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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】板状体の切断装置
(51)【国際特許分類】
   B27B 5/02 20060101AFI20231012BHJP
   B27B 5/00 20060101ALI20231012BHJP
   B27B 5/18 20060101ALI20231012BHJP
   B27B 5/29 20060101ALI20231012BHJP
   B26D 7/02 20060101ALI20231012BHJP
   B26D 7/01 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B27B5/02 F
B27B5/00 A
B27B5/18
B27B5/29 A
B26D7/02
B26D7/01
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019235605
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104580
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000148818
【氏名又は名称】株式会社太平製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】指吸 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 雄基
(72)【発明者】
【氏名】中島 智貴
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-130972(JP,A)
【文献】特開2012-96333(JP,A)
【文献】特開2012-51077(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103213174(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1221841(KR,B1)
【文献】特開2001-320069(JP,A)
【文献】特開平4-46800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27B 5/02
B27B 5/00
B27B 5/18
B27B 5/29
B26D 7/02
B26D 7/01
B26D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体からなるワーク(B)が載置される平面視矩形のステージ(20)と、
前記ステージ(20)を上下に貫通する貫通孔(26)と、
前記貫通孔(26)に連通し前記ワーク(B)を前記ステージ(20)の上面に吸着させる吸引装置(70)と、
前記ステージ(20)の四隅の待機位置にそれぞれ待機する4つの切断刃(33,33’,43,43’)と、
4つの前記切断刃(33,33’,43,43’)を前記待機位置から前記ステージ(20)の4辺に沿って平面視時計回り又は反時計回りのいずれか一方向へ移動させる動作装置(30,30’,40,40’)と、
前記ステージ(20)の上面に開口し前記切断刃(33,33’,43,43’)が通過する溝(28)と、
を備える板状体の切断装置。
【請求項2】
前記動作装置(30,30’,40,40’)は、
4つの前記切断刃(33,33’,43,43’)をそれぞれ前記待機位置から前記4辺に沿って前記一方向へ移動させてその移動する各辺を挟んで対側に位置する第2の待機位置へ到達させて前記ワーク(B)を切断する第1の動作と、
4つの前記切断刃(33,33’,43,43’)をそれぞれ前記第2の待機位置から前記4辺に沿って前記一方向とは反対方向へ移動させて前記第2の待機位置から元の前記待機位置へ到達させて前記ワーク(B)を切断する第2の動作と、
を行う請求項1に記載の板状体の切断装置。
【請求項3】
前記切断刃(33,33’,43,43’)は、前記第1の動作及び第2の動作においてともに一定の方向へ回転する円盤状の回転刃であり、前記貫通孔(26)は前記溝(28)内に開口している請求項2に記載の板状体の切断装置。
【請求項4】
前記貫通孔(26)は、前記溝(28)内において前記溝(28)の伸びる方向へ長手状に開口する請求項1から3のいずれか一つに記載の板状体の切断装置。
【請求項5】
前記貫通孔(26)は、前記ステージ(20)の上面開口の周囲に座繰り(27)を備える請求項1から4のいずれか一つに記載の板状体の切断装置。
【請求項6】
