定の長さ毎に切断することで作製される。帯状保護シートは、これをロール状に巻き取ったウェブロールとして工場等に搬入されるため、保護シートの作製に際しては、ウェブロールから順次に巻き解いた帯状保護シートを切断していく。
【0004】
ここで、特許文献1には、工場内等でウェブロール(同文献ではロール体)を積載して搬送するためのウェブロール搬送用台車が開示されている。同台車は、ウェブロールの外周部を支持する支持面を有し、支持面は、台車で搬送中のウェブロールの転がりを防止するために、V字状をなす一対の平面で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の台車には下記のような解決すべき問題があった。
【0007】
すなわち、上記の台車では、支持面におけるウェブロールの外周部との当接箇所が平面でなる。そのため、ウェブロールを台車に積載した際に、ウェブロールの外周部が部分的に平坦化してしまう問題があった。このように外周部が変形すると、ウェブロールから帯状保護シートを巻き解く際に、一定の速度で巻き解くことが難しくなる。その結果、帯状保護シートから切り出される保護シートを、所望の長さに切り出すことが困難となる不具合が生じていた。
【0008】
上記の事情に鑑みなされた本発明は、ウェブロール搬送用台車に積載した際に、ウェブロールの外周部の平坦化を防止することを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明は、ウェブロールの外周部を支持する支持面を有し、ウェブロールを積載して搬送するためのウェブロール搬送用台車であって、支持面が、湾曲した凹湾曲面でなることを特徴とする。
【0010】
本台車では、支持面が、ウェブロールの外周部に倣って湾曲した凹湾曲面でなる。これにより、支持面におけるウェブロールの外周部との当接箇所は必然的に湾曲していることになる。その結果、本台車によれば、ウェブロールを積載した際に、その外周部の平坦化を好適に防止することが可能となる。
【0011】
上記の構成において、ウェブロールの積載時におけるウェブロールの軸線方向の側面視で、支持面の両エッジに、高低差を設けることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、支持面の両エッジのうち、相対的に低位に存するエッジの側からウェブロールの支持面への積み下ろしを行いやすくなる。
【0013】
上記の構成において、支持面を昇降させるための昇降機構を備えることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、昇降機構を備えることでウェブロールの積み下ろしが更に行いやすくなると共に、例えば、ウェブロールを構成する帯状保護シートを巻き解いて供給するための装置等にウェブロールを装着する際に、その実行が容易になる。
【0015】
上記の構成において、使用済みウェブロールの芯体を載置するための載置部を有することが好ましい。
【0016】
このようにすれば、台車上において、新品のウェブロールを載置できる場所(支持面)と、使用済みウェブロールの芯体を載置できる場所(載置部)との双方が存在することになる。そのため、ウェブの供給装置に対して、使用済みのウェブロールを新品のウェブロールに交換する交換作業を行うような場合に、これを効率よく行うことが可能となる。また、載置部を有することにより、使用済みウェブロールの芯体の搬送を容易に行うこともできる。
【0017】
上記の構成において、載置部として、支持面と隣り合い且つ支持面と一緒に昇降する第一載置部と、当該ウェブロール搬送用台車上における固定箇所に設けられた第二載置部とを有することが好ましい。
【0018】
このようにすれば、新品のウェブロールが載置される支持面と、使用済みウェブロールの芯体が載置される第一載置部とが、台車上で隣り合うと共に昇降機構により一緒に昇降することになる。これにより、上述のウェブロールの交換作業を行うような場合に、作業の効率性を更に高めることが可能となる。また、台車上の固定箇所に設けられた第二載置部を有することで、例えば、ウェブロールの交換作業後に芯体を第一載置部から第二載置部に移すようにすれば、芯体を安定した状態で搬送することができる。従って、芯体の搬送効率も向上させることができる。
