(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】温度調節衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
A41D13/005 103
A41D13/005 101
(21)【出願番号】P 2021207887
(22)【出願日】2021-12-22
【審査請求日】2023-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512071558
【氏名又は名称】株式会社昭和商会
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100214514
【氏名又は名称】鳴村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】佐野 修唯
(72)【発明者】
【氏名】加藤 善紀
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-113371(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090483(WO,A1)
【文献】実開平06-004011(JP,U)
【文献】特開2022-63478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/002-13/005
A41D1/00
A61F7/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルチェ素子を有し、冷却または発熱面を備えるペルチェ素子ユニットと、
前記ペルチェ素子との間を配線コードにより接続され、前記配線コードを通じて前記ペルチェ素子に電流を供給するモバイルバッテリと、
衣服の後ろ身頃に形成され、前記ペルチェ素子ユニットを着用時に着用者の身体に密着するように取り付けるための挿入孔と、
を備え
、
前記ペルチェ素子ユニットは、
前記冷却または発熱面に垂直な方向において前記冷却または発熱面より前記ペルチェ素子側の前記冷却または発熱面の周囲から前記冷却または発熱面に平行に張り出したフランジと、前記ペルチェ素子ユニットから脱着可能であり、前記フランジに対向し、前記冷却または発熱面に垂直な方向において前記フランジより前記冷却または発熱面側とは反対側から螺合により装着されるリング体と、を備え、
前記挿入孔の周囲の前記後ろ身頃の生地が、衣服の内側に設けられた前記フランジと衣服の外側に設けられた前記リング体により挟み込まれ、前記冷却または発熱面が前記フランジよりも衣服の内側に突出した状態で取り付けられる、
温度調節衣服。
【請求項2】
前記ペルチェ素子ユニットは、着用時に着用者の首筋、背中または脇の下に密着する位置に設けられた、
請求項1に記載の温度調節衣服。
【請求項3】
前記挿入孔は、複数箇所に形成され、
前記ペルチェ素子ユニットは、前記挿入孔に脱着可能に取り付けられた、
請求項1または2に記載の温度調節衣服。
【請求項4】
前記後ろ身頃の前記挿入孔が形成された箇所を含む部分を袋状に覆う後ろ身頃カバー部材と、
前記後ろ身頃カバー部材を開閉するファスナーと、を設け、
前記後ろ身頃カバー部材の内側に前記配線コードを収納した、
請求項1から3のいずれか1項に記載の温度調節衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調節衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば炎天下の野外や高温環境で作業する作業者等が着用して身体を冷やして体温を調節するための体温調節衣服が存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、衣服に対して着脱自在な収納部材を設け、収納部材に保冷剤を収納した衣服を着用することにより身体を冷却することが開示されている。また、特許文献2には、衣服に空気取込口とファンを設け、体と平行に外気を衣服内部に流通させることにより身体を冷却する衣服が開示されている。また、特許文献3には、衣服の内面に人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブを全体的に蛇行状に配設し、チューブを介して接続された冷却又は加温装置から当該所定の温度の液体を送出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-55811号公報
【文献】特許第4329118号公報