前記ステージ(20)は、前記溝(28)の外側に切断片(B’)を落下させる傾斜面(29)を備える請求項1から5のいずれか一つに記載の板状体の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、板状体の切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合板や繊維板、石膏ボード等の板状体を切断する装置として、例えば、特許文献1に記載のように、帯鋸や丸鋸等の切断刃をステージ上に配置し、そのステージに向かって板状体を進行させるものが一般的である。切断刃を往復動又は回転させながら板状体を進行させることにより、板状体を所定の形状に仕上げていく。
【0003】
例えば、単板を積層して形成される合板の製造工程において、ワークである合板の周囲4辺を切断する装置がある。この切断装置では、送りロール等によってワークを進行させる搬送装置と、その進行方向に沿って2箇所に配置されるステージと、最後のステージの下流側に配置されるワーク堆積装置とが備えられている。最初のステージでは、ワークの4辺のうち最初の進行方向に沿う2辺を切断し、その後、ワークを90度向きを変えて進行させるとともに、最後のステージで残る2辺を向きを変えた後の進行方向に沿って切断する。切断が終了したワークはワーク堆積装置上に堆積されて、複数枚のワークが重ねられた状態で次工程へ搬出されていく。なお、特許文献2に記載のように、同方向に向く切断刃を多数並列して配置した多刃丸鋸盤の技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-249801号公報
【文献】特開平6-114803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の板状体の切断装置では、その設置に多大なスペースを必要とするという問題があった。すなわち、搬送装置の搬送方向に沿って複数のステージを配置しなければならず、また、搬送装置は途中で90度向きを変える必要があり、その設置には場所的な制約を受けがちである。
【0006】
また、従来の板状体の切断装置では、ステージ上での板状体に作用する切断刃からの浮き上がり力に対しては、ステージ上方に配置された押えロールの押し付け力によって対応している。しかし、切断箇所は板状体の周縁部の広い範囲に及ぶので、その広い範囲が浮き上がらないように確実に押し付けるのは困難である。
【0007】
さらに、従来の板状体の切断装置では、最初の工程で進行方向に沿う2辺を切断してから、次の工程で残る2辺を切断しているが、材料である板状体の部分的な厚薄のばらつきや、板状体の個体毎の厚みの不揃い、あるいは、表面の木目の流れ等によって、板状体の搬送方向が直線状にならず、ほんの僅かではあるもののカーブしたり蛇行したりする場合がある。このようなワークの搬送方向の僅かな乱れは、切断時における挽き曲がり(切断線が直線ではなくほんの僅かにカーブしている状態)や、切断線の平行度や直角度に大きな誤差を生じさせる可能性がある。すなわち、ロールによる板状体の搬送では、ワークの仕上がり精度が安定しない場合がある。
【0008】
そこで、この発明は、板状体の切断装置を小スペースで設置できるようにすることを第一の課題とし、板状体の切断の仕上がり精度を向上することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、板状体からなるワークが載置される平面視矩形のステージと、前記ステージを上下に貫通する貫通孔と、前記貫通孔に連通し前記ワークを前記ステージの上面に吸着させる吸引装置と、前記ステージの四隅の待機位置にそれぞれ待機する4つの切断刃と、4つの前記切断刃を前記待機位置から前記ステージの4辺に沿って平面視時計回り又は反時計回りのいずれか一方向へ移動させる動作装置と、前記ステージの上面に開口し前記切断刃が通過する溝と、を備える板状体の切断装置を採用した。
【0010】
4つの切断刃を矩形のステージの4辺に沿って平面視時計回り又は反時計回りのいずれか一方向へ移動させる動作装置を採用して、ワークの4辺を一斉に切断するようにしたので、板状体の切断装置を小スペースで設置できるようになる。また、ワークをステージの上面に吸着させる吸引装置を採用したので、4辺を一斉に切断した際に板状体がステージから浮き上がりにくいように維持できる。
【0011】
また、前記動作装置は、4つの前記切断刃をそれぞれ前記待機位置から前記4辺に沿って前記一方向へ移動させてその移動する各辺を挟んで対側に位置する第2の待機位置へ到達させて前記ワークを切断する第1の動作と、4つの前記切断刃をそれぞれ前記第2の待機位置から前記4辺に沿って前記一方向とは反対方向へ移動させて前記第2の待機位置から元の前記待機位置へ到達させて前記ワークを切断する第2の動作と、を行う構成を採用することができる。
【0012】
ここで、前記切断刃は、前記第1の動作及び第2の動作においてともに一定の方向へ回転する円盤状の回転刃であり、前記貫通孔は前記溝内に開口する構成を採用することができる。