【0019】
上記の構成において、支持面に対してウェブロールを拘束するための拘束部材を備えることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、支持面上でのウェブロールの転がりや、支持面からのウェブロールの落下を好適に回避することが可能となる。
【0021】
上記の構成において、当該ウェブロール搬送用台車の車輪を包囲する包囲部材を備えることが好ましい。
【0022】
このようにすれば、包囲部材の存在により、台車を操作する作業者の足等が台車の車輪に巻き込まれることを防止できる。
【0023】
上記の構成において、包囲部材が、上下方向に延びる軸心周りを回転可能なローラーを備えることが好ましい。
【0024】
このようにすれば、工場内の壁面等に台車が接触した場合に、ローラーが壁面に沿って転動することで接触の衝撃を和らげることが可能となる。
【0025】
上記の構成において、ウェブロールの積載時におけるウェブロールの軸線方向において、支持面が複数の分割面に分割され、複数の分割面が、相互に間隔を空けて配置されていることが好ましい。
【0026】
このようにすれば、複数の分割面の相互間にあたる部位の重量が台車から差し引かれるため、台車の軽量化を図ることが可能となる。また、ウェブロールの外周面のうち、支持面と接触する面積が抑制されるため、ウェブロールの汚染を防止する上でも有利となる。
【0027】
上記の構成において、支持面が、緩衝材の表面で構成されていることが好ましい。
【0028】
このようにすれば、ウェブロールにおける傷の発生を回避しやすくなると共に、ウェブロールの外周部の変形(平坦化)を更に好適に防止できる。
【0029】
上記の構成において、ウェブロールの積載時におけるウェブロールの軸線方向に沿って、支持面を移動させる位置調節機構を備えることが好ましい。
【0030】
このようにすれば、ウェブロールを支持面に載置した状態のままで、ウェブロールを軸線方向に沿って移動させることができる。これにより、上述のウェブロールの交換作業を行うような場合に、ウェブの供給装置に対して新品のウェブロールを装着しやすくなる等、交換作業を容易にすることが可能となる。
【0031】
また、上記のウェブロール搬送用台車を用いて、ウェブロールを搬送する搬送工程を備えたガラス板の製造方法によれば、上述のウェブロール搬送用台車について既述の作用・効果を同様に得ることが可能となる。
【0032】
上記のガラス板の製造方法では、ウェブロールは、帯状の発泡樹脂シートがロール状に巻き取られてなるものであってもよい。
【0033】
発泡樹脂シートがロール状に巻き取られてなるウェブロールにおいては、その外周部が変形しやすい。このため、発泡樹脂シートで構成されるウェブロールを搬送する場合に本発明に係るガラス板の製造方法を適用すれば、その作用・効果を好適に享受できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ウェブロール搬送用台車に積載した際に、ウェブロールの外周部の平坦化を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るウェブロール搬送用台車を示す側面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係るウェブロール搬送用台車を示す平面図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係るウェブロール搬送用台車を示す側面図である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係るウェブロール搬送用台車を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態に係るウェブロール搬送用台車、及び、当該台車を用いたガラス板の製造方法について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、図面に表したX方向、Y方向およびZ方向は互いに直交する方向である。そして、X方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は上下方向である。
