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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 49/00 20060101AFI20231012BHJP
   F16K 31/122 20060101ALI20231012BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
F16K49/00 A
F16K31/122
F16K27/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019086399
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020183762
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀信
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-121776(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009107(WO,A1)
【文献】特開2012-189165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 49/00
F16K 31/122
F16K 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路が形成される流路ブロックと、
前記流路ブロック側に延伸する円筒状の延伸部が設けられるケースと、前記ケースに摺動可能に収容されるピストンと、前記延伸部の内周面に挿通されるとともに前記ピストンと一体に軸方向に移動するステムと、を有するアクチュエータと、
前記流路ブロックと前記アクチュエータとを接続し、前記アクチュエータに対向する一端部が前記延伸部の外周面に螺合するボンネットと、
前記ボンネットの前記一端部と当接するように前記アクチュエータと前記ボンネットとの間に前記延伸部の前記外周面に螺合して設けられるナットと、
前記ステムの移動によって前記流路を開閉する弁体と
前記ステムの他端に連結されて、前記ボンネットに収容され前記弁体を押さえる弁体押さえと、
前記ボンネットの前記一端部と前記弁体押さえとの間に軸方向に沿って介装されるコイルばねと、を備え、
前記延伸部は、前記ボンネットの前記一端部及び前記ナットの両方に螺合する螺合部と、前記ナットから露出する露出部と、を有し、
前記露出部の軸方向における寸法は、前記螺合部の軸方向における寸法以上であり
前記一端部には、前記コイルばねの一端と当接する一方ばね座が設けられ、
前記弁体押さえには、前記コイルばねの他端と当接する他方ばね座が設けられ、
前記ボンネットは、ねじ螺合によって前記流路ブロックに設けられ、前記流路ブロックに収容される被収容部と、前記流路ブロックから露出する放熱部と、を有し
前記他方ばね座の厚みと前記被収容部の軸方向における寸法との比は、0.5以上1.5以下である、バルブ装置。
【請求項2】
前記露出部の軸方向における寸法と前記螺合部の軸方向における寸法との比は、1.0以上2.0以下である、請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記他方ばね座は、その厚みが前記一方ばね座の厚みよりも大きい、請求項1又は2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記放熱部の軸方向における寸法と前記被収容部の軸方向における寸法との比は、1.8以上3.0以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流体流入流路が形成される弁箱と、流路を開閉するダイヤフラムと、ダイヤフラムを上下移動させるアクチュエータと、アクチュエータのケーシングに着脱可能に取り付けられケーシングとの間に冷却流体を導通させる流体導通空間を形成するジャケットと、を備える流体制御器(バルブ装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-44290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高温で使用する特許文献1に記載の流体制御器では、アクチュエータの昇温を抑制するためのジャケットを用いているため、流体制御器を構成する部品点数が多い。また、ジャケットを設けるためのスペースを別途確保しなければならない。このように、特許文献1に記載の流体制御器では、アクチュエータの昇温を抑制するための構造が複雑であるという問題点があった。
