(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】繊維用サイズ剤組成物及び繊維材
(51)【国際特許分類】
D06M 15/53 20060101AFI20231012BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20231012BHJP
C03C 25/285 20180101ALI20231012BHJP
C03C 25/26 20180101ALI20231012BHJP
D06M 101/00 20060101ALN20231012BHJP
D06M 101/40 20060101ALN20231012BHJP
【FI】
D06M15/53
D06M15/263
C03C25/285
C03C25/26
D06M101:00
D06M101:40
(21)【出願番号】P 2019058615
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305040569
【氏名又は名称】ユニチカグラスファイバー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西峯 准
(72)【発明者】
【氏名】今村 考希
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-180293(JP,A)
【文献】特開2012-193474(JP,A)
【文献】特開2007-084811(JP,A)
【文献】特開2018-002991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715、
C03C25/00-25/70、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤(A)、水(B)、及び重合反応生成物(E)を含有し、
前記重合反応生成物(E)は、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤(A)、前記水(B)、及び重合開始剤(C)の存在下でエチレン性二重結合を有するモノマー(D)を乳化重合させることで生成する生成物であり、
前記重合開始剤(C)は、過硫酸アンモニウム(C1)を含み、
前記モノマー(D)は、(メタ)アクリル系モノマー(D1)を含
み、
前記(メタ)アクリル系モノマー(D1)は、メタクリル酸2-エチルヘキシルとメタクリル酸イソブチルとを含む、
繊維用サイズ剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対する前記メタクリル酸2-エチルヘキシルの含有量は、40質量%以上である、
請求項
1に記載の繊維用サイズ剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対する前記メタクリル酸イソブチルの含有量は、50質量%以下である、
請求項
1又は2に記載の繊維用サイズ剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対する前記メタクリル酸2-エチルヘキシル及び前記メタクリル酸イソブチルの合計量は、60質量%以上である、
請求項
1~3のいずれか一項に記載の繊維用サイズ剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対する前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤(A)の含有量は、5質量%以上70質量%以下である、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の繊維用サイズ剤組成物。
【請求項6】
無機繊維用である、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の繊維用サイズ剤組成物。
【請求項7】
ガラス繊維用又は炭素繊維用である、
請求項
6に記載の繊維用サイズ剤組成物。
【請求項8】
無機繊維と、
前記無機繊維に付着する請求項
6又は
7に記載の繊維用サイズ剤組成物と、を含む
繊維材。
【請求項9】
前記無機繊維が、ガラス繊維と炭素繊維とのうち少なくとも一方を含む、
請求項
8に記載の繊維材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用サイズ剤組成物及び繊維材に関し、より詳細には、重合反応生成物を含有する繊維用サイズ剤組成物及びこの繊維用サイズ剤組成物と無機繊維を含む繊維材に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維や炭素繊維等の無機繊維ヤーンを用いて作製された無機繊維クロスは、エアージェット織機等によって経糸と緯糸とを製織することで作成される。無機繊維ヤーンは、繊維径がサブミクロン~数ミクロンのフィラメント数十本~千数百本から構成され、一次サイズ剤を用いて収束させたストランド形態が一般的である。変性デンプン等の一次サイズ剤は摩擦から繊維を保護することが主な目的であり、その後の製織工程においては、フィラメントの断裂により発生する毛羽立ち等を抑制する目的で撚りを追加したり、ポリビニルアルコール等の二次サイズ剤をサイジングしてストランドの抱合力を向上させたりする必要がある。
【0003】
繊維強化プラスチック(FRP) 製品は、これらの無機繊維クロスを補強材とし、ナイロンやポリプロピレン等のマトリックス樹脂を含浸させることによって作成されるが、無機繊維クロスとマトリックス樹脂の密着性がFRP製品の物性に大きく影響を及ぼすことから、無機繊維クロスを作成後にヒートクリーニング等によって繊維から除去できる材料が用いられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、(a)アクリル酸モノマー及び/又はメタクリル酸モノマー、(b)ヒドロキシル基を有するアクリル酸モノマー及び/又はメタクリル酸モノマー、及び(c)エチレンオキサイド付加物を有するアクリル酸モノマー及び/又はメタクリル酸モノマーを含む(A)モノマー、及び(B)2官能のジビニルタイプのエチレンオキサイド付加物を有するモノマーを、(A)/(B)の重量割合が100/0.1~100/3.0の範囲で、油性のラジカル反応開始剤を用いて、アルコール中または水及びアルコール混合溶媒中で重合した後、アルカリでカルボン酸を中和した水系アクリル樹脂を、ガラス繊維用集束剤として用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の水系アクリル樹脂を集束剤として用いた場合、繊維から集束剤を除去する際には高温で加熱する必要がある。そのため、繊維が熱によって劣化したり、高温での加熱処理のための機器や施設が必要となったりするおそれがある。繊維に付着させた場合に良好な収束性を有すると共に、繊維から容易に除去可能なサイズ剤を得ることは容易ではない。
【0007】
本発明の目的は、繊維に付着させた場合に良好な収束性を有し、繊維に毛羽立ちを生じさせにくく、かつ低温条件下でヒートクリーニング可能な繊維用サイズ剤組成物、及びこれを用いた繊維材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一態様の繊維用サイズ剤組成物は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤(A)、水(B)、及び重合反応生成物(E)を含有する。前記重合反応生成物(E)は、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤(A)、前記水(B)、及び重合開始剤(C)の存在下でエチレン性二重結合を有するモノマー(D)を乳化重合させることで生成する生成物である。前記重合開始剤(C)は、過硫酸アンモニウム(C1)を含む。前記モノマー(D)は、(メタ)アクリル系モノマー(D1)を含む。
【0009】