【0037】
<第一実施形態>
はじめに、第一実施形態に係るウェブロール搬送用台車について説明する。
【0038】
図1及び
図2に示したウェブロール搬送用台車1(以下、台車1と表記)は、ウェブロールW(
図1にのみ図示)を積載して搬送するための台車である。台車1は、ウェブロールWを積載するための積載部2と、積載部2を矢印A‐Aで示す方向に昇降させるリフト部3と、リフト部3を下方から支持するフレーム4と、フレーム4の下方に取り付けられた車輪部5とを有する。なお、
図1は、ウェブロールWの積載時におけるウェブロールWの軸線方向から観察した側面図であり、軸線方向の側面視を示す。
【0039】
積載部2は、側面視でL字状に形成された昇降台6と、それぞれがX方向に延びた状態で昇降台6に取り付けられた両支持バー7,8(
図1にのみ図示)と、両支持バー7,8に固定され、且つウェブロールWを収容するための収容部9(
図1にのみ図示)と、収容中のウェブロールWを拘束するための拘束部材としてのベルト10(
図1にのみ図示)とを備えている。
【0040】
昇降台6は、Y方向に延びた横バー11と、横バー11に下端部が固定された状態でZ方向に延びた縦バー12とを有する。本実施形態では、横バー11と縦バー12とでなる組の二組が、X方向に間隔を空けて対をなすように配置されている。一方の組と他方の組との縦バー12,12同士は、連結部13により連結されている。なお、各組において横バー11と縦バー12とは補強用のリブ14で連結されている。
【0041】
支持バー7は、固定用部材15を介して横バー11に固定されると共に、支持バー8は、固定用部材16を介して縦バー12に固定されている。なお、図面の理解を容易にするため、
図2では、両支持バー7,8の図示を省略する。固定用部材15および固定用部材16は、それぞれX方向に長尺に形成されており、それぞれ対となる横バー11,11同士および縦バー12,12同士に架け渡された状態で固定されている。両支持バー7,8の各々は、その長手方向(ここではX方向)に直交する断面がL字状をなしている。本実施形態では、両支持バー7,8がアルミニウムで構成されている。なお、以下の説明では、Y方向における支持バー7が配置された側(横バー11の自由端側)を「前方」と表記し、支持バー8が配置された側(横バー11の固定端側)を「後方」と表記する。ここで言う「前方」及び「後方」は、台車1の進行方向についての前後とは必ずしも一致しない。
【0042】
収容部9は、前方側端部が支持バー7に固定され、且つ後方側端部が支持バー8に固定された湾曲板部材17を備えている。なお、図面の理解を容易にするため、
図2では、湾曲板部材17を二点鎖線で示す。本実施形態では、湾曲板部材17がステンレス鋼板で構成されている。湾曲板部材17は、収容したウェブロールWの重さで撓まない程度の剛性を有する。しなしながら、この限りではなく、ウェブロールWの収容時に湾曲板部材17の撓みを許容するようにしてもよい。また、本実施形態では、湾曲板部材17のX方向に沿った長さが、両支持バー7,8のX方向に沿った長さと同一の長さになっている。なお、湾曲板部材17のX方向に沿った長さは、ウェブロールWのX方向に沿った長さ(ウェブロールWを構成する帯状シートの幅寸法)よりも短くなっている。これにより、ウェブロールWのX方向における両端部が、それぞれ湾曲板部材17から食み出すので、ウェブロールWの積み下ろしが行いやすくなる。
【0043】
湾曲板部材17は、ウェブロールWの外周部Waを支持する支持面18を有する。支持面18は、ウェブロールWの外周部Waに倣って湾曲した凹湾曲面でなる。なお、本実施形態では、支持面18との接触に起因してウェブロールWを構成する帯状シートが破れることを防止するため、支持面18に対して鏡面加工が施されている。
【0044】
