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  • 特許-ゲルパッキンシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】ゲルパッキンシステム
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/20 20060101AFI20231012BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B65D81/20 E
B65D81/24 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019190466
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021066439
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】517065301
【氏名又は名称】株式会社MUSI サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】吉川 辰美
(72)【発明者】
【氏名】吉川 雄一
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-218072(JP,A)
【文献】特開平07-167326(JP,A)
【文献】特開2014-027773(JP,A)
【文献】特開2014-063868(JP,A)
【文献】特開平01-305283(JP,A)
【文献】特開平01-185211(JP,A)
【文献】特開2006-043177(JP,A)
【文献】実開昭58-059766(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/20-24
B65D 53/00-10
A47F 3/00-14
A47B 63/00-06
A47B 81/00-06
A47J 27/00-64
F16J 15/00-56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収容物が載置される載置面を有するベースと、
前記ベースの上に配置され、前記載置面を覆い、前記ベースとの間に、気密空間を形成するカバーと、を備え、
前記カバーは、前記ベースと接続する下端側において、前記気密空間の周囲に沿って、下方に突出する板状体である気体遮蔽板を有し、
前記ベースは、前記気密空間の周囲に沿って、ゲルが貯留された接続部を有し、
前記カバーが前記ベースの上に配置された状態において、前記カバーの前記気体遮蔽板の下端側が、前記ベースの前記接続部のゲル内に差し込まれることで、前記気密空間を形成し、
前記カバー内部の気圧が前記カバー外部の気圧より上昇した場合、前記カバーが持ち上がり、前記気体遮蔽板の下端と、前記接続部のゲルとの間に隙間が生じ、この隙間から前記カバー内部のガスが外部に流出するゲルパッキンシステム。
【請求項2】
ゲルを貯留するゲル貯留部と、
ガスを出す放出口が前記ゲル貯留部のゲル内に配置されたバルブと、を有するガスバルブを更に備え、
前記ゲル貯留部内部において、ゲルを通過したガスが、前記気密空間に供給される請求項1に記載のゲルパッキンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルパッキンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パッキンは液体及び気体漏れを防ぐ為に、柔軟なウレタンゴム、シリコンゴムなど多種の材料で作られているが蓋の重量を利用した密閉方法でもガスケットで挟み、ボルト及びネジ式等で締めつけ気体及び液体漏れを塞いだり、パッキンをダブルパッキンにしてボルトなどの締め付けでも、締め付け不良及び長期の微動及び密閉ガスのボリュームの影響でネジが緩んだり、蓋と本体の歪みや経年によるパッキンの劣化等で気密性が損なわれていた。
【0003】
例えば、現在世界で使われている展示ケースは、横にスライドする開け閉めや、観音開き及び上から被せる等の展示ケースが主流であるが、いずれも扉と本体に隙間があり、大気汚染ガスを始めカビ、バクテリア、害虫等の侵入は防ぐ事が出来なかった。
【0004】
