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  • 特許-蟹のむき身干物の製造方法及び製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】蟹のむき身干物の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/40 20160101AFI20231012BHJP
   A23B 4/03 20060101ALI20231012BHJP
   F26B 3/04 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
A23L17/40 A
A23B4/03 501A
F26B3/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019123522
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021007354
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】512228211
【氏名又は名称】東海 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100083127
【弁理士】
【氏名又は名称】恒田 勇
(72)【発明者】
【氏名】東海 勝久
【審査官】河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-312570(JP,A)
【文献】特開2000-312555(JP,A)
【文献】特開2000-175660(JP,A)
【文献】特開平07-075490(JP,A)
【文献】特開2001-103905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23B
F26B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蟹のむき身を3.5パーセントの塩水につけた後、常温に近い空気の流れに軽く当てることにより被膜の生成をなすとともに水分60%~2%に乾燥し、同時に乾燥ないし加熱により被膜を厚く固く生長させることにより剪断力(むき身の筋繊維に対して垂直方向に、最も幅の広い個所を厚さ0.3mmの剃刀を当てながら、速度を1mm/secとして切断し、その際に生じた最大荷重)を13.0~22.0に調整し、調整した干物を真空パックしボイルすることにより製品化することを特徴とする蟹身干物の製造方法。
【請求項2】
蟹のむき身をのせる棚網を上下に配列するケースにおいて、上下両端にむき身に軽く空気を当てる空調機を交互に起動し得るように設け、左右両端にはむき身に熱風を吹き付ける加熱装置を設け
前記空調機により、3.5パーセントの塩水につけた後の蟹のむき身に常温に近い空気の流れに軽く当てることにより被膜の生成をなすとともに水分60%~25%に乾燥させ、同時に前記空調機ないし前記加熱装置により、乾燥ないし加熱により被膜を厚く固く生長させることにより、剪断力(むき身の筋繊維に対して垂直方向に、最も幅の広い個所を厚さ0.3mmの剃刀を当てながら、速度を1mm/secとして切断し、その際に生じた最大荷重)を13.0~22.0Nに調整することを特徴とする蟹身干物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベニズワイガニやタラバガニなどの主として大型の
蟹のむき身干物の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蟹のむき身は、蟹足の殻に棒状に詰まっている筋肉質の部分であって、一般的に姿見のまま薄い塩分濃度で茹でてから、足をもぎ取って中身を出して食される。これだけで非常に美味であるため、従来、干物として利用されることはほとんどなかった。そこで、本出願人においてここに干物としてさらなる美味の追求をなすとともに、かつ健康食材の用途としても鋭意研究してきた。
【0003】
蟹のむき身の場合、アジの干物の作り方や食べ方とやや違い、むき身を、3.5パーセント(海水濃度と同じ)の塩水につけてから、乾燥させて余分な水分を抜いて出来上がる。この時、乾燥時間の経過とともに表面に膜がつくられ、内部にイノシン酸やグルタミン酸などの旨味成分が発生する。しかも、水分が減少することで甘味成分が濃縮される。乾燥には自然乾燥と人工乾燥があるが、自然乾燥が旨味成分の発生および噛みやすいソフト感の点ですぐれている。しかし、経済的事情から人工乾燥が主流である。アジなどの干物との大きな違いは、蟹のむき身が脂の少ない良質で筋肉質のたんぱく質ということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アジの干物の場合、大きい非筋肉質ブロックであるため、食べやすくソフトに仕上げられ、焼いてから箸を使って小分けして口に運ばれる。蟹のむき身の場合、棒状であり水分が抜けて乾燥し固くハードになりやすいために、棒状において噛み裂いて食される。ハードすぎると老人や子供には噛みさきがたいという問題がある。しかし、噛み応えがある良い面を見逃せなく、認知症予防に効果的食材として活かしたい。
【0005】
むき身の干物の固さは主に水分濃度に関係しており水分が多いとソフトでありおいしく、逆に水分が少ないとハードとなる。しかし、ハードでも噛み切る力が生じると独特の味わいが加わる。
【0006】