【0005】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、簡素な構造でアクチュエータの昇温を抑制できるバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、流路が形成される流路ブロックと、前記流路ブロック側に延伸する円筒状の延伸部が設けられるケースと、前記ケースに摺動可能に収容されるピストンと、前記延伸部の内周面に挿通されるとともに前記ピストンと一体に軸方向に移動するステムと、を有するアクチュエータと、前記流路ブロックと前記アクチュエータとを接続し、前記アクチュエータに対向する一端部が前記延伸部の外周面に螺合するボンネットと、前記ボンネットの前記一端部と当接するように前記アクチュエータと前記ボンネットとの間に前記延伸部の前記外周面に螺合して設けられるナットと、前記ステムの移動によって前記流路を開閉する弁体と、を備え、前記延伸部は、前記ボンネットの前記一端部及び前記ナットの両方に螺合する螺合部と、前記ナットから露出する露出部と、を有し、前記露出部の軸方向における寸法は、前記螺合部の軸方向における寸法以上である、バルブ装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、簡素な構造でアクチュエータの昇温を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るバルブ装置を示す断面図である。
図2】変形例に係るバルブ装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態(以下、本実施形態と称する)について説明する。本明細書においては、全体を通じて、同一の要素には同一の符号を付する。
【0010】
まず、図1を参照しながら本実施形態に係るバルブ装置1について説明する。図1は、バルブ装置1を示す断面図である。
【0011】
本実施形態に係るバルブ装置1は、半導体の製造に用いられる流体制御装置(図示しない)に設けられる。流体制御装置は、ALD(Atomic Layer Deposition/すなわち、原子層堆積)法によって半導体ウェハ等の基板に所定の薄膜を形成する薄膜生成工程に用いられる。
【0012】
図1に示すように、バルブ装置1は、流路ブロック2、アクチュエータ3、ボンネット4、ナットとしてのロックナット5、弁体としてのダイヤフラム6、弁体押さえとしてのダイヤフラム押さえ7及びコイルばね8を備える。バルブ装置1は、駆動流体としての駆動エアをアクチュエータ3に導入することによりダイヤフラム6の開閉を行うエアオペレートバルブである。
【0013】
流路ブロック2は、流路としての流体流入流路21、流体流出流路22及びボンネット4が収容される凹部23を有する。流路ブロック2は、半導体の製造に用いられるプロセスガスを気化させるためにヒータ(図示しない)によって高温(例えば、100℃から250℃)に加熱されるものである。流体流入流路21の一端(図1の上端)及び流体流出流路22の一端(図1の上端)は、凹部23を介して連通する。流体流入流路21の一端の周縁には、円環状の弁座24が設けられる。
【0014】
ブロック2は、凹部23を形成する周壁231を備える。凹部23には、ボンネット4に螺合する雌ねじ232が形成される。
【0015】
アクチュエータ3は、ボンネット4に収容されたダイヤフラム押さえ7を介してダイヤフラム6を弁座24に押圧又は離間させることにより、流体流入流路21と流体流出流路22とを遮断又は連通させる。アクチュエータ3は、ボンネット4の上方に設けられるケース31と、ケース31に摺動可能に収容されるピストン32と、ピストン32と一体に軸方向(図1の上下方向)に移動するステム33と、を有する。
【0016】
