(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】枕
(51)【国際特許分類】
A47G 9/10 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
A47G9/10 A
(21)【出願番号】P 2021042529
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-03-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.令和2年3月18日,ウェブサイト 2.令和2年4月9日,納品 3.令和2年6月3日,納品 4.令和2年6月25日,納品
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511192768
【氏名又は名称】株式会社エコ・ワールド
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】小島 教治
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 和行
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/199474(WO,A1)
【文献】特開2003-304961(JP,A)
【文献】特開平11-046952(JP,A)
【文献】特開2005-334418(JP,A)
【文献】特開2015-008757(JP,A)
【文献】特開2018-000617(JP,A)
【文献】特開2013-233192(JP,A)
【文献】特開2020-026586(JP,A)
【文献】国際公開第01/068967(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/035736(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0088103(KR,A)
【文献】特開2017-86321(JP,A)
【文献】特開2010-154965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/00- 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸状溶融樹脂が絡み合うとともに部分的に熱溶着された編成樹脂網状構造体からなる枕であって、
高さ方向は、使用時に最も上側に位置する上層と、使用時に最も下側に位置する下層と、前記上層と前記下層との間に位置する中層とからなり、
前記下層は、前記上層よりも硬く、
前記中層は、前記上層よりは硬く前記下層よりは柔らかく、
前記上層と前記中層との境界では、前記上層の編成樹脂と前記中層の編成樹脂とが絡み合い、
前記中層と前記下層との境界では、前記中層の編成樹脂と前記下層の編成樹脂とが絡み合い、
幅方向は、中央に位置する中央領域と、両端部に位置する端部領域と、前記中央領域と前記端部領域との間に位置する間領域とからなり、
前記端部領域は、前記中央領域よりも硬く、
前記間領域は、前記中央領域よりは硬く前記端部領域よりは柔らかく、
前記中央領域と前記間領域との境界では、前記中央領域の編成樹脂と前記間領域の編成樹脂とが絡み合い、
前記間領域と前記端部領域との境界では、前記間領域の編成樹脂と前記端部領域の編成樹脂とが絡み
合い、
上面は、奥行方向の一端から他端にかけて傾斜しており、
前記上層は、奥行方向の一端の厚さが他端の厚さよりも大きく、
前記中層は、前記下層よりは厚く、前記上層の一端よりは薄いことを特徴とする枕。
【請求項2】
前記下層には、幅方向の一端から他端にかけて使用者の首を支持する部分に前記中層側へ突出した突出部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の枕。
【請求項3】
前記上層の編成樹脂の線径は前記中層の編成樹脂の線径よりも小さく、前記中層の編成樹脂の線径は前記下層の編成樹脂の線径よりも小さく、
前記上層の編成樹脂の線径を1としたとき、前記中層の編成樹脂の線径は1.1~1.7であり、前記下層の編成樹脂の線径は1.4~2.0であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の枕。
【請求項4】
前記中央領域の嵩密度は前記間領域の嵩密度よりも小さく、前記間領域の嵩密度は前記端部領域の嵩密度よりも小さく、