現在不活性ガスでの保存方法は、劣化の原因に上げられる酸素を除去及び酸素の流入を防ぐ為に、酸素透過率の低いフイルム内に密封する方法と、窒素ガス、アルゴンガスなどボンベから減圧器を使い少しずつ大気に排出する方法と、同じく窒素ガス発生機により窒素ガスを常に大気に放出する方法と、が知られている。
【0005】
現在密閉率が良いとされるエアータイト型でも、空気交換率が0.1~0.3回/日であり出来るだけ大気の汚染ガスを始め、カビ害虫等が展示ケース及び保存庫に入らない様にする必要があり、現在ケース内の空気が入れ替わらない様工夫されたエアータイト式の展示ケースでも、隙間がありその為汚染ガス及びバクテリア、害虫等の流入を防ぐ事が困難であり、また、屋内が温湿度管理出来ない場所での調湿は困難である。
【0006】
そこで、出願人は、給気側第1タンクにおいて、一端から外気が流入する外気菅の他端が、給気側液体部分内に配置され、ケースの内部側へ向かう気体が挿通する給気側挿通菅の一端が、給気側気体部分内に配置され、排気側第1タンクにおいて、ケースの内部側から排気された気体が一端から流入する排気菅の他端が、排気側液体部分内に配置され、外部に向かう気体が挿通する排気側挿通菅の一端が、排気側気体部分内に配置された液封システムを提案している(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に記載された発明によれば、ケース内外の気圧や温度差による差圧で、ケース内に封じ込めたガスを循環させることで、差圧により、ケース内に大気が流入したり、ケース内のガスが流出したりすることを防止可能とし、汚染ガス及びバクテリア、害虫等の流入等の問題を解決できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-138462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、被収容物を内部に収容する必要があるケースでは、開閉可能な部分に、密閉性が高いパッキンを設ける必要がある。
しかしながら、例えば、容積3L前後の小さなケースの密閉保存では、急激な気圧の変化や気温の変化で起こる気体の膨張は危険があるため、機械的作動でない低圧でも柔軟に対応出来るパッキンは無かった。
【0010】
また、重要文化財及び学術資料等の被収容物の保存は、大気に触れる事により経年と共にその被害は大きく、大気と触れないように長期に亘り保存しなければならないため、30年60年とケース内の密閉を保ち、ケース内の被収容物に悪い影響を与えないパッキンが無かった。
【0011】
本発明は、ケース内の気体の膨張に対応可能であり、長期に亘り気密性を保ち、ケース内の被収容物に悪い影響を与えないゲルパッキンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 被収容物が載置される載置面を有するベースと、
前記ベースの上に配置され、前記載置面を覆い、前記ベースとの間に、気密空間を形成するカバーと、を備え、
前記カバーは、前記ベースと接続する下端側において、前記気密空間の周囲に沿って、下方に突出する板状体である気体遮蔽板を有し、
前記ベースは、前記気密空間の周囲に沿って、ゲルが貯留された接続部を有し、
前記カバーが前記ベースの上に配置された状態において、前記カバーの前記気体遮蔽板の下端側が、前記ベースの前記接続部のゲル内に差し込まれることで、前記気密空間を形成し、
前記カバー内部の気圧が前記カバー外部の気圧より上昇した場合、前記カバーが持ち上がり、前記気体遮蔽板の下端と、前記接続部のゲルとの間に隙間が生じ、この隙間から前記カバー内部のガスが外部に流出するゲルパッキンシステム。
【0013】
(1)の発明によれば、ゲルパッキンシステムは、ベースと、カバーと、を備える。
ベースは、被収容物が載置される載置面を有する。
カバーは、ベースの上に配置され、載置面を覆い、ベースとの間に、気密空間を形成する。
カバーは、ベースと接続する下端側において、気密空間の周囲に沿って、下方に突出する板状体である気体遮蔽板を有する。
ベースは、気密空間の周囲に沿って、ゲルが貯留された接続部を有する。
そして、カバーがベースの上に配置された状態において、カバーの気体遮蔽板の下端側が、ベースの接続部のゲル内に差し込まれることで、気密空間を形成する。
【0014】