本発明に係る一態様の繊維材は、無機繊維と、前記無機繊維に付着する前記繊維用サイズ剤組成物と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊維に付着させた場合に良好な収束性を有し、繊維に毛羽立ちを生じさせにくく、かつ低温条件下でヒートクリーニング可能な繊維用サイズ剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る繊維用サイズ剤組成物を説明する。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」のうち少なくとも一方を意味する。例えば、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとのうち少なくとも一方を意味する。
【0012】
本実施形態に係る繊維用サイズ剤組成物(以下、組成物(X)という)は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤(A)、水(B)、及び重合反応生成物(E)を含有する。重合反応生成物(E)は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤(A)、水(B)、及び重合開始剤(C)の存在下でエチレン性二重結合を有するモノマー(D)を乳化重合させることで生成する生成物である。重合開始剤(C)は、過硫酸アンモニウム(C1)を含む。モノマー(D)は、(メタ)アクリル系モノマー(D1)を含む。
【0013】
組成物(X)は、このような構成を有するため、組成物(X)を繊維に付着させた場合に、繊維は良好なストランドを形成することができる。すなわち、繊維に組成物(X)を付着させることでストランドの収束性が向上し、繊維の製織や編み等の加工を容易にすることができる。
【0014】
また、組成物(X)は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤(A)及び過硫酸アンモニウム(C1)を含む重合開始剤(C)の存在下で乳化重合して生成する重合反応生成物(E)を含有するため、組成物(X)を繊維に付着させた後に、容易に繊維から除去することができる。例えば、組成物(X)を付着させた繊維を低温で加熱処理することで組成物(X)を除去できるため、繊維の加工工程において組成物(X)を除去する必要がある場合でも、繊維を高温処理による熱によって劣化させることなく組成物(X)を除去することができる。低温とは、例えば350℃以下又は330℃以下の温度である。また、組成物(X)を繊維から除去する際の加熱処理の時間を短縮することができる。
【0015】
また、例えば、ロール状の繊維クロスからバッチ式等の方法で加熱処理によってサイズ剤を除去する際に、ロール内部に酸素がいきわたらないおそれがある、しかし、本実施形態では、組成物(X)が上記の構成を有するため、酸素が十分に供給されない雰囲気下においても容易に組成物(X)を除去することができる。さらに、繊維の種類によっては、酸素雰囲気下で加熱処理によりサイズ剤を除去しようとすると、繊維が酸化するおそれがある。しかし、本実施形態では、組成物(X)が上記の構成を有するため、例えば、窒素雰囲気下での加熱処理によっても組成物(X)を除去することができる。
【0016】
このように、繊維から組成物(X)を容易に除去することができるため、組成物(X)は繊維の加工時に組成物(X)の除去が必要な場合に適している。また、繊維の加工時には組成物(X)の除去が必要でない場合であっても、例えば繊維のリサイクル時に組成物(X)を容易に除去して、繊維を良好にリサイクルすることが可能である。
【0017】
さらに、組成物(X)は水系のサイズ剤として用いることができるため、環境に優しく、組成物(X)を付着させた繊維は、人体に悪影響を及ぼしにくい。そのため、健康を害するおそれが低いため、組成物(X)をサイズ剤として用いて加工した繊維を安全に使用することができる。
【0018】
なお、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤(A)の不存在下で、他の界面活性剤を存在させて(メタ)アクリル系モノマー(D1)を含むモノマー(D)を乳化重合させて重合反応生成物を得た後に、この重合反応生成物とポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤(A)とを混合して組成物を調製しても、組成物(X)のように繊維から容易に除去可能な組成物を得ることはできない。これは、生成物を合成した後にポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤(A)を混合する場合と、組成物(X)中とでは異なる相互作用がポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤(A)及び重合反応生成物(E)との間に生じるためであると考えられる。
【0019】
しかしながら、発明者らが赤外線吸光法、及び高速液体クロマトグラフィ法、ゲル浸透クロマトグラフィ、核磁気共鳴分光法で両者を分析しても、両者の分析結果の間に有意な差異は認められなかった。そのため、組成物(X)の構造、又は特性を文言上特定することはできない。
【0020】
組成物(X)が含有する成分の詳細について、以下に説明する。
【0021】
組成物(X)は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤(A)(以下、「界面活性剤(A)」ともいう)、水(B)、及び重合反応生成物(E)を含有する。
【0022】
界面活性剤(A)は、組成物(X)に含有される必須成分であるとともに、重合反応生成物(E)を合成する際に使用される必須成分である。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤(A)とは、親水基として一種類以上のポリオキシアルキレン基を含有し、疎水基として炭素元素を1~36個含む炭化水素を主とした少なくとも一種類のアルキル基又は分岐アルキル基を含有する、ポリオキシアルキレン付加型ノニオン性界面活性剤を意味する。疎水基のアルキル基及び分岐アルキル基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0023】
界面活性剤(A)は、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンエイコシルエーテル、ポリオキシプロピレンヘキシルエーテル、ポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、及びポリオキシプロピレンエイコシルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;並びにポリオキシエチレン2エチルヘキシルエーテル及びポリオキシプロピレン2エチルヘキシルエーテル等のポリオキシアルキレン分岐アルキルエーテルからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。
【0024】
この場合、組成物(X)は、良好な焼却性を有するため、組成物(X)をサイズ剤として繊維に塗布した際に、組成物(X)を低温での加熱処理によって繊維から容易に除去することができる。なお、焼却性とは、酸素の存在下及び不存在下のいずれの雰囲気下でも燃焼により除去されやすいことを意味する。界面活性剤(A)は、上記の成分のうちの一種のみを単独で含んでもよく、二種以上を含んでいてもよい。
【0025】