前記中央領域の嵩密度を1としたとき、前記端部領域の嵩密度は1.2~4.0であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の枕。
【請求項5】
前記間領域が幅方向に硬さの異なる複数の小領域からなり、隣接する前記小領域同士では、前記中央領域側に近いほうが柔らかいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編成樹脂網状構造体からなる枕に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠の質向上を目的として従来から様々な枕が提案されている。
例えば、特許文献1には、上面側の枕生地と下面側の枕生地との間に一対の仕切壁を斜状に対向配置し、仕切壁を介して枕生地の内部に中央室と両側の側室を区画し、各室に詰物を充填した枕において、上面側または下面側に複数枚の枕生地を配置し、重合配置した内側の枕生地を上面側および下面側に配置した枕生地の上下に離間して縫着し、二つの縫着部で区画した枕生地によって仕切壁を形成した枕が開示されている。
また、特許文献2には、茶粉末を通さない通気性袋に茶葉を密閉状態で充填した使い捨て用の茶材パックを、柔軟充填材を布袋に充填した柔軟充填材パックで上下から挟んで3層にして袋本体に収納した枕が開示されている。
また、特許文献3には、溶融状態にある複数の熱可塑性樹脂繊維(溶融フィラメント)同士を部分的に融着させて得られるフィラメント3次元結合体を、枕として用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-8757号公報
【文献】登録実用新案第3218275号公報
【文献】特開2017-150100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の枕は、編成樹脂網状構造体からなるものではない。また、中央室に羽毛等の柔らかい詰物を充填すると共に、側室に合成樹脂製パイプ等の流動性があり硬い詰物を充填することで、幅方向においては場所によって硬さを異ならせているが、高さ方向においても場所によって硬さを異ならせたものではない。
また、特許文献2に記載の枕は、三層構造ではあるものの、高さ方向において場所によって硬さを異ならせることで睡眠の質を向上させようとするものではない。また、幅方向においても場所によって硬さを異ならせたものではない。
また、特許文献3には、フィラメント3次元結合体を枕とした場合の具体的な構成については何ら記載されていない。
そこで本発明は、睡眠の質をより効果的に向上させる枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の枕1は、複数の糸状溶融樹脂が絡み合うとともに部分的に熱溶着された編成樹脂網状構造体からなる枕であって、高さ方向は、使用時に最も上側に位置する上層10と、使用時に最も下側に位置する下層30と、上層10と下層30との間に位置する中層20とからなり、下層30は、上層10よりも硬く、中層20は、上層10よりは硬く下層30よりは柔らかく、上層10と中層20との境界では、上層10の編成樹脂と中層20の編成樹脂とが絡み合い、中層20と下層30との境界では、中層20の編成樹脂と下層30の編成樹脂とが絡み合い、幅方向は、中央に位置する中央領域40と、両端部に位置する端部領域60と、中央領域40と端部領域60との間に位置する間領域50とからなり、端部領域60は、中央領域40よりも硬く、間領域50は、中央領域40よりは硬く端部領域60よりは柔らかく、中央領域40と間領域50との境界では、中央領域40の編成樹脂と間領域50の編成樹脂とが絡み合い、間領域50と端部領域60との境界では、間領域50の編成樹脂と端部領域60の編成樹脂とが絡み合い、上面は、奥行方向の一端から他端にかけて傾斜しており、上層10は、奥行方向の一端の厚さが他端の厚さよりも大きく、中層20は、下層30よりは厚く、上層10の一端よりは薄いことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の枕1において、下層30には、幅方向の一端から他端にかけて使用者の首を支持する部分に中層20側へ突出した突出部31が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の枕1において、上層10の編成樹脂の線径は中層20の編成樹脂の線径よりも小さく、中層20の編