【文献】特開2017-57518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、保冷剤を設けた衣服により身体を冷却する場合、温度の調整が困難であり、時間の経過により保冷剤の冷却効果は低下する。したがって、衣服の着用者は、保冷剤の冷却効果が低下するたびに保冷剤を交換する必要があり、長時間の連続着用が困難であるとともに、保冷剤の交換に手間がかかる。また、衣服に空気取込口とファンを設けて外気を衣服内部に流通させる場合、外気が高温であると十分な身体の冷却効果を得られない。さらに、外気を衣服内部に流通させることから、衣服は膨張することとなり、衣服を着用する作業者の運動性および作業性が低下するという問題がある。また、衣服の内面に所定の温度の液体を内部に流通させるチューブを全体的に蛇行状に配設する場合、衣服の構造が複雑になる。さらに、チューブと液体の重量により衣服全体の重量が増すとともに、チューブの厚みにより衣服全体の厚みが増し、衣服を着用する作業者の運動性および作業性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、衣服を着用する作業者の運動性および作業性を妨げることなく、長時間にわたって体温の調整が可能な温度調節衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る温度調節衣服は、ペルチェ素子を有し、冷却または発熱面を備えるペルチェ素子ユニットと、前記ペルチェ素子との間を配線コードにより接続され、前記配線コードを通じて前記ペルチェ素子に電流を供給するモバイルバッテリと、衣服の後ろ身頃に形成され、前記ペルチェ素子ユニットを着用時に着用者の身体に密着するように取り付けるための挿入孔と、を備え、前記ペルチェ素子ユニットは、前記冷却または発熱面に垂直な方向において前記冷却または発熱面より前記ペルチェ素子側の前記冷却または発熱面の周囲から前記冷却または発熱面に平行に張り出したフランジと、前記ペルチェ素子ユニットから脱着可能であり、前記フランジに対向し、前記冷却または発熱面に垂直な方向において前記フランジより前記冷却または発熱面側とは反対側から螺合により装着されるリング体と、を備え、前記挿入孔の周囲の前記後ろ身頃の生地が、衣服の内側に設けられた前記フランジと衣服の外側に設けられた前記リング体により挟み込まれ、前記冷却または発熱面が前記フランジよりも衣服の内側に突出した状態で取り付けられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、衣服を着用する作業者の運動性および作業性を妨げることなく、長時間にわたって体温を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る温度調節衣服の表側を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る温度調節衣服の裏側を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るペルチェ素子ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態にかかる温度調節衣服について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、温度調節衣服1の表側の面を示す図であり、
図2は、温度調節衣服1の裏側の面を示す図である。紙面の上から見て左側は前身頃2を示し、右側は後ろ身頃3を示している。
【0012】
本実施の形態において、温度調節衣服1は、空冷式ペルチェ素子ユニットを着用者の背中が位置する部分に4個実装した保冷ベストである。
温度調節衣服1は、上部に着用時に着用者の首が位置するネックラインを形成する襟ぐり部4が設けられている。また、温度調節衣服1の左右の位置には、着用時に着用者の腕が通される袖ぐり部5,6が設けられている。袖ぐり部5の下端部には、袖ぐり部5の下端を閉じるための袖ぐりバンド7が設けられている。袖ぐりバンド7は、ゴムバンドとバックルにより形成され、袖ぐり部5の下端の締め付け具合を調整することが可能である。同様に、袖ぐり部6の下端部には、袖ぐり部6の下端を閉じるために袖ぐりバンド7と同じ構造のバンドが設けられ(図示せず)、袖ぐり部6の下端の締め付け具合を調整することが可能である。
【0013】
温度調節衣服1の前身頃2は、前開きになっており、前身頃開閉バンド8,9によって閉じることができる。前身頃開閉バンド8,9は、それぞれゴムバンドとバックルにより形成され、前身頃2を開閉するとともに、前身頃2を閉じた際の締め付け具合を調整することが可能である。
【0014】
また、前身頃開閉バンド8と襟ぐり部4の間の前身頃2の部分には、前身頃締め付けバンド10,11,12,13,14,15が設けられている。前身頃締め付けバンド10,11,12,13,14,15は、ゴムバンドからなり、前身頃2に縫い付け、あるいは接着されており、前身頃2が閉じられた状態において、温度調節衣服1が着用者の体に密着するように締め付ける。