界面活性剤(A)は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのブロック共重合体を含むことがより好ましい。この場合、組成物(X)はより優れた焼却性を有するため、組成物(X)の除去が更に容易になる。ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのブロック共重合体の例は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンのブロック共重合体、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンのブロック共重合体、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンのブロック共重合体を含む。ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのブロック共重合体は、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体の片末端又は両末端がアルキル及び分岐アルキル等の脂肪族官能基とエーテルとにより結合される。脂肪族官能基の例は、ヘキシル、オクチル、ノニル、ラウリル、ステアリル、及びエイコシル等の炭素原子数が6~20のアルキル基を含む。上記の化合物以外に、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのブロック共重合体に適し、乳化重合反応を阻害しない化合物があれば、この化合物もポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのブロック共重合体に含ませることができる。これらのうち、1種又は2種以上の化合物をポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのブロック共重合体として用いることができる。
【0026】
組成物(X)は、界面活性剤(A)のみを含有してもよく、界面活性剤(A)と界面活性剤(A)以外の界面活性剤との両方を含有してもよい。すなわち、組成物(X)を合成する際には、界面活性剤(A)のみを使用してもよく、界面活性剤(A)と界面活性剤(A)以外の界面活性剤との両方を使用してもよい。
【0027】
界面活性剤(A)以外の界面活性剤の例は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び半極性界面活性剤を含む。
【0028】
アニオン性界面活性剤の例は、高級脂肪酸塩型界面活性剤、スルホン酸塩型界面活性剤、硫酸エステル塩型界面活性剤、及びアルキルリン酸エステル塩型界面活性剤を含む。
【0029】
高級脂肪酸塩型界面活性剤の例は、ラウリン酸カリウム、ラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシンナトリウム、N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、及びN-ラウロイルメチル-β-アラニントリエタノールアミン等のC12~C18の飽和又は不飽和脂肪酸塩;ヤシ油脂肪酸塩、硬化ヤシ油脂肪酸塩、パーム油脂肪酸塩、硬化パーム油脂肪酸塩、牛脂脂肪酸塩、及び硬化牛脂脂肪酸塩等の脂肪酸塩;N-アシルサルコシン塩;並びにN-アシルグルタミン酸塩を含む。
【0030】
スルホン酸塩型界面活性剤の例は、N-ココイルメチルタウリンナトリウム等のN-アシルアミノスルホン酸塩;及びポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のポリオキシエチレンスルホコハク酸塩を含む。
【0031】
硫酸エステル塩型界面活性剤の例は、高級アルキル硫酸塩、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等を含む。
【0032】
アルキルリン酸エステル塩型界面活性剤の例は、モノラウリルリン酸トリエタノールアミン、及びモノラウリルリン酸ジカリウムを含む。
【0033】
上記の化合物のうち、1種又は2種以上の化合物をアニオン性界面活性剤として用いることができる。また、このような化合物以外に、アニオン性界面活性剤に適し、乳化重合反応を阻害しない化合物があれば、この化合物もアニオン性界面活性剤に含ませることができる。
【0034】
カチオン性界面活性剤の例は、セトリモニウムクロリド、ステアリルトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムメトサルフェート、ベヘンアミドプロピルトリモニウムメトサルフェート、塩化ステアラミドプロピルトリモニウム、塩化アラキドトリモニウム、塩化ジステアリルジモニウム、塩化ジセチルジモニウム、塩化トリセチルモニウム、オレアミドプロピルジメチルアミン、リノレアミドプロピルジメチルアミン、イソステアラミドプロピルジメチルアミン、オレイルヒドロキシエチルイミダゾリン、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ベヘンアミドプロピルジメチルアミン、ベヘンアミドプロピルジエチルアミン、ベヘンアミドエチルジエチルアミン、ベヘンアミドエチルジメチルアミン、アラキドアミドプロピルジメチルアミン、アラキドアミドプロピルジエチルアミン、アラキドアミドエチルジエチルアミン、及びアラキドアミドエチルジメチルアミンを含む。
【0035】
上記の化合物のうち、1種又は2種以上の化合物をカチオン性界面活性剤として用いることができる。また、このような化合物以外に、カチオン性界面活性剤に適し、乳化重合反応を阻害しない化合物があれば、この化合物もカチオン性界面活性剤に含ませることができる。
【0036】
ノニオン性界面活性剤の例は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテル、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシアルキレン付加型ノニオン性界面活性剤;ラウリン酸モノエタノールアミド等のモノエタノールアミド型ノニオン性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等のジエタノールアミド型ノニオン性界面活性剤;N-メチルラウリルグルカミド及びN-メチルアルキルグルカミド等のアルキルサッカライド系ノニオン性界面活性剤;糖アミド系ノニオン性界面活性剤;モノイソステアレン酸ソルビタン及びモノオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル系ノニオン性界面活性剤;ラウリン酸ショ糖エステル、ショ糖モノステアレート、及びPOPショ糖モノラウレート等のショ糖脂肪酸エステル系ノニオン性界面活性剤;セスキオレイン酸グリセリン及びポリオキシエチレングリセリルモノステアレート等のモノグリセリン脂肪酸エステル系ノニオン性界面活性剤;モノイソステアリン酸ポリグリセリル等の脂肪酸エステル型ポリグリセリン系ノニオン性界面活性剤;並びにポリグリセリル・ポリオキシブチレンステアリルエーテル等のアルキルエーテル型ポリグリセリン系ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
上記の化合物のうち、1種又は2種以上の化合物をノニオン性界面活性剤として用いることができる。また、このような化合物以外に、ノニオン性界面活性剤に適し、乳化重合反応を阻害しない化合物があれば、この化合物もノニオン性界面活性剤に含ませることができる。
【0038】
両性界面活性剤の例は、ヤシ油アルキル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン型(アミドアミン型)、アミドアミノ酸塩、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のカルボベタイン型(アルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型)等のカルボン酸型両性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸ジメチルスルホプロピルベタイン等のスルホベタイン型(アルキルスルホベタイン型、アルキルヒドロキシスルホベタイン型)両性界面活性剤;ラウリルヒドロキシホスホベタイン等のホスホベタイン型両性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアシル第3級アミンオキサイド;並びにラウリルジメチルホスフォンオキサイド等のアシル第3級ホスフォンオキサイドを含む。
【0039】
上記の化合物のうち、1種又は2種以上の化合物を両性界面活性剤として用いることができる。また、このような化合物以外に、両性界面活性剤に適し、乳化重合反応を阻害しない化合物があれば、この化合物も両性界面活性剤に含ませることができる。