成樹脂の線径は下層30の編成樹脂の線径よりも小さく、上層10の編成樹脂の線径を1としたとき、中層20の編成樹脂の線径は1.1~1.7であり、下層30の編成樹脂の線径は1.4~2.0であることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の枕1において、中央領域40の嵩密度は間領域50の嵩密度よりも小さく、間領域50の嵩密度は端部領域60の嵩密度よりも小さく、中央領域40の嵩密度を1としたとき、端部領域60の嵩密度は1.2~4.0であることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の枕1において、間領域50が幅方向に硬さの異なる複数の小領域51からなり、隣接する小領域51同士では、中央領域40側に近いほうが柔らかいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、睡眠の質をより効果的に向上させる枕を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例による枕の上面を示す概念図
【
図5】本発明の他の実施例による枕の上面を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施の形態による枕は、複数の糸状溶融樹脂が絡み合うとともに部分的に熱溶着された編成樹脂網状構造体からなる枕であって、高さ方向は、使用時に最も上側に位置する上層と、使用時に最も下側に位置する下層と、上層と下層との間に位置する中層とからなり、下層は、上層よりも硬く、中層は、上層よりは硬く下層よりは柔らかく、上層と中層との境界では、上層の編成樹脂と中層の編成樹脂とが絡み合い、中層と下層との境界では、中層の編成樹脂と下層の編成樹脂とが絡み合い、幅方向は、中央に位置する中央領域と、両端部に位置する端部領域と、中央領域と端部領域との間に位置する間領域とからなり、端部領域は、中央領域よりも硬く、間領域は、中央領域よりは硬く端部領域よりは柔らかく、中央領域と間領域との境界では、中央領域の編成樹脂と間領域の編成樹脂とが絡み合い、間領域と端部領域との境界では、間領域の編成樹脂と端部領域の編成樹脂とが絡み合っているものである。
本実施の形態によれば、適度なクッション性を有すると共に、寝返りがしやすい枕を提供することができる。また、上層を最も柔らかくすることで、枕が徐々に使用者の頭の重さや大きさに応じてなじみやすくなる。
【0013】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による枕において、下層には、幅方向の一端から他端にかけて使用者の首を支持する部分に中層側へ突出した突出部が設けられているものである。
本実施の形態によれば、使用者の首を支持し、過大な沈み込みを抑制することができる。
【0014】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による枕において、上層の編成樹脂の線径は中層の編成樹脂の線径よりも小さく、中層の編成樹脂の線径は下層の編成樹脂の線径よりも小さく、上層の編成樹脂の線径を1としたとき、中層の編成樹脂の線径は1.1~1.7であり、下層の編成樹脂の線径は1.4~2.0であるものである。
本実施の形態によれば、各層で異なる硬さをより適切なものとすることができる。
【0015】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれか一つの実施の形態による枕において、中央領域の嵩密度は間領域の嵩密度よりも小さく、間領域の嵩密度は端部領域の嵩密度よりも小さく、中央領域の嵩密度を1としたとき、端部領域の嵩密度は1.2~4.0であるものである。
本実施の形態によれば、各領域で異なる硬さがより適切なものとなり、さらに寝返りしやすくできる。
【0016】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれか一つの実施の形態による枕において、間領域が幅方向に硬さの異なる複数の小領域からなり、隣接する小領域同士では、中央領域側に近いほうが柔らかいものである。
本実施の形態によれば、中央領域から端部領域に至る硬さをより細かく変えることができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の一実施例による枕について説明する。
図1は本実施例による枕の上面を示す概念図である。