【0015】
温度調節衣服1は、通気性を有するメッシュ状の生地によって形成されている。前身頃2の前身頃締め付けバンド12,15より着用者の下方部分には、それぞれ布が縫い付けられることにより形成されたポケット部16,17が設けられている。ポケット部16,17には、ファスナー18,19が設けられ、開閉可能とされている。
【0016】
ポケット部16,17には、ペルチェ素子ユニットを駆動するためのバッテリを収納することができる。また、ポケット部16,17には、バッテリからペルチェ素子ユニットに電力を提供するための配線コード20がポケット部16,17からペルチェ素子ユニットに向かって挿通する通し穴21,22が設けられている。
図1において、一例として当該バッテリとしてモバイルバッテリ23がポケット部17に収納されている。ただし、これに限らず、モバイルバッテリ23をポケット部16に収納するようにしてもよい。
【0017】
温度調節衣服1の後ろ身頃3には、ペルチェ素子ユニット24,25,26,27が設けられている。具体的には、ペルチェ素子ユニット24,25は着用者の首筋の両側に当接する位置に設けられ、ペルチェ素子ユニット26,27は、両脇の下部分に当接する位置に設けられている。
図2において、後ろ身頃3の生地にはペルチェ素子ユニット24,25,26,27が挿入される挿入孔28,29,30,31が設けられ、挿入孔28,29,30,31を介してペルチェ素子ユニット24,25,26,27は、温度調節衣服1の後ろ身頃3に取り付けられる。
【0018】
図1において、後ろ身頃3の生地には、後ろ身頃3の生地を袋状に覆うように、後ろ身頃カバー部材32が設けられている。後ろ身頃カバー部材32は、後ろ身頃3の生地と同じメッシュ状の生地と当該生地より目が細かい通気性のある布によって構成され、後ろ身頃カバー部材32の外縁部分が後ろ身頃3の生地に縫い付けられている。ただし、前身頃2のポケット部16,17に設けられた通し穴21,22に対向する後ろ身頃カバー部材32の外縁部分には、後ろ身頃カバー部材32の内部に通じる通し穴33,34が設けられる。また、後ろ身頃カバー部材32は、着用者の背中部分に上下方向にファスナー35が設けられており、ファスナー35を開閉することにより、後ろ身頃カバー部材32を開閉することができる。後ろ身頃3の挿入孔28,29,30,31に対向する後ろ身頃カバー部材32の目が細かい通気性のある布部分には、ペルチェ素子ユニット24,25,26,27の排熱ファン部分が露出するように開口部36,37,38,39が設けられている。
【0019】
前述したように、ポケット部17に収納されているモバイルバッテリ23からペルチェ素子ユニットに電力を提供するための配線コード20は、通し穴22から延出し、通し穴33を通じて後ろ身頃3の生地と後ろ身頃カバー部材32の間の後ろ身頃カバー部材32の内部に延出する。なお、モバイルバッテリ23がポケット部16に収納される場合、配線コード20は通し穴21から延出し、通し穴34を通じて後ろ身頃3の生地と後ろ身頃カバー部材32の間の後ろ身頃カバー部材32の内部に延出する。後ろ身頃カバー部材32の内部に延出されたコードは分岐してペルチェ素子ユニット24,25,26,27のそれぞれに接続される。なお、モバイルバッテリ23からペルチェ素子ユニット24,25,26,27のそれぞれに対して別々の配線コードで接続されてもよく、また、モバイルバッテリ23からペルチェ素子ユニット24,25,26,27の間を直列に接続するようにしてもよい。いずれの接続の場合においても、コードは、通し穴22から通し穴33までの間の短い距離を除き、後ろ身頃3の生地との間の後ろ身頃カバー部材32の内部に存在し、温度調節衣服1の外部に露出することはない。したがって、温度調節衣服1を着用する場合及び温度調節衣服1を脱ぐ場合において、配線コード20がじゃまにならず、配線コード20が引っ掛かって配線コード20が外れたり、断線することがなく安全である。
【0020】
図3は、ペルチェ素子ユニット24を温度調節衣服1の後ろ身頃3の生地に取り付けた状態におけるペルチェ素子ユニット24の断面図である。なお、他のペルチェ素子ユニット25,26,27についても同様の構造であるので、説明を省略する。
【0021】
ペルチェ素子ユニット24は、後ろ身頃3に設けられた挿入孔28に取り付けられている。挿入孔28は、その内周縁に沿って後ろ身頃3の生地を一定の幅で折り返し、且つ縫い付けた折り返し部を有している。なお、折り返し部は、後ろ身頃3の生地とは別体でも良く、挿入孔28の内周縁に沿って折り返し、かつ内側に穴付きの円環形の補強板を抱えて縫い付けられていてもよい。