【0040】
半極性界面活性剤の例は、ラウリルトリメチルアミンオキシド、及びラウリン酸アミドプロピルアミンオキシドを含む。
【0041】
上記の化合物のうち、1種又は2種以上の化合物を半極性界面活性剤として用いることができる。また、このような化合物以外に、半極性界面活性剤に適し、乳化重合反応を阻害しない化合物があれば、この化合物も半極性界面活性剤に含ませることができる。
【0042】
界面活性剤(A)のHLB値は7以上であることが好ましい。この場合、乳化重合の際に系中の乳化状態が良好になる。界面活性剤のHLB値は9以上であることがより好ましい。また、界面活性剤(A)のHLB値は13以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)の焼却性がより向上する。界面活性剤(A)のHLB値は11以下であることがより好ましい。
【0043】
水(B)は、組成物(X)に含有される必須成分であるとともに、重合反応生成物(E)を合成する際に使用される必須成分である。水(B)は、溶媒として組成物(X)に含有される。すなわち、水(B)は、重合反応生成物(E)の合成の際に、溶媒として使用される。水(B)は、常水であってもよく、精製水であってもよい。
【0044】
組成物(X)は、溶媒として水(B)以外の成分を含有してもよい。すなわち、重合反応生成物(E)を合成する際に、水(B)と水(B)以外の溶媒との混合溶媒を用いてもよい。水(B)以外の溶媒として、例えば、親水性有機溶媒を用いてもよい。親水性有機溶媒とは、水と容易に混和する、又は水に容易に溶解する有機溶媒を意味する。親水性有機溶媒の例は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、及び2-プロパノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコール等のグリコール系溶剤;メチルグリコール、メチルジグリコール、メチルトリグリコール、イソプロピルジグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、イソブチルグリコール、イソブチルジグリコール、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、メチルプロピレングリコール、メチルプロピレンジグリコール、メチルプロピレントリグリコール、プロピルプロピレングリコール、及びプロピルプロピレンジグリコール等のグリコールエーテル系溶剤;N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、及びε-カプロラクタム等のラクタム系溶剤;並びにホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、及び3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等のアミド系溶剤を含む。ただし、安全性及び環境への影響を低減する観点から、溶媒として水(B)のみを用いることが好ましい。
【0045】
組成物(X)は、重合反応生成物(E)を含有する。重合反応生成物(E)は、界面活性剤(A)、水(B)、及び重合開始剤(C)の存在下で、モノマー(D)を乳化重合させることで生成する生成物である。重合反応生成物(E)を重合させる際に用いられる界面活性剤(A)及び水(B)については、上記の通りである。
【0046】
重合開始剤(C)は、重合反応生成物(E)の合成の際に、モノマー(D)を乳化重合させるために重合開始剤として使用される必須成分である。
【0047】
重合開始剤(C)は、過硫酸アンモニウム(C1)を含む。重合開始剤(C)が、過硫酸アンモニウム(C1)を含むことで、組成物(X)は、良好な焼却性を有するため、組成物(X)をサイズ剤として繊維に塗布した際に、組成物(X)を低温での加熱処理によって繊維から容易に除去することができる。
【0048】
重合開始剤(C)に対する過硫酸アンモニウム(C1)の含有量は、50質量%以上であることが好ましい。この場合、組成物(X)の焼却性をより向上させることができる。重合開始剤(C)に対する過硫酸アンモニウム(C1)の含有量の上限は特に限定されないが、例えば100質量%であってよい。
【0049】
重合開始剤(C)は、過硫酸アンモニウム(C1)に加えて、過硫酸アンモニウム(C1)以外の重合開始剤を含んでもよい。過硫酸アンモニウム(C1)以外の重合開始剤の例は、水溶性重合開始剤及び油溶性重合開始剤を含む。水溶性重合開始剤の例は、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩・二水和物、2,2-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、及び4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)を含む。油溶性重合開始剤の例は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、ベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、及びt-ブチルパーオキサイドを含む。
【0050】
上述のように、重合反応生成物(E)は、界面活性剤(A)、水(B)、及び重合開始剤(C)の存在下で、モノマー(D)を乳化重合させることで生成する生成物である。すなわち、モノマー(D)は、重合反応生成物(E)の主成分である。モノマー(D)は、エチレン性二重結合を有する。
【0051】
モノマー(D)は、(メタ)アクリル系モノマー(D1)を含む。モノマー(D)が(メタ)アクリル系モノマー(D1)を含むことで、組成物(X)は良好な焼却性を有する。これは、モノマー(D)が(メタ)アクリル系モノマー(D1)を含むことで、重合反応生成物(E)が比較的低温で解重合を起こしやすくなるためであると考えられる。モノマー(D)に対する(メタ)アクリル系モノマー(D1)の量は、45質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。モノマー(D)に対する(メタ)アクリル系モノマー(D1)の量の上限は特に限定されず、例えば100質量%であってよい。
【0052】
(メタ)アクリル系モノマー(D1)の例は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸、(メタ)アクリル酸2-(ホスホノオキシ)エチル等のリン酸基含有不飽和単量体、2―(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n=2)モノアクリレート、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のアニオン性不飽和単量体;(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3-(ジメチルアミノ)プロピル等のアミノ基含有不飽和単量体;(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性不飽和単量体;N-メタクリロイルエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン、4-{[3-(メタクリルアミド)プロピル](ジメチル)アンモニオ}ブタン-1-スルホナート等の両性不飽和単量体;アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、及びN-t-オクチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、及び(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸のエステル類;(メタ)アクリル酸グリセリル;(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸エトキシエチル及び(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル類;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル類の水酸基末端がアルキルエーテル化されたもの;ポリエチレングリコール(m=5)-ポリプロピレングリコール(n=2)モノメタクリレート;ブレンマー70PEP-350B(日油株式会社製)、プロピレングリコールポリブチレングリコール(n=6)モノメタクリレート;ブレンマー10PPB-500B(日油株式会社製)、オクトキシポリエチレングリコール(m=8)ポリプロピレングリコール(n=6)モノメタクリレート;ブレンマー50POEP-800B(日油株式会社製)、オクトキシポリエチレングリコール(m=8)ポリプロピレングリコール(n=6)モノアクリレート;ブレンマー50AOEP-800B(日油株式会社製)等のオキシエチレン(エチレンオキサイドともいう)、オキシプロピレン(プロピレンオキサイドともいう)及びオキシブチレン(ブチレンオキサイドともいう)の構成単位からなるブロックコポリマーが側鎖に結合した構造を有しているもの;ポリ(エチレングリコール(m=3.5)-プロピレングリコール(n=2.5))モノメタクリレート;ブレンマー50PEP-300(日油株式会社製)、ポリ(エチレングリコール(m=5)-テトラメチレングリコール(n=2))モノメタクリレート;ブレンマー55PET-400(日油株式会社製)、ポリ(エチレングリコール(m=6)-テトラメチレングリコール(n=10))モノメタクリレート;ブレンマー30PET-800(日油株式会社製)、ポリ(エチレングリコール(m=10)-テトラメチレングリコール(n=5))モノメタクリレート;ブレンマー55PET-800(日油株式会社製)、ポリ(プロピレングリコール(m=4)-テトラメチレングリコール(n=8))モノメタクリレート;ブレンマー30PPT-800(日油株式会社製)、ポリ(プロピレングリコール(m=7)-テトラメチレングリコール(n=6))モノメタクリレート;ブレンマー50PPT-800(日油株式会社製)、ポリ(プロピレングリコール(m=10)-テトラメチレングリコール(n=3))モノメタクリレート;並びにブレンマー70PPT-800(日油株式会社製)等のオキシエチレン(エチレンオキサイドともいう)、オキシプロピレン(プロピレンオキサイドともいう)及びオキシブチレン(ブチレンオキサイドともいう)の構成単位からなるランダムコポリマーが側鎖に結合した構造を有しているもの等の単官能不飽和単量体を含む。これらのうち、(メタ)アクリル系モノマー(D1)として1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
(メタ)アクリル系モノマー(D1)は、メタクリル酸2-エチルヘキシルを含むことが好ましい。この場合、組成物(X)はより優れた焼却性を有するため、組成物(X)は、低温での加熱処理によってより容易に除去可能である。さらに、重合反応生成物(E)を乳化重合させて合成する際に、モノマー(D)の凝集を起こりにくくすることができる。また、組成物(X)の皮膜のフレキシブル性を向上させることができるため、組成物(X)をサイズ剤として繊維に付着させた際の繊維の屈曲に対する靭性が向上し、繊維の加工時に繊維が折れにくくなる。
【0054】
(メタ)アクリル系モノマー(D1)がメタクリル酸2-エチルヘキシルを含む場合、(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対するメタクリル酸2-エチルヘキシルの含有量は、40質量%以上であることが好ましい。メタクリル酸2-エチルヘキシルの含有量が40質量%以上であることで、重合反応生成物(E)を合成する際に、モノマー(D)の乳化状態が向上し、重合反応生成物(E)を良好に合成することができる。また、組成物(X)の皮膜のフレキシブル性をより向上させることができる。(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対するメタクリル酸2-エチルヘキシルの含有量は、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対するメタクリル酸2-エチルヘキシルの含有量の上限は特に限定されないが、例えば100質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることが好ましい。
【0055】
(メタ)アクリル系モノマー(D1)は、メタクリル酸イソブチルを更に含むことが好ましい。すなわち、(メタ)アクリル系モノマー(D1)は、メタクリル酸2-エチルヘキシルとメタクリル酸イソブチルとの両方を含むことが好ましい。この場合、組成物(X)の焼却性を更に向上させることができる。
【0056】
(メタ)アクリル系モノマー(D1)がメタクリル酸イソブチルを更に含む場合、(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対するメタクリル酸イソブチルの含有量は、60質量%以下であることが好ましい。アクリル系モノマー(D1)に対するメタクリル酸イソブチルの含有量が60質量%以下であることで、組成物(X)の焼却性を更に向上させることができる。(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対するメタクリル酸イソブチルの含有量は、50質量%以下であることがより好ましい。(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対するメタクリル酸イソブチルの含有量の下限は特に限定されず、例えば0質量%であってよい。
【0057】
(メタ)アクリル系モノマー(D1)がメタクリル酸2-エチルヘキシルとメタクリル酸イソブチルとの両方を含む場合、(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対するメタクリル酸2-エチルヘキシルとメタクリル酸イソブチルとの合計量は、60質量%以上であることが好ましい。この場合、組成物(X)の焼却性が更に向上するため、組成部(X)を低温での加熱処理によって繊維から容易に除去しやすくなる。(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対するメタクリル酸2-エチルヘキシルとメタクリル酸イソブチルとの合計量は、80質量%以上であることがより好ましい。この場合、組成物(X)の焼却性が特に向上するため、組成物(X)を繊維から除去する際の加熱処理の時間を短縮することができる。(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対するメタクリル酸2-エチルヘキシルとメタクリル酸イソブチルとの合計量の上限は特に限定されないが、例えば100質量%であってよい。
【0058】
モノマー(D)は、(メタ)アクリル系モノマー(D1)以外のエチレン性二重結合を有するモノマーを含んでよい。(メタ)アクリル系モノマー(D1)以外のエチレン性二重結合を有するモノマーの例は、ビニル系モノマーを含む。ビニル系モノマーの例はスチレン;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル:ビニルピロリドン;ビニルピリジン;ビニルスルホン酸;及びスチレンスルホン酸を含む。モノマー(D)に対する(メタ)アクリル系モノマー(D1)以外のモノマーの量は、10質量%未満であることが好ましい。
【0059】
重合反応生成物(E)は、具体的には、以下のようにして合成することができる。まず、界面活性剤(A)と、水(B)と、重合開始剤(C)と、モノマー(D)とを混合して混合液を調製する。そして、混合液中のモノマー(D)を乳化重合させることで、重合反応生成物(E)を合成できる。乳化重合の前に、混合液中の溶存酸素を低減することが好ましい。そのためには、混合液に、例えば窒素ガスなどの不活性ガスでバブリングさせることが好ましい。モノマー(D)を配合する前の混合液にバブリングしてから、モノマー(D)を配合して混合液を調製してもよい。
【0060】