図2は枕の側面を示す概念図であり、
図2(a)は高さが最も小さい小タイプ、
図2(c)は高さが最も大きい大タイプ、
図2(b)は高さが小タイプよりは大きく大タイプよりは小さい中タイプを示している。
図3は枕を斜視した概念図であり、
図3(a)は小タイプ、
図3(b)は中タイプ、
図3(c)は大タイプを示している。
枕1は、複数の糸状溶融樹脂が絡み合うとともに部分的に熱溶着された編成樹脂網状構造体からなる。編成網状構造体の形状自体が枕1の形状を成しているため、枕1はカバーに入れずにそのまま使用することも可能である。
編成樹脂網状構造体は、熱可塑性樹脂を所定温度で溶融混練して得た溶融樹脂を、糸状に流れ落として冷却することで形成される。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂などであり、これらを単独で用いることも、二種以上を混合して用いることもできる。
熱可塑性樹脂を原料として製造された編成樹脂網状構造体は、使用後にリサイクルして再び編成樹脂網状構造体の原料等として利用することができる。また、編成樹脂網状構造体は、水等を使用して洗浄可能であるため、枕1を清潔に保ちやすい。また、枕1内の空気が外へ抜けやすいため快適である。
【0018】
枕1の上面は、奥行方向の一端から他端にかけて傾斜しており、一端と他端とで高さが異なっている。これにより使用者は、一つの枕1で高さを使い分けることができる。枕1の寸法は、例えば、小タイプでは奥行Lを350mm、幅Wを600mm、一端の高さH1を80mm、他端の高さH2を60mmとし、中タイプでは奥行Lを400mm、幅Wを600mm、一端の高さH1を110mm、他端の高さH2を90mmとし、大タイプでは奥行Lを400mm、幅Wを600mm、一端の高さH1を140mm、他端の高さH2を120mmとする。
【0019】
枕1は、高さ方向において硬さが異なる三層構造としている。使用時に最も下側に位置する下層30は使用時に最も上側に位置する上層10よりも硬く、上層10と下層30との間に位置する中層20は上層10よりは硬く下層30よりは柔らかい。これらの硬軟(反発力)は、編成樹脂の線径を各層で異ならせることにより設定している。
上層10の編成樹脂の線径は中層20の編成樹脂の線径よりも小さく、中層20の編成樹脂の線径は下層30の編成樹脂の線径よりも小さい。上層10における編成樹脂の線径を「1」とすると、中層20における編成樹脂の線径は「1.1~1.7」、下層30における編成樹脂の線径は「1.4~2.0」とすることが好ましく、上層10における編成樹脂の線径が0.3mm~0.9mm、中層20における編成樹脂の線径が0.5mm~1.0mm、下層30における編成樹脂の線径が0.6mm~1.5mmであることが更に好ましい。例えば、上層10における編成樹脂の線径を0.6mm、中層20における編成樹脂の線径を0.75mm、下層30における編成樹脂の線径を0.9mmとする。
【0020】
下層30の厚さT4及び中層20の厚さT3は奥行方向の一端から他端にかけて一定であり、上層10は奥行方向の一端の厚さT1が他端の厚さT2よりも大きい。また、中層20は、下層30よりは厚く、上層10の一端よりは薄くしている。上層10の一端の厚さT1を「1」とすると、中層20の厚さT3は「0.3~0.9」、下層30の厚さT4は「0.1~0.6」とすることが好ましい。例えば、小タイプでは上層10の一端の厚さT1を50mm、上層10の他端の厚さT2を30mm、中層20の厚さT3を20mm、下層30の厚さT4を10mmとし、中タイプでは上層10の一端の厚さT1を50mm、上層10の他端の厚さT2を30mm、中層20の厚さT3を40mm、下層30の厚さT4を20mmとし、大タイプでは上層10の一端の厚さT1を60mm、上層10の他端の厚さT2を40mm、中層20の厚さT3を50mm、下層30の厚さT4を30mmとする。
上層10と中層20との境界では、上層10の編成樹脂と中層20の編成樹脂とが絡み合い、中層20と下層30との境界では、中層20の編成樹脂と下層30の編成樹脂とが絡み合っている。このように各層の境界において径の異なる編成樹脂同士が絡み合っていることにより、層毎に形成した編成樹脂網状構造体を単に積層した場合よりも、形状の保持性やクッション性に優れた枕1となる。また、上層10を最も柔らかくすることで、枕1が徐々に使用者の頭の重さや大きさに応じて形作られなじみやすくなる。
【0021】