【0013】
また、前記貫通孔は、前記溝内において前記溝の伸びる方向へ長手状に開口する構成を採用することができる。
【0014】
これらの各態様において、前記貫通孔は、前記ステージの上面開口の周囲に座繰りを備える構成を採用することができる。
【0015】
また、これらの各態様において、前記ステージは、前記溝の外側に切断片を落下させる傾斜面を備える構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、板状体の切断装置を小スペースで設置できるようになり、また、板状体の切断の仕上がり精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の一実施形態を示す平面図
図2図1の左側面図
図3図1の正面図
図4図1の要部拡大斜視図
図5】ステージの平面図
図6】ステージの平面図
図7】ステージの要部拡大平面図
図8】ステージの端部付近を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。この実施形態は、単板を複数枚積層して形成される合板の製造工程において、仕上げ前の合板の周囲4辺を切断して長方形からなる所定形状に仕上げる板状体の切断装置10(以下、単に切断装置10と称する)である。
【0019】
切断装置10の構成は、図1及び図2に示すように、搬送装置1の進行方向の途中に、平面視矩形のステージ20が配置されている。ステージ20上には、搬送装置1によって移送されてきた板状体からなる1枚の仕上げ前の合板(以下、ワークBと称する)が載置される。仕上げ前の合板は、合板の所定形状よりもやや大きい形状であり、周囲4辺が切断されることで所定形状に仕上げられる。仕上げ済みの合板は、ワーク堆積装置上に堆積された後、次工程へ搬出されていく。
【0020】
搬送装置1の構成は、図2及び図4に示すように、駆動ローラ3と従動ローラ6との間に無端状のベルト2を巻回したベルトコンベヤである。駆動ローラ3は、モータ等の駆動源4からの駆動力によって回転し、その回転によってベルト2が動作する。ベルト4の移動量や速度は、駆動源4が備える制御機構によって制御することができる。制御機構としては、エンコーダ、サーボ機構等を採用することができる。これにより、ベルト2の上方側(搬送側)は、従動ローラ6側から駆動ローラ3側へと所定距離移動し、下方側(リターン側)は駆動ローラ3側から従動ローラ6側へと戻っていく。ワークBは、従動ローラ6寄りのベルト2上に配置した導入装置(図示せず)からベルト2上に導入され、そのワークBは、ベルト2の動作によってステージ20に向かって進行し、制御機構によるベルト2の移動量の制御により、ステージ20上の所定位置に停止する。
【0021】
ここで、駆動ローラ3は、昇降装置5によって、その高さ方向の位置が調整可能である。ワークBがステージ20上の所定位置に停止した状態で、駆動ローラ3の位置を下げることによって、ワークBはステージ20の上面に載置され、また、ベルト2はステージ20上面よりも下方へ、すなわち、ワークBから隔てられた位置に退避する。なお、図示していないが、従動ローラ6にも同様な昇降装置5が備えられており、駆動ローラ3側と従動ローラ6側の昇降装置5が同時に動作するようになっている。
【0022】
ステージ20の構成は、図1から図4に示すように、横方向へ移動自在の4つのステージ部材21,22,23,24,25で構成されている。第1のステージ21は中央に位置するメインステージである。第2のステージ22及び第3のステージ23は、第1のステージ21に対して搬送装置1の進行方向下流側と上流側に隣接するサブステージである。また、第4のステージ24及び第5のステージ25は、第1のステージ21に対して搬送装置1の進行方向に直交する方向に隣接する左右のサイドステージである。
【0023】
図4に示すように、第1のステージ21は、搬送装置1を構成する2本のベルト2間に配置されている。この実施形態では、第1のステージ21はフレームFに対して動かないように固定されているが、これを搬送装置1の進行方向に沿って、又は、進行方向に直交する方向に沿って位置を調整できるようにしてもよい。
【0024】
第2のステージ22及び第3のステージ23は、フレームFに設けた進行方向と平行なレール51に対して、スライドユニット52を介してスライド自在に支持されている。また、第2のステージ22及び第3のステージ23はそれぞれその下面側にラック55を備え、フレームF側に設けたピニオン56が、そのラック55の歯に噛み合っている。このため、モータ等の駆動源57からの駆動力によりピニオン56が回転すると、第2のステージ22及び第3のステージ23は、それぞれラック55とともにワークBの進行方向に沿って移動する。これにより、第2のステージ22及び第3のステージ23を進行方向上流側に移動させたり下流側に移動させたりすることができる。この実施形態では、第2のステージ22及び第3のステージ23を、同時に相反する方向へ同距離だけ移動するように制御しているが、両者の移動量や移動方向を別々に制御することもできる。これらのピニオン56の回転に伴うラック55の移動量や移動速度は、同じく駆動源57が備えるエンコーダ、サーボ機構等の制御機構によって制御することができる。