混合物中の界面活性剤(A)の含有量は、(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対して、5質量%以上70質量%以下であることが好ましい。界面活性剤(A)の含有量がこの範囲内であることで、組成物(X)をサイズ剤として繊維に塗布した場合に、繊維はより優れた収束性を有しうる。界面活性剤(A)の含有量は、(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対して、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。この場合、組成物(X)は、均一で連続性の高い皮膜を形成しうる。そのため、組成物(X)を繊維に塗布した際に、繊維は特に優れた収束性を有するため、繊維ストランドのフィラメント断裂を抑制し、耐毛羽性を向上することができる。
【0061】
混合物中の水(B)の含有量は、特に限定されず、組成物(X)の安定性、及び組成物(X)から形成される皮膜の均一性などを考慮して適宜設定される。混合物中の水(B)の含有量は、例えば、(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対して、100質量%以上2000質量%以下であることが好ましい。この場合、混合物中の分散性が均一に保たれやすくなるとともに、組成物(X)中での重合反応生成物(E)の分散性を向上することができる。混合物中の水(B)の含有量は、(メタ)アクリル系モノマー(D)に対して、100質量%以上1000質量%以下であることがより好ましい。なお、組成物(X)は、混合物中に含まれる水(B)、すなわち重合反応生成物(E)を生成する際に用いられた水(B)以外の溶媒を必要に応じて更に含有してもよい。
【0062】
混合物中の重合開始剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対して、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。重合開始剤(C)の含有量がこの範囲内であることで、組成物(X)はより優れた焼却性を有しうるため、組成物(X)の除去をより容易にすることができる。重合開始剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル系モノマー(D1)に対して、0.05質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
【0063】
なお、混合液には、乳化重合反応を阻害しない限り、添加剤等を含有させてもよい。添加剤の例は、連鎖移動剤、pH調整剤、分散安定剤、平滑剤、可塑剤、及び消泡剤を含む。
【0064】
連鎖移動剤の例は、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタンチオグリコール酸、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、グリシジルメルカプタン、チオグリセロール、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、及び2,3-ジメルカプト-1-プロパノール等のメルカプタン類;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、及びベンズアルデヒド等のアルデヒド類;メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノール等のアルコール類を含む。上記の化合物以外に、連鎖移動剤に適し、再重合可能なドーマント種が得られる化合物であれば、この化合物も連鎖移動剤に含ませることができる。そして、これらのうち、1種又は2種以上の化合物を連鎖移動剤として用いることができる。
【0065】
pH調整剤の例は、炭酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、及びギ酸アンモニウムを含む。上記の化合物以外に、pH調整剤に適し、乳化重合反応を阻害しない化合物があれば、この化合物も連鎖移動剤に含ませることができる。そして、これらのうち、1種又は2種以上の化合物をpH調整剤として用いることができる。
【0066】
分散安定剤の例は、コーン、タピオカ、小麦粉、甘藷、及び馬鈴薯等を由来とするデンプン、またそれらを用いて変性したエーテル化デンプン並びにエーテル化ハイアミロースデンプン、カルボキシメチルセルロース、ブチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールーポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコールーポリプロピレングリコールーポリエチレングリコールブロック共重合体、及びポリプロピレングリコールーポリエチレングリコールーポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリビニルピロリドンを含む。上記の化合物以外に、分散安定剤に適し、乳化重合反応を阻害しない化合物があれば、この化合物も連鎖移動剤に含ませることができる。そして、これらのうち、1種又は2種以上の化合物を分散安定剤として用いることができる。
【0067】
平滑剤の例は、オレイルオレート、ステアリルオレート、ラウリルオレート、オレイルステアレート、オレイルラウレート、及びオレイルパルミテート等のエステル系平滑剤;パラフィン、イソパラフィン、及び環状パラフィン等の炭化水素;ステアリン酸及びパルミチン酸等のカルボニル基を有する炭化水素を含む。上記の化合物以外に、平滑剤に適し、乳化重合反応を阻害しない化合物があれば、この化合物も平滑剤に含ませることができる。そして、これらのうち、1種又は2種以上の化合物を平滑剤として用いることができる。
【0068】
可塑剤の例は、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、及び安息香酸等の芳香族カルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、及びクエン酸等の脂肪族カルボン酸;多価カルボン酸;リン酸等の酸と、オクタノール及びノナノール等に代表される炭素数が6以上の高級混合アルコールとのエステル化合物を含む。より具体的には、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、及びフタル酸ジブチル等のフタル酸エステル;アジピン酸ジオクチル及びアジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル;トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル;エポキシ化大豆油及びエポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油等が挙げられる。上記の化合物以外に、可塑剤に適し、乳化重合反応を阻害しない化合物があれば、この化合物も可塑剤に含ませることができる。そして、これらのうち、1種又は2種以上の化合物を可塑剤として用いることができる。
【0069】
また消泡剤についても、乳化重合反応を阻害しない化合物があれば、この化合物も消泡剤に含ませることができる。そして、これらのうち、1種又は2種以上の化合物を消泡剤として用いることができる。
【0070】
乳化重合は混合液を加熱することで進行させることができる。例えば、水(B)と重合開始剤(C)とを混合した後に、界面活性剤(A)とモノマー(D)とを滴下し、加熱して乳化重合を進行させてもよい。加熱温度は、例えば45~95℃の範囲内、加熱時間は例えば3~24時間の範囲内である。反応時の条件は、本実施形態に係る重合反応生成物(E)の作用を阻害しない範囲で適宜設定される。これにより、重合反応生成物(E)、界面活性剤(A)、及び水(B)を含有する組成物(X)を得ることができる。
【0071】