支持面18は、一定の曲率で湾曲した円筒面として形成されている。支持面18の曲率半径R1は、ウェブロールWの曲率半径R2よりも大きくなっている。支持面18は、面内で最下方に位置する底部18aを基準として、底部18aから前方側に移行するに連れて、また後方側に移行するに連れて漸次にせり上がっている。支持面18の両エッジ18b、18cには、高低差が設けられている。詳述すると、ウェブロールWの軸線Wbを基準として前方側に位置するエッジ18bと、後方側に位置するエッジ18cとの間には、高低差が設けられている。エッジ18bの高さ位置は、エッジ18cの高さ位置よりも低くなっている。また、本実施形態では、エッジ18bがウェブロールWの軸線Wbよりも低位に位置すると共に、エッジ18cが軸線Wbよりも高位に位置している。
【0045】
ここで、本実施形態では、支持面18が一定の曲率で湾曲しているが、この限りではない。前方側から後方側にかけて支持面18の曲率が途中で変化していてもよい。一例としては、支持面18が楕円筒面として形成されていてもよい。また、本実施形態では、支持面18の曲率半径R1がウェブロールWの曲率半径R2よりも大きくなっているが、両曲率半径R1,R2が同一の大きさであってもよい。
【0046】
ベルト10は、伸縮性を有する材質(例えばゴム等)でなる。ベルト10は、ウェブロールWの外周部Waに沿って架け渡すことが可能となっている。これにより、ベルト10によってウェブロールWを支持面18に押し付け、支持面18に対してウェブロールWを拘束している。ここで、本実施形態では、ベルト10の一端が横バー11の下面に固定され、且つ他端が湾曲板部材17に固定されているが、この限りではない。支持面18に対してウェブロールWを拘束できる限りで、ベルト10による拘束の態様は任意としてよい。また、ウェブロールWを拘束できる限りで、拘束部材としてベルト10以外の部材を採用してもよい。
【0047】
リフト部3は、フレーム4に固定されたベース19と、Z方向に延びた支柱状のリフト本体20と、昇降台6の昇降を操作するためのレバー21とを備えている。
【0048】
ベース19は、Y方向に沿って平行に延びた一対のベースバー22,22と、両ベースバー22,22を連結するX方向に延びた連結部23とを有する。
【0049】
リフト本体20は、その下端部がベース19の連結部23に固定されると共に、上端部には台車1を走行させる際に作業者が把持するための一対の持ち手部24を有する。更にリフト本体20は昇降機構25を備えており、レバー21の操作に伴い昇降台6を昇降させることが可能である。本実施形態では、レバー21を矢印B‐Bに示す方向に往復動作させることで、昇降台6を漸次に上昇させることが可能である。一方、レバー21をひねって回転させることで、昇降台6を降下させることが可能である。昇降機構25の具体例としては、ラチェットや油圧等を利用した公知の機構を採用すればよい。
【0050】
ここで、本実施形態では、昇降機構25として手動式の機構を採用しているが、これに代えて、例えば電動式の機構を採用しても構わない。
【0051】
フレーム4は、X方向に延びた二本のバー26と、Y方向に延びた四本のバー27とが組み合わされてなる。二本のバー26のうち、後方側のバー26には、ペダルにより台車1の静止状態と可動状態とを切り換えることが可能なストッパー28が取り付けられている。ストッパー28は、リフト本体20を間に挟んで一対が配置されている。四本のバー27のうち、中央寄りの二本の上面には、それぞれベースバー22が固定されている。四本のバー27のうち、外寄りの二本においては、その前方側端部と後方側端部のそれぞれに車輪部5が取り付けられている。
【0052】
車輪部5は、バー27の下面に取り付けられたプレート29と、プレート29に装着された車輪としてのキャスター30と、キャスター30を包囲する包囲部材としてのキャスターカバー31と、キャスターカバー31に取り付けられたローラー32とを備えている。
【0053】
キャスター30は、Z方向に延びる軸心30aを中心として、自在に旋回することが可能となっている。
【0054】
キャスターカバー31は、平面視で(Z方向から視て)上記の軸心30aを中心とするリング状に形成されている。キャスターカバー31は、L字状に形成されたアーム33を介してプレート29に固定されている。
【0055】