これにより、カバーがベースの上に配置された状態(カバー内部に気密空間が形成されている状態)において、カバー内部の気体が膨張し、カバー内部の気圧がカバー外部の気圧より上昇した場合、カバーが持ち上がり、カバーの気体遮蔽板の下端と、ベースの接続部のゲルとの間に隙間が生じ、この隙間からカバー内部のガスが外部に流出する。そして、カバー内部の気圧がカバー外部の気圧と同様になると、カバーが降下し、カバーの気体遮蔽板の下端側が、ベースの接続部のゲル内に差し込まれ、再び、気密空間を形成する。
【0015】
このため、カバー内部の気体の膨張にスムーズに対応可能であり、カバー外部の気体がカバー内部に流入することを防止できる。
したがって、ケース内の気体の膨張に対応可能であり、長期に亘り気密性を保ち、ケース内の被収容物に悪い影響を与えないゲルパッキンシステムを提供できる。
【0016】
(2) ゲルを貯留するゲル貯留部と、
ガスを出す放出口が前記ゲル貯留部のゲル内に配置されたバルブと、を有するガスバルブを更に備え、
前記ゲル貯留部内部において、ゲルを通過したガスが、前記気密空間に供給される(1)に記載のゲルパッキンシステム。
【0017】
(2)の発明によれば、ゲルパッキンシステムは、ガスバルブを更に備える。
ガスバルブは、ゲル貯留部と、バルブと、を有する。
ゲル貯留部は、ゲルを貯留する。
ガスバルブは、ガスを出す放出口がゲル貯留部のゲル内に配置されている。
そして、ゲル貯留部内部において、ゲルを通過したガスが、カバーがベースの上に配置された状態において、カバー内部に形成された気密空間に供給される。
【0018】
このように、ガスバルブの放出口をゲル内に配置することで、ガスバルブの放出口が劣化するのを防止できる。また、ゲル貯留部に貯留するゲルの量を調整し、バルブの放出口から、ゲルの表面までの高さを変えることで、カバー内部の気圧を調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ケース内の気体の膨張に対応可能であり、長期に亘り気密性を保ち、ケース内の被収容物に悪い影響を与えないゲルパッキンシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るゲルパッキンシステム1の概要を説明する図である。
図2】本発明の実施形態に係るゲルパッキンシステム1の安定状態におけるベース10とカバー20との接続部分の拡大断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るゲルパッキンシステム1の内部の気体が膨張した状態におけるベース10とカバー20との接続部分の拡大断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るゲルパッキンシステム1のガスバルブ30を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0022】
まず、前記実施形態に係るゲルパッキンシステム1の構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るゲルパッキンシステム1の概要を説明する図である。図1は、ゲルパッキンシステム1の前面図である。
【0023】
本実施形態に係るゲルパッキンシステム1は、所謂、展示ケースであり、内部の気体の膨張に対応可能であり、長期に亘り気密性を保ち、内部に収容された被収容物Aである文化財等の展示品に悪影響を与えることなく、展示品の酸化や湿度による劣化を防止しつつ保存する。
ゲルパッキンシステム1は、ベース10と、カバー20と、ガスバルブ30と、を備える。
【0024】
ベース10は、被収容物Aが載置される載置面10aを有し、例えば、箱形状に形成され、上面に載置面10aが形成され、内部に、ガスバルブ30や、ガスバルブ30にガスを供給するガスボンベ300等を収容してもよい。
【0025】
カバー20は、透明のガラスやアクリル板等の透明部材が、下面が開放された中空の箱形状に形成され、ベース10の上に配置され、載置面10aを覆い、ベース10との間に、気密空間Bを形成する。この気密空間Bに被収容物Aが収容される。
【0026】
次に、ベース10と、カバー20との接続部分について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係るゲルパッキンシステム1の安定状態におけるベース10とカバー20との接続部分の拡大断面図である。
ベース10は、載置面10aにおいて気密空間Bの周囲に沿って、ゲルGが貯留された接続部11を有する。
