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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】ケーブル分解装置、ケーブルの分解方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20231012BHJP
   G21F 9/28 20060101ALI20231012BHJP
   B26D 1/02 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
H02G1/12 060
G21F9/28 511A
G21F9/28 511C
B26D1/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019174002
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021052506
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-07-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 中部電力株式会社 第71回全社技術研究発表会、平成30年11月21日開催
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000153100
【氏名又は名称】株式会社日本環境調査研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】595123678
【氏名又は名称】三立機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池堂 和仁
(72)【発明者】
【氏名】移川 隆行
(72)【発明者】
【氏名】木梨 秀二
(72)【発明者】
【氏名】中根 亮一
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-189905(JP,A)
【文献】特開2005-104128(JP,A)
【文献】特開2002-048896(JP,A)
【文献】特開昭62-138796(JP,A)
【文献】特開平08-237830(JP,A)
【文献】特開2000-341819(JP,A)
【文献】特開2003-139893(JP,A)
【文献】特開平03-212108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
G21F 9/28
B26D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質が付着したケーブルの分解装置であって、
前記ケーブルを送出する送り装置と、
前記ケーブルの移動経路上の剥離位置において気流を発生させる気流発生部と、
前記剥離位置にて前記ケーブルから外被を引き取って剥離する剥離装置と、を備え、
前記気流発生部は、
吹出口からエアを吹き出す吹出部と、
吸引口からエアを吸引する吸引部と、を備え、
前記剥離装置は、前記吹出口から前記吸引口に向かう気流内で、前記外被を前記ケーブルから引き取って剥離する、ケーブル分解装置。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル分解装置であって、
前記剥離装置は、
前記外被を引き取る引取部と、
前記引取部と前記ケーブルの間に位置し、剥離された前記外被を前記引取部まで案内するローラ式の案内部と、を備える、ケーブル分解装置。
【請求項3】
請求項2に記載のケーブル分解装置であって、
前記剥離位置は、剥離された外被が前記案内部から前記引取部に向かって引き取られるときの外被の中心線と、前記ケーブルの移動経路との交点である、ケーブル分解装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のケーブル分解装置であって、
前記ケーブルの前記外被に剥離用のスリットを入れるカッターを備え、
前記カッターは、前記スリットを入れる際に、前記外被を完全に切断することなく前記ケーブルのコアに非接触である、ケーブル分解装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のケーブル分解装置であって、
前記剥離装置とクリーンルームとの間に位置する排出ダクトを備え、
前記剥離位置で外被を剥離した後、前記ケーブルのコアは前記排出ダクトを通って、前記クリーンルームに送られる、ケーブル分解装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のケーブル分解装置であって、
前記汚染物質は放射性物質であり、