【0022】
ペルチェ素子ユニット24を構成する排熱ファンカバー部41とペルチェ素子取付部42とは、排熱ファンカバー部41の内側に、ペルチェ素子取付部42を挿入した状態で、例えば凹部および爪片の組み合わせである係止手段あるいは接着により互いに固定されている。
【0023】
ペルチェ素子取付部42は、円筒状に形成され、外周端部から径方向に円環板形状に張り出したフランジ43が設けられている。また、ペルチェ素子取付部42には、ペルチェ素子44、伝熱板45、放熱板46が取り付けられている。ペルチェ素子44には電極が設けられ、電極にはモバイルバッテリ23へつながる配線コード20が接続される。
【0024】
ペルチェ素子44は、N形半導体とP形半導体とを接合したペルチェ効果のある半導体素子である。ペルチェ素子44に直流電流を流すことにより、ペルチェ素子44の両面間に温度差が発生し、一方の面が低温となり、他方の面が高温となる。ペルチェ素子44に流す電流の方向を変えることにより、吸熱する面と発熱する面が逆になり、一方の面が高温となり、他方の面が低温となる。また、流す電流の大きさにより吸発熱する量を変えることが温度を制御することができる。
【0025】
ペルチェ素子44の一方の面に当接された伝熱板45は、ペルチェ素子44により冷却される。伝熱板45は、ペルチェ素子44に当接する面とは反対の面が、着用者の体に接触するように設けられている。ペルチェ素子44により冷却された伝熱板45は、着用者の体に当接することにより、当接された冷却面を通じて着用者の体を冷却する。一方、ペルチェ素子44の他方の面に当接された放熱板46は、ペルチェ素子44の他方の面に発生した熱が伝えられ、排熱ファンに対向する面から放熱する。伝熱板45および放熱板46は、例えばアルミニウム等の金属板により形成される。
【0026】
排熱ファンカバー部41は、円筒形状をなし、円筒形状の頂側に位置する円板状の頂部47とリング体48と結合する側部の間に排熱のための排気孔49が設けられている。頂部47の内側には、円筒形状の収納室50が一体に形成され、収納室50内には、モータMが収納されている。モータMの回転軸の先端側は、ペルチェ素子取付部42に取り付けられた放熱板46側に突出し、回転軸には、円筒形状をなすスピナー51の先端部が固定されている。スピナー51の外周面には複数枚の羽根52が放射状に突設され、排熱ファン53を構成する。排熱ファン53は、放熱板46より放出された熱を排気孔49を通じて外側に排気する。また、排熱ファンカバー部41には、外側面にネジ溝54が形成されている。
【0027】
リング体48は、内側面に形成されたネジ溝55と、外側端から径方向に円環板形状に張り出した円環片56と、円環片56におけるペルチェ素子取付部42のフランジ43と対向する円環面に形成された複数の凹凸条57と、を備えている。
【0028】
次に、ペルチェ素子ユニット24を温度調節衣服1に取り付ける手順について説明する。まず、温度調節衣服1の後ろ身頃3の生地を覆う後ろ身頃カバー部材32に設けられたファスナー35を開いておく。
【0029】
ペルチェ素子ユニット24を温度調節衣服1の内側から後ろ身頃3に設けられた挿入孔28内に挿入し、かつペルチェ素子取付部42のフランジ43を挿入孔28における外側の周縁に密着させる。次に、ファスナー35の開口部からリング体48を温度調節衣服1の後ろ身頃3の生地の外側であって後ろ身頃カバー部材32の内側から排熱ファンカバー部41に近付け、リング体48の内側面に形成されたネジ溝55と排熱ファンカバー部41の外側面に形成されたネジ溝54とを互いにネジ結合する。その結果、フランジ43と、円環片56とによって、挿入孔28の内周縁が、内外の両側から緊密に挟み込まれる。しかも、このネジ込み操作に伴って、リング体48の円環片56に形成された複数の凹凸条57が、挿入孔28の外側に位置する生地に回転しつつ食い込むので、ペルチェ素子ユニット24を温度調節衣服1に簡単かつ緊密に取り付けることができる。ペルチェ素子ユニット24が温度調節衣服1に取り付けられ、配線が終了すると、ファスナー35を閉じることによって後ろ身頃カバー部材32を閉じる。このように、ファスナー35を設けることによって、ファスナー35を開くことによりペルチェ素子ユニット24の取付作業が容易になるとともに、ファスナー35を閉じることにより配線コード20が温度調節衣服1からはみ出ることがない。逆に、ペルチェ素子ユニット24を温度調節衣服1から取り外す際には、リング体48をネジ込み操作とは逆方向に回転させてリング体48を取り外し、挿入孔28から抜くことにより簡単に取り外すことができる。このように、ペルチェ素子ユニット24の脱着が容易であることから、温度環境に応じて、取り付けるペルチェ素子ユニット24の数を調整することができる。なお、ファスナー35は、背中部分に設けられているが、袖ぐり5,6に沿った位置に設けてもよい。