ケース31は、ピストン32を収容するための部材である。ケース31は、上ケースとしての有底円筒状の第1ケース311と、ねじ螺合によって第1ケース311に連結される下ケースとしての第2ケース312と、を有する。第1ケース311と第2ケース312との連結によって形成される収容空間313には、ピストン32が摺動可能に収容される。
【0017】
第1ケース311は、円筒状の周壁311aと、周壁311aの一端(図1の上端)に設けられる円柱状の頂壁311bと、を有する。周壁311aの他端(図1の下端)の内周面には、第2ケース312に螺合する雌ねじ311cが形成される。頂壁311bの中央には、ステム33の軸方向(図1の上下方向)に貫通するステム案内孔311dが形成される。駆動エアは、ステム案内孔311dを介して駆動エア供給制御部(図示しない)からアクチュエータ3に導入される。
【0018】
周壁311aには、雌ねじ311cと干渉しないように径方向に貫通するエア抜き用の貫通孔311e(ここでは、二つ)が形成される。頂壁311bには、ステム案内孔311dと干渉しないように上下方向に貫通するエア抜き用の貫通孔311fが形成される。
【0019】
第2ケース312は、円筒状の周壁312aと、周壁312aの一端(図1の下端)に設けられる円板状の底壁312bと、底壁312bから流体ブロック2側(図1の下側)に延伸する円筒状の延伸部314と、を有する。周壁312aの外周面には、雌ねじ311cに螺合する雄ねじ312cが形成される。底壁312b及び延伸部314には、ステム33が挿通する貫通孔312dが形成される。延伸部314の先端の外周面には、ボンネット4及びロックナット5に螺合する雄ねじ315が設けられる。
【0020】
ピストン32は、上ピストンとしての第1ピストン321と、第1ピストン321よりも図1の下方に位置する下ピストンとしての第2ピストン322と、を有する。本実施形態では、第1ピストン321及び第2ピストン322は、いずれもステム33と一体に形成されるが、これに限定されるものではなく、例えば、いずれもねじ螺合によってステム33に連結されてもよいし、一方がステム33と一体に形成されるとともに他方がねじ螺合によってステム33に連結されてもよい。
【0021】
第1ケース311の内周面には、第1ピストン321と第2ピストン322との間に位置するカウンタプレート34が固定される。カウンタプレート34の中央には、ステム33が挿通する貫通孔が形成される。
【0022】
第2ピストン322と第2ケース312との間には、第1エア導入室35が形成される。第1ピストン321とカウンタプレート34との間には、第2エア導入室36が形成される。
【0023】
ステム33は、その一端(図1の上端)が第1ケース311のステム案内孔311dに挿入される。ステム33には、第1エア導入室35及び第2エア導入室36に駆動エアを導入するための軸方向流路33a、第1径方向流路33b及び第2径方向流路33cが形成される。
【0024】
軸方向流路33aは、ステム案内孔311dに連通する。第1径方向流路33bは、軸方向流路33aの先端(図1の下端)に形成され、軸方向流路33aと第1エア導入室35とを連通する。第2径方向流路33cは、軸方向流路33aの中央付近に形成され、軸方向流路33aと第2エア導入室36とを連通する。
【0025】
第1ピストン321と第1ケース311との間には、第1連通室37が形成される。第1連通室37は、貫通孔311fを介して外部に連通する。第2ピストン322とカウンタプレート34との間には、第2連通室38が形成される。第2連通室38は、貫通孔311eを介して外部に連通する。
【0026】
ステム案内孔311dとステム33の一端との間には、Oリング91が介装される。第1ピストン321と第1ケース311との間には、Oリング92が介装される。カウンタプレート34と第1ケース311との間には、Oリング93が介装される。カウンタプレート34とステム33との間には、Oリング94が介装される。第2ピストン322と第2ケース312との間には、Oリング95が介装される。ステム33と貫通孔312dとの間には、Oリング96が介装される。
【0027】
ボンネット4は、ダイヤフラム押さえ7を収容するための部材である。ボンネット4は、略円筒状の周壁41と、周壁41の一端(図1の上端)に設けられる一端部としての略円板状の頂壁42と、有する。
【0028】