前記気流の流速は、2.0[m/s]以上である、ケーブル分解装置。
【請求項7】
ケーブルの分解方法であって、
汚染物質が付着したケーブルの外被を、吹出口から吸引口に向かう気流内で引き取って剥離する、ケーブルの分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーブルを分解する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子力発電所の廃止措置に伴い、多量の廃ケーブルが発生する。こうした廃ケーブルには、放射性物質などの汚染物質が付着している可能性がある。下記特許文献1には、廃ケーブルを有効利用するため、汚染物質が付着している被覆部と、コアとを分離する点が記載されている。具体的には、放射線管理区域と非管理区域との間に緩衝区域を設け、放射線管理区域内で被覆層を剥離してから、コアのみを緩衝区域を介して非管理区域に取り出すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-48896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
取り出したコアを再利用する場合、汚染されていないことが必要である。しかし、外被(被覆層)を剥離する際に、放射性物質やアスベストなどの汚染物質が周囲に飛散し、それがコアに再付着する場合がある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、剥離時に外被(被覆層)から飛散する汚染物質のコアへの再付着を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、汚染物質が付着したケーブルの分解装置であって、前記ケーブルを送出する送り装置と、前記ケーブルの移動経路上の剥離位置において気流を発生させる気流発生部と、前記剥離位置にて前記ケーブルから外被を剥離する剥離装置と、を備え、前記気流発生部は、吹出口からエアを吹き出す吹出部と、吸引口からエアを吸引する吸引部と、を備え、前記吹出口から前記吸引口に向かう気流内で、前記外被を前記ケーブルから剥離する。
【0006】
この装置は、剥離する際に、外被から飛散する汚染物質を気流内に閉じ込めて吸引することが出来る。そのため、汚染物質のコアへの再付着を抑制することが出来る。
【0007】
この発明の実施態様として、以下の構成が好ましい。
前記ケーブルの前記外被に剥離用のスリットを入れるカッターを備え、前記カッターは、
前記スリットを入れる際に、前記外被を完全に切断することなく前記ケーブルのコアに非接触であってもよい。この構成では、カッターを介して、汚染物質がコアの表面に付着することを抑制できる。
【0008】
この発明の実施態様として、以下の構成が好ましい。
前記剥離装置とクリーンルームとの間に位置する排出ダクトを備え、前記剥離位置で外被を剥離した後、前記ケーブルの前記コアは前記排出ダクトを通って、前記クリーンルームに送ってもよい。この構成では、コアは、排出ダクトを通って、クリーンルームに送られるので、汚染物質がコアの表面に付着することを抑制できる。
【0009】
この発明の実施態様として、以下の構成が好ましい。
前記汚染物質は放射性物質であり、前記気流の流速は2.0[m/s]以上でもよい。この構成では、放射性物質がコアの表面に付着することを抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、剥離時に外被から飛散する汚染物質のコアへの再付着を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ケーブル分解装置の正面図
図2】ケーブル分解装置の平面図
図3】ケーブル分解装置の側面図
図4】カッターの正面図
図5A】スリットの深さを示す図
図5B】スリットの深さを示す図
図5C】スリットの深さを示す図
図6】ケーブル分解装置の斜視図
図7】剥離位置の周辺構造を示す斜視図
図8】その平面図
図9】外被の剥離工程を示す図
図10】汚染物質の付着性の評価結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
1.ケーブル分解装置の構造説明
ケーブル分解装置10を、図1図10を参照して、説明する。図1図2図4図6図7図8に示す矢印Xは、廃ケーブル1の送り方向(移動方向)を示している。また、Y方向は、廃ケーブル1の送り方向に対して直交する方向である。
【0013】
ケーブル分解装置10は、汚染物質Uが付着した廃ケーブル1から、外被3を剥離して、コア5を取り出す装置である。コア5は金属導体であり、外被3はコア5を被覆する樹脂の被覆層である。廃ケーブル1の一例として、原子力発電所などで使用されたケーブルを例示することが出来る。また、コア5は、金属導体を絶縁する絶縁層や金属導体を遮蔽する遮蔽層を有していてもよい。