組成物(X)は、界面活性剤(A)、水(B)及び重合反応生成物(E)以外の成分を含有していてもよい。例えば、組成物(X)には、重合反応生成物(E)が生成された後に、溶媒や添加剤等を更に配合してもよい。添加剤の例は、上記に挙げたpH調整剤、分散安定剤、平滑剤、可塑剤、消泡剤に加え、湿潤剤、チキソ付与剤、レベリング剤、防黴剤、防腐剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、帯電防止剤、その他各種添加剤を含む。
【0072】
上記のようにして合成された組成物(X)中では、重合反応生成物(E)は粒子状であり、組成物(X)中に重合反応生成物(E)が分散している。
【0073】
重合反応生成物(E)の平均粒径は、100nm以上300nm以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)の安定性がより向上するとともに、組成物(X)中での重合反応生成物(E)の分散性を高めることができる。重合反応生成物(E)の平均粒径は、100nm以上250nm以下であることがより好ましく、100nm以上200nm以下であることが特に好ましい。
【0074】
重合反応生成物(E)の重量平均分子量は100000以上1000000以下の範囲内であることが好ましい。この場合、組成物(X)中での重合反応生成物(E)の分散性が更に向上しうるため、組成物(X)は、より保存安定性に優れる。また、組成物(X)から良好な強度を有する皮膜が得られる。重合反応生成物(E)の重量平均分子量は、100000以上500000以下の範囲内であることがより好ましい。
【0075】
なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)による測定結果に基づいて導出される値である。ゲル浸透クロマトグラフィでの分子量測定は、例えば、次の条件で行うことができる。
GPC装置:株式会社島津製作所製のProminence
カラム:SHODEX KF-800P,KF-005,KF-003,KF-001(4本直列して使用)
移動相:テトラヒドロフラン
流量:1mL/分
カラムオーブン温度:40℃
検出器:RI
分子量換算:標準ポリスチレン。
【0076】
重合反応生成物(E)のガラス転移温度は、-40℃以上50℃以下の範囲内であることが好ましい。この場合、組成物(X)をサイズ剤として繊維に塗布した際に、繊維同士がブロッキングしにくくなり、繊維の収束性をより向上させることができる。また、組成物(X)から形成される皮膜のフレキシブル性を向上させることができるため、組成物(X)をサイズ剤として繊維に付着させた際の繊維の屈曲に対する靭性が向上し、繊維の加工時に繊維が折れにくくなる。重合反応生成物(E)のガラス転移温度は、-20℃以上25℃以下の範囲内であることが好ましい。
【0077】
なお、ガラス転移温度(Tg)は、モノマー(D)の組成割合から理論的に計算される値であり、下記のFoxの式で算出した値である。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
上記Foxの式において、nは1以上の整数であり、モノマー(D)として用いるモノマーの種類を示す。すなわち、n種類のモノマーの重合によって組成物(X)中の重合反応生成物(E)を得た場合の計算式である。W1,W2,・・・Wnは、n種類のモノマーの各質量分率を示し、Tg1,Tg2,・・・Tgnは、n種類のモノマーの各ガラス転移温度を示す。上記Foxの式におけるガラス転移温度の単位は絶対温度「K」であり、その計算値をセルシウス温度「℃」に変換した値を重合反応生成物(E)のガラス転移温度とする。
【0078】
組成物(X)は上記のような構成を有するため、繊維に付着させた場合に良好な収束性を有すると共に、繊維から容易に除去可能である。組成物(X)を除去する際の加熱処理の条件はとくに限定されないが、例えば酸素雰囲気下及び窒素雰囲気下で除去することができる。また、組成物(X)は、350℃以下の加熱処理によって除去することができ、330℃以下の加熱処理によって除去することもできる。組成物(X)を除去する際の加熱時間は、例えば5時間以下であってよく、加熱温度によっては、30分以下であってもよい。このように、組成物(X)は、低温で短時間の加熱処理によって除去することができるため、繊維を劣化させることなく容易に除去することが可能である。
【0079】
組成物(X)をサイズ剤として塗布する繊維の種類は特に限定されない。組成物(X)は、例えば、無機繊維用サイズ剤として好適に用いることができる。無機繊維の例は、ガラス繊維、炭素繊維、シリコンカーバイド繊維、鉱物繊維、バサルト繊維、アルミナ繊維、及び金属繊維を含む。組成物(X)は、ガラス繊維用又は炭素繊維用のサイズ剤として特に有用に用いることができる。
【0080】
上述のように、組成物(X)は、繊維用サイズ剤として好適に用いることができるため、組成物(X)を無機繊維に塗布して、無機繊維と、無機繊維に付着する組成物(X)と、を含む繊維材を得ることができる。繊維材を製造する際に用いられる無機繊維は、ガラス繊維と炭素繊維とのうち少なくとも一方を含むことが好ましい。このようにして得られた繊維材は、加工時の必要に応じて組成物(X)を繊維から容易に除去できると共に、加工時には組成物(X)の除去が必要とされない場合であっても、リサイクル時に組成物(X)を繊維から容易に除去できるため、繊維材として有用であり、環境にも優しい。
【実施例】
【0081】
以下、本発明の具体的な実施例を示す。但し、この実施例に本発明は制限されず、種々の形態に設計変更が可能である。
【0082】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0083】
(1)繊維用サイズ剤組成物の合成
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、75℃に加熱した表中の水(B)260質量部を加えた。次いで、フラスコ内に、表中の「(C)」の欄に示す成分を加えた後、表中の「組成」欄の(B)及び(C)以外の欄に示す成分をフラスコ内に滴下した。滴下終了後、6時間攪拌し、重合反応させた。これにより、重合反応生成物を含有する各実施例及び比較例1~9の繊維用サイズ剤組成物を得た。
【0084】
なお、表に示す成分の詳細は以下の通りである。
<モノマー>
・2-EHMA:メタクリル酸2-エチルヘキシル
・iBMA:メタクリル酸イソブチル
・MMA:メタクリル酸メチル
・EMA:メタクリル酸エチル
・PMA:メタクリル酸プロピル
・iPMA:メタクリル酸イソプロピル
・BMA:メタクリル酸ブチル
・tBMA:メタクリル酸ターシャリーブチル
・SLMA:メタクリル酸アルキル(n=12,13)
・HPMA:メタクリル酸ヒドロキシプロピル
・PP-500:ポリプロピレングリコールモノメタクリル酸エステル、日油株式会社製、品番ブレンマーPP-500
・MAa:メタクリル
・MA:アクリル酸メチル
・BA:アクリル酸ブチル
・iBA:アクリル酸イソブチル
・HA:アクリル酸2エチルヘキシル
・Aa:アクリル酸
・ST:スチレン
<界面活性剤>
・ノイゲンXL-160:ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、第一工業製薬株式会社製、HLB値16.3
・ノイゲンXL-400:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、第一工業製薬株式会社製、HLB値18.4
・ノイゲンXL-40:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、第一工業製薬株式会社製、HLB値10.5
・ノイゲンTDS-80:ポリオキシエチレントリデシルエーテル、第一工業製薬株式会社製、HLB値13.3
・ノニオンHT-510:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、日油株式会社製、HLB値10
・ノニオンHT-505:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、日油株式会社製、HLB値5