周壁41の外周面には、流体ブロック2の凹部23の雌ねじ232に螺合する雄ねじ411が形成される。これにより、ボンネット4は、雌ねじ232と雄ねじ411とのねじ螺合によって流路ブロック2に設けられる。周壁41の他端(図1の下端)と凹部23の底面との間には、略円環状のスペーサ10が設けられる。スペーサ10の開口には、ダイヤフラム押さえ7の先端(図1の下端)が挿通される。
【0029】
また、周壁41の外周面には、六角レンチに係合可能な六角突出部412が設けられる。六角突出部412は、雄ねじ411のアクチュエータ3側(すなわち、雄ねじ411よりも上方)に位置する。雄ねじ411と六角突出部412との間には、周壁41を貫通するエア抜き用の貫通孔413が形成される。
【0030】
ボンネット4の頂壁42は、アクチュエータ3に対向する。頂壁42の中央には、ステム33が挿通されるように開口421が形成される。開口421の内周面には、第2ケース312の延伸部314の雄ねじ315に螺合する雌ねじ422が形成される。これにより、アクチュエータ3は、雄ねじ315と雌ねじ422との螺合によってボンネット4に設けられる。すなわち、ボンネット4は、流路ブロック2とアクチュエータ3とを接続する。
【0031】
頂壁42には、コイルばね8の一端(図1の上端)と当接する一方ばね座としての円環部423が設けられる。円環部423は、開口421の外周側に設けられる。
【0032】
ロックナット5は、ボンネット4の頂壁42と当接するようにアクチュエータ3とボンネット4との間に設けられる。ロックナット5の内周面には、延伸部314の雄ねじ315に螺合する雌ねじ51が形成される。これにより、ロックナット5をボンネット4に対して締め付けることができる。
【0033】
ダイヤフラム6は、弁座24に離間又は押圧されて流体流入流路21を開閉するための部材である。通常、ダイヤフラム6は、ダイヤフラム押さえ7によって弁座24に押さえられる。
【0034】
ダイヤフラム押さえ7は、ダイヤフラム6を弁座24に押さえるための部材である。ダイヤフラム押さえ7は、ボンネット4に収容されるように、ねじ螺合によってステム33の他端(図1の下端)に連結される。これにより、ダイヤフラム押さえ7は、ピストン32及びステム33と一体に軸方向に移動することができる。
【0035】
ダイヤフラム押さえ7は、ステム33の他端に螺合する略円柱状の本体部71と、本体部71と比較して大径に形成されるとともにコイルばね8の他端(図1の他端)と当接する他方ばね座としての円筒状の鍔部72と、を有する。円環部423と鍔部72との間には、コイルばね8が圧縮状態で介装される。
【0036】
コイルばね8は、本体部71の外周面と周壁41の内周面との間に形成されるばね収容室9に収容される。ばね収容室9は、貫通孔413を介して外部に連通される。コイルばね8は、ダイヤフラム押さえ7を流路ブロック2側(図1の下側)に付勢する圧縮コイルばねである。なお、コイルばね8は、耐熱性に優れる金属製のコイルばねから構成されることが好ましい。
【0037】
次に、バルブ装置1の動作について説明する。
【0038】
駆動エア供給制御部が駆動エアをステム案内孔311dを介してバルブ装置1のアクチュエータ3に供給する場合、駆動エアは、軸方向流路33a及び第1径方向流路33bを経由して第1エア導入室35に導入されるとともに、軸方向流路33a及び第2径方向流路33cを経由して第2エア導入室36に導入される。
【0039】
これにより、第1エア導入室35及び第2エア導入室36の容積が増大するように、ピストン32は、コイルばね8の付勢力に抗してステム33及びダイヤフラム押さえ7と一体に図1の上方に移動する。そして、ダイヤフラム6は、ダイヤフラム押さえ7の上昇によって弁座24から離間する。すなわち、ダイヤフラム6は、ピストン32、ステム33及びダイヤフラム押さえ7の上昇によって流体流入流路21を開放する。このため、気化されたプロセスガス等の流体は、流体流入流路21から流体流入流路21と弁座24との間に形成される隙間を経由して流体流出流路22に供給される。
【0040】
一方、駆動エア供給制御部が駆動エアをステム案内孔311dを介してバルブ装置1のアクチュエータ3に供給しない場合、ダイヤフラム押さえ7は、コイルばね8の付勢力によってピストン32及びステム33と一体に図1の下方に移動する。そして、ダイヤフラム6は、ダイヤフラム押さえ7の移動によって弁座24に押圧される。すなわち、ダイヤフラム6は、ピストン32、ステム33及びダイヤフラム押さえ7の移動によって流体流入流路21を閉塞する。このため、気化されたプロセスガス等の流体は、流体流入流路21から流体流出流路22に供給されない。