【0025】
第4のステージ24及び第5のステージ25は、フレームFに設けた進行方向と直交する方向へ伸びるレール53に対して、スライドユニット54を介してスライド自在に支持されている。また、第4のステージ24及び第5のステージ25はそれぞれその下面側にラック58を備え、フレームF側に設けたピニオン59が、そのラック58の歯に噛み合っている。このため、モータ等の駆動源57からの駆動力によりピニオン59が回転すると、第4のステージ24及び第5のステージ25は、それぞれラック58とともにワークBの進行方向に直交する方向に沿って移動する。これにより、第4のステージ24及び第5のステージ25を進行方向に直交する方向に沿って第一のステージ21から遠ざかる側に移動させたり近づく側に移動させたりすることができる。この実施形態では、第4のステージ24及び第5のステージ25を、同時に相反する方向へ同距離だけ移動するように制御しているが、両者の移動量や移動方向を別々に制御することもできる。これらのピニオン59の回転に伴うラック58の移動量や移動速度は、同じく駆動源57が備えるエンコーダ、サーボ機構等の制御機構によって制御することができる。
【0026】
第1~第5のそれぞれのステージ20(21~25)には、そのステージ20を上下に貫通する貫通孔26が設けられている。貫通孔26は、ステージ20の上面と下面に開口し、上面開口の周囲には座繰り27が設けられている。座繰り27は、ステージ20の上面よりもやや低い段部で形成されていてもよいし、外縁側から貫通孔26の軸心に近づくにつれて徐々に下がる円錐面で構成されていてもよい。
【0027】
第1~第5のそれぞれのステージ20(21~25)の下部には、連結空間72が設けられている。連結空間は密閉された空間であり、その上部は貫通孔26に連通しており、その下部は通路71を介して吸引装置70に連通している。吸引装置70を動作させることにより、連結空間72内は負圧状態となる。これにより、ステージ20上のワークBはステージ20の上面に吸着する。ここで、貫通孔26の上面開口の周囲に座繰り27が設けられているので、吸着力が作用する面積が貫通孔26の断面積よりも広くなり、ワークBの吸着力が適度に調整されている。
【0028】
貫通孔26は、ワークBの吸着力が盤面全体に均等に近くなるように、ステージ20の上面全体に偏りなく配置されている。この実施形態では、第1~第3のステージ21~23では、貫通孔26がワークBの進行方向に直交する方向、すなわちステージ20の幅方向に沿って直線状に整列しており、隣り合う列の貫通孔26同士はステージ20の幅方向に対して位置がずれた千鳥配置となっている。また、第4及び第5のステージ24、25では、貫通孔26がワークBの進行方向に沿って直線状に整列しており、隣り合う列の貫通孔26同士はワークBの進行方向に対して位置がずれた千鳥配置となっている。
【0029】
ステージ20の四隅には4つの切断刃33,33’,43,43’が配置されている。図1及び図5に示すように4つの切断刃33,33’,43,43’は、ワークBの進行方向に沿う辺の切断を行う対の切断刃33,33’(以下、第1の切断刃33、第2の切断刃33’と称する)と、ステージ20の幅方向に沿う辺の切断を行う対の切断刃43,43’ (以下、第3の切断刃43、第4の切断刃43’と称する)とからなる。第1から第4の4つの切断刃33,33’,43,43’は、それぞれ常に支持軸回りに一定の方向へ回転する円盤状の回転刃である。
【0030】
第1の切断刃33及び第2の切断刃33’は、それぞれ動作装置30,30’によって制御されている。それぞれの動作装置30,30’は、図1及び図2に示すように、ステージ20の幅方向に沿うガイドレール31,31’と、そのガイドレール31,31’に沿って移動する走行装置32,32’とを備えている。走行装置32,32’内にはモータ等の駆動源を備え、その駆動源の駆動力によって走行装置32,32’はガイドレール31,31’に沿って一方向又は他方向へ移動することができる。また、走行装置32,32’内には第1の切断刃33及び第2の切断刃33’の支持軸を回転させる別の駆動源(同じくモータ等)を備えているので、第1の切断刃33及び第2の切断刃33’は支持軸回りに回転しながら、ガイドレール31,31’に沿って移動することができる。
【0031】