ローラー32は、キャスターカバー31の一体につき二つが取り付けられている。勿論、ローラー32の個数は適宜増減させて構わない。ローラー32は、Z方向に延びる軸心32aの周りを回転することが可能なフリーローラーである。ローラー32の外周部は、平面視でキャスターカバー31のなすリングからリングの径方向外側に食み出している。本実施形態では、キャスターカバー31のなすリングの幅寸法Sと比較して、ローラー32の直径の方が大きくなっている。
【0056】
以下、上記の台車1を用いたガラス板の製造方法について説明する。
【0057】
同方法は、台車1を用いてウェブロールWを搬送する搬送工程を備える。なお、本実施形態では、ウェブロールWは、帯状の発泡樹脂シート(PFS)がロール状に巻き取られてなる。勿論、ウェブロールWが発泡樹脂以外のシート(例えばガラス合紙)からなる場合であっても、本方法を適用することが可能である。ウェブロールWは、軸線Wbに沿って形成された貫通孔Wcを有する。
【0058】
搬送工程の実行にあたっては、まず、ウェブロールWを収容部9に収容する前に、レバー21を操作して昇降台6を昇降させる。これにより、収容部9にウェブロールWを収容するのに適した高さ位置に昇降台6を移動させる。
【0059】
昇降台6の移動を完了させると、次に、湾曲板部材17に備わった支持面18の両エッジ18b,18cのうち、相対的に低位に位置するエッジ18b側からウェブロールWを湾曲板部材17上に搬入する。これに伴って収容部9にウェブロールWが収容される。収容後には、ベルト10によりウェブロールWを支持面18に対して拘束する。
【0060】
支持面18に対するウェブロールWの拘束が完了すると、次に、作業者が持ち手部24を把持しながら台車1を走行させることで、台車1に積載されたウェブロールWを搬送する。このようにして搬送工程を実行する。搬送工程の実行後には、例えば、以下のようにしてウェブロールWを台車1から降ろす。
【0061】
すなわち、ベルト10によるウェブロールWの拘束を解除すると共に、ウェブロールWをシートの供給装置に装着することによってウェブロールWがシートの供給装置で回転可能に支持される。次に、レバー21を操作して昇降台6を降下させ、台車1からシートの供給装置にウェブロールWが受け渡され、台車1からウェブロールWが降ろされた状態となる。
【0062】
その後のウェブロールWは、シートの供給装置等から帯状の発泡樹脂シートが漸次に巻き解かれつつ所定の長さ毎に切断される。これにより、保護シートが作製される。保護シートは、例えばガラス板の主面と重ね合わせることで、ガラス板を傷の発生や破損から保護するために用いられる。
【0063】
以下、上記の台車1、及び、ガラス板の製造方法による主たる作用・効果について説明する。
【0064】
上記の台車1では、台車1に備わった支持面18が、ウェブロールWの外周部Waに倣って湾曲した凹湾曲面でなる。これにより、支持面18におけるウェブロールWの外周部Waとの当接箇所は必然的に湾曲していることになる。その結果、ウェブロールWを積載した際に、その外周部Waの平坦化を好適に防止することが可能となる。
【0065】
<第二実施形態>
以下、第二実施形態に係るウェブロール搬送用台車について説明する。なお、第二実施形態の説明において、上記の第一実施形態で既に説明済みの要素と実質的に同一の要素については、第二実施形態の説明で参照する図面に同一の符号を付すことで重複する説明を省略する。
【0066】
図3及び
図4に示すように、第二実施形態に係る台車1が、上記の第一実施形態に係る台車1と相違している主な点は、(1)ウェブロールWを収容するための収容部9の構成が異なる点、(2)使用済みウェブロールの芯体Wdを載置するための載置部として、第一載置部P1および第二載置部P2を有する点、(3)ウェブロールWの軸線方向(X方向)に沿って支持面18を移動させる位置調節機構34を備える点である。なお、
図3においては、台車1に備わった一部の要素(ベルト10等)の図示を省略している。
【0067】
最初に、上記の(1)について説明する。
【0068】
第二実施形態では、収容部9が、横バー11上に設置されたプレート35と、プレート35の上面に固定された第一ベース36および第二ベース37と、両ベース36,37に架け渡された湾曲板部材17とを有する。本実施形態では、プレート35、両ベース36,37、及び、湾曲板部材17のX方向に沿った長さが相互に同一となっている。
【0069】