【0041】
第1エア導入室35及び第2エア導入室36の容積は、ピストン32、ステム33及びダイヤフラム押さえ7の移動によって減少する。このとき、第1エア導入室35のエアは、第1径方向流路33b、軸方向流路33a、及びステム案内孔311dを経由して駆動エア供給制御部に導出されるとともに、第2エア導入室36のエアは、第2径方向流路33c、軸方向流路33a及びステム案内孔311dを経由して駆動エア供給制御部に導出される。
【0042】
このように、駆動エア供給制御部は、バルブ装置1のアクチュエータ3への駆動エアの供給を制御することにより、弁座24に対するダイヤフラム6の開閉を切り替えることができる。したがって、このようなバルブ装置1によれば、流体流入流路21から流体流出流路22への流体供給の制御が可能となる。
【0043】
次に、バルブ装置1の特徴部分について説明する。
【0044】
第2ケース312の延伸部314は、ボンネット4の頂壁42及びロックナット5の両方に螺合する螺合部316と、ロックナット5から露出する露出部317と、を有する。露出部317の軸方向における寸法t1(長さt1)は、螺合部316の軸方向における寸法t2(長さt2)以上である。これにより、露出部317の軸方向における寸法t1が螺合部316の軸方向における寸法t2よりも小さい従来のバルブ装置に比べ、アクチュエータ3とボンネット4との間の距離を広げることができるので、アクチュエータ3の昇温を抑制するためのジャケットを用いることなく、流路ブロック2からの熱がボンネット4を介してアクチュエータ3に伝達することが抑制される。この結果、アクチュエータ3に設けられるOリング91,92,93,94,95,96の耐久性が向上する。
【0045】
露出部317の軸方向における寸法t1と螺合部316の軸方向における寸法t2との比(以下、単にt1/t2の比と称する。)は、1.0以上2.0以下であることが好ましい。t1/t2の比が1.0を下回ると、アクチュエータ3とボンネット4との間の距離を広げることができず、流路ブロック2からの熱がボンネット4を介してアクチュエータ3に伝達することが抑制されない。この結果、Oリング91,92,93,94,95,96の耐久性が低下する。一方、t1/t2の比が2.0を上回ると、アクチュエータ3とボンネット4との間の距離が離間しすぎてアクチュエータ3の重みによって延伸部314又はステム33に歪み又は軸ずれが発生するおそれがある。この結果、バルブ装置1の応答性に支障が生じる。以上のことから、t1/t2の比を1.0以上2.0以下にすることにより、バルブ装置1の応答性が低下することなく、アクチュエータ3の昇温が抑制されて、Oリング91,92,93,94,95,96の耐久性が向上する。
【0046】
また、バルブ装置1の応答性向上及びアクチュエータ3の昇温抑制の両立を図る観点から、t1/t2の比は、1.0よりも大きくかつ1.8以下であることがより好ましく、1.0よりも大きくかつ1.5以下であることがさらに好ましい。
【0047】
ボンネット4は、流路ブロック2の凹部23に収容される被収容部43と、流路ブロック2から露出する放熱部44と、を有する。被収容部43は、昇温された流路ブロック2から熱を吸収して放熱部44に伝達する。一方、放熱部44は、流路ブロック2から被収容部43を介して伝達された熱を外部に放出する。
【0048】
放熱部44の軸方向における寸法t3(長さt3)と被収容部43の軸方向における寸法t4(長さt4)との比(以下、単にt3/t4の比と称する。)は、1.8以上3.0以下であることが好ましい。t3/t4の比が1.8を下回ると、放熱部44の表面積が小さすぎて放熱部44による放熱効果が低下するので、流路ブロック2からの熱がボンネット4を介してアクチュエータ3に伝達することが抑制されない。一方、t3/t4の比が3.0を上回ると、ボンネット4に収容されるダイヤフラム押さえ7が重くなりすぎてバルブ装置1の応答性に支障が生じる。以上のことから、t3/t4の比を1.8以上3.0以下にすることにより、バルブ装置1の応答性が低下することなく、ボンネット4による放熱効果が向上する。