また、第3の切断刃43及び第4の切断刃43’は、それぞれ動作装置40,40’によって制御されている。それぞれの動作装置40,40’は、図1及び図3に示すように、ワークBの進行方向に沿うガイドレール41,41’と、そのガイドレール41,41’に沿って移動する走行装置42,42’とを備えている。走行装置42,42’内にはモータ等の駆動源を備え、その駆動源の駆動力によって走行装置42,42’はガイドレール41,41’に沿って一方向又は他方向へ移動することができる。また、走行装置42,42’内には第3の切断刃43及び第4の切断刃43’の支持軸を回転させる別の駆動源(同じくモータ等)を備えているので、第3の切断刃43及び第4の切断刃43’は支持軸回りに回転しながら、ガイドレール41,41’に沿って移動することができる。
【0032】
また、図4図7に示すように、ステージ20には、その上面に開口する溝28が設けられている。具体的には、第2のステージ22の上流側端部及び第3のステージ23の下流側端部には、それぞれステージ20の幅方向に沿って、第1の切断刃33及び第2の切断刃33’が通過する溝28が1本ずつ設けられている。また、第4のステージ24の幅方向外側端部及び第5のステージ25の幅方向外側端部には、それぞれワークBの進行方向に沿って、第3の切断刃43及び第4の切断刃43’が通過する溝28が1本ずつ設けられている。さらに、第4のステージ24の上流側端部及び下流側端部、ならびに、第5のステージ25の上流側端部及び下流側端部には、それぞれステージ20の幅方向に沿って、第1の切断刃33及び第2の切断刃33’が通過する溝28が3本ずつ設けられている。
【0033】
ところで、第2のステージ22及び第3のステージ23の第1のステージ21との間の間隔は、ワークBの大きさに応じて増減される。また、第4のステージ24及び第5のステージ25の第1のステージ21との間の間隔も、ワークBの大きさに応じて増減される。例えば、図5では、第4のステージ24及び第5のステージ25の第1のステージ21との間の間隔がw1,w2であるのに対し、図6では、ワークBに合わせて第4のステージ24及び第5のステージ25の第1のステージ21との間の間隔がw1’,w2’に拡大されている。このとき、第3の切断刃43及び第4の切断刃43’の走行ラインも、ワークBに合わせて位置合わせされる。同じく、図5では、第2のステージ22及び第3のステージ23の第1のステージ21との間の間隔がw3,w4であるのに対し、図6では、ワークBに合わせて第2のステージ22及び第3のステージ23の第1のステージ21との間の間隔がw3’,w4’に拡大されている。このとき、第1の切断刃33及び第2の切断刃33’の走行ラインも、ワークBに合わせて位置合わせされる。この実施形態では、第4のステージ24及び第5のステージ25におけるステージ20の幅方向両端部に、それぞれ3本の溝28が設けられているので、第2のステージ22及び第3のステージ23の3種類の位置に対応することができる。この溝28の本数を増やせば、対応できるワークBの種類を増やすことができる。
【0034】
ここで、図5では、ワークBの進行方向に沿う辺の切断を行う第1の切断刃33及び第2の切断刃33’は、図中の左下及び右上の待機位置に位置している。また、ワークBの幅方向に沿う辺の切断を行う第3の切断刃43及び第4の切断刃43’は、図中の左上及び右下の待機位置に位置している。
【0035】
ワークBの4辺を切断する際に、各動作装置30,30’,40,40’は、図5の矢印a,b,c,dに示すように、ステージ20の周囲各辺に沿って平面視反時計回りに各切断刃33,33’,43,43’を移動させ、その移動する各辺を挟んで対側に位置する第2の待機位置へ到達させる。図中では、最初の待機位置を実線で示し、第2の待機位置を鎖線で示している。これらの移動は、各切断刃33,33’,43,43’が出発点である待機位置を同時に出発し、終点である第2の待機位置に同時に到着するように設定することが望ましい。4つの切断刃33,33’,43,43’を、それぞれ最初の待機位置から第2の待機位置へ到達させてワークBを切断する動作を、以下、第1の動作と称する。
【0036】
また、各動作装置30,30’,40,40’は、図5の矢印a,b,c,dとは反対向きに、すなわち、ステージ20の周囲各辺に沿って平面視時計回りに各切断刃33,33’,43,43’を移動させることもできる。すなわち、各切断刃33,33’,43,43’を、第2の待機位置から最初の待機位置に移動させることができる。これらの移動についても同様に、各切断刃33,33’,43,43’が出発点である第2の待機位置を同時に出発し、終点である最初の待機位置に同時に到着するように設定することが望ましい。4つの切断刃33,33’,43,43’を、それぞれ第2の待機位置から最初の待機位置へ到達させてワークBを切断する動作を、以下、第2の動作と称する。
【0037】