接続部11は、上面から視て、気密空間Bを囲うように略口形状に延び、断面形状が略U字形状に形成されている。そして、接続部11は、内部にゲルGが貯留されている。
また、接続部11のカバー20が当接する上端には、緩衝部111が設けられている。緩衝部111は、弾性変形可能な弾性部材(例えば、スプリングやゴム部材等)で形成されている。このような緩衝部111を設けることで、カバー20がベース10に当接するときの衝撃を緩和できる。また、気密空間Bの内圧が外気圧より低くなった場合、カバー20に、ベース10側に押しつけられるような力が働くが、このような場合、緩衝部111が柔軟に沈み込み、カバー20に働く力を緩和し、カバー20が破損するのを防止できる。
【0027】
ゲルGは、任意のものを使用することができるが、フッ素ゲルを用いるのが望ましい。フッ素ゲルは酸素透過率がシリコンゲルより低く、フッ素ゲルであれば、使用量をシリコンゲルの1/30の量に抑えることができる。
【0028】
カバー20は、箱形状の透明部材21と、上面から視て、気密空間Bを囲うように略口形状に延び、透明部材21の下端に取り付けられた取付部22と、気密空間Bの周囲に沿って延び、取付部22の下端から下方に突出する板状体であり、上面から視て、気密空間Bを囲うように略口形状に形成された気体遮蔽板23と、を有する。
【0029】
そして、ゲルパッキンシステム1におけるベース10とカバー20とは、カバー20がベース10の上に配置された状態において、カバー20の気体遮蔽板23の下端側が、ベース10の接続部11のゲルG内に差し込まれることで、気密空間Bを形成する。
【0030】
図3は、本発明の実施形態に係るゲルパッキンシステム1の内部の気体が膨張した状態におけるベース10とカバー20との接続部分の拡大断面図である。
カバー20がベース10の上に配置された状態(カバー20内部に気密空間Bが形成されている図2に示す安定状態)において、カバー20内部の気体が膨張し、カバー20内部の気圧がカバー20外部の気圧より上昇した場合、図3に示すように、カバー20が持ち上がり、カバー20の気体遮蔽板23の下端と、ベース10の接続部11のゲルGとの間に隙間が生じ、この隙間からカバー20内部のガスが外部に流出する。
その後、カバー20内部のガスが外部に流出し、カバー20内部の気圧がカバー20外部の気圧と同様になると、カバー20が降下し、カバー20の気体遮蔽板23の下端側が、ベース10の接続部11のゲルG内に差し込まれ、図2に示す状態に戻り、再び、気密空間Bを形成する。
【0031】
図4は、本発明の実施形態に係るゲルパッキンシステム1のガスバルブ30を説明する図である。
ガスバルブ30は、ゲル貯留部31と、バルブ32と、を有する。
【0032】
ゲル貯留部31は、ゲルGを貯留する容器形状に形成されている。ゲル貯留部31は、図4に示す例では、上方が開放された容器形状に形成されているが、ゲルGを貯留でき、ゲルGを通過したガスgを気密空間Bに放出できれば、例えば、瓶形状等の任意の形状とすることができる。
【0033】
バルブ32は、例えば、ガスボンベ300(図1参照)からガスg(例えば、窒素ガス等)が供給され、この供給されたガスgを出す放出口32aがゲル貯留部31のゲルG内に配置されている。
【0034】
ゲルパッキンシステム1では、ゲル貯留部31内部において、ゲルGを通過したガスgが、カバー20がベース10の上に配置された状態において、カバー20内部に形成された気密空間Bに供給される。
【0035】
このようなガスバルブ30により、ガスgを気密空間Bに供給することで、ガスgがゲルGを押し広げながら上昇して行き、ガスgが気密空間Bに放出される。これにより、ゲル貯留部31に貯留するゲルGの量を調整し、バルブ32の放出口32aから、ゲルの表面Gaまでの高さを変えることで、カバー20内部の気圧を調整することが可能となる。例えば、実験では、バルブ32の放出口32aからゲルの表面Gaまでの高さを略1センチメートルにした場合、カバー20内部の気圧が略1キロパスカルとなる。
【0036】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0037】
1 ゲルパッキンシステム
10 ベース
10a 載置面
11 接続部
20 カバー
21 透明部材
22 取付部
23 気体遮蔽板
30 ガスバルブ
31 ゲル貯留部
32 バルブ
32a 放出口
111 緩衝部
300 ガスボンベ
A 被収容物
B 気密空間
G ゲル
Ga 表面
g ガス
図1
図2
図3
図4