【0049】
また、バルブ装置1の応答性向上及びボンネット4による放熱効果向上の両立を図る観点から、t3/t4の比は、1.9以上2.5以下であることがより好ましく、2.0以上2.3以下であることがさらに好ましい。
【0050】
ダイヤフラム押さえ7の鍔部72の厚みd2とボンネット4の被収容部43の軸方向における寸法t4との比(以下、単にd2/t4の比と称する。)は、0.5以上1.5以下であることが好ましい。d2/t4の比が0.5を下回ると、鍔部72の厚みd2が小さすぎて流路ブロック2からの熱がコイルばね8に伝達しやすくなるので、コイルばね8の昇温によってコイルばね8のばね係数が変化する。これにより、バルブ装置1の最低作動圧力が変化するので、ダイヤフラム6の開弁タイミングが変化するおそれがある。一方、d2/t4の比が1.5を上回ると、ダイヤフラム押さえ7が重くなりすぎてバルブ装置1の応答性に支障が生じる。以上のことから、d2/t4の比を0.5以上1.5以下にすることにより、バルブ装置1の応答性を維持しつつダイヤフラム6の開閉タイミングの変化が防止される。
【0051】
また、バルブ装置1の応答性維持及びダイヤフラム6の開閉タイミングの変化防止を図る観点から、d2/t4の比は、0.6以上1.2以下であることがより好ましく、0.6以上0.9以下であることがさらに好ましい。本実施形態では、鍔部72は、被収容部43の軸方向における領域に位置するように設けられる。
【0052】
鍔部72は、その厚みd2が円環部423の厚みd1よりも大きい。これにより、鍔部72の厚みd2が円環部423の厚みd1以下である従来のバルブ装置に比べ、ボンネット4に収容されるコイルばね8全体をアクチュエータ3側寄りに設けることができるので、コイルばね8が流路ブロック2からの熱影響を受けにくくなる。
【0053】
次に、本実施形態による作用効果について説明する。
【0054】
以上述べたように、本実施形態に係るバルブ装置1は、流体流入流路21が形成される流路ブロック2と、流路ブロック2側に延伸する円筒状の延伸部314が設けられるケース31、ケース31に摺動可能に収容されるピストン32、及び延伸部314の内周面に挿通されるとともにピストン32と一体に軸方向に移動するステム33と、を有するアクチュエータ3と、流路ブロック2とアクチュエータ3とを接続し、アクチュエータ3に対向する頂壁42が延伸部314の外周面に螺合するボンネット4と、ボンネット4の頂壁42と当接するようにアクチュエータ3とボンネット4との間に延伸部314の外周面に螺合して設けられるロックナット5と、ステム33の移動によって流体流入流路21を開閉するダイヤフラム6と、を備える。そして、延伸部314は、ボンネット4の頂壁42及びロックナット5の両方に螺合する螺合部316と、ロックナット5から露出する露出部317と、を有し、露出部317の軸方向における寸法t1は、螺合部316の軸方向における寸法t2以上である。
【0055】
この構成によれば、露出部317の軸方向における寸法t1が、螺合部316の軸方向における寸法t2以上であるため、露出部317の軸方向における寸法t1が螺合部316の軸方向における寸法t2よりも小さい従来のバルブ装置に比べ、アクチュエータ3とボンネット4との間の距離を広げることができるので、簡素な構造でアクチュエータ3の昇温が抑制される。この結果、Oリング91,92,93,94,95,96の耐久性が向上する。
【0056】
さらに、この構成によれば、アクチュエータ3の昇温を抑制するためのジャケット及びジャケットに冷媒を供給するための配管等を設ける必要がないので、バルブ装置1を備える流体制御装置を、半導体ウェハ等の基板が収容されるチャンバ(図示しない)により近く設けることができる。これにより、流体制御装置からチャンバに供給するプロセスガス等の流体の供給時間を短縮することができるので、半導体装置の製造精度を向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、露出部317の軸方向における寸法t1と螺合部316の軸方向における寸法t2との比は、1.0以上2.0以下である。この構成によれば、バルブ装置1の応答性が低下することなく、アクチュエータ3の昇温が抑制されてOリング91,92,93,94,95,96の耐久性が向上する。