このように、第1の動作と第2の動作を併用することにより、例えば、或るワークBに対して第1の動作による4辺の切断を行い、次なるワークBに対しては第2の動作による4辺の切断を行うというように、各切断刃33,33’,43,43’の移動方向がワークB毎に交互に入れ替わる設定とすることができる。このようにすれば、或るワークBに対する一方向(例えば、平面視反時計回り方向)への切断が終了した後、各切断刃33,33’,43,43’はその終了した位置で待機し、次なるワークBに対してはその終了した位置を出発点として他方向(例えば、平面視時計回り方向)への切断を開始することができる。これにより、作業時間を短縮することができる。
【0038】
ここで、各切断刃33,33’,43,43’は、前記第1の動作及び第2の動作においてともに一定の方向へ回転する円盤状の回転刃である。このため、上記のように、第1の動作と第2の動作を併用すると、板状体であるワークBに対して、一方向では刃の進行方向先端でいわゆるダウンカット状態となっていても、他方向ではいわゆるアッパーカット状態となってワークBの浮き上がりを誘発する状態も生じ得る。しかし、この実施形態では、貫通孔26を溝28内に開口させているので、その浮き上がりを生じやすい切断線付近において、吸引装置70によってワークBをステージ20の上面に吸着させ、その浮き上がりを防止することができる。また、この実施形態では、溝28内の貫通孔26は、その溝28の伸びる方向へ長手状に開口しているので、その切断線付近におけるワークBの吸着力が特に高まり、浮き上がり防止に特に効果的である。また、その溝28内の貫通孔26を通じて切り屑を吸引することもできる。
【0039】
また、溝28内だけでなく、ステージ20の全域に亘って貫通孔26を配置しているので、ワークBの周囲4辺を一斉に切断しても、ワークBの板面全体が偏りなくステージ20の上面に吸着して、ワークBの浮き上がりが生じにくいようになっている。すなわち、この発明では、従来のように位置固定の切断刃に対してワークBを進行させるのではなく、ステージ20に吸着固定したワークBに対して、4つの切断刃を一斉に移動させるようにしたので、ワークBの進行方向のばらつきが切断線の仕上がりに影響することを排除することができる。これにより、ワークBの材質や厚みのばらつき等に影響されず、ワークBの切断箇所である4辺の平行度や直角度等の仕上がり精度を、従来よりも格段に向上することができる。
【0040】
なお、この実施形態では、図1及び図8に示すように、第5のステージ25の幅方向端縁に沿って、切断片B’や切り屑の排出装置60が設けられている。排出装置60は、搬送装置1と同様のベルトコンベヤ形式のものである。駆動ローラ63と従動ローラ(図示せず)との間に無端状のベルト62が巻回され、駆動ローラ63は、モータ等の駆動源64からの駆動力によって回転し、その回転によってベルト62がワークBの進行方向と同方向に移動する。ベルト62の幅方向両端にはガイド壁65が設けられ、ベルト62上に落下した切断片B’や切り屑が側方へ脱落することを防止している。切断片B’や切り屑はベルト62によって下流側へ移送されて排出される。このベルト62に沿って、ステージ20の溝28の外側に切断片B’を落下させる傾斜面29を備えている。これにより、ワークBから切断された切断片B’や切り屑は、スムーズにベルト62上に落下する。
【0041】
4辺の切断が終了したワークBは、搬送装置1によって次工程へ排出される。ワークBの搬出時における移動量の制御は、ワークBのステージ20上への導入時における制御と同様である。この実施形態では、次なるワークBがステージ20上に導入される際に搬送装置1のベルト2が動作するので、その動作によって、仕上げ済のワークBの搬出が同時に行われるようになっている。
【0042】
上記の実施形態では、搬送装置1をベルト搬送方式としたが、搬送装置1はこの実施形態には限定されず、例えば、ワークBを上下から押し付ける搬送ロール方式の搬送装置1に変更してもよい。また、ワークBをステージ20の上方から降下させて、ステージ20上の所定位置に載置する手段も考えられる。さらに、この実施形態では、4つの切断刃33,33’,43,43’を丸鋸の回転刃としたが、この実施形態には限定されず、例えば、上下方向に往復動する帯状刃を採用してもよい。仮に、帯状刃を採用した場合においても、刃の向きを反転させる機構等を設けることにより、前記第1の動作及び前記第2の動作の両方に対応できる。また、取り扱うワークBとしては、この実施形態のような合板に限定されず、例えば、繊維板、石膏ボード等の各種の板状体を、この発明の切断装置10を適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 搬送装置
10 切断装置(板状体の切断装置)
20 ステージ
26 貫通孔
27 座繰り
28 溝
29 傾斜面
30,30’,40,40’ 動作装置
33,33’,43,43’ 切断刃
70 吸引装置
B ワーク
B’ 切断片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8