【0030】
次に、温度調節衣服1を着用して実際に使用する場合について説明する。
温度調節衣服1のポケット部17に収納されたモバイルバッテリ23から延びた配線コード20は、ペルチェ素子ユニット24,25,26,27に接続されており、モバイルバッテリ23側あるいは配線コード20の中間に配置した図示しないスイッチを投入する。スイッチは、LOW/MID/HIGHの3段階で温度を切り替えることができるようになっている。LOW/MID/HIGHの3段階でペルチェ素子ユニット24,25,26,27に流す電流の大きさを変えることによって、ペルチェ素子44の温度を変えることができる。また、スイッチを投入することにより、ペルチェ素子ユニット24,25,26,27に設けられた排熱ファン53が回転し、放熱板46からの放熱を促す。排熱ファン53は上記の3段階の温度の切替に応じて回転速度を変えてもよいし、温度の切替に関わらず一定速度で回転するようにしてもよい。また、各ペルチェ素子ユニット24,25,26,27ごとに、スイッチを投入できるようにしてもよいし、温度の切替も個別に切り替えできるようにしてもよい。
【0031】
温度調節衣服1を着用した時、ペルチェ素子ユニット24,25の伝熱板45は、着用者の首筋の両側に密着し、ペルチェ素子ユニット26,27の伝熱板45は、着用者の両脇の下部分に密着することにより、当該箇所を冷却する。上記箇所は、太い動脈が体の表面付近を通っている箇所であり、当該箇所を冷却することは体温を調節するうえで効果的である。したがって、上記箇所以外に例えば大動脈が通る背中中央部分に伝熱板45が密着するようにペルチェ素子ユニットを配置してもよい。
【0032】
なお、温度調節衣服1を着用する際、外気を衣服内に循環させる空調衣服と組み合わせることによりペルチェ素子自体の排熱効果が上がり、より効果的に体を冷却することができる。
【0033】
上記実施の形態において、ペルチェ素子の吸熱作用により身体を冷却する温度調節衣服について説明したが、本発明はこれに限定されない。前述したように、ペルチェ素子は、N形半導体とP形半導体とを接合したものであって、これに直流電流を流すと片面側が吸熱するとともにこれとは反対側の面が発熱するというものであり、電流の向きを変えると吸熱する面と発熱する面とが逆になるというものである。したがって、上記実施の形態において、ペルチェ素子に印加する電流の向きを反対に変えることにより、ペルチェ素子ユニット24の伝熱板45の身体に当接する面は冷却面から発熱面に変化し、身体を温める暖房服として使用することができる。さらに、ペルチェ素子に印加する電流の向きを切り替える切換スイッチ等の切換手段を設けることによって、必要に応じて身体を冷却及び暖房できる冷暖房服とすることができる。さらに、衣服内部の温度を検出する温度センサを設け、温度センサの検出温度に応じて電流の向きを切り替えることによって、衣服内部の温度を調節するようにしてもよい。
【0034】
上記実施の形態において、リング体48の内側面に形成されたネジ溝55と排熱ファンカバー部41の外側面に形成されたネジ溝54とを互いにネジ結合することにより、温度調節衣服1の後ろ身頃3の生地の内側に位置するペルチェ素子取付部42のフランジ43と、後ろ身頃3の生地の外側に位置するリング体48の円環片56とによって、挿入孔28の内周縁が、内外の両側から挟み込まれるようにした。これに対して、排熱ファンカバー部41にフランジを形成し、ペルチェ素子取付部42にネジ溝を形成し、リング体48をペルチェ素子取付部42とネジ結合することにより、後ろ身頃3の生地の内側に位置するリング体48の円環片56と後ろ身頃3の生地の外側に位置するフランジとによって、挿入孔28の内周縁を、内外の両側から挟み込むようにしてもよい。
【0035】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0036】
1…温度調節衣服、2…前身頃、3…後ろ身頃、4…襟ぐり、5,6…袖ぐり、7…袖ぐりバンド、8,9…前身頃開閉バンド、10,11,12,13,14,15…前身頃締め付けバンド、16,17…ポケット部、18,19,35…ファスナー、20…配線コード、21,22,33,34…通し穴、23…モバイルバッテリ、24,25,26,27…ペルチェ素子ユニット、28,29,30,31…挿入孔、32…後ろ身頃カバー部材、36,37,38,39…開口部、41…排熱ファンカバー部、42…ペルチェ素子取付部、43…フランジ、44…ペルチェ素子、45…伝熱板、46…放熱板、47…頂部、48…リング体、49…排気孔、50…収納室、51…スピナー、52…羽根、53…排熱ファン、54,55…ネジ溝、56…円環片、57…凹凸条、