【0058】
また、本実施形態では、ステム33の他端に連結されて、ボンネット4に収容されダイヤフラム6を押さえるダイヤフラム押さえ7と、ボンネット4の頂壁42とダイヤフラム押さえ7との間に軸方向に沿って介装されるコイルばね8と、をさらに備える。そして、頂壁42には、コイルばね8の一端と当接する円環部423が設けられ、ダイヤフラム押さえ7には、コイルばね8の他端と当接する鍔部72が設けられ、鍔部72は、その厚みd2が円環部423の厚みd1よりも大きい。
【0059】
この構成によれば、鍔部72の厚みd2が円環部423の厚みd1よりも大きいため、鍔部72の厚みd2が円環部423の厚みd1以下である従来のバルブ装置に比べ、ボンネット4に収容されるコイルばね8全体をアクチュエータ3側寄りに設けることができるので、コイルばね8が流路ブロック2からの熱影響を受けにくくなる。
【0060】
また、本実施形態では、ボンネット4は、ねじ螺合によって流路ブロック2に設けられ、流路ブロック2に収容される被収容部43と、流路ブロック2から露出する放熱部44と、を有する。そして、放熱部44の軸方向における寸法t3と被収容部43の軸方向における寸法t4との比は、1.8以上3.0以下である。
【0061】
この構成によれば、放熱部44の軸方向における寸法t3と被収容部43の軸方向における寸法t4との比が1.8以上3.0以下であるため、バルブ装置1の応答性が低下することなく、ボンネット4による放熱効果が向上する。
【0062】
また、本実施形態では、ステム33の他端に連結されて、ボンネット4に収容されダイヤフラム6を押さえるダイヤフラム押さえ7と、ボンネット4の頂壁42とダイヤフラム押さえ7との間に軸方向に沿って介装されるコイルばね8と、をさらに備える。そして、頂壁42には、コイルばね8の一端と当接する円環部423が設けられ、ダイヤフラム押さえ7には、コイルばね8の他端と当接する鍔部72が設けられ、ボンネット4は、ねじ螺合によって流路ブロック2に設けられ、流路ブロック2に収容される被収容部43と、流路ブロック2から露出する放熱部44と、を有し、鍔部72の厚みd2と被収容部43の軸方向における寸法t4との比は、0.5以上1.5以下である。
【0063】
この構成によれば、鍔部72の厚みd2と被収容部43の軸方向における寸法t4との比が0.5以上1.5以下であるため、バルブ装置1の応答性を維持しつつダイヤフラム6の開閉タイミングの変化が防止される。
【0064】
以上、本実施形態について説明したが、上述した実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上述した実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0065】
(変形例)
次に、図2を参照しながら変形例に係るバルブ装置1aについて説明する。なお、変形例では、上述した実施形態と同様の点については説明を省略し、主に上述した実施形態と異なる点について説明する。
【0066】
図2は、変形例に係るバルブ装置1aを示す断面図である。
【0067】
上述した実施形態では、ダイヤフラム押さえ7の鍔部72は、ボンネット4の被収容部43の軸方向における領域に位置するように設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、その一部が図2に示すように放熱部44の軸方向における領域に位置するように設けられてもよい。この場合、ばね収容室9と外部とを連通する貫通孔413aは、六角突出部412の上方に形成される。
【0068】
本変形例に係るバルブ装置1aによれば、鍔部72を放熱部44の軸方向における領域に位置するように設けることで、コイルばね8の全体を放熱部44の軸方向における領域に位置させることができるので、コイルばね8の一部が被収容部43に位置するバルブ装置1に比べ、コイルばね8が流路ブロック2からの熱影響を受けにくくなり、バルブ装置11の応答性を維持しつつダイヤフラム6の開閉タイミングの変化が防止される。
【符号の説明】
【0069】
1 バルブ装置
2 流路ブロック
3 アクチュエータ
4 ボンネット
5 ロックナット
6 ダイヤフラム
21 流体流入流路
31 ケース
32 ピストン
33 ステム
42 頂壁
314 延伸部
316 螺合部
317 露出部
図1
図2