・NIKKOL PBC-31:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(1EO,4PO)、日光ケミカルズ株式会社製、HLB値9.5
・NIKKOL PBC-33:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(10EO,4PO)、日光ケミカルズ株式会社製、HLB値10.5
・NIKKOL PBC-34:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(20EO,4PO)、日光ケミカルズ株式会社製、HLB値16.5
・NIKKOL PBC-44:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(20EO,8PO)、日光ケミカルズ株式会社製、HLB値12.5
・モノゲンY-100:ドデシル硫酸ナトリウム、第一工業製薬株式会社製
・レボン2000:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、三洋化成工業株式会社製
・ノイゲンEA-87:ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、第一工業製薬株式会社製、HLB値10.6
<重合開始剤>
・APS:過硫酸アンモニウム
・VA-057:2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]、富士フィルム和光純薬株式会社製
・VA-086:2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロパンアミド]、富士フィルム和光純薬株式会社製
・V-50:2,2’-アゾビス[2-アミジンプロパン]二塩酸塩、富士フィルム和光純薬株式会社製
【0085】
(2)テストピースの作製
各実施例及び比較例1~9の繊維用サイズ剤組成物に水を加えて、濃度を5質量%に調整した。この5質量%濃度の繊維用サイズ剤組成物溶液を、42dTexのガラス繊維の表面に、樹脂成分の付着率が3質量%となるように塗布した。続いて、株式会社梶製作所製のミニサイザーを用いて、ローラータッチにて40m/分の糸速度で加工を行った。その後、チャンバー長4mのチャンバーを用いて、ガラス繊維を120℃で熱風乾燥させた。
【0086】
比較例10及び11については、それぞれポリビニルアルコール及びデンプンを繊維用サイズ剤組成物溶液の代わりに用いた。
【0087】
(3)評価試験
(3-1)ガラス転移温度
上記(1)で合成した各実施例及び比較例1~9の繊維用サイズ剤組成物中の重合反応生成物のガラス転移温度(Tg)を、上述のFoxの式を用いて計算した。その値を後掲の表に示す。
【0088】
(3-2)重量平均分子量
上記(1)で合成した各実施例及び比較例1~9の繊維用サイズ剤組成物中の重合反応生成物の重量平均分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィ測定装置(株式会社島津製作所製のProminence)を用いて、上述した測定条件で測定した結果から算出した。その結果を後掲の表に示す。
【0089】
(3-3)粒径
上記(1)で合成した各実施例及び比較例1~9の繊維用サイズ剤組成物中の重合反応生成物の粒径を、レーザー解析・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3000II)を用いて測定した粒度分布の測定値から体積基準のメディアン径として算出した。その結果を後掲の表に示す。
【0090】
(3-4)安定性
上記(1)で合成した各実施例及び比較例1~9の繊維用サイズ剤組成物を合成直後に濾過した。また、上記(1)で合成した各実施例及び比較例の繊維用サイズ剤組成物を1週間常温で放置した後、350メッシュ相当の濾材を用いて繊維用サイズ剤組成物濾過し、安定性を以下の基準で評価した。その結果を後掲の表に示す。比較例10及び11については、ポリビニルアルコール及びデンプンを濾過してから1週間常温で放置した後、350メッシュ相当の濾材を用いて再度濾過し、安定性を以下の基準で評価した。
A:繊維用サイズ剤組成物の合成直後の濾過時間と1週間放置後の濾過時間が同等であり、1週間放置後の濾過において濾物が発生しない。
B:繊維用サイズ剤組成物の合成直後の濾過時間よりも1週間放置後の濾過時間が長くなったが、1週間放置後の濾過において濾物は発生しない。
C:繊維用サイズ剤組成物の合成直後の濾過時間よりも1週間放置後の濾過時間が長くなり、1週間放置後の濾過において濾物が発生する。
【0091】
(3-5)フィルム外観
PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60 100μm)上に、上記(1)で合成した各実施例及び比較例1~9の繊維用サイズ剤組成物並びに比較例10及び11のポリビニルアルコール及びデンプンを膜厚200μmになるように塗布し、皮膜を形成した。この皮膜の外観を目視によって観察し、フィルム外観を以下のように評価した。その結果を後掲の表に示す。
A:均一に連続したフィルムが形成される。
B:一部が不均一であるが、連続したフィルムが形成される。
C:不均一で不連続なフィルムが形成される。
D:フィルムが形成されない。
【0092】
(3-6)焼却性
上記(1)で合成した各実施例及び比較例1~9の繊維用サイズ剤組成物並びに比較例10及び11のポリビニルアルコール及びデンプンを、TG-DTA(熱重量-示差熱)測定装置(株式会社リガク社製、Thermoplus EVO2 TG-DTA)を用いて、酸素雰囲気下において330℃で3時間焼却させて焼却率を測定し、焼却性を以下のように評価した。その結果を後掲の表に示す。
A:焼却率が99.5%以上である。
B:焼却率が98.5%以上99.5%未満である。
C:焼却率が97%以上98.5%未満である。
D:焼却率が97%未満である。
比較としてポリビニルアルコールの評価はDである。
【0093】
(3-7)焼却時間
上記(1)で合成した実施例2、30、及び45並びに比較例1及び9の繊維用サイズ剤組成物を、TG-DTA(熱重量-示差熱)測定装置(株式会社リガク社製、Thermoplus EVO2 TG-DTA)を用いて、酸素雰囲気下において5℃/分の速度で30℃から300℃まで昇温し焼却させた。300℃の時点での焼却率を焼却時間の評価として後掲の表に示す。
【0094】
(3-8)フレキシブル性
上記(2)で作製した各実施例及び各比較例のテストピースを直径3cmのボビンに巻き取った際の繊維を目視で観察し、フレキシブル性を以下のように評価した。その結果を後掲の表に示す。
A:繊維をむらなく均一に巻き取ることができる。
B:繊維は、一部のみがボビンに追従しない。
C:繊維は、部分的にボビンに追従せず、繊維がやや折れ曲がる。
D:繊維は、全体的にボビンに追従せず、繊維が折れ曲がる。
比較としてポリビニルアルコールの評価はDである。
【0095】
(3-9)収束性
上記(2)で作製した各実施例及び各比較例のテストピースに対して、2.94Nの張力負荷をかけた状態で、はさみを用いてテストピースの繊維を切断した。切断時の温度は20℃、相対湿度は70%であった。切断面からの解繊距離を測定し、収束性を以下のように評価した。その結果を後掲の表に示す。
A:解繊距離が1.0cm未満である。
B:解繊距離が1.0cm以上1.5cm未満である。
C:解繊距離が1.5cm以上2.0cm未満である。
D:解繊距離が2.0cm以上である。
【0096】
(3-10)耐毛羽性
上記(2)で作製した各実施例及び各比較例のテストピースの繊維10本に対して、4.90Nの張力負荷をかけた状態で、糸摩擦抱合力試験機(インテック株式会社製、TM式抱合力試験機)を用いて、ストローク長5cmで100回しごいた。試験時の温度は20℃、相対湿度は70%であった。試験後の繊維を目視で観察し、耐毛羽性を以下のように評価した。その結果を後掲の表に示す。
A:毛羽が確認されない。
B:毛羽がほとんど確認されない。
C:毛羽が数本確認される。
D:全体的に毛羽が確認される。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】