この発明は、上記のような実情によるもので、蟹のむき身について、だれもが美味しく食することができるだけでなく、健康にも役立ち得るように、ソフトとハードが良好に調和し得る蟹のむき身干物の製造方法及び製造装置を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明は蟹のむき身を薄い塩水につけた後、常温に近い空気の流れに軽く当てることにより被膜の生成をなすとともに水分60%~25%に乾燥し、同時に乾燥ないし加熱により被膜を厚く固く生長させることにより剪断力を13.0~22.0パーセントに調整し、調整した干物を真空パックしボイルすることにより製品化することを特徴とする蟹身干物の製造方法を提供する。
【0008】
また、この発明は蟹のむき身をのせる棚網を上下に配列するケースにおいて、上下両端にむき身に軽く空気を当てる空調機を交互に起動し得るように設け、左右両端にはむき身に熱風を吹き付ける加熱装置を設けたことを特徴とする蟹身干物の製造装置を提供する。
【0009】
この発明について、上記のように構成したから、むき身を薄い塩水につけた後、空気に当てることにより乾燥するが、乾燥の程度を水分濃度60%~25%の範囲に抑制する。これで水分によりソフト感が得られ美味しさが保持される。しかも、水分25パ―セント以下で雑菌の繁殖が抑えられる。
【0010】
剪断力が22.0よりも多いと、老人や子供では容易に噛み切れなくハードとなるためそれ以下が望ましい。しかし、13.0パーセントよりも少なくなると、容易にかみ砕くことができ剪断力に欠けるため、咀嚼の関係で健康上の利益を受けがたいため剪断力が13.0より多くあることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、この発明によれば、蟹のむき身干物の製造において、水分の保存により美味しさそのままにキープされながら、噛みやすいソフトと、歯ごたえのあるハードとが互いに良いところを出し合って調和した得も言われぬ美味しさの干物に製造でき、噛み応えにより一種独特の風味がえられ、良質のたんぱく質の食材でもあり、ダイエット等の健康管理に適することはもちろん、良く噛むことで認知症予防などにも優位となる食品を製造できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施に使用する乾燥機の断面図である。
図2】この発明によるむき身干物の作り方の手順等を示すブロック説明図である。
図3】この発明の蟹身干物を製造初期の未完段階において示す断面図である。
図4】製造が完成した製品を一部切欠いて示す斜視図である。
図5】A-A線矢視の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本出願人は、加工業者からボイルされたベニズワイガニのむき身(脚の棒肉)を購入し、特殊冷風乾燥機でそのまま乾燥させることでサンプル作成した。乾燥機の設定温度は20℃とした。乾燥時間に差をつけることにより、0、3,6、9,12,15時間乾燥の試験区としサンプルを5本作製した。なお、6時間乾燥はソフトタイプ、12時間乾燥品はハードタイプとしてそれぞれ商品化を想定した。
【0014】
「水分量」と剪断力の関係性については、当然のことながら、水分量が減少するとサンプル重量も減少し、噛み砕くときの剪断力が大きくなる。
【0015】
「剪断力」とは次の通り具体的に定義できる内容である。つまり、サンプルの固さを評価するため、サンプルの筋繊維に対して垂直方向に、最も幅の広い個所を厚さ0.3mmの剃刀を当てながら、速度を1mm/secとして切断し、その際に生じた最大荷重(N)をいう。この発明において、ソフトとハードとの調整は、乾燥によるだけでなく、加熱風(熱風や火炎など)にもよることもある。

【実施例1】
【0016】
図1にこの発明に使用する製造装置としての乾燥機Mを示す。乾燥機は、内部に網棚2,2、‥が配列されるケース1が主体であって、その上下両端に空調機3,3を設置し、左右内側面には加熱装置5,5が設けられる。基本的には、空調機3を稼働して20℃前後の空気を送り、棚上のむき身7,7・・を上下交互の空気で乾燥する。加熱装置5は補助的に使用される。例えば、乾燥工程の後半において剪断力を強化する必要を認めた場合に、加熱装置5,5の稼働によりハードを高めに誘導する。次に図2について説明する。
【0017】
「原料」
加工業者からボイルされたベニズワイガニのむき身7を購入し、そのむき身7は、軽い塩水に浸けたものを網棚2に並べてから、それを乾燥機1のケース1内に入れて上下配置で棚並べする。
【0018】
「乾燥」
乾燥空気の均一化を図るために、上下空調機3,3を交互に駆動させて冷風をむき身7に吹き付けて乾燥した。乾燥機の設定温度は20℃であって、0,3,6,9,12,15の5段階の乾燥時間区分をした。そして15時間乾燥をなし、区分ごとにサンプル採取した。
【0019】
「包装」
乾燥初期においては、図3に示す如く、裸のむき身7であって、乾燥によりむき身7の表面には、薄い被膜9が生じ、内部では旨味成分が発生し、水分の蒸発により旨味成分が増加する。これがソフトタイプの美味しさである。図4は、真空パックした完成品に近い状態を示し、中身についてはソフトタイプから被膜9が成長し、ハードタイプでは変化した厚みのある被膜9aで覆われている。なお、フィルム6にはボイルの伝熱性を高めるためアルミ蒸着がなされている
【符号の説明】
【0020】
M 乾燥機(製造装置)
P 製品
1 ケース
2 網棚
3 空調機
5 加熱装置
6 フィルム
7 蟹のむき身
9,9a 被膜
図1
図2
図3
図4
図5