プレート35、両ベース36,37、及び、湾曲板部材17の各々は、対をなす横バー11,11の一方と他方とにそれぞれ備わっている。これにより、本実施形態では、支持面18が二つの分割面18xに分割され、二つの分割面18xがウェブロールWの軸線方向(X方向)に間隔を空けて配置されている。二つの分割面18xは、Z方向における位置が揃えられていると共に、台車1におけるX方向の中央部を基準として対称に配置されている。
【0070】
プレート35は、X方向に沿った長さが横バー11の幅よりも長くなっており、プレート35のX方向における中央部のみが横バー11により下方から支持されている。
【0071】
第一ベース36および第二ベース37の両者について、第一ベース36が相対的に前方側に配置され、第二ベース37が相対的に後方側に配置されている。第一ベース36には、前方側に向かって登り勾配となる傾斜面が形成されている。第二ベース37には、第一ベース36とは逆に、後方側に向かって登り勾配となる傾斜面が形成されている。第二ベース37は第一ベース36よりもサイズが大きく、両ベース36,37を比較すると第二ベース37の方が大きな高さ寸法(Z方向に沿った寸法)を有する。
【0072】
湾曲板部材17における前方側端部は、第一ベース36の傾斜面に固定され、後方側端部は、第二ベース37の傾斜面に固定されている。また、両ベース36,37の相互間においては、湾曲板部材17がプレート35により下方から支持されている。湾曲板部材17は緩衝材で構成されており、緩衝材としては発泡体やゴム等を採用することが可能である。これにより、本実施形態では、支持面18(分割面18x)が、湾曲板部材17を構成する緩衝材の表面でなる。
【0073】
ここで、本実施形態の変形例として、横バー11の本数を三本以上とし、各横バー11にプレート35、両ベース36,37、及び、湾曲板部材17を設けることで、支持面18が相互に間隔を空けて配置された三つ以上の分割面18xでなるようにしてもよい。また、別の変形例として、対をなす横バー11,11のそれぞれにプレート35を設けるのではなく、対をなす横バー11,11に架け渡される単一のプレート35を設けるようにしてもよい。この場合、二つの分割面18xの相互間でウェブロールWに撓みが発生することを確実に回避できる。さらに、別の変形例として、湾曲板部材17を積層構造としてもよい。一例として、湾曲した金属板の上面にシート状の緩衝材を重ね合わせた構造としてもよい。
【0074】
次に、上記の(2)について説明する。
【0075】
第一載置部P1は、横バー11上に位置すると共に、Y方向において支持面18(分割面18x)と隣り合っている。詳細には、第一載置部P1は、支持面18の後方側に隣接して位置している。勿論この限りではなく、第一載置部P1が、支持面18の前方側に隣接して位置してもよい。第一載置部P1は、昇降台6の上下動に伴って支持面18と一緒に昇降する。
【0076】
第一載置部P1は、横バー11の上面に固定された前方側規制部材38および後方側規制部材39により形成される。両規制部材38,39の各々は、芯体WdのY方向への転動を防止するための壁部を有する。両規制部材38,39は、対をなす横バー11,11の一方と他方とにそれぞれ備わっている。これにより、第一載置部P1に芯体Wdを載置した際には、対をなす横バー11,11に芯体Wdが架け渡された状態となる。
【0077】
第二載置部P2は、第一載置部P1とは異なり、台車1上における固定箇所に設けられている。ここで言う「固定箇所」とは、台車1上において昇降機構25により昇降(上下動)しない箇所を意味する。本実施形態では、第二載置部P2が、バー27上に位置しており、第二載置部P2は、昇降台6が昇降により移動する範囲の下限よりも下方に位置している。勿論この限りではなく、第二載置部P2は、上記の「固定箇所」の条件を満たす限りで他の箇所に設けてもよい。
【0078】
第二載置部P2は、バー27の上面に固定された前方側規制部材40および後方側規制部材41により形成される。両規制部材40,41の各々は、芯体WdのY方向への転動を防止するための壁部を有する。両規制部材40,41は、四本のバー27のうち、外寄りの二本の各々に備わっている。これにより、第二載置部P2に芯体Wdを載置した際には、四本のバー27に芯体Wdが架け渡された状態となる。なお、芯体Wdが架け渡されるバー27の本数は、四本に限らず、二本以上であればよい。