【0014】
ケーブル分解装置10は、送り装置20と、接続ダクト40と、剥離装置50と、気流発生部60と、排出ダクト70と、を備える。
【0015】
送り装置20は、廃ケーブル1を、剥離位置Pに向けて送出する装置である。この実施形態では、送り装置20は、第1支持台11に取り付けられている。
【0016】
図4に示すように、送り装置20は、支持フレーム21と、一対のローラブロック22A、22Bと、一対の送りローラ23A、23Bと、一対のカッター31A、31Bを備える。
【0017】
一対の送りローラ23A、23Bは、一対のローラブロック22A、22Bを介して、支持フレーム21に固定されている。一対の送りローラ23A、23Bは、上下に向かい合っており、図外のモータの駆動により回転して、廃ケーブル1を送出するようになっている。
【0018】
この実施形態では、下側のローラブロック22Aは、支持フレーム21に対して固定された固定ブロック、上側のローラブロック22Bは、支持フレーム21に対して上下方向に移動可能に取り付けられた可動ブロックである。
【0019】
支持フレーム21の上面壁21Aには、ハンドル25が取り付けられている。ハンドル25は、外周面に送りねじを備えた昇降軸26を有している。昇降軸26は、連結板27を介して、上側のローラブロック22Bに連結されている。
【0020】
ハンドル25の操作により、昇降軸26を上下移動することで、ローラブロック22Bの上下方向の位置を調整することが出来、これにより、2つのローラ22A、22Bのローラ間ピッチを調整することが出来る。
【0021】
一対のカッター31A、31Bは、刃先を向き合わせるように傾斜させた状態で上下に向かい合って配置されている。下側のカッター31Aの刃先は、概ね下側のローラ23Aの頂部と一致し、上側のカッター31Bの刃先は、概ね上側のローラ23Bの底部と一致している。
【0022】
この実施形態では、下側のカッター31Aは、支持フレーム21のベース板21Bに対して、カッタベース32Aを介して取り付けられており、上側のカッター31Bは、連結板27に対して、カッタベース32Bを介して取り付けられている。そのため、ハンドル25を操作すると、上側のローラ23Bだけでなく、上側のカッター31Bも一体的に移動する構成になっている。
【0023】
また、各カッタベース32A、32Bには、調整装置35が設けられている。調整装置35は、ハンドル36の操作(ねじ式)により、カッタベース32に対するカッター31の出代を調整する装置である。つまり、図4に示すQ方向について、カッター31の位置を調整することが出来る。
【0024】
上下のカッター31A、31Bは、2つのローラ22A、22Bで廃ケーブル1を送り出す時に、廃ケーブル1の上面にスリットSを形成する。調整装置35を用いて、カッター31の出代を調整することで、廃ケーブル1に形成するスリットSの深さを調整することができる。
【0025】
図5Aは、カッター31が初期位置にある時の刃先34と廃ケーブル1の位置関係を示している。カッター31が初期位置にある状態では、カッター31の刃先34の位置は、廃ケーブル1の外被表面3Aと概ね一致する。
【0026】
外被表面3Aに対する刃先34の突出量Dを、廃ケーブル1の外被3の厚さHよりも大きくした場合、刃先34は、廃ケーブル1のコア5に対して干渉する(図5B)。
【0027】
外被表面3Aに対する刃先34の突出量Dを、廃ケーブル1の外被3の厚さHよりも小さくした場合、刃先34は、外被3内に留まる。つまり、スリットSを入れる際に、カッター31は、外被3を完全に切断することなく、廃ケーブル1のコア5に対して非接触となる(図5C)。
【0028】
この実施形態では、外被表面3Aに対する刃先34の突出量Dを、廃ケーブル1の外被3の厚さHよりも小さくして、刃先34を外被3内に留め、廃ケーブル1のコア5に対して非接触とする。
【0029】
刃先34をコア5に対して非接触とすることで、外被3に付着した汚染物質Uがカッター31A、31Bを介して、コア5に付着することを抑制することが出来る。
【0030】
接続ダクト40は、図1図2に示すように、送り装置20と剥離装置50との間に位置する。送り装置20により送出された廃ケーブル1は、接続ダクト40の内部を通って、剥離装置50に向けて搬送される。
【0031】
剥離装置50は、廃ケーブル1から外被3を剥離する装置である。この実施形態では、剥離装置50は、第2支持台15に取り付けられている。
【0032】
図6に示すように、剥離装置50は、引取部51と、案内部53と、上下ガイド55を備える。尚、図6は、第1支持台11と第2支持台15を1つの箱で図示している。
【0033】