図1に示すように、枕1の幅方向は、中央に位置する中央領域40と、両端部に位置する端部領域60と、中央領域40と端部領域60との間に位置する間領域50とからなる。
端部領域60は、中央領域40よりも硬い。また、間領域50は、中央領域40よりは硬く端部領域60よりは柔らかい。本実施例の枕1は、端部領域60を中央領域40よりも約20%硬くし、間領域50を中央領域40よりも約10%硬くしている。これらの硬軟(反発力)は、各領域の嵩密度に差を設けることにより設定している。嵩密度は、重量(g)÷体積(cm
3)で求まる。
中央領域40の嵩密度は間領域50の嵩密度よりも小さく、間領域50の嵩密度は端部領域60の嵩密度よりも小さい。中央領域40の嵩密度を「1」とすると、端部領域60における嵩密度は「1.2~4.0」とすることが好ましく、中央領域40の嵩密度が0.005g/cm
3~0.06g/cm
3、端部領域60の嵩密度が0.002g/cm
3~0.08g/cm
3であることが更に好ましい。例えば、小タイプでは中央領域40における嵩密度を0.027g/cm
3、端部領域60における嵩密度を0.033g/cm
3とし、中タイプでは中央領域40における嵩密度を0.026g/cm
3、端部領域60における嵩密度を0.032g/cm
3とする。
中央領域40の幅W1は、間領域50の幅W2よりは大きく、端部領域60の幅W3よりは小さい。例えば、中央領域40の幅W1を120mmとし、間領域50の幅W2を70mmとし、端部領域60の幅W3を170mmとする。中央領域40と端部領域60との間に、両者の概ね中間の硬さを有する間領域50を適切な幅で設けることにより、使用者は寝返りしやすくなり睡眠の質が向上する。
中央領域40と間領域50との境界では、中央領域40の編成樹脂と間領域50の編成樹脂とが絡み合い、間領域50と端部領域60との境界では、間領域50の編成樹脂と端部領域60の編成樹脂とが絡み合っている。このように各領域の境界において編成樹脂同士が絡み合っていることにより、領域毎に形成した編成樹脂網状構造体を単に幅方向に並べた場合よりも、形状の保持性やクッション性に優れた枕1となる。
【0022】
図4は枕の各層を示す概念図である。
下層30には、幅方向の一端から他端にかけて、使用者の首を支持する部分に、中層20側へ突出した突出部31を設けることが好ましい。本実施例においては、奥行方向の中央と一端との間、及び奥行方向の中央と他端との間において、幅方向の一端から他端にかけて突出部31を設けている。下層30のうち突出部31を設けた部分はその分だけ厚さT4がその他の部分よりも大きくなるが、中層20のうち突出部31と対向する部分を突出部31の突出高さの分だけ厚さT3を小さくすることで、中層20の厚さT3と下層30の厚さT4を足した厚さは、突出部31が設けられた部分も突出部31が設けられていない部分も同じとなるようにしている。
このように、使用者の首を支持する箇所に突出部31を設けて最も硬い下層30の厚さを部分的に大きくすることで、使用者の首が沈み込み過ぎるのを効果的に抑制することができる。
また、突出部31を、奥行方向の中央と一端との間、及び奥行方向の中央と他端との間の両方に設けることで、使用者が奥行方向の一端側を手前にして使用する場合も、奥行方向の他端側を手前にして使用する場合も、使用者の首を支持する部分に突出部31を位置させることができる。
【0023】
次に、本発明の他の実施例による枕について説明する。
図5は本実施例による枕の上面を示す概念図である。なお、上記した実施例と同一機能部材については同一符号を付して説明を省略する。
本実施例の枕1は、中央に位置する中央領域40と、両端部に位置する端部領域60と、中央領域40と端部領域60との間に位置する間領域50とからなる点は上記した実施例と同じであるが、間領域50を細分化し、幅方向に硬さの異なる複数の小領域51を設けている点において上記した実施例と異なる。
【0024】
小領域51は、中央領域40の両側にそれぞれ接する第一小領域51Aと、端部領域60にそれぞれ接する第二小領域51Bとからなり、第一小領域51Aを第二小領域51Bよりも硬くしている。この硬軟(反発力)は、第一小領域51Aの嵩密度と第二小領域51Bの嵩密度に差を設けることにより設定している。また、中央領域40と間領域50との境界では、中央領域40の編成樹脂と第一小領域51Aの編成樹脂とが絡み合い、間領域50と端部領域60との境界では、第二小領域51Bの編成樹脂と端部領域60の編成樹脂とが絡み合い、第一小領域51Aと第二小領域51Bとの境界では、第一小領域51Aの編成樹脂と第二小領域51Bの編成樹脂とが絡み合っている。