【0079】
ここで、第二実施形態では、バー27上に第二載置部P2を位置させるため、ベースバー22の配置を上記の第一実施形態から変更している。第一実施形態では、四本のバー27のうち、中央寄りの二本の上面にそれぞれベースバー22が配置されていたが、第二実施形態では、中央寄りの二本の下面にそれぞれベースバー22が配置されている。
【0080】
次に、上記の(3)について説明する。
【0081】
位置調節機構34は、昇降機構25により昇降台6と一緒に昇降する。位置調節機構34は、人手で操作が可能なハンドル42と、ハンドル42の回転に伴って送り動作を行う図示省略の送り機構(一例として、ボールネジ機構)と、送り機構の送り動作によりX方向に移動する図示省略のスライダとを備えている。勿論この限りではなく、位置調節機構34は、人手によらず動作する電動式の機構であってもよい。
【0082】
本実施形態においては、スライダが昇降台6の連結部13と固定されており、ハンドル42を操作して回転させることで、昇降台6がX方向に移動する。これにより、
図4に矢印C‐Cで示すように、支持面18(分割面18x)をX方向に沿って移動させることが可能となる。そして、支持面18の移動に伴って、当該支持面18に載置されたウェブロールW(
図4では図示省略)をX方向に沿って移動させることが可能となる。
【0083】
最後に、上記の(1)~(3)を除く、第一実施形態との他の相違点について説明する。
【0084】
他の相違点としては、(4)昇降台6の下部にショックアブソーバー43が備わっており、昇降台6が下限まで降下した際に、ショックアブソーバー43がフレーム4に取り付けられたバー44の上端と接触する点、(5)平面視(Z方向から視て)で、キャスターカバー31の形状が矩形状をなす点がある。勿論、キャスターカバー31は、上記の第一実施形態と同一の形状(リング状)であってもよい。
【0085】
なお、第二実施形態においては、台車1の軽量化を図るため、フレーム4および昇降台6の材質として、アルミニウムを採用することが好ましい。また、キャスター30の材質として、ウレタンゴムを採用することが好ましい。
【0086】
以下、上記の台車1を用いたガラス板の製造方法について説明する。なお、本製造方法の説明においても、上記の第一実施形態との相違点についてのみ説明する。第二実施形態が、上記の第一実施形態と相違している点は、ウェブロールWをシートの供給装置に装着する態様である。
【0087】
本実施形態では、新品のウェブロールWをシートの供給装置に装着する前に、当該装置に装着された状態にある使用済みのウェブロールの芯体Wdを回収し、回収した芯体Wdを第一載置部P1に一時的に載置(仮置き)する。次に、新品のウェブロールWをシートの供給装置に装着し、ウェブロールWの交換作業を完了させる。なお、ウェブロールWの装着に際しては、必要に応じてハンドル42を操作し、支持面18(分割面18x)上に載置されたウェブロールWのX方向における位置を調節する。その後、回収した芯体Wdを第一載置部P1から第二載置部P2に移してから台車1を走行させ、台車1により芯体Wdを搬送する。
【0088】
ここで、本発明に係るウェブロール搬送用台車、及び、ガラス板の製造方法は、上記の実施形態で説明した構成や態様に限定されるものではない。例えば、ウェブロール搬送用台車は、パンタグラフ式のリフト部を上下動させることにより、当該リフト部の上に配置した積載部を昇降させる構成であってもよい。また、ウェブロール搬送用台車は、人手によらず走行が可能な無人搬送車であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 ウェブロール搬送用台車
10 ベルト(拘束部材)
18 支持面
18b 支持面のエッジ
18c 支持面のエッジ
18x 分割面
25 昇降機構
30 キャスター(車輪)
31 キャスターカバー(包囲部材)
32 ローラー
32a 軸心
34 位置調節機構
P1 第一載置部
P2 第二載置部
W ウェブロール
Wa ウェブロールの外周部
Wb ウェブロールの軸線
Wd 芯体