引取部51は、廃ケーブル1から、外被3を引き取って剥離する装置である。この実施形態では、引取部51は、図7図8に示すように、4つのピンチローラ51A~51Dと、4つのピンチローラ51A~51Dを回転駆動するモータ52から構成されている。モータ52は、図1に示す。
【0034】
4つのピンチローラ51A~51Dは、ローラ軸が水平方向を向いた水平ローラである。4つのピンチローラ51A~51Dのうち、ピンチローラ51Aとピンチローラ51B、ピンチローラ51Cとピンチローラ51Dはそれぞれ組になっており、各組のピンチローラ51A~51Dが、廃ケーブル1の移動経路L1を間にしてその両側(Y方向の両側)に分かれて配置されている。
【0035】
組をなす2つのピンチローラ51はそれぞれ上下に向かい合っており、ローラ間に挟んで外被3を引き取るようになっている。つまり、移動経路L1の一方側に位置する2つのピンチローラ51で、片側の外被3を引き取ってコア5から剥離し、移動経路L1の他方側に位置する2つのピンチローラ51で、もう片側の外被3を引き取ってコア5から剥離する。
【0036】
この実施形態では、図7図8に示すように、ピンチローラ51A、51Bは、廃ケーブル1の移動経路L1の一方側(左側)に位置し、ピンチローラ51C、51Dは、廃ケーブル1の移動経路L1の他方側(右側)に位置している。そして、ピンチローラ51A、51Bが外被3の左半分を剥離し、ピンチローラ51C、51Dが外被3の右半分を剥離する。
【0037】
案内部53は、廃ケーブル1の外被3を、引取部51まで案内する。案内部53は、4つのガイドローラ53A~53Dからなる。
【0038】
4つのガイドローラ53A~53Dは、ローラ軸が垂直方向を向いた垂直ローラであり、上下に貫通する枠型のフレーム58により支持されている。4つのガイドローラ53A~53Dのうち、ガイドローラ53A、53Bと、ガイドローラ53C、ガイドローラ53Dがそれぞれ組になっている。
【0039】
図8に示すように、2つのガイドローラ53Aとガイドローラ53Bは、ピンチローラ51A、51Bの内側に位置しており、廃ケーブル1の片側の外被3は、2つのガイドローラ間を通って、ピンチローラ51A、51Bに送られる。
【0040】
2つのガイドローラ53Cとガイドローラ53Dは、ピンチローラ51C、51Dの内側に位置しており、廃ケーブル1の他側の外被3は、2つのガイドローラ間を通って、ピンチローラ51C、51Dに送られる。
【0041】
上下ガイド55は、2つのガイドローラ55A、55Bからなる。2つのガイドローラ55A、55Bは、ローラ軸が水平方向を向いた水平ローラである。
【0042】
2つのガイドローラ55A、55Bは、ケーブル1の送り方向において、ガイドローラ53A、53Cよりも上流に位置している。具体的には、ガイドローラ53A、53Cの直前の位置にある。2つのガイドローラ55A、55Bは、廃ケーブル1を間にして上下に向かい合っており、剥離位置Pに送られる廃ケーブル1を上下方向からガイドする役割を示す。
【0043】
剥離位置Pは、廃ケーブル1から外被3を剥離する位置である。図8に示すように、剥離位置Pは、廃ケーブル1の移動経路L1と剥離線L2の交点である。
【0044】
剥離線L2は、ピンチローラ51により引き取られる外被3の中心線である。この例では、剥離位置Pは、4つのガイドローラ53A~53Dの中心点と一致する。
【0045】
気流発生部60は、剥離位置Pにて、気流を発生させる装置である。図6図7に示すように、気流発生部60は、吹出口62を有する吹出部61と、吸引口64を有する吸引部63とを有している。
【0046】
吹出部61は、エアフィルタ68を介してエア源(図外)に接続されており、吹出口62からエアを吹き出す。エアフィルタ68は、図6に示す。
【0047】
吸引部63は、ホースを介して負圧源(図外)に接続されており、吸引口64からエアを吸引する。
【0048】
吹出口62と吸引口64は、剥離位置Pにあって、上下に向かい合っている。そのため、吹出口62から吸引口64に向かう気流F1を剥離位置Pにて発生させることが出来る(図9参照)。
【0049】
図1に示すように、排出ダクト70は、第2支持台15の後端に設けられた固定壁16に対して前後方向(X方向)にスライド可能に取り付けられている。
【0050】
排出ダクト70は、剥離装置50とクリーンルーム80の間に位置している。図1図6に示すように、排出ダクト70の前端は、剥離装置50の後方に位置しており、排出ダクト70の後端は、クリーンルーム80に連通する。廃ケーブル1のコア5は、剥離位置Pにて外被3が剥離された後、排出ダクト70を通って、クリーンルーム80内に排出される。
【0051】
尚、排出ダクト70をスライド可能としているのは、コア5を排出ダクト70内に通す作業を行い易くするためである。
【0052】