これにより、本実施例の枕1は、例えば、端部領域60を中央領域40よりも20%硬くし、間領域50のうち第一小領域51Aは中央領域40よりも5%硬くし、第二小領域51Bは中央領域40よりも10%硬くするなど、中央領域40から端部領域60に至る硬さ(反発力)をより細かく変えることができる。このため、使用者はより寝返りしやすくなり睡眠の質が更に向上する。
中央領域40の幅W1は、端部領域60の幅W3及び第二小領域51Bの幅W22よりは小さく、第一小領域51Aの幅W21はよりは大きくしている。また、端部領域60の幅W3は、第二小領域51Bの幅W22よりも大きくしている。例えば、中央領域40の幅W1は60mm、第一小領域51Aの幅W21は50mm、第二小領域51Bの幅W22は70mm、端部領域60の幅W3は150mmである。
なお、間領域50は、第三小領域及び第四小領域も設けるなど、更に細分化することもできる。この場合も、隣接する小領域51同士では、中央領域40に近い小領域51が端部領域60に近い小領域51よりも柔らかいものとする。
【0025】
図6は本実施例による枕の製造装置を示す図である。
本実施例による製造装置は、熱可塑性樹脂を所定温度で溶融混練して溶融樹脂とし、所定の押し出し速度で溶融樹脂を押し出す押出機110と、押出機110から押し出された溶融樹脂を受けて底面131の多数の孔(ノズル)から溶融樹脂を糸状に流れ落とす樹脂プール130と、冷却水を貯留する冷却水槽140と、樹脂プール130から流れ落ちる糸状溶融樹脂120が冷却水で冷却されてなる編成樹脂121を下方に引き取る引取機150とを備えている。引取機150は、複数の引取ローラ151を対向して備え、冷却水槽140内に配置されている。また、樹脂プール130と引取機150との間には、ガイダー170が設けられている。
糸状溶融樹脂120は、樹脂プール130の底面131の孔から流れ落ちるときに形成される。糸状溶融樹脂120が冷却水で冷却されてなる編成樹脂121は、引取機150で冷却水槽140の底板側に引き取られ、引取機150を通過した後、冷却水槽140内に配置された引上部材である複数の搬送ローラ160によって、冷却水中で冷却されながら斜め上方へ引き上げられて冷却水槽140外へと搬送される。その後、冷却を経て所定の寸法に裁断することにより、枕1としての編成樹脂網状構造体が形成される。なお、本実施例では、押出方向と直交する方向が枕1の奥行方向となる。
【0026】
枕1における中央領域40、間領域50、及び端部領域60は、押出方向に平行な方向に粗密を設けることで形成される。
押出方向に平行な方向の粗密は、例えば、引取機150の引き取り速度を所定時間ごとに変えることにより設ける。引き取り速度によって粗密を設ける場合は、引取機150が編成樹脂121を引き取る速度として、第一の速度と、第一の速度よりも遅い第二の速度と、第一の速度よりは遅く第二の速度よりは速い第三の速度を設定する。編成樹脂121のうち引取機150に第二の速度で引き取られた部分は第一の速度で引き取られた部分よりも嵩密度が増すため、第一の速度で引き取られた部分は嵩密度が最も小さい疎の部分である中央領域40となり、第二の速度で引き取られた部分は嵩密度が最も大きい密の部分である端部領域60となり、第三の速度で引き取られた部分はそれらの中間的な嵩密度の部分である間領域50となる。
よって、引取機150による引き取り速度が、第二の速度→第三の速度→第一の速度→第三の速度→第二の速度のパターンを繰り返すことで、押出方向に平行な方向において、中央領域40と端部領域60との間に間領域50を有する枕1の製造が可能となる。ここで、第二の速度で引き取る時間を最も長く、第一の速度で引き取る時間を次に長く、第三の速度で引き取る時間を最も短くすることで、各領域によって幅を異ならせることができる。なお、間領域50を細分化して小領域51を設ける場合は、引取機150による引き取り速度を更に細かく変えて設定すればよい。
また、押出方向に直交する方向の粗密は、例えば、樹脂プール130の底面131に設ける孔の径を所定範囲ごとに変えることにより設ける。樹脂プール130の孔の径によって粗密を設ける場合は、上層10に対応する孔の径を最も小さく、下層30に対応する孔の径を最も大きく、中層20に対応する孔の径を、それらの中間の径とする。
【符号の説明】
【0027】
1 枕
10上層
20 中層
30 下層
31 突出部
40 中央領域
50 間領域
51 小領域
51A 第一小領域
51B 第二小領域
60 端部領域