クリーンルーム80は、空調機や圧力調整機を有しており、室内の空気と圧力が管理された部屋である。クリーンルーム80は、周囲よりも気圧が高く、排気ダクト70内には、クリーンルーム80から剥離装置50に向かう気流F2が起きる(図1参照)。
【0053】
このようにすることで、排気ダクト70を通って、汚染物質Uがクリーンルーム80に流れ込むことを抑制することが出来る。
【0054】
また、図3に示すようにケーブル分解装置10の側方には、廃棄ボックス75が設置されており、剥離した外被3は、廃棄ボックス7580に収容されるようになっている。
【0055】
図10は、気流内で外被3を剥離し、コア5に対する汚染物質Uの付着性を評価した結果である。汚染物質Uは放射性物質(コバルトなど)であり、コア5から放射される放射線を線量計等で計測し、放射性物質の付着の有無を評価している。
【0056】
吹出口62から吸引口64に向かう気流F1の流速Vが、2.0[m/s]以上の場合、計測値は基準値を下回り、コア5に対する放射性物質の付着が無かった。そのため、放射性物質で汚染されたケーブル1を剥離する場合、気流F1の流速Vは、2.0[m/s]以上であることが好ましい。流速Vは、平均流速(吹出口62の流速と吸引口64の流速の平均)である。
【0057】
2.作業手順
廃ケーブル1の分解作業を行うにあたり、まず、廃ケーブル1の外径に合わせて、送り装置20のローラ間ピッチを調整する。
【0058】
そして、ケーブル表面にスリットSを形成するため、カッター31A、31Bの出代Dを調整する。この時、カッター31A、31Bの刃先34がコア5に干渉しないように、刃先34の位置を外被3の厚さHの範囲内に収めるとよい。
【0059】
次に、気流発生部60を駆動して、吹出口62から吸引口64に向かう気流F1を、移動経路L1上の剥離位置Pにて発生させる。また、圧力調整装置を作動させて、クリーンルーム80の気圧を周囲よりも高くし、クリーンルーム80から剥離装置50に向かう気流F2を発生させる。
【0060】
その後、送り装置20を駆動して廃ケーブル1を送出する。廃ケーブル1の先端が剥離位置Pに到達したら、送り装置20を一旦停止する。
【0061】
次に、排出ダクト70を、少し後退させて、剥離装置50の後方にスペースを作る。そして、口割工具でケーブル先端の外被3を左右に裂き、裂いた左右の外被3をガイドローラ間にそれぞれ通しつつ、左右のピンチローラ51A、51B及びピンチローラ51C、51Dに挟んでクランプさせる。
【0062】
次に、露出したコア5を排出ダクト70に通した後、排出ダクト70を前方にスライドして元の状態に戻し、スペースを閉じる。
【0063】
その後、送り装置20を再駆動すると共に、モータ52を駆動して剥離装置50を駆動する。これにより、廃ケーブル1は、移動経路L1に沿って送り出される。そして、剥離位置Pを通過する時に外被3は、気流F1内において剥離され、コア5は排出ダクト70を通って、クリーンルーム80内に送られる。以上により、廃ケーブル1を外被3とコア5に分解することが出来る。
【0064】
3.効果説明
この装置は、図9に示すように、廃ケーブル1から外被3を剥離する際に、外被3から飛散する汚染物質Uを、気流F1内に閉じ込めて、吸引することが出来る。そのため、汚染物質Uのコア5への再付着を抑制することが出来る。
【0065】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
(1)実施形態1では、汚染物質Uの一例として、放射性物質を例示したが、汚染物質Uは、アスベストなど人体に有害な物質であれば、放射性物質以外でもよい。
【0067】
(2)実施形態1では、吹出部61と吸引部63を上下に配置して、下方から上方に向かう気流F1を形成した。気流F1は、上下方向に限らず、水平方向や斜め方向でもよい。
【0068】
(3)実施形態1では、廃ケーブル1を単芯のケーブルとした。廃ケーブル1は、2芯や3芯などの多芯のケーブルでもよい。尚、ケーブルの「コア」は、導体部分の総称であり、単芯ケーブルの場合、単一の芯線がコアであり、多芯ケーブルの場合は、複数の芯線がコアである。また、「外被」は、コアを覆う樹脂の被覆層である。多芯ケーブルの場合、複数の芯線を一括して覆う外被にスリットを形成する際に、カッターの刃先を外被内に留めて、カッターの刃先が複数の芯線に接触しないようにするとよい。
【0069】
(4)実施形態1では、カッター31の刃先34を、コア5に非接触としたが、コア5に接触させてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 ケーブル剥離装置
20 送り装置
40 接続ダクト
50 剥離装置
60 気流発生部
61 吹出部
63 吸引部
70 排出ダクト
80 クリーンルーム
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10